JP2004266149A - 樹脂結合型磁石用組成物及びそれを用いた樹脂結合型磁石 - Google Patents
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Abstract
【課題】工業的に優れた可使時間を有し、かつ磁気特性や機械強度などに優れた、磁性粉末と熱硬化性の樹脂バインダーとを含有する樹脂結合型磁石用組成物及びそれを成形して得られる樹脂結合型磁石を提供すること。
【解決手段】構成元素中に希土類および遷移金属元素を含む磁性粉末(A)と、樹脂バインダー(B)とからなる樹脂結合型磁石用組成物において、磁性粉末(A)が、無機燐酸系化合物で表面処理され、かつアビエチン酸系化合物で被覆されており、樹脂バインダー(B)が熱硬化性樹脂であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物、及びそれを用いた樹脂結合型磁石によって提供する。
【選択図】 なし
【解決手段】構成元素中に希土類および遷移金属元素を含む磁性粉末(A)と、樹脂バインダー(B)とからなる樹脂結合型磁石用組成物において、磁性粉末(A)が、無機燐酸系化合物で表面処理され、かつアビエチン酸系化合物で被覆されており、樹脂バインダー(B)が熱硬化性樹脂であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物、及びそれを用いた樹脂結合型磁石によって提供する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂結合型磁石用組成物及びそれを用いた樹脂結合型磁石に関し、さらに詳しくは、工業的に優れた可使時間を有し、かつ磁気特性や機械強度などに優れた、磁性粉末と熱硬化性の樹脂バインダーとを含有する樹脂結合型磁石用組成物及びそれを成形して得られる樹脂結合型磁石に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、フェライト磁石、アルニコ磁石、希土類磁石等は、モーターをはじめとする種々の用途に用いられている。しかし、これらの磁石は、主に焼結法により作られるために、一般に脆く、薄肉のものや複雑な形状のものが得難いという欠点を有している。それに加えて、焼結時の収縮が15〜20%と大きいため、寸法精度の高いものが得られず、精度を上げるには研磨等の後加工が必要であるという欠点をも有している。
【0003】
一方、樹脂結合型磁石は、これらの欠点を解決すると共に新しい用途をも開拓するために、近年になって開発されたものであるが、通常は、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の熱可塑性樹脂をバインダーとし、これに磁性粉末を充填することにより製造されている。
【0004】
しかし、こうした熱可塑性樹脂をバインダーとして用いる樹脂結合型磁石は、成形時に200℃以上の高温下に晒されるため、磁気特性、特に保磁力や角型性の低下が免れない特徴があり、成形後の保磁力などの磁気特性の低下等を低く抑える樹脂結合型磁石成形品を得るのが難しかった。
【0005】
また、エポキシ樹脂やビス・マレイミドトリアジン樹脂などの熱硬化性樹脂をバインダーとし、これに磁性粉末を充填したものも提案されているが、バインダー量が希少であるため圧縮成形法による単純成形品しか得られていない。
【0006】
合成樹脂にN−オキシル類を配合することで、樹脂の保存安定性や硬化性に優れ、経時劣化に伴う着色を抑えるようにした樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、ラジカル硬化性樹脂とレドックス作用を有する金属化合物とを含んだ樹脂組成物に、フェニルスルフォン酸類とN−オキシル類化合物を必須成分として含有させた、優れた貯蔵安定性を有し硬化特性を損なわず常温で硬化しうる硬化性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
しかし、これら先行技術において、N−オキシル類化合物は、ゲル化防止剤あるいは重合防止剤として極めて少量添加されており、遷移金属を多量に含有する樹脂結合型磁石の製造に適した樹脂組成物への応用可能性に関する記載は見当たらない。
【0008】
近年、小型モーター、音響機器、OA機器向けの樹脂結合型磁石には、機器の小型化に伴なって、磁気特性に優れ、かつ可使時間が充分に大きい磁石用組成物が強く要請されているが、従来の樹脂結合型磁石には、これら条件を共に満たすものはなく、成形性、機械的強度などにも優れた錆びにくい希土類系の樹脂結合型磁石用組成物の出現が切望されていた。
【0009】
【特許文献1】
特開平10−7918号公報(特許請求の範囲、[0010])
【特許文献2】
特開2001−11328号公報(特許請求の範囲、[0008])
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、熱硬化性樹脂を樹脂バインダーとして含有し、可使時間が充分に大きく磁気特性が良好で、しかも耐錆特性、機械的強度などにも優れた樹脂結合型磁石用組成物及びそれを用いた樹脂結合型磁石を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意研究を重ねた結果、磁性粉末を予め無機燐酸系化合物で表面処理した後、アビエチン酸系化合物で被覆しておき、これに特定の熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂バインダーを用いると、磁石用組成物の可使時間を充分に大きくでき、さらに、射出成形法やトランスファー成形法などによって成形性よく樹脂結合型磁石用組成物を作製できるだけでなく、特に保磁力や配向度などの磁気特性、機械強さにも優れた樹脂結合型磁石が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、構成元素中に希土類および遷移金属元素を含む磁性粉末(A)と、樹脂バインダー(B)とからなる樹脂結合型磁石用組成物において、磁性粉末(A)が無機燐酸系化合物で表面処理され、かつアビエチン酸系化合物で被覆されており、樹脂バインダー(B)が熱硬化性樹脂であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
【0013】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、磁性粉末(A)は、異方性磁場(HA)が4000kA/m以上であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
【0014】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、磁性粉末(A)が、粒径100μm以下の磁性粉末を、磁性粉末全量に対して50重量%以上含むことを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
【0015】
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、アビエチン酸系化合物は、25℃で液状であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
【0016】
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、樹脂バインダー(B)が、ラジカル重合反応性の熱硬化性樹脂(B−1)を主成分とし、有機過酸化物(B−2)を含むことを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
【0017】
また、本発明の第6の発明によれば、第1又は5の発明において、樹脂バインダー(B)が、さらにN−オキシル類化合物(C)を含有することを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
【0018】
また、本発明の第7の発明によれば、第5の発明において、熱硬化性樹脂(B−1)は、25℃で液状であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
【0019】
また、本発明の第8の発明によれば、第5又は7の発明において、熱硬化性樹脂(B−1)は、ビニルエステル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、及びポリエステル(メタ)アクリレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
【0020】
また、本発明の第9の発明によれば、第5のいずれかの発明において、有機過酸化物(B−2)は、熱硬化性樹脂を150℃以下の温度で硬化可能とする化合物であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
【0021】
また、本発明の第10の発明によれば、第5又は9の発明において、有機過酸化物(B−2)は、ジアルキル系化合物又はパーオキシケタール系化合物であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
【0022】
また、本発明の第11の発明によれば、第6の発明において、N−オキシル類化合物(C)は、分子鎖末端に、次の一般式(1)
【0023】
【化3】
【0024】
式(1)中、X1、およびX2は、それぞれ独立して水素原子、−OR5基、−OCOR6基または−NR7R8基を表し、R1、R2、R3、およびR4は、それぞれ独立して炭素数1以上のアルキル基を表し、R5、R6、R7、およびR8は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜16のアルキル基で表される構造、または一般式(2)
【0025】
【化4】
【0026】
式(2)中、式中、X3、X4、およびX5は、それぞれ独立して水素原子、−OR13基、−OCOR14基または−NR15R16基を表し、R9、R10、R11、およびR12は、それぞれ独立して炭素数1以上のアルキル基を表し、R13、R14、R15、およびR16は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜16のアルキル基で表される構造のうち少なくとも一種の構造を有する樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
【0027】
また、本発明の第12の発明によれば、第6又は11の発明において、N−オキシル類化合物(C)は、熱硬化性樹脂(B−1)100重量部に対して、0.1〜10重量部配合することを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
【0028】
さらに、本発明の第13の発明によれば、第1〜12のいずれかの発明において、可使時間が、30℃の密閉静置状態において120時間以上であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
【0029】
一方、本発明の第14の発明によれば、第1〜13のいずれかの発明の樹脂結合型磁石用組成物を、射出成形法、押出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、またはトランスファー成形法から選ばれるいずれかの成形法により成形してなる樹脂結合型磁石が提供される。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の樹脂結合型磁石用組成物及びそれを用いてなる樹脂結合型磁石について詳細に説明する。
【0031】
1.樹脂結合型磁石用組成物
本発明は、構成元素中に希土類および遷移金属元素を含む磁性粉末(A)を、予め無機燐酸系化合物(a1)で表面処理し、さらに特定のアビエチン酸系化合物(a2)で被覆し、樹脂バインダー(B)として熱硬化性樹脂(B−1)を主成分として配合した樹脂結合型磁石用組成物であり、可使時間が長く成形性がよいなどの特徴がある。
【0032】
なお、樹脂結合型磁石用組成物の可使時間は、ポットライフともいわれ、液状樹脂に硬化剤などを加えた時点から粘度が上昇し、成形不可能となるまでの時間、すなわちゲル化・硬化などが起こらず、成形可能な流動性を保っている時間、或いは成形後の機械強さが、組成物の調製直後に成形した成形組成物の機械強さ(初期値)が80%まで低下する時間のいずれか早い方の時間を意味する。本発明のような樹脂結合型磁石用組成物の系では、一般的に機械強さが低下する時間の方が早いとされている。
【0033】
(A)磁性粉末
磁性粉末は、その構成元素中に希土類元素および遷移金属元素を含み、かつ無機燐酸系化合物とアビエチン酸系化合物で表面処理された磁性粉末であれば、特に制限はない。
【0034】
その希土類元素としては、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)が挙げられ、一方、遷移金属元素としては、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びマンガン(Mn)が挙げられ、これらの群それぞれから1種又は2種以上が選択される。
遷移金属元素では、これ以外にCr、V又はCuのいずれかを含有してもよい。特に好ましい希土類元素は、Nd又はSmのいずれか、遷移金属元素は、Fe又はCoのいずれかである。
【0035】
また、磁性粉末(A)は、異方性磁場(HA)が4000kA/m以上であることが望ましく、例えば、希土類−コバルト系、希土類−鉄−ほう素系、希土類−鉄−窒素系の磁性粉の単独もしくは混合粉、またはフェライト系磁性粉との混合系磁性粉末などが挙げられる。
【0036】
希土類−鉄−窒素系であるSm−Fe−N系の磁性粉末は、磁性粉として還元拡散法によって得られるSmFe系合金粗粉を窒化処理、微粉砕して製造できる。また、SmCo5系の磁性粉末は、同じく還元拡散法によって得られた粗粉を微粉砕した合金微粉末から製造できる。
【0037】
さらに、Nd−Fe−B系の磁性粉末は、液体急冷法によって得られた合金粉末、又はHDDR(Hydrogenation−Disproportionation−Desorption−Recombination)法によって得られた異方性Nd−Fe−B系合金粉末を用いて製造できる。
液体急冷法によって得られたNd−Fe−B系や、HDDR法によって得られた異方性Nd−Fe−B系の磁性粉末は、特異な形状を有した比較的大きな粒子を大量に含んでいるため、ジェットミルやボールミル等で粉砕し用いることが望ましい。
【0038】
フェライト系磁性粉末は、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属と酸化鉄を含有するもので、六方晶フェリ強磁性結晶を主相とするM型のフェライト磁石である。具体的には、バリウムフェライト系(BaO・6Fe2O3)、ストロンチウムフェライト系(SrO・6Fe2O3)などが挙げられ、この他に、SrZn2+ 2Fe16O27などで示されるW型の六方晶フェライトも使用できる。これらの中で、特に好ましいのはストロンチウムフェライト系磁性粉末である。
【0039】
希土類−遷移金属系磁性粉末は、異方性磁場が高く、優れた磁気性能を有するが高価である。これに対して、フェライト系磁性粉末は、磁気性能では希土類−遷移金属系磁性粉末に及ばないが、安価で入手しやすい利点がある。このため、希土類−遷移金属系磁性粉末にフェライト系磁性粉末を混合したハイブリッド系磁性粉末として用いることができる。希土類−遷移金属系磁性粉末100重量部に対して、フェライト系磁性粉末10〜70重量部、好ましくは30〜60重量部混合したハイブリッド系磁性粉末が有効である。
【0040】
磁性粉末は、粒径が100μm以下のものを50重量%以上、好ましくは60重量%以上含むと著しい磁気特性を発揮する。また、等方性磁性粉よりも磁場中での成形が必至となる異方性磁性粉の方が、配向特性の効果が著しい。
これらの磁性粉末は、無機燐酸系化合物(a1)で表面処理し、さらにアビエチン酸系化合物(a2)で被覆して用いる必要がある。
【0041】
(a1)無機燐酸系化合物
無機燐酸系化合物は、上記の磁性粉末を予め処理することで、樹脂バインダー成分の効力を高め、その表面の耐候性を高める化合物である。無機燐酸系化合物の代表ともいうべき無機燐酸には、燐酸の他に、亜燐酸、次亜燐酸、ピロ燐酸、直鎖状のポリ燐酸、環状のメタ燐酸が含まれる。
【0042】
これらの無機燐酸系化合物は、磁性粉末表面にホパイト、フォスフォフェライト等からなる燐酸亜鉛系、ショルツァイト、フォスフォフィライト、ホパイト等からなる燐酸亜鉛カルシウム系、マンガンヒューリオライト、鉄ヒューリオライト等からなる燐酸マンガン系、ストレンナイト、ヘマタイト等からなる燐酸鉄系などの被膜を形成させる処理剤であり、これら処理剤は単独もしくは複数で使用することも可能である。一般的には無機燐酸をはじめ種々の燐酸化合物、キレート剤、中和剤等と混合して用いる。これら無機燐酸系化合物は、湿式処理法や乾式処理法によって磁性粉末へ表面処理でき、その後、100℃前後で10〜30時間の加熱処理を併せて行うと、より安定した処理済磁性粉末が得られる。
