JP4774652B2 - 希土類焼結磁石の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁性粉末材料をプレス装置のキャビティに充填する方法および磁石を製造する方法に関し、特に、異方性磁石の製造に好適に用いられる磁性粉末材料の充填方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、希土類焼結磁石として、希土類・コバルト系磁石と希土類・鉄・ボロン系磁石の二種類が各分野で広く用いられている。なかでも希土類・鉄・ボロン系磁石(以下、「R−T−(M)−B系磁石」と称する。RはYを含む希土類元素、TはFeまたはFeとCoおよび/またはNiとの混合物、Mは添加元素(例えば、Al、Ti、Cu、V、Cr、Ni、Ga、Zr、Nb、Mo、In、Sn、Hf、Ta、Wの少なくとも1種)、Bはボロンまたはボロンと炭素との混合物である。)は、種々の磁石の中で最も高い最大磁気エネルギー積を示し、価格も比較的安いため、各種電子機器へ積極的に採用されている。
【0003】
希土類合金を用いた焼結磁石は、例えば、以下の様にして製造されている。
【0004】
(1)原料金属を高温で溶解し、所定の組成の希土類合金塊を得る。
【0005】
(2)この合金塊を粉砕して、微小な希土類合金粉末(簡単のために「磁性粉末材料」とも言う。)を得る。
【0006】
(3)得られた磁性粉末材料(必要に応じて表面に潤滑剤が付与される)を磁界中でプレス成形することによって所定の形状の成形体を得る。
【0007】
(4)この成形体を高温(例えば約1000℃以上)で焼結し、焼結磁石を得る。
【0008】
(5)得られた焼結磁石の磁気特性を高めるために、さらに時効処理と呼ばれる熱処理を行う。
【0009】
(6)この焼結磁石の表面を研磨し、寸法と形状を整える。
【0010】
焼結磁石を効率よく生産するためには、所定の形状の成形体を効率よく生産することが必要であり、そのためには、キャビティに所定量の磁性粉末材料を再現性良く、且つ、キャビティ内の磁性粉末材料の充填密度が均一になるように充填することが望まれる。キャビティへの充填量がばらつくと得られる成形体の単体重量がばらつく。また、キャビティ内の磁性粉末材料の充填密度が均一でないと、所定の形状の成形体が得られなかったり、成形体内に密度ばらつきが形成されたりすることがある。
【0011】
従来、磁性粉末をプレス装置のキャビティ(成形空間)内に供給するには、フィーダボックス(またはフィーダカップ)をキャビティ上にスライドさせ、フィーダボックス内の粉末自重を利用してキャビティ内に落下させていた(自然充填法と呼ばれることもある)。
【0012】
図1(a)〜(c)は、従来のフィーダボックスによる粉末充填方法を模式的に示している。この従来方法によれば、図1(a)〜(c)に示されるように、粉末プレス装置のダイ10と下パンチ11とによって形成されるキャビティ12の上をフィーダボックス13が横方向にスライドするとき、フィーダボックス13内の磁性粉末14をキャビティ12内に充填していた。この方法では、単体重量ばらつきを低減する目的で、フィーダボックス13内に設けたアジテータ(不図示)などの加圧手段で充填粉末の上部を下方(矢印Aの方向)に加圧していた(例えば、特開2000−248301号公報参照)。
【0013】
このような従来のフィーダボックスを用いた充填法によれば、粉末をキャビティ内に確実に充填でき、しかも、フィーダボックスの底部による充填粉末の体積を「摺り切り」によってほぼ一定に制御することが可能である。また、このような充填方法を用いることによって、磁界配向が可能な程度の低密度充填を実現することができる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した摺り切り充填法を用いると、一回の充填工程に20秒から30秒程度以上の時間を要していた。
【0015】
