ところで、ワークハンドリング装置のワークホルダに設けた櫛歯状のアームには、ワークを安定的に保持するために、その表面に吸着パッドが形成されており、ワークの裏面側を真空吸着するようにする。従って、吸着パッドには空気配管が接続されるが、アームが装着されているワークホルダは装置の本体部に対して旋回することから、空気配管は可撓性のあるチューブ材で形成されることになる。このために、ワークハンドリング装置を繰り返し頻繁に作動させると、空気配管を構成するチューブが損傷する等、その耐久性に問題がある。また、一方のワークホルダのアームと他方のワークホルダのアームとが相互に入り組むことによりワークを移載するものであるから、ワークホルダの回転中心の位置からワークが大きく突出することになる。その結果、ワークホルダの回転中心からワークのエッジまでの距離が長くなり、大判のワークを取り扱う際には、ワークの旋回半径は大きくなってしまう。このために、ワークホルダの旋回角度が僅かでもずれると、各処理ステージにおいて、ワークを処理すべき辺が大きく位置ずれしてしまうという問題点も生じることになる。
以上のことから、櫛歯式のアームを有するワークホルダを用いたワークハンドリング装置は、フラットディスプレイ用のガラス基板等のように、薄板からなるワークにダメージを与えることなく移載できる点で極めて有利であるが、空気配管の耐久性やワークの位置決め精度等の点でなお改善すべき余地がある。
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、簡単な構成によって、空気配管の耐久性やワークの位置決め精度を向上させることにある。
前述した目的を達成するために、本発明は、吸着パッドが設けられ、水平方向にインデックス回転するワーク支持部材を備えたワークハンドリング装置であって、回転駆動手段が装着され、外周面に前記ワーク支持部材を固定して設けた回転体が外側軸受により回転可能に連結された駆動部ケーシングと、前記駆動部ケーシング内に配置され、前記回転駆動手段の出力軸に連結して設けた駆動側部材と、この駆動側部材を囲繞するように設けられ、内側軸受により前記駆動部ケーシングの内周面に回転可能に支持され、前記回転体に連結して設けた従動側リング部材とからなる回転伝達手段と、前記駆動部ケーシングと前記従動側リング部材またはこの従動側リング部材に連結した回転側の部材との間にシール部材を介装すると共に、この回転側の部材に蓋体を装着することにより形成され、内部に前記回転伝達手段を収容させた負圧チャンバと、前記駆動部ケーシングに形成され、前記負圧チャンバと連通する負圧通路と、前記蓋体に接続され、他端を前記吸着パッドに接続させた接続配管とから構成したことをその特徴とするものである。
ワークハンドリング装置は、ワークの製造や検査等を行うためのラインに設けられる複数の処理ステージ間を移載し、かつ各処理ステージで所定の位置に位置決めするために設けられるものである。従って、各々の処理ステージにワークハンドリング装置が設けられる。そして、ワークハンドリング装置は、ワークを保持して、所定の処理ステージに搬入し、この処理ステージにおいて、処理や加工、各種の部品や部材の搭載等の作業が行われ、次いで当該の処理ステージからワークを搬出して、次の処理ステージに設けたワークハンドリング装置にワークの移載を行うことになる。これによって、各処理ステージでの処理をオーバーラップして行うことができ、効率向上を図ることができる。
このために、駆動部ケーシングに回転可能に装着した回転体に装着されるワーク支持部材は、この回転体に複数本のアームを固定して設けることによりワークホルダとなし、このワークホルダを回転体の回転中心より水平方向の一方側に向けて平行にして所定の長さ突出させるようにする。ワークは複数本のアームに当接させて、真空吸着させるようにして支持させる。前後の処理ステージ間でワークを移載するために、相隣接するアームの間隔をアームの幅寸法より広くする。
