JP4830406B2 - 導電性繊維 - Google Patents

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Description

本発明は、基材繊維が金属で被覆された繊維であって、金属被膜の耐久性に優れ、かつ紡績等の加工に耐えうる繊維物性を有する導電性繊維および該導電性繊維を含有する繊維構造体に関する。
繊維への導電性付与の方法については、これまでいくつかの技術が提案されている。例えば、繊維に導電性フィラーを含有せしめる方法(特許文献1、2)、繊維に金属被膜を形成せしめる方法(特許文献3、4)、繊維を導電性樹脂でコーティングする方法(特許文献5)などである。
一方、繊維としては紡績などの加工に耐えうる繊維物性を備えている必要がある。しかしながら、繊維に金属被膜を形成せしめる方法では、繊維が金属の薄膜で覆われるため繊維が本来備えておくべき伸度や結節強度が損なわれてしまうという問題を有している。さらに、該方法により得られた導電性繊維は金属被膜の耐久性が乏しく、繰り返し洗濯することなどにより導電性が低下するという問題も有している。繊維物性や洗濯耐久性の問題に対し、繊維に導電性フィラーを含有せしめる方法を開示する特許文献1では、導電性フィラーであるカーボンブラックを繊維中に均一に含有せしめることにより、繊維物性に優れた導電性繊維を得ているが、かかる開示は繊維に金属被膜を形成せしめる方法により得られた導電性繊維の問題を解決するものではない。
特開2002−138323号公報 特開2003−313727号公報 特開平5−186967号公報 特開2001−40578号公報 特開昭63−308804号公報
上述したように基材繊維に金属被膜を形成せしめる方法では、繊維が金属の薄膜で覆われるため繊維が本来備えておくべき引張伸度や結節強度が損なわれ、金属被膜の耐久性も乏しく、繰り返し洗濯することなどにより導電性が低下するという問題を有している。本発明はかかる問題を解決し、金属被膜の耐久性に優れ、繊維物性に優れた導電性繊維および該導電性繊維を含有する繊維構造体を提供することを目的とする。
本発明の上記目的は、以下の手段により達成される。すなわち、
[1]架橋構造を有し、かつカルボキシル基を有する基材繊維に金属被膜を形成すべき金属の金属イオン及び/又は金属錯イオンを導入した後、該イオンを還元糖類により還元し金属被膜を形成せしめた繊維であり、かつ該繊維の引張伸度と結節強度の積が12以上であることを特徴とする導電性繊維。
[2]10回洗濯後の単糸の体積抵抗率が10Ω・cm以下であることを特徴とする[1]に記載の導電性繊維。
[3]20℃65%RHにおける飽和吸湿率が5重量%以上であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の導電性繊維。
[4]金属被膜を形成せしめた後、防錆剤による防錆加工処理を施したことを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の導電性繊維。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載の導電性繊維を含有することを特徴とする繊維構造体。
本発明によれば、基材繊維に金属を被覆した繊維でありながら、金属被膜の耐久性に優れ、かつ紡績等の加工に耐えうる繊維物性を有した導電性繊維を得ることができ、該繊維を用いた様々な用途の繊維構造体を作製することができる。
以下、本発明を詳述する。本発明の導電性繊維は、基材繊維が金属で被覆されており、かつ引張伸度と結節強度の積が12以上である必要がある。引張伸度と結節強度の積が12未満の場合、紡績等の繊維加工に対する耐久性に乏しく、用途が制限されるため実用的でない。また、基材繊維を金属で被覆する方法として、架橋構造を有し、かつカルボキシル基を有する繊維を用い、該繊維に金属被膜を形成すべき金属イオン及び/又は金属錯イオンを導入し、該イオンを還元糖類により還元し、該繊維を金属被覆する方法が採用される
本発明の導電性繊維は、10回洗濯後の単糸の体積抵抗率が10Ω・cm以下であることが望ましい。洗濯を必要としないような用途であれば、該抵抗率が10Ω・cm以上であっても用いることができるが、用途が制限されるため10Ω・cm以下、好ましくは10−1Ω・cm以下、より好ましくは10−2Ω・cm以下であることが望ましい。なお、当然ではあるが、洗濯前の体積抵抗率も10Ω・cm以下、好ましくは10−1Ω・cm以下、より好ましくは10−2Ω・cm以下であることが望ましい。
