JP4063171B2 - 制振遮音材 - Google Patents

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Description

本発明は、制振遮音材に関し、更に詳しくは、遷移金属を含む金属粉末とラジカル硬化型樹脂バインダーを含有し、可使時間が長い混練物を成形して得られる密度が高い成形体を用いた制振遮音材に関するものである。
近年、快適な住環境が求められ、各種の家庭用電気製品には低騒音・高機能化が指向されている。例えば、電気掃除機では、ゴミの吸引清掃機能が高いだけではなく、また、冷蔵庫では冷蔵冷凍性能が高いことに加えて、モーターなどから発生する騒音が小さいことが重要になっている。これは、洗濯機、電動芝刈り機、プリンターなどでも同様である。
このため、家庭用電気製品では、騒音の発生源に近接して制振材や遮音材で形成されたカバーを設け、その内部に騒音を閉じ込め、減衰させる方法、構造材料の振動伝播を抑える方法が採用されている。すなわち、騒音などの発生源からの振動吸収や、外表面の構造材等を通して伝播する固体伝播音の遮音(発生防止、伝播防止)を目的として、例えば保護カバーに制振材や遮音材を貼付けたり、騒音の発生源の下に敷いている。また、空気伝播音の遮音を目的として構造壁と区画用の内壁間に埋入むことで対処している。
制振材は、固体中を伝播してきた振動エネルギーを吸収し、一部を摩擦抵抗等による熱エネルギーとして消滅させることで、振動に伴い発生する音を低減させることから、遮音材は、入射した音波のエネルギーが透過しにくい材料であり、面密度つまり単位面積あたりの質量が大きいものほど遮音性能(透過損失)が大きくなる。
近年、制振、遮音性能に関する要求に対応できる高性能の制振材料、遮音材料が求められ、各種フィラーを充填材として樹脂バインダーに混入分散した混練物をシート状に加工した制振シートや遮音シート(以下、制振シート、遮音シートを合わせて「制振遮音シート」と総称する場合がある)が開発されている。
制振シート、遮音シート等では、充填材の比重や厚さを増大させるほど遮音性能が向上できるとされている。ところが、充填材は、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、カオリン粘土、シリカ、ウイスカ、ガラスフレークなど比重(真比重)3.0〜5.0g/cm程度のものが採用され、これを熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム等の樹脂バインダーに添加して、密度2.0〜3.0g/cm程度に形成されたものが一般的である。
従来、住宅等の分野では、施工性、搬送性、加工性等が良いことから制振シート、遮音シートが建物用資材として利用されている。一部では、アスファルト等のバインダーに対する充填材の混入量を増大して密度を高め、目的の面密度を確保することが検討されている(特許文献1参照)。成形体の密度を3g/cm以上に高めるためには、上記炭酸カルシウムのようなものは、比重が3g/cm以下であるため充填材として使用できず、より比重の大きな鉄粉を用いている。
この場合、充填材の混入量が多くなると、物性(柔軟性、耐久性、形状安定性、加工性等)が劣化するため、充填材の添加量を増加するには限界があった。また、充填材の添加量が多いと、コストが増大するといった問題もあった。
このような問題は、家庭用電気製品の分野においては一層の困難を伴うものとなっている。というのは、モーターなどの駆動源が高性能化するのに対して、軽量小型化も要求され、限られた空間にコンパクトに制振遮音材を組み込み、取り付けなければならないからである。
金属粉末を高充填した制振遮音材が望まれているが、機器の大型化、重量化につながることや、電気機器の設計寸法や製造現場での取り付け条件から自ずと限界があるために、密度3.0g/cmを超える制振遮音材は殆ど実用化されていない。
このような制振遮音材では、樹脂バインダーとしてラジカル硬化型樹脂であるビニルエステル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及びポリエステル(メタ)アクリレート樹脂が用いられ、成形体では、強度を高めるためにガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、有機高分子繊維などとの複合化が行われている。
しかし、これら遷移金属を含む金属粉末と複合化しようとすると、ラジカル硬化型樹脂である不飽和ポリエステルやビニルエステルをバインダーとして用いた混練物のゲル化または硬化が進んでしまうため、混練後短時間で硬化が始まるため混練物の保存ができず、混練物を試作したら短時間で全て成形しなければならないという問題があった。これを解決し、防音カバーなどの形状に合わせて小さく複雑な形状の制振遮音材を成形するためには、可使時間の長い混練物を開発しなければならない。
合成樹脂の保存安定性や硬化性を改善し、経時劣化に伴う着色を抑えるために、N−オキシル類を配合した樹脂組成物が提案されている(特許文献2参照)。また、ラジカル硬化性樹脂とレドックス作用を有する金属化合物とを含んだ硬化性樹脂組成物に、フェニルスルフォン酸類とN−オキシル類化合物を必須成分として含有した硬化性樹脂組成物が提案され、優れた貯蔵安定性を有し、かつ硬化特性を損なわず常温で硬化しうる樹脂組成物が開示されている(特許文献3参照)。
しかし、これらの樹脂組成物の場合、N−オキシル類化合物は、ゲル化防止剤あるいは重合防止剤として極めて少量添加されており、遷移金属を多量に含有する成形体、制振遮音材の製造に適した樹脂組成物への応用可能性に関する記載は見当たらない。
特開2003−74135号公報 特開平10−7918号公報 特開2001−11328号公報
本発明の目的は、ラジカル硬化型樹脂をバインダーとして、これに遷移金属を含む金属粉末を添加混練して使う場合、混練後短時間で硬化が始まるため混練物の保存ができず、混練物を試作したら短時間で全て成形しなければならないという問題を解消し、高い密度の成形体が製造でき、可使時間が長い混練物と、これを用いて得られる成形体、制振遮音材を得ることにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、遷移金属を含む金属粉末の表面を無機燐酸系化合物で表面処理して安定化させ、樹脂バインダーにN−オキシル類化合物を添加することで、ゲル化時間の制御が可能となり、混練物の可使時間を長くすることができるようになり、結果として、混練後短時間で硬化が始まるため混練物の保存ができなくなるという問題を解消し、成形体密度が高く、制振遮音材に好適である成形体が製造可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の第1の発明によれば、遷移金属を含む金属粉末(A)及び樹脂バインダー(B)を含む混練物が、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法、またはトランスファー成形法のいずれかで成形された成形体を用いてなる制振遮音材であって、金属粉末(A)が無機燐酸系化合物で表面処理されており、かつ樹脂バインダー(B)がラジカル硬化型樹脂(B−1)を主成分とし有機過酸化物(B−2)を含み、さらにN−オキシル類化合物(C)が配合されていることを特徴とする制振遮音材が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、金属粉末(A)は、混練物の50重量%以上を占めることを特徴とする制振遮音材が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、ラジカル硬化型樹脂(B−1)は、25℃における粘度が5000mPa・s以下であることを特徴とする制振遮音材が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、ラジカル硬化型樹脂(B−1)は、ビニルエステル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、及びポリエステル(メタ)アクリレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂であることを特徴とする制振遮音材が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、有機過酸化物(B−2)は、ジアルキルパーオキサイド系又はパーオキシケタール系化合物であることを特徴とする制振遮音材が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1の発明において、N−オキシル類化合物(C)は、分子鎖末端に、次の一般式(1)
