JP4839899B2 - 樹脂結合型磁石用組成物、それを用いた磁気異方性ボンド磁石、及びその製造方法 - Google Patents

樹脂結合型磁石用組成物、それを用いた磁気異方性ボンド磁石、及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、樹脂結合型磁石用組成物、それを用いた磁気異方性ボンド磁石、及びその製造方法に関し、より詳しくは、実用的な低い配向磁場強度でも良好な異方性が付与でき、従来よりも高い残留磁束密度(Br)および高い最大エネルギー積((BH)max)を有しつつ、機械強度も優れた、小型形状にも対応した樹脂結合型磁石用組成物、それを用いた磁気異方性ボンド磁石、及びその製造方法に関するものである。
希土類系樹脂結合型磁石に多く使われている磁性粉としてNd系の材料がある。この材料は、主にNd、Fe、Bを主成分とする原料合金を溶解し、さらに急冷法により超急冷しいったん非晶質合金を作製し、その後適温で熱処理を施すことにより得ることができ、平均粒径100μm以上の等方性の磁性粉末が使用されている。この他に、いわゆるHDDR法(hydrogenation−decomposition and desorption−recombination)といわれる水素化−分解・脱水素−再結合法により、異方性を付与しながら結晶を微細化して製造される磁気異方性磁石粉末がある。
最近の小型ハードディスクの伸張、DVDの拡大等に伴う、小型モータのダウンサイジングにより、高性能化への要求が非常に強くなってきている。この小型モータの高性能化を支える要素として、希土類ボンド磁石にも性能の向上が切望されている。前記小型モータ用途の磁石は、リング形状のものが主で、必要に応じて複数極の磁極を有するように着磁され使用されている。前記のリング形状の磁石においては、磁気的等方性の性能を有するNd系磁性粉末を使った希土類ボンド磁石は、成形が容易でかつ着磁に自由度があることから、総合的に使い勝手に優れているため多用されている。しかしながら、磁気異方性が付加されていないため、前記磁石応用製品の小型化、高性能化の要求に対応できないことが多くなってきた。
前記の小型モータ等磁石応用製品の小型化、高性能化の要求を満たしうるものとして、Nd系金属間化合物で磁気異方性をもつ希土類磁性粉を樹脂バインダーに配合した磁気異方性ボンド磁石がある。ただし、この磁性粉を使用し、より性能の高い磁気異方性ボンド磁石を得るためには、成形時に大きな磁界をかけ磁性粉を配向させる必要がある。磁気異方性の磁石粉末を十分に配向させるには、例えば2400〜4000kA/mという非常に強い印加磁場強度(配向磁場強度)を必要とする。しかしながら、実際に使用される磁石は、リング形状のほか複雑な形状に加工できることが要求され、リング形状でも外形10mm以下に小型化しなければならず、このような環境の中で前記の配向磁界を確保することは工業生産上困難を伴っていた。
したがって、特に樹脂組成物(コンパウンド)中の磁性粉末をラジアル方向に配列させるための十分な印加磁場強度が得られないという問題がある。この印加磁場強度不足の問題は、極異方性のリング形状、あるいはラジアル配向または極異方性磁石のみとはいえず一般的な問題である。これを改善し配向時の磁界を低減させるために、加熱した金型内に主に磁気異方性を有する希土類磁石粉末および熱硬化性樹脂からなる混合物を充填し、前記樹脂が軟化液状化した時に最大磁場を印加する成形方法が提案されている(特許文献1参照)。しかし、この方法では金型にヒータ等の加熱装置を付設しなければならず、樹脂を軟化液状化するため、成形タクトが長くなってしまうといった問題が生じている。
さらに、これらの異方性を有するNd系の磁性粉では、その磁気特性を確保するために100μm程度の粒径である必要があり、1mmをきるような肉厚の小型形状の磁石を成形するには、表面精度等を含めかなり不利な条件を負わなければならないといった問題点も指摘されている。
最近では、希土類ボンド磁石用の磁性粉として、前記Nd系磁性粉の他に、希土類・鉄・窒素系磁性粉が使用されている。この磁性粉は、平均粒径数μm程度のものが用いられ、熱可塑性の樹脂で結着した成形原料(コンパウンド)を用いて、例えば180〜250℃で磁場中射出成形を行うことにより配向された異方性ボンド磁石を得ることができる。この場合は、前記方法により比較的良好な配向性を有するものを得ることができる。しかし、磁場中射出成形法による場合は、コンパウンドの流動性を確保するために樹脂バインダーを約20〜50体積%と圧縮成形法に比べ多く添加する必要があるため、磁性粉末の希土類・鉄・窒素系粉の充填率が低くなり、より高性能の異方性ボンド磁石を得ることが困難である。
また、磁性粉充填率が高いコンパウンドで、従来の磁場中圧縮成形法により異方性ボンド磁石を作製する場合は、前記Nd系磁性粉と同様に、240〜800kA/m程度の実用的な配向磁場強度では良好な配向ができず、高い磁気特性の希土類ボンド磁石が得られない。
そのため磁性粉末を樹脂成分と混練する前に、あらかじめ磁性粉末の段階で成形磁場や保磁力より高い磁場中で着磁することで、未着磁品に比較して実用的な配向磁場強度で配向性に優れる樹脂結合型磁石を提供する方法が提案されている(特許文献2、3参照)。
ただし、着磁のみ行っていることから、磁石粉末一粒一粒が磁石となっており、粉末同士が着き合い大きな塊となってしまい嵩が増してしまう。この結果、樹脂と混合するため混練機へ磁石粉末を投入しにくくなる。また、混練機の材質が鉄等の磁性体の場合、磁石粉末が混練機に付着してしまい混練そのものができなくなってしまう。
一方、磁気異方性を示す希土類・鉄・窒素系磁石材料粉末を、液状熱硬化性樹脂とこの液状熱硬化性樹脂の硬化開始温度よりも低い沸点を有する有機溶媒とからなる混合液中に投入してスラリー化し、このスラリーを用いて前記有機溶媒の沸点未満の温度(例えば室温)にて圧縮成形法により湿式磁場中成形し、得られた成形体を前記有機溶媒の沸点以上で、かつ前記液状熱硬化性樹脂の硬化開始温度未満の温度に保持して脱溶媒後に加熱硬化し、必要に応じてコイニングあるいはサイジングを行い、成形体密度を高める磁気異方性ボンド磁石の製造方法が提案されている(特許文献4参照)。
しかしながら、溶媒を利用し、この溶媒を揮発させ抜いていくことから、成形時、磁性粉どうしの間にあるべき樹脂が、希薄になるか、存在しなくなる点が現れ、磁性粉どうしの結合力が低下する。このため、成形時にワレ、カケなどの発生が多くなり、かつ成形体そのものの機械的強度が低下してしまうといった問題が生じる。
従って、成形時に生じるワレ、カケなどを低減し、かつ成形体そのものの機械強さを低下させずに圧縮成形でき、配向度を高めることができる樹脂結合型磁石用組成物が切望されていた。
特開平9−199363 特開平2−251111 特開平6−244047 特開2000−173810
本発明の目的は、上記の課題に鑑み実用的な低い配向磁場強度でも良好な異方性が付与でき、従来よりも高い残留磁束密度(Br)および高い最大エネルギー積((BH)max)を有しつつ、機械強度も優れ、小型形状にも対応しうる樹脂結合型磁石用組成物、それを用いた磁気異方性ボンド磁石、及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、異方性を有する磁性粉末と熱硬化性樹脂とを配合して樹脂結合型磁石用組成物を製造するにあたり、磁性粉末として、あらかじめ十分に高い磁場にて着磁した後、さらにその後の混練を考慮して脱磁を行ったものを用いるとともに、これを低粘度の液状熱硬化性樹脂に投入してスラリー化し、引き続き、圧縮成形法により湿式磁場中成形し、加熱硬化することで、実用的な低い配向磁場強度でも優れた磁気異方性ボンド磁石(樹脂結合型磁石)を安定して製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、異方性を有する磁性粉末(A)と、ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂(B−1)及び反応性架橋性モノマー(B−2)を主成分とし、有機過酸化物(B−3)を含み、さらにN−オキシル類化合物(C)を配合した樹脂バインダー(B)とからなる樹脂結合型組成物において、異方性を有する磁性粉末(A)は、該粉末を構成する各磁性粒子の磁壁を破壊するのに十分な程度に高い1600kA/m以上の磁場(α)にて着磁した後、引き続き、該粉末を構成する各磁性粒子が樹脂バインダー(B)と十分に混練できるようになる程度に高い1600kA/m以上の磁場(β)にて脱磁したものであり、一方、樹脂バインダー(B)は、異方性を有する磁性粉末(A)100重量%に対し25〜200重量%配合され、樹脂バインダー成分の最終混合状態での成形温度における粘度(回転粘度計により測定)が1000mPa・s以下であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、異方性を有する磁性粉末(A)は、4000kA/m以上の磁性を有し、かつ該粉末を構成する各磁性粒子は、粒径が100μm以下のものを30重量%以上含有することを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、異方性を有する磁性粉末(A)は、無機燐酸、無機燐酸化合物、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤または滑剤から選ばれる1種以上の物質により表面が被覆されていることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第の発明において、前記磁場(α)は、1600kA/m以上であり、一方、磁場(β)は、1800kA/m以上であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第1の発明において、樹脂バインダー(B)の粘度は、50〜800mPa・sであることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第1の発明において、熱硬化性樹脂(B−1)は、150℃以下において液状であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第1の発明において、熱硬化性樹脂(B−1)は、ビニルエステル樹脂、および不飽和ポリエステル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第1の発明において、反応性架橋性モノマー(B−2)は、スチレン系化合物であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第1の発明において、有機過酸化物(B−3)は、150℃以下の温度で硬化可能な機能を有しているジアルキル系またはパーオキシケタール系化合物であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第10の発明によれば、第1の発明において、N−オキシル類化合物(C)は、分子鎖末端に、次の一般式(1)または一般式(2)で表される構造のうち少なくとも一種の構造を有することを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。式(1)中、X、Xは、それぞれ独立して水素原子、−OR基、−OCOR基または−NR基を表し、R、R、R、Rは、それぞれ独立して炭素数1以上のアルキル基を表し、R、R、R、Rは、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜16のアルキル基を表す。また、式(2)中、X、X、Xは、それぞれ独立して水素原子、−OR13基、−OCOR14基または−NR1516基を表し、R、R10、R11、R12は、それぞれ独立して炭素数1以上のアルキル基を表し、R13、R14、R15、R16は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜16のアルキル基を表す。
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一方、本発明の第11の発明によれば、第1〜10のいずれかの発明に係り、樹脂結合型磁石用組成物を圧縮成形法により湿式磁場中成形することを特徴とする磁気異方性ボンド磁石の製造方法が提供される。
また、本発明の第12の発明によれば、第11の発明において、前記湿式磁場は、240〜1200kA/mであることを特徴とする磁気異方性ボンド磁石の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第13の発明によれば、第11又は12の発明の方法により、磁性粉末(A)が、ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂(B−1)及び反応性架橋性モノマー(B−2)を主成分とし、有機過酸化物(B−3)を含み、さらにN−オキシル類化合物(C)を配合した樹脂バインダー(B)中で硬化して得られ、磁性粉末(A)の配向度が95%以上で、良好な磁気特性、十分な機械強度を有することを特徴とする磁気異方性ボンド磁石が提供される。
本発明の樹脂結合型磁石の製造方法によれば、異方性を有する磁性粉末と熱硬化性樹脂とを配合して樹脂結合型磁石用組成物を製造するにあたり、磁性粉末として、あらかじめ成形磁場より高い磁場にて着磁した後、引き続き、その後の混練性を容易にする程度に高い磁場にて脱磁を行ったものを用いるために、これを低粘度の液状熱硬化性樹脂に投入してスラリー化し、引き続き、圧縮成形法により湿式磁場中成形し、加熱硬化する際に、実用的な低い配向磁場強度でも磁性粉末が配向しやすくなり、優れた樹脂結合型磁石を安定して製造することができる。
これにより得られた樹脂結合型磁石は、小型モータ等磁石応用製品の小型化、高性能化の要求を満たす、リング形状のほか複雑な形状のものも得られ、リング形状でも外形10mm以下の小型化を達成できる。
従って、高密度化、高磁気特性化が容易となり、得られた樹脂結合型磁石は、HDDなど小型アクチュエータや小型モータを大量に使用する情報機器、OA機器など精密電気機械分野において幅広く適用する事が可能である。
以下に、本発明の樹脂結合型磁石用組成物、それを用いた磁気異方性ボンド磁石、及びその製造方法を詳細に説明する。
1.樹脂結合型磁石用組成物
本発明の樹脂結合型磁石用組成物は、異方性を有する磁性粉末(A)と、ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂(B−1)及び反応性架橋性モノマー(B−2)を主成分とし、有機過酸化物(B−3)を含み、さらにN−オキシル類化合物(C)を配合した樹脂バインダー(B)とからなる樹脂結合型組成物において、異方性を有する磁性粉末(A)は、該粉末を構成する各磁性粒子の磁壁を破壊するのに十分な程度に高い1600kA/m以上の磁場(α)にて着磁した後、引き続き、該粉末を構成する各磁性粒子が樹脂バインダー(B)と十分に混練できるようになる程度に高い1600kA/m以上の磁場(β)にて脱磁したものであり、一方、樹脂バインダー(B)は、樹脂バインダー(B)は、異方性を有する磁性粉末(A)100重量%に対し25〜200重量%配合され、樹脂バインダー成分の最終混合状態での成形温度における粘度(回転粘度計により測定)が1000mPa・s以下であることを特徴とする。
(A)磁性粉末
本発明の樹脂結合型磁石用組成物に用いられる磁性粉末(A)は、その構成元素中に希土類および遷移金属元素を含み、かつ異方性のものであれば、特に制限はない。
その希土類元素としては、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)からなる群から選択される1種又は2種以上である。また、遷移金属類元素としては、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びマンガン(Mn)からなる群から選択される1種又は2種以上であって、これ以外にCr、V又はCuのいずれかを含有してもよい。
特に好ましい希土類元素は、NdまたはSmのいずれか、遷移金属類元素は、Fe又はCoのいずれかである。また、具体的な磁性粉末(A)には、例えば、異方性磁場(HA)が4000kA/m以上の磁性粉末である希土類コバルト系、希土類−鉄−ほう素系、希土類−鉄−窒素系の磁性粉の単独もしくは混合粉、またはフェライト系磁性粉との混合系などが挙げられる。
磁性粉として、(I)還元拡散法によって得られるSmFe系合金粗粉を窒化処理、微粉砕して得られるSm−Fe−N系の合金微粉末、(II)同じく還元拡散法によって得られたSmCo5系合金粗粉を微粉砕して得られる合金微粉末、(III)HDDR(Hydrogenation−Disproportionation−Desorption−Recombination)法によって得られた異方性Nd−Fe−B系合金粉末のいずれかを用いると、特に優れた磁気特性を有する樹脂結合型磁石を得ることができる。
尚、HDDR法によって得られた異方性Nd−Fe−B系の磁性粉は、特異な形状を有した比較的大きな粒子を大量に含んでいるため、ジェットミルやボールミル等で粉砕し用いる方が良い。
本発明の樹脂結合型磁石用組成物において、磁性粉末の粒径は、特に制限されるわけではないが、磁性粉末の粒径が100μm以下のものを30重量%以上含むものが望ましい。異方性磁性粉末の平均粒径は、成形後の希土類ボンド磁石の機械的強度と加工性の向上、および加工後において磁石の表面磁束の均一性に影響するため、2μm〜4μmであることが好ましい。平均粒径が2μm未満であると、希土類ボンド磁石の残留磁化とともに、最大エネルギー積も低下し、小型磁石に加工後、所定の最大エネルギー積を得ることができない。また、平均粒径が4μmを越えると、希土類ボンド磁石の保磁力とともに、最大エネルギー積も低下し、小型磁石に加工後、所定の最大エネルギー積を得ることができない。
本発明において、磁石合金粉は、その表面が耐候性の皮膜で被覆されていることが望ましい。耐候性の皮膜は、無機燐酸、無機燐酸化合物、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤または滑剤から選ばれる1種以上の材料によって形成される膜である。
無機燐酸または無機燐酸化合物は、磁性粉末表面でホパイト、フォスフォフェライト等からなる燐酸亜鉛系、ショルツァイト、フォスフォフィライト、ホパイト等からなる燐酸亜鉛カルシウム系、マンガンヒューリオライト、鉄ヒューリオライト等からなる燐酸マンガン系、ストレンナイト、ヘマタイト等からなる燐酸鉄系などの被膜を形成させるために用いる物であり、無機燐酸をはじめ種々の燐酸化合物、キレート剤、中和剤等と混合して処理剤とするのが一般的である。これらの燐酸系表面処理剤は、これら処理剤を単独もしくはさらに複数で使用することも可能である。これらの燐酸または燐酸化合物の磁性粉末への表面処理は、湿式処理法や乾式処理法によってあらかじめ処理を行った後、100℃前後の加熱処理を併せて行う方がより安定した処理済磁性粉末が得られることがわかっている。
これら無機燐酸または無機燐酸化合物の磁性粉末に対する添加量は、その成分の種類や濃度により異なるが、基本的には0.01〜10重量%でよく、好ましくは0.05〜7重量%であるが、本発明の効果をより顕著に得るためには、0.1〜5重量%がより好ましい。添加量が0.01重量%未満の場合は、本発明の効果が十分に得られず、また10重量%を超えると密度の低下に伴う磁気特性の低下、機械強度の低下等のため、実用に耐えうる樹脂結合型磁石を得ることができない。
