[第一の実施の形態]
以下、本願発明を適用した素子転写方法、素子転写用基板および表示装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお本願発明は、以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
図1に示すように、仮保持基板1上に仮接着層2を形成し、仮接着層2上に素子3を配列する。仮保持基板1は所要の剛性を有した基板であり、半導体基板、石英ガラス基板、プラスチック基板、金属基板などの種々の基板を用いることができる。仮接着層2は、仮保持基板1の取り扱い時に仮保持基板1上での素子3の位置が変位しない程度に、素子3を保持できる粘着力を有する材質により形成されている。また仮接着層2は、例えばシリコーン樹脂層によって形成されるが、シート状の接着剤層を貼り付けることや、接着剤層をスピンコート等により塗布することなどにより形成されてもよい。
素子3は、例えば窒化ガリウムなどの窒化物半導体系の材料により構成される発光素子ダイオードのパッケージであり、一例として活性層をpクラッド層とnクラッド層が挟んで構成されたダブルへテロ構造の発光ダイオード3a上に電極3bを形成して、電極3b上に樹脂層3cを形成した構造のものを示す。また、ここで示す素子3は略直方体状であり、素子3の活性層、クラッド層は活性層及びクラッド層を成長させるサファイア基板の主面に平行な面で延在され、選択成長などにより窒化ガリウム結晶層などを積層させることにより形成される。また、図では省略しているが、素子3の仮接着層2側にはpクラッド層との電気的接触を向上させるためのp電極が形成され、樹脂層3c上には電極3bと接続されたn電極が形成されて、それぞれ発光ダイオードのpクラッド層とnクラッド層に対する電気的接続が行えるようになっている。
また、素子3はダブルへテロ構造である必要も発光ダイオードである必要もなく、微細加工された電子回路素子であってもよい。素子3の形状としては略平板状である必要はなく、六角錐形状などの種々の形状に形成されてよいが、仮接着層2と密着して効率的に保持されるためには仮接着層2と接する面は平坦であることが望ましい。また、仮接着層2上での素子3同士の配置間隔を図中では一定間隔として示しているが、一定間隔である必要はない。
仮接着層2上での素子3の配列は平面内での縦横方向に複数配列されたマトリクス状であり、図中の紙面に垂直方向にも等間隔に複数の素子3が配列されている。素子3が表示素子として機能する発光ダイオードであるため、マトリクス状に配列された素子3を単純マトリクス駆動によって駆動することで画像の表示を行うことが可能となる。
次に図2(a)に示すように、粘着層5が形成された転写基板4を仮保持基板1と平行になるように位置決め装置6に保持して配置する。転写基板4は、半導体基板、石英ガラス基板、プラスチック基板、金属基板などの種々の基板を用いることができる。粘着層5は露光等の外的要因により硬化する可塑性の樹脂であり、感光性永久レジストフィルムをラミネートにより貼り付けることや、感光性永久レジスト樹脂をスピンコート等により塗布することなどにより形成される。粘着層5は素子3を例えば完全に粘着層5内に埋め込むことができる程度の厚さを有しているとする。また、後工程で粘着層5を除去せずに表示装置の絶縁層として利用するためには絶縁性の材料を用いることが望ましい。
位置決め装置6は転写基板4を保持して仮保持基板1と転写基板4との位置関係を調整する装置である。位置決め装置6は、転写基板4の向きを調整して仮保持基板1の素子3が配列される面と転写基板4の粘着層5が形成されている面とを平行にすること、転写基板4を平面内で水平方向に移動させて仮保持基板1上に配列されている素子3と粘着層5との位置関係を変更すること、および仮保持基板1と転写基板4の平行を確保したまま仮保持基板1と転写基板4との距離を調整することを行うことができ、以後の説明において転写基板4の動きについて説明をする際には位置決め装置6によって転写基板4の位置が変更されているものとする。