【0043】
無機燐酸系化合物の添加量は、その成分の種類や濃度により異なるが、基本的には磁性粉末に対して0.01重量%以上10重量%以下でよく、好ましくは0.05重量%以上7重量%以下であるが、0.1重量%以上5重量%以下がより好ましい。
これによって、磁性粉末に厚さ5〜100nm程度の燐酸系化合物の膜を形成できる。添加量が0.01重量部未満の場合は、膜が十分に形成されず、また10重量部を超えると磁性粉末の密度が低下し、磁気特性、機械的強度が低下する。
【0044】
上記希土類−鉄−窒素系の合金粉末を無機燐酸系化合物で事前に表面処理すれば、例えば90重量%以上の高充填化が可能であり、特に優れた可使時間を有する樹脂結合型磁石用組成物が得られるが、さらに特定のアビエチン酸系化合物(a2)で被覆処理することで、より性能を高めることができる。
【0045】
(a2)アビエチン酸系化合物
アビエチン酸系化合物は、次の一般式(3)で示されるアビエチン酸および/またはその異性体もしくはそれらを変性した化合物である。
【0046】
C19HnCOOH …(3)
式(3)中、25≦n≦33である。
【0047】
これらのアビエチン酸系化合物としては、例えば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、レボピマール酸、バルストリン酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、デキストロピマール酸、イソデキストロピマール酸、ジヒドロデキストロピマール酸等の樹脂酸、およびこれらの水添加物、不均化物、重合物、例えばフェノール類やアルコール類とのエステル化物、マレイン化物、金属イオン類との化合物などが挙げられる。
【0048】
アビエチン酸やその各種化合物は、一般にロジンと称され各種の形態で市販されているが、25℃で液状であるものが特に好適である。単独では25℃で固体の化合物であっても、エタノール、ベンゼン、クロロホルム、エーテル、アセトン、希水酸化ナトリウム水溶液などに溶解するか、均一に分散しうるものであれば、これらの溶液として使用することができる。
アビエチン酸および/またはその異性体もしくはそれらを変性した化合物が25℃で液状であれば、磁性粉末の強固な凝集を防ぐことができ、特に異方性の磁性粉末には結果的に配向度の低下を招くこと無く良好な磁気特性を得ることができ、また機械強度の低下を招くことのない被覆処理が可能となる。
従来品のアビエチン酸系化合物(ロジン類)のうち、アビエチン酸の重合物など高分子化合物を含有しているものは、有機溶媒などにも溶解しにくく、25℃で固体であるため、凝集に伴う不均一皮膜の形成、配向度の低下によって所期の磁石用樹脂組成物が得られなくなる場合がある。
【0049】
アビエチン酸系化合物による磁性粉末の被覆は、湿式処理法や乾式処理法などが採用でき、予め単独で被覆処理してもよく、樹脂バインダー等と磁性粉末との混合時に併せて添加、処理しても良い。メカノフュージョン法により予め単独で被覆処理を行えば、より安定した被覆磁性粉末が得られる。
【0050】
アビエチン酸系化合物の添加量は、磁性粉末に対して0.01重量%以上10重量%以下でよく、好ましくは0.1重量%以上7重量%以下であり、1重量%以上5重量%以下がより好ましい。添加量が0.01重量%未満の場合は、磁性粉末が十分に被覆されず、また10重量%を超えると密度の低下に伴う磁気特性の低下、機械強度の低下等のため、実用に耐えうる樹脂結合型磁石を得ることができない。
【0051】
(B)樹脂バインダー
本発明の樹脂結合型磁石用組成物に用いられる樹脂バインダー(B)は、熱硬化性樹脂(B−1)であり、有機過酸化物(B−2)を含んでいる。樹脂バインダー(B)には、N−オキシル類化合物(C)や、その他の添加剤(D)として、フェノール、重合禁止剤、低収縮化剤などを配合できる。
【0052】
(B−1)熱硬化性樹脂
熱硬化性樹脂としては、成形時の金型内で硬化し磁性粉末のバインダーとして働くものであれば、特にその種類に限定されるものではない。
【0053】
例えば、ラジカル重合反応性を有するビニルエステル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、及びポリエステル(メタ)アクリレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂が挙げられる。
【0054】
不飽和ポリエステル樹脂は、市販の不飽和ポリエステル樹脂を用いることができる。例えば、不飽和多塩基酸及び/又は飽和多塩基酸とグリコール類を分子量5000程度以下に予備的に重合させてオリゴマーやプレポリマー化させた主剤に、架橋剤を兼ねるモノマー類、反応を開始させる硬化剤、及びその他の添加剤等を配合したものである。
【0055】
不飽和多塩基酸としては、例えば無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等を、また、飽和酸としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ヘット酸、テトラブロム無水フタル酸等が挙げられる。
【0056】
また、グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物、ジブロムネオペンチルグリコール、ペンタエリスリットジアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0057】
次に、ビニルエステル樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、エポキシ化合物と不飽和一塩基酸とをエステル化触媒を用いて反応させて得られる。
上記ビニルエステル樹脂の原料として用いられるエポキシ化合物は、分子中に、少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。
【0058】
具体的には、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS等のビスフェノール類と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られるエピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フェノール、クレゾール、ビスフェノールとホルマリンとの縮合物であるノボラックとエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるノボラックタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、安息香酸とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;水添加ビスフェノールやグリコール類とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;ヒダントインやシアヌール酸とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られる含アミングリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、これらエポキシ樹脂と多塩基酸類および/またはビスフェノール類との付加反応により分子中にエポキシ基を有する化合物でもよい。これらエポキシ化合物は、一種類のみを用いてもよく、適宜二種類以上を混合してもよい。
【0059】
さらに、上記ビニルエステル樹脂の原料として用いられる不飽和一塩基酸は、特に限定されないが、具体的には、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸等が挙げられる。また、マレイン酸、イタコン酸等のハーフエステル等を用いてもよい。さらに、これらの化合物と、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の多価カルボン酸や、酢酸、プロピオン酸、ラウリル酸、パルミチン酸等の飽和一価カルボン酸や、フタル酸等の飽和多価カルボン酸またはその無水物や、末端基がカルボキシル基である飽和あるいは不飽和アルキッド等の化合物とを併用してもよい。これら不飽和一塩基酸は、一種類のみを用いてもよく、適宜二種類以上を混合してもよい。
【0060】
上記エステル化触媒は、具体的には、ジメチルベンジルアミン、トリブチルアミン等の第三級アミン類;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩;塩化リチウム、塩化クロム等の無機塩;2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;テトラメチルホスフォニウムクロライド、ジエチルフェニルプロピルホスフォニウムクロライド、トリエチルフェニルホスフォニウムクロライド、ベンジルトリエチルフェニルホスフォニウムクロライド、ジベンジルエチルメチルホスフォニウムクロライド、ベンジルメチルジフェニルホスフォニウムクロライド、テトラフェニルホスフォニウムブロマイド等のホスフォニウム塩;第二級アミン類;テトラブチル尿素;トリフェニルホスフィン;トリトリールホスフィン;トリフェニルスチビン等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらエステル化触媒は、一種類のみを用いてもよいし、適宜二種類以上を混合してもよい。
【0061】
また、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリイソシアネートとポリヒドロキシ化合物あるいは多価アルコール類とを反応させた後、さらに水酸基含有(メタ)アクリル化合物および必要に応じて水酸基含有アリルエーテル化合物を反応させて得ることができる。また、水酸基含有(メタ)アクリル化合物とポリヒドロキシ化合物あるいは多価アルコール類とを反応させた後、さらにポリイソシアネートを反応させてもよい。
【0062】
上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料として用いられるポリイソシアネートは、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネートおよびその異性体、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
【0063】
具体的には、商品名:バーノックD 750、商品名:クリスポンNX(大日本インキ化学工業株式会社製)、商品名:デスモジュールL(住友バイエル社製)、商品名:コロネートL(日本ポリウレタン社製)、商品名:タケネートD102(武田薬品社製)、商品名:イソネート143L(三菱化成社製)等が挙げられ、特に限定されない。これらポリイソシアネートは、一種類のみでも、二種類以上を混合してもよい。
【0064】
また、上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料として用いられる多価アルコール類は、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ビスフェノールAとプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドとの付加物、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−プロパンジオール、1,2−シクロヘキサングリコール、1,3−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサングリコール、パラキシレングリコール、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオール、2,6−デカリングリコール、2,7−デカリングリコール等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら多価アルコール類は、一種類のみを用いてもよいし、適宜、二種類以上を混合してもよい。
【0065】
さらに、上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料として用いられるポリヒドロキシ化合物は、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
具体的には、グリセリンエチレンオキシド付加物、グリセリンプロピレンオキシド付加物、グリセリンテトラヒドロフラン付加物、グリセリンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパンエチレンオキシド付加物、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパンテトラヒドロフラン付加物、トリメチロールプロパンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物、ペンタエリスリトールエチレンオキシド付加物、ペンタエリスリトールプロピレンオキシド付加物、ペンタエリスリトールテトラヒドロフラン付加物、ペンタエリスリトールエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトールエチレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトールプロピレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトールテトラヒドロフラン付加物、ジペンタエリスリトールエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物等が挙げられるが、特に限定されない。これらポリヒドロキシ化合物は、一種類のみを用いてもよいし、適宜、二種類以上を混合してもよい。
【0066】
上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料として用いられる水酸基含有(メタ)アクリル化合物は、特に限定されないが、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら水酸基含有(メタ)アクリル化合物は、一種類のみを用いてもよいし、適宜、二種類以上を混合してもよい。
【0067】
上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料として必要に応じて用いられる水酸基含有アリルエーテル化合物は、具体的には、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、トリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、1,2−ブチレングリコールモノアリルエーテル、1,3−ブチレングリコールモノアリルエーテル、ヘキシレングリコールモノアリルエーテル、オクチレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら水酸基含有アリルエーテル化合物は、一種類のみを用いてもよいし、適宜、二種類以上を混合してもよい。
【0068】
また、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、不飽和あるいは飽和ポリエステルの末端に(メタ)アクリル化合物を反応させて得ることができる。上記ポリエステルの原料は、上記不飽和ポリエステル樹脂の原料として例示したと同様の化合物を用いることができる。
【0069】
上記ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂の原料として用いられる(メタ)アクリル化合物は、具体的には、不飽和グリシジル化合物、(メタ)アクリル酸等の不飽和一塩基酸及びそのグリシジルエステル類等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら(メタ)アクリル化合物は、一種類のみを用いてもよいし、適宜、二種類以上を混合してもよい。
【0070】
さらに、架橋剤を兼ねるモノマー類としては、例えば、(I)スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル等のビニルモノマー類、(II)ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルイソフタレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテトラブロムフタレート等のアリルモノマー類、(III)フェノキシエチルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステル類等が挙げられる。
【0071】
これらの中でも、不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂が好ましい。また、重合度や分子量に制約されないが、150℃以下の温度では液状であり、25℃における粘度が5000mPa・s以下である樹脂が成形性の面から好適である。
