JP4834183B1 - ドリル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】回転軸対称に形成された2つの切刃を有し、先端部にシンニングが施されているドリルであって、前記切刃が、ドリル先端側から見たとき、チゼルエッジからドリル外周側に向けて曲線を含む形状に延びるシンニング切刃と、前記シンニング切刃の端部からドリル外周端まで直線状に延びる主切刃とからなり、前記主切刃の延びる方向における切刃長さが、前記主切刃の長さをA、前記シンニング切刃の長さをBとしたとき、0<A≦Bを満たすことを特徴とするドリルとする。
【選択図】図1
Description
しかし、ハンドドリルやボール盤等の穴あけ時に作業者の力が必要な装置に使用されるドリルについては、積極的な研究開発が行われることがなく、数十年に亘って同じ様な形状のドリルが用いられているのが現状である。
従来のシンニングは、ドリル中心部からヒール部にかけて行われる(図10(a)参照)、或いはドリル中心部の狭い範囲のみに行われる(図10(b)参照)のが普通であった。尚、図10(a)(b)においてシンニング部にハッチングを施し、シンニングにより形成された切刃を(S1)で示す。
このようなシンニングを施したドリルは、シンニング無しのドリル(図10(c)参照)と比べると切削抵抗の低減効果はあるものの、ハンドドリルやボール盤等の人力による穴あけ作業に使用する場合、切削抵抗の低減が充分とは言えず、作業者の腕力にかかる負担が大きい。
このドリルは、回転軸対称に2枚の切刃を有し、先端部にシンニングが施されているドリルであって、チゼル幅が0.05〜0.3mmであり且つシンニングがドリル先端側から見た場合において両切刃の刃先を結んだ直線に対して1〜4°傾いた角度で施されているものである。
このドリルによれば、チゼル幅が狭く且つシンニングが上記角度で形成されていることにより、従来のドリルに比べると、切削時のスラスト抵抗が小さく、作業者が加える力が少なくて済む。
しかしながら、このドリルは、高硬度の鋼板に対応するためにシンニングにより形成されるすくい角を90°より大きく設定している。そのため、中心部の切削力が弱く、ハンドドリルでの穴あけ作業時においてワークが中心から外周刃にかかるまでの間はかなりの力が必要となる。また、チゼル幅が非常に狭いために、使用時に先端が欠けてしまう虞があり、特に粉末高速度鋼を材料とするドリルでは、脆くなるために一層先端が欠け易くなる。
図1は本発明に係るドリルを示す図であって、(a)は上面図(ドリルを先端側から見た図)、(b)は先端部の正面図である。
切刃は、ドリル先端側から見たとき、チゼルエッジからドリル外周側に向けて曲線を含む形状に延びるシンニング切刃(1)と、シンニング切刃(1)の端部からドリル外周端まで直線状に延びる主切刃(2)とからなる。
図中、(3)は逃げ面、(4)はチゼル、(5)は主切刃(2)により形成されたすくい面、(6)はシンニングにより形成された新たなすくい面、(W)はチゼル幅である。
シンニング切刃(1)の長さ(B)を、主切刃(2)の長さ(A)と同じかそれ以上に設定することにより、後述する実施例及び比較例に示す如く、A>Bである従来のドリルに比べて切削抵抗を大幅に低減することが可能となる。
主切刃(2)により形成されたすくい角(θ1)と、シンニング切刃(1)により形成されたすくい角(θ2)は、θ1>θ2>0°を満たす。
シンニング切刃(1)により形成されたすくい角(θ2)が、主切刃(2)により形成されたすくい角(θ1)より小さいということは、シンニングを施すことにより見掛け上のすくい角が小さくなる(緩くなる)ことを意味する。
すくい角が大きい(きつい)とワークに食い込む量が多くなり、工作機械など動力源を使用してドリルを回転させる場合には問題ないが、ハンドドリルなど人力でワークに押し付ける場合は負荷に対して人力が負けてしまい、結果として切れないということになる。
本発明では、θ1>θ2を満たすようにシンニング切刃(1)を形成することにより、見掛け上のすくい角が小さくなってワークに食い込む量が少なくなり、ハンドドリルなど人力でワークに押し付ける場合であっても容易に切れるようになる。
捩れ角を小さくすることによりすくい角を小さくして切削抵抗を低減する方法もあるが、捩れ角を変えてドリルを製作するよりも従来の捩れ角を変えずに本発明の如くシンニングのみで見掛けのすくい角を変える方法は極めて簡単に行うことができるという大きな利点がある。