これによって、一方のワークハンドリング装置におけるワークホルダは、他方のワークハンドリング装置におけるワークホルダに対して、相互にアームを入り組ませることができる。受け取る側のワークホルダを受け渡す側のワークホルダより下方に位置させて、相対的に上下動させる。このときに、両ワークホルダが同じ高さ位置となると、受け渡す側のワークホルダの吸着を解除し、受け取る側のワークホルダに吸着力を作用させる。その後、ワークホルダを上下に交差させると、ワークの移載が完了する。この動作時において、ワークは常に下方から支持されるので、ダメージの発生を防止することができる。
駆動部ケーシング及び回転駆動手段と、回転伝達手段を構成する駆動側部材は固定側であり、ワーク支持部材及び回転体、さらには回転伝達手段を構成する従動側リング部材は、駆動側部材により回転駆動される回転側である。負圧チャンバは固定側と回転側との間に設けられており、負圧チャンバを施蓋する蓋体は回転側の部材である。吸着パッドは回転側であるアームに設けられ、この吸着パッドに接続した接続配管はこの蓋体に接続される。従って、回転体の回転時には、接続配管の一端が接続されている蓋体と、他端が接続されているワーク支持部材とは一体回転することから、たとえ接続配管を可撓性のあるチューブ材で構成しても、この接続配管に無理な曲げ力が作用して損傷する等のおそれはない。接続配管の蓋体への接続位置は格別制約されないが、回転中心位置とするのが最も望ましい。また、負圧チャンバの内部には、回転伝達手段が設けられており、この回転伝達手段によって負圧チャンバは上下に区画されている場合には、その間に連通路を設けるようにする。
ワーク支持部材により支持された状態で行われるワークに対する処理、例えば電子回路部品の搭載を正確に行うためには、各ステージにおいて、ワークを正確に位置決めする必要がある。このために、この回転駆動手段から回転伝達手段を介してワーク支持部材を駆動するに当っては、回転の伝達を正確に行い、かつその回転停止精度を高くする必要がある。特に、大判のワークの場合には、回転中心位置からワークの端部までの距離は長くなり、その結果回転駆動手段の角度が僅かにずれただけでも、ワークの処理位置や部品や部材が搭載位置に大きなずれを生じることになる。以上の点から、回転駆動の精度を高くする必要があり、また停止精度も高くしなければならない。さらに、角度分解能も高くすることが望ましい。
まず、回転駆動手段としては、通常、電動モータが用いられるが、望ましくはステッピングモータを用いるようにする。そして、回転伝達手段による回転の伝達は、歯車伝達手段やタイミングベルト等から構成されるが、好ましくは減速機構を有するものとする。例えば、遊星歯車を用いた伝達手段を用いることができる。即ち、回転駆動手段の出力軸に太陽歯車を連結して設けて駆動側部材となし、従動側リング部材としては、リングギアとする。そして、太陽歯車とリングギアとの間に1乃至複数の遊星歯車が噛合させて設けられる。この場合、歯車伝達機構を構成する各部について、バックラッシュがないか、または最小限のものとする。
実質的にバックラッシュがなく、しかも角度分解能を高くするために、回転伝達手段を構成する駆動側部材は、回転駆動手段、例えばステッピングモータの出力軸に回転楕円部材を連結して設け、この回転楕円部材には軸受を介して可撓環状帯体を嵌合させる。この可撓環状帯体の外周面にスプラインを設けるようになし、また従動側リング部材は、内周面にスプラインを形成した硬質リングから構成する。そして、可撓環状帯体に形成したスプラインの歯数と従動側リング部材に形成したスプラインの歯数とは異なる数とする。特に、可撓環状帯体の方が1個以上歯数を少なくする。これによって、回転楕円部材が1回転する間に、スプラインの歯数の差分に相当する角度だけ従動側リング部材が回転し、もって従動側リング部材及びこれに連結した回転体を減速回転させる機構から構成することもできる。
また、負圧チャンバは固定側と回転側との間に形成されるので、当然、その間に摺動部が形成され、この摺動部にはシール部材が装着されることになる。回転体と駆動部ケーシングとの間は外側軸受により相対回転可能となっており、また従動側リング部材と駆動部ケーシングとの間も内側軸受により相対回転可能となっている。これら外側及び内側の各軸受は回転時における摩擦抵抗が少なく、荷重も有効に受けることができるもの、例えばクロスローラ軸受やアンギュラ玉軸受等により構成することができる。これによって、摺動部における摺動抵抗を最小限に抑制でき、回転側は軽い負荷で円滑に回転する。
