JP4831553B2 - 1,2−ジクロルエタンを製造する方法と設備 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、液相でエチレンと塩素とを反応させ(直接塩素化)製造された1,2−ジクロルエタンから高沸点留分を高沸点成分蒸留塔内でそして次に真空蒸留塔内で分離し、その際に熱の回収及び蒸留塔の溜液の加熱のために、直接塩素化段階からの1,2−ジクロルエタンを、その都度その時の溜液生成物と間接的に熱交換する熱交換器にその都度導く、1,2−ジクロルエタン(EDC)の製造方法、および直接塩素化反応器、この反応器の下流の高沸点成分蒸留塔およびこの高沸点成分蒸留塔の後に配置する真空蒸留塔を備え、その際蒸留塔の溜液を加熱するために一つの熱交換器がそれぞれ配備されており、該熱交換器には直接塩素化反応器からの1,2−ジクロルエタンが加熱媒体として導入されている、上記方法を実施するための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
気相で1,2ジクロルエタン(EDC)から塩化ビニール(VCM)を得ることは塩化水素(HCL)の脱離によって行われる。その場合、この気相では塩化水素を接触的に脱離または熱的に脱離することが原理的に考えられる。しかし、塩化水素の接触的脱離を実際に用いることは触媒の寿命が短すぎるため今まで成功していない
【0003】
そのため、純粋な乾燥した1,2ジクロルエタンを熱分解炉中で約500℃で脱離して塩化ビニールと塩化水素にする熱的な脱離法が行われてきた。この場合、1,2ジクロルエタンの通常の分解率は50〜65%の間にある。熱的脱離で未転化の1,2ジクロルエタンは、塩化水素を吸熱的に脱離する時に生じる不純物を含む。次いで、脱離した塩化水素他のプロセス工程、所謂オキシ塩素酸化(Oxihydrochlorierung ) の工程でエチレンと酸素を用いて1,2ジルロルエタンに転化される。
【0004】
熱分解に必要な残りの1,2ジクロルエタンは、所謂、直接的塩素化法によりエチレンと塩素を液状の1,2ジクロルエタン中で反応させることによって製造される。この反応は発熱的であり、反応温度を維持するために著しい冷却用電力が必要である。
【0005】
熱分解炉に導入される1,2ジクロルエタンの純度は、一方で熱分解管を汚す副反応を抑制するため、また他方で塩化ビニールを高品質にするため、非常に高くなっていなければならない。それ故、熱分解炉で未転化の1,2ジクロルエタン、オキシ塩素酸化からの1,2ジクロルエタン、および、必要であれば、直接塩素化段階からの1,2ジクロルエタンは電力経費のかかる1,2ジクロルエタンの蒸留で精製される。
【0006】
この方法では、直接的塩素化反応器が冷却エネルギに対する最大の消費体の一つであり、高沸点成分を分離する蒸留塔がEDC/VCM−装置内の加熱エネルギに対する最大の消費体の一つである。それ故、経済性の検討からエネルギ消費を低減するため既に幾つかの方法が提案されている。これ等の方法では直接的塩素化の反応熱が直接または間接加熱によるEDC蒸留の加熱のために利用されるか、あるいはEDCの蒸留で蒸気の凝縮を伴う精留原理を使用して加熱エネルギが節約されているが、これ等の方法には実質上以下の難点がある。
【0007】
直接的塩素化反応生成物蒸気を高沸点成分蒸留塔の溜液中に入れ、これにより高沸点成分蒸留塔を直接的に加熱することは、例えばドイツ特許出願公開第 29 35 884 A1 号明細書あるいはドイツ特許出願公開第 24 27 045 A1 号明細書により原理的に知られている。しかし、これは高沸点成分蒸留塔の直径や還流冷却器の面積を非常に大きくする必要があることになる。何故なら、装置毎に外部冷却なしで発熱的沸騰反応を行なった場合には、直接塩素で新たに生成され1,2ジクロルエタン大量蒸発さ、加えて他の1,2ジクロルエタンの流れと一緒に高沸点成分蒸留塔内で精留さるからである。更に、同時に高沸点成分蒸留塔の溜液から液状の1,2ジクロルエタン(直接塩素反応内で新たに生成された大量のジクロルエタンも)を反応に戻す必要があるので、必ず反応高沸点の副産物の濃度が上昇し、これが一方で触媒作用に対して不利に作用し、更に他方で他の副産物の生成も促進し、これが結局収率の悪化となることが難点である。このため、溜液中の高沸点成分の濃度がここでは 90 %以上であるので、直接塩素化反応の反応熱はEDCの蒸留の真空蒸留塔を直接加熱するために利用できない