さらに本発明の導電性繊維は、20℃65%RHにおける飽和吸湿率が5重量%以上であることが望ましい。かかる吸湿率を有していることにより、一般の繊維と同様の数多くの用途に用いることができる。
ここで、本発明の導電性繊維の基材繊維として採用しうる繊維としては、架橋構造を有し、かつカルボキシル基を有する繊維である限り特に限定されるものではないが、本発明の導電性繊維の20℃65%RHにおける飽和吸湿率が5重量%以上であることが望ましいことから、基材繊維もかかる飽和吸湿率以上の吸湿率を有するものが好ましく、例えば、アクリル酸系モノマーと、これと架橋結合を形成しうる官能基を有するモノマーとを重合させて得られるポリマーを紡糸し、架橋処理した架橋アクリル酸塩系繊維、アクリル系繊維にヒドラジンによる架橋を導入し、加水分解処理によりカルボキシル基を導入した架橋アクリル系繊維などが挙げられる。特に、カルボキシル基を有する架橋アクリル系繊維は、繊維の種々の加工にも耐えうる繊維物性を有しながら、吸湿性も有しているので好ましい。
以下、カルボキシル基を有する架橋アクリル系繊維を一例として本発明の導電性繊維を製造する方法を詳述する。カルボキシル基を有する架橋アクリル系繊維とは、アクリル系繊維にヒドラジン系化合物による架橋導入処理およびアルカリ性金属塩水溶液による加水分解処理を施すことによって得られるものであり、通常、以下のようにして製造することができる。
まず、架橋アクリル系繊維の出発原料となるアクリル系繊維としてはアクリロニトリル(以下ANという)を40重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは80重量%以上含有するAN系重合体により形成された繊維であればよい。形態としては、短繊維、トウ、糸、編織物、不織布等いずれの形態のものでもよく、また、製造工程中途品、廃繊維などでもかまわない。AN系重合体はAN単独重合体、ANと他の単量体との共重合体のいずれでもよいが、AN以外の共重合成分としてはメタリルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸等のスルホン酸基含有単量体及びその塩、(メタ)アクリル酸、イタコン酸等のカルボン酸基含有単量体及びその塩、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド等の単量体など、ANと共重合可能な単量体であれば特に限定されない。
該アクリル系繊維は、ヒドラジン系化合物により架橋導入処理され、アクリル系繊維の溶剤では最早溶解されないという意味で架橋が形成されて架橋アクリル系繊維となり、同時に結果として窒素含有量の増加が起きる。架橋導入処理の手段としては特に限定されるものではないが、この処理による窒素含有量の増加を好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは1〜10重量%に調整しうる手段が望ましい。なお、窒素含有量を0.1〜10重量%に調整しうる手段としては、ヒドラジン系化合物の濃度5〜60重量%の水溶液中、温度50〜120℃で5時間以内で処理する手段が工業的に好ましい。
ここで使用するヒドラジン系化合物としては、特に限定されるものではなく、ヒドラジンヒドラート、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、臭素酸ヒドラジン、ヒドラジンカーボネ−ト等の他に、エチレンジアミン、硫酸グアニジン、塩酸グアニジン、リン酸グアニジン、メラミン等のアミノ基を複数含有する化合物が例示される。
かかるヒドラジン系化合物による架橋導入処理を経た繊維は、該処理で残留したヒドラジン系化合物を十分に除去した後、酸処理を施しても良い。ここに使用する酸としては硝酸、硫酸、塩酸等の鉱酸や有機酸等が挙げられるが、特に限定されない。該酸処理の条件としては、特に限定されないが、大概酸濃度5〜20重量%、好ましくは7〜15重量%の水溶液に、温度50〜120℃で0.5〜10時間被処理繊維を浸漬するといった例が挙げられる。