しかも、可動なシール部材は従動側リング部材と駆動部ケーシングとの1箇所で良いことになり、回転側の回転時における摺動抵抗による撓みが最小限に抑制できて、その反力が作用した状態で停止することはない。従って、ワーク支持部材が停止する際の停止精度が向上する。つまり、ワークが載置されているワーク支持部材は、常に一定の位置で停止することになり、停止位置がずれるおそれはない。特に、シール部材を従動側リング部材と駆動部ケーシング内面との間における内側軸受の近傍に配置することによって、このシール部材の摺動安定性が高くなるので、円滑な摺動が可能となり、停止精度も極めて良好になる。
固定側である駆動部ケーシングと、回転側であるワーク支持部材,回転体及び従動側リング部材を含む回転側との間において、これら固定側と回転側との間に負圧チャンバを形成して、この負圧チャンバには固定側から負圧通路を導き、回転側で吸着パッドに接続される接続配管を連通させたので、空気配管の耐久性が向上し、また固定側と回転側との間には摺動シール部材を1箇所だけ介装しているので、ワーク支持部材の回転停止時における停止精度が極めて高くなる結果、ワークを高精度に位置決めすることができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について詳細に説明する。ここで、本発明により取り扱われるワークは、大判かつ薄板からなるものであり、例えば液晶パネル,プラズマディスプレイパネル,有機ELパネル等といったフラットディスプレイ用のパネルである。そして、図1(a)に示したように、ワーク1の各長辺1a及び短辺1bには、同図(b)に示したように、それぞれ複数のTCP(Tape Carrier Package)からなる半導体回路素子2をTAB(Tape Automated Bonding)方式で搭載し、また各辺の半導体回路素子2に接続するように印刷回路基板3(Print Circuit Board)を接続することによって、フラットディスプレイパネル4が形成される。ただし、本発明におけるワークハンドリング装置により取り扱うワークは以上のものに限定されるものではないことは言うまでもない。
このように、フラットディスプレイパネル4に部品搭載を行う部品搭載装置5は、図2に示したステージ構成となっている。図中において、10は搬入ステージであり、この搬入ステージ10には搬入されたワーク1のTAB搭載部をクリーニングする機構が設けられている。このワーク1のクリーニングは、例えばテープクリーニングでワーク1の表面を擦動するようにして行う。これによって、ワーク1のTAB搭載部の汚れを拭き取ることができる。
搬入ステージ10の下流側に位置するステージはワーク1のTAB搭載部にACF(Anisotropic Conductive Film)テープを貼り付けるACF貼り付けステージ11である。ACFの貼り付けは、各半導体回路素子2が搭載される部位に限定して個別的に貼り付けるのが望ましいが、長辺1a及び短辺1bの全長にわたって貼り付けるようにすることもできる。
次の処理ステージ12,13は、半導体回路素子2を搭載するTAB搭載するためのステージである。処理ステージ12は半導体回路素子2をACFに仮圧着する仮圧着ステージであり、また処理ステージ13は仮圧着された半導体回路素子2を加熱下で加圧することによって、ACFを介してワーク1に固着させる本圧着ステージである。ここで、半導体回路素子2は、ワーク1の長辺1a及び短辺1bにそれぞれ複数搭載されることになる。そして、処理ステージ14はこのようにして圧着させた半導体回路素子2が正規の位置に搭載されているか否かを判定する検査ステージである。
さらに、処理ステージ15は印刷回路基板3を接続するPCB接続ステージである。ここで、ワーク1の各辺1a,1bにはそれぞれ複数の半導体回路素子2が搭載されており、印刷回路基板3は、各辺1a,1bに搭載されている全ての半導体回路素子2と電気的に接続されることになる。そして、処理ステージ16は、半導体回路素子2と印刷回路基板3との接続部に封止樹脂を塗布する樹脂塗布ステージである。また、この樹脂塗布ステージ16での処理が終了すると、ワーク1は次の工程に搬出される。従って、この樹脂塗布ステージ16は搬出ステージを兼ねることになる。以上の構成によって、ワーク1に電子回路部品としての半導体回路素子2及び印刷回路基板3を搭載する部品搭載装置を構成する。なお、半導体回路素子2及び印刷回路基板3はワーク1の複数の辺に接続されることから、前述した各処理ステージ10〜16のうち、例えば本圧着ステージ13やPCB接続ステージ15等の処理ステージは2以上のステージ構成としても良い。