【0072】
(B−2)有機過酸化物
有機過酸化物は、一般に、ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂に配合され、前記の熱硬化性樹脂原料の反応を開始させる硬化剤である。
【0073】
有機過酸化物としては、例えば、(I)メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、(II)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類、(III)t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジ−イソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、(IV)ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−クミルパーオキサイド、α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド類、(V)アセチルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、オクタノニルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、サクシニック酸パーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、トルオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、(VI)ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペロキシジカーボネート、ジ−n−プロピルペロキシジカーボネート、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペロキシジカーボネート、ジ−ミリスチルペロキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルペロキシジカーボネート、ジ−メトキシイソプロピルペロキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)ペロキシジカーボネート、ジアリルペロキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類、(VII)t−ブチルペロキシアセテート、t−ブチルペロキシイソブチレート、t−ブチルペロキシピバレート、t−ブチルペロキシネオデカノエート、クミルペロキシネオデカノエート、t−ブチルペロキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペロキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペロキシラウレート、t−ブチルペロキシベンゾエート、ジ−t−ブチルペロキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペロキシ)ヘキサン、t−ブチルペロキシマレイックアシッド、t−ブチルペロキシイソプロピルカーボネート、クミルペロキシオクトエート、t−ヘキシルペロキシネオデカノエート、t−ヘキシルペロキシピバレート、t−ブチルペロキシネオヘキサノエート、t−ヘキシルペロキシネオヘキサノエート、クミルペロキシネオヘキサノエート等のパーオキシエステル類や、(VIII)アセチルシクロヘキシルスルフォニルペロキサイド、t−ブチルペロキシアリルカーボネート等が挙げられる。
【0074】
これらの有機過酸化物は、単独で用いることができるが、炭化水素溶液類やフタル酸エステル類に希釈し、もしくは固形粉末に吸収させてもよい。
有機過酸化物としては、それが分解して半減するまでの時間が10時間となる温度(以下、これを10時間半減期温度という)が150℃以下の過酸化物を使用することが望ましく、さらには、10時間半減期温度が40〜135℃である過酸化物がより望ましい。
10時間半減期温度が150℃を超えるものを選択すると、充分な硬化成形体を得るための硬化温度が高くなり好ましくない。一方、40℃よりも低くなると過酸化物自体の取り扱い性が困難になるばかりでなく、磁石用組成物の保管特性が悪くなり、生産性に欠ける結果を招くことがある。
【0075】
これらの有機過酸化物の添加量は、希釈率や活性酸素量によって異なるため、一概に規定できないが、熱硬化性樹脂100重量部に対して、0.05〜10重量部が好ましい。
有機過酸化物は、単独又は2種以上の混合系で用いることができるが、最終的に得られる樹脂結合型磁石用組成物の可使時間をより長く確保するためには、パーオキシケタール系、又はジアルキル系過酸化物のいずれかを単独で用いることが極めて好ましい。
【0076】
(C) N−オキシル類化合物
N−オキシル類化合物は、樹脂結合型磁石用組成物の保管中の可使時間をより長くさせるために添加できる5員環のピロリジン系化合物、6員環のピペリジン系化合物などの含窒素環状化合物である。
【0077】
本発明のような磁性粉末などを含む系では、レドックス反応のみならず、これに相まってラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂やスチレン等との複雑な反応も生起し、その促進効果も極めて高く、通常の遷移金属単体系の組成物よりも、可使時間が極めて短くなる。このような磁性粉末、ラジカル硬化剤、熱硬化性樹脂を含有する組成物に対して、N−オキシル類化合物を添加すると、かかる特殊な反応の抑制効果に極めて有効に機能し、可使時間を長くすることできる。
【0078】
5員環のピロリジン系化合物としては、その化合物の分子鎖末端が、次の一般式(1)
【0079】
【化5】
【0080】
式(1)中、X1、X2は、それぞれ独立して水素原子、−OR5基、−OCOR6基または−NR7R8基を表し、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して炭素数1以上のアルキル基を表し、R5、R6、R7、R8は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜16のアルキル基で表わされる化合物である。
【0081】
6員環のピペリジン系化合物としては、その化合物の分子鎖末端が、次の一般式(2)
【0082】
【化6】
【0083】
上記式(2)中、X3、X4、X5は、それぞれ独立して水素原子、−OR13基、−OCOR14基または−NR15R16基を表し、R9、R10、R11、R12は、それぞれ独立して炭素数1以上のアルキル基(好ましくは炭素数1〜5のアルキル基)を表し、R13、R14、R15、R16は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜16のアルキル基(好ましくは炭素数1〜12のアルキル基)で表される化合物である。
【0084】
さらに、N−オキシル類化合物としては、上記の他に、分子鎖末端が次の一般式(3)
【0085】
【化7】
【0086】
但し、式(3)中、R17、R18は、それぞれ独立して炭素数4以上のアルキル基で表わされる構造を有する化合物を用いることもできる。
【0087】
上記のN−オキシル類としては、式(2)で示される6員環のピペリジン系化合物が好ましい。
例えば、ジ−t−ブチルニトロキシル、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オール、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−アセテート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−2−エチルヘキサノエート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−ステアレート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−4−t−ブチルベンゾエート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)コハク酸エステル、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アジピン酸エステル、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)n−ブチルマロン酸エステル、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)フタレート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)イソフタレート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)テレフタレート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)ヘキサヒドロテレフタレート、N,N’−ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アジパミド、N−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カプロラクタム、N−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)ドデシルサクシンイミド、2,4,6−トリス−N−ブチル−N−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−s−トリアジン、等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらN−オキシル類は、一種類のみを用いてもよいし、適宜二種類以上を混合してもよい。
【0088】
中でも好ましいのは、上記の式(2)中、X3、X4、X5が、それぞれ独立して水素原子、−OH基、−COOH基、−OCOR14基または−NH2基を表し、R9、R10、R11、R12が、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基、R14が炭素数1〜10のアルキル基で表される構造を有するN−オキシル類化合物である。
【0089】
このような化合物として、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル、或いはビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケートが挙げられる。2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシルは、次の一般式(4)で示すことができる。
【0090】
【化8】
【0091】
これらのN−オキシル類化合物は、安定剤の中でもアルキルラジカルと反応後、さらにパーオキシラジカルとの反応性を有するもの、又はパーオキシラジカルとの反応後、さらにアルキルラジカルとの反応性を有するものが好ましい。本発明では、このような反応によって、樹脂組成物の可使時間をより長く確保できるものと考えられる。アルキルラジカルと反応後、さらにパーオキシラジカルとの反応性を有するものの代表例が、前記の一般式(4)で示された2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシルである。
【0092】
N−オキシル類化合物の添加量は、その種類によって効果が大きく異なるため画一的に規定はできないが、熱硬化性樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.3〜5重量部とする。添加量が0.1重量部より少ないと、十分な可使時間を確保できない。一方、10重量部より多いと、成形体の密度の低下や表面の荒れを生じるため望ましくない。
【0093】
N−オキシル類化合物は、ナフテン酸コバルトやオクチル酸コバルト等のコバルト有機酸塩;アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、ジメドン等のβ−ジケトン類;ジメチルアニリン等の芳香族3級アミン類;メルカプタン類;トリフェニルホスフィン、2−エチルヘキシルホスファイト等の燐化合物類;第4級アンモニウム塩類などの促進剤や、芳香族カルボニル化合物、ピナコン誘導体などと併用しても良い。
【0094】
これら併用されうる添加剤の配合量は、熱硬化性樹脂100重量部に対して、通常0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部である。
【0095】
(D)その他添加剤
樹脂バインダーには、樹脂結合型磁石の用途に応じて、フェノール、重合禁止剤、低収縮化剤、反応性樹脂、反応性希釈剤、未反応性希釈剤、変性剤、増粘剤、滑剤、カップリング剤、離型剤、紫外線吸収剤、難燃剤、安定剤、無機充填剤や顔料などを添加することができる。
【0096】
一般にラジカル重合性を有する熱硬化性樹脂の場合、樹脂自体の保管中の高粘度化、ゲル化を遅らせ保管期間を長く維持する目的で、重合禁止剤が添加されるが、本発明においても、長期の保存性を確保するために当該重合禁止剤を添加しても特に問題はない。
【0097】
重合禁止剤としては、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、フェナンスラキノン、トルキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、2,5−ジアセトキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジカプロキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジアシロキシ−p−ベンゾキノン等のキノン類;ハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、モノ−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン等のハイドロキノン類;ナフテン酸銅などの有機ならびに無機の銅塩類;アセトアミジンアセテート、アセトアミジンサルフェート等のアミジン類;フェニルヒドラジン塩酸塩、ヒドラジン塩酸塩などのヒドラジン類;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、ラウリルピリジニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムオキザレート、ジ(トリメチルベンジルアンモニウム)オキザレート、トリメチルベンジルアンモニウムマレエート、トリメチルベンジルアンモニウムタータレート、トリメチルベンジルアンモニウムグリコレート等の第4級アンモニウム塩類;フェニル−β−ナフチルアミン、パラベンジルアミノフェノール、ジ−β−ナフチルパラフェニレンジアミン等のアミン類;ニトロベンゼン、トリニトロトルエン、ピクリン酸などのニトロ化合物;キノンジオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類;トリエチルアミン塩酸塩、ジメチルアニリン塩酸塩、ジブチルアミン塩酸塩等のアミン塩酸塩類などが挙げられ、これらの1種または2種以上を混合できる。
【0098】
本発明の樹脂結合型磁石用組成物には、ラジカル重合硬化時の硬化収縮を抑える目的で、低収縮化剤を添加することができる。
低収縮剤は、成形時の収縮防止または補強剤の成形品表面への浮き上りを防止できる樹脂であり、例えば、アクリル系及びスチレン系樹脂の重合性単量体溶液、熱可塑性のナイロン、ポリエチレン等の樹脂粉末、ポリ塩化ビニル樹脂粉末、3次元化したアクリル系及びスチレン系樹脂粉末などがある。これらの1種もしくは2種以上を混合して使用できる。低収縮化剤を過度に添加すると強度低下を生じる場合が多いので、熱硬化性樹脂100重量部に対して0.1〜75重量部、より好ましくは0.5〜50重量部の範囲とする。
【0099】
反応性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ビス・マレイミドトリアジン樹脂、ポリアミドイミド樹脂等が挙げられる。
反応性希釈剤としては、スチレン、脂肪酸ジグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
未反応性希釈剤としては、エタノール、イソプロパノールなどのアルコールが挙げられる。
変性剤としては、液状ポリサルファイドポリマー、フェノール変性芳香族重合体などが挙げられる。
【0100】
