図1は本発明の実施の形態1におけるDC/DC電力変換装置を示す回路構成図である。
図1に示すように、この実施の形態1のDC/DC電力変換装置は、低圧側の電圧端子対としての低圧側の電圧端子VLと共通側の電圧端子Vcom間に入力された電圧V1を約4倍に昇圧された電圧V2にして高圧側の電圧端子VHと共通側の電圧端子Vcom間に出力する昇圧動作と、高圧側の電圧端子対としての高圧側の電圧端子VHと共通側の電圧端子Vcom間に入力された電圧V2を約1/4倍に降圧された電圧V1にして低圧側の電圧端子VLと共通側の電圧端子Vcom間に出力する降圧動作とを行う、双方向のDC/DC電力変換機能を有する主回路部13を備える。また、このDC/DC電力変換装置は、この主回路部13の上記昇圧動作と降圧動作とを判別する昇降圧判別部14と、この昇降圧判別部14による昇降圧判別結果に応じて主回路部13に対して動作制御用のゲート信号を出力するゲート信号生成部15を備えている。そして、上記の昇降圧判別部14が特許請求の範囲の判別手段に、また、ゲート信号生成部15が特許請求の範囲のゲート信号生成手段にそれぞれ対応している。
ここで、上記の主回路部13は、入出力電圧V1,V2を平滑化し、またエネルギ移行のための電圧源としても機能する平滑コンデンサCs1,Cs2,Cs3,Cs4と、複数のMOSFETとを備える。そして、低圧側と高圧側の各スイッチング素子としての2つのMOSFET(Mos1L,Mos1H)(Mos2L,Mos2H)(Mos3L,Mos3H)(Mos4L,Mos4H)の直列体を各平滑コンデンサCs1,Cs2,Cs3,Cs4の両端子間に並列に接続して各回路A1,A2,A3,A4が構成され、これらの各A1,A2,A3,A4が互いに直列接続されている。なお、各MOSFETは、ソース、ドレイン間に寄生ダイオードが形成されているパワーMOSFETである。
そして、これらの各A1,A2,A3,A4内の低圧側と高圧側の2つのMOSFETの接続点を中間端子として、一つの回路A1とそれ以外の各回路A2,A3,A4との各々の中間端子間に、それぞれコンデンサCr12,Cr13,Cr14およびインダクタLr12,Lr13,Lr14を直列接続したエネルギ移行素子として機能するLC直列体LC12,LC13,LC14が接続されている。なお、各平滑コンデンサCs1,Cs2,Cs3,Cs4の容量値は、LC直列体の各コンデンサCr12,Cr13,Cr14の容量値と比較して十分大きな値に設定されている。
さらに、上記の主回路部13の接続の詳細について説明する。
平滑コンデンサCs1の両端子は、それぞれ電圧端子VLとVcomに接続され、電圧端子Vcomは接地されている。平滑コンデンサCs1のVL側電圧端子は、平滑コンデンサCs2の一方の端子に接続され、平滑コンデンサCs2の他方の端子は平滑コンデンサCs3の一方の端子に、平滑コンデンサCs3の他方の端子は平滑コンデンサCs4の一方の端子に、平滑コンデンサCs4の他方の端子は電圧端子VHに接続されている。
Mos1Lのソース端子は電圧端子Vcomに、ドレイン端子はMos1Hのソース端子に、Mos1Hのドレイン端子は電圧端子VLに接続されている。Mos2Lのソース端子は平滑コンデンサCs2の低電圧側の端子に、Mos2Lのドレイン端子はMos2Hのソース端子に、Mos2Hのドレイン端子は平滑コンデンサCs2の高電圧側の端子に接続されている。Mos3Lのソース端子は平滑コンデンサCs3の低電圧側の端子に、Mos3Lのドレイン端子はMos3Hのソース端子に、Mos3Hのドレイン端子は平滑コンデンサCs3の高電圧側の端子に接続されている。Mos4Lのソース端子は平滑コンデンサCs4の低電圧側の端子に、Mos4Lのドレイン端子はMos4Hのソース端子に、Mos4Hのドレイン端子は平滑コンデンサCs4の高電圧側の端子に接続されている。
LC直列体LC12の一端は、Mos1LとMos1Hの接続点(中間端子)に接続され、他端はMos2LとMos2Hの接続点(中間端子)に接続されている。LC直列体LC13の一端は、Mos1LとMos1Hの接続点(中間端子)に接続され、他端はMos3LとMos3Hの接続点(中間端子)に接続されている。LC直列体LC14の一端は、Mos1LとMos1Hの接続点(中間端子)に接続され、他端はMos4LとMos4Hの接続点(中間端子)に接続されている。そして、各段のLC直列体LC12,LC13,LC14を構成するインダクタLrとコンデンサCrのインダクタンス値と容量値から定まる共振周期の値は、それぞれ等しくなるように設定されている。