Figure 0004063171
式(1)中、X、およびXは、それぞれ独立して水素原子、−OR基、−OCOR基または−NR基を表し、R、R、R、およびRは、それぞれ独立して炭素数1以上のアルキル基を表し、R、R、R、およびRは、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜16のアルキル基で表される構造、または一般式(2)
Figure 0004063171
式(2)中、式中、X、X、およびXは、それぞれ独立して水素原子、−OR13基、−OCOR14基または−NR1516基を表し、R、R10、R11、およびR12は、それぞれ独立して炭素数1以上のアルキル基を表し、R13、R14、R15、およびR16は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜16のアルキル基である、で表される構造のうち少なくとも一種の構造を有することを特徴とする制振遮音材が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第1の発明において、N−オキシル類化合物(C)は、ラジカル硬化型樹脂(B−1)100重量部に対して、0.1〜10重量部配合することを特徴とする制振遮音材が提供される。
さらに、本発明の第8の発明によれば、第1の発明において、混練物は、30℃の密閉静置状態において120時間以上の可使時間を有することを特徴とすることを特徴とする制振遮音材が提供される。
本発明に係る金属粉末と樹脂バインダーで構成される混練物は、バインダー使用時に金属粉末と樹脂バインダーで構成される混練物の可使時間が極めて優れたものになり、結果として、混練後短時間で硬化が始まるため混練物の保存ができなくなるという問題が解消される。また、成形体密度が高く、射出成形法などで形状自由度、機械強さ等に優れた成形体が得られ、制振遮音材に好適な成形体を提供できる。
以下、本発明に係る混練物、それを用いて得られる成形体、及び本発明の制振遮音材について詳細に説明する。
1.混練物
遷移金属を含む金属粉末(A)及び樹脂バインダー(B)で構成される本発明に係る混練物は、遷移金属を含む金属粉末を予め無機燐酸系化合物で表面処理しておき、これにラジカル硬化型樹脂を主成分とし有機過酸化物、さらに(C)N−オキシル類化合物を含有させた樹脂バインダーを配合することにより、可使時間を長くした混練物である。必要により、(D)その他添加剤、充填材などを配合しても良い。
なお、混練物の可使時間とは、ポットライフともいわれ、液状樹脂に硬化剤などを加えた時点から粘度が上昇し、成形不可能となるまでの時間、すなわちゲル化・硬化などが起こらず、成形可能な流動性を保っている時間、或いは成形後の機械強さが、組成物の調製直後に成形した成形組成物の機械強さ(初期値)が80%まで低下する時間のいずれか早い方の時間を意味する。本発明のような混練物の系では、一般的に機械強さが低下する時間の方が早いとされている。
(A)金属粉末
本発明に係る混練物に用いられる金属粉末は、純粋な鉄粉や鉄合金粉など遷移金属を含む粉末が使用でき、特に制限されない。
遷移金属元素としては、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びマンガン(Mn)からなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられ、これ以外にクロム(Cr)、バナジウム(V)、タングステン(W)又は銅(Cu)のいずれかを含有してもよい。また、純度は高純度である必要はなく、不可避的不純物として、Si、C、N、H、P、S、B、ハロゲン、アルカリ(土類)金属などが10重量%まで含有されていても差し支えない。好ましいのは鉄を主成分とするものであるが、これにタングステン等を密度調整用高比重金属粉として適量混合することも有効である。その形状も制限されず、球状、鱗片状、棒状、針状などいずれでもよいが、特に球状が好ましい。
金属粉末の粒度分布、平均粒径は、成形方法によっても異なるが、混練物の密度が高められるような範囲内であればよい。
射出成形であれば、平均粒径が100μm以下、好ましくは80μm以下であるものがよい。100μmを超えると、樹脂との分離が起こるなど成形が困難になるので好ましくない。これに対して、圧縮成形では、例えば平均粒径が500μmであっても差し支えない。但し、平均粒径が10μm未満になると圧縮成形で成形体の密度を上げるのが難しくなるので、10μm以上とするのが望ましい。
したがって、金属粉末の平均粒径を10〜500μm、好ましくは10〜100μmとすれば、どのような成形方法でも混練物の成形特性が向上するとともに、高密度化できることから制振遮音材の性能改善にも効果がある。
(B−1)樹脂バインダー
本発明において樹脂バインダーは、金属粉末の結合材として働く成分であり、ラジカル硬化型樹脂(B−1)を主成分とするものであれば、その種類によって限定されることはない。樹脂の形状は、パウダー、ビーズ、ペレット等、特に限定されないが、金属粉末と均一に混合できるパウダー状が望ましい。
また、ラジカル硬化型樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、及びポリエステル(メタ)アクリレート樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が使用される。
これらの中でも、不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂が好ましい。これらは、比較的低温で、かつ速やかな硬化反応性を示し、射出成形によって容易に成形体が得られるからである。また、25℃における粘度が5000mPa・s以下である樹脂が成形性の面から好適である。
不飽和ポリエステル樹脂は、成形時の金型内で硬化することによりバインダーとして働くものであれば、その種類に限定されず、市販されている不飽和ポリエステル樹脂を用いることができる。
例えば、不飽和多塩基酸及び/又は飽和多塩基酸とグリコール類を予備的に重合させ、オリゴマー化やプレポリマー化することで、平均分子量5000程度以下の樹脂に調製できる。不飽和ポリエステル樹脂には、例えばエポキシ樹脂を原料としたノボラック型や、ビスフェノール型のビニルエステル樹脂など、前記のラジカル硬化性樹脂を混合できる。
不飽和多塩基酸としては、例えば無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などを、また、飽和多塩基酸としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ヘット酸あるいはテトラブロム無水フタル酸などが挙げられる。
また、グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物、ジブロムネオペンチルグリコール、ペンタエリスリットジアリルエーテル又はアリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
ビニルエステル樹脂は、特に限定されず、例えば、エポキシ化合物と不飽和一塩基酸とをエステル化触媒を用いて反応させて得られる樹脂を使用できる。特に、25℃における粘度が5000mPa・s以下であるビニルエステル樹脂が成形性の面から好適である。