次に図2(b)に示すように、転写基板4と仮保持基板1とを平行なまま接近させ、仮接着層2上に保持されている素子3を粘着層5に部分的に埋め込まれる位置まで素子3を埋入し、仮接着層2から素子3を剥離して、素子3が粘着層5に埋入された状態で転写基板4上の位置を保持する。このとき、仮接着層2と粘着層5とが接触しない程度に転写基板4と仮保持基板1を接近させ、素子3の一部分が粘着層5に埋入されて、素子3が粘着層5から一部突出した状態で保持されるようにする。素子3が粘着層5に埋入されて保持されることにより、後工程において素子3を仮接着層2から剥離した際に、転写基板4に対する素子3の位置が固定されて素子3の配列を維持することができる。
この際、仮接着層2が素子3を保持する粘着力よりも、埋入された素子3を保持する粘着層5の粘着力が大きくなるように粘着層5と仮接着層2を構成する材質を選択しておくことで、仮保持基板1と転写基板4とを引き離すだけで素子3を仮接着層2から剥離し、粘着層5に素子3を埋入した状態で保持することが可能となる。また、加熱や光照射などの環境変化によって粘着力が変化するように仮接着層2または粘着層5を構成する材質を選択して、素子3を粘着層5に埋入した後に仮接着層2の粘着力よりも粘着層5の粘着力が大きくなるように環境を変化させるとしてもよい。
粘着層5を硬化する前に仮接着層2から素子3を剥離するため、仮保持基板1と転写基板4とを引き離す際に必要な力が小さく、素子3を仮接着層2から剥離する際に仮保持基板1や転写基板4を破損する可能性が低くなる。特に、大画面の表示装置を製造する際には転写基板4の面積を大きくする必要があるため、転写基板4や仮保持基板1の破損を低減できることにより、製造コストの低減を図ることも可能となる。また、粘着層5に素子3の一部を埋入した状態で仮保持基板1から素子3を剥離することで、仮接着層2と粘着層5とを直接接触させずに素子を仮保持基板1上から転写基板4上に転写でき、粘着層5の表面状態を乱すことなく転写を行なうことが出来る。
また、素子3を仮接着層2から粘着層5に転写する際に加熱処理を施す必要がないため、仮保持基板1および転写基板4が熱膨張せず、素子3の配列に乱れが生じることや、仮保持基板1および転写基板4に反りが発生する可能性もない。したがって、仮保持基板1を構成する材質として加熱により変形してしまう材料も選択することが可能となり、製造工程の自由度が向上する。
粘着層5に素子3を埋入することにより転写基板4に対する素子3の配列を保持するため、素子3の形状に依らずに粘着層5内に素子3を埋め込み、転写基板4上に実装することが可能となる。また、仮保持基板1と転写基板4とを接近させることで仮接着層2上に配列された複数の素子3を、一括して粘着層5に埋入することができるため、仮接着層2上での素子3同士の配置状態を維持したまま同時に複数の素子3を転写基板4に実装させることが可能である。
次に図3に示すように、素子3が部分的に粘着層5に埋入された状態で、粘着層5上にマスク7を施して露光を行い、素子3の周囲を選択的に硬化して硬化壁8を形成する。マスク7は素子3の周囲に相当する領域に開口部が形成され、素子3が埋入されている位置の遮光を行う部材である。素子3の周囲の粘着層5を選択的に硬化して硬化壁8とすることにより、硬化壁8によって粘着層5の硬化していない部分である未硬化領域が小さな領域(マイクロセル)に分割されることになる。このとき素子3が直接に接する粘着層5は硬化されず、硬化壁8によって分割された未硬化な粘着層5内に素子3が部分的に埋入されている状態である。
粘着層5に形成された硬化壁8の例を図4に示す。転写基板4上の平面内に縦横方向に格子状に硬化壁8が形成され、転写基板4上にマトリクス状に配列されている素子3の周囲は硬化されないため、未硬化な粘着層5がマイクロセルに分割されてマトリクス状に配列される。
図4に示したような格子状の硬化壁8を形成する方法として、マスクを用いて選択部分を露光するほかに、電子ビーム露光装置を用いて電子線で直接粘着層5を選択的に硬化させる直接描画方式を用いても良い。また、露光により軟化する材料を粘着層5に用いた場合には、一度粘着層5を硬化した後に選択的に露光を行って素子3の周囲を軟化するとしてもよい。
