以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における半導体装置の構成を示す断面図である。図1を参照して、本実施の形態の半導体装置はワイドギャップ半導体層1を備えている。ワイドギャップ半導体層1には、素子としてショットキーバリアダイオード(SBD)60が形成されている。SBD60は第1電極としてのショットキー電極4と、第2電極としてのカソード電極6とを主に有している。
ワイドギャップ半導体層1は、SiC、GaN、AlN、またはダイヤモンドなどよりなっている。ワイドギャップ半導体層1は、欠陥層1aと、欠陥層1aの上に形成されたn+半導体層1bと、n+半導体層1bの上に形成されたn-ドリフト層1cとを有している。欠陥層1aは、n+半導体層1bおよびn-ドリフト層1cの欠陥濃度に比べて高い欠陥濃度を有しており、また導電性を有している。n+半導体層1bの不純物濃度は、n-ドリフト層1cの不純物濃度に比べて高くなっている。
ワイドギャップ半導体層1の一方の主面(図中上側)には絶縁膜2および3が形成されている。絶縁膜2および3はワイドギャップ半導体層1に達する開口部11を有しており、開口部11の側面および底面と、絶縁膜3の上面とに沿ってショットキー電極4が形成されている。ショットキー電極4は開口部11の底面においてワイドギャップ半導体層1のn-ドリフト層1cとショットキー接触している。ショットキー電極4上にはAl(アルミニウム)電極5が形成されている。ショットキー電極4は、たとえばW(タングステン)、Ti(チタン)、Ni(ニッケル)、またはMo(モリブデン)などよりなっている。
ワイドギャップ半導体層1の他方の主面(図中下側)にはカソード電極6が形成されている。カソード電極6と欠陥層1aとはオーミック接触している。
なお、本実施の形態における半導体装置の具体的寸法はたとえば以下の通りである。欠陥層1aの厚さは50μm以上であり、n+半導体層1bの厚さは2〜5μmであり、n-ドリフト層の厚さは約10μmである。絶縁膜2の厚さは0.1μmであり、絶縁膜3の厚さは約0.5μmである。ショットキー電極4の厚さは約0.1μmであり、Al電極5の厚さは2〜5μmである。また、n+半導体層1bの不純物濃度は1×1019/cm3であり、ドリフト層1cの不純物濃度は1×1016/cm3である。
SBD60は、ショットキー電極4とカソード電極6との電位差を制御することにより、ワイドギャップ半導体層1を介してショットキー電極4とカソード電極6との間に電流(図中矢印A1の方向の電流)を流す状態(オンの状態)と、ショットキー電極4との境界面からn-ドリフト層1c内へ空乏層を延ばすことによってショットキー電極4とカソード電極6との間の電流経路を遮断する状態(オフの状態)とを制御することができる。
続いて、本実施の形態における半導体装置の製造方法について、図2〜図9を用いて説明する。
始めに図2を参照して、たとえばSiよりなる基板10を準備する。そして、たとえば3C−SiCよりなるワイドギャップ半導体層1を基板10上にエピタキシャル成長させる。ワイドギャップ半導体層1は基板10とは異なる材料よりなっていればよい。ワイドギャップ半導体層1の成長は、たとえばLP−CVD(Low Pressure-Chemical Vapor Deposition)法によって行なわれ、原料ガスとしてSiH4とC3H8とを用い、不純物ガスとして窒素ガスを用いて行なわれる。ワイドギャップ半導体層1のエピタキシャル成長の初期には欠陥濃度の高い欠陥層1aが50μm程度成長し、その後、欠陥濃度の低いn+半導体層1bおよびn-ドリフト層1cが成長する。エピタキシャル成長の際には、始めは不純物ガスの濃度を高くし、所望の厚さのn+半導体層1bが形成された後で不純物ガスの濃度を低くする。これにより、欠陥層1aおよびn+半導体層1bの不純物濃度がたとえば1×1019/cm3の高濃度とされ、n-ドリフト層1cの不純物濃度がたとえば1×1016/cm3の低濃度とされる。
次に図3を参照して、ワイドギャップ半導体層1の一方の主面にドライ酸素(乾燥酸素)を供給して1200℃以下の温度で酸化することによって、たとえば厚さ約0.1μmのSiO2よりなる絶縁膜(熱酸化膜)2をワイドギャップ半導体層1の一方の主面上に形成する。そして、たとえばCVD法を用いて、厚さ約0.5μmのSiO2よりなる絶縁膜3を絶縁膜2上に形成する。
次に図4を参照して、絶縁膜3上に所定パターンのレジスト(図示なし)を形成し、このレジストをマスクとして、フッ酸系のエッチング液を用いて絶縁膜3および2をウエットエッチングする。これにより開口部11が形成され、開口部11の底部にはワイドギャップ半導体層1の一方の主面が露出する。その後レジストを除去する。
次に図5を参照して、続いて、たとえば電子ビーム蒸着法を用いて、厚さ約0.1μmのショットキー電極4を形成する。ショットキー電極4は開口部11の側面および底面と、絶縁膜3の上面とに沿って形成される。続いて、たとえば電子ビーム蒸着法などを用いて、ショットキー電極4上に厚さ3〜5μmのAl電極5を形成する。以上の工程により、ワイドギャップ半導体層1にカソード電極6(図1)以外のSBD60が形成される。
次に図6を参照して、ワニスなどの接着剤12を用いてAl電極5と支持台13とを貼り合せる。これにより、ワイドギャップ半導体層1は支持台13に固定される。続いて、ワイドギャップ半導体層1から基板10を選択的に除去する。具体的には、基板10をエッチングすることができ、かつワイドギャップ半導体層1をエッチングしないようなエッチング液を用いて、基板10を選択的にウエットエッチングする。基板10を除去した後のワイドギャップ半導体層1を図7に示す。図7においては、ワイドギャップ半導体層1の他方の主面が露出されている。
ここで、たとえば基板10がSiよりなっている場合、エッチング液としては、たとえば(フッ化水素+硝酸+酢酸または水)よりなる混合液や、EDP(エチルジアミン+プロカテコール+水)や、(水酸化カリウム+イソプロピルアルコール+水)の混合液や、ハイドラジン+イソプロピルアルコール+水)よりなる混合液などが用いられる。加えて、水酸化ナトリウムは水酸化カルシウムなどの塩基を含むエッチング液を用いることもできる。
なお、ワイドギャップ半導体層1から基板10を選択的に除去する方法は上記以外でもよく、たとえばドライエッチングにより基板10を選択的にエッチングしてもよい。
次に図8を参照して、たとえば蒸着法を用いて、ワイドギャップ半導体層1の他方の主面にカソード電極6を形成する。カソード電極6は、たとえば厚さ0.1μmのTiと、厚さ1μmのAlと、厚さ0.5μmのNiとを積層して形成される。また、たとえば厚さ0.1μmのMgと、厚さ1μmのAlと、厚さ0.5μmのNiとを積層して形成されてもよい。最下層としてTiやMgを形成することにより、ワイドギャップ半導体層1とカソード電極6とがオーミック接触する。また最上層としてNiを形成することにより、カソード電極6のはんだ濡れ性が向上する。続いて、線B1に沿って半導体装置をダイシングし、個々のSBD60に分離する。
次に図9を参照して、接着剤12をウエットエッチングし、支持台13および接着剤12を除去する。ここで、個々のSBD60に分離した後で接着剤12をウエットエッチングすることにより、側面からも接着剤12にエッチング液が侵入するので、接着剤12がエッチングされやすくなる。以上の工程により本実施の形態の半導体装置が完成する。
本実施の形態における半導体装置は、ワイドギャップ半導体層1と、ワイドギャップ半導体層1に形成されたSBD60とを備えている。SBD60はワイドギャップ半導体層1の一方の主面に接するように形成されたショットキー電極4と、ワイドギャップ半導体層1の他方の主面に接するように形成されたカソード電極6とを有しており、かつショットキー電極4とカソード電極6との間に流れる電流を制御可能である。
本実施の形態における半導体装置によれば、ショットキー電極4からカソード電極6へ流れる電流A1が基板を通らないので、半導体装置における基板の抵抗成分をゼロにすることができる。これにより、SBD60のオン抵抗を小さくすることができ、低損失のSBDを得ることができる。
本実施の形態における半導体装置の製造方法は、基板10とは異なる材料よりなるワイドギャップ半導体層1を基板10上にエピタキシャル成長させる工程と、ワイドギャップ半導体層1にSBD60を形成する素子工程と、ワイドギャップ半導体層1から基板10を選択的に除去する除去工程とを備えている。
本実施の形態における半導体装置の製造方法によれば、ワイドギャップ半導体層1をエピタキシャル成長させた後でワイドギャップ半導体層1から基板10を除去するので、半導体装置における基板の抵抗成分をゼロにすることができる。これにより、SBD60のオン抵抗を小さくすることができ、低損失のSBDを得ることができる。また、ワイドギャップ半導体層1と基板10とが互いに異なる材料よりなっているので、ワイドギャップ半導体層1から基板10を選択的に除去しやすくなる。