以上のように、部品搭載装置における各処理ステージを順次経ることによって、フラットディスプレイパネルへの電子回路部品の搭載が行われる。このために、各処理ステージ10〜16には、それぞれワークハンドリング装置20が設置されている。このワークハンドリング装置20は、ワーク1を水平状態に保持して、各処理ステージ10〜16でそれぞれ必要な処理が行われる。また、ワークハンドリング装置20は前後の処理ステージ間でワーク1を移載する。なお、処理ステージ10〜16には、それぞれ処理を行うための処理機構が設けられているが、これら処理機構の構成及びそれぞれの処理操作についての説明は省略する。
図3乃至図5にワークハンドリング装置20の構成を示す。まず、図3において、21はワーク支持部材を構成するワークホルダを示し、このワークホルダ21は複数本のアーム22を有し、各アーム22はアームガイド23,23に連結して設けられ、アームガイド23はサポートベース24に取り付けられている。ここで、アーム22アームガイド23に対して固定的に設けることもできるが、好ましくはその延出方向と直交する方向に向けて位置調整可能とする。各アーム22には、その表面に開口する複数の吸着パッド25が装着されており、これらの吸着パッド25によってワーク1を吸着して保持する構成となっている。
図3から明らかなように、処理ステージ10〜16のうち、奇数番目の処理ステージと偶数番目の処理ステージとでワークホルダ21のアーム22の間隔が異なっている。例えば、図2において、奇数番目の処理ステージに配置されているワークハンドリング装置を20Oとし、偶数番目の処理ステージに配置されているワークハンドリング装置を20Eとしたときに、例えばワークハンドリング装置20Oにおけるワークホルダ21のアーム22の位置に対してワークハンドリング装置20Eにおけるワークホルダ21の各アーム22が内側に入り込むようになる。これによって、両ワークハンドリング装置20O、20Eのアーム22を入り組ませることができる。従って、ワークホルダ21における各アーム22は、それぞれ平行であって、相隣接するアーム間の間隔はアーム22の幅以上となっている。また、アーム22はアームガイド23に沿って位置調整可能とすることができ、もってワーク1のサイズが異なる場合にも対応できるようになる。
ワークハンドリング装置20におけるワークホルダ21は、各処理ステージにワーク1を搬入して、所定の位置に位置決めし、かつこの処理ステージから搬出して、次の処理ステージに設けたワークハンドリング装置20との間でワーク1を移載するために、装置本体25に水平面におけるXY直交2軸方向と、高さ方向、つまりZ軸方向と、水平回転方向、つまりθ方向との4軸方向に位置調整可能に装着されている。
Y軸方向、つまりワークホルダ21に載置したワーク1を処理ステージに近接・離間する方向の位置調整機構としては、図4から明らかなように、Y軸テーブル26を備え、このY軸テーブル26は、装置本体25に設けたY軸ガイド27に沿ってY軸方向に往復移動可能となっている。このY軸テーブル27を駆動するために、モータ28及びこのモータ28により回転駆動されるボールねじ29からなるY軸駆動手段を構成している。
また、X軸方向は前後の処理ステージ間にワーク1を往復移動させるためのものであって、図5に示したように、X軸テーブル30を有し、このX軸テーブル30はY軸テーブル27に設けたX軸ガイド31に沿って移動可能となっており、このX軸テーブル30の駆動は、Y軸方向の駆動手段と同様、モータ32とボールねじ33とからなるボールねじ送り手段からなるX軸駆動手段が構成されている。