次に図5に示すように、粘着層5に部分的に埋入して粘着層5から部分的に突出した状態の素子3を、ローラー等で粘着層5に更に深く埋入し、素子3と粘着層5の表面が略同一面となるまで素子3を粘着層5に埋入して粘着層5に保持させる。素子3が保持されている粘着層5のうち素子3の周囲は硬化されていないために、ローラー等により素子3がマイクロセルに分割された粘着層5内に押圧することで、素子3の表面が粘着層5の表面と略同一面となる程度まで埋入を行うことができる。このとき、素子3を押圧するためにローラー等を転写基板4の一方から順次転がして圧力を粘着層5に加えていったとしても、粘着層5には部分的に露光した硬化壁8が形成されているために、ローラー等により加えられる圧力により粘着層5が押しつぶされて圧延されることがなく、転写基板4上での素子3の配列に乱れが生じる可能性が低減される。
次に図6に示すように、転写基板4側から粘着層5の露光を行って粘着層5を硬化させて硬化層9を形成する。このときの露光は粘着層5の全面にわたって行い、粘着層5の転写基板4から徐々に硬化を行って、硬化層9が粘着層5の転写基板4側に徐々に形成していき、素子3が埋入されている位置まで粘着層5の硬化が進行した段階で粘着層5の硬化を終える。これにより、粘着層5には格子状に硬化された硬化壁8と硬化層9が形成され、硬化壁8によって未硬化な粘着層5がマイクロセルに分割され、硬化層9によって素子3の転写基板4上の位置が固定された状態となる。このとき、素子3の周囲の粘着層5は表面が未硬化な状態であり、転写基板4側は露光されて硬化層9となった状態である。
転写基板4側から粘着層5の露光を行って、素子3が埋入された位置程度まで粘着層5の硬化をして硬化層9を形成した段階の素子3の周辺部分の状態を拡大して図7に示す。素子3は硬化壁8によって分割されたマイクロセル内の粘着層5に埋入され、転写基板4側に形成された硬化層9によって転写基板4上での位置が固定されている。また、素子3周囲の粘着層5表面は未硬化な状態である。未硬化な粘着層5は素子3が埋入されたことにより、素子3に引きずられて素子3の周囲が陥没してしまい、粘着層5表面と素子3表面とが連続した平面を形成せず、素子3の表面と粘着層5の表面とに段差が生じる不連続部10となっている。
そこで、素子3を粘着層5に埋入して粘着層5の転写基板4側に硬化層9を形成した後に、粘着層5を軟化させる加熱処理を施す。加熱処理によって未硬化な粘着層5の粘性が一時的に低下して粘着層5の流動性が増加し、素子3の周囲で陥没して不連続部10を形成している粘着層5が平坦化して、素子3の表面と粘着層5の表面との段差が減少して連続した平面に近くなる。このとき、素子3は硬化層9によって転写基板4上での位置が固定されているため、未硬化な粘着層5が軟化して流動性が増したとしても、素子3の配列に乱れが生じることはない。
素子3の表面と粘着層5の表面との段差が減少することにより、後工程において素子3および粘着層5上に電気配線等を形成する際に、不連続部10が存在する場合よりも良好に電気配線の形成を行うことができる。また、素子3と粘着層5との境界部分での段差が小さいことにより、素子3と粘着層5上に形成される電気配線に断線等の不具合が生じる可能性を低減することが可能となる。
次に図8に示すように、粘着層5全体を露光して未硬化な粘着層5を転写基板4全域にわたって硬化させる。このときの露光は未硬化な粘着層5を完全に硬化して素子3を固定するために行うので、転写基板4側からと粘着層5側から露光を行うことが望ましい。粘着層5の両面側から粘着層5の硬化を行うことで、粘着層5の未硬化領域を効率的に硬化させることが可能となる。
次に図9に示すように、硬化した粘着層5に素子3が埋入されて保持された状態で、粘着層5および素子3上に電気配線11を形成する。素子3と粘着層5が略同一面を構成しているので、粘着層5上にマスクを施して金属をスパッタする方法や、素子3および粘着層5上に金属層を形成した後にフォトリソグラフィーおよびエッチングを行う方法など、通常用いられる方法によって電気配線11を形成することが可能である。素子3の露出した面はpクラッド層上に形成されているp電極であるので、電気配線11は各素子のpクラッド層と接続された配線となる。また、電気配線11は図中の紙面と水平方向に延伸してストライプ状に形成され、マトリクス状に配されている素子3の走査配線として機能する。