また、基板10がSi、サファイアまたはGaAsよりなっているので、ワイドギャップ半導体層1をエピタキシャル成長させやすくなる。
また、SBD60を作製する際に、ワイドギャップ半導体層1の一方の主面にショットキー電極4を形成し、ワイドギャップ半導体層1から基板10を除去した後に、ワイドギャップ半導体層1の他方の主面にカソード電極6を形成するので、ショットキー電極4からカソード電極6に流れる電流を大きくすることができ、SBD60を低損失とすることができる。
さらに、基板10をエッチングすることにより基板10を容易に除去することができる。
(実施の形態2)
図10は、本発明の実施の形態2における半導体装置の構成を示す断面図である。図10を参照して、本実施の形態の半導体装置において、ワイドギャップ半導体層1には素子としてPINダイオード61が形成されている。PINダイオード61は第1電極としてのオーミック電極22と、第2電極としてのカソード電極6とを主に有している。ワイドギャップ半導体層1はp型半導体層21をさらに有している。p型半導体層21はn-ドリフト層1c上に形成されている。p型半導体層21の厚さは約1μmであり、不純物濃度は1×1018/cm3である。オーミック電極22はたとえばTiよりなっている。
なお、これ以外の半導体装置の構造は、図1に示す実施の形態1の半導体装置の構造とほぼ同様であるため、同一の部分には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
PINダイオード61は、オーミック電極22とカソード電極6との電位差を制御することにより、ワイドギャップ半導体層1を介してオーミック電極22とカソード電極6との間に電流(図中矢印A2の方向の電流)を流す状態(オンの状態)と、p型半導体層21との境界面からn-ドリフト層1c内へ空乏層を延ばすことによってオーミック電極22とカソード電極6との間の電流経路を遮断する状態(オフの状態)とを制御することができる。
続いて、本実施の形態における半導体装置の製造方法について、図11および図12を用いて説明する。
始めに、図2に示す実施の形態1の製造工程と同様の工程を経て、欠陥層1a、n+半導体層1b、およびn-ドリフト層1cの各々を基板10上にエピタキシャル成長させる。続いて、図11に示すように、n-ドリフト層1c上にp型半導体層21をエピタキシャル成長させる。p型半導体層21の成長は、たとえばLP−CVD法によって行なわれ、原料ガスとしてSiH4とC3H8とを用い、不純物ガスとしてAlガスを用いて行なわれる。これにより、ワイドギャップ半導体層1が基板10上に形成される。
ここで、ワイドギャップ半導体層1に不純物を注入することによりp型半導体層21を形成することも考えられる。しかし、特にワイドギャップ半導体がSiCよりなる場合、注入されたp型の不純物を活性化するためには、ワイドギャップ半導体層1のアニール温度を1800℃以上にすることが必要である。しかし、基板10がSiなどよりなっている場合には、ワイドギャップ半導体層1のアニール温度が基板10の融解温度を超えてしまうため、p型不純物を活性化することができない。そこで、本実施の形態では上述のように、エピタキシャル成長によりp型半導体層21が形成されている。
次に図4および図5に示す実施の形態1の製造工程と同様の製造工程を経て、図12に示すように、絶縁膜2および3と、オーミック電極22と、Al電極5とが形成される。但し、オーミック電極22を形成する際には、p型半導体層21とオーミック接触するような材料が選択される。以上の工程により、ワイドギャップ半導体層1にドレイン電極6(図10)以外のPINダイオード61が形成される。
その後、図6〜図9に示す実施の形態1の製造工程とほぼ同様の工程を経て、図10に示す本実施の形態における半導体装置が完成する。具体的には、ワイドギャップ半導体層1を支持板に固定し、ワイドギャップ半導体層1から基板10を除去する。そして、ワイドギャップ半導体層1の他方の主面にドレイン電極6を形成し、線B2(図12)に沿って半導体装置をダイシングして個々のPINダイオード61に分離し、支持板を除去する。