【0008】
この直接加熱の外に、高温の反応器循環1,2ジクロルエタン又は直接塩素反応からの蒸気状の1,2ジクロルエタンによりEDC蒸留蒸留塔のリボイラーを加熱する同類の間接加熱方法も知られている。この目的のために、例えばドイツ特許出願公開第 41 33 810 A1 号明細書、ドイツ特許出願公開第 40 39 960 A1 号明細書あるいは欧州特許第 0 075 742 B1 号明細書に開示されているこれ等の方法では、熱交換として自然循環蒸発装置が使用されている。このことが既存の材料系の場合に、1,2ジクロルエタンが、問題ない加熱ため約 20 〜 25 ℃の運転温度差を保証すること必要とさせる。このことが以下の不利な結果をもたらす: 反応熱を間接的に自然循環蒸発に移せるように、EDC蒸留の蒸留塔の溜液温度に比べて反応の反応温度をかなり高くしなければならない。これは、塩素やエチレンの収率を悪化させ、副産物の生成を多くする。
【0009】
反応の反応熱は反応温度が比較的に低い場合でもEDC蒸留リボイラーへ搬出される。勿論、その時には蒸留塔を真空にする必要がある。これは、取り分け高沸点成分蒸留塔の直径や回収凝縮を非常に大きくし、真空を維持するためのエネルギの必要量多くする必要があるという結果をもたらす。これも、この方法の経済性に不利に作用する。
【0010】
最後に、蒸気凝縮器を用いる精留方法も知られている。この場合、高沸点成分蒸留塔のヘッド蒸気は、圧縮機および同じ蒸留塔の溜液用加熱器の加熱媒体としての該蒸気の使用によって凝縮される(ドイツ特許出願公開第 34 40 685 A1 号明細書)。しかし、回転部分のある圧縮機を使用する必要がある。この圧縮器は原価を高くし、かつ、維持費やスペヤーパーツの費用の原因となる。その場合、高沸点成分用蒸留塔の所で蒸気と冷却水の経費を節約するが、これには電力経費を著しく大きくする。更に、他の難点として上記の構想では直接塩素化反応器の反応熱ことが配慮されていない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
それ故、この発明の課題は、直接塩素の反応エンタルピーを可変的に利用でき、そのために従来の技術に見られるジクロルエタンを製造する方法及び設備の難点を甘受する必要のない解決策を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は、この発明により、冒頭に述べた種類の方法において、蒸留塔の溜液を加熱するために、少なくとも一つの降下流式蒸発器を使用し、この降下流式蒸発器の上側の液体分配器に、そのときどきの溜液生成物を導入することによって解決される
【0013】
更に、上記の課題は、この発明により、冒頭に述べた種類の設備にあって、該熱交換器が降下流式蒸発器(16,17)として形成されていることによって解決される
【0014】
この発明による他の有利な実施態様は特許請求の範囲の従属請求項に記載されている。
【0015】
【発明の実施の形態】
降下流蒸発他の用途目的で基本的に知られていて、温度差が大きくても、また理論的に任意の小さな温度差でも運転できる点で優れている。そのような降下流蒸発では、液体や蒸気が並行流となって下へ流れる。加熱面を液体で均一にしかも充分加湿することが乱れのない運転にとって重要な役割を果たす。EDC蒸留塔の溜の汚れが降下流蒸発精密な液体分配部分的に詰まらせ、そしてそれによって加熱管の不均一な液体分配となることを恐れて、今まで専門分野ではEDC蒸留で降下流蒸発溜液加熱として使用することに対して偏見があった。つまり、降下流蒸発内の不均一な液体配分は詰まり個所、即ち閉塞部をもたらし、そして個々の管完全に詰まることになる。
【0016】
驚くことに、小さい温度差で運転される降下流蒸発を使用すると、物質の移動に関しても有利であることが分かった。つまり、熱流密度が低い場合の分離作用は所定の熱流の時に大部分の易揮発性成分が蒸気相に移行するように改善されることがわかった。これは、取り分け真空蒸留塔を運転するのに重要な特徴である。何故なら、このようにすると、真空蒸留塔の排出溜液中の生成物(=EDC)の割合が低減するからである。この排出溜液は大部分高沸点成分であり、残留物焼却によって処理なければならない。
【0017】