滑剤としては、例えば、パラフィンワックス、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エステルワックス、カルナウバ、マイクロワックス等のワックス類、ステアリン酸、1,2−オキシステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸などの脂肪酸類;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸カルシウム、リノール酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、2−エチルヘキソイン酸亜鉛などの脂肪酸塩(金属石鹸類);ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、パルミチン酸アミド、ラウリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ジステアリルアジピン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ジオレイルアジピン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル;エチレングリコール、ステアリルアルコール等のアルコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及びこれら変性物からなるポリエーテル類;ジメチルポリシロキサン、シリコングリース等のポリシロキサン類;弗素系オイル、弗素系グリース、含弗素樹脂粉末といった弗素化合物;窒化珪素、炭化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、二酸化珪素、二硫化モリブデン等の無機化合物粉体が挙げられる。
【0101】
また、カップリング剤として、シランカップリング剤やチタネート系カップリング剤などを、樹脂と磁性粉末とのなじみを改善するために1種もしくは2種以上添加してもよい。
紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート、p−第3ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、3−2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第3ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系;蓚酸アニリド誘導体などが挙げられる。
難燃剤としては、三酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、有機臭素化合物、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレンなどが挙げられる。
安定剤としては、特に限定されないが、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系、フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系などが挙げられる。
無機充填剤としては、磁性粉末であるストロンチウムフェライト系、バリウムフェライト系等のフェライト類磁性粉や鉄等の軟磁性粉の他に、タングステン等の密度調整用高比重金属粉、三酸化アンチモン等、顔料には酸化チタン等を挙げることができる。
【0102】
2.樹脂結合型磁石用組成物の調製
磁性粉末は、上記の熱硬化性の樹脂バインダーと混合することで樹脂結合型磁石用組成物となる。
【0103】
熱硬化性の樹脂バインダーの形態は、常温において液状でも、パウダー、ビーズ、ペレット等であってもよいが、磁性粉末との均一混合性や成形性から考えると、液状であることが望ましい。
【0104】
樹脂バインダーは、磁性粉末を加える前の混合調製状態での粘度、すなわち成形温度における回転粘度測定法での動的粘度が、0.1〜20,000mPa・sの範囲にあることが望ましく、1〜5000mPa・s、さらには1〜300mPa・sの動的粘度のものがさらに好ましい。
この動的粘度が、0.1mPa・s未満であると、射出成形時に磁性粉末とバインダーの分離現象が生じるため成形できなくなる。また、20,000mPa・sを超えると、著しい混練トルクの上昇、流動性の低下を招き成形困難になる。
動的粘度を調整するために、粘度や性状の異なるラジカル重合反応性を有する数種類の熱硬化性樹脂同士を混合したり、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム等の二価金属の酸化物類や水酸化物類、ジイソシアナート類、アリジリン化合物類、アルミニウムイソプロポキシド等を加えてもよい。
【0105】
樹脂バインダーは、各構成成分を含めた状態で、磁性粉末100重量部に対して、2〜50重量部の割合で添加されるが、3〜20重量部、さらには10〜15重量部添加することが好ましい。
バインダーの添加量が磁性粉末100重量部に対して2重量部未満の場合は、著しい成形体強度の低下や成形時の流動性の低下を招く。また、50重量部を超えると、所望の磁気特性が得られない。
【0106】
磁性粉末に樹脂バインダー、添加剤が配合された樹脂結合型磁石用組成物は、公知の方法で混合される。混合方法は、特に限定されず、例えばリボンブレンダー、タンブラー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の混合機或いは、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、ニーダールーダー、単軸押出機、二軸押出機などの混練機が使用される。混合時の剪断発熱などによって熱硬化性樹脂の硬化が進まないよう、剪断力が弱く、かつ冷却機能を有する混合機を使用することが好ましい。
樹脂結合型磁石用組成物の形状は、パウダー状、ビーズ状、ペレット状、あるいはこれらの混合物の形態とすることができるが、取扱易さの点で、ペレット状(或いは塊状)が望ましい。
【0107】
樹脂結合型磁石用組成物は、30℃の密閉静置状態において120時間以上の可使時間を有するが、同一条件で300時間以上、さらには400時間以上の可使時間を有することが好ましい。
このような可使時間の長い樹脂結合型磁石用組成物を用いることで、高温成形時に受ける酸化劣化が原因の磁気特性低下を防止し、配向性に重要となる異方性磁石材料の高配向化をも可能にできる。
【0108】
3.樹脂結合型磁石
本発明の樹脂結合型磁石用組成物は、熱硬化性樹脂が硬化せずに流動性ある温度に加熱又は冷却することで、所望の形状を有する樹脂結合型磁石に成形される。
【0109】
成形法としては、従来からプラスチック成形加工などに利用されている射出成形法、押出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、またはトランスファー成形法など各種の成形法が採用できるが、これらの中では、射出成形法、押出成形法、トランスファー成形法のいずれかが好ましい。
こうして、従来の熱可塑性樹脂を用いた射出成形法による樹脂結合型磁石がもつ低磁気特性の欠点と、熱硬化性樹脂を用いた圧縮成形法による樹脂結合型磁石のもつ複雑な形状に成形できないという夫々の欠点が解消される。
【0110】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
次の各材料・成分及び方法で樹脂結合型磁石用組成物及び磁石を製造し、評価した。用いた材料・成分を下記に示す。
【0111】
1.材料・成分
(1)磁性粉末
・磁粉1:Sm−Fe−N系磁性粉末(住友金属鉱山(株)製 SmFeN合金粉末)、異方性磁場:16800kA/m(210kOe)、100μm以下の粒径含有率99重量%
・磁粉2:Sm−Co系磁性粉末(商品名:RCo5合金、住友金属鉱山(株)製)、異方性磁場:19680kA/m(246kOe)、100μm以下の粒径含有率99重量%
・磁粉3:Nd−Fe−B系磁性粉末(商品名:MQP−B、マグネクエンチインターナショナル(株)製)、異方性磁場:5600kA/m(70kOe)、100μm以下の粒径含有率62重量%
・磁粉4:ストロンチウムフェライト系磁性粉末(商品名:MA−951、戸田工業(株)製)、異方性磁場:2280kA/m(28.5kOe)、100μm以下の粒径含有率99重量%
・磁粉5:Nd−Fe−B系磁性粉末(商品名:MQP−B、マグネクエンチインターナショナル(株)製)、異方性磁場:5600kA/m(70kOe)、100μm以下の粒径含有率31重量%
【0112】
(2)無機燐酸系化合物(燐酸と略)
・無機燐酸処理剤(燐酸1)(商品名:「燐酸」試薬、関東化学(株)製)
・燐酸マンガン系処理剤(燐酸2)(商品名:ホスニン131、理工協産(株)製)
・燐酸鉄系処理剤(燐酸3)(商品名:ホスニン259E、理工協産(株)製)
【0113】
(3)アビエチン酸系化合物(ロジンと略)
・ロジン1:スーパーエステルL(荒川化学工業(株)製、25℃で液状)
・ロジン2:エステルガムAT(荒川化学工業(株)製、25℃で液状)
・ロジン3:エステルガムAAG(荒川化学工業(株)製、25℃で固体)
【0114】
(4)樹脂バインダー
B:熱硬化性樹脂
・不飽和ポリエステル樹脂1(UP樹脂1)(商品名:ポリセット2212、日立化成工業(株)製)、25℃における粘度:500mPa・s
・不飽和ポリエステル樹脂2(UP樹脂2)(商品名:ポリセット9164、日立化成工業(株)製)、25℃における粘度:2000mPa・s
・ビニルエステル樹脂(VE樹脂)(商品名:ポリセット6120S、日立化成工業(株)製)、25℃における粘度:500mPa・s
B:熱可塑性樹脂(比較例用)
・ナイロン12(商品名:ダイアミド A−1709P、ダイセル・ヒュルス(株)製)
B−2:硬化剤
・硬化剤1:パーオキシケタール系過酸化物(1,1−ジ−t−ブチルペロキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン)(商品名:トリゴノックス29A、化薬アグゾ(株)製)、10時間の半減期を得るための分解温度90℃
・硬化剤2:ジアルキルパーオキサイド系過酸化物[2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペロキシヘキシン−3)](商品名:カヤヘキサYD、化薬アグゾ(株)製)、10時間の半減期を得るための分解温度133℃
・硬化剤3:アゾ系重合開始剤(2−2’−アゾビスイソブチロニトリル)(商品名:ABN−R、日本ヒドラジン工業(株)製)
【0115】
C:N−オキシル類化合物(化合物と略)
・化合物1:2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル(商品名:アデカスタブ LA−7RD、旭電化(株)製)
・化合物2:ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート(商品名:Prostab 5415、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
その他:フェニルフォスフォン酸化合物
・PPA化合物:フェニルフォスフォン酸(日産化学工業株式会社製)
【0116】
2.成形品の製造方法及び評価方法
次に各成形品の製造方法、評価方法は、以下に示す通りである。
(1)無機燐酸系化合物、アビエチン酸系化合物での表面処理
それぞれの磁性粉100重量部に対して、10重量部のIPA等のアルコール系有機溶媒に所定の無機燐酸系化合物を溶解した後、当該処理溶液と磁性粉とをプラネタリーミキサー中で充分に混合撹拌(40rpm,20℃)し、−760mmHg、120℃の真空オーブン中で24時間乾燥させ、ここで得られた処理済み粉を、更にメカノフュージョン(ホソカワミクロン(株)製)にてアビエチン酸系化合物で被覆処理を行い、処理済磁性粉を得た。
【0117】
(2)組成物の混合及び作製
あらかじめ所定の比率になるよう計量混合しておいた熱硬化性樹脂、硬化剤、N−オキシル類化合物等をそれぞれの磁性粉全量に加え(各重量部)、水冷ジャケット付プラネタリーミキサー中で混合撹拌(40rpm、30℃、10分)し、最終組成物を得た。
これらにより得られた混合物のうち、比較用にナイロン12を配合したもののみ、20mmφシングル押出機(L/D=25、CR=2.0、回転数=20rpm、5mmφストランドダイ、シリンダー温度=200〜250℃、ダイス温度=100〜150℃)にて押し出し、ホットカットペレタイザーにてφ5mm×5mmの樹脂結合型磁石用ペレットコンパウンドを作製した。
【0118】
(3)射出成形方法
これらのコンパウンドを、インラインスクリュー式またはプランジャー式磁場発生装置付射出成形機にて、横φ10mm×15mmの円柱試験用樹脂結合型磁石を同一条件(成形温度=30〜180℃、金型温度=100〜220℃)にて成形し、得られた磁石成形品を後述の方法にて評価した。尚、SmCo5系とSmFeN系の磁性粉を使用した時のみ、1200〜1600kA/m(15〜20kOe)の磁場中金型内にて成形を行った。
【0119】
(4)各評価方法
▲1▼磁気特性評価
上記射出成形条件にて得られた樹脂結合型磁石試料の磁気特性を、チオフィー型自記磁束計にて常温で測定した。磁気特性のうち保磁力、磁化、角型性、最大磁気エネルギー積、配向度の結果を表2〜8に示す。
尚、配向度は、SMM法、即ち、{(成形後の樹脂結合型磁石の磁化)/(磁性粉100%でのVSMにて測定した磁化×成形後の樹脂結合型磁石の磁性粉体積率)×100}で表した。従来の方法での限界値は、次の表1の通りであった。よって、これらの限界値以上を「効果あり」と判断した。
【0120】
【表1】
【0121】
▲2▼機械強さ
上記成形条件にて、別途幅5mm×高さ2mm×長さ10mmの試験片を成形し、JIS K7214(プラスチックの打ち抜きによる剪断試験方法)に準じて剪断打ち抜き強さを測定した。各組成物の調製直後に成形した成形体の機械強さを初期値として表2〜7に示した。近年、市場から強く求められている100MPa以上の機械強さを有するものを「効果有り」と判断した。
【0122】
▲3▼可使時間
得られたそれぞれの樹脂結合型磁石用組成物をガラス瓶に充填し、アルミ製の蓋にて密閉した後、30±0.5℃にコントロールされた恒温槽内に入れ、成形後の成形体機械強さが初期値の80%まで低下したときの時間を求め、その結果を表2〜7に示した。尚、不飽和ポリエステル樹脂を用いた比較例1、4〜10については、成形体の機械強さの低下をまねく前に、成形不可能となる急激な粘度上昇、固化する現象を示したため、その固化に達するまでの時間を可使時間として記した。
【0123】
(実施例1〜27)
磁性粉末、燐酸化合物、アビエチン酸化合物、樹脂バインダー、有機過酸化物、N−オキシル類化合物の各成分を所定の配合割合で用い、上述の手順・方法にて樹脂結合型磁石用組成物及び磁石を製造し、その特性を評価した。その評価結果を表2〜6に示す。
【0124】
【表2】
【0125】
【表3】
【0126】
【表4】
【0127】
【表5】
【0128】
【表6】
【0129】
(比較例1〜11)
磁性粉末を燐酸系化合物およびアビエチン酸系化合物で処理しないか、いずれかで処理してから樹脂バインダー、有機過酸化物などの各成分を所定の割合で配合し、上述の手順・方法にて樹脂結合型磁石用組成物及び磁石を製造し、その特性を評価した。その評価結果を表7、8に示す。
【0130】
【表7】
【0131】
【表8】
【0132】
表2〜8の結果から明らかなように、本発明の樹脂結合型磁石用組成物は、優れた可使時間を有し、かつ該樹脂結合型磁石用組成物を用いた樹脂結合型磁石は、磁気特性や機械強さ等に優れる。これに対して、比較例の樹脂結合型磁石用組成物は、磁性粉末をリン酸系化合物およびアビエチン酸化合物で処理しないため、可使時間が短く、成形後の機械強さを維持しにくいことが分かる。
【0133】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明の樹脂結合型磁石用組成物は、磁性粉末が無機燐酸系化合物と特定のアビエチン酸系化合物で表面処理されているため、熱硬化性樹脂バインダー使用時に最も問題となる樹脂結合型磁石用組成物の可使時間が工業的に極めて優れたものになり、さらに、射出成形法等で磁気特性、形状自由度、機械強さ等に優れた樹脂結合型磁石を製造することができ、例えば、一般家電製品、通信・音響機器、医療機器、一般産業機器にいたる幅広い分野で特に有用であり、その工業的価値は極めて大きい。
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂結合型磁石用組成物及びそれを用いた樹脂結合型磁石に関し、さらに詳しくは、工業的に優れた可使時間を有し、かつ磁気特性や機械強度などに優れた、磁性粉末と熱硬化性の樹脂バインダーとを含有する樹脂結合型磁石用組成物及びそれを成形して得られる樹脂結合型磁石に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、フェライト磁石、アルニコ磁石、希土類磁石等は、モーターをはじめとする種々の用途に用いられている。しかし、これらの磁石は、主に焼結法により作られるために、一般に脆く、薄肉のものや複雑な形状のものが得難いという欠点を有している。それに加えて、焼結時の収縮が15〜20%と大きいため、寸法精度の高いものが得られず、精度を上げるには研磨等の後加工が必要であるという欠点をも有している。