次に図10に示すように、粘着層5の電気配線11が形成された面と接着剤層12とが接するように、接着剤層12が形成された支持基板13を粘着層5に貼り付ける。このとき、粘着層5上に形成された複数の電気配線11と接着剤層12とが接触するため、接着剤層12は絶縁性の材質を選択する。支持基板13の貼り付けをした後、図11に示すようにレーザーを照射することによって転写基板4を粘着層5から剥離する。転写基板4と粘着層5の剥離を行うことにより、図に示すように、支持基板13上に接着剤層12が形成され、接着剤層12上に硬化した粘着層5が積層され、接着剤層12上に形成された電気配線11と粘着層5に埋入された複数の素子3とが接着剤層12と粘着層5の間に保持された状態となる。このとき、素子3は硬化した粘着層5から露出していないため、素子3のn電極に対して電気配線の形成が行えないことになる。
そこで図12に示すように、硬化した粘着層5にドライエッチング等により素子3のnクラッド層まで到達する開口部であるコンタクトビア14を形成する。粘着層5にコンタクトビア14を開口することによって、素子3のnクラッド層が粘着層5から露出し、電気配線の形成を行うことが可能になる。
次に図13に示すように、コンタクトビア14に金属を充填すると共に粘着層5上に電気配線15を形成する。電気配線15の形成には、粘着層5上にマスクを施して金属をスパッタする方法や、素子3および粘着層5上に金属層を形成した後にフォトリソグラフィーおよびエッチングを行う方法など、通常用いられる方法により形成することが可能である。コンタクトビア14から露出した素子3の面は樹脂層3c上に形成されたn電極であるので、電気配線15は各素子のnクラッド層と接続された配線となる。また、電気配線15は図中の紙面に対して垂直方向に延伸してストライプ状に形成され、マトリクス状に配されている素子3の信号配線として機能する。
上述した方法で素子3の転写および電気配線11および電気配線15の形成を行うことで、支持基板13上に接着剤層12が形成され、接着剤層12上に硬化した粘着層5が積層され、接着剤層12上に形成された電気配線11と粘着層5に埋入された複数の素子3とが接着剤層12と粘着層5の間に保持され、粘着層5に形成されたコンタクトビア14が金属で充填されて、粘着層5上に電気配線15が形成された素子3の配列が得られる。支持基板13上にマトリクス状に配置された素子3は発光ダイオードであり、電気配線11は素子3のpクラッド層に接続されたストライプ状の走査配線であり、電気配線15は素子3のnクラッド層に接続されたストライプ状の信号配線であるため、図14に示された素子の配列により、単純マトリクス駆動により表示を行うことが可能な表示装置が得られる。
[第二の実施の形態]
次に、本願発明の他の実施の形態を以下に図面を用いて説明する。本実施の形態は、上述した第一の実施の形態のうち、素子を粘着層に埋入する工程を複数回繰り返して行う素子の転写方法であり、他の工程は第一の実施の形態と同様であるために説明を省略する。
図14は本実施の形態において素子23を粘着層25に埋入する工程を示した図である。素子23Rは赤色を発光する発光ダイオードである。仮保持基板上に形成された仮接着層上に素子23Rを配列し、粘着層25が形成された転写基板24を仮保持基板と平行になるように配置した後に、仮保持基板と転写基板24とを接近させて、粘着層25に素子23Rを部分的に埋入する。仮接着層から素子23Rを剥離して、粘着層25上にマスキングを施して選択部分を露光して硬化壁28を形成して、硬化壁28によって未硬化な粘着層25を小領域のマイクロセルに分割する。図14(a)に示すようにマイクロセル毎に素子23Rが粘着層35に部分的に埋入された状態で転写基板34上の位置を保持する。
その後図14(b)に示すように、緑色を発光する発光ダイオードである素子23Gを再度マイクロセル毎に埋入し、その後さらに、図14(c)青色を発光する発光ダイオードである素子23Bをマイクロセル毎に埋入する。
