JP2008288383A - 樹脂結合型磁石用組成物及びそれを用いた樹脂結合型磁石 - Google Patents

樹脂結合型磁石用組成物及びそれを用いた樹脂結合型磁石 Download PDF

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Shinichi Hayashi
真一 林
Kimihiko Fujita
公彦 冨士田
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Abstract

【課題】 磁気特性に極めて優れるばかりでなく、形状自由度、成形性、機械強さにも優れた樹脂結合型磁石を安価に製造することができ、かつ熱硬化性樹脂バインダー使用時に最も問題となる磁石用組成物の可使時間にも極めて優れた樹脂結合型磁石用組成物、およびそれを用いて得た樹脂結合型磁石を提供すること。
【解決手段】 構成元素中に遷移金属元素を含む磁性粉末(A)と、樹脂バインダー(B)とからなる樹脂結合型磁石用組成物において、該樹脂バインダー(B)が有機過酸化物(B−2)を含むラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂(B−1)を主成分とし、さらに、活性炭(C)を配合する樹脂結合型磁石用組成物を提供する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、樹脂結合型磁石用組成物及びそれを用いた樹脂結合型磁石に関するものであり、さらに詳しくは、工業的に優れた可使時間を有し、かつ磁気特性や機械強度などに優れた、磁性粉末と、有機過酸化物を含むラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂バインダーとを含有する樹脂結合型磁石用組成物及びそれを用いた樹脂結合型磁石に関するものである。
従来から、フェライト磁石、アルニコ磁石、希土類磁石等は、モーターをはじめとする種々の用途に用いられている。しかし、これらの磁石は、主に焼結法により作られるために、一般に脆く、薄肉のものや複雑な形状のものが得難いという欠点を有している。それに加えて、焼結時の収縮が15〜20%と大きいため、寸法精度の高いものが得られず、精度を上げるには研磨等の後加工が必要であるという欠点をも有している。
これらの欠点を解決すると共に新しい用途をも開拓するものとして樹脂結合型磁石がある。この樹脂結合型磁石には、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の熱可塑性樹脂をバインダーとし、これと磁性粉末とを混練して得た樹脂結合型磁石組成物を射出成形して得るものと、エポキシ樹脂やビス・マレイミドトリアジン樹脂等の熱硬化性樹脂をバインダーとし、これと磁性粉末とを混練して得た樹脂結合型組成物を圧縮成型して得るものとがある。
前者には、成形時に磁性粉末が200℃以上の高温下に晒されるため、磁気特性、特に保磁力や角型性の低下が免れないという特徴があり、保磁力等の磁気特性において、用いた磁性粉末から期待しうる値より大きく低下した磁気特性を有する磁石しか得られないという問題がある。
また、後者では、樹脂結合型磁石用組成物中のバインダー量が希少であるため単純形状の磁石しか得られていない。しかも、機械的強度が低いことから、粉落ち防止や防錆のために成形体表面のコーティング処理が不可欠という問題がある。
こうした状況下、近年、小型モーター、音響機器、OA機器等に用いられる樹脂結合型磁石に対して、機器の小型化、複雑構造化の要請から、磁気特性に優れ、かつ小型で複雑形状の磁石が要求されてきている。このため、成形後に得られる磁石の磁気特性がより高く、かつ保管中の可使時間が十分長い樹脂結合型磁石用組成物が求められているが、前記従来の方法によって得られる樹脂結合型磁石用組成物にはこれらの条件を共に満たすものは見あたらず、これら樹脂結合型磁石用組成物の早期改良が望まれていた(特許文献1参照)。
これを解決すべく樹脂組成物中に添加剤としてN−オキシル類化合物を添加することが、前記特許文献1や、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7等に開示されている。これらの提案では、N−オキシル類化合物を添加剤として用いることで可使時間の延長が図れるとしている。
特開2006−237514号公報 特開2003−92209号公報 特開2003−209009号公報 特開2003−297619号公報 特開2004−063517号公報 特開2004−356424号公報 特開2005−005597号公報
ところで、最近の低コスト化の要望は極めて強く、前記小型モーター、音響機器、OA機器等に用いられる磁気特性に優れ、かつ小型で複雑形状の磁石に対してもより安価に製造することが求められている。本発明の目的は、磁気特性に極めて優れるばかりでなく、形状自由度、成形性、機械強さにも優れた樹脂結合型磁石を安価に製造することができ、かつ熱硬化性樹脂バインダー使用時に最も問題となる磁石用組成物の可使時間にも極めて優れた樹脂結合型磁石用組成物の提供と、この樹脂結合型磁石組成物を用いて得た磁石の提供にある。
本発明者らは、上記の課題を解決する新規な樹脂結合型磁石組成物の開発に取り組み、鋭意研究した結果、N−オキシル類化合物の代わりに活性炭を該樹脂結合型磁石用組成物に配合すると、良好な可使時間が維持できること、さらに、この樹脂結合型磁石用組成物を射出成形法やトランスファー成形法で成形加工して得られた磁石においても、その良好な保磁力や配向度などの磁気特性、形状自由度、成形性、機械強さなどが維持できることを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、構成元素中に遷移金属元素を含む磁性粉末(A)と、樹脂バインダー(B)とからなる樹脂結合型磁石用組成物において、樹脂バインダー(B)が、有機過酸化物(B−2)を含むラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂(B−1)を主成分とし、これに活性炭(C)が配合されたものであることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、前記第1の発明において、活性炭(C)は、化学式がCの活性炭素であり、かつ粒径が100μm以下のものを50重量%以上含有するものであることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、前記第1または第2の発明において、ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂(B−1)100重量部に対する活性炭(C)の配合割合が、0.05〜2重量部であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、前記第1〜第3の何れかの発明において、磁性粉末(A)が、50kOe以上の異方性磁場を有するものであることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