さらに、ワーク1のZ軸方向の位置調整機構は、X軸テーブル30上に設けたZ軸ガイド34に沿ってX軸方向に向けて移動可能な傾斜ブロック35を有し、この傾斜ブロック35にはZ軸テーブル36を設けたスライダ37が係合している。また、X軸テーブル30には垂直ガイドロッド38が立設されており、Z軸テーブル36にはこの垂直ガイドロッド38が挿通されている。そして、モータ39とボールねじ40とからなるZ軸駆動手段が傾斜ブロック35に連結して設けられており、この傾斜ブロック35をZ軸ガイド35に沿って往復移動させることによって、スライダ37に装着したZ軸テーブル36が垂直ガイドロッド38にガイドされて、昇降駆動されるようになっている。
さらに、Z軸テーブル36には、ワーク1を水平方向に回転させるθ方向の調整機構が設けられており、ワークホルダ21を構成するサポートベース24はこの回転駆動機構41上に装着されて、θ方向に駆動される。θ方向の駆動は、90度毎のインデックス回転と、所定の回転位置での位置微調整とを含むものである。
この回転駆動機構41は、図6及び図7に示したように、回転駆動手段としてのモータ42を有し、このモータ42は駆動部ケーシングとしてのモータケーシング43に固定的に支持されており、モータケーシング43はZ軸テーブル36の上に固定的に保持されている。モータ42は、例えばステッピングモータのように、角度分解能が高く、回転角度を極めて正確に制御できるもので構成され、モータケーシング43に固定して設けられている。モータケーシング43は、少なくとも上部側が円環状に形成したものから構成されており、その外周面には円環状となった回転体44が外側軸受45を介して相対回転可能に装着されている。この回転体44にワークホルダ21のサポートベース24が固定して設けられている。
モータ42の出力軸42aには回転伝達手段における駆動側部材が設けられている。この回転伝達手段は、例えばハーモニックドライブ(株式会社ハーモニックドライブシステムズの登録商標)機構から構成することができる。即ち、図7及び図8に示したように構成される。これらの図から明らかなように、出力軸42aには回転楕円板46が一体回転するように連結されており、この回転楕円板46の外周部には軸受部材47が設けられている。この軸受部材47も回転楕円板46と相似形の楕円形状となっている。そして、軸受部材47には可撓環状帯体48が嵌合して設けられている。そして、この可撓環状帯体48の外周面には、微小なピッチ間隔をもってスプライン48aが設けられている。可撓環状帯体48のスプライン48aは従動側リング部材49の内周面にスプライン49aが形成されている。ここで、従動側リング部材49は金属等の硬質リングから構成されており、その内周面に設けたスプライン49aの数は、例えば可撓環状帯体48の外周面に設けたスプライン48aの数より2個多くなっている。
従動側リング部材49は円環状の部材から構成されており、その外周面はモータケーシング43の内周面に対して内側軸受50を介して相対回転可能に装着されている。また、従動側リング部材49の上端部は回転体44にも連結されているサポートベース24に固定的に連結されている。従って、モータ42を駆動すると、ハーモニックドライブ機構の従動側を構成する従動側リング部材49が回転し、この従動側リング部材49の回転と共に回転体44も回転してワークホルダ21のサポートベース24に回転力が伝達されて、ワークホルダ21がθ方向に変位する。
ここで、図9に基づいてハーモニックドライブ機構の作動について説明する。モータ42を駆動すると、その出力軸42aに連結した回転楕円板46が回転することになる。回転楕円板46の外周部を囲繞するように設けた可撓環状帯体48と回転楕円板46との間には軸受部材45が設けられており、また可撓環状帯体48は従動側リング部材49とスプライン結合しているので、回転楕円板46に追従して可撓環状帯体48が回転することはない。ここで、図9(a)に示したように、回転楕円板46の長軸の両端の2つの部位G,Gで、可撓環状帯体48のスプライン48aが従動側リング部材49のスプライン49aと係合するが、回転楕円板46が90度回転すると、図9(b)に示したように、両スプライン48a,49a間の係合部の位置も90度回転方向に変化して、G',G'となる。例えば、可撓環状帯体48のスプライン48aの歯数を360とし、従動側リング部材49のスプライン49a歯数より2個少なくすると、回転楕円板46が1回転すると、これらの歯数の差分に相当する角度2度だけ従動側リング部材49が回転方向の前に向けて相対的に送られる。このように、従動側リング部材49はモータ42の回転に対して減速回転することになる。そして、駆動側と従動側とのスプラインの係合により従動側を減速回転させるものであるから、バックラッシュがなく、回転伝達は極めて正確に行われることになり、回転停止時における角度制御は極めて高精度に行われる。