Mos1L,Mos1Hのゲート端子はゲート駆動回路111の出力端子に接続され、ゲート駆動回路111の入力端子には、Mos1Lのソース端子の電圧を基準としたそれぞれのゲート駆動信号が入力される。Mos2L,Mos2Hのゲート端子はゲート駆動回路112の出力端子に接続され、ゲート駆動回路112の入力端子には、Mos2Lのソース端子の電圧を基準としたそれぞれのゲート駆動信号が入力される。Mos3L,Mos3Hのゲート端子はゲート駆動回路113の出力端子に接続され、ゲート駆動回路113の入力端子には、Mos3Lのソース端子の電圧を基準としたそれぞれのゲート駆動信号が入力される。Mos4L,Mos4Hのゲート端子はゲート駆動回路114の出力端子に接続され、ゲート駆動回路114の入力端子には、Mos4Lのソース端子の電圧を基準としたそれぞれのゲート駆動信号が入力される。
なお、上記の各ゲート駆動回路111,112,113,114は、一般的なブートストラップ方式の駆動回路であり、ハーフブリッジインバータ回路駆動用のドライバICや高電圧側のMOSFETを駆動するためのコンデンサ等で構成されている。
Mos1L駆動用のゲート駆動信号はフォトカプラ121Lから、Mos1H駆動用のゲート駆動信号はフォトカプラ121Hからそれぞれゲート駆動回路111に対して出力される。フォトカプラ121L,121Hには、ゲート信号Gate1L,Gate1Hが入力される。Mos2L駆動用のゲート駆動信号はフォトカプラ122Lから、またMos2H駆動用のゲート駆動信号はフォトカプラ122Hからそれぞれゲート駆動回路112に対して出力される。フォトカプラ122L,122Hには、ゲート信号Gate2L,Gate2Hが入力される。Mos3L駆動用のゲート駆動信号はフォトカプラ123Lから、またMos3H駆動用のゲート駆動信号はフォトカプラ123Hからそれぞれゲート駆動回路113に対して出力される。フォトカプラ123L,123Hには、ゲート信号Gate3L,Gate3Hが入力される。Mos4L駆動用のゲート駆動信号はフォトカプラ124Lから、Mos4H駆動用のゲート駆動信号はフォトカプラ124Hからそれぞれゲート駆動回路114に対して出力される。フォトカプラ124L,124Hには、ゲート信号Gate4L,Gate4Hが入力される。なお、各フォトカプラは、入出力信号をアイソレーションして信号の基準電圧の変換を行うものである。
電源Vs1,Vs2,Vs3,Vs4は、それぞれMos1L,Mos2L,Mos3L,Mos4Lのソース端子を基準とした、MOSFET、ゲート駆動回路、フォトカプラを駆動するために備えられた電源で、全て同じ電源電圧に設定されている。
昇降圧判別部14は、入力された各端子電圧VH,VL,Vcomに基づいて、低圧側電圧端子対としての低圧側の電圧端子VLと共通側の電圧端子Vcom間に入力された電圧V1(=VL−Vcom)、および高圧側電圧端子対としての高圧側の電圧端子VHと共通側の電圧端子Vcom間に入力された電圧V2(=VH−Vcom)を求め、4×V1>V2の場合には昇圧動作と認識し、V1×4<V2の場合には降圧動作と認識して昇降圧判別信号をゲート信号生成部15に出力する。なお、この昇降圧判別部14の構成およびその動作については、主回路部13の昇降圧動作について説明した後に詳細に説明する。
ゲート信号生成部15は、マイクロコンピュータ等の信号処理回路からなるもので、図2に示すように、上記の昇降圧判別部14による昇降圧判別に応じて、主回路部13に与える動作制御用の各ゲート信号Gate1L,Gate1H,Gate2L,Gate2H,Gate3L,Gate3H,Gate4L,Gate4Hがインバータ用ゲート信号および整流用ゲート信号になるように、各信号を個別に生成するように構成されている。
すなわち、主回路部13の昇圧動作時において、一つの回路A1は、電圧端子VL−Vcom間に入力されるエネルギを、MOSFET(Mos1L,Mos1H)のオンオフ動作により高電圧側に送るインバータ回路として用いられる。また、残りの他の回路A2,A3,A4は、インバータ回路A1で駆動された電流を整流してエネルギを高電圧側へ移行する整流回路として用いられる。そのため、ゲート信号生成部15は、昇圧時、一つの回路A1がインバータ回路として動作するようにインバータ用ゲート信号Gate1L,Gate1Hを生成し、また、他の回路A2,A3,A4が整流回路として動作するように整流用ゲート信号Gate2L,Gate2H,Gate3L,Gate3H,Gate4L,Gate4Hを生成する(図3参照)。
また、主回路部13の降圧動作時において、回路A2,A3,A4はインバータ回路として、また、一つの回路A1は整流回路として用いられる。そのため、ゲート信号生成部15は、降圧時、回路A2,A3,A4がインバータ回路として動作するようにインバータ用ゲート信号Gate2L,Gate2H,Gate3L,Gate3H,Gate4L,Gate4Hを生成し、また、一つの回路A1が整流回路として動作するように整流用ゲート信号Gate1L,Gate1Hを生成する(図4参照)。
次に、上記構成を有するDC/DC電力変換装置の昇降圧動作について説明する。
(1)昇圧動作