ビニルエステル樹脂の原料となるエポキシ化合物としては、分子中に、少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物であれば、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS等のビスフェノール類と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られるエピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フェノール、クレゾール、ビスフェノールとホルマリンとの縮合物であるノボラックとエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるノボラック型、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂;テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、安息香酸とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;水添加ビスフェノールやグリコール類とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;ヒダントインやシアヌール酸とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られる含アミングリシジルエーテル型エポキシ樹脂などが挙げられる。
また、これらエポキシ樹脂と多塩基酸類および/またはビスフェノール類との付加反応により分子中にエポキシ基を有する化合物でもよい。これらエポキシ化合物は、一種類のみでも、二種類以上を混合してもよい。
さらに、上記ビニルエステル樹脂の原料となる不飽和一塩基酸としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。また、マレイン酸、イタコン酸などのハーフエステル等を用いてもよい。さらに、これらの化合物と、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などの多価カルボン酸や、酢酸、プロピオン酸、ラウリル酸、パルチミン酸などの飽和一価カルボン酸や、フタル酸などの飽和多価カルボン酸またはその無水物や、末端基がカルボキシル基である飽和あるいは不飽和アルキッド等の化合物とを併用してもよい。これら不飽和一塩基酸は、一種類のみでも、二種類以上を混合して用いてもよい。
上記ビニルエステル樹脂を得るためのエステル化触媒としては、例えば、ジメチルベンジルアミン、トリブチルアミン等の第三級アミン類;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩;塩化リチウム、塩化クロム等の無機塩;2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;テトラメチルホスフォニウムクロライド、ジエチルフェニルプロピルホスフォニウムクロライド、トリエチルフェニルホスフォニウムクロライド、ベンジルトリエチルフェニルホスフォニウムクロライド、ジベンジルエチルメチルホスフォニウムクロライド、ベンジルメチルジフェニルホスフォニウムクロライド、テトラフェニルホスフォニウムブロマイド等のホスフォニウム塩;第二級アミン類;テトラブチル尿素;トリフェニルホスフィン;トリトリールホスフィン;トリフェニルスチビン等が挙げられるが、特に限定されない。これらエステル化触媒は、一種類のみでも、二種類以上を混合して用いてもよい。
また、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリイソシアネートとポリヒドロキシ化合物あるいは多価アルコール類とを反応させた後、さらに水酸基含有(メタ)アクリル化合物、および必要に応じて水酸基含有アリルエーテル化合物を反応させて得られる。また、水酸基含有(メタ)アクリル化合物とポリヒドロキシ化合物あるいは多価アルコール類とを反応させた後、さらにポリイソシアネートを反応させてもよい。
上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料となるポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネートおよびその異性体、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートが挙げられる。
具体的には、商品名:バーノックD 750、商品名:クリスポンNX(大日本インキ化学工業株式会社製)、商品名:デスモジュールL(住友バイエル社製)、商品名:コロネートL(日本ポリウレタン社製)、商品名:タケネートD102(武田薬品社製)、商品名:イソネート143L(三菱化成社製)等が挙げられ、特に限定されない。これらポリイソシアネートは、一種類のみでも、二種類以上を混合してもよい。
また、上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料となる多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ビスフェノールAとプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドとの付加物、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−プロパンジオール、1,2−シクロヘキサングリコール、1,3−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサングリコール、パラキシレングリコール、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオール、2,6−デカリングリコール、2,7−デカリングリコール等が挙げられるが、特に限定されない。これら多価アルコール類は、一種類のみでも、二種類以上を混合してもよい。
さらに、上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料となるポリヒドロキシ化合物としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられ、グリセリンエチレンオキシド付加物、グリセリンプロピレンオキシド付加物、グリセリンテトラヒドロフラン付加物、グリセリンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパンエチレンオキシド付加物、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパンテトラヒドロフラン付加物、トリメチロールプロパンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物、ペンタエリスリトールエチレンオキシド付加物、ペンタエリスリトールプロピレンオキシド付加物、ペンタエリスリトールテトラヒドロフラン付加物、ペンタエリスリトールエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトールエチレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトールプロピレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトールテトラヒドロフラン付加物、ジペンタエリスリトールエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物等が挙げられるが、特に限定されない。これらポリヒドロキシ化合物は、一種類のみでもよいし、二種類以上を混合してもよい。
上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料となる水酸基含有(メタ)アクリル化合物としては、特に限定されないが、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら水酸基含有(メタ)アクリル化合物は、一種類のみでも、二種類以上を混合してもよい。
上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料として、必要に応じて用いられる水酸基含有アリルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、トリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、1,2−ブチレングリコールモノアリルエーテル、1,3−ブチレングリコールモノアリルエーテル、ヘキシレングリコールモノアリルエーテル、オクチレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等が挙げられるが、特に限定されない。これら水酸基含有アリルエーテル化合物は、一種類のみでも、二種類以上を混合してもよい。
