JP4836696B2 - 食品素材及びその製造方法 - Google Patents
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このような、アルコール含有液状物質を液体状態のままで食品の製造過程において添加しようとすると種々の問題があることから、現状ではあまり行われていないのが現状である。
この問題点を、例えば、魚肉ねり製品である蒲鉾の製造過程を例に挙げて説明する。
蒲鉾は、一般的には魚肉のすり身、調味料、でんぷん、水を一定の割合で混合してペースト状にし、これを加熱してゲル化することによって製造される(特許文献1参照)。
したがって、ダレを起こさないようにするためには、加えるみりんの量だけ水を減量する必要があるが、これは配合比を変更することを意味し、魚肉の種類によって微妙な配合の違いがあることを考慮すると、この配合比の変更は煩雑である。
しかし、アルコールを液状のままで加えようとすると、上記の蒲鉾の場合と同様に、粘度が低下してダレを起こし製品不良となる。
魚肉ねり製品には、一般的にでんぷんが使用されていることから、みりんをでんぷんに含ませることを考えた。みりんとでんぷんを混合して攪拌するとみりんの中にでんぷんが分散されるが、そのままの状態では時間が経過するとみりんとでんぷんが分離する。
そこで、発明者はみりんとでんぷん(用いたでんぷんは、ばれいしょでんぷん)の混合物を攪拌しながら加熱することを試みた。徐々に加熱温度を上昇させながら前記混合物の性状を確認した。すると、温度が72℃近傍になると急に粘度が増し、漉し餡のような餡状になった。
この餡状になった物質を、本明細書では「餡みりん」という。なお、みりん以外のアルコール含有液状物質を用いた場合には、餡の後に、アルコール含有液状物質の一般名称を付加して称呼することとする。例えば、餡清酒など。
上記、餡みりんを魚肉ねり製品の製造工程において添加することにすると、餡みりんが液状でないことからダレが生ぜず成形不良・製品不良の問題が生じない。
そのため、従来の配合を変える必要がなく、必要な量だけ任意に加えることができる。
さらに、餡みりんはでんぷんの本来の性質を有していることから、魚肉ねり製品の弾力形成の効果を発揮できる。
また、一般的に魚肉ねり製品のペースト状物質にはでんぷんが含まれているので、でんぷんを用いてみりんを餡状にして添加したとしても、みりんのみが新たな添加材料となり、みりんについては食品表示の義務は生じるが、でんぷんについてはその絶対量が増加するのみであり、係る表示の義務は生じない。また、この例のように餡みりんの材料となるでんぷんとして、餡みりんを添加する各種加工食品の原材料として使用されているでんぷん(本例ではばれいしょでんぷん)を用いるようにすれば、上記の表示義務が生じない。この点から、餡みりんの材料となるでんぷんの選定基準として、餡みりんを添加する各種加工食品に原材料として使用されているでんぷんを選定することも一つの基準となり得る。
そして、発明者はみりんとばれいしょでんぷんのみならず、清酒とでんぷん(用いたのは、ばれいしょでんぷん)についても同様の実験をおこなったところ、清酒とでんぷんの混合物をでんぷんの分散状態を維持しながら加熱すると、63℃近傍で餡状となった。
餡清酒を和食、和菓子等の製造工程において清酒を液体のまま添加することに代えて用いると、上記と同様の利点があるとの知見を得た。
本発明はかかる知見を基になされたものであり、具体的には以下の構成を有する。
以下、さらに詳細に説明する。
餡状からさらに加熱温度を上げて加熱を続けると、コロイド状態となる。コロイド状態になることを糊化(α化)というが、糊化したでんぷんは、もとのでんぷんと著しく性質が異なっている。これはでんぷんを構成しているアミロースとアミロペクチンの強固な結合が、水分と熱によって崩れるために起きる現象で、これをα化といい、α化したでんぷんをαでんぷんという。元のでんぷんをβでんぷんという。