更に、存在する上記の偏見に反して、驚くべきことに、降下流式蒸発器の加熱面の対汚れ抵抗は従来に使用されてきた自然循環蒸発器に比べて小さいことも分かった。通常、産業上の溜液蒸発器は、分離ユニットの所定の外部収支の時に、大抵一定の熱流で運転されている。汚れのために熱通過係数が小さくなると、系は運転時の温度差を大きくすることで対応する。加熱蒸気圧の時間的経過は熱伝達面上での被覆物形成の進行も暗示する。自然循環蒸発器と降下流式蒸発器との汚れ抵抗を比較すると、時間経過が定性的に同じことを説明しているが、絶対的な数値は降下流型蒸発器の場合に小さいこと示した。
【0018】
この発明による方法の上記の利点の外に、本発明の方法は環境保護にも寄与している。何故なら、真空蒸留塔の溜液中により多くの1,2ジクロルエタンを回収でき、そして蒸発の熱伝導面の汚れが少ないからである。更に、装置ユニット当たりに一つの降下流蒸発を用いると、従来に使用していた自然循環蒸発よりも著しく大きい熱伝導面を実現できる。これは、大規模な設備で実施する場合に、EDC蒸留塔の溜液加熱がただ一つの降下流蒸発装置で行えるのに、自然循環蒸発を使用する場合には多数の装置を必要とすることを意味する。これは投資コストや所要占有場所を節約する。更に、降下流蒸発は自然循環蒸発に比べて液体容量が少なく、それ故に大変自然な制御特性がある。これも、真空蒸留塔の排出溜液で低沸点成分(=EDC)の残留濃度を小さくするので非常に有利である。
【0019】
他の有利な実施態様においては、直接塩素が 75 〜 125℃の温度と 0.8〜 3バールの圧で行われる。蒸留塔蒸発(降下流蒸発)内の蒸発は加熱すべき蒸留塔の溜液の圧力より最大で 50 ミリバール大きいだけにすぎない。更に、蒸発側の熱移動係数は運転温度差に殆ど無関係である(加熱すべき蒸留塔の溜液圧力が指定されている場合、3℃と 25 ℃の運転温度差の蒸発側の熱移動係数の差は3%より小さい)。
【0020】
本発明は、本発明の方法を実施する請求項3の上位概念の装置であって、熱交換器が降下流式蒸発器として形成されていることを特徴とする、上記装置にも関する。
【0021】
【実施例】
以下、好適実施例に基づき図面を参照して本発明の方法を更に詳細に説明する。図1には、この発明の方法を実施するための設備のうちで主要な部分のみが示してある。
【0022】
EDC蒸留では、オキシ塩素酸化からのEDCと熱分解炉からの未転化EDCとを多大なエネルギを必要とするEDC蒸留で精製する。必要な場合、直接塩素化からのEDCもこのEDC蒸留で精製する
【0023】
オキシ塩素酸化のEDCから、図示していない脱水蒸留塔・低沸点成分蒸留塔で先ず水と低沸点成分を分離る。次いで、高沸点成分を含むオキシ塩素酸化のEDCは導管1を経由して高沸点成分蒸留塔2に導入される。図示していない熱分解炉からの未転化EDCも高沸点成分を含み、導管3を介して高沸点成分蒸留塔2に導入される。この高沸点成分蒸留塔2内では、導入された物質流が蒸留分留される。
【0024】
精製されたEDCは高沸点成分蒸留塔2の頭部で導管4を介して排出され、熱交換5内で凝縮され、導管6または導管7を経由して純粋なEDCとして得られる。戻し流は導管8を経由して高沸点成分蒸留塔2にされる。
【0025】
高沸点成分蒸留塔の溜液は高沸点成分リッチになる。導管8を経由して溜液の流れを真空蒸留塔9に導入することによって、高沸点成分蒸留塔2の溜液の精製度を高めることができる。精製されたEDCは真空蒸留塔9の頭部で導管10を経由して取り出され、熱交換11で凝縮され、導管12を経由して純粋なEDCとして得られる。戻し流は導管13を介して真空蒸留塔へ導入される。
【0026】
真空蒸留塔9の取出溜液14は高沸点成分と少量のEDCとよりなる
【0027】
この発明によれば、蒸留塔2,9の加熱は以下の通りである。即ち、導管15を経由してEDCの液体流かEDCの蒸気流は図示していない直接塩素反応から高沸点成分蒸留塔2の溜液加熱に使用する降下流蒸発16と真空蒸留塔9の溜液加熱に使用する降下流蒸発17へ加熱媒質として導入して排出される。高沸点成分蒸留塔の溜液18からおよび真空蒸留塔の溜液19からそれぞれ液体が降下流蒸発16または17の頭部にある特別な液体分配器20に供給される。この液体分配器20は汚れが生じた時に不均一な液体配分となって詰まり個所、即ち閉塞部をもたらし、そして個々の管の詰まりが生じないように設計されている。
【0028】