また、磁性粉末材料の充填速度を向上させる方法として、磁気的吸引力を利用する方法が検討されている。例えば、特公平7−11013号公報には、円筒状のキャビティに磁性粉末を高速で充填するために、円筒状キャビティの中央部に磁性ポールを設け、キャビティの上部に設けたソレノイドコイルによって形成する磁界を用いて磁性粉末をキャビティに充填する方法が開示されている。この方法を用いることによって、外径18mmφ、内径16mmφ、高さ15mmの円筒形キャビティに3秒から5秒で磁性粉末材料が充填されたと記載されている。しかしながら、この充填方法を実行するためには、金型の上面にソレノイドコイル等が配置されるので、フィーダボックスの機構が複雑になるという問題がある。
【0016】
本発明は、上述の諸点に鑑みてなされたものであり、磁性粉末材料を均一に高速で再現性良くプレス装置のキャビティに充填する方法およびそのような充填方法を用いた磁石の製造方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の磁性粉末材料の充填方法は、プレス装置のキャビティに磁性粉末材料を充填する方法であって、(a)キャビティの上方に磁性粉末材料を供給する工程と、(b)前記キャビティを含む空間に交番減衰パルス磁界を印加することによって前記磁性粉末材料に前記キャビティの底部に向かう力を作用させる工程とを包含し、そのことによって上記目的が達成される。
【0018】
この工程(b)によって前記キャビティに充填された前記磁性粉末材料は実質的に脱磁されていることが好ましい。
【0019】
前記交番減衰パルス磁界が前記キャビティの底部よりも下方に設けられた電磁コイルによって形成されることが好ましい。
【0020】
前記交番減衰パルス磁界は複数のパルスを含み、前記複数のパルスの内のk番目(kは1以上の整数)のピークの絶対値が前記磁性粉末材料の保磁力以上のレベルにあり、かつ、k+1番目以降のパルスのピークの絶対値が前記磁性粉末材料の保磁力未満のレベルであって、k+1番目のピークの絶対値がk番目のピークの絶対値の40%以上95%以下の関係を満足することが好ましい。
【0021】
前記キャビティの底部には強磁性体から形成されたヨークが配置されていることが好ましい。
【0022】
ある好ましい実施形態において、工程(a)は、前記磁性粉末材料の自重によって前記磁性粉末材料を前記キャビティの内部に落下させる工程を包含する。
【0023】
本発明による磁石の製造方法は、上記のいずれかの充填方法を用いて前記キャビティに前記磁性粉末材料を充填する工程と、(c)前記キャビティに充填された前記磁性粉末材料を一軸プレス成形することによって成形体を作製する工程とを包含し、そのことによって上記目的が達成される。
【0024】
工程(c)の前に、前記キャビティに充填された前記磁性粉末材料に配向磁界を印加する工程をさらに包含してもよい。
【0025】
ある好ましい実施形態の磁石の製造方法は、前記成形体を焼結する工程をさらに包含する。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。以下では、本発明が好適に用いられる希土類焼結磁石の製造方法について説明するが、本発明は、これに限られない。
【0027】
図2(a)、図2(b)および図3を参照しながら、本実施形態による磁石の製造方法におけるプレス成形プロセス(磁性粉末材料の充填工程を含む)を説明する。図2(a)および(b)は、プレス形成プロセスにおける動作を模式的に示す図であり、図3は、プレス成形プロセスにおいて、キャビティ112の中心P1(図2参照)に形成される磁界の時間変化を示している。
【0028】
まず、磁性粉末材料として、例えば、R−T−(M)−B系磁性粉末材料を用意する。例えば、米国特許第4,770,723号および米国特許第4,792,368号の明細書に記載されている磁性粉末材料を好適に用いることができる。なお、プレス成形に供せられる磁性粉末材料の平均粒径(質量中位径)は、磁気特性の観点から、1.5μm〜10μmの範囲内にあることが好ましい。
【0029】
次に、図2(a)に示すように、プレス装置100のキャビティ112の底部112bよりも上方に磁性粉末材料14を供給する。
【0030】
ここで、プレス装置100は公知の一軸プレス成形装置であってよく、例えば、油圧式プレス装置を用いる。プレス装置100は、ダイ110と、下パンチ111aと、上パンチ111bとを有している。ダイ110の開口部110aと下パンチ111aとによってキャビティ(成形空間)112が規定されている。例えば、キャビティ112は円柱形で、直径25mm、深さ15mmである。