したがって、餡状とは、加熱によって急激に粘性が増すでんぷんが、完全にα化する前の状態であって、でんぷん自体はもとのでんぷんすなわちβでんぷんの性質を有している状態をいう。
また、餡状では完全にα化していないので、その後の粉砕等の加工の必要がなくそのまま直ぐに包装して製品とすることができる。そして、餡状であることから、分散性にも優れ、例えば練り製品への添加もスムーズに行うことができる。
通電加熱とは、対向する電極間に加熱対象を配置して通電することで、加熱対象物をジュール熱によって加熱することをいう。
通電加熱を行うことによって、直接加熱であることから加熱温度を確実に制御でき、加熱対象の性質に応じた加熱温度制御ができ、餡状物質を確実に生成することができる。また、加熱対象の温度を短時間で目標温度にできるので、アルコールの気化を極力抑えた加熱ができ、かつ、アミノカルボニル反応(メイラード反応)による褐変もない。さらに、アルコール含有液状物質が酒類の場合には風味を損なうことなく餡状の食品素材を生成できる。
なお、加熱対象物の導電率を高めるために、通常食品加工製品の添加材料とされる食塩やアミノ酸等の電解質を添加することにより、加熱時間を短縮できることも通電加熱の特徴である。
また、前記食品素材自体はアルコールを含有することから保存性にも優れるものである。
前述したように、餡状とは、アルコール含有液状物質とでんぷんの混合物の加熱過程において、粘性が急激に増した状態で、かつでんぷんがいまだ完全にはα化していない状態をいう。
以下においては、発明者が実験装置によって行った餡みりんの製造方法を説明する。
また、筒状容器1内の温度をモニタリングするためにサーモレコーダ9のセンサ11を挿入した。
その後、徐々に温度が上昇し、食品の場合には温度が上昇すると抵抗値が下がることから電流値が増していった。
そして、筒状容器1内の温度が約72℃になったときに、急激に粘性が増し、容器内の混合物が餡状になった。
表1から分かるように、でんぷんの種類によって、餡状になる温度が異なり、また、餡状の性状に違いがある。また、この例ではみりんとでんぷんの配合比を一定としているが、この配合比に違いによっても餡状になる温度に違いがあることを確認している。
ただし、少なくとも表に示される配合比においては、72℃〜84℃の温度範囲において餡みりんが生成できることが確認された。
ただし、少なくとも表に示される配合比においては、63℃〜74℃の温度範囲において餡清酒が生成できることが確認された。
この場合のでんぷん及びアルコール含有液状物質の具体例としては、例えば、前述した魚肉ねり製品において、でんぷんとしてばれいしょでんぷんを用い、アルコール含有液状物質としてみりんを用いる例がある。
表4では、清酒と穀粉の重量割合は、75:25とし、電解質として食塩を0.5%添加した。
アルコール含有液状物質とでんぷんの混合物を一旦α化させて再びβ化させた場合には、固形になるが、これを砕いて粉状にすることで食品製造過程での添加を容易に行うことができる。このようなアルコール含有でんぷんの具体例を表5に示す。
表5に示す温度帯に加熱することで、透明団子状になるので、これを常温で2週間保管した後粉末化することで粉状のアルコール含有でんぷんを生成できる。
Claims (3)
- アルコール含有液状物質とでんぷんを、アルコール含有液状物質が90w%〜50w%ででんぷんが10w%〜50w%の混合割合で混合し、該混合物におけるでんぷんの分散状態を維持しながら60℃乃至85℃で加熱して餡状にしてなることを特徴とする食品素材。
- 前記加熱は通電加熱であることを特徴とする請求項1記載の食品素材。
- アルコール含有液状物質とでんぷんを、アルコール含有液状物質が90w%〜50w%ででんぷんが10w%〜50w%の混合割合で混合し、該混合物におけるでんぷんの分散状態を維持しながら60℃乃至85℃で通電加熱して餡状にすることを特徴とする食品素材の製造方法。
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