一方、シラン系またはチタン系カップリング剤または滑剤の磁性粉末への表面処理は、湿式処理法や乾式処理法によってあらかじめ単独で被覆処理を行っても、また本発明の熱硬化性樹脂バインダーと磁性粉末との混合時に併せて添加、処理を行っても良いが、事前に表面処理を行った後に100℃前後の加熱処理を併せて行う法がより安定した被覆磁性粉末が得られるので好ましい。
上記いずれかの被膜形成後には、処理溶液と該磁石合金粉は、100〜500℃の真空オーブン中で1〜30時間乾燥させることが好ましい。この時、加熱処理を不活性ガス中または真空中で行うことが好ましい。100℃未満で加熱処理を施すと、該磁石合金粉の乾燥が十分進まずに、安定な表面被膜の形成が阻害される。また、500℃を超える温度で加熱処理を施すと、磁石合金粉が熱的なダメージを受け、保磁力がかなり低くなるという問題がある。この被膜の膜厚は、平均で1〜100nmの厚さが好ましい。平均厚さが1nm未満であると十分な耐塩水性、機械強度が得られず、一方、100nmを越えると磁気特性が低下し、またボンド磁石を作製する際には混練性や成形性が低下してしまう。
また、上記の磁性粉末は、熱硬化性樹脂と混合する前にオレイン酸等の潤滑材を付着させることが望ましい。磁性粉末表面に潤滑材が付着することで、磁性粉同士の滑りがよくなり、配向性能を向上させることが出来る。磁性粉末に対して0.2〜0.8重量部のオレイン酸を添加することが好ましく、さらに剪断が加わる乾式粒子複合化装置等で磁粉の解凝を行いながら潤滑材を付着させることが一層好ましい。
滑剤としては、オレイン酸以外にも、例えばステアリン酸、1,2−オキシステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸類、また、パラフィンワックス、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エステルワックス、カルナウバ、マイクロワックス等のワックス類、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸カルシウム、リノール酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、2−エチルヘキソイン酸亜鉛等の脂肪酸塩(金属石鹸類)ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、パルミチン酸アミド、ラウリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ジステアリルアジピン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ジオレイルアジピン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド等脂肪酸アミド類、ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル、エチレングリコール、ステアリルアルコール等のアルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及びこれら変性物からなるポリエーテル類、ジメチルポリシロキサン、シリコングリース等のポリシロキサン類、弗素系オイル、弗素系グリース、含弗素樹脂粉末といった弗素化合物、窒化珪素、炭化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、二酸化珪素、二硫化モリブデン等の無機化合物粉体が挙げられる。
磁性粉末に対するシラン系またはチタン系カップリング剤または滑剤の添加量は、その成分の種類や濃度により異なるが、基本的には0.01〜10重量%でよく、好ましくは0.05〜7重量%であるが、本発明の効果をより顕著に得るためには、0.1〜5重量%がより好ましい。添加量が0.01重量%未満の場合は、本発明の効果が十分に得られず、また10重量%を超えると密度の低下に伴う磁気特性の低下、機械強度の低下等のため、実用に耐えうる樹脂結合型磁石を得ることができない。
2.磁性粉末の着磁、脱磁
本発明において用いられる磁性粉末(A)は、異方性を有するものであり、しかも該粉末を構成する各磁性粒子の磁壁を破壊するのに十分な程度に高い1600kA/m以上の磁場(α)にて着磁した後、引き続き、該粉末を構成する各磁性粒子が樹脂バインダー(B)と十分に混練できるようになる程度に高い1600kA/m以上の磁場(β)にて脱磁したものでなければならない。
異方性磁性粉末としては、還元拡散法によって得られるSmFe系合金粗粉を窒化処理、微粉砕して得られるSm−Fe−N系の合金微粉末がある。このような異方性磁性粉末の平均粒径は、成形後の希土類ボンド磁石の機械的強度と加工性の向上、および加工後において磁石の表面磁束の均一性に影響するため、単磁区粒径に近くなるように、通常2μm〜4μmとされている。しかし、磁性粉末は、磁性粒子同士が磁壁で区画された集合体であり、それを構成する各磁性粒子の磁性方向は不揃いな状態にある。その磁性方向を一方向に揃えるのが着磁である。そのため、該粉末を構成する各磁性粒子の磁壁を破壊するのに十分な程度に高い磁場(α)にて着磁を行う。
磁場(α)、すなわち着磁磁界は、1600kA/m以上であり、好ましくは、1800kA/m以上である。1600kA/m未満では、これに近い保磁力を有する磁性粉末の配向を行うことができず高い配向特性を得ることができない。
磁性粉末を着磁するための着磁電源は、磁性粉末の種類、着磁極数、サイズなどの要素を加味して選択される。磁性粉末を着磁するには極めて大きなエネルギーを必要とし、図1に示すように、電源2からコンデンサに充電した高電圧を一気に治具3に流すことにより、高い磁場を磁性粉末1に与えることになる。通常、着磁電源に使われるコンデンサには、オイルコンデンサとケミカルコンデンサの2種類がある。一般的には1000V以上の電圧を必要とする時は、オイルコンデンサが採用される。要求される着磁特性を得るには、着磁される磁性粉末1を収容する治具3(容器)を用いる。治具は、非磁性の材料で構成され、磁性粉末が配向時に移動できる十分なスペースを有するものであれば特に限定されない。例えば、ポリエチレン製の円筒状容器で、磁性粉末のかさ密度(l)の3倍以上を収容できる高さ(L)が着磁方向にあればよい。
これにより、未着磁品に比較して実用的な配向磁場強度で配向性に優れる樹脂結合型磁石を得ることができるようになる。ただし、着磁のみ行った状態では、磁石粉末一粒一粒が磁石となっており、粉末同士が着き合い大きな塊となってしまい嵩が増してしまう。この結果、樹脂と混合するため混練機へ磁石粉末を投入しにくくなる。また、混練機の材質が鉄等の磁性体の場合、磁石粉末が混練機に付着してしまい混練そのものができなくなってしまう。そのため、引き続いて、該粉末を構成する各磁性粒子が樹脂バインダー(B)と十分に混練できるようになる程度に高い磁場(β)にて脱磁しなければならない。
磁場(β)、すなわち脱磁磁界は、1800kA/m以上であり、好ましくは2000kA/m以上である。1800kA/m未満では、これに近い保磁力を有する磁性粉末が脱磁できずに粉末同士が着き合ったままで大きな塊で残存してしまい、樹脂との混合のために用いる混練機への磁石粉末の投入が、塊であるため困難となる。また、混練機の材質が鉄等の磁性体の場合、磁石粉末が混練機に付着してしまい混練そのものができなくなってしまう。
異方性の磁性粉末は、一般磁性体に比べて、保持力(HC)が非常に高く、容易に減磁しない。これを脱磁するには、コンデンサとコイルによる共振減衰脱磁という方法をとる。そのため、脱磁電源にも、着磁電源と同じようにコンデンサに充電した高い電荷をコイルに流し、共振磁場を発生させる。コイルでは、NS極が反転しながら減衰していくので、磁性粉末は反転磁場のなかで脱磁される。
本発明において、着磁、脱磁装置は、着磁用及び脱磁用の印加磁界を加えることができる電源を有するものであれば特に、限定されるものではない。市販のオイルコンデンサ式の着磁・脱磁電源には、例えば、電子磁気工業株式会社のCM−1500V、2500V、4000V型などが挙げられる。この他に、コンデンサ容量の切換え機能や、フライホイールダイオード入力切換え等の機能を有する装置を使用しても良い。
磁性粉末がSmFeN系であれば、比較的容易に脱磁される。SmCo系磁石であるか、それよりも異方性磁場が高い材料では、SmFeN系よりも脱磁の条件は厳格なものとしなければならない。また、Nd系磁石は、脱磁すると、初期磁化特性が違ってくるので注意が必要となる。
ところで、これまで磁石の製造現場において、しばしば脱磁手段が採用されてきた。ひとつは、リサイクルを効率化するためである。ボンド磁石は、原料となる樹脂組成物を射出成型する際に、スプルーランナーと呼ばれる、射出ノズルから金型までの経路に樹脂硬化物が副生する。これを再利用するには、樹脂硬化物を細かく粉砕することになる。この時、樹脂硬化物に磁気が残っていると、破砕工程で団子状に絡み合ったり、刃に吸着して作業そのものが出来なくなるので脱磁が行われる。
また、着磁工程でモータのハウジングに磁石を固定する際には、仮着磁を行っているが、磁石を固定後、ロータを組みこむ時に磁気が残っていると、組み立て工程の効率が落ちるので脱磁しなければならない。さらに、着磁量管理を必要とする磁石の場合にも、着磁量管理で不良品を再度着磁する前に一旦脱磁を行っている。
しかしながら、ボンド磁石の原料となる樹脂組成物を調製する際に磁性粉末が着磁されることはあっても、その後に脱磁されることはなく、その有用性は全く検討されることはなかった。本発明は、ボンド磁石の原料となる樹脂組成物を調製する際に着磁・脱磁を行うことで、効率的に圧縮成形しうるようにすることを意図している。