また、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂は、特に限定されず、例えば、不飽和あるいは飽和ポリエステルの末端に(メタ)アクリル化合物を反応させて得られる。上記ポリエステルの原料としては、上記不飽和ポリエステル樹脂の原料として例示した化合物と同様の化合物を用いることができる。
上記ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂の原料となる(メタ)アクリル化合物としては、例えば、不飽和グリシジル化合物、(メタ)アクリル酸等の不飽和一塩基酸およびそのグリシジルエステル類などが挙げられるが、特に限定されない。これら(メタ)アクリル化合物は、一種類のみでも、二種類以上を混合してもよい。
これらには、架橋剤を兼ねるモノマー類として次の化合物を配合できる。(I)スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル等のビニルモノマー類、(II)ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルイソフタレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテトラブロムフタレート等のアリルモノマー類、(III)フェノキシエチルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステル類などである。
(B−2)有機過酸化物
本発明において、有機過酸化物は、前記のラジカル硬化性樹脂原料の反応を開始させる硬化剤として用いられ、ラジカル重合反応性を有するラジカル硬化性樹脂に配合される。
本発明において、有機過酸化物は、前記の熱硬化性樹脂原料の反応を開始させる硬化剤として用いられ、ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂に配合される。
例えば、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類;ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−クミルパーオキサイド、α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、等のジアルキルパーオキサイド類が挙げられる。
有機過酸化物は、単独で使用できるものもあるが、炭化水素溶液類、フタル酸エステル類に希釈し、もしくは固形粉末に吸収させて用いてもよい。半減期が10時間となる分解温度が150℃以下である過酸化物、すなわちラジカル硬化性樹脂を150℃以下の温度で硬化させる化合物が好ましく、この分解温度が40〜135℃の過酸化物が一層好ましい。分解温度が150℃を超える有機過酸化物を用いると、成形体の硬化温度が高くなるので好ましくない。一方、40℃未満の有機過酸化物は、取扱い性が悪く、混練物の保管特性、生産性を低下させることがある。
有機過酸化物の添加量は、希釈率や活性酸素量によって異なるため、厳密には規定できないが、ラジカル重合反応性を有するラジカル硬化性樹脂100重量部に対して、0.05〜10重量部が添加される。不飽和ポリエステル樹脂であれば、0.01〜5重量%添加すればよい。
これらの有機過酸化物は、単独又は2種以上の混合系で用いるが、最終的に得られる金属粉末とラジカル硬化型樹脂の混練物の可使時間をより長く確保するためには、パーオキシケタール系、又はジアルキルパーオキサイド系過酸化物のいずれかを単独で用いることが極めて好ましい。
重合防止剤としては、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、フェナンスラキノン、トルキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、2,5−ジアセトキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジカプロキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジアシロキシ−p−ベンゾキノン等のキノン類;ハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、モノ−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン等のハイドロキノン類;ジ−t−ブチル・パラクレゾールハイドロキノンモノメチルエーテル、アルファナフトール等のフェノール類、ナフテン酸銅などの有機ならびに無機の銅塩類;アセトアミジンアセテート、アセトアミジンサルフェート等のアミジン類;フェニルヒドラジン塩酸塩、ヒドラジン塩酸塩などのヒドラジン類;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、ラウリルピリジニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムオキザレート、ジ(トリメチルベンジルアンモニウム)オキザレート、トリメチルベンジルアンモニウムマレエート、トリメチルベンジルアンモニウムタータレート、トリメチルベンジルアンモニウムグリコレート等の第4級アンモニウム塩類;フェニル−β−ナフチルアミン、パラベンジルアミノフェノール、ジ−β−ナフチルパラフェニレンジアミン等のアミン類;ニトロベンゼン、トリニトロトルエン、ピクリン酸などのニトロ化合物;キノンジオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類;ピロガロール、タンニン酸、レゾルシン等の多価フェノール類;トリエチルアミン塩酸塩、ジメチルアニリン塩酸塩、ジブチルアミン塩酸塩等のアミン塩酸塩類などが挙げられ、これらの1種または2種以上を混合して使用できる。
(C)N−オキシル類化合物
N−オキシル類化合物は、本発明に係る金属粉末とラジカル硬化型樹脂の混練物において、その保管中の可使時間をより長くさせるために必須成分として添加され、含窒素環状化合物である5員環のピロリジン系化合物、6員環のピペリジン系化合物などの化合物である。
5員環のピロリジン系化合物としては、その化合物の分子鎖末端に、次の一般式(1)で表される基が結合したものが挙げられる。
Figure 0004063171
式(1)中、X、Xは、それぞれ独立して水素原子、−OR基、−OCOR基または−NR基を表し、R、R、R、Rは、それぞれ独立して炭素数1以上のアルキル基を表し、R、R、R、Rは、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜16のアルキル基で表される。
6員環のピペリジン系化合物としては、その化合物の分子鎖末端に、次の一般式(2)で表される基が結合したものが挙げられる。
Figure 0004063171
上記の式(2)中、X、X、Xは、それぞれ独立して水素原子、−OR13基、−OCOR14基または−NR1516基を表し、R、R10、R11、R12は、それぞれ独立して炭素数1以上のアルキル基(好ましくは炭素数1〜5のアルキル基)を表し、R13、R14、R15、R16は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜16のアルキル基(好ましくは炭素数1〜12のアルキル基)で表される化合物である。
さらに、N−オキシル類化合物としては、上記のほかに、分子鎖末端に、次の一般式(3)の構造を有する化合物を用いることもできる。
Figure 0004063171
但し、式(3)中、R17、R18は、それぞれ独立して炭素数4以上のアルキル基で表される。
遷移金属と有機過酸化物との間には、レドックス反応と称される過酸化物の分解反応が起こり、低温度でも可使時間の著しい低下を招くことが一般に知られている。これらの反応機構を中心に、さらに詳しい実験や試験を進めた結果、本発明のような遷移金属を含む系では、レドックス反応のみならず、これに相まってラジカル重合反応性を有するラジカル硬化性樹脂やスチレン等の複雑な反応も生起し、その促進効果も極めて高く、通常の遷移金属単体系の組成物よりも、可使時間が極めて短くなる現象が見出された。