【0031】
磁性粉末材料14の供給は自然充填法を用いることが好ましく、例えば、フィーダボックス220内に収容された磁性粉末材料14が、図1(a)および(b)を参照しながら説明したのと同様の方法で、キャビティ112の底部112bよりも上方に供給される。このとき、磁性粉末材料14は自重によって、キャビティ112内に重力落下する。但し、キャビティ112内の磁性粉末材料14の充填密度は、その上に存在する磁性粉末材料14の重量の影響を受ける。ここでは、フィーダボックス220内に、キャビティ112の深さ(15mm)の2〜10倍程度の高さの磁性粉末材料14を用意する。なお、磁性粉末材料14としてR−T−(M)−B系磁性粉末など酸化されやすい材料を用いる場合には、酸化を抑制するために、フィーダボックス220内を不活性ガスで置換したり、または不活性ガスを流気させることが好ましい。
【0032】
次に、フィーダボックス220がキャビティ112を覆うように配置された状態で、キャビティ112を含む空間に交番減衰パルス磁界を印加することによって磁性粉末材料14にキャビティ112の底部112bに向かう力を作用させる(図3の期間T1)。この磁界を「充填磁界H1」と呼ぶこともある。
【0033】
プレス装置100は、キャビティ112の底部112bよりも下方に電磁コイル130を有しており、この電磁コイル130に所定の電流を流すことによって、キャビティ112を含む空間に磁界を形成する。例えば、内径135mm、外径340mm、高さ120mm、外径8×内径4mm、巻数120ターンの電磁コイル130を用いる。この電磁コイル130は、磁極間の中心P0に最大で約6.2Tの磁界を形成することができ、このときキャビティ112の中心P1に約0.8Tの磁界を形成する。P1における磁界の方向は、概ねキャビティ112の底部112に向かう方向であり、磁性粉末材料14にキャビティ112の底部112bに向かう力を作用させる。この磁気的な吸引力によって、磁性粉末材料14がキャビティ112内に高速充填される。
【0034】
この交番減衰パルス磁界は、例えば、図4(a)に示すようなプロファイルを有している。ここでは、充填磁界H1の強度の最大値(これを単に「充填磁界の強度」と呼ぶこともある。)が0.80T(テスラ)で、0.05秒で0T(テスラ)まで交番しながら減衰する充填磁界H1を印加する。この充填磁界H1を印加している期間に磁性粉末材料14に作用する磁気的な吸引力によって、磁性粉末材料14はキャビティ112内に充填される。さらに、この充填磁界H1は、交番減衰パルス磁界であるので、その磁界内にあるキャビティ112内およびフィーダボックス220内の磁性粉末材料14を脱磁する作用を有している。
【0035】
例えば、図4(b)に示したように、単調に(極性の反転なく)減衰するパルス磁界を充填磁界H1として印加しても、図4(a)に示した交番減衰パルス磁界を印加した場合と同様に、充填速度を向上することができ、単体重量ばらつきを減少することもできた。しかしながら、充填された磁性粉末材料14が磁化されてしまうので、概ね充填磁界H1の方向に沿って磁性粉末材料14が連なり針状の凝集体を形成してしまう。その結果、キャビティ112内の磁性粉末材料114の充填密度が不均一となり、均一な密度の成形体を作製することが出来なかった。場合によっては、割れが発生し所望の形状の成形体が得られないこともあった。また、フィーダボックス220のようなフィーダボックスを用いると、フィーダボックス内の磁性粉末材料も磁化されてしまい、連続給粉することができないこともある。
【0036】
本発明の充填方法においては、脱磁作用を有する交番減衰パルス磁界を充填磁界H1として印加することによって、単調減衰パルス磁界(図4(b)参照)を印加することによって生じる、キャビティ112内の充填密度の不均一性の問題の発生を防止している。また、フィーダボックス220内の磁性粉末材料は一旦磁化されるものの、脱磁されるので、連続給粉が可能となる。磁性粉末材料14は、キャビティ112に充填された状態で、実質的に脱磁されていることが好ましいが、プレス工程で問題とならない程度の充填密度の均一性を確保できる程度あれば、多少の磁化が残っていてもよい。これは、成形体の形状や密度、磁性粉末材料の成形性やプレス条件などにも依存するので、交番減衰パルス磁界のプロファイルは適宜設定すればよい。また、交番減衰パルス磁界を複数回印加してもよく、複数回印加する際の交番減衰パルス磁界のプロファイルは互いに異なっていても良い。但し、交番減衰パルス磁界の脱磁作用を十分に発揮させるためには、下記の条件を満足することが好ましい。