本発明において、磁性粉末の構造と着脱磁のメカニズムは、以下のように考えることができる。異方性磁性粉末に前記のような条件で着磁して、その磁性方向を一方向に揃えた後、引き続き残留磁束密度が0とならない程度の脱磁を行うと、粉末の中には、残留磁束密度がほぼ0Tに近くなってしまうものもあるが、粉末全体をみれば0.001T(10G)以下と少し残る状態になる。その後、樹脂結合型磁石を作製するために配向磁界を加えると、少し残留磁化は残っているが製造上問題にならない程度の粉末が、まず配向して残留磁化が大きくなる。すると、これが近くに存在する磁性粉末の配向を助け、残留束密度がほぼ0T(0G)に近くなっている磁性粉末の残留磁束密度を大きくさせる。このような現象は、配向磁界が別の部位からも出ているようなものと言える。これにより、通常よりも低い配向磁界で高磁気特性(高い配高度)が得られるわけである。つまり、脱磁を施した磁性粉末は、配向促進補助剤として働くものと考えることができる。
(B)樹脂バインダー
本発明の樹脂結合型磁石用組成物に用いられる樹脂バインダーは、ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂と反応性架橋性モノマーとを主成分とし、有機過酸化物を含むものである。
(B−1)熱硬化性樹脂
本発明において、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂から選ばれる少なくとも一種の樹脂であることが好ましい。
先ず、不飽和ポリエステル樹脂およびビニルエステル樹脂は、成形時の金型内で硬化して磁性粉末のバインダーとして働くものであれば、特にその種類に限定されることはなく、一般的に市販されている不飽和ポリエステル樹脂、又はビニルエステル樹脂を用いることができる。
不飽和ポリエステル樹脂としては、例えば、不飽和多塩基酸及び/又は飽和多塩基酸とグリコール類を分子量5000程度以下に予備的に重合させてオリゴマーやプレポリマー化させた主剤に、反応を開始させる硬化剤、長期の保存性を確保するための重合防止剤、及びその他の添加剤等から構成される。
不飽和多塩基酸としては、例えば無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等を、また、飽和酸としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ヘット酸、テトラブロム無水フタル酸等が挙げられる。
また、グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物、ジブロムネオペンチルグリコール、ペンタエリスリットジアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
一方、ビニルエステル樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、エポキシ化合物と不飽和一塩基酸とをエステル化触媒を用いて反応させることによって得ることができる。
上記ビニルエステル樹脂の原料として用いられるエポキシ化合物としては、分子中に、少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物であれば、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS等のビスフェノール類と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られるエピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フェノール、クレゾール、ビスフェノールとホルマリンとの縮合物であるノボラックとエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるノボラックタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、安息香酸とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;水添加ビスフェノールやグリコール類とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;ヒダントインやシアヌール酸とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られる含アミングリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、これらエポキシ樹脂と多塩基酸類および/またはビスフェノール類との付加反応により分子中にエポキシ基を有する化合物であってもよい。これらエポキシ化合物は、一種類のみを用いてもよく、適宜二種類以上を混合して用いてもよい。
さらに、上記ビニルエステル樹脂の原料として用いられる不飽和一塩基酸としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸等が挙げられる。また、マレイン酸、イタコン酸等のハーフエステル等を用いてもよい。さらに、これらの化合物と、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の多価カルボン酸や、酢酸、プロピオン酸、ラウリル酸、パルチミン酸等の飽和一価カルボン酸や、フタル酸等の飽和多価カルボン酸またはその無水物や、末端基がカルボキシル基である飽和あるいは不飽和アルキッド等の化合物とを併用してもよい。これら不飽和一塩基酸は、一種類のみを用いてもよく、適宜二種類以上を混合して用いてもよい。
上記エステル化触媒としては、具体的には、例えば、ジメチルベンジルアミン、トリブチルアミン等の第三級アミン類;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩;塩化リチウム、塩化クロム等の無機塩;2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;テトラメチルホスフォニウムクロライド、ジエチルフェニルプロピルホスフォニウムクロライド、トリエチルフェニルホスフォニウムクロライド、ベンジルトリエチルフェニルホスフォニウムクロライド、ジベンジルエチルメチルホスフォニウムクロライド、ベンジルメチルジフェニルホスフォニウムクロライド、テトラフェニルホスフォニウムブロマイド等のホスフォニウム塩;第二級アミン類;テトラブチル尿素;トリフェニルホスフィン;トリトリールホスフィン;トリフェニルスチビン等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらエステル化触媒は、一種類のみを用いてもよいし、適宜二種類以上を混合して用いてもよい。
(B−2)反応性架橋性モノマー
熱硬化性樹脂は、スチレン等の架橋剤を兼ねるモノマー類を加え粘度の調整を行うことが望ましい。
反応性架橋性モノマーとしては、例えば、(I)スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル等のビニルモノマー類、(II)ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルイソフタレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテトラブロムフタレート等のアリルモノマー類、(III)フェノキシエチルアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステル類等が挙げられる。このうち好ましいのはビニルモノマー類であり、特にスチレン系化合物が好ましい。
この反応性架橋性モノマーで上記特定の熱硬化性樹脂を粘度調整する。用いる反応性架橋性モノマーの量は、後で詳述するが、熱硬化性樹脂が成形温度において1000mPa・s以下の粘度を有するのに十分な量とする。粘度は、JIS K7117(液状樹脂の回転粘度計による粘度試験方法)に準じて測定される。
これにより、室温でも簡単な撹拌装置を用いて組成物をスラリー化できるので混練設備コストを低減できる。そのため、磁性粉に機械的、熱的なダメージを与えず、磁性粉の磁気特性を損なうことなく成形体を得ることが可能となる。また、磁石粉末同士が直接接触し拘束しあうことによる磁場配向劣化が低減される。しかも、磁石粉末が低粘度の液状樹脂の中にスラリー状態で自由に浮遊している状態にあるために、低い配向磁場強度で成形しても個々の磁石粉末粒子を良好に配向させることができる。
これをスラリー状態のまま金型に供給して磁場中で磁性粉末(A)が配向するのに十分な配向磁界を印加して、所定の温度で加熱すれば、反応性架橋性モノマーは、ポリマー成分と反応して硬化するので、得られる成形物の機械強さが大きくなるという効果がある。
(B−3)有機過酸化物
本発明において、有機過酸化物は、一般に、前記の反応を開始させる硬化剤として用いられ、ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂に配合される。