さらに、遷移金属を含む金属粉末、ラジカル硬化性樹脂を含有する組成物に対して、N−オキシル類化合物を添加すると、この特殊な反応の抑制効果に極めて有効に機能することが突きとめられた。
上記のN−オキシル類としては、式(2)で示される6員環のピペリジン系化合物が好ましい。
例えば、ジ−t−ブチルニトロキシル、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オール、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−アセテート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−2−エチルヘキサノエート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−ステアレート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−4−t−ブチルベンゾエート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)コハク酸エステル、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アジピン酸エステル、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)n−ブチルマロン酸エステル、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)フタレート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)イソフタレート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)テレフタレート、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)ヘキサヒドロテレフタレート、N,N’−ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アジパミド、N−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カプロラクタム、N−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)ドデシルサクシンイミド、2,4,6−トリス−N−ブチル−N−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−s−トリアジン等が挙げられるが、特に限定されない。これらN−オキシル類は、一種類のみでも、二種類以上を混合してもよい。
中でも好ましいのは、上記の式(2)中、X、X、Xが、それぞれ独立して水素原子、−OH基、−COOH基、−OCOR14基または−NH基を表し、R、R10、R11、R12が、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基、R14が炭素数1〜10のアルキル基で表される構造を有するN−オキシル類化合物である。このような化合物として、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル、或いはビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケートが挙げられる。2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシルは、次の一般式(4)で示すことができる。
Figure 0004063171
これらのN−オキシル類化合物は、各種安定剤の中でも、アルキルラジカルと反応後、さらに、パーオキシラジカルとの反応性を有するもの、又はパーオキシラジカルとの反応後、さらに、アルキルラジカルとの反応性を有するものが好ましい。本発明では、このような反応によって、混練物の可使時間をより長く確保できるものと考えられる。アルキルラジカルと反応後、さらに、パーオキシラジカルとの反応性を有するものの代表例が、前記の一般式(4)で示された2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシルである。
これらN−オキシル類化合物の添加量は、その種類によって効果が大きく異なるため画一的に規定はできないが、ラジカル重合反応性を有するラジカル硬化性樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.3〜5重量部とする。添加量が0.1重量部より少ないと、十分な可使時間を確保できない。一方、10重量部より多いと、成形体の密度の低下や表面の荒れを生じるため望ましくない。
さらに、これらの他に、例えば、ナフテン酸コバルトやオクチル酸コバルト等のコバルト有機酸塩;アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、ジメドン等のβ−ジケトン類;ジメチルアニリン等の芳香族3級アミン類;メルカプタン類;トリフェニルホスフィン、2−エチルヘキシルホスファイト等の燐化合物類;第4級アンモニウム塩類などの促進剤や、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、芳香族カルボニル化合物、ピナコン誘導体などと併用しても良い。
これら併用されうる添加剤の配合量は、ラジカル重合反応性を有するラジカル硬化性樹100重量部に対して、通常0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部である。
本発明において、金属粉末とラジカル硬化型樹脂の混練物の長期保存性を確保するために、樹脂バインダーには重合防止剤を配合することができる。
重合防止剤としては、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、フェナンスラキノン、トルキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、2,5−ジアセトキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジカプロキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジアシロキシ−p−ベンゾキノン等のキノン類、ハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、モノ−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン等のハイドロキノン類、ジ−t−ブチル・パラクレゾールハイドロキノンモノメチルエーテル、アルファナフトール等のフェノール類、ナフテン酸銅などの有機ならびに無機の銅塩類、アセトアミジンアセテート、アセトアミジンサルフェート等のアミジン類、フェニルヒドラジン塩酸塩、ヒドラジン塩酸塩などのヒドラジン類、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、ラウリルピリジニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムオキザレート、ジ(トリメチルベンジルアンモニウム)オキザレート、トリメチルベンジルアンモニウムマレエート、トリメチルベンジルアンモニウムタータレート、トリメチルベンジルアンモニウムグリコレート等の第4級アンモニウム塩類、フェニル−β−ナフチルアミン、パラベンジルアミノフェノール、ジ−β−ナフチルパラフェニレンジアミン等のアミン類、ニトロベンゼン、トリニトロトルエン、ピクリン酸などのニトロ化合物、キノンジオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類、ピロガロール、タンニン酸、レゾルシン等の多価フェノール類、トリエチルアミン塩酸塩、ジメチルアニリン塩酸塩、ジブチルアミン塩酸塩などのアミン塩酸塩類などが挙げられ、これらの1種もしくは2種以上を混合して使用できる。
(D)その他添加剤