ドリルが本来持っているすくい角(シンニング形成前のすくい角)では、刃先角が鋭すぎて、刃先が楔のようにワークに鋭く食い込むため、切削抵抗が大きくなる。
シンニングを行うことにより、すくい角が減少して刃先角が増大し、これによって切れ味が向上する(切削抵抗が減少する)。特に、本発明に係るドリルに施されるシンニングによれば、作業者の腕力に適した緩やかなすくい角と大きめの刃先角が創成されることとなる。
一般的には、逃げ角を大きくとり、すくい角を大きくすることで、鋭利な刃先を形成することにより、鋭い切れ味が得られると考えられており、市販のドリルは共通してこのような形状を有している。
しかし、逃げ角もすくい角同様に大きくすると刃先が鋭くなってワークに食い込む量が多くなり、ハンドドリルなど人力でワークに押し付ける場合は切れなくなる。
本発明では逃げ角(β)を0°<β≦4°と小さく設定することにより、ワークに食い込む量が少なくなり、ハンドドリルなど人力でワークに押し付ける場合であっても容易に切れるようになる。
(イ)半径50mm以上の砥石外周部の砥石水平中心線上に、ドリル先端部の中心を合わせ、ドリル先端部の切刃部を砥石水平中心線と平行(=水平)に当て、ドリル後端部を、ドリル先端部を中心に砥石水平中心線より下降させたときの砥石水平中心線とドリル中心軸線のなす角度。(図3(a)参照)
(ロ)砥石側面(垂直平面)の砥石水平中心線上に、ドリル先端部の中心を合わせ、ドリル先端部の切刃部を砥石水平中心線と平行(=水平)に当て、ドリル後端部を、ドリル先端部を中心に砥石水平中心線より下降させたときの砥石水平中心線とドリル中心軸線のなす角度。(図3(b)参照)
そのため、(イ)で求める場合、この差分を加えたものを逃げ角とすることが好ましい。つまり、逃げ角は下式の通りに求めることが好ましい。
(イ)(図3(a))の場合:逃げ角=β+tan−1((1−cos(sin−10.5W/R))R÷0.5W)
(ロ)(図3(b))の場合:逃げ角=β
例えば、逃げ角3°で半径(R)50mmの砥石で研磨する、直径10mm、心厚2mmのドリルの実際の逃げ角は約3.573°となる。
従来のシンニングは、ドリル自体の強度・剛性を優先するために、シンニング形成時にドリルを砥石に当てる角度(θ)を大きめにしていた。(図4(a)参照)
角度(θ)を極力少なくし、砥石の研削面接線上にドリルの中心を近づけると、ドリル中心部のウエブと呼ばれる部分の抵抗を受けなくなるため、切削抵抗は大幅に減少する。(図4(b)参照)
(I)シンニングを行う砥石の垂直中心線に対してドリル中心軸線のなす角度(図4のθ)が0〜20°
(II)シンニングを行う砥石の幅方向の中心線に対してドリル中心軸線のなす角度が20〜35°(図5参照)
但し、上記(II)のシンニングの角度の範囲は、先端角118°、捩れ角30°の場合に求められたものであり、必ずしも全てのドリルに対して好適とはいえない。理論上は、上記(II)のシンニングの角度の上限値は、ドリルの刃先と平行な位置(=先端角)の1/2の角度(118°の場合は59°)までの範囲に設定することができる。
図6(a)はドリルのシンニング部に直角な断面(図6(b)のA−A断面)を示す図である。
図6(a)に示す例では、シンニングにより形成されたすくい面(6)の縁部(主切刃(2)により形成されたすくい面(5)との境界部)は、シンニングの半径(R2)によって円弧状に形成されている。尚、(R1)はドリル溝部の半径である。
図示のように、主切刃(2)により形成されたすくい角(θ1)と、シンニング切刃(1)により形成されたすくい角(θ2)は、θ1>θ2>0°を満たす。
また、主切刃(2)により形成された刃先角(α1)と、シンニング切刃(1)により形成された刃先角(α2)は、α1<α2<90°を満たす。
本発明者らは、すくい面の縁部形状が円弧状の場合(図6(a))と、円弧と直線を組み合わせた形状の場合(図7)とが、同等の切れ味を有し、切削抵抗に違いが無いことを実験により確認している。
この場合も、主切刃(2)の延びる方向における切刃長さは、主切刃(2)の長さを(A)、シンニング切刃(1)の長さを(B)としたとき、0<A≦Bを満たしている。より好ましくは、ドリル半径(R)に対してR×0.1≦Aを満たすように設定する。
また、主切刃により形成されたすくい角(θ1)と、シンニング切刃により形成されたすくい角(θ2)が、θ1>θ2>0°を満たすことが好ましい。
更に、主切刃により形成された刃先角(α1)と、前記シンニング切刃により形成された刃先角(α2)が、α1<α2<90°を満たすことが好ましい。