さらに、本発明の第5の発明によれば、前記第1〜第4の何れかの発明において、磁性粉末(A)が、全磁性粉末中に粒径が100μm以下のものを50重量%以上含有するものであることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
本発明の第6の発明によれば、前記第1〜5の何れかの発明において、有機過酸化物(B−2)は、150℃以下の温度で硬化可能な機能を有することを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、前記第1〜第6の何れかの発明において、有機過酸化物(B−2)が、ジアルキル系又はパーオキシケタール系化合物であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
さらに、本発明の第8の発明によれば、前記第1〜7の何れかの発明において、ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂(B−1)は、150℃以下において液状であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第9の発明によれば、前記第1〜第8の何れかの発明において、ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂(B−1)が、ビニルエステル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、及びポリエステル(メタ)アクリレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
さらに、本発明の第10の発明によれば、前記第1〜9の何れかの発明により得られる樹脂結合型磁石用組成物を、射出成形法、押出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、またはトランスファー成形法から選ばれる少なくとも1種の成形法により成形して得られる樹脂結合型磁石が提供される。
以上説明した通り、本発明に従えば、従来用いられていたN−オキシル類化合物の代替物として活性炭を用いることにより、N−オキシル類化合物を添加剤として用いる樹脂結合型磁石用組成物の有する可使時間や、この組成物を射出成形法等で製造することにより得られる磁石の磁気特性、形状自由度、機械強さ等の優れた特性を損なうことなく、かつ安価な樹脂結合型磁石用組成物を提供することができる。
従って、一般家電製品、通信・音響機器、医療機器、一般産業機器に至る幅広い分野での需要拡大に有用であり、その工業的価値は極めて大きい。
本発明は、上記した如く、構成元素中に遷移金属元素を含む磁性粉末(A)と、樹脂バインダー(B)を含有する樹脂結合型磁石用組成物において、樹脂バインダー(B)が、ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂(B−1)と有機過酸化物(B−2)を主成分とし、活性炭(C)を必須成分として含有するものであることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物と、該組成物から作製される樹脂結合型磁石に係るものである。
なお、本発明の樹脂結合型磁石組成物には、好ましい態様として、樹脂バインダーに長期の保存性を確保するために重合防止剤を添加することができる。さらに、成形性、機械強さ、磁気特性等の諸特性を向上させるために各種の有機添加剤や無機添加剤、無機充填剤、そして顔料等も添加することができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
1.磁性粉末(A)
本発明の樹脂結合型磁石用組成物に用いられる磁性粉末(A)は、通常、樹脂結合型磁石に用いられている磁性粉末の中、その構成元素中に遷移金属類元素を含む磁性粉末であれば、特に制限はない。
その遷移金属類元素としては、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びマンガン(Mn)からなる群から選択される1種又は2種以上であって、これ以外にCr、V又はCuのいずれかを含有してもよい。特に好ましい遷移金属類元素は、Fe又はCoのいずれかである。また、具体的な磁性粉末(A)には、例えば、異方性磁場(HA)が50kOe以上の磁性粉末である希土類コバルト系、希土類−鉄−ほう素系、希土類−鉄−窒素系の磁性粉の単独もしくは混合粉、またはフェライト系磁性粉との混合系などが挙げられる。
本発明者らは、本発明の樹脂結合型磁石用組成物において、(I)磁性粉として還元拡散法によって得られるSmFe系合金粗粉を窒化処理、微粉砕して得られるSm−Fe−N系の合金微粉末、(II)同じく還元拡散法によって得られたSmCo5系合金粗粉を微粉砕して得られる合金微粉末、(III)Nd−Fe−B系の液体急冷法によって得られた合金粉末、又は(IV)HDDR(Hydrogenation−Disproportionation−Desorption−Recombination)法によって得られた異方性Nd−Fe−B系合金粉末を用いると、特に優れた磁気特性を有する樹脂結合型磁石が得られることを確認している。
なお、液体急冷法によって得られたNd−Fe−B系やHDDR法によって得られた異方性Nd−Fe−B系の磁性粉は、特異な形状を有した比較的大きな粒子を大量に含んでいるため、好ましくはジェットミルやボールミル等で粉砕し用いる方が良い。
本発明の樹脂結合型磁石用組成物において、磁性粉末中に粒径100μm以下のものを50重量%以上含むと、本発明の効果を著しく発揮する。また、等方性の磁性粉末よりも磁場中成形が必至となる異方性の磁性粉末の方が、配向特性の面で本発明の効果が著しい。
それは、例えば、磁性粉末が異方性材料であるSmFeN磁性粉末の場合では、始め100μm以上ある粗粉を数μmになるまで細かくすることによって磁気特性(特に保磁力)が向上して、結果として磁性体の強さの目安となる最大磁気エネルギーも向上するからである。一方、磁性粉末がNdFeB磁性粉末等の等方性材料である場合は、高充填化することで磁気特性が向上するため、ある程度磁性粉末を細かくする必要があるものの、異方性の磁性粉末に比べ細粒化による磁気特性向上の幅が狭い。
2.樹脂バインダー(B)
本発明の樹脂結合型磁石用組成物に用いられる樹脂バインダー(B)は、有機過酸化物(B−2)を含むラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂(B−1)を主成分とし、これに活性炭(C)が配合されたものである。
(1)ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂(B−1)
本発明において、必須成分のラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂(B−1)としては、特に限定されるものではないが、ビニルエステル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、及びポリエステル(メタ)アクリレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂であることが好ましく、その中でも不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂であることが最も好ましい。