樹脂バインダーには、成形体の用途に応じて、反応性希釈剤、未反応性希釈剤、各種変性剤、増粘剤、滑剤、離型剤、紫外線吸収剤、難燃剤や種々の安定剤、充填材などを添加できる。
反応性希釈剤としては、スチレン、脂肪酸ジグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
未反応性希釈剤としては、エタノール、イソプロパノールなどのアルコールが挙げられる。各種変性剤としては、液状ポリサルファイドポリマー、フェノール変性芳香族重合体などが挙げられる。
滑剤としては、例えば、パラフィンワックス、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エステルワックス、カルナウバ、マイクロワックス等のワックス類、ステアリン酸、1,2−オキシステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸などの脂肪酸類;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸カルシウム、リノール酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、2−エチルヘキソイン酸亜鉛などの脂肪酸塩(金属石鹸類);ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、パルミチン酸アミド、ラウリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ジステアリルアジピン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ジオレイルアジピン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル;エチレングリコール、ステアリルアルコール等のアルコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及びこれら変性物からなるポリエーテル類;ジメチルポリシロキサン、シリコングリース等のポリシロキサン類;弗素系オイル、弗素系グリース、含弗素樹脂粉末といった弗素化合物;窒化珪素、炭化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、二酸化珪素、二硫化モリブデン等の無機化合物粉体が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート、p−第3ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、3−2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第3ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系;蓚酸アニリド誘導体などが挙げられる。
難燃剤としては、三酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、有機臭素化合物、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレンなどが挙げられる。
安定剤としては、特に限定されないが、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系、フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系などが挙げられる。
これらの添加物以外にも、必要に応じ、無機充填剤や顔料等も任意に添加しても良い。無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、カオリン粘土、シリカ、ウイスカ、ガラスフレーク、ストロンチウムフェライト系、バリウムフェライト系等のフェライト類磁性粉等が、また、顔料としては酸化チタン等が挙げられる。
2.混練物の製造
本発明に係る混練物は、(1)遷移金属を含む金属粉末を、予め無機燐酸系化合物で表面処理し、(2)有機過酸化物を含むラジカル硬化型樹脂バインダー、N−オキシル化合物と混合し、必要によりその他添加剤を配合して混練することで製造される。
(1)表面処理
遷移金属を含む微細な金属粉末は、空気や水分に含まれる酸素によって酸化されやすく、酸化されると成形性、制振遮音性を低下させることから、無機燐酸などで表面処理する必要がある。
無機燐酸系化合物は、遷移金属を含む金属粉末の表面の耐候性を高め、樹脂バインダー成分との接着性を高める化合物である。無機燐酸系化合物の代表ともいうべき無機燐酸には、燐酸の他に、亜燐酸、次亜燐酸、ピロ燐酸、直鎖状のポリ燐酸、環状のメタ燐酸が含まれる。
また、無機燐酸以外には、燐酸一アンモニウム、燐酸アンモニウムマグネシウムなど、更には金属粉末表面でホパイト、フォスフォフェライト等を形成する燐酸亜鉛系、ショルツァイト、フォスフォフィライト、ホパイト等を形成する燐酸亜鉛カルシウム系、マンガンヒューリオライト、鉄ヒューリオライト等を形成する燐酸マンガン系、ストレンナイト、ヘマタイト等からなる燐酸鉄系などの被膜を形成する化合物が挙げられる。上記の無機燐酸系化合物は、通常、キレート剤、中和剤等と混合して処理剤とされる。これら無機燐酸系化合物のうち、燐酸、燐酸マンガン系、燐酸鉄系化合物が好ましく、これらは単独でも複数を組合せてもよい。
無機燐酸系化合物は、湿式処理法、乾式処理法のいずれかで表面処理され、その後、100℃前後で10〜30時間、加熱処理すれば、より安定して磁性粉末に定着する。
無機燐酸系化合物の添加量は、その種類や濃度により異なるが、金属粉末100重量部に対して0.01〜10重量部とする。0.05〜7重量部、特に0.1〜5重量部が好ましい。これによって、磁性粉末に厚さ5〜100nm程度の燐酸系化合物の膜を形成できる。添加量が0.01重量部未満の場合は、膜が十分に形成されず、また10重量部を超えると金属粉末の密度が低下してしまう。
遷移金属を含む金属粉末は、上記の無機燐酸系化合物で表面処理した後、必要により、アビエチン酸系化合物、チタネート系、シラン系或いはアルミニウム系などのカップリング剤の1種以上によって被覆してもよい。これら被覆剤は、金属粉末100重量部に対して0.01〜10重量部の割合で添加する。
(2)樹脂バインダーの配合
次に、表面処理された金属粉末に樹脂バインダーを配合し、混練する。
金属粉末の量は、特に限定されるわけではないが、樹脂バインダーに対して、50重量%以上、好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上配合する。本発明では、上記の方法で遷移金属を含む金属粉末(鉄粉)が無機燐酸系化合物で表面処理されているので、優れた可使時間を有する混練物が得られる。樹脂バインダー中に金属粉末を90重量%以上の割合で高充填化すれば、優れた制振遮音特性、機械強度を有する成形体を得ることが可能となる。
樹脂バインダーを構成する各成分の形態は、常温で液状でも、パウダー、ビーズ、ペレット等であってもよいが、金属粉末との均一混合性や成形性から考えると、液状であることが望ましい。また、これらの異なる樹脂や異なる分子量、性状のものを1種または2種以上組み合わせて混合しても差し支えない。
また、ラジカル硬化性樹脂バインダーの各成分は、重合度や分子量に制約されないが、金属粉末を加える前の混合調製状態での成形温度における回転粘度測定法での粘度が、100〜5000mPa・sの範囲に含まれることが望ましい。粘度は、JIS K7117(液状樹脂の回転粘度計による粘度試験方法)に準じて測定されるが、測定温度は、成形温度(成形時のシリンダー温度)にあわせた恒温槽内で測定される。
ラジカル硬化性樹脂バインダーは、300〜3000mPa・sの粘度のものがさらに好ましい。この粘度が、100mPa・s未満であると、射出成形時に金属粉末とバインダーの分離現象が生じるため成形できない。また、5000mPa・sを超えると著しい混練トルクの上昇、流動性の低下を招き成形困難になるため、本発明の効果が得られない。
この粘度に調整するために、粘度や性状の異なるラジカル重合反応性を有する数種類のラジカル硬化性樹脂同士を混合したり、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム等の二価金属の酸化物類や水酸化物類、ジイソシアナート類、アリジリン化合物類、アルミニウムイソプロポキシド等を加えたりしてもよい。