本実施の形態における半導体装置によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。すなわち、オーミック電極22からカソード電極6へ流れる電流A2が基板を通らないので、半導体装置における基板の抵抗成分をゼロにすることができる。これにより、PINダイオード61のオン抵抗を小さくすることができ、低損失のPINダイオードを得ることができる。
(実施の形態3)
図13は、本発明の実施の形態3における半導体装置の構成を示す断面図である。図13を参照して、本実施の形態の半導体装置におけるワイドギャップ半導体層1には、素子としてMOSFET62が形成されている。MOSFET62はゲート電極33と、第1電極としてのソース電極35と、第2電極としてのドレイン電極(オーミック電極)6とを主に有している。
ワイドギャップ半導体層1は、p型半導体層31(Pウェル)と、n+半導体層1dと、2つのp+不純物領域32とをさらに有している。p型半導体層31はn-ドリフト層1c上に形成されており、n+半導体層1dはp型半導体層31上に形成されている。2つのp+不純物領域32の各々は、ワイドギャップ半導体層1の端部において、ワイドギャップ半導体層1の一方の主面からp型半導体層31に達するように形成されている。
また、ワイドギャップ半導体層1の中央部にはn-ドリフト層1cに達するようにp型半導体層31およびn+半導体層1dを掘り込んだ溝39cが形成されている。溝39cの側面および底面と、ワイドギャップ半導体層1の上面の一部とに沿って絶縁膜34が形成されており、溝39c内にゲート電極33が埋め込まれている。絶縁膜34およびゲート電極33上には絶縁膜36が形成されている。ワイドギャップ半導体層1の一方の主面と、絶縁膜36の上面および側面に沿ってソース電極35が形成されており、ソース電極35の上にはAl電極5が形成されている。
なお、本実施の形態における半導体装置の具体的寸法はたとえば以下の通りである。p型半導体層31の厚さは約1μmであり、不純物濃度は1×1016/cm3である。n+半導体層1dの厚さは約0.3μmであり、不純物濃度は1×1019/cm3である。p+不純物領域32の不純物濃度は3×1019/cm3である。絶縁膜36の厚さは約0.5μmであり、ソース電極35の厚さは約0.1μmである。
なお、これ以外の半導体装置の構造は、図1に示す実施の形態1の半導体装置の構造とほぼ同様であるため、同一の部分には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
MOSFET62においては、溝39cの側壁に存在するゲート電極33と絶縁膜34を介して対向するp型半導体層がチャネル領域となる。チャネル領域は絶縁膜34との境界面に形成される。MOSFET62は、ソース電極35とドレイン電極6との間に電位差を与えた状態でゲート電極33に印加する電圧を制御することにより、チャネル領域に反転層(電気的導電層)を形成してソース電極35とドレイン電極6との間に電流(図中矢印A3の方向の電流)を流す状態と、チャネル領域に反転層を形成せずに電流経路を遮断する状態(オフの状態)とを制御することができる。
続いて、本実施の形態における半導体装置の製造方法について、図14〜図21を用いて説明する。
始めに、図2に示す実施の形態1の製造工程と同様の工程を経て、欠陥層1a、n+半導体層1b、およびn-ドリフト層1cの各々を基板10上にエピタキシャル成長させる。続いて、図14に示すように、n-ドリフト層1c上にp型半導体層31をエピタキシャル成長させ、p型半導体層31上にn+半導体層1dをエピタキシャル成長させる。p型半導体層31の成長は不純物ガスとしてTMA(トリメチルアルミニウム)を用いて行なわれ、n+半導体層1dの成長は不純物ガスとして窒素ガスを用いて行なわれる。不純物ガスの濃度を制御することにより、p型半導体層31の不純物濃度がたとえば1×1016/cm3の濃度とされ、n+半導体層1dの不純物濃度がたとえば1×1019/cm3の濃度とされる。これにより、ワイドギャップ半導体層1が基板10上に形成される。特にp型半導体層31は、MOSFET62のチャネルとなる部分であるので、上述のようにエピタキシャル成長により形成され、欠陥をできるだけ少なくすることが重要である。