上述したように、電圧端子VL−Vcom間に入力された電圧V1を、約4倍に昇圧された電圧V2にして電圧端子VH−Vcom間に出力するため、電圧端子VH−Vcom間に負荷が接続される。したがって、負荷電流によって電圧端子VH−Vcom間の電圧V2は4・V1よりも低い値となっている(V2<4・V1)。また、定常状態では、平滑コンデンサCs1には電圧V1の電圧が充電されており、各平滑コンデンサCs2、Cs3、Cs4には(V2−V1)間の電圧が平均的に3分割されたに(V2−V1)/3の電圧が充電されている。
昇圧時において、インバータ用ゲート信号Gate1L,Gate1Hと、整流用ゲート信号Gate2L,Gate2H,Gate3L,Gate3H,Gate4L,Gate4Hと、インバータ回路A1および整流回路A2〜A4内の高圧側MOSFET(Mos1H,Mos2H〜Mos4H)に流れる電流と、低圧側MOSFET(Mos1L,Mos2L〜Mos4L)に流れる電流と、をそれぞれ図3に示す。インバータ回路A1内のMOSFETではドレインからソースに電流が流れ、整流回路A2〜A4内のMOSFETではソースからドレインに電流が流れる。MOSFETはゲート信号がハイ電圧でオンする。
図3に示すように、インバータ用ゲート信号Gate1H,Gate1Lは、LrとCrによるLC直列体LC12,LC13,LC14にて定まる共振周期よりもやや大きな周期Tでデューティー約50%のオンオフ信号である。なお、tは共振周期の1/2の期間を示し、1a,1bはインバータ用ゲート信号Gate1H,Gate1Lのパルス(以下、インバータ用パルスと称す)である。
整流回路A2,A3,A4内の高圧側MOSFETへの整流用ゲート信号Gate2H,Gate3H,Gate4H、および低圧側MOSFETへの整流用ゲート信号Gate2L,Gate3L,Gate4Lは、インバータ用ゲート信号Gate1H,Gate1Lの各インバータ用パルス1a,1bの立ち上がりタイミングから期間tの範囲内で発生されるパルス(以下、整流用パルス2a,2bと称す)からなるオンオフ信号である。ここでは、整流用パルス2a,2bは、インバータ用パルス1a,1bと立ち上がりタイミングが一致するが、立ち下がりタイミングは所定時間τH、τL分だけ早くなるように設定されている。
低圧側MOSFETへのゲート信号としてのインバータ用パルス1bおよび整流用パルス2bにより各回路A1〜A4の低圧側MOSFETであるMos1L,Mos2L,Mos3L,Mos4Lがオン状態となると、電圧差があるため、各平滑コンデンサCs1,Cs2,Cs3に蓄えられた一部のエネルギが、以下に示す各経路を経由して各コンデンサCr12,Cr13,Cr14に移行する。なお、Mos2L,Mos3L,Mos4Lでは、整流用パルス2bがオフ状態の時もMOSFETの寄生ダイオードによりソースからドレインに電流が流れるため、LC直列体LC12、LC13、LC14の共振周期の1/2の期間tにわたって電流3bが流れ、その期間tが経過すると寄生ダイオードの逆流防止機能により電流が遮断される。
Cs1⇒Mos2L⇒Lr12⇒Cr12⇒Mos1L
Cs1⇒Cs2⇒Mos3L⇒Lr13⇒Cr13⇒Mos1L
Cs1⇒Cs2⇒Cs3⇒Mos4L⇒Lr14⇒Cr14⇒Mos1L
次いで、高圧側MOSFETへのゲート信号としてのインバータ用パルス1aおよび整流用パルス2aにより各回路A1〜A4の高圧側MOSFETであるMos1H,Mos2H,Mos3H,Mos4Hがオン状態となると、電圧差があるため、各コンデンサCr12,Cr13,Cr14に充電されたエネルギが、以下に示す各経路を経由してそれぞれ各平滑コンデンサCs2,Cs3,Cs4に移行する。なお、Mos2H,Mos3H,Mos4Hでは、整流用パルス2aがオフ状態の時もMOSFETの寄生ダイオードによりソースからドレインに電流が流れるため、LC直列体LC12,LC13,LC14の共振周期の1/2の期間tにわたって電流3aが流れ、その期間tが経過すると寄生ダイオードの逆流防止機能により電流が遮断される。
Cr12⇒Lr12⇒Mos2H⇒Cs2⇒Mos1H
Cr13⇒Lr13⇒Mos3H⇒Cs3⇒Cs2⇒Mos1H
Cr14⇒Lr14⇒Mos4H⇒Cs4⇒Cs3⇒Cs2⇒Mos1H
このように、各コンデンサCr12,Cr13,Cr14の充放電により、平滑コンデンサCs1から各平滑コンデンサCs2,Cs3,Cs4にエネルギが移行する。そして、電圧端子VLとVcom間に入力された電圧V1を、約4倍に昇圧された電圧V2にして電圧端子VHとVcom間に出力する。また、各コンデンサCr12,Cr13,Cr14には、インダクタLr12,Lr13,Lr14が直列に接続されてLC直列体LC12,LC13,LC14を構成するため、上記エネルギの移行は共振現象を利用したものとなり、大きなエネルギ量を効率よく移行できる。