まず、ビニルエステル樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、エポキシ化合物と不飽和一塩基酸とをエステル化触媒を用いて反応させることによって得ることができる。
上記ビニルエステル樹脂の原料として用いられるエポキシ化合物としては、分子中に、少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物であれば、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS等のビスフェノール類と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られるエピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フェノール、クレゾール、ビスフェノールとホルマリンとの縮合物であるノボラックとエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるノボラックタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、安息香酸とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;水添加ビスフェノールやグリコール類とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;ヒダントインやシアヌール酸とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られる含アミングリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、これらエポキシ樹脂と多塩基酸類および/またはビスフェノール類との付加反応により分子中にエポキシ基を有する化合物であってもよい。これらエポキシ化合物は、一種類のみを用いてもよく、適宜二種類以上を混合して用いてもよい。
さらに、上記ビニルエステル樹脂の原料として用いられる不飽和一塩基酸としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸等が挙げられる。また、マレイン酸、イタコン酸等のハーフエステル等を用いてもよい。さらに、これらの化合物と、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の多価カルボン酸や、酢酸、プロピオン酸、ラウリル酸、パルチミン酸等の飽和一価カルボン酸や、フタル酸等の飽和多価カルボン酸またはその無水物や、末端基がカルボキシル基である飽和あるいは不飽和アルキッド等の化合物とを併用してもよい。これら不飽和一塩基酸は、一種類のみを用いてもよく、適宜二種類以上を混合して用いてもよい。
上記エステル化触媒としては、具体的には、例えば、ジメチルベンジルアミン、トリブチルアミン等の第三級アミン類;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩;塩化リチウム、塩化クロム等の無機塩;2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;テトラメチルホスフォニウムクロライド、ジエチルフェニルプロピルホスフォニウムクロライド、トリエチルフェニルホスフォニウムクロライド、ベンジルトリエチルフェニルホスフォニウムクロライド、ジベンジルエチルメチルホスフォニウムクロライド、ベンジルメチルジフェニルホスフォニウムクロライド、テトラフェニルホスフォニウムブロマイド等のホスフォニウム塩;第二級アミン類;テトラブチル尿素;トリフェニルホスフィン;トリトリールホスフィン;トリフェニルスチビン等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらエステル化触媒は、一種類のみを用いてもよいし、適宜二種類以上を混合して用いてもよい。
次に、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリイソシアネートとポリヒドロキシ化合物あるいは多価アルコール類とを反応させた後、さらに水酸基含有(メタ)アクリル化合物および必要に応じて水酸基含有アリルエーテル化合物を反応させることによって得ることができる。また、水酸基含有(メタ)アクリル化合物とポリヒドロキシ化合物あるいは多価アルコール類とを反応させた後、さらにポリイソシアネートを反応させてもよい。
上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料として用いられるポリイソシアネートとしては、具体的には、例えば、2,4−トリレンジイソシアネートおよびその異性体、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、バーノックD 750、クリスポンNX(商品名;大日本インキ化学工業株式会社製)、デスモジュールL(商品名;住友バイエル社製)、コロネートL(商品名;日本ポリウレタン社製)、タケネートD102(商品名;武田薬品社製)、イソネート143L(商品名;三菱化成社製)等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらポリイソシアネートは、一種類のみを用いてもよいし、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
また、上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料として用いられる多価アルコール類としては、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ビスフェノールAとプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドとの付加物、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−プロパンジオール、1,2−シクロヘキサングリコール、1,3−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサングリコール、パラキシレングリコール、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオール、2,6−デカリングリコール、2,7−デカリングリコール等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら多価アルコール類は、一種類のみを用いてもよいし、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