次に図15を参照して、ワイドギャップ半導体層1の一方の主面にドライ酸素を供給して1200℃以下の温度で酸化することによって、たとえば厚さ約50nmのSiO2よりなる絶縁膜(熱酸化膜)37aをワイドギャップ半導体層1の一方の主面上に形成する。そして、たとえばCVD法を用いて、厚さ約1μmのSiO2よりなる絶縁膜38aを絶縁膜37a上に形成する。続いて、絶縁膜37a上に所定パターンのレジスト(図示なし)を形成し、このレジストをマスクとして、CF4系のガスを用いたRIE(Reactive Ion Etching)によって絶縁膜38aおよび37aをドライエッチングする。これにより開口部39aが形成され、開口部39aの底部にはワイドギャップ半導体層1の一方の主面が露出する。その後レジストを除去する。
次に図15および図16を参照して、絶縁膜38aをマスクとしてたとえばAlなどの不純物を注入することにより、ワイドギャップ半導体層1の端部にp+不純物領域32を形成する。p+不純物領域32は、たとえばワイドギャップ半導体層1の温度を1000℃に加熱した状態で不純物を注入し、1300℃の温度で60分間アニールすることにより形成される。その後、フッ酸系のエッチング液を用いて絶縁膜37aおよび38aを除去する。
ここで、不純物を注入した後に行なうアニールは、結晶性の回復および不純物の活性化を目的とするものである。SiCのようなワイドギャップ半導体においては、1300℃でアニールしても、アニール温度が低いため、結晶性の回復および不純物の活性化が不十分である。しかし、p+不純物領域32はソース電極35(図13)とp型半導体層31とを同電位に保つために形成されるものであり、少なくともソース電極35(図13)とp型半導体層31とを電気的に接続する機能を有すればよいので、結晶性の回復および不純物の活性化が不十分であっても問題はない。
次に図17を参照して、ワイドギャップ半導体層1の一方の主面にドライ酸素を供給して1200℃以下の温度で酸化することによって、たとえば厚さ約0.1μmのSiO2よりなる絶縁膜(熱酸化膜)37bをワイドギャップ半導体層1の一方の主面上に形成する。そして、たとえばCVD法を用いて、厚さ約2μmのSiO2よりなる絶縁膜38bを絶縁膜37b上に形成する。続いて、絶縁膜38b上に所定パターンのレジスト39を形成し、このレジスト39をマスクとして、フッ酸系のエッチング液を用いて絶縁膜38bおよび37bをウエットエッチングする。これにより開口部39bが形成され、開口部39bの底部にはn+半導体層1dが露出する。
次に図17および図18を参照して、レジスト39をマスクとして、開口部39bの底部のワイドギャップ半導体層1をRIEによりエッチングする。これにより、たとえば深さ約2μmの溝39cがワイドギャップ半導体層1に形成される。溝39cの底部にはn-ドリフト層1cが露出する。その後、フッ酸系のエッチング液を用いてレジスト39、絶縁膜37bおよび38bを除去する。
次に図19を参照して、ワイドギャップ半導体層1の一方の主面および溝39c内にドライ酸素を供給して1200℃以下の温度で酸化することによって、たとえば厚さ50nmのSiO2よりなる絶縁膜(熱酸化膜)34を形成する。絶縁膜34は、溝39cの側面および底面と、ワイドギャップ半導体層1の一方の主面に沿って形成される。続いて、たとえばCVD法を用いて、溝39cを埋めるように絶縁膜34上にリンをドープしたポリシリコンを形成する。そして、ポリシリコン上に所定パターンのレジスト(図示なし)を形成し、このレジストをマスクとして、溝39c内以外の部分のポリシリコンをRIEによりエッチングする。これにより、溝39c内にポリシリコンよりなるゲート電極33が形成される。その後、レジストを除去する。
次に図19および図20を参照して、たとえばCVD法を用いて、厚さ約0.5μmのSiO2よりなる絶縁膜36を絶縁膜34上およびゲート電極33上に形成する。続いて、絶縁膜36上に所定パターンのレジスト(図示なし)を形成し、このレジストをマスクとして、絶縁膜36および34をRIEによりエッチングする。これにより、図20に示すように、溝39c付近にのみ絶縁膜36および34が形成される。その後、レジストを除去する。
次に図21を参照して、たとえば電子ビーム蒸着法を用いて、厚さ約0.1μmのTiよりなるオーミック電極35を形成する。オーミック電極35は絶縁膜36の上面および側面と、ワイドギャップ半導体層1の一方の主面とに沿って形成される。続いて、たとえば電子ビーム蒸着法などを用いて、オーミック電極35上に厚さ2〜5μmのAl電極5を形成する。以上の工程により、ワイドギャップ半導体層1にドレイン電極6(図13)以外のMOSFET62が形成される。