また、この実施の形態1では、低電圧側の電圧端子VL、Vcomが接続されたインバータ回路A1と整流回路である他の各回路A2,A3,A4との間に、LC直列体LC12,LC13,LC14を接続した構成を採用しているため、各LC直列体LC12,LC13,LC14を流れる電流値を低減でき、各コンデンサおよび各インダクタの電流定格も低減することができる。以下、この点について説明する。
この実施の形態1におけるLC直列体LC12,LC13,LC14に流れる電流値をI12,I13,I14とし、コンデンサCr12,Cr13,Cr14の電圧をV12,V13,V14とする。そして、比較例として、隣接する回路間、すなわちA1,A2間、A2,A3間、A3,A4間で中間端子(低圧側MOSFETと高圧側MOSFETとの接続点)間に、LC直列体LC12,LC23,LC34を接続して、同様に動作させた場合を考える。
この比較例における各LC直列体LC12,LC23,LC34に流れる電流値をI12r,I23r,I34rとし、各LC直列体LC12,LC23,LC34内のコンデンサCr12,Cr23,Cr34の電圧をV12r,V23r,V34rとすると、比較例において、
I12r:I23r:I34r=3:2:1
V12r=V23r=V34r
である。これに対して、この実施の形態1では、
I12=I13=I14(=I34r)
V12:V13:V14=1:2:3 (V12=V12r=V23r=V34r)
となる。
このように、この実施の形態1では、回路A1と他の各回路A2,A3,A4との中間端子間にLC直列体LC12,LC13,LC14を接続したため、上記比較例に比べて、コンデンサCr12,Cr13,Cr14の各電圧は増大するものの、LC直列体LC12に流れる電流値を1/3に、また高圧側が回路A3に接続されるLC直列体LC13では、比較例のLC直列体LC23に流れる電流値の1/2に低減できる。即ち、各LC直列体LC12,LC13,LC14を流れる電流値を最小のものと等しくできる。このため、エネルギ移行用のLC直列体LC12,LC13,LC14のインダクタLr、およびコンデンサCrの電流定格を低下させ、インダクタLrとコンデンサCrを小形化することができる。このことは、後述の降圧時の場合にも当てはまる。
また、この実施の形態1では、整流回路A2〜A4にMOSFETを用いたため、ダイオードを用いた従来のものに比して導通損失が低減でき、電力変換の効率が向上する。
また、整流回路A2〜A4のMOSFETは、インバータ回路A1のMOSFETと同時にオンし、期間tの範囲内でインバータ回路A1のMOSFETより早くオフする。整流回路A2〜A4のMOSFETのオン期間を共振周期の1/2の期間tと一致させると導通損失を最小にできるが、上記のようにMOSFETのオン状態を早く終了させても、寄生ダイオードを介して導通するため、その期間もエネルギは移行でき、また制御に係る遅延などによる問題を回避できるので、信頼性が向上する。
また、整流用パルス2a,2bを、各インバータ用パルス1a,1bの立ち上がりタイミングから期間tの範囲内で発生されるため、LC直列体LC12,LC13,LC14の共振周期の1/2の期間tで電流が流れた後、電流は遮断されて逆流しない。電流の逆流が発生すると、エネルギの移行量が減少するだけではなく、所望の電力を得るためにはより多くの電流を流す必要があり、損失が増大し電力変換効率が悪化する。これに対して、この実施の形態1では、このような電流の逆流を防止できるので、LC直列体LC12,LC13,LC14の共振現象を効果的に利用でき、しかもMOSFETを用いたことで導通損失が低減できるため、変換効率の高いDC/DC電力変換装置が実現できる。
また、ゲート信号生成部15において、インバータ用ゲート信号Gate1L,Gate1Hと整流用ゲート信号Gate2L,Gate2H,Gate3L,Gate3H,Gate4L,Gate4Hとを別々に生成するようにしたため、整流回路A2〜A4のMOSFETをインバータ回路A1のMOSFETと独立して容易に制御することができ、上述した所望の動作を確実に実現でき、変換効率の高いDC/DC電力変換装置が得られる。
(2)降圧動作
電圧端子VH−Vcom間に入力された電圧V2を、約1/4倍に降圧された電圧V1にして電圧端子VL−Vcom間に出力するため、電圧端子VL−Vcom間には負荷が接続される。したがって、負荷電流によって電圧端子VL−Vcom間の電圧V1は幾分低下し、その結果、電圧V2は4・V1よりも高い値となっている(V2>4・V1)。
インバータ用ゲート信号Gate2L,Gate2H,Gate3L,Gate3H,Gate4L,Gate4Hと、整流用ゲート信号Gate1L,Gate1Hと、インバータ回路A2〜A4および整流回路A1内の高圧側MOSFET(Mos2H〜Mos4H,Mos1H)に流れる電流と、低圧側MOSFET(Mos2L〜Mos4L,Mos1L)に流れる電流とをそれぞれ図4に示す。インバータ回路A2〜A4内のMOSFETではドレインからソースに電流が流れ、整流回路A1内のMOSFETではソースからドレインに電流が流れる。MOSFETはゲート信号がハイ電圧でオンする。