さらに、上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料として用いられるポリヒドロキシ化合物としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられ、具体的には、例えば、グリセリンエチレンオキシド付加物、グリセリンプロピレンオキシド付加物、グリセリンテトラヒドロフラン付加物、グリセリンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパンエチレンオキシド付加物、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパンテトラヒドロフラン付加物、トリメチロールプロパンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物、ペンタエリスリトールエチレンオキシド付加物、ペンタエリスリトールプロピレンオキシド付加物、ペンタエリスリトールテトラヒドロフラン付加物、ペンタエリスリトールエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトールエチレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトールプロピレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトールテトラヒドロフラン付加物、ジペンタエリスリトールエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらポリヒドロキシ化合物は、一種類のみを用いてもよいし、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料として用いられる水酸基含有(メタ)アクリル化合物としては、特に限定されるものではないが、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら水酸基含有(メタ)アクリル化合物は、一種類のみを用いてもよいし、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料として必要に応じて用いられる水酸基含有アリルエーテル化合物としては、具体的には、例えば、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、トリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、1,2−ブチレングリコールモノアリルエーテル、1,3−ブチレングリコールモノアリルエーテル、ヘキシレングリコールモノアリルエーテル、オクチレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら水酸基含有アリルエーテル化合物は、一種類のみを用いてもよいし、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
次に、不飽和ポリエステル樹脂であるが、不飽和ポリエステル樹脂は、成形時の金型内で硬化して磁性粉末のバインダーとして働くものであれば、特にその種類に限定されることはなく、一般的に市販されている不飽和ポリエステル樹脂を用いることができる。
この不飽和ポリエステル樹脂としては、例えば、不飽和多塩基酸及び/又は飽和多塩基酸とグリコール類を分子量5000程度以下に予備的に重合させてオリゴマーやプレポリマー化させた主剤に、架橋剤を兼ねるモノマー類、反応を開始させる硬化剤、長期の保存性を確保するための重合防止剤、及びその他の添加剤等から構成される。
不飽和多塩基酸としては、例えば無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等を、また、飽和酸としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ヘット酸、テトラブロム無水フタル酸等が挙げられる。
また、グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3ブタンジオール、1,6ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物、ジブロムネオペンチルグリコール、ペンタエリスリットジアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
次に、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、不飽和あるいは飽和ポリエステルの末端に(メタ)アクリル化合物を反応させることによって得ることができる。上記ポリエステルの原料としては、例えば上記不飽和ポリエステル樹脂の原料として例示した化合物と同様の化合物を用いることができる。
上記ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂の原料として用いられる(メタ)アクリル化合物としては、具体的には、例えば、不飽和グリシジル化合物、(メタ)アクリル酸等の不飽和一塩基酸及びそのグリシジルエステル類等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら(メタ)アクリル化合物は、一種類のみを用いてもよいし、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
さらに、架橋剤を兼ねるモノマー類としては、例えば、(I)スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル等のビニルモノマー類、(II)ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルイソフタレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテトラブロムフタレート等のアリルモノマー類、(III)フェノキシエチルアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステル類等が挙げられる。
(2)有機過酸化物(B−2)
本発明において、有機過酸化物(B−2)は、一般に、前記の反応を開始させる硬化剤として用いられ、ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂(B−1)に配合される。