複数種類の素子を粘着層25のマイクロセル毎に埋入した後に、第一の実施の形態と同様にして、粘着層25に素子23R,23G,23Bが部分的に埋入されて保持された状態で、ローラー等によって素子23R,23G,23Bを更に深く粘着層25に埋入する。その後、転写基板24側から粘着層25の露光を行って粘着層25の転写基板24側に硬化層を形成し、硬化層によって素子23R,23G,23Bの転写基板24上での位置を固定する。硬化層の形成後に加熱処理により未硬化な粘着層25を軟化させて、素子23R,23G,23Bの表面と粘着層25の表面との境界の段差を軽減した後、粘着層25の全体を露光して粘着層25の硬化を行う。
その後、粘着層25および素子23上に電気配線を形成し、粘着層25の電気配線が形成された面と接着剤層とが接するように、接着剤層が形成された支持基板を粘着層25に貼り付ける。支持基板の貼り付けをした後、レーザーを照射することによって転写基板24を粘着層25から剥離する。
次に、硬化した粘着層25にドライエッチング等により素子23まで到達する開口部であるコンタクトビアを形成し、コンタクトビアに金属を充填すると共に粘着層25上に電気配線を形成する。素子23R,23G,23Bおよび電気配線の配列と電気的な接続構造により、赤・緑・青の発光を行う素子により一画素を構成する表示装置を得ることが可能である。また、赤・緑・青の発光を行う素子23をマイクロセル毎にひとつずつ配置する必要は無く、輝度が低い色の素子を複数配置することで画素ごとの発色を調整することもできる。
異なる特性を有する素子は、一般的に、同一の成長基板上に形成することが困難であり、そのために、異なる特性を有する素子を仮保持基板上に配列した後に粘着層25に素子23を埋入するのは困難である。粘着層25の転写基板24側を硬化して硬化層を形成する前に、仮保持基板上に配列した素子23の粘着層25への埋入を繰り返して行うことにより、異なる特性を有する素子23を転写基板24上の同一面内に配列することが容易になる。また、粘着層25に素子23Rが埋入された状態で異なる特性の素子23Gを粘着層25に埋入することで、仮保持基板上に配列された素子23Gと粘着層25に部分的に埋入されている素子23Rとの位置関係を調整する際に、素子23Gと素子23Rとが干渉して配列が乱れることを防止することができる。
また、素子23としては発光ダイオードの他にも、受光素子や駆動回路素子などを用いることが出来るため、表示素子と受光素子を同一面内に混在させて配列することや、表示素子と駆動回路素子とを同一面内に混在させて配列することが容易に行える。
表示素子と駆動回路素子とを一画素中に混在させて素子の転写を行い、電気配線の形成を行うことにより、駆動回路素子に対して電気信号を送出して、駆動回路素子によって画素毎の発光を制御するアクティブマトリクス駆動の表示素子を得ることもできる。
[第三の実施の形態]
次に、本願発明の他の実施の形態を以下に図面を用いて説明する。本実施の形態は、転写基板に粘着層を形成する前に転写基板上に電気配線を形成し、素子を粘着層に埋入することで電気配線と素子との電気的接続を確保する方法であり、他の工程は第一の実施の形態と同様であるために説明を省略する。
図15は本実施の形態の素子転写方法の工程を示す工程断面図である。図15(a)に示すように、転写基板34上にめっき等により電気配線36を形成しておく。電気配線36は紙面と垂直方向に延伸してストライプ状に配されている。次に図15(b)に示すように、電気配線36上に印刷技術を用いてバンプ37を形成する。バンプ37は電気伝導性を有すると共に可塑性を有する材質により形成される。
次に図15(c)に示すように、転写基板34上の電気配線36およびバンプ37が形成された面に粘着層35を形成する。粘着層35は露光等の外的要因により硬化する可塑性の樹脂であり、感光性永久レジストフィルムをラミネートにより貼り付けることや、感光性永久レジスト樹脂をスピンコート等により塗布することなどにより形成される。粘着層35は素子を粘着層35内に埋め込んだ際に、素子がバンプ37と接触することができる程度の厚さを有しているとする。また、後工程で粘着層35を除去せずに表示装置の絶縁層として利用するためには絶縁性の材料を用いることが望ましい。