その後、図6〜図9に示す実施の形態1の製造工程とほぼ同様の工程を経て、図13に示す本実施の形態における半導体装置が完成する。具体的には、ワイドギャップ半導体層1を支持板に固定し、ワイドギャップ半導体層1から基板10を除去する。そして、ワイドギャップ半導体層1の他方の主面にドレイン電極6を形成し、線B3に沿って半導体装置をダイシングして個々のMOSFET62に分離し、支持板を除去する。
本実施の形態における半導体装置によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。すなわち、ドレイン電極6からソース電極35へ流れる電流A3が基板を通らないので、半導体装置における基板の抵抗成分をゼロにすることができる。これにより、MOSFET62のオン抵抗を小さくすることができ、低損失のMOSFETを得ることができる。
(実施の形態4)
図22は、本発明の実施の形態4における半導体装置の構成を示す断面図である。図22を参照して、本実施の形態の半導体装置におけるワイドギャップ半導体層1には、素子としてJFET(Junction Field Emission Transistor)63が形成されている。JFET63は、ゲート電極45と、第1電極としてのソース電極48と、第2電極としてのドレイン電極(オーミック電極)6とを主に有している。
ワイドギャップ半導体層1は、n型半導体層1eと、p型半導体層42と、p+不純物領域43と、2つのp型半導体層44と、n+半導体層41とをさらに有している。ワイドギャップ半導体層1の端部には溝49a、49bの各々が形成されている。p型半導体層42はn-ドリフト層1cの内部に形成されている。n-ドリフト層1c上にはn型半導体層1eが形成されている。2つのp型半導体層44の各々は溝49a、49bの各々の底面に形成されている。p+不純物領域43はp型半導体層42とp型半導体層42とを電気的に接続するようにワイドギャップ半導体層1の左端部におけるn型半導体層1eの内部に形成されている。溝49a,49bが形成されていない部分のn型半導体層1e上にはn+半導体層41が形成されている。
溝49bの一部の底面にはゲート電極45が形成されており、溝49bの側面および残りの底面と、n+半導体層41の上面の一部とに沿って、絶縁膜46が形成されている。ゲート電極45上および絶縁膜46上には絶縁膜47が形成されている。溝49aの側面および底面と、n+半導体層41の上面の一部と、絶縁膜47の側面および上面とに沿って、ソース電極48が形成されている。ソース電極48上にはAl電極5が形成されている。
なお、本実施の形態における半導体装置の具体的寸法はたとえば以下の通りである。p型半導体層42の厚さは約1.5μmであり、不純物濃度は6×1016/cm16である。p+不純物領域43の不純物濃度は1×1019/cm3である。n型半導体層1eの厚さは1.1μmである。n+半導体層41の厚さは0.3μmであり、不純物濃度は1×1019/cm3である。絶縁膜46の厚さは50nmであり、ゲート電極45およびソース電極48の厚さは0.1μmである。絶縁膜47の厚さは約0.5μmである。
なお、これ以外の半導体装置の構造は、図1に示す実施の形態1の半導体装置の構造とほぼ同様であるため、同一の部分には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
JFET63は、ソース電極35とドレイン電極6との間に電位差を与えた状態でゲート電極45に印加する電圧を制御することにより、ワイドギャップ半導体層1を介してソース電極48とドレイン電極6との間に電流(図中矢印A4の方向の電流)を流す状態(オンの状態)と、ゲート電極33の真下のp型半導体層44との境界面からn型半導体層1eおよびn-ドリフト層1c内へ空乏層を延ばすことによってソース電極48とドレイン電極6との間の電流経路を遮断する状態(オフの状態)とを制御することができる。
続いて、本実施の形態における半導体装置の製造方法について、図23〜図32を用いて説明する。
始めに、図2に示す実施の形態1の製造工程と同様の工程を経て、欠陥層1a、n+半導体層1b、およびn-ドリフト層1cの各々を基板10上にエピタキシャル成長させる。続いて、図23に示すように、n-ドリフト層1c上にp型半導体層42をエピタキシャル成長させる。p型半導体層42の成長は不純物ガスとしてTMAを用いて行なわれ、不純物ガスの濃度を制御することにより、p型半導体層42の不純物濃度がたとえば6×1016/cm3の濃度とされる。