ここで、回転伝達手段としては、前述したハーモニックドライブ機構に代えて、図10に示したように、遊星歯車機構を用いることができる。即ち、従動側リング部材49に代えて、リングギア60となし、また回転楕円板46に代えて、モータ42の出力軸42aに太陽歯車61を連結して設けることができる。リングギア60と太陽歯車61との間に複数(図示したものにあっては3個)の遊星歯車62を噛合させる。この場合には、遊星歯車62と、リングギア60及び太陽歯車61との間の噛合部のバックラッシュを最小限に抑制する。
ところで、ワークハンドリング装置20におけるワークホルダ21を構成する各アーム22には、その表面に複数の吸着パッド51が装着されている。図11に示したように、吸着パッド51は弾性部材から構成されて、複数の吸着孔51aが設けられている。そして、各アーム22には各々1または複数の負圧吸引室52が形成されており、吸着パッド51の吸着孔51aはこの負圧吸引室52と連通している。そして、各アーム22に形成した負圧吸引室52には負圧吸引力を作用させている。このために、各負圧吸引室52には負圧配管53が接続されている。この負圧配管53は接続配管を構成するものであり、その材質としては可撓性を有するチューブ材で構成されている。
負圧配管53に負圧吸引力を作用させるための経路としては、図7に示されているように、負圧源からの負圧管が接続される接続口70がモータケーシング43に接続されており、モータケーシング43にはこの接続口70からの負圧流路71が接続されている。この負圧流路71の他端はモータケーシング43の内周面において、従動側リング部材49の装着位置より下方位置に開口している。そして、この従動側リング部材49の上端部には蓋体72が装着されて、モータケーシング43及びモータ42、さらに蓋体72によって密閉された負圧チャンバ73が形成されており、回転伝達手段を構成する回転楕円板46,可撓環状帯体48及び従動側リング部材49はこの負圧チャンバ73の内部に配置されている。
ここで、負圧チャンバを構成する壁面のうち、モータケーシング43及びモータ42は固定側の部材であり、従動側リング部材49及び蓋体72は、この従動側リング部材49に連結されている回転体44及びワークホルダ21と共に回転側の部材である。従って、固定側部材と回転側部材との間の摺動面部に弾性シール部材が介装されている。従動側リング部材49とモータハウジング43との間には、内側軸受50が介装されているが、この内側軸受50の上部位置にオイルシール等からなる弾性を有するシール部材74を介装させている。なお、負圧チャンバ73を密閉するために、シール部材74以外にも、図示は省略するが、それぞれの部材と部材との間にも他のシール部材が介装されるが、シール部材74は摺動部においてシール機能を発揮するのに対して、他のシール部材は相互に摺動しないガスケットを構成するものである。
また、回転側の部材である従動側リング部材49は内側軸受50により支持されており、回転時に軸がぶれたりすることがなく安定して回転することから、この部位にシール部材74を設けることによって、安定したシール機能を発揮する。従って、このシール部材74は1箇所設けるだけで、負圧チャンバ73の内部が密閉される。また、この負圧チャンバ73の内部には、回転楕円板46等からなる回転伝達手段が設けられているが、例えば軸受部材45の隙間等により上下の空間が連通している。また、必要に応じて回転楕円板46に上下に貫通する透孔を1乃至複数個所設けることも可能であり、このために負圧チャンバ73には回転伝達手段が配置されているにも拘らず、全体が1つのチャンバを構成している。