【0037】
まず、交番減衰パルス磁界は、極性が異なる少なくとも2つのパルスを含み、3つ以上のパルスを含むことが好ましい。交番減衰パルス磁界が含む複数のパルスの内のk番目(kは1以上の整数)のピークの絶対値は、磁性粉末材料14の保磁力以上のレベルにあり、かつ、k+1番目以降のパルスのピークの絶対値が磁性粉末材料14の保磁力未満のレベルであって、k+1番目のピークの絶対値がk番目のピークの絶対値の40%以上95%以下の関係を満足することが好ましい。これを減衰率で表すと、減衰率が5%以上で60%以下が好ましいことになる。パルスの数は多い方が好ましいが、充填磁界H1の印加時間が長くなると、工程時間が無用に延びるので適宜設定する。少なくとも第1パルスが磁性粉末材料14の保磁力以上の磁界強度を有し、第2パルスが第1パルスと逆極性で、絶対値が第1パルスの絶対値の40%以上95%以下の値を有していれば良い。
【0038】
充填磁界H1を印加する時間(図3中の期間T1)は、0.01秒以上1秒以下であることが好ましい。0.01秒よりも短いと充填速度を向上する効果や脱磁効果が十分に得られない。逆に、1秒を超える時間に亘って充填磁界H1を印加しても、これらの効果がより向上することがないので、工程時間を短縮するという観点から、印加時間T1は1秒以下で十分である。
【0039】
なお、充填磁界H1をキャビティ112内の磁性粉末材料14に有効に作用させるためには、下パンチ111aの上部(キャビティ112の底部112bを構成する部分)は強磁性体で形成されていることが好ましい。この部分が非磁性体で形成されていると、充填磁界H1の方向が乱れ、所望の効果が得られない。従って、下パンチ111aは強磁性体(例えばハイマンガン鋼)を用いて形成することが好ましい。キャビティ112内に形成される磁界(後述する配向磁界H2および脱磁磁界H3を含む)の強度および方向の均一性を高めるために、少なくとも下パンチ11aの上層部(キャビティ112の深さと同程度の厚さ)を強磁性体で形成することが好ましい。
【0040】
充填磁界H1の印加が終了した後、図1(c)を参照しながら説明したように、フィーダボックス220を移動させることによって、キャビティ112上の余分の磁性粉末材料14が摺り切られ、キャビティ112の内容積分の磁性粉末材料14がキャビティ112内に充填される。このとき、交番減衰パルス磁界を用いて充填しているためキャビティ112内の磁性粉末材料14はほとんど磁化されていないので、その表面はほとんど平坦で、キャビティ112の充填密度の均一性が高い。
【0041】
この後、図2(b)に示すように、上パンチ116を下降させ、ダイ110の開口部110aを塞いだ状態で、配向磁界H2(例えば0.8T〜1.4T)を印加しながら、上パンチ116を更に下降させ、磁性粉末材料14を一軸プレスする。プレス方向と平行な配向磁界H2を印加する場合には、充填磁界H1を形成するためのコイル130を用いて、配向磁界H2を形成することができる。勿論、配向磁界H2を形成するために別のコイルを設けても良い。ここでは、配向磁界H2がプレス方向と平行な場合を例示しているが、プレス方向と直角方向の配向磁界H2を印加しても良い。この場合、充填磁界H1もプレス方向と直角方向に印加することが磁気特性上好ましい。
【0042】
配向磁界H2を印加した状態で、上パンチ111bを降下させ、磁性粉末材料14に所定の圧力(例えば10MPa〜150MPa)を加え一軸プレス成形する。一軸プレス工程の終了前に、脱磁磁界(例えば1.6T)を印加する。なお、配向磁界H2および脱磁磁界H3を印加する期間(図3中のT2)は、一軸プレス工程の加圧時間内で適宜設定される。印加する磁界として、パルス磁界または静磁界を用いることが可能で、さらにパルス磁界と静磁界との組み合わせて用いても良い。印加する磁界の種類に応じて、期間T2は、プレス装置の形式にも依存するが、例えば、0.01秒〜30秒の範囲にある。期間T2は、パルス磁界だけを用いる場合には例えば5秒であり、静磁界だけを用いる場合には例えば10秒であり、パルス磁界と静磁界とを組み合わせて用いる場合には例えば10秒である。