蒸発本体の頭部から液体がそれぞれ重力のため降下流蒸発16,17の加熱管の内側に均一に分配されて沸騰する膜となって流れ、そしてその際に一部蒸発される。加熱側の平均温度21または22および蒸留塔2または9の溜液温度23または24として定義される蒸発の有効運転温度差は任意に小さくでき、自然循環蒸発の場合のように小さい温度差に関する制限を受けない。
【0029】
以下、図面を参照して特別な方法例に基づきこの発明を説明する。
【0030】
実施例1
導管3を介して図示していない熱分解炉からの未転化EDCを 23.1 to/h(毎時トン)および導管1を介してオキシ塩素酸化からのEDCを 16.2 to/h高沸点成分蒸留塔2に導入した。両方の流れは高沸点成分を含み、蒸留分留する必要があった。
【0031】
この場合、蒸留塔2の溜温度は圧力が 1.5バールの時に 100℃であり、頭部の温度は 1.2バールの時に 87 ℃であった。蒸留塔2をR= 0.5の還流比で運転した。
【0032】
降下流蒸発16には、加熱のために、導管15により図示していない直接塩素反応からのEDC液体流を導入した。この場合、循環量は 870 to/h で、流れ温度は 115℃で、還流温度は 103℃であった。
【0033】
実施例2
蒸留塔2を実施例1と同じ条件で運転したが、この場合には降下流蒸発16を加熱するため図示していない直接塩素反応のEDC蒸気流を使用した。降下流蒸発16への導入導管15では凝縮されるEDC蒸気の運転条件は 108℃で、1.9 バールであり、全体として 50.5 to/hのEDC蒸気が流れた。
【0034】
実施例3
導管8を介して 2.8 to/h の高沸点成分を含むEDCを真空蒸留塔9に導入した。この場合、蒸留塔9の溜液温度は圧力 0.4バールで 89 ℃であり、頭部の温度は圧力 0.26 バールで 45 ℃であった。この場合、蒸留塔9は 1.0の還流比で運転した。真空蒸留塔の溜液流14は 0.3 to/h の高沸点成分よりなり、3%のEDCしか含んでいなかった。降下流蒸発17には加熱のために導管15により直接塩素反応のここには図示していない圧力開放容器からのEDC蒸気を導入した。
【0035】
降下流蒸発17の導入導管15では、凝縮するEDC蒸気の運転条件は 98 ℃で、 1.6バールで、全部で 8.1 to/h のEDC蒸気が流れた。
【0036】
当然なことであるが、この発明は図示する実施例に限定されない。基本的な構想から逸脱することなく他の態様も可能である。
【0037】
【発明の効果】
以上、説明したように、この発明による方法と設備により、直接塩素化の反応エンタルピーを可変して利用でき、そのために従来の技術に見られるジクロルエタンを製造する方法と設備の欠点を甘受する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明による方法を実施する設備の単純化された処理流れ図である。
【符号の説明】
1,3,4,6,7,8,10,12,13,15 導管
2,18 高沸点成分蒸留塔
5,11 熱交換機
9,19 真空蒸留塔
14 取出溜液
16,17 降下流蒸発
20 液体分配
21,22 加熱側の平均温度
23,24 蒸留塔の溜液温度

Claims (3)

  1. 液相でエチレンと塩素とを反応させ(直接塩素化)て製造された1,2ジクロルエタンから高沸点溜分を高沸点成分蒸留塔内そして次に真空蒸留塔内で分離し、その際に回収及び蒸留塔の溜液の加熱のために、直接塩素化段階からの1,2−ジクロルエタンをその都度その時の溜液生成物と間接的に熱交換する熱交換にその都度導く、1,2ジクロルエタン(EDC)の製造方法において、
    蒸留塔の溜液を加熱するために、少なくとも一つの降下流蒸発を使用し、この降下流蒸発の上側の液体分配器に、そのときどきの溜液生成物を導入することを特徴とする方法。
  2. 直接塩素化を75〜125℃の温度で、0.8 〜3 バールの圧力で行う、請求項1に記載の方法。
  3. 直接塩素反応器、この反応器の下流の高沸点成分蒸留塔およびこの高沸点成分蒸留塔の後に配置する真空蒸留塔備え、その際蒸留塔の溜液を加熱するために一つの熱交換器がそれぞれ配備されており該熱交換器には直接塩素反応からの1,2ジクロルエタンが加熱媒体として導入されている、請求項1または2の方法を実施する装置において、
    熱交換が降下流蒸発(16,17)として形成されていることを特徴とする、上記装置
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