有機過酸化物(B−2)としては、例えば、(I)メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、(II)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類、(III)t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジ−イソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、(IV)ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−クミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド類、(V)アセチルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、オクタノニルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、サクシニック酸パーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、トルオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、(VI)ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペロキシジカーボネート、ジ−n−プロピルペロキシジカーボネート、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペロキシジカーボネート、ジ−ミリスチルペロキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルペロキシジカーボネート、ジ−メトキシイソプロピルペロキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)ペロキシジカーボネート、ジアリルペロキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類、(VII)t−ブチルペロキシアセテート、t−ブチルペロキシイソブチレート、t−ブチルペロキシピバレート、t−ブチルペロキシネオデカノエート、クミルペロキシネオデカノエート、t−ブチルペロキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペロキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペロキシラウレート、t−ブチルペロキシベンゾエート、ジ−t−ブチルペロキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペロキシ)ヘキサン、t−ブチルペロキシマレイックアシッド、t−ブチルペロキシイソプロピルカーボネート、クミルペロキシオクトエート、t−ヘキシルペロキシネオデカノエート、t−ヘキシルペロキシピバレート、t−ブチルペロキシネオヘキサノエート、t−ヘキシルペロキシネオヘキサノエート、クミルペロキシネオヘキサノエート等のパーオキシエステル類や、(VIII)アセチルシクロヘキシルスルフォニルペロキサイド、t−ブチルペロキシアリルカーボネート等が挙げられる。
これらの有機過酸化物は、そのもの自体単独で用いることができるものもあるが、種類によっては、炭化水素溶液類やフタル酸エステル類に希釈した状態、もしくは固形粉末に吸収させた状態で用いることがある。
いずれにせよ、半減期10時間を得るための分解温度が150℃以下の性質を有する過酸化物を使用するのが望ましく、さらには、同半減期を得るための分解温度が40〜135℃の範囲である過酸化物がより望ましい。該半減期を得るための分解温度が150℃を超えるものを選択すると、充分な硬化成形体を得るための硬化温度が高くなり、本発明の効果が小さくなる。一方、40℃よりも低くなると過酸化物自体の取り扱いが困難になるばかりでなく、本発明の樹脂結合型磁石用組成物の保管特性が悪くなり、生産性に欠ける結果を招く。
これらの有機過酸化物(B−2)の添加量は、希釈率や活性酸素量によって異なるため、規定することはできないが、一般的にはラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂(B−1)100重量部に対して、0.05〜10重量部が添加される。
これらの有機過酸化物(B−2)は、単独又は2種以上の混合系で用いることができるが、最終樹脂結合型磁石用組成物の可使時間をより長く確保するために、パーオキシケタール系、又はジアルキル系過酸化物の単独で用いることが、極めて好ましい。
なお、樹脂結合型磁石用組成物の可使時間とは、ポットライフともいわれ、液状樹脂に硬化剤などを加えた時点から粘度が上昇し、成形不可能となるまでの時間、すなわちゲル化・硬化などが起こらず、成形可能な流動性を保っている時間、或いは成形後の機械強さが組成物調製直後に成形したそれ(機械強さの初期値)の80%まで低下するまでの時間のいずれか早い方の時間を意味し、本発明の組成物系では、一般的には機械強さが低下する時間の方が早いのが特徴である。
また、可使時間は、本発明のようなラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂(B−1)を用いた製品の場合には、一般に1ヶ月間(720時間)程度とされているが、保存環境によっては、その時間は大幅に短くなってしまう。したがって、最低限作製した週は、使用できるようにしたいことから、夏場の使用環境の30℃で5日間(120時間)を可使時間の目安とした。
(3)重合防止剤
本発明において、長期の保存性を確保するために重合防止剤を樹脂バインダーに配合することができる。
重合防止剤としては、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、フェナンスラキノン、トルキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、2,5−ジアセトキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジカプロキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジアシロキシ−p−ベンゾキノン等のキノン類、ハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、モノ−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン等のハイドロキノン類、ジ−t−ブチル・パラクレゾールハイドロキノンモノメチルエーテル、アルファナフトール等のフェノール類、ナフテン酸銅等の有機ならびに無機の銅塩類、アセトアミジンアセテート、アセトアミジンサルフェート等のアミジン類、フェニルヒドラジン塩酸塩、ヒドラジン塩酸塩等のヒドラジン類、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、ラウリルピリジニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムオキザレート、ジ(トリメチルベンジルアンモニウム)オキザレート、トリメチルベンジルアンモニウムマレエート、トリメチルベンジルアンモニウムタータレート、トリメチルベンジルアンモニウムグリコレート等の第4級アンモニウム塩類、フェニル−β−ナフチルアミン、パラベンジルアミノフェノール、ジ−β−ナフチルパラフェニレンジアミン等のアミン類、ニトロベンゼン、トリニトロトルエン、ピクリン酸等のニトロ化合物、キノンジオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類、ピロガロール、タンニン酸、レゾルシン等の多価フェノール類、トリエチルアミン塩酸塩、ジメチルアニリン塩酸塩、ジブチルアミン塩酸塩等のアミン塩酸塩類等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上を混合して使用することができる。