有機過酸化物としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジ−イソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−クミルパーオキサイド、α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド類、アセチルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、オクタノニルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、サクシニック酸パーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、トルオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペロキシジカーボネート、ジ−n−プロピルペジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペロキシジカーボネート、ジ−n−プロピルペロキシジカーボネート、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペロキシジカーボネート、ジ−ミリスチルペロキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルペロキシジカーボネート、ジ−メトキシイソプロピルペロキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)ペロキシジカーボネート、ジアリルペロキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類、t−ブチルペロキシアセテート、t−ブチルペロキシイソブチレート、t−ブチルペロキシピバレート、t−ブチルペロキシネオデカノエート、クミルペロキシネオデカノエート、t−ブチルペロキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペロキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペロキシラウレート、t−ブチルペロキシベンゾエート、ジ−t−ブチルペロキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2、5−ジ(ベンゾイルペロキシ)ヘキサン、t−ブチルペロキシマレイックアシッド、t−ブチルペロキシイソプロピルカーボネート、クミルペロキシオクトエート、t−ヘキシルペロキシネオデカノエート、t−ヘキシルペロキシピバレート、t−ブチルペロキシネオヘキサノエート、t−ヘキシルペロキシネオヘキサノエート、クミルペロキシネオヘキサノエート等のパーオキシエステル類やアセチルシクロヘキシルスルフォニルペロキサイド、t−ブチルペロキシアリルカーボネート等が挙げられる。
これらの有機過酸化物は、単独で用いることができる物もあるが、種類によっては炭化水素溶液類やフタル酸エステル類に希釈した状態、もしくは固形粉末に吸収させた状態で用いることがある。いずれにせよ、半減期10時間を得るための分解温度が150°C以下の性質を有する過酸化物を使用するのが望ましく、更には、同半減期を得るための温度が40〜120°Cの過酸化物がより望ましい。
該半減期が150°Cを超える物を選択すると、充分な硬化成形体を得るための硬化温度が高くなり好ましくない。また、40°Cよりも低くなると過酸化物自体の取り扱い性が困難になるばかりでなく、希土類ボンド磁石用組成物の保管特性が悪くなり生産性に欠ける結果を招く。
これらの有機過酸化物は、単独又は2種以上の混合系で用いることができるが、最終樹脂結合型磁石用組成物の可使時間をより長く確保するために、パーオキシケタール系、又はジアルキル系過酸化物の単独で用いることが、極めて好ましい。
これら過酸化物の添加量は、希釈率や活性酸素量によって異なるため規定はできないが、一般的にはラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂に対して0.01〜5wt%が添加される。
これらの過酸化物は、例えばナフテン酸コバルトやオクチル酸コバルト等のコバルト有機酸塩、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、ジメドン等のβ−ジケトン類、ジメチルアニリン等の芳香族3級アミン類、メルカプタン類、トリフェニルホスフィン、2−エチルヘキシルホスファイト等の燐化合物類、第4級アンモニウム塩類等の促進剤やアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、芳香族カルボニル化合物、ピナコン誘導体等との併用を行っても良い。
ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂を含む樹脂バインダーは、これらの各種成分以外にも、長期の保存性を確保するためのN−オキシル化合物を含むとともに、重合防止剤、各反応性樹脂類や成形性改善剤など種々の有機添加剤を加えることができる。
(C)N−オキシル化合物
N−オキシル化合物としては、樹脂結合型磁石用組成物の保管中の可使時間をより長くさせるために添加できる前記構造式で示されるような5員環のピロリジン系化合物、6員環のピペリジン系化合物などの含窒素環状化合物である。
本発明のような磁性粉末などを含む系では、レドックス反応のみならず、これに相まってラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂やスチレン等との複雑な反応も生起し、その促進効果も極めて高く、通常の遷移金属単体系の組成物よりも、可使時間が極めて短くなる。このような磁性粉末、ラジカル硬化剤、熱硬化性樹脂を含有する組成物に対して、N−オキシル類化合物を添加すると、かかる特殊な反応の抑制効果に極めて有効に機能し、可使時間を長くすることできる。
N−オキシル類化合物としては、前記構造式で示されるような6員環のピペリジン系化合物が好ましい。例えば、ジ−t−ブチルニトロキシル、1−オキシル −2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−オキシル −2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オール、1−オキシル −2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−アセテート、1−オキシル −2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−2−エチルヘキサノエート、1−オキシル −2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−ステアレート、1−オキシル −2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−4−t−ブチルベンゾエート、ビス(1−オキシル −2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)コハク酸エステル、ビス(1−オキシル −2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アジピン酸エステル、ビス(1−オキシル −2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート、ビス(1−オキシル −2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)n−ブチルマロン酸エステル、ビス(1−オキシル −2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)フタレート、ビス(1−オキシル −2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)イソフタレート、ビス(1−オキシル −2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)テレフタレート、ビス(1−オキシル −2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)ヘキサヒドロテレフタレート、N,N’−ビス(1−オキシル −2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アジパミド、N−(1−オキシル −2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カプロラクタム、N−(1−オキシル −2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)ドデシルサクシンイミド、2,4,6−トリス−N−ブチル−N−(1−オキシル −2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−s−トリアジン、等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらN−オキシル 類は、一種類のみを用いてもよいし、適宜二種類以上を混合してもよい。