次に図24を参照して、p型半導体層42の表面にドライ酸素を供給して1200℃以下の温度で酸化することによって、たとえば厚さ約50nmのSiO2よりなる絶縁膜(熱酸化膜)50aをp型半導体層42の表面上に形成する。そして、たとえばCVD法を用いて、厚さ約1.5μmのSiO2よりなる絶縁膜51aを絶縁膜50a上に形成する。続いて、絶縁膜51a上に所定パターンのレジスト(図示なし)を形成し、このレジストをマスクとして、CF4系のガスを用いたRIEによって絶縁膜51aおよび50aをドライエッチングする。これにより開口部52aが形成され、開口部52aの底部にはp型半導体層42の表面が露出する。その後レジストを除去する。続いて、絶縁膜51aをマスクとしてたとえば2×1017/cm3の不純物濃度のPなどの不純物をイオン注入する。これにより、p型半導体層42の一部(図中C1の部分)がn型化され、n-ドリフト層1cとなる。p型半導体層42のn型化は、たとえばp型半導体層42の温度を1000℃に加熱した状態で不純物を注入し、1300℃の温度で60分間アニールすることにより形成される。
ここで、N(窒素)の活性化温度よりもPの活性化温度の方が低いので、p型半導体層42のn型化の際にPを不純物として用いることにより、1300℃で十分に不純物を活性化することができる。
次に図24および図25を参照して、フッ酸系のエッチング液を用いて絶縁膜51aおよび50aを除去する。続いて、n型半導体層1e、p型半導体層44、n型半導体層1e、およびn+半導体層41の各々をこの順序でp型半導体層42上にエピタキシャル成長させる。p型半導体層44の成長は不純物ガスとしてTMAを用いて行なわれ、不純物ガスの濃度を制御することにより、p型半導体層44の不純物濃度はたとえば5×1017/cm3の濃度とされる。n型半導体層1e、n型半導体層1e、およびn+半導体層41の成長は不純物ガスとしてAlガスを用いて行なわれ、n型半導体層1eおよびn+半導体層41の成長は不純物ガスとして窒素ガスを用いて行なわれる。不純物ガスの濃度を制御することにより、図中下層側のn型半導体層1eの不純物濃度がたとえば1×1017/cm3の濃度とされ、p型半導体層44の不純物濃度がたとえば5×1017/cm3の濃度とされ、図中上層側のn型半導体層1eの不純物濃度がたとえば1×1017/cm3の濃度とされ、n+半導体層41の不純物濃度がたとえば1×1019/cm3の濃度とされる。
次に図26を参照して、n+半導体層41の表面にドライ酸素を供給して1200℃以下の温度で酸化することによって、たとえば厚さ約50nmのSiO2よりなる絶縁膜(熱酸化膜)50bをn+半導体層41の表面上に形成する。そして、たとえばCVD法を用いて、厚さ約2μmのSiO2よりなる絶縁膜51bを絶縁膜50b上に形成する。続いて、絶縁膜51b上に所定パターンのレジスト(図示なし)を形成し、このレジストをマスクとして、CF4系のガスを用いたRIEによって絶縁膜51bおよび50bをドライエッチングする。これにより開口部52bが形成され、開口部52bの底部にはn+半導体層41の表面が露出する。その後レジストを除去する。続いて、絶縁膜51bをマスクとしてたとえば1×1018/cm3の不純物濃度のP(リン)などの不純物をイオン注入する。これにより、p型半導体層44の一部(図中C2の部分)がn型化され、n型半導体層1eとなる。p型半導体層44のn型化は、たとえばp型半導体層44の温度を1000℃に加熱した状態で不純物を注入し、1300℃の温度で60分間アニールすることにより形成される。
ここで、Nの活性化温度よりもPの活性化温度の方が低いので、p型半導体層44のn型化の際にPを不純物として用いることにより、1300℃で十分に不純物を活性化することができる。
次に図26および図27を参照して、フッ酸系のエッチング液を用いて絶縁膜51bおよび50bを除去する。続いて、n+半導体層41上に所定パターンのレジスト(図示なし)を形成し、このレジストをマスクとして、n+半導体層41およびn型半導体層1eをRIEによりエッチングする。これにより、図27に示すように溝49a、49bが形成され、溝49a、49bの底部にはp型半導体層44が露出する。その後レジストを除去する。
次に図28を参照して、たとえばCVD法を用いて、厚さ約2μmのSiO2よりなる絶縁膜51cを形成する。絶縁膜51cは、溝49a、49bの側面および底面と、n+半導体層41の上面とに沿って形成される。続いて、絶縁膜51c上に所定パターンのレジスト(図示なし)を形成し、このレジストをマスクとして、CF4系のガスを用いたRIEによって絶縁膜51cをドライエッチングする。これにより、溝49aの底面の一部にp型半導体層44が露出する。