(4)その他添加剤
本発明に用いる樹脂バインダーには、これらの各種成分以外にも種々の添加剤を加えることができる。例えば、有機添加剤としては、エポキシ樹脂を原料としたノボラック型やビスフェノール型のビニルエステル樹脂類、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ビス・マレイミドトリアジン樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の各反応性樹脂類や、成形性の改善を目的とした、例えばパラフィンワックス、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エステルワックス、カルナウバ、マイクロワックス等のワックス類、ステアリン酸、1,2−オキシステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸カルシウム、リノール酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、2−エチルヘキソイン酸亜鉛等の脂肪酸塩(金属石鹸類)ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、パルミチン酸アミド、ラウリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ジステアリルアジピン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ジオレイルアジピン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド等脂肪酸アミド類、ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル、エチレングリコール、ステアリルアルコール等のアルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及びこれら変性物からなるポリエーテル類、ジメチルポリシロキサン、シリコングリース等のポリシロキサン類、弗素系オイル、弗素系グリース、含弗素樹脂粉末といった弗素化合物があり、無機添加剤としては窒化珪素、炭化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、二酸化珪素、二硫化モリブデン等の無機化合物粉体を1種もしくは2種以上添加することができる。
さらに、硬化促進剤として、例えばナフテン酸コバルトやオクチル酸コバルト等のコバルト有機酸塩、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、ジメドン等のβ−ジケトン類、ジメチルアニリン等の芳香族3級アミン類、メルカプタン類、トリフェニルホスフィン、2−エチルヘキシルホスファイト等の燐化合物類、第4級アンモニウム塩類等を添加することができる。また、硬化促進剤の添加に際しては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、芳香族カルボニル化合物、ピナコン誘導体等との併用を行っても良い。
なお、これらの併用してもよい添加剤の配合量は、ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹(B−1)100重量部に対して、通常0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部である。
これら以外にも、必要に応じ、無機充填剤や顔料等も任意に添加しても良い。無機充填剤としては、例えば、ストロンチウムフェライト系、バリウムフェライト系等のフェライト類磁性粉、鉄等の軟磁性粉、タングステン等の密度調整用高比重金属粉、三酸化アンチモン等の難燃剤、酸化チタン等の顔料等が挙げられる。
これら混合されるラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂バインダーの各成分は、重合度や分子量に制約されることはないが、磁性粉を加える前の混合調製状態での成形温度における回転粘度測定法での動的粘度が100mPa・s〜5000mPa・sの範囲に含まれることが好ましい。
この粘度に調整するために、数種類の粘度や性状の異なるラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂同士を混合したり、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム等の二価金属の酸化物類や水酸化物類、ジイソシアナート類、アリジリン化合物類、アルミニウムイソプロポキシド等を加えても差し支えない。
よって、ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂バインダーを構成する各成分の性状は、例えば常温で液状、パウダー、ビーズ、ペレット等特に限定されないが、磁性粉との均一混合性や成形性から考えると、液状であることが望ましい。また、これらの異なる樹脂や異なる分子量、性状のものを1種または2種以上組み合わせて混合することも差し支えない。
これらのラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂を主とする最終混合バインダーの粘度は、JIS K7117(液状樹脂の回転粘度計による粘度試験方法)に準じて測定されるが、測定温度は、成形温度(成形時のシリンダー温度)にあわせた恒温漕内で測定される。そのときの測定値が100mPa・s〜5000mPa・sであるものを用いるのが望ましいが、中でも300mPa・s〜3000mPa・sのものが好ましい。この動的粘度が、100mPa・s未満であると、射出成形時に磁性粉とバインダーの分離現象が生じるため成形できない。また、5000mPa・s超であると著しい混練トルクの上昇、流動性の低下を招き成形困難になるため、本発明の効果を得ることができない。
また、これらのラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂バインダー(B)の添加量は、各構成成分を含めた状態で、該磁性粉末(A)100重量部に対して、5重量部以上50重量部未満の割合で添加されるが、好ましくは7〜15重量部、さらに、10〜14重量部がより好ましい。該バインダーの添加量が該磁性粉末100重量部に対して5重量部未満の場合は、著しい成形体強度の低下や成形時の流動性の低下を招いて、本発明の効果を得ることができない。また、50重量部以上の場合は、磁性粉末の量が少ないため、成形された樹脂結合型磁石の磁気特性において、所望の大きさの磁化を得ることができず、結果として最大エネルギー積についても本発明が所望する高い特性は得ることができない。