【0003】
一方、樹脂結合型磁石は、これらの欠点を解決すると共に新しい用途をも開拓するために、近年になって開発されたものであるが、通常は、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の熱可塑性樹脂をバインダーとし、これに磁性粉末を充填することにより製造されている。
【0004】
しかし、こうした熱可塑性樹脂をバインダーとして用いる樹脂結合型磁石は、成形時に200℃以上の高温下に晒されるため、磁気特性、特に保磁力や角型性の低下が免れない特徴があり、成形後の保磁力などの磁気特性の低下等を低く抑える樹脂結合型磁石成形品を得るのが難しかった。
【0005】
また、エポキシ樹脂やビス・マレイミドトリアジン樹脂などの熱硬化性樹脂をバインダーとし、これに磁性粉末を充填したものも提案されているが、バインダー量が希少であるため圧縮成形法による単純成形品しか得られていない。
【0006】
合成樹脂にN−オキシル類を配合することで、樹脂の保存安定性や硬化性に優れ、経時劣化に伴う着色を抑えるようにした樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、ラジカル硬化性樹脂とレドックス作用を有する金属化合物とを含んだ樹脂組成物に、フェニルスルフォン酸類とN−オキシル類化合物を必須成分として含有させた、優れた貯蔵安定性を有し硬化特性を損なわず常温で硬化しうる硬化性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
しかし、これら先行技術において、N−オキシル類化合物は、ゲル化防止剤あるいは重合防止剤として極めて少量添加されており、遷移金属を多量に含有する樹脂結合型磁石の製造に適した樹脂組成物への応用可能性に関する記載は見当たらない。
【0008】
近年、小型モーター、音響機器、OA機器向けの樹脂結合型磁石には、機器の小型化に伴なって、磁気特性に優れ、かつ可使時間が充分に大きい磁石用組成物が強く要請されているが、従来の樹脂結合型磁石には、これら条件を共に満たすものはなく、成形性、機械的強度などにも優れた錆びにくい希土類系の樹脂結合型磁石用組成物の出現が切望されていた。
【0009】
【特許文献1】
特開平10−7918号公報(特許請求の範囲、[0010])
【特許文献2】
特開2001−11328号公報(特許請求の範囲、[0008])
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、熱硬化性樹脂を樹脂バインダーとして含有し、可使時間が充分に大きく磁気特性が良好で、しかも耐錆特性、機械的強度などにも優れた樹脂結合型磁石用組成物及びそれを用いた樹脂結合型磁石を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意研究を重ねた結果、磁性粉末を予め無機燐酸系化合物で表面処理した後、アビエチン酸系化合物で被覆しておき、これに特定の熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂バインダーを用いると、磁石用組成物の可使時間を充分に大きくでき、さらに、射出成形法やトランスファー成形法などによって成形性よく樹脂結合型磁石用組成物を作製できるだけでなく、特に保磁力や配向度などの磁気特性、機械強さにも優れた樹脂結合型磁石が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、構成元素中に希土類および遷移金属元素を含む磁性粉末(A)と、樹脂バインダー(B)とからなる樹脂結合型磁石用組成物において、磁性粉末(A)が無機燐酸系化合物で表面処理され、かつアビエチン酸系化合物で被覆されており、樹脂バインダー(B)が熱硬化性樹脂であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
【0013】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、磁性粉末(A)は、異方性磁場(HA)が4000kA/m以上であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
【0014】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、磁性粉末(A)が、粒径100μm以下の磁性粉末を、磁性粉末全量に対して50重量%以上含むことを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
【0015】
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、アビエチン酸系化合物は、25℃で液状であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
【0016】
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、樹脂バインダー(B)が、ラジカル重合反応性の熱硬化性樹脂(B−1)を主成分とし、有機過酸化物(B−2)を含むことを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
【0017】
また、本発明の第6の発明によれば、第1又は5の発明において、樹脂バインダー(B)が、さらにN−オキシル類化合物(C)を含有することを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
【0018】
また、本発明の第7の発明によれば、第5の発明において、熱硬化性樹脂(B−1)は、25℃で液状であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
【0019】
また、本発明の第8の発明によれば、第5又は7の発明において、熱硬化性樹脂(B−1)は、ビニルエステル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、及びポリエステル(メタ)アクリレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
【0020】
また、本発明の第9の発明によれば、第5のいずれかの発明において、有機過酸化物(B−2)は、熱硬化性樹脂を150℃以下の温度で硬化可能とする化合物であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
【0021】
また、本発明の第10の発明によれば、第5又は9の発明において、有機過酸化物(B−2)は、ジアルキル系化合物又はパーオキシケタール系化合物であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
【0022】
また、本発明の第11の発明によれば、第6の発明において、N−オキシル類化合物(C)は、分子鎖末端に、次の一般式(1)
【0023】
【化3】
【0024】
式(1)中、X1、およびX2は、それぞれ独立して水素原子、−OR5基、−OCOR6基または−NR7R8基を表し、R1、R2、R3、およびR4は、それぞれ独立して炭素数1以上のアルキル基を表し、R5、R6、R7、およびR8は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜16のアルキル基で表される構造、または一般式(2)
【0025】
【化4】
【0026】
式(2)中、式中、X3、X4、およびX5は、それぞれ独立して水素原子、−OR13基、−OCOR14基または−NR15R16基を表し、R9、R10、R11、およびR12は、それぞれ独立して炭素数1以上のアルキル基を表し、R13、R14、R15、およびR16は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜16のアルキル基で表される構造のうち少なくとも一種の構造を有する樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
【0027】
また、本発明の第12の発明によれば、第6又は11の発明において、N−オキシル類化合物(C)は、熱硬化性樹脂(B−1)100重量部に対して、0.1〜10重量部配合することを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
【0028】
さらに、本発明の第13の発明によれば、第1〜12のいずれかの発明において、可使時間が、30℃の密閉静置状態において120時間以上であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
【0029】
一方、本発明の第14の発明によれば、第1〜13のいずれかの発明の樹脂結合型磁石用組成物を、射出成形法、押出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、またはトランスファー成形法から選ばれるいずれかの成形法により成形してなる樹脂結合型磁石が提供される。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の樹脂結合型磁石用組成物及びそれを用いてなる樹脂結合型磁石について詳細に説明する。
【0031】
1.樹脂結合型磁石用組成物
本発明は、構成元素中に希土類および遷移金属元素を含む磁性粉末(A)を、予め無機燐酸系化合物(a1)で表面処理し、さらに特定のアビエチン酸系化合物(a2)で被覆し、樹脂バインダー(B)として熱硬化性樹脂(B−1)を主成分として配合した樹脂結合型磁石用組成物であり、可使時間が長く成形性がよいなどの特徴がある。
【0032】
なお、樹脂結合型磁石用組成物の可使時間は、ポットライフともいわれ、液状樹脂に硬化剤などを加えた時点から粘度が上昇し、成形不可能となるまでの時間、すなわちゲル化・硬化などが起こらず、成形可能な流動性を保っている時間、或いは成形後の機械強さが、組成物の調製直後に成形した成形組成物の機械強さ(初期値)が80%まで低下する時間のいずれか早い方の時間を意味する。本発明のような樹脂結合型磁石用組成物の系では、一般的に機械強さが低下する時間の方が早いとされている。
【0033】
(A)磁性粉末
磁性粉末は、その構成元素中に希土類元素および遷移金属元素を含み、かつ無機燐酸系化合物とアビエチン酸系化合物で表面処理された磁性粉末であれば、特に制限はない。
【0034】
その希土類元素としては、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)が挙げられ、一方、遷移金属元素としては、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びマンガン(Mn)が挙げられ、これらの群それぞれから1種又は2種以上が選択される。
遷移金属元素では、これ以外にCr、V又はCuのいずれかを含有してもよい。特に好ましい希土類元素は、Nd又はSmのいずれか、遷移金属元素は、Fe又はCoのいずれかである。
【0035】
また、磁性粉末(A)は、異方性磁場(HA)が4000kA/m以上であることが望ましく、例えば、希土類−コバルト系、希土類−鉄−ほう素系、希土類−鉄−窒素系の磁性粉の単独もしくは混合粉、またはフェライト系磁性粉との混合系磁性粉末などが挙げられる。
【0036】
希土類−鉄−窒素系であるSm−Fe−N系の磁性粉末は、磁性粉として還元拡散法によって得られるSmFe系合金粗粉を窒化処理、微粉砕して製造できる。また、SmCo5系の磁性粉末は、同じく還元拡散法によって得られた粗粉を微粉砕した合金微粉末から製造できる。
【0037】
さらに、Nd−Fe−B系の磁性粉末は、液体急冷法によって得られた合金粉末、又はHDDR(Hydrogenation−Disproportionation−Desorption−Recombination)法によって得られた異方性Nd−Fe−B系合金粉末を用いて製造できる。
液体急冷法によって得られたNd−Fe−B系や、HDDR法によって得られた異方性Nd−Fe−B系の磁性粉末は、特異な形状を有した比較的大きな粒子を大量に含んでいるため、ジェットミルやボールミル等で粉砕し用いることが望ましい。
【0038】
フェライト系磁性粉末は、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属と酸化鉄を含有するもので、六方晶フェリ強磁性結晶を主相とするM型のフェライト磁石である。具体的には、バリウムフェライト系(BaO・6Fe2O3)、ストロンチウムフェライト系(SrO・6Fe2O3)などが挙げられ、この他に、SrZn2+ 2Fe16O27などで示されるW型の六方晶フェライトも使用できる。これらの中で、特に好ましいのはストロンチウムフェライト系磁性粉末である。
【0039】
希土類−遷移金属系磁性粉末は、異方性磁場が高く、優れた磁気性能を有するが高価である。これに対して、フェライト系磁性粉末は、磁気性能では希土類−遷移金属系磁性粉末に及ばないが、安価で入手しやすい利点がある。このため、希土類−遷移金属系磁性粉末にフェライト系磁性粉末を混合したハイブリッド系磁性粉末として用いることができる。希土類−遷移金属系磁性粉末100重量部に対して、フェライト系磁性粉末10〜70重量部、好ましくは30〜60重量部混合したハイブリッド系磁性粉末が有効である。
【0040】
磁性粉末は、粒径が100μm以下のものを50重量%以上、好ましくは60重量%以上含むと著しい磁気特性を発揮する。また、等方性磁性粉よりも磁場中での成形が必至となる異方性磁性粉の方が、配向特性の効果が著しい。
これらの磁性粉末は、無機燐酸系化合物(a1)で表面処理し、さらにアビエチン酸系化合物(a2)で被覆して用いる必要がある。
【0041】
(a1)無機燐酸系化合物
無機燐酸系化合物は、上記の磁性粉末を予め処理することで、樹脂バインダー成分の効力を高め、その表面の耐候性を高める化合物である。無機燐酸系化合物の代表ともいうべき無機燐酸には、燐酸の他に、亜燐酸、次亜燐酸、ピロ燐酸、直鎖状のポリ燐酸、環状のメタ燐酸が含まれる。
【0042】
これらの無機燐酸系化合物は、磁性粉末表面にホパイト、フォスフォフェライト等からなる燐酸亜鉛系、ショルツァイト、フォスフォフィライト、ホパイト等からなる燐酸亜鉛カルシウム系、マンガンヒューリオライト、鉄ヒューリオライト等からなる燐酸マンガン系、ストレンナイト、ヘマタイト等からなる燐酸鉄系などの被膜を形成させる処理剤であり、これら処理剤は単独もしくは複数で使用することも可能である。一般的には無機燐酸をはじめ種々の燐酸化合物、キレート剤、中和剤等と混合して用いる。これら無機燐酸系化合物は、湿式処理法や乾式処理法によって磁性粉末へ表面処理でき、その後、100℃前後で10〜30時間の加熱処理を併せて行うと、より安定した処理済磁性粉末が得られる。
【0043】
無機燐酸系化合物の添加量は、その成分の種類や濃度により異なるが、基本的には磁性粉末に対して0.01重量%以上10重量%以下でよく、好ましくは0.05重量%以上7重量%以下であるが、0.1重量%以上5重量%以下がより好ましい。
これによって、磁性粉末に厚さ5〜100nm程度の燐酸系化合物の膜を形成できる。添加量が0.01重量部未満の場合は、膜が十分に形成されず、また10重量部を超えると磁性粉末の密度が低下し、磁気特性、機械的強度が低下する。
【0044】
上記希土類−鉄−窒素系の合金粉末を無機燐酸系化合物で事前に表面処理すれば、例えば90重量%以上の高充填化が可能であり、特に優れた可使時間を有する樹脂結合型磁石用組成物が得られるが、さらに特定のアビエチン酸系化合物(a2)で被覆処理することで、より性能を高めることができる。
【0045】
(a2)アビエチン酸系化合物
アビエチン酸系化合物は、次の一般式(3)で示されるアビエチン酸および/またはその異性体もしくはそれらを変性した化合物である。
【0046】
C19HnCOOH …(3)
式(3)中、25≦n≦33である。
【0047】
これらのアビエチン酸系化合物としては、例えば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、レボピマール酸、バルストリン酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、デキストロピマール酸、イソデキストロピマール酸、ジヒドロデキストロピマール酸等の樹脂酸、およびこれらの水添加物、不均化物、重合物、例えばフェノール類やアルコール類とのエステル化物、マレイン化物、金属イオン類との化合物などが挙げられる。
【0048】
アビエチン酸やその各種化合物は、一般にロジンと称され各種の形態で市販されているが、25℃で液状であるものが特に好適である。単独では25℃で固体の化合物であっても、エタノール、ベンゼン、クロロホルム、エーテル、アセトン、希水酸化ナトリウム水溶液などに溶解するか、均一に分散しうるものであれば、これらの溶液として使用することができる。
アビエチン酸および/またはその異性体もしくはそれらを変性した化合物が25℃で液状であれば、磁性粉末の強固な凝集を防ぐことができ、特に異方性の磁性粉末には結果的に配向度の低下を招くこと無く良好な磁気特性を得ることができ、また機械強度の低下を招くことのない被覆処理が可能となる。