図4に示すように、各インバータ用ゲート信号Gate2L,Gate2H,Gate3L,Gate3H,Gate4H,Gate4Lは、LrとCrによるLC直列体LC12,LC13,LC14にて定まる共振周期2tよりもやや大きな周期Tでデューティー約50%のオンオフ信号である。なお、1c,1dはインバータ用ゲート信号Gate2L,Gate2H,Gate3L,Gate3H,Gate4L,Gate4Hのパルス(以下、インバータ用パルスと称す)である。
整流回路A1内の高圧側MOSFETへの整流用ゲート信号Gate1Hおよび低圧側MOSFETへの整流用ゲート信号Gate1Lは、各インバータ用パルス1c,1dの立ち上がりタイミングから期間tの範囲内で発生されるパルス(以下、整流用パルス2c,2dと称す)からなるオンオフ信号である。ここでは、整流用パルス2c,2dは、インバータ用パルス1c,1dと立ち上がりタイミングが一致するが、立ち下がりタイミングは所定時間τH、τL分だけ早くなるように設定されている。
高圧側MOSFETへのゲート信号としてのインバータ用パルス1cおよび整流用パルス2cにより各回路A2〜A4、A1の高圧側MOSFETであるMos2H,Mos3H,Mos4H,Mos1Hがオン状態となると、電圧差があるため、各平滑コンデンサCs2,Cs3,Cs4に蓄えられた一部のエネルギが、以下に示す各経路を経由して各コンデンサCr12,Cr13,Cr14に移行する。なお、Mos1Hでは、整流用パルス2cがオフ状態の時もMOSFETの寄生ダイオードによりソースからドレインに電流が流れるため、LC直列体LC12,LC13,LC14の共振周期の1/2の期間tにわたって電流3cが流れ、その期間tが経過すると寄生ダイオードの逆流防止機能により電流が遮断される。
Cs2⇒Cs3⇒Cs4⇒Mos4H⇒Lr14⇒Cr14⇒Mos1H
Cs2⇒Cs3⇒Mos3H⇒Lr13⇒Cr13⇒Mos1H
Cs2⇒Mos2H⇒Lr12⇒Cr12⇒Mos1H
次いで、低圧側MOSFETへのゲート信号としてのインバータ用パルス1dおよび整流用パルス2dにより各回路A2〜A4,A1の低圧側MOSFETであるMos2L,Mos3L,Mos4L,Mos1Lがオン状態となると、電圧差があるため、各コンデンサCr12,Cr13,Cr14に充電されたエネルギが、以下に示す各経路を経由して各平滑コンデンサCs1,Cs2,Cs3に移行する。なお、Mos1Lでは、整流用パルス2dがオフ状態の時もMOSFETの寄生ダイオードによりソースからドレインに電流が流れるため、LC直列体LC12,LC13,LC14の共振周期の1/2の期間tにわたって電流3dが流れ、その期間tが経過すると寄生ダイオードの逆流防止機能により電流が遮断される。
Cr14⇒Lr14⇒Mos4L⇒Cs3⇒Cs2⇒Cs1⇒Mos1L
Cr13⇒Lr13⇒Mos3L⇒Cs2⇒Cs1⇒Mos1L
Cr12⇒Lr12⇒Mos2L⇒Cs1⇒Mos1L
このように、各コンデンサCr12,Cr13,Cr14の充放電により、各平滑コンデンサCs2,Cs3,Cs4から平滑コンデンサCs1にエネルギを移行する。そして、電圧端子VHとVcom間に入力された電圧V2を、約1/4倍に降圧された電圧V1にして電圧端子VLとVcom間に出力する。また、各コンデンサCr12,Cr13,Cr14には、インダクタLr12,Lr13,Lr14がそれぞれ直列に接続されてLC直列体LC12,LC13,LC14を構成するため、上記エネルギの移行は共振現象を利用したものとなり、大きなエネルギ量を効率よく移行できる。
また、この実施の形態1では、平滑コンデンサCs1の両端子に入力端子となる低電圧側の電圧端子VL,Vcomが接続された整流回路A1とインバータ回路である他の各回路A2,A3,A4との間に、LC直列体LC12,LC13,LC14を接続した。そして、この降圧動作においても、上記で示した比較例、すなわち、隣接する回路間にLC直列体LC12,LC23,LC34を接続して、同様に動作させた場合と比較して、LC直列体LC12を流れる電流値を1/3に、また高圧側が回路A3に接続されるLC直列体LC13では、比較例のLC直列体LC23を流れる電流値の1/2に低減できる。つまり、各LC直列体LC12,LC13,LC14を流れる電流値を最小のものと等しくできる。このため、エネルギ移行用のLC直列体LC12,LC13,LC14のインダクタLr、コンデンサCrの電流定格を低減できるので、インダクタLrとコンデンサCrの小形化が可能となる。
また、この降圧動作においても、整流回路A1にMOSFETを用いたため、ダイオードを用いたものに比して導通損失が低減でき、電力変換の効率が向上できる。