ラジカル硬化性樹脂バインダーの添加量は、各構成成分を含めた状態で、金属粉末100重量部に対して、5〜100重量部の割合で添加されるが、好ましくは7〜50重量部、さらに、10〜30重量部がより好ましい。バインダーの添加量が金属粉末100重量部に対して5重量部未満の場合は、著しい成形体強度の低下や成形時の流動性の低下を招いて、本発明の効果を得ることができない。また、100重量部を超えると、固液分離が起こりやすいため成形しにくくなる。
その他の添加剤である反応性希釈剤、未反応性希釈剤、各種変性剤、増粘剤、滑剤、離型剤、紫外線吸収剤、難燃剤や種々の安定剤は、成形体の用途にもよるが、金属粉末100重量部に対して、0.01〜10重量部配合され、特に0.1〜5重量部が好ましい。
上記の方法で樹脂バインダーが混合され、その他の添加剤を配合された、金属粉末と樹脂バインダーで構成される混練物は、公知の方法で混合される。混合方法は、特に限定されず、例えば、リボンブレンダー、タンブラー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の混合機或いは、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、ニーダールーダー、単軸押出機、二軸押出機などの混練機を使用して混合できる。
得られた金属粉末と樹脂バインダーで構成される混練物の形状は、パウダー状、ビーズ状、ペレット状、あるいはこれらの混合物の形態であるが、取扱い易さの点で、ペレット状(或いは塊状)が望ましい。
金属粉末と樹脂バインダーで構成される混練物は、30℃の密閉静置状態において120時間以上の可使時間を有するが、特に、同一条件で350時間以上の可使時間を有する金属粉末と樹脂バインダーで構成される混練物が好ましい。
ところで、本出願人は、特開2003−92209号で、熱硬化性樹脂バインダー使用時に最も問題となる混練物の可使時間に極めて優れた樹脂結合型磁石用組成物と、樹脂結合型磁石を提案した。
希土類磁粉に、N−オキシル類化合物をゲル化防止剤(重合防止剤)として十分な量含む樹脂バインダーを混合することで、高温成形時に受ける酸化劣化が原因の磁気特性低下を防止し、配向性が重要となる異方性磁石材料の高配向化を可能にすることができた。また、磁気特性に極めて優れるばかりでなく、形状自由度、成形性、機械強さにも優れた遷移金属を多量に含有する樹脂結合型磁石を得ることができた。
しかしながら、希土類磁粉の代わりに鉄粉を用いて、同様の構成で制振遮音材の製造を検討したが、N−オキシル類化合物によるゲル化防止あるいは重合防止降下を十分に引き出すことができず、機械強度、制振遮音性に優れる成形体を得ることができなかった。
この原因は、未だ完全には解明された訳ではないが、非酸化状態の鉄は、ラジカル硬化性樹脂バインダーの成分と反応性が高いため、予め表面処理しておかないと反応が進行してゲル状態になってしまうためと推測される。
3.混練物の成形体
本発明に係る成形体は、金属粉末と樹脂バインダーで構成される混練物を、ラジカル硬化性樹脂の溶融温度で加熱溶融した後、所望の形状に成形したものである。
成形法としては、従来からプラスチック成形加工などに利用されている射出成形法、押出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、トランスファー成形法など各種の成形法が採用できるが、大きさ・形状、充填材の種類などに応じて、適宜選択する。
混合時の剪断発熱などによってラジカル硬化性樹脂の硬化が進まないよう、剪断力が弱く、かつ冷却機能を有する混合機を使用することが好ましい。混合により金属粉末とラジカル硬化型樹脂の混練物が塊状となるので、これを上記の成形法により成形する。
本発明に係る混練物を用いれば、密度が3.5g/cm以上、好ましくは4.0g/cm以上、さらに好ましくは4.5g/cm以上の成形体を得ることができる。
比較的単純なシート状の成形体であれば、均一で様々な厚さのものを得ることができるが、通常、1〜10mm、好ましくは1〜8mm、さらに好ましくは1〜5mmとする。厚さが1mm未満では、機械強度が低く、一方、10mmを超えると経済的ではないばかりか取扱い性も悪くなるので好ましくない。これに対して複雑な形状のものでは射出成形法などが採用されるが、成形用の金型と、スプルー、ランナーなどの位置関係、寸法を最適化することが望ましい。
成形体は、その成分である金属粉末の特性と形状によって、制振遮音材のほか、電磁波シールド材など様々な用途に用いることができる。純鉄成分の比率が非常に高い充填材を用いたものは、導電性フィラーとして機能し電磁波シールド性を発揮するため、電磁波シールド壁として、電磁波の漏洩、電磁波の侵入による室内の電気、電子機器の作動障害等の防止に効果を発揮させることができる。
4.制振遮音材
制振遮音材は、上記成形法で所望の形状にした成形体を用い、制振遮音を必要とする物体に埋め込み、あるいは騒音や振動を発生する物体の少なくとも一部を覆い、あるいは貼り付けて用いるものである。このような機能が期待されるものであれば、適用分野は特に限定されない。
したがって成形体単独でもよいが、その少なくとも片面に接着剤を付けて支持体に積層するようにしてもよい。成形体単独の場合は、その表面に塗料、コーティング剤などを塗布することができる。シート状成形体の場合には、シートの両面(厚さ方向両側の面)に、表面材としてポリエステル、ポリオレフィンなどの不織布を積層し接着固定して一体化したものも好ましい。
例えば、電気掃除機や電動芝刈り機では、胴体部とファンやモーターとの間を確実に遮蔽するため、電動機が位置する本体(胴体)に制振遮音材を設けることが必要である。このためには、折曲変形可能で、取り付ける際に部分的に変形しても復元できる本発明の制振遮音材が極めて有効である。
冷蔵庫の場合、密閉型圧縮機に制振遮音シートを防音カバーとして取り付ければ、過給効果を維持し冷凍能力を小さくすることなしに、該圧縮機から発生する騒音を減衰できる。構造材に制振遮音シートを取り付ければ、冷媒ガスの脈動等に伴い発生する騒音を吸入流路から密閉容器内空間に伝達しにくくして騒音を小さくできる。
また、洗濯機であれば、洗濯槽を駆動するモーターからの音を遮断するように、制振遮音材を防音カバーとして配置するとともに、モーターからの振動が構造材である鉄板に伝わりにくくするように、構造材の内外少なくとも一方の面に制振遮音シートを貼り付けることが効果的である。
本発明は、用紙を排出するときに騒音を発するコピー機やプリンタ、冷却ファンを内蔵したパソコンなどにも適用できる。これら本体の構造材、プリンタカバー、ファンカバーに制振遮音材を取り付ければ、軽量・小型化にも貢献しうるものとなる。
なお、前記先行技術として例示した特許文献1は、バインダーとしてアスファルトを用い、充填材として比重7.0g/cm程度の鉄粉を混合分散させて成形している。しかし、アスファルトでは金属粉末を僅かな量しか充填することができないので、成形体の密度が3.0g/cm程度にしかならず、制振遮音効果は十分ではない。また、高温になると軟化する性質が有るので適用に制約を受けるという問題がある。
これに対して、本発明の金属粉末と樹脂バインダーで構成される混練物から成形された制振遮音材であれば、金属粉末を樹脂バインダーに90重量%以上も充填でき、制振遮音性能が高いので薄肉化でき、取扱い性が良く、しかも経済的であるといった利点がある。厚さ寸法を増大しなくても遮音性能を向上できるので、占有体積を増加することなく制振遮音性の向上を実現でき、複雑形状に容易に成形でき、切断も容易であるといった加工上の利点もある。
このように本発明の制振遮音材を用いれば、制振遮音材の取付け位置や制振遮音材と騒音源により形成される空間の容量を、対象とする物体の外観や騒音の周波数特性に合わせて、比較的自由に設計できるようになる。また、形状によっては1部品で構成できるため、従来の制振遮音材カバーと比べても大差ないコストで実現可能である。さらに、本発明の制振遮音材は、騒音源を有する本体内部への取付けが容易で汎用性が向上するとともに、生産性が向上するので、家庭電気製品全体の製造コストを低減することが可能になる。