【0043】
この後、上パンチ111bを退避して、下パンチ111aを上昇させ、ダイ110の開口部110aから露出した成形体をプレス装置100から移送し、次の工程に移る。
【0044】
以降、公知の方法に従って、焼結工程および時効処理工程を経て焼結磁石が得られる。焼結工程は、例えば約1000℃〜約1100℃の温度で、不活性ガス(希ガスや窒素ガス)雰囲気下、または真空中で、約1〜5時間実行される。時効処理は、例えば約450℃〜約800℃の温度で、約1〜8時間実行される。なお、焼結体に含まれる炭素の量を減らし、磁気特性を向上するために、上記焼結工程の前に、必要に応じて、磁性粉末の表面を覆う潤滑剤を加熱除去してもよい。加熱除去工程は、潤滑剤の種類にもよるが、例えば、約 100℃から600℃の温度で、減圧雰囲気下で、約3〜約6時間実行される。この後、必要に応じて、表面処理が施される。
【0045】
以下、具体的な実施例を説明する。
【0046】
まず、磁性粉末材料として、Nd:16質量%、Dy:5質量%、B:1質量%、Co:1質量%、Al:0.2質量%、Cu:0.1質量%、残部:鉄の合金組成を有する磁石粉末(FSSS粒径:3.0〜3.2μm、飽和磁化:1.6T)を用意した。
【0047】
上述したように、直径25mmφ、深さ15mmのキャビティ112に、フィーダボックス220を用いて、磁性粉末材料14を供給した後、充填磁界H1として図4(a)に示したプロファイルを有する交番減衰パルス磁界を印加した。強度(最大値)が異なる(0.36T、0.62T、0.82T)充填磁界H1を1回(0.05秒)印加した場合(実施例)の充填量の変動係数((標準偏差/平均値)×100)と充填密度をそれぞれ、図5(a)および(b)に示した。また、図5(a)および(b)には、充填磁界H1を印加しなかった(すなわち、充填磁界H1をゼロ磁界とした)場合(比較例1)の結果をあわせて示している。
【0048】
なお、用いたプレス装置100の下パンチ111aの上層にはハイマンガン鋼で形成されたヨークを配置した。また、このプレス装置100を用いて成形体密度が4.0g/cm3〜4.5g/cm3の成形体を形成した。サンプル数は、比較例も含め、いずれも20とした。なお、プレス成形プロセスのサイクルタイム(図3参照)は5秒であった。得られた成形体を公知の方法で焼結し、焼結磁石を得た。
【0049】
図5(a)からわかるように、充填磁界H1(0.36T以上)を印加することによって、充填量のばらつきが大幅に低減した。0.82Tの充填磁界H1を印加(図3参照、印加時間は2秒)したときの充填量の変動係数は、1.48%と非常に低かった。
【0050】
また、充填磁界H1の印加によってキャビティ112内の磁性粉末材料14が磁化されることもなく、フィーダボックス220を退避させた後のキャビティ112の表面が平坦になるように、磁性粉末材料14が均一に充填された。
【0051】
充填磁界H1を印加しなかった場合(比較例1)には、磁性粉末材料14を充填するのに約5秒を費やし、その充填量の変動係数は4.59%と高かった。
【0052】
また、比較のために、充填磁界H1として、最大値が0.82Tで図4(b)に示したプロファイルで単調に減衰する磁界を1回(0.05秒)印加した場合(比較例2)、充填密度の変動係数は実施例とほぼ同様に小さかったが、磁性粉末材料14が磁化された結果、不均一な分布となり、所望の成形体を得ることが困難であった。
【0053】
また、本発明の実施例によると、図5(b)に示したように、充填磁界H1の強度が上昇するとともに、充填磁界H1を印加しなかった場合よりも、充填密度が上昇(0.82Tで2.3g/cm3)するが、これらは磁界配向するのに支障の無いレベルであった。
【0054】