さらに、蓋体72には、好ましくはその回転中心位置において、負圧チャンバ73から負圧吸引力を外部に取り出すための引き出し管80が接続されている。そして、図12に示したように、この引き出し管80には開閉弁81が設けられており、この開閉弁81の流出側には、左右への分岐路81a,81aが接続されている。さらに、これら分岐路81aの他端は3方口分配管82の流入側に接続されており、この3方口分配管82の流出側である2方口部分には、それぞれコック83が装着されている。そして、分配された部分における一方は、アーム22のいずれかの負圧吸引室52に向かう負圧配管53が接続され、また他方は連通配管84が引き出されて、次の3方口分配管82に接続される。以上のようにして、順次配管が連結されて、全てのアーム22に設けた全ての負圧吸引室52が負圧チャンバ73と接続されることになる。ここで、既に説明したように、接続配管である負圧配管53はチューブ材で構成されているが、連通配管84もチューブ材で構成されている。
以上のように構成されるワークハンドリング装置20を用いることによって、薄板からなるワーク1に対して、実質的にダメージを生じさせることなく、搬入ステージ10を含む各処理ステージ10〜16に順次搬送されて、ワーク1に対してそれぞれ所定の処理が施されて、樹脂塗布ステージ16を搬出ステージとして、次の工程に送り出される。ワーク1が各処理ステージに移行するに当っては、最下流側の処理ステージから順次ワーク1が搬送される。即ち、搬出ステージとして機能する樹脂塗布ステージ16から全ての処理が完了したワーク1を搬出した後に、この樹脂塗布ステージ16にPCB接続ステージ15からのワーク1が搬送され、次いで検査ステージ14にあるワーク1がPCB接続ステージ15に移行するというように、順繰りにワーク1の搬送が行われる。
ここで、ワークハンドリング装置20により、ワーク1の処理ステージ間での移載と、各処理ステージにワーク1を搬入して、所定の位置に位置決めして処理が行われる。ワーク1を移載するに当っては、受け渡し側のワークハンドリング装置20におけるワークホルダ21を上部に位置させ、両ワークハンドリング装置20における各々のアーム22を入り組ませることができる位置に配置する。次いで、受け渡し側のワークハンドリング装置20のワークホルダ21を下降させるか、受け取り側のワークハンドリング装置20のワークホルダ21を上昇させて、それらの各アーム22が同じ高さ位置になったときに、受け取り側を真空吸着させ、受け渡し側では真空吸着を解除する。そして、受け取り側と受け渡し側とで上下に相対移動させることによって、ワーク1が受け渡される。このときには、ワーク1は複数本のアーム22により常時支持した状態に保持しているので、移載時におけるワーク1を無理に変形させる力が作用することがなく、安全に、しかもダメージを生じることなくワーク1の移載が行われる。
ワークハンドリング装置20のワークホルダ21に保持されているワーク1は各処理ステージに搬入して、各種の処理が行われ、若しくは部品や部材の搭載が行われることになる。これらの処理を正確に行うには、ワーク1は正確に位置決めされなければならない。XY軸方向の位置調整は、モータ28,32によりボールねじ29,33を回転駆動し、それぞれY軸テーブル26及びX軸テーブル30を駆動することにより行われる。このときには、Y軸テーブル26はY軸ガイド27に、またX軸テーブル30はX軸ガイド31と摺動するが、それらの摺動部の摩擦抵抗を最小限に抑制することによって、これらXY軸方向の位置調整は高精度に行うことができる。
θ方向の位置調整は回転駆動機構41を用いて行われる。即ち、モータ42を回転駆動することによって、回転伝達手段を介して回転体44を回転駆動するが、この回転駆動はワーク1を受け取る際と、受け渡す際とでは180度回転させる。また受け取り位置から処理ステージに搬入する際には、方向転換を含めて、90度,180度または270度というようにインデックス回転が行われる。また、ワーク1の移載時及び処理ステージでの位置微調整時にも回転駆動機構41が駆動される。