従来品のアビエチン酸系化合物(ロジン類)のうち、アビエチン酸の重合物など高分子化合物を含有しているものは、有機溶媒などにも溶解しにくく、25℃で固体であるため、凝集に伴う不均一皮膜の形成、配向度の低下によって所期の磁石用樹脂組成物が得られなくなる場合がある。
【0049】
アビエチン酸系化合物による磁性粉末の被覆は、湿式処理法や乾式処理法などが採用でき、予め単独で被覆処理してもよく、樹脂バインダー等と磁性粉末との混合時に併せて添加、処理しても良い。メカノフュージョン法により予め単独で被覆処理を行えば、より安定した被覆磁性粉末が得られる。
【0050】
アビエチン酸系化合物の添加量は、磁性粉末に対して0.01重量%以上10重量%以下でよく、好ましくは0.1重量%以上7重量%以下であり、1重量%以上5重量%以下がより好ましい。添加量が0.01重量%未満の場合は、磁性粉末が十分に被覆されず、また10重量%を超えると密度の低下に伴う磁気特性の低下、機械強度の低下等のため、実用に耐えうる樹脂結合型磁石を得ることができない。
【0051】
(B)樹脂バインダー
本発明の樹脂結合型磁石用組成物に用いられる樹脂バインダー(B)は、熱硬化性樹脂(B−1)であり、有機過酸化物(B−2)を含んでいる。樹脂バインダー(B)には、N−オキシル類化合物(C)や、その他の添加剤(D)として、フェノール、重合禁止剤、低収縮化剤などを配合できる。
【0052】
(B−1)熱硬化性樹脂
熱硬化性樹脂としては、成形時の金型内で硬化し磁性粉末のバインダーとして働くものであれば、特にその種類に限定されるものではない。
【0053】
例えば、ラジカル重合反応性を有するビニルエステル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、及びポリエステル(メタ)アクリレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂が挙げられる。
【0054】
不飽和ポリエステル樹脂は、市販の不飽和ポリエステル樹脂を用いることができる。例えば、不飽和多塩基酸及び/又は飽和多塩基酸とグリコール類を分子量5000程度以下に予備的に重合させてオリゴマーやプレポリマー化させた主剤に、架橋剤を兼ねるモノマー類、反応を開始させる硬化剤、及びその他の添加剤等を配合したものである。
【0055】
不飽和多塩基酸としては、例えば無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等を、また、飽和酸としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ヘット酸、テトラブロム無水フタル酸等が挙げられる。
【0056】
また、グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物、ジブロムネオペンチルグリコール、ペンタエリスリットジアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0057】
次に、ビニルエステル樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、エポキシ化合物と不飽和一塩基酸とをエステル化触媒を用いて反応させて得られる。
上記ビニルエステル樹脂の原料として用いられるエポキシ化合物は、分子中に、少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。
【0058】
具体的には、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS等のビスフェノール類と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られるエピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フェノール、クレゾール、ビスフェノールとホルマリンとの縮合物であるノボラックとエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるノボラックタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、安息香酸とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;水添加ビスフェノールやグリコール類とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;ヒダントインやシアヌール酸とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られる含アミングリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、これらエポキシ樹脂と多塩基酸類および/またはビスフェノール類との付加反応により分子中にエポキシ基を有する化合物でもよい。これらエポキシ化合物は、一種類のみを用いてもよく、適宜二種類以上を混合してもよい。
【0059】
さらに、上記ビニルエステル樹脂の原料として用いられる不飽和一塩基酸は、特に限定されないが、具体的には、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸等が挙げられる。また、マレイン酸、イタコン酸等のハーフエステル等を用いてもよい。さらに、これらの化合物と、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の多価カルボン酸や、酢酸、プロピオン酸、ラウリル酸、パルミチン酸等の飽和一価カルボン酸や、フタル酸等の飽和多価カルボン酸またはその無水物や、末端基がカルボキシル基である飽和あるいは不飽和アルキッド等の化合物とを併用してもよい。これら不飽和一塩基酸は、一種類のみを用いてもよく、適宜二種類以上を混合してもよい。
【0060】
上記エステル化触媒は、具体的には、ジメチルベンジルアミン、トリブチルアミン等の第三級アミン類;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩;塩化リチウム、塩化クロム等の無機塩;2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;テトラメチルホスフォニウムクロライド、ジエチルフェニルプロピルホスフォニウムクロライド、トリエチルフェニルホスフォニウムクロライド、ベンジルトリエチルフェニルホスフォニウムクロライド、ジベンジルエチルメチルホスフォニウムクロライド、ベンジルメチルジフェニルホスフォニウムクロライド、テトラフェニルホスフォニウムブロマイド等のホスフォニウム塩;第二級アミン類;テトラブチル尿素;トリフェニルホスフィン;トリトリールホスフィン;トリフェニルスチビン等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらエステル化触媒は、一種類のみを用いてもよいし、適宜二種類以上を混合してもよい。
【0061】
また、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリイソシアネートとポリヒドロキシ化合物あるいは多価アルコール類とを反応させた後、さらに水酸基含有(メタ)アクリル化合物および必要に応じて水酸基含有アリルエーテル化合物を反応させて得ることができる。また、水酸基含有(メタ)アクリル化合物とポリヒドロキシ化合物あるいは多価アルコール類とを反応させた後、さらにポリイソシアネートを反応させてもよい。
【0062】
上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料として用いられるポリイソシアネートは、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネートおよびその異性体、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
【0063】
具体的には、商品名:バーノックD 750、商品名:クリスポンNX(大日本インキ化学工業株式会社製)、商品名:デスモジュールL(住友バイエル社製)、商品名:コロネートL(日本ポリウレタン社製)、商品名:タケネートD102(武田薬品社製)、商品名:イソネート143L(三菱化成社製)等が挙げられ、特に限定されない。これらポリイソシアネートは、一種類のみでも、二種類以上を混合してもよい。
【0064】
また、上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料として用いられる多価アルコール類は、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ビスフェノールAとプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドとの付加物、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−プロパンジオール、1,2−シクロヘキサングリコール、1,3−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサングリコール、パラキシレングリコール、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオール、2,6−デカリングリコール、2,7−デカリングリコール等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら多価アルコール類は、一種類のみを用いてもよいし、適宜、二種類以上を混合してもよい。
【0065】
さらに、上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料として用いられるポリヒドロキシ化合物は、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
具体的には、グリセリンエチレンオキシド付加物、グリセリンプロピレンオキシド付加物、グリセリンテトラヒドロフラン付加物、グリセリンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパンエチレンオキシド付加物、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパンテトラヒドロフラン付加物、トリメチロールプロパンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物、ペンタエリスリトールエチレンオキシド付加物、ペンタエリスリトールプロピレンオキシド付加物、ペンタエリスリトールテトラヒドロフラン付加物、ペンタエリスリトールエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトールエチレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトールプロピレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトールテトラヒドロフラン付加物、ジペンタエリスリトールエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物等が挙げられるが、特に限定されない。これらポリヒドロキシ化合物は、一種類のみを用いてもよいし、適宜、二種類以上を混合してもよい。
【0066】
上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料として用いられる水酸基含有(メタ)アクリル化合物は、特に限定されないが、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら水酸基含有(メタ)アクリル化合物は、一種類のみを用いてもよいし、適宜、二種類以上を混合してもよい。
【0067】
上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料として必要に応じて用いられる水酸基含有アリルエーテル化合物は、具体的には、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、トリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、1,2−ブチレングリコールモノアリルエーテル、1,3−ブチレングリコールモノアリルエーテル、ヘキシレングリコールモノアリルエーテル、オクチレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら水酸基含有アリルエーテル化合物は、一種類のみを用いてもよいし、適宜、二種類以上を混合してもよい。
【0068】
また、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、不飽和あるいは飽和ポリエステルの末端に(メタ)アクリル化合物を反応させて得ることができる。上記ポリエステルの原料は、上記不飽和ポリエステル樹脂の原料として例示したと同様の化合物を用いることができる。
【0069】
上記ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂の原料として用いられる(メタ)アクリル化合物は、具体的には、不飽和グリシジル化合物、(メタ)アクリル酸等の不飽和一塩基酸及びそのグリシジルエステル類等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら(メタ)アクリル化合物は、一種類のみを用いてもよいし、適宜、二種類以上を混合してもよい。
【0070】
さらに、架橋剤を兼ねるモノマー類としては、例えば、(I)スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル等のビニルモノマー類、(II)ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルイソフタレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテトラブロムフタレート等のアリルモノマー類、(III)フェノキシエチルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステル類等が挙げられる。
【0071】
これらの中でも、不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂が好ましい。また、重合度や分子量に制約されないが、150℃以下の温度では液状であり、25℃における粘度が5000mPa・s以下である樹脂が成形性の面から好適である。
【0072】
(B−2)有機過酸化物
有機過酸化物は、一般に、ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂に配合され、前記の熱硬化性樹脂原料の反応を開始させる硬化剤である。
【0073】
有機過酸化物としては、例えば、(I)メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、(II)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類、(III)t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジ−イソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、(IV)ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−クミルパーオキサイド、α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド類、(V)アセチルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、オクタノニルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、サクシニック酸パーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、トルオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、(VI)ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペロキシジカーボネート、ジ−n−プロピルペロキシジカーボネート、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペロキシジカーボネート、ジ−ミリスチルペロキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルペロキシジカーボネート、ジ−メトキシイソプロピルペロキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)ペロキシジカーボネート、ジアリルペロキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類、(VII)t−ブチルペロキシアセテート、t−ブチルペロキシイソブチレート、t−ブチルペロキシピバレート、t−ブチルペロキシネオデカノエート、クミルペロキシネオデカノエート、t−ブチルペロキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペロキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペロキシラウレート、t−ブチルペロキシベンゾエート、ジ−t−ブチルペロキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペロキシ)ヘキサン、t−ブチルペロキシマレイックアシッド、t−ブチルペロキシイソプロピルカーボネート、クミルペロキシオクトエート、t−ヘキシルペロキシネオデカノエート、t−ヘキシルペロキシピバレート、t−ブチルペロキシネオヘキサノエート、t−ヘキシルペロキシネオヘキサノエート、クミルペロキシネオヘキサノエート等のパーオキシエステル類や、(VIII)アセチルシクロヘキシルスルフォニルペロキサイド、t−ブチルペロキシアリルカーボネート等が挙げられる。