続いて、絶縁膜51cをマスクとしてたとえばAlなどの不純物をイオン注入することによりp+不純物領域43を形成する。p+不純物領域43は、p型半導体層42とp型半導体層44とを電気的に接続するように形成される。p+不純物領域43は、たとえばワイドギャップ半導体層1の温度を1000℃に加熱した状態で不純物を注入し、1300℃の温度で60分間アニールすることにより形成される。
次に図28および図29を参照して、フッ酸系のエッチング液を用いて絶縁膜51cを除去する。続いて、n+半導体層41およびp型半導体層44の表面にドライ酸素を供給して1200℃以下の温度で酸化することによって、たとえば厚さ約50nmのSiO2よりなる絶縁膜(熱酸化膜)46を形成する。絶縁膜46は、溝49a、49bの側面および底面と、n+半導体層41の上面とに沿って形成される。続いて、絶縁膜46上に所定パターンのレジスト52を形成し、このレジスト52をマスクとして、CF4系のガスを用いたRIEによって絶縁膜46をドライエッチングする。これにより、溝49bの底面の一部にp型半導体層44が露出する。
次に図29および図30を参照して、たとえば電子ビーム蒸着法を用いて、厚さ約0.1μmのTi膜を形成する。このTi膜はレジスト52上および露出したp型半導体層44上とに形成される。続いて、レジスト52を除去する。これにより、レジスト52上に形成されたTi膜はレジスト52とともに除去(リフトオフ)される。その結果、図30に示すように、p型半導体層44上にゲート電極45が形成される。
次に図31を参照して、たとえばCVD法を用いて、厚さ約0.5μmのSiO2よりなる絶縁膜47を絶縁膜46上およびゲート電極45上に形成する。続いて、絶縁膜47上に所定パターンのレジスト(図示なし)を形成し、このレジストをマスクとして、CF4系のガスを用いたRIEによって絶縁膜47および絶縁膜46をドライエッチングする。これにより、溝49aの側面および底面と、n+半導体層41上の一部とが露出される。
次に図32を参照して、たとえば電子ビーム蒸着法を用いて、厚さ約0.1μmのソース電極48を形成する。ソース電極48は、溝49aの側面および底面と、n+半導体層41の上面の一部と、絶縁膜47の側面および上面とに沿って形成される。続いて、たとえば電子ビーム蒸着法などを用いて、ソース電極48上に厚さ2〜5μmのAl電極5を形成する。以上の工程により、ワイドギャップ半導体層1にドレイン電極6(図22)以外のJFET63が形成される。
その後、図6〜図9に示す実施の形態1の製造工程とほぼ同様の工程を経て、図22に示す本実施の形態における半導体装置が完成する。具体的には、ワイドギャップ半導体層1を支持板に固定し、ワイドギャップ半導体層1から基板10を除去する。そして、ワイドギャップ半導体層1の他方の主面にドレイン電極6を形成し、線B4(図32)に沿って半導体装置をダイシングして個々のJFET63に分離し、支持板を除去する。
本実施の形態における半導体装置によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。すなわち、ドレイン電極6からソース電極48へ流れる電流A4が基板を通らないので、半導体装置における基板の抵抗成分をゼロにすることができる。これにより、JFET63のオン抵抗を小さくすることができ、低損失のJFETを得ることができる。
なお、本実施の形態ではエピタキシャル成長によりn型半導体層1eを形成することにより、所望の耐圧を得ている。
上記実施の形態1〜4においては、それぞれSBD、PINダイオード、MOEFET、およびJFETを素子としてワイドギャップ半導体層に形成した場合について説明した。しかし、本発明において形成される素子はこれらに限定されるものではなく、たとえばPNダイオードなどであってもよい。また、上記実施の形態1〜4においては、主に基板10としてSi、ワイドバンドギャップ半導体として3C−SiCを例に説明したが、基板10としてはサファイアやガリウム砒素などであってもよく、ワイドバンドギャップ半導体としては4H−SiC、6H−SiC、GaN、およびダイヤモンドなどであってもよい。
以上に開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものと意図される。