3.活性炭(C)
本発明の樹脂結合型磁石用組成物においては、その可使時間を長くするために、上記の組成・成分に加えて、さらに必須成分として、化学式がCの活性炭(C)を配合する。
ところで、遷移金属と有機過酸化物とにおいては、レドックス反応と称される過酸化物の分解反応が低温度で促進され、可使時間の著しい低下を招くことが一般的に知られている。
本発明者らは、これらの反応機構を中心に、さらに詳しい実験や試験を進めた結果、当該磁石粉等と有機過酸化物とを含む系においては、レドックス反応のみならず、これに相まってラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂やスチレン等の複雑な重合反応の促進効果も極めて高いことを見出し、これが通常の遷移金属単体系の組成物よりも、可使時間を極めて短くするという現象を見出し、N−オキシル類化合物がこの特殊な反応抑制効果に極めて有効的であることを突きとめ、前記各特許文献に提案した。
さらに、種々の検討を重ねた結果、N−オキシル類化合物の代わりに活性炭を用いれば、N−オキシル類化合物を用いた樹脂結合型磁石組成物と同等の可使時間、これを用いて得られた磁石の良好な磁気特性を有する樹脂結合型磁石組成物をN−オキシル類化合物を用いた場合と同様に安価に得ることができることを突きとめ、本発明を完成させたのである。
本発明において用いられる活性炭(C)は、特に限定されるものではないが、粒径が100μm以下のものを50重量%以上含有することで効果を示す。粒径が、100μm以上のものが50重量%より多くなると可使時間を短くする主要因の発生ラジカルを捕捉する表面積が減るため樹脂結合型磁石用組成物の可使時間を伸ばす効果が減るばかりではなく、異方性の磁性粉末(A)の配向を阻害してしまい磁気特性の低下を招く。
上記活性炭(C)として、木質系、椰子系、石炭系と主に3種類あるが、いずれの種類も用いることができる。これらの活性炭(C)は、単独もしくは2種以上の混合系で用いることもできる。
これら活性炭(C)の添加量は、その種類によって効果が大きく異なるため、画一的に規定はできないが、一般的にはラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂(B−1)100重量部に対して、0.05〜2重量部、好ましくは0.1〜1重量部である。添加量が0.05重量部より少ない場合は、十分な可使時間を確保できない。一方、2重量部より多い場合は、成形体の密度の低下や表面の荒れを生じるため、望ましくない。
4.樹脂結合型磁石用組成物及び樹脂結合型磁石
本発明の樹脂結合型磁石用組成物は、前述の必須成分(A)〜(C)に、さらに必要に応じて他の添加剤を配合して混合し、調製される。
各成分の混合方法は、特に限定されず、例えばリボンブレンダー、タンブラー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の混合機、あるいは、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、ニーダールーダー、単軸押出機、二軸押出機等の混練機を用いることにより実施される。
このようにして得られた樹脂結合型磁石用組成物の形状は、パウダー状、ビーズ状、ペレット状、あるいはこれらの混合物の形であるが、取扱易さの点で、ペレット状(或いは塊状)が望ましい。
本発明の樹脂結合型磁石用組成物は、次いで、ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂(B−1)の溶融温度で加熱溶融された後、所望の形状を有する磁石に成形される。その際、成形法としては、従来からプラスチック成形加工等に利用されている射出成形法、押出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、トランスファー成形法など各種の成形法が挙げられるが、これらの中では、特に射出成形法、押出成形法、射出圧縮成形法、及び射出プレス成形法が好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
次の各材料・成分及び方法で樹脂結合型磁石用組成物及び磁石を製造し、評価した。
先ず、用いた材料・成分を以下に示す。
1.材料・成分
(1)磁性粉末(A)
・磁粉1:異方性材料のSm−Fe−N系磁性粉末(住友金属鉱山(株)製 SmFeN合金粉末)、異方性磁場:210kOe、100μm以下の粒径含有率99重量%
・磁粉2:等方性材料のNd−Fe−B系磁性粉末(商品名:MQP−B、マグネクエンチインターナショナル(株)製)、異方性磁場:70kOe、100μm以下の粒径含有率62重量%
(2)熱硬化性樹脂(ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂(B−1)及び比較例用ナイロン12)
・不飽和ポリエステル樹脂(UP樹脂)(商品名:ポリセット2212、日立化成工業(株)製)、25℃における粘度:500mPa・s
・ビニルエステル樹脂(VE樹脂)(商品名:ポリセット6120S、日立化成工業(株)製)、25℃における粘度:500mPa・s
・ナイロン12(商品名:ダイアミド A−1709P、ダイセル・ヒュルス(株)製)
(3)硬化剤(B−2)
・硬化剤1:パーオキシケタール系過酸化物(1,1−ジ−t−ブチルペロキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン)(商品名:トリゴノックス29A、化薬アグゾ(株)製)、10時間の半減期を得るための分解温度90℃
・硬化剤2:アゾ系重合開始剤(2−2’−アゾビスイソブチロニトリル)(商品名:ABN−R、日本ヒドラジン工業(株)製)
(4)活性炭(C)
・活性炭1:クラレコールYP(クラレケミカル(株)社製)平均粒径15〜20μm
2.成形品の製造方法及び評価方法
次に実施した各成形品の製造方法、評価方法を以下に示す。
(1)組成物の混合及び作製
予め所定の比率になるよう計量混合しておいた熱硬化性樹脂、硬化剤、活性炭等をそれぞれ磁性粉末全量に加え(各重量部)、水冷ジャケット付プラネタリーミキサー中で十分混合撹拌(40rpm,30℃、10分)し、最終組成物を得た。
また、上記のようにして得られた混合物のうち、比較用にナイロン12を配合した比較例3と4のみ20mmφシングル押出機(L/D=25、CR=2.0、回転数=20rpm、5mmφストランドダイ、シリンダー温度200〜250℃、ダイス温度100〜150℃)にて押し出し、ホットカットペレタイザーにてφ5mm×5mmの樹脂結合型磁石用ペレットコンパウンドを作製した。
(2)射出成形方法
これらのコンパウンドを、インラインスクリュー式またはプランジャー式磁場発生装置付射出成形機にて横φ10mm×15mmの円柱試験用樹脂結合型磁石を同一条件(成形温度30〜250℃、金型温度100〜180℃)にて成形し、得られたこれらの磁石成形品を後述の方法にてそれぞれ評価した。なお、SmFeN系の磁性粉を使用した時のみ、15〜20kOeの磁場中金型内にて成形を行った。
(3)各評価方法
[1]可使時間