重合防止剤としては、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、フェナンスラキノン、トルキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、2,5−ジアセトキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジカプロキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジアシロキシ−p−ベンゾキノン等のキノン類、ハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、モノ−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン等のハイドロキノン類、ジ−t−ブチル・パラクレゾールハイドロキノンモノメチルエーテル、アルファナフトール等のフェノール類、ナフテン酸銅等の有機ならびに無機の銅塩類、アセトアミジンアセテート、アセトアミジンサルフェート等のアミジン類、フェニルヒドラジン塩酸塩、ヒドラジン塩酸塩等のヒドラジン類、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、ラウリルピリジニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムオキザレート、ジ(トリメチルベンジルアンモニウム)オキザレート、トリメチルベンジルアンモニウムマレエート、トリメチルベンジルアンモニウムタータレート、トリメチルベンジルアンモニウムグリコレート等の第4級アンモニウム塩類、フェニル−β−ナフチルアミン、パラベンジルアミノフェノール、ジ−β−ナフチルパラフェニレンジアミン等のアミン類、ニトロベンゼン、トリニトロトルエン、ピクリン酸等のニトロ化合物、キノンジオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類、ピロガロール、タンニン酸、レゾルシン等の多価フェノール類、トリエチルアミン塩酸塩、ジメチルアニリン塩酸塩、ジブチルアミン塩酸塩等のアミン塩酸塩類等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上を混合して使用することができる。
また、エポキシ樹脂を原料としたノボラック型やビスフェノール型のビニルエステル樹脂類、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ビス・マレイミドトリアジン樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の各反応性樹脂類や、成形性の改善を目的とした、例えばパラフィンワックス、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エステルワックス、カルナウバ、マイクロワックス等のワックス類、ステアリン酸、1,2−オキシステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸カルシウム、リノール酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、2−エチルヘキソイン酸亜鉛等の脂肪酸塩(金属石鹸類)ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、パルミチン酸アミド、ラウリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ジステアリルアジピン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ジオレイルアジピン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド等脂肪酸アミド類、ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル、エチレングリコール、ステアリルアルコール等のアルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及びこれら変性物からなるポリエーテル類、ジメチルポリシロキサン、シリコングリース等のポリシロキサン類、弗素系オイル、弗素系グリース、含弗素樹脂粉末といった弗素化合物等の1種もしくは2種以上を添加することができる。
これらの有機添加物以外にも、必要に応じ、無機充填材や顔料等も任意に添加してもよい。これらは、例えば、窒化珪素、炭化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、二酸化珪素、二硫化モリブデン等の無機化合物粉体、ストロンチウムフェライト系、バリウムフェライト系等のフェライト類磁性粉、鉄等の軟磁性粉、タングステン等の密度調整用高比重金属粉、三酸化アンチモン等の難燃剤、酸化チタン等の顔料等が挙げられる。
ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂バインダーを構成する各成分の性状は、常温で液状であることが望ましい。また、これらの異なる樹脂や異なる分子量、性状のものを1種または2種以上組み合わせて混合することも差し支えない。
これらのラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂を主とする最終混合バインダーの粘度は、JIS K7117(液状樹脂の回転粘度計による粘度試験方法)に準じて測定されるが、測定温度は、成形温度(成形時のシリンダー温度)にあわせた恒温漕内で測定される。そのときの粘度測定値が1000mPa・s以下のものが好ましい。この粘度が、1000mPa・sより高いと、磁性粉末一粒一粒の表面を樹脂が完全に覆うことができず、磁性粉末が配向しづらくなり所望の磁気特性が得られなくなる。
さらに、例えば加熱を要せず室温において簡単な撹拌装置を用いてスラリー化できるので混練設備コストを低減できる他、容易に混練(樹脂被覆)できるため、磁性粉に機械的、熱的なダメージを与えず、磁性粉の磁気特性を損なうことなく成形体を作製することが可能となる。また前記磁石粉末同士の直接接触および高い粘性の樹脂による拘束等の磁場配向劣化要因を大きく低減できる。個々の磁性粉粒子表面がほぼ均一に樹脂被覆されており、かつ低粘度のスラリー状態で液状樹脂の中に磁性分が自由に浮遊している状態にあるために、室温において3〜10kOeという低い配向磁場強度でも個々の磁石粉末粒子を良好に配向させることができる。したがって、従来に比べて高いBrおよび高い(BH)maxの希土類・鉄・窒素系磁気異方性ボンド磁石が得られる。
また、これらのラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂バインダーの添加量は、各構成成分を含めた状態で、該磁性粉末100重量部に対して、25〜200重量部の割合で添加されるが、好ましくは40〜150重量部、さらに、50〜120重量部がより好ましい。該バインダーの添加量が該磁性粉末100重量部に対して25重量部未難の場合は、樹脂量が少なく磁性粉末が配向できなくなり、本発明の効果を得ることができない。また、200重量部より多い場合、スラリー中に含まれる磁性粉末量が少なくなり所望の磁気特性が得られない。
3.樹脂結合型磁石用組成物の調製
本発明において、樹脂結合型磁石用組成物を調製するには、予め、熱硬化性樹脂が室温で測定される粘度を1000mPa・s以下に粘度調整するのに十分な量の反応性架橋性モノマーで熱硬化性樹脂を希釈した後、少なくとも硬化剤を配合して樹脂バインダーとする。次に、この樹脂バインダーに前記特定の異方性を有する着磁・脱磁された磁性粉末を配合して樹脂結合型磁石用組成物のスラリーを形成する。
すなわち、(1)ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂に十分な量の反応性架橋性モノマーを混合攪拌して、特定の粘度範囲に調整した後、(2)この混合物に少なくとも硬化剤を配合して樹脂バインダーとし、引き続き、(3)得られた樹脂バインダーに所定量の着磁・脱磁された磁性粉末を混合攪拌して略均一なスラリー状態の樹脂結合型磁石用組成物を形成する。
(1)熱硬化性樹脂の粘度調整
本発明においては、まず熱硬化性樹脂に十分な量の反応性架橋性モノマーを混合攪拌して、特定の粘度範囲となるように調整する。
この工程では、熱硬化性樹脂に十分な量の反応性架橋性モノマーを配合し、樹脂バインダー成分の最終混合状態での成形温度における回転粘度計測定法での粘度が1000mPa・s以下とする。具体的には、−20℃〜150℃のいずれかの成形温度で、粘度が1000mPa・s以下、好ましくは50〜800mPa・sになるよう混合攪拌する。粘度が50mPa・s未満であると成形時に磁石粉末と樹脂バインダーが分離することがあり、また、1000mPa・sを超えるとスラリーを形成しにくくなるので好ましくない。
(2)硬化剤などの混合
次に、粘度調整された熱硬化性樹脂に硬化剤などを配合し、混合攪拌して樹脂バインダーを調製する。
これら混合される樹脂バインダーの各成分は、重合度や分子量に制約されることはないが、磁性粉末を加える前の添加剤等を含めた混合調製状態でのバインダーとして、成形温度における回転粘度測定法での粘度が前記のとおり1000mPa・s以下となるようにする。
この粘度に調整するために、数種類の粘度や性状の異なるラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂同士を混合し、あるいは酸化ベリリウム、酸化マグネシウム等の二価金属の酸化物類や水酸化物類、ジイソシアナート類、アリジリン化合物類、アルミニウムイソプロポキシド等を加えても差し支えない。
よって、ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂バインダーを構成する各成分の性状は、特に限定されないが、磁性粉との均一混合性や成形性から考えると必要成分の均一混合後に常温(25°C)において液状の性質を示すことが望ましい。また、これらの異なる樹脂や異なる分子量、性状の物を1種または2種以上組み合わせて混合することも差し支えない。
(3)組成物スラリーの形成
その後、得られた樹脂バインダーに磁性粉末を混合してスラリーを形成する。使用する磁性粉は、希土類元素を含む磁性粉末であって、あらかじめ着磁・脱磁されたものであれば特に制限されないが、還元拡散法によって得られるSmFe系合金粗粉を窒化処理後、微粉砕して得られる磁石合金微粉末が好ましい。