次に図15(d)に示すように、仮接着層32が形成された仮保持基板31上に配置されている素子33aを粘着層35に埋入して、仮接着層32から素子33aを剥離し、素子33aが粘着層35に部分的に埋入されて保持された状態とする。このとき素子33aを埋入する転写基板34上での位置が、バンプ37が形成された位置と重なるように素子33aの埋入を行う。素子33aは転写基板34側と粘着層35から露出する側に電極が形成されており、二つの電極に電圧を印加することにより駆動されるものとする。次に図15(e)に示すように、素子33bおよび素子33cをバンプ37に対応する位置に部分的に埋入して保持させる。このとき、素子33a,33b,33dは異なる特性を有する素子としてもよく、また、図示したような略直方体形状ではなく六角錐形状などの形状であるとしてもよい。
次に図16(f)に示すように、素子33a,33b,33cをローラー等により粘着層35に押圧して、素子33a,33b,33cを粘着層35に深く埋入していき、素子33a,33b、33cの電極がバンプ37に埋入して電極とバンプ37との電気的接続を確保する。このときの素子33a,33b,33cは粘着層35からもう一方の電極が露出した状態となっている。その後、図16(g)に示すように粘着層35およびバンプ37の硬化を行い、図16(h)に示すように素子33a,33b,33cおよび粘着層35上にめっき等により電気配線38を形成する。電気配線38は紙面と水平方向に延伸してストライプ状に配されている。
図15および図16を用いて説明した素子転写方法によって、転写基板34上に電気配線36とバンプ37が形成され、バンプ37に対応する位置の粘着層35に素子33a,33b,33cが埋入され、粘着層35上に電気配線38が形成された表示装置が得られる。素子33a,33b,33cがマトリクス状に配列され、電気配線36と電気配線38とがそれぞれ縦方向と横方向にストライプ状に形成されて走査配線および信号配線として機能し、素子33a,33b,33cの電極と電気的に接続されていることにより、単純マトリクス駆動により表示を行うことが可能な表示装置が得られる。
粘着層35を転写基板34上に形成する前に電気配線36およびバンプ37を転写基板34上に形成しておき、素子33を粘着層35に埋入することで電気配線36と素子33との電気的接続を行うことにより、表示装置を製造するために必要な工程数を減少させることが可能となる。また、転写基板34を支持基板として用いることができるため、表示装置を得るために必要な部品数を減少させることも可能となる。
[第四の実施の形態]
次に、本願発明の他の実施の形態を以下に図面を用いて説明する。本実施の形態は、転写基板に粘着層を形成する前に転写基板上の素子を配置する位置に凸パターンを形成し、素子を粘着層に埋入して粘着層から転写基板を剥離することで粘着層に凹パターンを形成し、粘着層をエッチングすることで素子まで到達する開口部を形成する方法であり、他の工程は第一の実施の形態と同様であるために説明を省略する。
図17は本実施の形態の素子転写方法の工程を示す工程断面図である。図17(a)に示すように、転写基板44の粘着層45が形成されている面には、素子が埋入される位置に対応して凸形状の凸パターン46が形成されている。凸パターン46は紙面に垂直方向に延伸してストライプ状に形成されているとする。図17(b)に示すように、素子43a,43b,43cを凸パターン46に対応する位置の粘着層45に埋入し、粘着層45の露光を行って粘着層45を硬化した後に、粘着層45上に電気配線47を形成する。電気配線47は紙面と水平方向に延伸してストライプ状に配される。
次に図17(c)に示すように、接着剤層49が形成された支持基板48を粘着層45に接着して、粘着層45から転写基板44を剥離する。転写基板44を剥離した側の粘着層45には、凸パターン46に対応する位置に窪みである凹パターン50が形成された状態となる。凹パターン50は凸パターン46の位置に形成されるため、素子43a,43b,43cに対応する位置に凹パターン50が形成されることになる。