ヒドラジン系化合物による架橋導入処理を経た繊維、或いはさらに酸処理を経た繊維は、続いてアルカリ性金属塩水溶液により加水分解処理される。この処理により、アクリル系繊維のヒドラジン系化合物による架橋導入処理に関与せずに残留しているニトリル基、又は架橋導入処理後酸処理を施した場合には残留しているニトリル基と一部酸処理で加水分解されて生成しているアミド基の加水分解が進行し、カルボキシル基が形成される。なお、形成されるカルボキシル基は、加水分解処理に使用されるアルカリ性金属塩由来の金属イオンと結合するので、大部分が金属塩型カルボキシル基である。ここで使用するアルカリ性金属塩としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩等が挙げられる。加水分解処理の条件は特に限定されないが、好ましくは1〜10重量%、さらに好ましくは1〜5重量%の水溶液中、温度50〜120℃で0.5〜10時間以内で処理する手段が工業的、繊維物性的に望ましい。
加水分解を進める程度、即ち、カルボキシル基の生成量は0.5〜10mmol/g、好ましくは0.5〜8.0mmol/g、より好ましくは1.0〜5.0mmol/gで好結果が得られやすく、これは上述した処理の際の薬剤濃度、処理温度、処理時間などの組み合わせで容易に制御できる。カルボキシル基の生成量が10mmol/gを超える場合には、基材繊維として用いる架橋アクリル系繊維自身の繊維物性が悪くなる場合があり、0.5mmol/g未満では、基材繊維に形成せしめる金属被膜の金属の金属イオン及び/又は金属錯イオンを該繊維に導入する際、導入できるイオンの量が少なくなるため十分な金属被膜が形成されない場合がある。
なお、本発明の導電性繊維において、基材繊維として推奨される架橋アクリル系繊維としては、上述した架橋導入処理、酸処理、加水分解処理以外の処理を施したものであってもかまわない。
次に、かかる架橋アクリル系繊維に、金属被膜を形成せしめる金属の金属イオン及び/又は金属錯イオンを導入、すなわち、該繊維中のカルボキシル基をかかる金属の金属塩型及び/又は金属錯塩型のカルボキシル基とする。かかるイオンの導入方法としては、カルボキシル基を有する架橋アクリル系繊維を、金属被膜を形成せしめる金属の金属イオン及び/又は金属錯イオンを含む水溶液に浸漬する方法が好ましい。かかるイオンとしては、ニッケル、コバルト、銅、鉛、銀、金及びそれらの合金などの硫酸塩、硝酸塩、塩化物等の金属化合物を水溶液にして得られる金属イオンや、該金属イオンに酢酸、グリコール酸、クエン酸、酒石酸などの有機酸のアルカリ塩或いはチオグリコール酸、アンモニア、ヒドラジン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、グリシン、o-アミノフェノール、ピリジンなどを加えて得られる金属錯イオンが挙げられる。特に、高い導電性が要求される場合には、銀で被覆することが好ましいことから、硝酸銀の水溶液を用い銀イオン及び/又は銀錯イオンを導入することが好ましい。
導入された金属イオン及び/又は金属錯イオンは、後述する還元処理により繊維表面に金属被膜を形成することになるため、その導入量によって、被覆金属の導電性繊維に対する含有率が変わり、金属被覆された繊維の引張伸度、結節強度、導電性、洗濯耐久性などの特性が影響を受ける。しかし、基材繊維の繊度によって繊維重量あたりの表面積が異なるため、金属イオンや金属錯イオンの導入量が同じであっても、繊度によって被覆金属の導電性繊維に対する含有率も異なる。従ってかかるイオンの好ましい導入量は使用する基材繊維の繊度によって異なるが、例えば0.4〜4.0dtexの繊維であれば、基材繊維1gあたり1.5〜3.5mmolで好ましい結果が得られやすい。
金属イオン及び/又は金属錯イオンの導入処理条件は、特に限定されないが、例えば、0.4〜4.0dtexの繊維に上記の好ましい導入量の金属イオンおよび/または金属錯イオンを導入する場合であれば、基材繊維1gあたり1.5〜3.5mmolの金属イオン及び/又は金属錯イオンが存在する水溶液中、温度10〜50℃で、1〜5時間以内で処理する手段が工業的に好ましい。