また、整流回路A1のMOSFETは、インバータ回路A2〜A4のMOSFETと同時にオンし、期間tの範囲内でインバータ回路A2〜A4のMOSFETより早くオフする。整流回路A1のMOSFETのオン期間を共振周期の1/2の期間tと一致させると導通損失を最小にできるが、上記のようにMOSFETのオン状態を早く終了させても、寄生ダイオードを介して導通するため、その期間もエネルギは移行でき、また制御に係る遅延などによる問題を回避できるので、信頼性が向上する。
また、整流用パルス2c,2dを、各インバータ用パルス1c,1dの立ち上がりタイミングから期間tの範囲内で発生させるため、LC直列体LC12,LC13,LC14の共振周期の1/2の期間tで電流が流れた後、電流は遮断され逆流しない。このため、LC直列体LC12、LC13、LC14の共振現象を効果的に利用でき、しかもMOSFETを用いたことで導通損失が低減できるため、変換効率の高いDC/DC電力変換装置が実現できる。
また、ゲート信号生成部15において、インバータ用ゲート信号Gate2L,Gate2H,Gate3L,Gate3H,Gate4L,Gate4Hと、整流用ゲート信号Gate1L,Gate1Hとを別々に生成するようにしたため、整流回路A1のMOSFETをインバータ回路A2〜A4のMOSFETと独立して容易に制御することができ、上述した所望の動作を確実に実現でき、変換効率の高いDC/DC電力変換装置が得られる。
上記のようにして、ゲート信号生成部15は、昇降圧判別部14の昇降圧判別結果に応じて、昇圧動作用のゲート信号(回路A1にインバータ用ゲート信号、回路A2〜A4に整流用ゲート信号)と、降圧動作用のゲート信号(回路A1に整流用ゲート信号、回路A2〜A4にインバータ用ゲート信号)をそれぞれ生成するが、次に、この昇降圧動作の判別信号を生成する昇降圧判別部14の詳細について説明する。
図5は、昇降圧判別部の構成を示す回路図、図6は同昇降圧判別部の動作説明に供するタイミングチャートである。
この昇降圧判別部14は、オペアンプOPAと比較手段としてのコンパレータCPとを備え、オペアンプOPAの正極性端子にはV1(=VL−Vcom)を抵抗R1,R2で分圧した電圧VLsが電流制限用の抵抗R5,R6を介して入力され、また、オペアンプOPAの負極性端子には増幅率を規定する負帰還用の抵抗R7,R8が接続されている。また、コンパレータCPの負極性端子にはV2(=VH−Vcom)を抵抗R3,R4で分圧した電圧VHsが入力され、またコンパレータCPの正極性端子には、オペアンプOPAの出力が抵抗r1,r2,r3を有するヒステリシス付与回路16を介して入力されるようになっている。なお、分圧用の各抵抗R1〜R4は、R1/R2=R3/R4の関係となっている。また、オペアンプOPAの入力抵抗R5,R6、帰還抵抗R7,R8は、R6/R5=R8/R7=4の関係となっている。
上記構成の昇降圧判別部14において、電圧V1は、抵抗R1,R2で分圧され、オペアンプOPAを駆動する制御電圧Vcc以下の電圧とされる。分圧された電圧VLsは、オペアンプOPAにより4倍の電圧4・VLsに増幅され、昇降圧動作を判別するためのしきい値電圧として、抵抗r1を介してコンパレータCPの正極性端子に入力される。一方、電圧V2は、抵抗R3,R4で分圧され、コンパレータCPを駆動する制御電圧Vcc以下の電圧VHsに調整されてコンパレータCPの負極性端子に入力される。
主回路部13の昇降圧動作において説明したように、昇圧時には電圧端子VH−Vcom間に負荷が接続されているので、VH−Vcom間の電圧V2は降下してV2<4・V1となり、また、降圧時には電圧端子VL−Vcom間には負荷が接続されるので、電圧端子VL−Vcom間の電圧V1は降下してV2>4・V1となる。
したがって、コンパレータCPにおいて電圧VHsと4・VLsとを単純に比較して、電圧VHsが4・VLsよりも小さい場合(VHs<4・VLs)は昇圧動作、VHsが4・VLsよりも大きい場合(VHs>4・VLs)は降圧動作と判定することができる。しかし、ここでは、これらの判別の切り替えを安定化させるために、すなわち、昇降圧用のゲート信号が頻繁に入れ替わらないようにするために、ヒステリシス付与回路16によってコンパレータCPにヒステリシス特性を持たせている。
すなわち、ヒステリシス回路16を設けることにより、電圧VHsが低下してしきい値4・VLsよりも小さくなる場合の第1のしきい値電圧Vsh1と、電圧VHsが増加してしきい値4・VLsよりも大きくなる場合の第2のしきい値Vsh2を、下記のような関係により設定している。
これにより、電圧VHsが低下して第1のしきい値Vsh1よりも小さくなると、コンパレータCPからは昇圧動作を判別するハイレベルの信号が出力され、電圧VHsが増加して第2のしきい値Vsh2よりも大きくなると、コンパレータCPからは降圧動作になったと判別するローレベルの信号が出力される。このように、コンパレータCPにヒステリシス特性を持たせることにより、コンパレータCPから出力される昇降圧の判別信号が安定化して不要なチャタリング発生を抑制することができる。
実施の形態2.