ここで、ワーク1は処理ステージにおいては、極めて正確に位置決めされなければならない。また、ワーク1の移載時にも、高精度に位置決めしなければ、処理ステージ10〜16まで移載される間にずれが累積することになり、処理ステージが進むに応じて、極めて大きな位置ずれが生じることになり、途中で位置補正を行うのは実質的に不可能である。さらに、各処理ステージ10〜16において、ワーク1における処理対象となる部位は、ワークホルダ21の回転中心から最も遠い辺であり、この辺が曲っていたり、位置ずれが生じていたりすると、処理が正確に行われない。特に、ワーク1のサイズが大型化すると、回転角が極僅かでもずれると、処理の対象となる辺に大きな位置ずれが生じ。
以上のことから、ワークホルダ21におけるθ方向の位置調整機構は極めて高精度に保つようにしている。回転伝達手段をハーモニックドライブ機構で構成し、スプライン48a,49a間の係合というように、バックラッシュが殆ど生じない機構を用いるか、遊星歯車機構であっても、バックラッシュを最小限に抑制したものを用いることによって、実質的に回転伝達手段による回転角度のずれが生じることはない。
ワークホルダ21の各アーム22には吸着パッド51が設けられており、これら各吸着パッド51には負圧吸引力を作用させなければならない。このために負圧吸引力が作用する負圧経路が必要となり、この負圧経路の他端は固定側に設けられる。従って、負圧経路における固定側の部材と回転側の部材との間の摺動部にシール部材を介装しなければならない。負圧経路が複雑なものであると、摺動部が複数個所にわたることになり、また高速で回転する部位では、シール部材も大型のものを使用しなければならなくなる。そして、回転側の部材が回転しているときには、シール部材の摺動部に作用する反力で、このシール部材が弾性変形した状態で停止することがあり、このために停止精度が悪くなる。
しかしながら、回転駆動機構41における回転側の部材と固定側の部材との間に、密閉された負圧チャンバ73が設けられ、回転伝達手段における減速された側である従動側リング部材49と固定側のモータケーシング43との間において、内側軸受50を設けた部位の直近上部位置において1箇所のみ摺動部シール部材74が介装されて、負圧チャンバ73を密閉している。従って、負圧チャンバ73に高い負圧吸引力を作用させていても、摺動抵抗を最小限に抑制できる。その結果、モータ42を駆動して、ワークホルダ21に連結した回転体44を駆動したとしても、摺動部のシール部材74に摺動抵抗による弾性変形が最小限に抑制されるので、シール部材74に反力が作用し、弾性が蓄積された状態で停止することはない。従って、回転体44の停止時における停止精度は極めて高くなり、ワークホルダ21が位置ずれすることなく、正確に所定の角度位置で停止する。
しかも、負圧チャンバ73の一部の壁面を構成する蓋体72において、モータ42の回転中心位置に引き出し配管80を接続して、この引き出し配管80から3方口分配管82を経て、連通配管84及び負圧配管53により負圧吸引室52と連通している。これによって、負圧吸引室52に装着されている吸着パッド51の吸着孔51aにワーク1に対する負圧吸引力が作用することになる。ここで、引き出し配管80が装着されている蓋体72からアーム22までの負圧経路は全て回転側の部材であるから、ワークホルダ21が回転する際においても、負圧配管53や連通配管84をチューブ材で形成しても、それらに曲げ力や捩じり力、さらには引っ張り力等といった外力が作用することがない。従って、これらのチューブ材における耐久性が極めて高くなる。
ところで、各3方口分配管82にはコック83が設けられているので、ワークホルダ21における全アーム22の全部の吸着パッド51によりワーク1を吸着させなければならないものではなく、1乃至複数の吸着パッド毎に独立して真空吸着力を作用させることができる。従って、吸着力を作用させる吸着パッド51の位置を限定することによって、任意の大きさのワークを保持することができる。例えば、図3に点線で示したように、小型のワーク1Sを処理する場合には、それが当接するアーム22のうちの限られた吸着パッド51だけに負圧吸引力を作用させ、それら以外の吸着パッド51には負圧を作用させない場合には、負圧を作用させない部位の負圧吸引室52に接続した負圧配管53の3方口分岐管82に設けたコック83を閉鎖すれば良い。