樹脂バインダーに磁性粉末を配合してから充分に混合することによって、樹脂結合型磁石用組成物中の樹脂に磁性粉が均一に分散したスラリーが形成される。磁性粉末を加えた後の組成物スラリーの粘度は、50000mPa・s以下、特に5000mPa・s以下となるようにすることが好ましい。50000mPa・sを超えると混合混練時の著しい混練トルクの上昇に伴う発熱によって硬化反応を招き、著しい流動性の低下が生じて成形困難になる。粘度が、5000〜50000mPa・sであれば成形時に充分な配向性を得ることができるが、粘度が高くなるにしたがって配向性はわずかずつ低下してくる。
本発明において、各成分の混合方法は、特に限定されず、例えばリボンブレンダー、タンブラー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の混合機あるいは、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、ニーダールーダー、単軸押出機、二軸押出機等の混練機を使用して実施される。
本発明に用いる樹脂結合型磁石用組成物は、前述の必須成分に、さらに必要に応じて他の添加剤を配合することにより調製される。
その際、各成分の混合方法は、特に限定されず、例えばリボンブレンダー、タンブラー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の混合機、あるいは、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、ニーダールーダー、単軸押出機、二軸押出機等の混練機を用いることにより実施される。
このようにして得られた樹脂結合型磁石用組成物の形状は、スラリー状が望ましい。
4.磁気異方性ボンド磁石
本発明の磁気異方性ボンド磁石は、上記の樹脂結合型磁石用組成物を、熱硬化性樹脂の溶融温度で、湿式磁場中圧縮成形して、磁性粉末(A)が、ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂(B−1)及び反応性架橋性モノマー(B−2)を主成分とし、有機過酸化物(B−3)を含み、さらにN−オキシル類化合物(C)を配合した樹脂バインダー(B)中で硬化して得られ、磁性粉末(A)の配向度が95%以上で、良好な磁気特性、十分な機械強度を有するものである。
圧縮成型法は、前記組成物をプレス金型中に充填した後、磁場を印加し、これから液状成分を搾り出しながら湿式圧縮成形して成形体を得、その後加熱してバインダーである熱硬化性樹脂を硬化させて磁石を製造する方法である。この方法は、成形品の中の樹脂バインダー量を少なくでき、成形体中の磁石粉の比率を大きくすることが可能であり、磁気特性を容易に向上できる。
本発明において圧縮成形装置は、特殊な構造を有する必要はなく、組成物の供給部と、成形部と、配向磁場印加部と、成形体取り出し部を有するものであればよい。
供給部は、金型内に成形材料である組成物を充填する部分である。この供給部には、好ましくは定量フィーダのような、組成物供給装置が設置される。上記樹脂結合型磁石用組成物中の樹脂に磁性粉が分散して形成されたスラリーは、混合機から抜き出されて、磁性粉と樹脂とがスラリー状態を維持したままで金型に供給される。ここで、反応性架橋性モノマーの含有量が多い場合、混合機から抜き出す際に、スラリーを攪拌しないと、磁性粉と樹脂の比重の違いから、金型への供給経路において磁粉が沈殿することになる。このような状態になると、磁粉の分布に偏りが生じるので、再攪拌して供給することが望ましい。また、反応性架橋性モノマーの含有量が多すぎる場合には、うわずみの樹脂を除去することができる。
成形部は、金型に供給された組成物をパンチにより圧縮成形する部分である。パンチは、上パンチと下パンチからなり、それぞれ、金型の成形空間内で、駆動機構により軸方向に移動し得る。上パンチおよび下パンチの外径は、金型の内径(成形空間の直径)とほぼ等しいか、若干小さく設定される。また、上パンチおよび下パンチのそれぞれの端部には、組成物を加圧する平坦な加圧面が形成されている。これら両加圧面と、成形空間の内周面とで、成形体の形状が決まる。ここで、加圧面は平坦な面に限らず、例えば、所望に湾曲した面、突起や窪みを有する面、溝等が存在する面のいずれでも良い。なお、下パンチの加圧面は、成形体を取り出す際以外は、成形空間内に位置し、成形空間の下端部を閉じている。各金型の成形空間は、成形すべき成形体の形状に対応しており、例えば、平板状や円柱状をなしている。ただし、成形空間の形状は、これに限定されず、例えば、横断面が半円形、楕円形、三角形、四角形、六角形等の多角形等のもの、円筒状(中空)、湾曲板状等、いかなるものでもよい。
配向磁場印加部は、成形部である金型の周囲に、磁場を印加するためのコイルもしくは永久磁石を設置している。金型に装入された組成物には、240〜1200kA/m、好ましくは240〜800kA/mの配向磁場が印加される。配向磁場が240kA/m未満では磁性粉を充分に配向できず、1200kA/mを超える配向磁場は実用的ではない。
本発明では、供給された組成物は、金型内において実質的に反応性架橋性モノマーを揮散させない条件下で成形される。そのため金型内で磁石粉が配向磁場を印加されたときに磁石粉は流動しうる状態にある。
配向磁場によって配向された磁粉を含む組成物は、上パンチおよび下パンチから加圧を受け、配向を保ったまま余剰な液状成分が搾り出され、成形が行われる。なおこの圧縮成形の際、余剰な液状成分を効率的に搾り取るため、上パンチおよび下パンチと組成物の間にフエルト等の濾布をセットしてもかまわない。成形後に必要とされる樹脂は磁粉の隙間に残り、空隙を発生することは無く、硬化後の成形体の強度向上に寄与する。
成形体取り出し部は、成形体を金型から取り出す部分である。成形体は、下パンチをその加圧面が金型の上端面と一致する位置まで上昇させて、成形体を成形空間から排出し、次いで、該成形体を横方向へ移動させればよい。
その後、取り出された成形体をオーブン等の加熱室で加熱硬化を施すことによって所定の機械強度を得ることが出来る。プレスされた成形体の加熱温度は、樹脂の種類、硬化剤の種類や量により異なるが、例えば、60〜200℃、好ましくは100〜160℃であることが好ましい。この温度に加熱された組成物は、所定の時間この温度に維持することで硬化する。加熱温度が60℃未満では、充分に硬化しない部分が発生し、200℃を超えると樹脂が変色したり、磁石特性が悪化したりする場合がある。
本発明の樹脂結合型磁石は、上記樹脂結合型磁石用組成物を圧縮成形することで得られる磁石であり、反応性架橋性モノマーにより希釈された低粘度の液状熱硬化性樹脂を使用しているので、湿式磁場中圧縮成形工程において、低粘度樹脂が成形中途の成形体から滲みだしてきて一種の潤滑効果を有し、金型カジリが改善される。また、配向度が95%以上、好ましくは96%以上であり、優れた磁気的特性を有しているため、多くの分野で利用することができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
次の各材料・成分及び方法でスラリー化した樹脂結合型磁石用組成物及び磁石を製造し、評価した。
1.材料・成分
(1)磁性粉末(A)
・異方性磁性粉末:Sm−Fe−N系磁性粉末(住友金属鉱山(株)製 SmFeN合金粉末)、異方性磁場:16.8MA/m(210kOe)、100μm以下の粒径含有率99重量%
(2)無機燐酸または無機燐酸化合物
・燐酸系処理剤(商品名:燐酸(試薬)、関東化学(株)製)
(3)有機シランモノマー
・有機シランモノマー:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:信越シリコーンKBM503)
(4)樹脂バインダー(B)
熱硬化性樹脂(ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂)(B−1)
・不飽和ポリエステル樹脂(UP樹脂)(商品名:ポリセット9107、日立化成工業(株)製)、25℃における粘度:1200mPa・s
・ビニルエステル樹脂(商品名:リポキシ液状樹脂H−610、昭和高分子(株)製)、25℃における粘度:100mPa・s
(5)硬化剤
・硬化剤(有機過酸化物(B−2))(不飽和ポリエステル用):パーオキシケタール系過酸化物(1,1−ジ−t−ブチルペロオキシ−シクロヘキサン)(商品名:トリゴノックス22−B75、化薬アグゾ(株)製)、10時間の半減期を得るための分解温度93℃
(6)N−オキシル類化合物(C)
・化合物:2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル(商品名:アデカスタブ LA−7RD、旭電化(株)製)
(7)有機溶媒
・架橋モノマー:スチレン(関東化学製、一級)
・有機溶媒:アセトン(関東化学製、一級)
(8)各評価方法
(磁気特性)
上記圧縮成形条件にて得られた樹脂結合型磁石試料の磁気特性を、チオフィー型自記磁束計(東英工業社製)にて常温で測定した。尚、配向度は、SMM法、即ち、{(成形後の樹脂結合型磁石の磁化)/(磁性粉100%でのVSMにて測定した磁化×成形後の樹脂結合型磁石の磁性粉体積率)×100}で表した。
配向度95%以上で効果ありとした。
(機械強さ)
上記成形条件にて、別途幅5mm×長さ10mm×高さ2mmの試験片を成形し、JIS K7214(プラスチックの打ち抜きによる剪断試験方法)に準じて剪断打ち抜き強さを測定した。70MPa以上で効果ありとした。
(密度)
東洋精機製水置換型測定装置にて測定を行った。
(実施例1)
(1)燐酸または燐酸化合物、有機シランモノマーによる表面処理