以下、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。
金属粉末と樹脂バインダーで構成される混練物の原料として下記の材料を用いた。
(A)金属粉末
(A−1)鉄粉末 粒径100μm以下の粒径を99重量%含有
(A−2)表面処理剤(燐酸化合物) 燐酸(試薬特級)、関東化学(株)製
(B)樹脂バインダー
(B−1)不飽和ポリエステル樹脂(UP樹脂と略す)
「商品名:ポリセット2212」、日立化成工業(株)製。25℃における粘度:500mPa・s。
(B−2)有機過酸化物(硬化剤と略す)
パーオキシケタール系過酸化物(1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン)、「商品名:トリゴノックス22−B75、化薬アグゾ(株)製」、10時間の半減期を得るための分解温度93℃。
(C)オキシル類
2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル、「商品名:アデカスタブ LA−7RD」、旭電化(株)製。
金属粉末と樹脂バインダーで構成される混練物は、次の方法で製造した。
(i)燐酸化合物での表面処理
金属粉末100重量部に対して、10重量部のIPA等のアルコール系有機溶媒に、所定量の燐酸化合物を溶解し、この溶液と金属粉末とをプラネタリーミキサー中で、十分に混合攪拌(40rpm、20℃、保持・撹拌時間10分間)した後、−760mmHg、120℃の真空オーブン中で24時間乾燥させ、表面処理済みの金属粉末を得た。
(ii)樹脂バインダーの混合、金属粉末と樹脂バインダーで構成される混練物の作製
表面処理済みの金属粉末と樹脂バインダーで構成される混練物に、あらかじめ所定の比率になるよう計量混合しておいたラジカル硬化性樹脂、硬化剤、N−オキシル類化合物などをそれぞれの金属粉末全量に加え(各重量部)、水冷ジャケット付プラネタリーミキサー中で十分混合撹拌(40rpm、30℃、10分)し、最終の成形体用ペレットコンパウンドとした。
得られた混練物、成形体、制振遮音材は、以下の方法で評価した。
(iii)機械強さ評価
射出成形にて、幅5mm×高さ2mm×長さ10mmの試験片を成形し、JIS K7214(プラスチックの打ち抜きによる剪断試験方法)に準じて剪断打ち抜き強さを測定した。各組成物の調製直後に成形した成形体の機械強さを初期値とした。100MPa以上の機械強さを有するものを「効果有り」と判断した。
(iv)可使時間
得られた金属粉末と樹脂バインダーで構成される混練物をガラス瓶に充填し、アルミ製の蓋にて密閉した後、30±0.5℃にコントロールされた恒温槽内に入れ、成形後の成形体機械強さが初期値の80%まで低下したときの時間を求めた。なお、オキシル類を添加しない比較例1〜3、9については、成形体の機械強さの低下をまねく前に、成形不可能となる急激な粘度上昇、固化する現象を示したため、その固化に達するまでの時間を記した。
(v)制振遮音性能評価
試験は、JIS A 1418(建築物の現場における床衝撃音レベルの測定方法)の規定に準拠して行った。
(実施例1〜5)
燐酸処理した鉄粉、UP樹脂、硬化剤、オキシル類の各成分を所定の割合で配合し、上述の手順・方法にて鉄粉と樹脂バインダーで構成される混練物を調製した。これを用いて成形体を製造し、その特性を評価した。その評価結果を表1に示す。
(比較例1〜3)
燐酸処理した鉄粉、UP樹脂、硬化剤の各成分を用い、所定の割合で配合し、オキシル類を添加せずに、上述の手順・方法にて鉄粉と樹脂バインダーで構成される混練物及び成形体を製造し、その特性を評価した。その評価結果を表2に示す。
(比較例4〜8)
鉄粉(燐酸処理せず)、UP樹脂、硬化剤、オキシル類の各成分を所定の割合で配合し、上述の手順・方法にて鉄粉と樹脂バインダーで構成される混練物及び成形体を製造し、その特性を評価した。その評価結果を表2に示す。
(比較例9)
鉄粉(燐酸処理せず)、UP樹脂、硬化剤の各成分を用い、所定の割合で配合し、オキシル類を添加せずに、上述の手順・方法にて鉄粉と樹脂バインダーで構成される混練物及び成形体を製造し、その特性を評価した。その評価結果を表2に示す。
「評価」
これら実施例から、燐酸処理した鉄粉にラジカル硬化性樹脂、N−オキシル類化合物を配合した本発明に係る混練物は、可使時間を有し、密度が大きく、かつ該混練物を用いた成形体の機械強さ等に優れることが分かる。
また得られた成形体の制振遮音性能評価試験は、JIS A 1418(建築物の現場における床衝撃音レベルの測定方法)の規定に準拠して行ったが、63〜4000Hzの複数の周波数帯で効果が認められた。
これに対し、比較例からは、ラジカル硬化性樹脂の混練物を作る際に、鉄粉に燐酸処理をしないか、N−オキシル類化合物を配合しないかまたは両方の対応をしないので、可使時間が短くなる、または機械強度が弱くなるなどの問題が発生することが分かる。
Figure 0004063171
Figure 0004063171
本発明に係る混練物から成形された成形体は、制振遮音材として優れた性能を有し、電磁波シールド壁として機能させることができる。しかも比較的熱安定性や機械強度が高く、耐久性をも確保できることから、適用場所は極めて広い。したがって、上記のような家庭用電気製品、建築材料に限らず、通信・音響機器、医療機器、自動車、鉄道などの車両や、工作機械、作業用機械などの一般産業機器等にいたる幅広い分野に使用でき、その工業的価値は極めて大きい。

Claims (8)

  1. 遷移金属を含む金属粉末(A)及び樹脂バインダー(B)を含む混練物が、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法、またはトランスファー成形法のいずれかで成形された成形体を用いてなる制振遮音材であって
    金属粉末(A)が無機燐酸系化合物で表面処理されており、かつ樹脂バインダー(B)がラジカル硬化型樹脂(B−1)を主成分とし有機過酸化物(B−2)を含み、さらにN−オキシル類化合物(C)が配合されていることを特徴とする制振遮音材
  2. 金属粉末(A)は、混練物の50重量%以上を占めることを特徴とする請求項1に記載の制振遮音材
  3. ラジカル硬化型樹脂(B−1)の粘度が、25℃において5000mPa・s以下であることを特徴とする請求項1に記載の制振遮音材
  4. ラジカル硬化型樹脂(B−1)が、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、及びポリエステル(メタ)アクリレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の制振遮音材
  5. 有機過酸化物(B−2)は、ジアルキルパーオキサイド系又はパーオキシケタール系化合物であることを特徴とする請求項1に記載の制振遮音材
  6. N−オキシル類化合物(C)は、分子鎖末端に、次の一般式(1)
    Figure 0004063171
    (式中、X、およびXは、それぞれ独立して水素原子、−OR基、−OCOR基または−NR基を表し、R、R、R、およびRは、それぞれ独立して炭素数1以上のアルキル基を表し、R、R、R、およびRは、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜16のアルキル基である)、または一般式(2)
    Figure 0004063171
    (式中、X、X、およびXは、それぞれ独立して水素原子、−OR13基、−OCOR14基または−NR1516基を表し、R、R10、R11、およびR12は、それぞれ独立して炭素数1以上のアルキル基を表し、R13、R14、R15、およびR16は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜16のアルキル基である)で表される構造のうち少なくとも一種の構造を有することを特徴とする請求項1に記載の制振遮音材
  7. N−オキシル類化合物(C)は、ラジカル硬化型樹脂(B−1)100重量部に対して、0.1〜10重量部配合することを特徴とする請求項1に記載の制振遮音材
  8. 混練物が、30℃の密閉静置状態において120時間以上の可使時間を有することを特徴とする請求項1に記載の制振遮音材
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