得られたそれぞれの樹脂結合型磁石用組成物をガラス瓶に充填し、アルミ製の蓋にて密閉した後、30±0.5℃にコントロールされた恒温槽内に入れ、成形後の成形体機械強さが初期値の80%まで低下したときの時間を求め、その結果を表2〜3に示した。
なお、不飽和ポリエステル樹脂を用いた比較例1,2,5,6については、成形体の機械強さの低下を招く前に、成形不可能となる急激な粘度上昇、固化する現象を示したため、その固化に達するまでの時間を記した。
[2]磁気特性評価
上記射出成形条件にて得られた樹脂結合型磁石試料について、チオフィー型磁気磁束計にて常温で磁気特性、すなわち保磁力、磁化、角型性、最大磁気エネルギー積、配向度を測定し、その結果を表2〜3に示す。
なお、配向度については、SMM法、即ち、{(成形後の樹脂結合型磁石の磁化)/(磁性粉100%でのVSMにて測定した磁化×成形後の樹脂結合型磁石の磁性粉体積率)×100}で表した。
また、従来の方法における各評価の限界値は、次の表1の通りであるため、これらの限界値を基準値とし、これら限界値以上を示す場合には「効果あり」と判断した。
Figure 2008288383
[3]機械強さ
上記成形条件にて、別途幅5mm×高さ2mm×長さ10mmの試験片を成形し、JIS K7214(プラスチックの打ち抜きによる剪断試験方法)に準じて剪断打ち抜き強さを測定した。各組成物の調製直後に成形した成形体の機械強さを初期値として表2〜3に示した。近年、市場から強く求められている100MPa以上の機械強さを有するものを「効果有り」と判断した。
(実施例1〜6,比較例1〜6)
磁性粉末(A)、熱硬化性樹脂(B−1)、硬化剤(B−2)、活性炭(C)の各成分を所定の配合割合で用い、上述の手順・方法にて樹脂結合型磁石用組成物及び磁石を製造し、可使時間、磁気特性、及び機械強さを評価した。各実施例における評価結果を表2に、各比較例における評価結果を表3に示す。
Figure 2008288383
《注》表2の硬化剤重量部及び活性炭重量部中の( )内数値は、熱硬化性樹脂100重量部に対する硬化剤と活性炭の配合割合を示す。
Figure 2008288383
《注》表3の硬化剤重量部及び活性炭重量部中の( )内数値は、熱硬化性樹脂100重量部に対する硬化剤と活性炭の配合割合を示す。
上記表2に示すように、本発明の樹脂結合型磁石用組成物の可使時間は、それぞれの実施例が示す通り、本発明の好適条件である120時間以上を大幅に上回っており、さらに表3における比較例1,2,5の示す結果とは格段の差があることから、可使時間をより長く確保することについて活性炭配合がもたらす効果が大きいことは明らかである。
また、機械強さについては、各実施例とも基準である100MPa以上の値を示しており、全て「効果有り」と判断されるものであった。
さらに、磁気特性においても、各実施例とも保磁力、磁化、角型性、最大磁気エネルギー積、配向度の全てにおいて高水準の値を示している。
以上のことから明らかなように、本発明の樹脂結合型磁石用組成物は、長時間ゲル化・硬化などが起こらず、成形可能な流動性を保つと共に、組成物調製直後に成形した際の当初の機械強さを維持して成形後の劣化を抑えるといった優れた可使時間と共に、高い配向性を有し、かつ該樹脂結合型磁石用組成物を用いた樹脂結合型磁石は、磁気特性や機械強さ等に優れる。

Claims (10)

  1. 構成元素中に遷移金属元素を含む磁性粉末(A)と、樹脂バインダー(B)とからなる樹脂結合型磁石用組成物において、樹脂バインダー(B)が、有機過酸化物(B−2)を含むラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂(B−1)を主成分とし、これに活性炭(C)が配合されたものであることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物。
  2. 前記活性炭(C)が、化学式がCの活性炭素であり、かつ粒径が100μm以下のものを50重量%以上含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂結合型磁石用組成物。
  3. 前記ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂(B−1)100重量部に対する前記活性炭(C)の配合割合が、0.05〜2重量部であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂結合型磁石用組成物。
  4. 前記磁性粉末(A)が、50kOe以上の異方性磁場を有するものであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の樹脂結合型磁石用組成物。
  5. 前記磁性粉末(A)が、全磁性粉末中に粒径が100μm以下のものを50重量%以上含有するものであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の樹脂結合型磁石用組成物。
  6. 前記有機過酸化物(B−2)が、150℃以下の温度で硬化可能な機能を有することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の樹脂結合型磁石用組成物。
  7. 前記有機過酸化物(B−2)が、ジアルキル系又はパーオキシケタール系化合物であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の樹脂結合型磁石用組成物。
  8. 前記ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂(B−1)が、150℃以下において液状であることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の樹脂結合型磁石用組成物。
  9. 前記ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂(B−1)が、ビニルエステル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、及びポリエステル(メタ)アクリレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂であることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の樹脂結合型磁石用組成物。
  10. 前記請求項1〜9の何れかに記載された樹脂結合型磁石用組成物を、射出成形法、押出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、またはトランスファー成形法から選ばれる少なくとも1種の成形法により成形して得られる樹脂結合型磁石。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN112679215A (zh) * 2020-12-29 2021-04-20 杭州史宾纳科技有限公司 一种用于永磁铁氧体干压成型的方法

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