例えば、図6に示したように、0.82Tの充填磁界H1を印加した後、0.80Tの配向磁界H2(図3に示したようなパルス磁界、印加時間5秒)を印加することによって、磁性粉末粒子の配向性がさらに上昇し、最終的に得られた焼結磁石の残留磁束密度Brが上昇していることがわかる。さらに、図6に示したように、配向磁界H2を印加しない場合においても、充填磁界H1を印加することによって、磁性粉末粒子の配向性が向上していることがわかる。すなわち、充填磁界H1は、磁性粉末材料14をキャビティ112内に高速に充填するように作用するとともに、且つ、磁性粉末材料を十分に脱磁することができるので、優れた成形体を高い効率で生産することを可能にする。さらに、充填磁界H1は磁性粉末粒子を磁界配向させるようにも機能する。
【0055】
本発明の実施例を焼結磁石の製造方法を例に説明したが、本発明は、これに限られず、異方性ボンド磁石等の他の磁石の製造に適用することもできる。また、本発明による充填方法における交番減衰パルス磁界による脱磁の効果は、実施例で示したように、薄型の成形体を平行プレス(配向磁界の方向とプレス方向とが略平行)で成形する際に顕著であるが、他の形状の成形体の成形や直交プレス(配向磁界の方向とプレス方向とが直交)においても効果を奏する。なお、薄型の成形体とは、成形体の加圧された面の面積(典型的にはキャビティの底面積に対応)の平方根が高さ(キャビティ深さに対応)よりも大きいものを指すこととする。
【0056】
本実施例では、交番減衰パルス磁界のみを印加して、磁性粉末材をキャビティに充填したが、これに限られず、交番減衰パルス磁界とともに静磁界をさらに印加しても良い。
【0057】
【発明の効果】
本発明によると、磁性粉末材料を均一に高速で再現性良くプレス装置のキャビティに充填する方法が提供される。特に、本発明によると、ストリップキャスト法をはじめとする急冷法で作製された希土類合金粉末を用いて、均一な密度の成形体を高い効率で成形できるので、希土類焼結磁石を高い生産性で製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(c)は、従来のフィーダボックスによる粉末供給方法を模式的に示す工程断面図である。
【図2】(a)および(b)は、本発明によるプレス成形プロセスを説明するための模式図である。
【図3】本発明によるプレス成形プロセスにおける磁界印加の時間プロファイルを示す模式図である。
【図4】(a)本発明による充填方法において充填磁界H1として用いられる交番減衰パルス磁界のプロファイルを示す図であり、(b)は比較のために単調減衰パルス磁界のプロファイルを示す図である。
【図5】(a)は充填磁界H1の強度と充填量の変動係数との関係を示すグラフであり、(b)は充填磁界H1の強度と充填密度との関係を示すグラフである。
【図6】充填磁界H1の強度と残留磁束密度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
10、110 ダイ
11、111a 下パンチ
12、112 キャビティ(成形空間)
13、220 フィーダボックス
14 磁性粉末材料
100 プレス装置(粉末プレス成形装置)
110a ダイの開口部
111b 上パンチ
112b キャビティの底部
130 電磁コイル
Claims (2)
- (a)底部が強磁性体で形成されたキャビティの上方を覆うように、希土類焼結磁石用の磁性粉末材料を収容したフィーダボックスを配置する工程と、
(b)前記キャビティの上方を覆うように前記フィーダボックスを配置した状態で、前記キャビティの前記底部よりも下方に設けられた電磁コイルによって前記キャビティを含む空間に交番減衰パルス磁界を形成し、前記磁性粉末材料に前記キャビティの底部に向かう力を作用させ、前記磁性粉末材料を前記キャビティに充填する工程と、
(c)前記キャビティに充填された前記磁性粉末材料を一軸プレス成形することによって成形体を作製する工程と、
(d)前記成形体を焼結する工程と、
を包含する、希土類焼結磁石の製造方法。 - 工程(c)の前に、前記キャビティに充填された前記磁性粉末材料に配向磁界を印加する工程をさらに包含する請求項1に記載の希土類焼結磁石の製造方法。
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