加えて、逃げ角(β)が0°<β≦4°を満たすことが好ましい。
直径φ10mm(半径R=5mm)のドリルに対して表1に示す6種類の異なるB寸法のシンニングを行い、実施例及び比較例のドリルを作製した。ドリルの逃げ角は全て4°に設定し、チゼル幅は全て0.5mmとした。
作業者が各ドリルによる切削作業の容易さを以下の基準で評価した。評価結果を表2に示す。
<評価基準>
◎・・・軽い。(切削に殆ど力を要さない。)
○・・・比較的軽い。(切削に少し力を要する。)
×・・・重い。(切削に大きな力を要する。)
表3に示す4種類のドリル(直径φ8.5mm)を用意した。実施例5のドリルは本発明に係るドリル(図1参照)であり、比較例3〜5のドリルは夫々図10(a)〜(c)に示す形状を有するものである。
ドリル先端から外周刃までの約70%の長さがワークに沈んだ時点で一旦切削を停止し、穴の形状を確認した後、更に外周刃が沈むまで切削を続行した。各ドリルについての評価結果を表4及び表5に示す。尚、穴形状を確認した理由は、作業中に切削抵抗が変化すると穴形状が円錐形になりにくいためである。
尚、自動車部品や電気部品など一部品を大量に製造する現場においては、機械の自動化・無人化によって、ドリルに巻きつく虞がある連続切粉は敬遠されている。そのため、ドリルメーカーは連続切粉が出ない自動機械に適したドリルの開発を優先して行ってきた。しかし、ハンドドリルが使用される現場(鉄道車両の艤装等)や手動ボール盤が使用される現場においては、作業者が切粉を除去すればよいため、連続切粉が出ても切れ味が向上することにより作業効率が向上する。また、切粉がドリル溝に沿って排出されることにより、深穴用のドリルとして切粉詰まりの減少がなくなる、
表6に示す4種類のドリル(直径φ6.5mm)を用意した。実施例6のドリルは本発明に係るドリル(図1参照)であり、比較例6〜8のドリルは夫々図10(a)〜(c)に示す形状を有するものである。尚、ドリル直径φを6.5mmとした理由は、ドリル先端が後述する金属板(厚さ3mm)を貫通する前に、外周刃が金属板に達するようにするためである。
表8に示す3種類のドリル(直径φ8.2mm)を用意した。実施例7のドリルは本発明に係るドリル(図8参照)であり、比較例9のドリルは特願2010−203777号(本出願人の先願)に記載されたドリル、比較例10のドリルは前記特許文献2に記載されたドリルである。尚、材質による性能の違いは殆どない。実施例6のドリルは、シンニングを入れる砥石とドリル軸心の傾き角は27.5°(20〜35°の中間値)とし、砥石の接線に沿ってドリルのシンニングを行った(シンニング角度(図4参照)θ=0°)
先ず、上記3種類のドリルを用いて1穴ずつ穴あけを行い、ドリルの切れ味を確認した。結果を表9に示す。
2 主切刃
3 逃げ面
4 チゼル
5 主切刃により形成されたすくい面
6 シンニングにより形成されたすくい面
A 主切刃の長さ
B シンニング切刃の長さ
R ドリル半径
θ1 主切刃により形成されたすくい角
θ2 シンニング切刃により形成されたすくい角
α1 主切刃により形成された刃先角
α2 シンニング切刃により形成された刃先角
β 逃げ角
R1 主切刃によるすくい面を形成する半径
R2 シンニングによるすくい面を形成する半径
W チゼル幅
θ シンニング形成時にドリルを砥石に当てる角度
Claims (3)
- 回転軸対称に形成された2つの切刃を有し、先端部にシンニングが施されているドリルであって、
前記切刃が、ドリル先端側から見たとき、チゼルエッジからドリル外周側に向けて曲線を含む形状に延びるシンニング切刃と、前記シンニング切刃の端部からドリル外周端まで直線状に延びる主切刃とからなり、
前記主切刃の延びる方向における切刃長さが、前記主切刃の長さをA、前記シンニング切刃の長さをBとしたとき、0<A≦Bを満たし、
前記主切刃により形成されたすくい角θ 1 と、前記シンニング切刃により形成されたすくい角θ 2 が、θ 1 >θ 2 >0°を満たすことを特徴とするドリル。 - 前記主切刃により形成された刃先角α1と、前記シンニング切刃により形成された刃先角α2が、α1<α2<90°を満たすことを特徴とする請求項1記載のドリル。
- 逃げ角βが0°<β≦4°を満たすことを特徴とする請求項1又は2記載のドリル。
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