次に、図17(d)に示すように、粘着層45を凹パターン50が形成されている面からエッチング等により除去していき、43a,43b,43cを露出され、粘着層45上に金属を積層したのちに研磨を行って、凹パターン50を金属で充填して電気配線51を形成する。電気配線51は凹パターン50の形状、つまり凸パターン46の形状に応じて形成されることになるため、紙面に対して垂直方向に延伸してストライプ状に配されることになる。
図17に示した素子転写方法によって、支持基板48上に接着剤層49が形成され、接着剤層49上に電気配線47が形成され、接着剤層49上に形成された硬化された粘着層45に素子43a,43b,43cが埋入されて配列され、粘着層45上に電気配線51が形成された表示装置が得られる。素子43a,43b,43cがマトリクス状に配列され、電気配線47と電気配線51とがそれぞれ縦方向と横方向にストライプ状に形成されて走査配線および信号配線として機能し、素子43a,43b,43cの電極と電気的に接続されていることにより、単純マトリクス駆動により表示を行うことが可能な表示装置が得られる。
予め転写基板上に凸形状のパターンを形成しておき、凸形状のパターンに対応する位置に素子を埋入し、転写基板と粘着層とを剥離して、粘着層の凸形状のパターンに対応する凹形状のパターンを形成し、粘着層を一部除去して凹形状のパターンを素子まで到達する開口部とすることにより、簡便に粘着層に埋入されている素子まで開口部を形成することができる。
[第五の実施の形態]
次に、本願発明の他の実施の形態を以下に図面を用いて説明する。本実施の形態は、上述した第一の実施の形態のうち、素子を粘着層に埋入する前に硬化壁を形成する素子の転写方法であり、他の工程は第一の実施の形態と同様であるために説明を省略する。
図18は本実施の形態において素子63を粘着層65に埋入する工程を示した図である。図18(a)に示すように、粘着層65が形成された転写基板64にマスキングを施して選択部分を露光して硬化壁68を形成して、硬化壁68によって未硬化な粘着層65を小領域のマイクロセルに分割する。次に図18(b)に示すように、仮保持基板上に形成された仮接着層上に素子63を配列し、粘着層65が形成された転写基板64を仮保持基板と平行になるように配置した後に、仮保持基板と転写基板64とを接近させて、マイクロセルに分割された未硬化な粘着層65に素子63を埋入する。仮接着層から素子63を剥離して、粘着層65上のマイクロセル毎に素子63が粘着層65に埋入された状態で転写基板64上の位置を保持する。
その後、転写基板64側から粘着層65の露光を行って粘着層65の転写基板64側に硬化層を形成し、硬化層によって素子63の転写基板64上での位置を固定する。硬化層の形成後に加熱処理により未硬化な粘着層65を軟化させて、素子63の表面と粘着層65の表面との境界の段差を軽減した後、粘着層65の全体を露光して粘着層65の硬化を行う。
その後、粘着層65および素子63上に電気配線を形成し、粘着層65の電気配線が形成された面と接着剤層とが接するように、接着剤層が形成された支持基板を粘着層65に貼り付ける。支持基板の貼り付けをした後、レーザーを照射することによって転写基板64を粘着層65から剥離する。次に、硬化した粘着層65にドライエッチング等により素子63まで到達する開口部であるコンタクトビアを形成し、コンタクトビアに金属を充填すると共に粘着層65上に電気配線を形成する。
素子を埋入する前に粘着層を選択的に硬化して、素子が埋入される位置の周囲で粘着層の未硬化部分を小領域に分割することにより、後工程において素子を未硬化な粘着層に埋入する際に、硬化した粘着層は押圧により変形しなくなるため、粘着層が押圧により変形して素子の配列に乱れが生じることを防止できる。
また、粘着層の未硬化部分を軟化させることで、粘着層に素子を埋入した際に粘着層表面に生じる窪みなどを平坦化させることができる。粘着層表面が平坦化することで、後工程において粘着層上に電気配線を良好に形成することが可能となる。
[第六の実施の形態]
次に、本願発明の他の実施の形態を以下に図面を用いて説明する。本実施の形態は、上述した第一の実施の形態のうち、素子を粘着層に埋入する前に硬化壁を形成し、硬化壁内面に反射膜を形成する素子の転写方法であり、他の工程は第一の実施の形態と同様であるために説明を省略する。