図7はこの実施の形態2のDC/DC電力変換装置における昇降圧判別部の構成を示す回路図、図8は同昇降圧判別部の動作説明に供するタイミングチャートである。
上記の実施の形態1では、昇降圧判別部14において、昇降圧動作を判別する信号を形成するために、電圧端子VLとVcom間の電圧V1と、電圧端子VHとVcom間の電圧V2を検出しているが、この実施の形態2では、電圧端子VLに流入あるいは流出する電流Iinを電流検出器CTで検出することにより、昇降圧動作を判別する信号を生成するようにしたものである。
すなわち、この実施の形態2の昇降圧判別部14は、コンパレータCPを備え、このコンパレータCPの負極性端子には、低圧側の電圧端子VLに流れる電流を電圧VIinに変換して出力する電流検出器CTが接続され、またコンパレータCPの正極性端子には、基準となるしきい値電圧Vrefが抵抗r1,r2,r3を有するヒステリシス付与回路16を介して入力されるようになっている。
上記構成の昇降圧判別部14において、しきい値電圧Vrefは、抵抗r1を介してコンパレータCPの正極性端子に入力される。また、電流検出器CTは、電圧端子VLに流れる電流Iinを電圧VIinに変換してコンパレータCPの負極性端子に出力する。この場合、電流Iinがゼロのときの出力電圧VIinは、しきい値電圧Vrefと等しくなっている。また、低圧側の電圧端子VLにおいて電流が流れ出す場合には電流は正、電圧端子VLにおいて電流が流れ込む場合には電流は負となる。
ここで、昇圧時には電圧端子VH−Vcom間に負荷が接続されるので、低圧側の電圧端子VLには電流が流れ込んで電流が負となり、検出電圧VIinが低下する。また、降圧時には電圧端子VL−Vcom間に負荷が接続されるので、低圧側の電圧端子電圧VLからは電流が流れ出して電流が正となり、検出電圧VIinが増加する。
したがって、コンパレータCPにおいて電圧VIinとVrefとを単純に比較して、電圧VIinがVrefよりも小さい場合(VIin<Vref)には昇圧動作、電圧VIinがVrefよりも大きい場合(VIin>Vref)には降圧動作と判定することができる。しかし、この実施の形態2においても実施の形態1と同様、これらの判別信号の切り替えを安定化させるために、すなわち、昇降圧用のゲート信号が頻繁に入れ替わらないようするために、ヒステリシス付与回路16によってコンパレータCPにヒステリシス特性を持たせている。
すなわち、ヒステリシス回路16を設けることにより、電圧VIinが低下してしきい値Vrefよりも小さくなる場合の第1のしきい値電圧Vsh1と、電圧VIinが増加してしきい値Vrefよりも大きくなる場合の第2のしきい値Vsh2を、それぞれ下記のような関係により設定している。
つまり、電圧VIinが低下して第1のしきい値Vsh1よりも小さくなると、コンパレータCPからは昇圧動作を判別するハイレベルの信号が出力され、電圧VIinが増加して第2のしきい値Vsh2よりも大きくなると、コンパレータCPからは降圧動作になったと判別するローレベルの信号が出力される。このようにコンパレータCPにヒステリシス特性を持たせることにより、実施の形態1の場合と同様に、コンパレータCPから出力される判別信号が安定化して不要なチャタリング発生を抑制することができる。
なお、この実施の形態2では、電圧端子VLに流入出する電流Iinを電流検出器CTで検出することにより、昇降圧動作を判別する信号を形成したが、これに限らず、高圧側の電圧端子VHに流入出する電流を電流検出器CTで検出し、同様に、検出電流としきい値をコンパレータCPで比較して昇降圧動作を判別するようにすることも可能である。
実施の形態3.
図9は本発明の実施の形態3におけるDC/DC電力変換装置を示す回路構成図であり、実施の形態1の構成と対応もしくは相当する部分には同一の符号を付す。
この実施の形態3のDC/DC電力変換装置において、上記実施の形態1とは、主回路部13の構成が若干異なっているが、昇降圧判別部14およびゲート信号生成部15の構成および作用は実施の形態1と同様であるから、これらの各部14,15の説明は省略し、ここでは主回路部13の構成について説明する。
この実施の形態3の主回路部13は、実施の形態1の場合と同様、低圧側の電圧端子VLと共通側の電圧端子Vcom間に入力された電圧V1を、約4倍に昇圧された電圧V2にして高圧側の電圧端子VHと共通側の電圧端子Vcom間に出力する昇圧動作と、高圧側の電圧端子VHと共通側のVcom間に入力された電圧V2を、約1/4倍に降圧された電圧V1にして低圧側の電圧端子VLと共通側の電圧端子Vcom間に出力する降圧動作とを行う双方向のDC/DC電力変換機能を有するが、実施の形態1の構成と比べると、インダクタLr0〜Lr4の配置が異なっている。
すなわち、2つのMOSFETと平滑コンデンサからなる各回路A1〜A4の内の高圧側と低圧側の各MOSFETの接続点を中間端子として、一つの回路A1とそれ以外の各回路A2〜A4との間の各中間端子間にそれぞれエネルギ移行用のコンデンサCr12,Cr13,Cr14がそれぞれ接続され、また、高圧側と低圧側の各MOSFETと平滑コンデンサCs1,Cs2,Cs3,Cs4とを結ぶ充放電経路となる各接続線の間にインダクタLr0,Lr1,Lr2,Lr3,Lr4がそれぞれ接続されている。なお、各平滑コンデンサCs1,Cs2,Cs3,Cs4の容量値は、各コンデンサCr12,Cr13,Cr14の容量値と比較して十分大きな値に設定されている。
さらに、上記の主回路部13の接続の詳細について説明する。