それぞれの磁性粉100重量部に対して、10重量部のIPA等のアルコール系有機溶媒に0.3重量部の表面処理用燐酸化合物を溶解した後、当該処理溶液と磁性粉とをプラネタリーミキサー中で十分混合撹拌(40rpm,20℃)し、−760mmHg、120℃の真空オーブン中で24時間乾燥させ、ここで得られた処理済み粉を更にメカノフュージョン(ホソカワミクロン(株)製)にて有機シランモノマー0.5重量部添加し表面処理を行い、処理済磁性粉を得た。
(2)磁性粉末の着磁・脱磁方法
表面処理を施した磁性粉末は、電子磁気工業株式会社製のコンデンサ式着脱磁電源装置を用い着磁・脱磁処理を行った。治具は、非磁性材料であるポリエチレン製の100cmの蓋つき容器(Φ50mm×80mm高さ)を用いた。条件を表1に示す。
(3)組成物の混合及び作製
磁性粉100重量部に対して、あらかじめ所定の比率になるよう計量混合しておいた熱硬化性樹脂、硬化剤、N−オキシル類化合物等をそれぞれの磁性粉全量に加え、スラリー化した後、回転式攪拌装置で十分混合撹拌して最終組成物を得た。なお圧縮成形投入時の混合比を表1に示す。
(4)圧縮成形
前記スラリー、コンパウンドを用いて配向磁場強度480kA/m、5ton/cmの成形圧力で湿式磁場中圧縮成形を行い、得られた成形体(幅10×長さ15mm×高さ5mm±0.3mm)を150℃で1時間加熱硬化処理することにより、本発明の磁気異方性ボンド磁石を得た。評価結果を表1に示す。
(実施例2〜6)
実施例1において、不飽和ポリエステル樹脂への反応性架橋性モノマーの量を代えて、磁性粉100重量部に対して90重量部、150重量部とした以外は条件を変えずに実験した(実施例2〜3)。また、実施例2と同じ組成とした樹脂組成物を用いて、着磁/脱磁磁界を代えて実験した(実施例4〜5)。樹脂をビニルエステルに変更して、実施例2と同じ条件で実験した。磁気異方性ボンド磁石の製造条件、評価結果を表1に示す。
(比較例1〜5)
実施例1において、不飽和ポリエステル樹脂へ反応性架橋性モノマーを配合しないか、反応性架橋性モノマーの量を代えて、磁性粉100重量部に対して300重量部とした以外は条件を変えずに実験した(比較例1〜2)。また、実施例2と同じ組成とした樹脂組成物を用いて、着磁/脱磁を行わないか、着磁のみ行って実験した(実施例3,5)。一方、反応性架橋性モノマーをアセトンに代えて、実施例2と同じ条件で実験した(比較例4)。この場合、湿式磁場中で圧縮成形後、30℃、10−1Torrの減圧下でアセトンを完全に揮散させ、その後、150℃で1時間加熱硬化処理し磁気異方性ボンド磁石を得た。磁気異方性ボンド磁石の製造条件、評価結果を表2に示す。
Figure 0004839899
Figure 0004839899
実施例1〜5は、本発明に基づき不飽和ポリエステルとスチレンを用いた例で、湿式の磁場中成形を施したものである。実施例6は、実施例1〜5と同様の成形で樹脂をビニルエステルを用い、ボンド磁石を得たものである。いずれも480kA/mという低い配向磁場強度にも関わらず高い配向度を示し、良好な磁気特性を実現しているとともに機械強度も十分な値となっている。
一方、比較例1は、樹脂粘度が1200mPa・sと本発明の値より逸脱したものを用いたが、配向度は実施例に比較して低い値にとどまった。これは、樹脂が磁性粉末一粒一粒をしっかりと包めなかったために磁性粉末の凝集体が残ってしまい配向磁界を加えた際、配向しづらくなる結果になったためと考える。
比較例2は、樹脂を本発明の好ましい量を超えて加えた場合について試験した結果であるが、スラリー中に含まれる樹脂量が多すぎ、金型内に最大限スラリーを入れたにも関わらず所望の厚みをもった成形体を得ることができなかった。
比較例3は、あらかじめ着磁を施した磁性粉末を用いたスラリーの成形を試みたが、着磁に伴う磁性粉末の大きな塊がスラリーに残存しており、うまく金型内に注入することができず成形できなかった。比較例4は、液状熱硬化樹脂を有機溶媒で希釈して使用し、湿式の磁場中成形を施したものである。配向度もよく高い磁気特性が得られているが、機械強度が低く、かなり脆い成形体となっている。比較例5は、着磁・脱磁を施さない磁性粉末を用いた場合である。機械的強度は良好であるが、配向度が本発明ほど良好ではない。
本発明において磁性粉末の着磁・脱磁に用いる装置とその使用に関する説明図である。
符号の説明
1 磁性粉末
2 着磁・脱磁用電源
3 治具(容器)

Claims (13)

  1. 異方性を有する磁性粉末(A)と、ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂(B−1)及び反応性架橋性モノマー(B−2)を主成分とし、有機過酸化物(B−3)を含み、さらにN−オキシル類化合物(C)を配合した樹脂バインダー(B)とからなる樹脂結合型組成物において、
    異方性を有する磁性粉末(A)は、該粉末を構成する各磁性粒子の磁壁を破壊するのに十分な程度に高い1600kA/m以上の磁場(α)にて着磁した後、引き続き、該粉末を構成する各磁性粒子が樹脂バインダー(B)と十分に混練できるようになる程度に高い1600kA/m以上の磁場(β)にて脱磁したものであり、
    一方、樹脂バインダー(B)は、異方性を有する磁性粉末(A)100重量%に対し25〜200重量%配合され、樹脂バインダー成分の最終混合状態での成形温度における粘度(回転粘度計により測定)が1000mPa・s以下であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物。
  2. 異方性を有する磁性粉末(A)は、4000kA/m以上の磁性を有し、かつ該粉末を構成する各磁性粒子は、粒径が100μm以下のものを30重量%以上含有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂結合型磁石用組成物。
  3. 異方性を有する磁性粉末(A)は、無機燐酸、無機燐酸化合物、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤または滑剤から選ばれる1種以上の物質により表面が被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂結合型磁石用組成物。
  4. 前記磁場(α)は、1600kA/m以上であり、一方、磁場(β)は、1800kA/m以上であることを特徴とする請求項に記載の樹脂結合型磁石用組成物。
  5. 樹脂バインダー(B)の粘度は、50〜800mPa・sであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂結合型磁石用組成物。
  6. 熱硬化性樹脂(B−1)は、150℃以下において液状であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂結合型磁石用組成物。
  7. 熱硬化性樹脂(B−1)は、ビニルエステル樹脂、および不飽和ポリエステル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂であることを特徴とする請求項1又はに記載の樹脂結合型磁石用組成物。
  8. 反応性架橋性モノマー(B−2)は、スチレン系化合物であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂結合型磁石用組成物。
  9. 有機過酸化物(B−3)は、150℃以下の温度で硬化可能な機能を有しているジアルキル系またはパーオキシケタール系化合物であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂結合型磁石用組成物。
  10. N−オキシル類化合物(C)は、分子鎖末端に、次の一般式(1)
    Figure 0004839899
    (式中、X、Xは、それぞれ独立して水素原子、−OR基、−OCOR基または−NR基を表し、R、R、R、Rは、それぞれ独立して炭素数1以上のアルキル基を表し、R、R、R、Rは、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜16のアルキル基を表す)、または一般式(2)
    Figure 0004839899
    (式中、X、X、Xは、それぞれ独立して水素原子、−OR13基、−OCOR14基または−NR1516基を表し、R、R10、R11、R12は、それぞれ独立して炭素数1以上のアルキル基を表し、R13、R14、R15、R16は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜16のアルキル基を表す)で表される構造のうち少なくとも一種の構造を有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂結合型磁石用組成物。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の樹脂結合型磁石用組成物を圧縮成形法により湿式磁場中で成形することを特徴とする磁気異方性ボンド磁石の製造方法。
  12. 前記湿式磁場は、240〜1200kA/mであることを特徴とする請求項11に記載の磁気異方性ボンド磁石の製造方法。
  13. 請求項11又は12に記載の方法により、磁性粉末(A)が、ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂(B−1)及び反応性架橋性モノマー(B−2)を主成分とし、有機過酸化物(B−3)を含み、さらにN−オキシル類化合物(C)を配合した樹脂バインダー(B)中で硬化して得られ、磁性粉末(A)の配向度が95%以上で、良好な磁気特性、十分な機械強度を有することを特徴とする磁気異方性ボンド磁石。
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