【0074】
これらの有機過酸化物は、単独で用いることができるが、炭化水素溶液類やフタル酸エステル類に希釈し、もしくは固形粉末に吸収させてもよい。
有機過酸化物としては、それが分解して半減するまでの時間が10時間となる温度(以下、これを10時間半減期温度という)が150℃以下の過酸化物を使用することが望ましく、さらには、10時間半減期温度が40〜135℃である過酸化物がより望ましい。
10時間半減期温度が150℃を超えるものを選択すると、充分な硬化成形体を得るための硬化温度が高くなり好ましくない。一方、40℃よりも低くなると過酸化物自体の取り扱い性が困難になるばかりでなく、磁石用組成物の保管特性が悪くなり、生産性に欠ける結果を招くことがある。
【0075】
これらの有機過酸化物の添加量は、希釈率や活性酸素量によって異なるため、一概に規定できないが、熱硬化性樹脂100重量部に対して、0.05〜10重量部が好ましい。
有機過酸化物は、単独又は2種以上の混合系で用いることができるが、最終的に得られる樹脂結合型磁石用組成物の可使時間をより長く確保するためには、パーオキシケタール系、又はジアルキル系過酸化物のいずれかを単独で用いることが極めて好ましい。
【0076】
(C) N−オキシル類化合物
N−オキシル類化合物は、樹脂結合型磁石用組成物の保管中の可使時間をより長くさせるために添加できる5員環のピロリジン系化合物、6員環のピペリジン系化合物などの含窒素環状化合物である。
【0077】
本発明のような磁性粉末などを含む系では、レドックス反応のみならず、これに相まってラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂やスチレン等との複雑な反応も生起し、その促進効果も極めて高く、通常の遷移金属単体系の組成物よりも、可使時間が極めて短くなる。このような磁性粉末、ラジカル硬化剤、熱硬化性樹脂を含有する組成物に対して、N−オキシル類化合物を添加すると、かかる特殊な反応の抑制効果に極めて有効に機能し、可使時間を長くすることできる。
【0078】
5員環のピロリジン系化合物としては、その化合物の分子鎖末端が、次の一般式(1)
【0079】
【化5】
【0080】
式(1)中、X1、X2は、それぞれ独立して水素原子、−OR5基、−OCOR6基または−NR7R8基を表し、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して炭素数1以上のアルキル基を表し、R5、R6、R7、R8は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜16のアルキル基で表わされる化合物である。
【0081】
6員環のピペリジン系化合物としては、その化合物の分子鎖末端が、次の一般式(2)
【0082】
【化6】
【0083】
上記式(2)中、X3、X4、X5は、それぞれ独立して水素原子、−OR13基、−OCOR14基または−NR15R16基を表し、R9、R10、R11、R12は、それぞれ独立して炭素数1以上のアルキル基(好ましくは炭素数1〜5のアルキル基)を表し、R13、R14、R15、R16は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜16のアルキル基(好ましくは炭素数1〜12のアルキル基)で表される化合物である。
【0084】
さらに、N−オキシル類化合物としては、上記の他に、分子鎖末端が次の一般式(3)
【0085】
【化7】
【0086】
但し、式(3)中、R17、R18は、それぞれ独立して炭素数4以上のアルキル基で表わされる構造を有する化合物を用いることもできる。
【0087】
上記のN−オキシル類としては、式(2)で示される6員環のピペリジン系化合物が好ましい。
例えば、ジ−t−ブチルニトロキシル、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オール、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−アセテート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−2−エチルヘキサノエート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−ステアレート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−4−t−ブチルベンゾエート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)コハク酸エステル、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アジピン酸エステル、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)n−ブチルマロン酸エステル、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)フタレート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)イソフタレート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)テレフタレート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)ヘキサヒドロテレフタレート、N,N’−ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アジパミド、N−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カプロラクタム、N−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)ドデシルサクシンイミド、2,4,6−トリス−N−ブチル−N−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−s−トリアジン、等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらN−オキシル類は、一種類のみを用いてもよいし、適宜二種類以上を混合してもよい。
【0088】
中でも好ましいのは、上記の式(2)中、X3、X4、X5が、それぞれ独立して水素原子、−OH基、−COOH基、−OCOR14基または−NH2基を表し、R9、R10、R11、R12が、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基、R14が炭素数1〜10のアルキル基で表される構造を有するN−オキシル類化合物である。
【0089】
このような化合物として、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル、或いはビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケートが挙げられる。2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシルは、次の一般式(4)で示すことができる。
【0090】
【化8】
【0091】
これらのN−オキシル類化合物は、安定剤の中でもアルキルラジカルと反応後、さらにパーオキシラジカルとの反応性を有するもの、又はパーオキシラジカルとの反応後、さらにアルキルラジカルとの反応性を有するものが好ましい。本発明では、このような反応によって、樹脂組成物の可使時間をより長く確保できるものと考えられる。アルキルラジカルと反応後、さらにパーオキシラジカルとの反応性を有するものの代表例が、前記の一般式(4)で示された2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシルである。
【0092】
N−オキシル類化合物の添加量は、その種類によって効果が大きく異なるため画一的に規定はできないが、熱硬化性樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.3〜5重量部とする。添加量が0.1重量部より少ないと、十分な可使時間を確保できない。一方、10重量部より多いと、成形体の密度の低下や表面の荒れを生じるため望ましくない。
【0093】
N−オキシル類化合物は、ナフテン酸コバルトやオクチル酸コバルト等のコバルト有機酸塩;アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、ジメドン等のβ−ジケトン類;ジメチルアニリン等の芳香族3級アミン類;メルカプタン類;トリフェニルホスフィン、2−エチルヘキシルホスファイト等の燐化合物類;第4級アンモニウム塩類などの促進剤や、芳香族カルボニル化合物、ピナコン誘導体などと併用しても良い。
【0094】
これら併用されうる添加剤の配合量は、熱硬化性樹脂100重量部に対して、通常0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部である。
【0095】
(D)その他添加剤
樹脂バインダーには、樹脂結合型磁石の用途に応じて、フェノール、重合禁止剤、低収縮化剤、反応性樹脂、反応性希釈剤、未反応性希釈剤、変性剤、増粘剤、滑剤、カップリング剤、離型剤、紫外線吸収剤、難燃剤、安定剤、無機充填剤や顔料などを添加することができる。
【0096】
一般にラジカル重合性を有する熱硬化性樹脂の場合、樹脂自体の保管中の高粘度化、ゲル化を遅らせ保管期間を長く維持する目的で、重合禁止剤が添加されるが、本発明においても、長期の保存性を確保するために当該重合禁止剤を添加しても特に問題はない。
【0097】
重合禁止剤としては、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、フェナンスラキノン、トルキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、2,5−ジアセトキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジカプロキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジアシロキシ−p−ベンゾキノン等のキノン類;ハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、モノ−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン等のハイドロキノン類;ナフテン酸銅などの有機ならびに無機の銅塩類;アセトアミジンアセテート、アセトアミジンサルフェート等のアミジン類;フェニルヒドラジン塩酸塩、ヒドラジン塩酸塩などのヒドラジン類;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、ラウリルピリジニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムオキザレート、ジ(トリメチルベンジルアンモニウム)オキザレート、トリメチルベンジルアンモニウムマレエート、トリメチルベンジルアンモニウムタータレート、トリメチルベンジルアンモニウムグリコレート等の第4級アンモニウム塩類;フェニル−β−ナフチルアミン、パラベンジルアミノフェノール、ジ−β−ナフチルパラフェニレンジアミン等のアミン類;ニトロベンゼン、トリニトロトルエン、ピクリン酸などのニトロ化合物;キノンジオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類;トリエチルアミン塩酸塩、ジメチルアニリン塩酸塩、ジブチルアミン塩酸塩等のアミン塩酸塩類などが挙げられ、これらの1種または2種以上を混合できる。
【0098】
本発明の樹脂結合型磁石用組成物には、ラジカル重合硬化時の硬化収縮を抑える目的で、低収縮化剤を添加することができる。
低収縮剤は、成形時の収縮防止または補強剤の成形品表面への浮き上りを防止できる樹脂であり、例えば、アクリル系及びスチレン系樹脂の重合性単量体溶液、熱可塑性のナイロン、ポリエチレン等の樹脂粉末、ポリ塩化ビニル樹脂粉末、3次元化したアクリル系及びスチレン系樹脂粉末などがある。これらの1種もしくは2種以上を混合して使用できる。低収縮化剤を過度に添加すると強度低下を生じる場合が多いので、熱硬化性樹脂100重量部に対して0.1〜75重量部、より好ましくは0.5〜50重量部の範囲とする。
【0099】
反応性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ビス・マレイミドトリアジン樹脂、ポリアミドイミド樹脂等が挙げられる。
反応性希釈剤としては、スチレン、脂肪酸ジグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
未反応性希釈剤としては、エタノール、イソプロパノールなどのアルコールが挙げられる。
変性剤としては、液状ポリサルファイドポリマー、フェノール変性芳香族重合体などが挙げられる。
【0100】
滑剤としては、例えば、パラフィンワックス、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エステルワックス、カルナウバ、マイクロワックス等のワックス類、ステアリン酸、1,2−オキシステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸などの脂肪酸類;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸カルシウム、リノール酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、2−エチルヘキソイン酸亜鉛などの脂肪酸塩(金属石鹸類);ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、パルミチン酸アミド、ラウリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ジステアリルアジピン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ジオレイルアジピン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル;エチレングリコール、ステアリルアルコール等のアルコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及びこれら変性物からなるポリエーテル類;ジメチルポリシロキサン、シリコングリース等のポリシロキサン類;弗素系オイル、弗素系グリース、含弗素樹脂粉末といった弗素化合物;窒化珪素、炭化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、二酸化珪素、二硫化モリブデン等の無機化合物粉体が挙げられる。
【0101】
また、カップリング剤として、シランカップリング剤やチタネート系カップリング剤などを、樹脂と磁性粉末とのなじみを改善するために1種もしくは2種以上添加してもよい。
紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート、p−第3ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、3−2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第3ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系;蓚酸アニリド誘導体などが挙げられる。