平滑コンデンサCs4の高圧側端子とMos4Hのドレイン端子の間にインダクタLr4が、Cs3の高圧側端子とMos3Hのドレイン端子の間にインダクタLr3が、Cs2の高圧側端子とMos2Hのドレイン端子の間にインダクタLr2が、Cs1の高圧側端子とMos1Hのドレイン端子の間にインダクタLr1が、Cs1の低圧側端子とMos1Lのソース端子の間にインダクタLr0が、それぞれ挿入されている。
各コンデンサCrの容量値は略等しく、各インダクタLrのインダクタンス値も略等しくなっており、各コンデンサCrの充放電経路において、インダクタLrとコンデンサCrのインダクタンス値と容量値から定まる共振周期の値は、それぞれ等しくなるように設定されている。なお、この実施の形態3では、各コンデンサCrの充放電経路内に、当該コンデンサCrと2個のインダクタLrとが含まれるため、インダクタLrのインダクタンス値をLr、コンデンサCrの容量値をCrとすると、共振周期Trは、次式で計算される。
ここで、上記の実施の形態1と同様に、主回路部13の昇圧動作時には、回路A1は、電圧端子VL−Vcom間に入力されるエネルギを、MOSFET(Mos1L,Mos1H)のオンオフ動作により高電圧側に送るインバータ回路として用いられる。また、他の回路A2,A3,A4は、インバータ回路A1で駆動された電流を整流してエネルギを高電圧側へ移行する整流回路として用いられる。この昇圧時において、ゲート信号生成部15が出力する各ゲート信号Gate1L,Gate1H,Gate2L,Gate2H,Gate3L,Gate3H,Gate4L,Gate4H、およびこれに伴って各MOSFETに流れる電流の関係については、実施の形態1の場合と同様となる(図3参照)。
また、主回路部13の降圧動作時には、回路A2,A3,A4は、電圧端子VH−Vcom間に入力されるエネルギを、MOSFET(Mos2L,Mos2H)、(Mos3L,Mos3H)、(Mos4L,Mos4H)のオンオフ動作により低電圧側に送るインバータ回路として用いられる。また、一つの回路A1は、インバータ回路A2,A3,A4で駆動された電流を整流してエネルギを移行する整流回路として用いられる。この降圧時において、ゲート信号生成部15が出力する各ゲート信号Gate1L,Gate1H,Gate2L,Gate2H,Gate3L,Gate3H,Gate4L,Gate4H、およびこれに伴って各MOSFETに流れる電流の関係についても、実施の形態1の場合と同様となる(図4参照)。
因に、上記の昇圧動作時の充放電経路について説明すると、低圧側MOSFETへのゲート信号としてのインバータ用パルス1bおよび整流用パルス2bにより各回路A1〜A4の低圧側MOSFETであるMos1L,Mos2L,Mos3L,Mos4Lがオン状態となると、電圧差があるため、各平滑コンデンサCs1,Cs2,Cs3に蓄えられた一部のエネルギが、以下に示す各経路を経由して各コンデンサCr12,Cr13,Cr14に移行する。なお、Mos2L,Mos3L,Mos4Lでは、整流用パルス2bがオフ状態の時もMOSFETの寄生ダイオードによりソースからドレインに電流が流れるため、上記共振周期の1/2の期間tにわたって電流3bが流れ、その期間tが経過すると寄生ダイオードの逆流防止機能により電流が遮断される。
Cs1⇒Lr1⇒Mos2L⇒Cr12⇒Mos1L⇒Lr0
Cs1⇒Cs2⇒Lr2⇒Mos3L⇒Cr13⇒Mos1L⇒Lr0
Cs1⇒Cs2⇒Cs3⇒Lr3⇒Mos4L⇒Cr14⇒Mos1L⇒Lr0
次いで、高圧側MOSFETへのゲート信号としてのインバータ用パルス1aおよび整流用パルス2aにより各回路A1〜A4の高圧側MOSFETであるMos1H,Mos2H,Mos3H,Mos4Hがオン状態となると、電圧差があるため、各コンデンサCr12,Cr13,Cr14に充電されたエネルギが、以下に示す各経路を経由しで各平滑コンデンサCs2,Cs3,Cs4に移行する。なお、Mos2H,Mos3H,Mos4Hでは、整流用パルス2aがオフ状態の時もMOSFETの寄生ダイオードによりソースからドレインに電流が流れるため、上記共振周期の1/2の期間tにわたって電流3aが流れ、その期間tが経過すると寄生ダイオードの逆流防止機能により電流が遮断される。
Cr12⇒Mos2H⇒Lr2⇒Cs2⇒Lr1⇒Mos1H
Cr13⇒Mos3H⇒Lr3⇒Cs3⇒Cs2⇒Lr1⇒Mos1H
Cr14⇒Mos4H⇒Lr4⇒Cs4⇒Cs3⇒Cs2⇒Lr1⇒Mos1H
このように、各コンデンサCr12,Cr13,Cr14の充放電により、平滑コンデンサCs1から各平滑コンデンサCs2,Cs3,Cs4にエネルギが移行する。そして、電圧端子VLとVcom間に入力された電圧V1を、約4倍に昇圧された電圧V2にして電圧端子VHとVcom間に出力する。また、各コンデンサCr12,Cr13,Cr14の充放電経路には、2個のインダクタLr(Lr0〜Lr4)が直列に接続されているため、上記エネルギの移行は共振現象を利用したものとなり、大きなエネルギ量を効率よく移行できる。
なお、ここでは説明を省略するが、降圧時の充放電動作は上記昇圧時の充放電動作の場合と逆の動作となる。また、昇降圧判別部14およびゲート信号生成部15を含むその他の動作および効果については、実施の形態1の場合と同様であるから、ここでは詳しい説明を省略する。
なお、上記実施の形態1〜3では、主回路部13として2つのスイッチング素子と平滑コンデンサを備えた4つの回路A1〜A4を設けているが、本発明はこのような4つの回路A1〜A4に限定されるものではなく、複数の回路を備えれば本発明を適用することができ、これによって種々の電圧比のDC/DC電力変換装置を構成することができることは勿論である。