図19は本実施の形態において素子73を粘着層75に埋入する工程を示した図である。図19(a)に示すように、粘着層75が形成された転写基板74にマスキングを施して選択部分を露光して硬化壁78を形成して、硬化壁78によって未硬化な粘着層75を小領域のマイクロセルに分割する。次に図19(b)に示すように、未硬化な粘着層75を除去して転写基板74上に硬化壁78のみが形成されている状態として、その後、硬化壁78内面および転写基板74上にアルミニウム等の金属薄膜である反射膜79を形成する。反射膜79は光を効率的に反射することが可能な材質であればよい。
次に、図19(c)に示すように、反射膜79上に再度未硬化な粘着層75を形成して粘着層75が硬化壁78によってマイクロセルに分割された状態とする。仮保持基板上に形成された仮接着層上に素子73を配列し、粘着層75が形成された転写基板74を仮保持基板と平行になるように配置した後に、仮保持基板と転写基板74とを接近させて、マイクロセルに分割された未硬化な粘着層75に素子73を埋入する。仮接着層から素子73を剥離して、粘着層75上のマイクロセル毎に素子73が粘着層75に埋入された状態で転写基板74上の位置を保持する。
その後、転写基板74側から粘着層75の露光を行って粘着層75の転写基板74側に硬化層を形成し、硬化層によって素子73の転写基板74上での位置を固定する。硬化層の形成後に加熱処理により未硬化な粘着層75を軟化させて、素子73の表面と粘着層75の表面との境界の段差を軽減した後、粘着層75の全体を露光して粘着層75の硬化を行う。
その後、粘着層75および素子73上に電気配線を形成し、粘着層75の電気配線が形成された面と接着剤層とが接するように、接着剤層が形成された支持基板を粘着層75に貼り付ける。支持基板の貼り付けをした後、レーザーを照射することによって転写基板74を粘着層75から剥離する。次に、硬化した粘着層75にドライエッチング等により素子73まで到達する開口部であるコンタクトビアを形成し、コンタクトビアに金属を充填すると共に粘着層75上に電気配線を形成する。
素子の埋入を行う前に粘着層の未硬化部分を除去して粘着層に凹部を形成し、凹部内に反射膜を形成し、凹部内の反射膜上に再度粘着層を形成して粘着層に素子を埋入することにより、素子として発光ダイオードなどの発光素子を用いた場合に凹部内の反射膜によって光が反射され、光の取り出し効率を向上させることができる。
以上説明したように、粘着層を選択的に硬化して、素子が埋入された周囲で粘着層の未硬化部分を小領域に分割することにより、後工程において素子を未硬化な粘着層に押圧して更に深く埋入する際に、硬化した粘着層は押圧により変形しなくなるため、粘着層が押圧により変形して素子の配列に乱れが生じることを防止できる。
また、粘着層の未硬化部分を軟化させることで、粘着層に素子を埋入した際に粘着層表面に生じる窪みなどを平坦化させることができる。粘着層表面が平坦化することで、後工程において粘着層上に電気配線を良好に形成することが可能となる。
素子の埋入を行う前に粘着層の未硬化部分を除去して粘着層に凹部を形成し、凹部内に反射膜を形成し、凹部内の反射膜上に再度粘着層を形成して粘着層に素子を埋入することにより、素子として発光ダイオードなどの発光素子を用いた場合に凹部内の反射膜によって光が反射され、光の取り出し効率を向上させることができる。
本発明によれば、粘着層の厚さ方向で素子が埋入されている位置まで粘着層を硬化して硬化層を形成することで、素子が硬化層により保持された状態となるため、粘着層の軟化等の処理を行う際に素子が浮動および変位することがなくなり、素子の配列乱れを防止することが可能となる。
予め転写基板上に電気配線を形成しておき、素子と電気配線との電気的接続が行われるまで粘着層に素子を埋入することにより、後工程において粘着層の転写基板側に電気配線を形成する必要がなくなり、製造工程の簡略化を行うことができる。
予め転写基板上に凸形状のパターンを形成しておき、凸形状のパターンに対応する位置に素子を埋入し、転写基板と粘着層とを剥離して、粘着層の凸形状のパターンに対応する凹形状のパターンを形成し、粘着層を一部除去して凹形状のパターンを素子まで到達する開口部とすることにより、簡便に粘着層に埋入されている素子まで開口部を形成することができる。