難燃剤としては、三酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、有機臭素化合物、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレンなどが挙げられる。
安定剤としては、特に限定されないが、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系、フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系などが挙げられる。
無機充填剤としては、磁性粉末であるストロンチウムフェライト系、バリウムフェライト系等のフェライト類磁性粉や鉄等の軟磁性粉の他に、タングステン等の密度調整用高比重金属粉、三酸化アンチモン等、顔料には酸化チタン等を挙げることができる。
【0102】
2.樹脂結合型磁石用組成物の調製
磁性粉末は、上記の熱硬化性の樹脂バインダーと混合することで樹脂結合型磁石用組成物となる。
【0103】
熱硬化性の樹脂バインダーの形態は、常温において液状でも、パウダー、ビーズ、ペレット等であってもよいが、磁性粉末との均一混合性や成形性から考えると、液状であることが望ましい。
【0104】
樹脂バインダーは、磁性粉末を加える前の混合調製状態での粘度、すなわち成形温度における回転粘度測定法での動的粘度が、0.1〜20,000mPa・sの範囲にあることが望ましく、1〜5000mPa・s、さらには1〜300mPa・sの動的粘度のものがさらに好ましい。
この動的粘度が、0.1mPa・s未満であると、射出成形時に磁性粉末とバインダーの分離現象が生じるため成形できなくなる。また、20,000mPa・sを超えると、著しい混練トルクの上昇、流動性の低下を招き成形困難になる。
動的粘度を調整するために、粘度や性状の異なるラジカル重合反応性を有する数種類の熱硬化性樹脂同士を混合したり、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム等の二価金属の酸化物類や水酸化物類、ジイソシアナート類、アリジリン化合物類、アルミニウムイソプロポキシド等を加えてもよい。
【0105】
樹脂バインダーは、各構成成分を含めた状態で、磁性粉末100重量部に対して、2〜50重量部の割合で添加されるが、3〜20重量部、さらには10〜15重量部添加することが好ましい。
バインダーの添加量が磁性粉末100重量部に対して2重量部未満の場合は、著しい成形体強度の低下や成形時の流動性の低下を招く。また、50重量部を超えると、所望の磁気特性が得られない。
【0106】
磁性粉末に樹脂バインダー、添加剤が配合された樹脂結合型磁石用組成物は、公知の方法で混合される。混合方法は、特に限定されず、例えばリボンブレンダー、タンブラー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の混合機或いは、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、ニーダールーダー、単軸押出機、二軸押出機などの混練機が使用される。混合時の剪断発熱などによって熱硬化性樹脂の硬化が進まないよう、剪断力が弱く、かつ冷却機能を有する混合機を使用することが好ましい。
樹脂結合型磁石用組成物の形状は、パウダー状、ビーズ状、ペレット状、あるいはこれらの混合物の形態とすることができるが、取扱易さの点で、ペレット状(或いは塊状)が望ましい。
【0107】
樹脂結合型磁石用組成物は、30℃の密閉静置状態において120時間以上の可使時間を有するが、同一条件で300時間以上、さらには400時間以上の可使時間を有することが好ましい。
このような可使時間の長い樹脂結合型磁石用組成物を用いることで、高温成形時に受ける酸化劣化が原因の磁気特性低下を防止し、配向性に重要となる異方性磁石材料の高配向化をも可能にできる。
【0108】
3.樹脂結合型磁石
本発明の樹脂結合型磁石用組成物は、熱硬化性樹脂が硬化せずに流動性ある温度に加熱又は冷却することで、所望の形状を有する樹脂結合型磁石に成形される。
【0109】
成形法としては、従来からプラスチック成形加工などに利用されている射出成形法、押出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、またはトランスファー成形法など各種の成形法が採用できるが、これらの中では、射出成形法、押出成形法、トランスファー成形法のいずれかが好ましい。
こうして、従来の熱可塑性樹脂を用いた射出成形法による樹脂結合型磁石がもつ低磁気特性の欠点と、熱硬化性樹脂を用いた圧縮成形法による樹脂結合型磁石のもつ複雑な形状に成形できないという夫々の欠点が解消される。
【0110】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
次の各材料・成分及び方法で樹脂結合型磁石用組成物及び磁石を製造し、評価した。用いた材料・成分を下記に示す。
【0111】
1.材料・成分
(1)磁性粉末
・磁粉1:Sm−Fe−N系磁性粉末(住友金属鉱山(株)製 SmFeN合金粉末)、異方性磁場:16800kA/m(210kOe)、100μm以下の粒径含有率99重量%
・磁粉2:Sm−Co系磁性粉末(商品名:RCo5合金、住友金属鉱山(株)製)、異方性磁場:19680kA/m(246kOe)、100μm以下の粒径含有率99重量%
・磁粉3:Nd−Fe−B系磁性粉末(商品名:MQP−B、マグネクエンチインターナショナル(株)製)、異方性磁場:5600kA/m(70kOe)、100μm以下の粒径含有率62重量%
・磁粉4:ストロンチウムフェライト系磁性粉末(商品名:MA−951、戸田工業(株)製)、異方性磁場:2280kA/m(28.5kOe)、100μm以下の粒径含有率99重量%
・磁粉5:Nd−Fe−B系磁性粉末(商品名:MQP−B、マグネクエンチインターナショナル(株)製)、異方性磁場:5600kA/m(70kOe)、100μm以下の粒径含有率31重量%
【0112】
(2)無機燐酸系化合物(燐酸と略)
・無機燐酸処理剤(燐酸1)(商品名:「燐酸」試薬、関東化学(株)製)
・燐酸マンガン系処理剤(燐酸2)(商品名:ホスニン131、理工協産(株)製)
・燐酸鉄系処理剤(燐酸3)(商品名:ホスニン259E、理工協産(株)製)
【0113】
(3)アビエチン酸系化合物(ロジンと略)
・ロジン1:スーパーエステルL(荒川化学工業(株)製、25℃で液状)
・ロジン2:エステルガムAT(荒川化学工業(株)製、25℃で液状)
・ロジン3:エステルガムAAG(荒川化学工業(株)製、25℃で固体)
【0114】
(4)樹脂バインダー
B:熱硬化性樹脂
・不飽和ポリエステル樹脂1(UP樹脂1)(商品名:ポリセット2212、日立化成工業(株)製)、25℃における粘度:500mPa・s
・不飽和ポリエステル樹脂2(UP樹脂2)(商品名:ポリセット9164、日立化成工業(株)製)、25℃における粘度:2000mPa・s
・ビニルエステル樹脂(VE樹脂)(商品名:ポリセット6120S、日立化成工業(株)製)、25℃における粘度:500mPa・s
B:熱可塑性樹脂(比較例用)
・ナイロン12(商品名:ダイアミド A−1709P、ダイセル・ヒュルス(株)製)
B−2:硬化剤
・硬化剤1:パーオキシケタール系過酸化物(1,1−ジ−t−ブチルペロキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン)(商品名:トリゴノックス29A、化薬アグゾ(株)製)、10時間の半減期を得るための分解温度90℃
・硬化剤2:ジアルキルパーオキサイド系過酸化物[2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペロキシヘキシン−3)](商品名:カヤヘキサYD、化薬アグゾ(株)製)、10時間の半減期を得るための分解温度133℃
・硬化剤3:アゾ系重合開始剤(2−2’−アゾビスイソブチロニトリル)(商品名:ABN−R、日本ヒドラジン工業(株)製)
【0115】
C:N−オキシル類化合物(化合物と略)
・化合物1:2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル(商品名:アデカスタブ LA−7RD、旭電化(株)製)
・化合物2:ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート(商品名:Prostab 5415、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
その他:フェニルフォスフォン酸化合物
・PPA化合物:フェニルフォスフォン酸(日産化学工業株式会社製)
【0116】
2.成形品の製造方法及び評価方法
次に各成形品の製造方法、評価方法は、以下に示す通りである。
(1)無機燐酸系化合物、アビエチン酸系化合物での表面処理
それぞれの磁性粉100重量部に対して、10重量部のIPA等のアルコール系有機溶媒に所定の無機燐酸系化合物を溶解した後、当該処理溶液と磁性粉とをプラネタリーミキサー中で充分に混合撹拌(40rpm,20℃)し、−760mmHg、120℃の真空オーブン中で24時間乾燥させ、ここで得られた処理済み粉を、更にメカノフュージョン(ホソカワミクロン(株)製)にてアビエチン酸系化合物で被覆処理を行い、処理済磁性粉を得た。
【0117】
(2)組成物の混合及び作製
あらかじめ所定の比率になるよう計量混合しておいた熱硬化性樹脂、硬化剤、N−オキシル類化合物等をそれぞれの磁性粉全量に加え(各重量部)、水冷ジャケット付プラネタリーミキサー中で混合撹拌(40rpm、30℃、10分)し、最終組成物を得た。
これらにより得られた混合物のうち、比較用にナイロン12を配合したもののみ、20mmφシングル押出機(L/D=25、CR=2.0、回転数=20rpm、5mmφストランドダイ、シリンダー温度=200〜250℃、ダイス温度=100〜150℃)にて押し出し、ホットカットペレタイザーにてφ5mm×5mmの樹脂結合型磁石用ペレットコンパウンドを作製した。
【0118】
(3)射出成形方法
これらのコンパウンドを、インラインスクリュー式またはプランジャー式磁場発生装置付射出成形機にて、横φ10mm×15mmの円柱試験用樹脂結合型磁石を同一条件(成形温度=30〜180℃、金型温度=100〜220℃)にて成形し、得られた磁石成形品を後述の方法にて評価した。尚、SmCo5系とSmFeN系の磁性粉を使用した時のみ、1200〜1600kA/m(15〜20kOe)の磁場中金型内にて成形を行った。
【0119】
(4)各評価方法
▲1▼磁気特性評価
上記射出成形条件にて得られた樹脂結合型磁石試料の磁気特性を、チオフィー型自記磁束計にて常温で測定した。磁気特性のうち保磁力、磁化、角型性、最大磁気エネルギー積、配向度の結果を表2〜8に示す。
尚、配向度は、SMM法、即ち、{(成形後の樹脂結合型磁石の磁化)/(磁性粉100%でのVSMにて測定した磁化×成形後の樹脂結合型磁石の磁性粉体積率)×100}で表した。従来の方法での限界値は、次の表1の通りであった。よって、これらの限界値以上を「効果あり」と判断した。
【0120】
【表1】
【0121】
▲2▼機械強さ
上記成形条件にて、別途幅5mm×高さ2mm×長さ10mmの試験片を成形し、JIS K7214(プラスチックの打ち抜きによる剪断試験方法)に準じて剪断打ち抜き強さを測定した。各組成物の調製直後に成形した成形体の機械強さを初期値として表2〜7に示した。近年、市場から強く求められている100MPa以上の機械強さを有するものを「効果有り」と判断した。
【0122】
▲3▼可使時間
得られたそれぞれの樹脂結合型磁石用組成物をガラス瓶に充填し、アルミ製の蓋にて密閉した後、30±0.5℃にコントロールされた恒温槽内に入れ、成形後の成形体機械強さが初期値の80%まで低下したときの時間を求め、その結果を表2〜7に示した。尚、不飽和ポリエステル樹脂を用いた比較例1、4〜10については、成形体の機械強さの低下をまねく前に、成形不可能となる急激な粘度上昇、固化する現象を示したため、その固化に達するまでの時間を可使時間として記した。
【0123】
(実施例1〜27)
磁性粉末、燐酸化合物、アビエチン酸化合物、樹脂バインダー、有機過酸化物、N−オキシル類化合物の各成分を所定の配合割合で用い、上述の手順・方法にて樹脂結合型磁石用組成物及び磁石を製造し、その特性を評価した。その評価結果を表2〜6に示す。
【0124】
【表2】
【0125】
【表3】
【0126】
【表4】
【0127】
【表5】
【0128】
【表6】
【0129】
(比較例1〜11)
磁性粉末を燐酸系化合物およびアビエチン酸系化合物で処理しないか、いずれかで処理してから樹脂バインダー、有機過酸化物などの各成分を所定の割合で配合し、上述の手順・方法にて樹脂結合型磁石用組成物及び磁石を製造し、その特性を評価した。その評価結果を表7、8に示す。
【0130】
【表7】
【0131】
【表8】
【0132】
表2〜8の結果から明らかなように、本発明の樹脂結合型磁石用組成物は、優れた可使時間を有し、かつ該樹脂結合型磁石用組成物を用いた樹脂結合型磁石は、磁気特性や機械強さ等に優れる。これに対して、比較例の樹脂結合型磁石用組成物は、磁性粉末をリン酸系化合物およびアビエチン酸化合物で処理しないため、可使時間が短く、成形後の機械強さを維持しにくいことが分かる。
【0133】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明の樹脂結合型磁石用組成物は、磁性粉末が無機燐酸系化合物と特定のアビエチン酸系化合物で表面処理されているため、熱硬化性樹脂バインダー使用時に最も問題となる樹脂結合型磁石用組成物の可使時間が工業的に極めて優れたものになり、さらに、射出成形法等で磁気特性、形状自由度、機械強さ等に優れた樹脂結合型磁石を製造することができ、例えば、一般家電製品、通信・音響機器、医療機器、一般産業機器にいたる幅広い分野で特に有用であり、その工業的価値は極めて大きい。
Claims (14)
- 構成元素中に希土類および遷移金属元素を含む磁性粉末(A)と、樹脂バインダー(B)とからなる樹脂結合型磁石用組成物において、
磁性粉末(A)が無機燐酸系化合物で表面処理され、かつアビエチン酸系化合物で被覆されており、樹脂バインダー(B)が熱硬化性樹脂であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物。 - 磁性粉末(A)は、異方性磁場が4000kA/m以上であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂結合型磁石用組成物。
- 磁性粉末(A)は、粒径100μm以下の磁性粉末を、磁性粉末全量に対して50重量%以上含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂結合型磁石用組成物。
- アビエチン酸系化合物は、25℃で液状であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂結合型磁石用組成物。
- 樹脂バインダー(B)が、ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂(B−1)を主成分とし、有機過酸化物(B−2)を含むことを特徴とする請求項1に記載の樹脂結合型磁石用組成物。
- 樹脂バインダー(B)が、さらに、N−オキシル類化合物(C)を含有することを特徴とする請求項1又は5に記載の樹脂結合型磁石用組成物。
- 熱硬化性樹脂(B−1)は、150℃以下において液状であることを特徴とする請求項5に記載の樹脂結合型磁石用組成物。
- 熱硬化性樹脂(B−1)は、ビニルエステル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、及びポリエステル(メタ)アクリレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂であることを特徴とする請求項5又は7に記載の樹脂結合型磁石用組成物。
- 有機過酸化物(B−2)は、150℃以下の温度で熱硬化性樹脂(B−1)を硬化可能とする化合物であることを特徴とする請求項5に記載の樹脂結合型磁石用組成物。
- 有機過酸化物(B−2)は、ジアルキル系化合物又はパーオキシケタール系化合物であることを特徴とする請求項5又は9に記載の樹脂結合型磁石用組成物。
- N−オキシル類化合物(C)は、分子鎖末端に、次の一般式(1)
- N−オキシル類化合物(C)は、熱硬化性樹脂(B−1)100重量部に対して、0.1〜10重量部配合することを特徴とする請求項6又は11に記載の樹脂結合型磁石用組成物。
- 可使時間が、30℃の密閉静置状態において、120時間以上であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の樹脂結合型磁石用組成物。
- 請求項1〜13のいずれかに記載の樹脂結合型磁石用組成物を、射出成形法、押出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、またはトランスファー成形法のいずれかにより成形してなる樹脂結合型磁石。
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