続いて、金属イオン及び/又は金属錯イオンを導入したカルボキシル基を有する架橋アクリル系繊維に金属被膜を形成せしめるため、該繊維を還元剤により還元処理する。還元処理においては、その処理条件、特に金属被膜の成長速度を調整することによって良好な金属被膜が形成される。還元処理では、その開始直後に基材繊維表面に金属粒子の核が生成し、これが成長することで金属被膜が形成されるが、このとき、処理温度が高すぎたり、高い反応性を有する還元剤を使用したり、還元剤濃度が高すぎたりすると被膜の成長速度が速すぎて基材繊維表面に超微粒子の金属粒子核が多数成長してしまい密着性に優れた緻密な金属被膜が得られにくい。一方、適度な成長速度で還元処理したものは、処理開始直後に基材繊維表面に生成した金属粒子を核として、その金属粒子の形状を保って徐々に成長するので、密着性に優れた緻密な金属被膜が得られやすい。
以上の点から、還元剤としては、基材繊維に導入された金属イオン及び/又は金属錯イオンを還元し、適度な反応速度で還元するものを用いることが好ましい。このような還元剤として、本発明においては、グルコース(ぶどう糖)、サッカロース(ショ糖)などの還元糖類が採用される
更に好ましくは、グルコースを用いることで、より優れた洗濯耐久性を与えることができる。例えば、銀イオンを導入したカルボキシル基を有する架橋アクリル系繊維をグルコースを用いて還元処理する場合、該繊維を1〜30%、好ましくは5〜20%のグルコース水溶液に、温度10〜80℃、好ましくは20〜60℃で30分以上浸漬して処理することにより、優れた洗濯耐久性を有する本発明の導電性繊維が得られる。
かくして、本発明の導電性繊維が得られるが、さらに、繊維表面に形成された金属被膜に防錆処理等の表面処理を施したものでもよい。防錆処理を施すことにより金属の密着性の低下を防止することができる。これらの防錆剤としては、被覆した金属に対応した市販の防錆剤、防食剤、変色防止剤などを用いることができ、特に制限されるものではない。例えば、銀の場合は、銀変色防止剤や非鉄金属用防食剤など、銅の場合は、銅変色防止剤や非鉄金属用防食剤など用いることができる。
本発明の導電性繊維は、紡績等の加工に耐えうる繊維物性及び高い洗濯耐久性を有するので、織物材料、編物材料または不織布などの布地材料として、テキスタイルや衣料品の布材に適用できる。また、本発明の導電性繊維は布地材料などに限らず、その導電性を利用して導電紙、電磁波シールド材、無塵服や手袋、靴、カバー、作業服など静電防止材料、あるいは電極や電線の軽量化を図る代替材料としても用いることができる。また、銀などの抗菌性を有する金属を被覆したものは抗菌繊維および抗菌材料としても利用することができる。具体的な用途としては、抗菌性の靴下、下着、上着、白衣、寝具、シーツ、ナプキン、手袋、シャツ、ズボン、エプロン、紙袋、布巾あるいは作業着などが挙げられる。
以下実施例により本発明を具体的に説明する。本発明は、これらの実施例の記載によってその範囲を何等限定されるものではない。実施例中の部及び百分率は、断りのない限り重量基準で示す。なお、体積抵抗率、飽和吸湿率、カルボキシル基量は、以下の方法により求めた。
(1)引張伸度(%)
JIS L 1015 8.7引張強さ及び伸び率 8.7.1標準時試験に従い、伸び率として算出された値を、引張伸度(%)とした。
(2)結節強度(cN/dtex)
JIS L 1015 8.8結節強さ 8.8.1標準時試験に従い、結節強さとして算出された値を、結節強度(cN/dtex)とした。
(3)体積抵抗率(Ω・cm)
20℃、40%RHの雰囲気中で、導電性繊維の単糸1本を伸長せずにまっすぐに伸ばし、両端に電極を接続し、デジタルマルチメーターで端子間抵抗値(Ω)を測定した。次いで、単糸の繊維長(cm)と断面積(cm)から、体積抵抗率(Ω・cm)を算出した。単糸の繊維長は、単糸1本を伸長せずにまっすぐに伸ばし、置尺上で繊維長を測定した。断面積は、導電性繊維断面の電子顕微鏡写真より測定した。
(4)飽和吸湿率(%)
試料繊維約5.0gを熱風乾燥機で105℃、16時間乾燥して重量を測定する(W1g)。次に試料を温度20℃で65%RHの恒湿槽に24時間入れておく。このようにして飽和吸湿した試料の重量を測定する(W2g)。以上の測定結果から、次式によって算出した。
飽和吸湿率(%)={(W2−W1)/W1}×100
(5)カルボキシル基量(mmol/g)
十分乾燥した試料繊維約1gを精秤し(Xg)、これに200mlの水を加えた後、50℃に加温しながら1mol/l塩酸水溶液を添加してpH2にし、次いで0.1mol/l水酸化ナトリウム水溶液で常法に従って滴定曲線を求めた。該滴定曲線からカルボキシル基に消費された水酸化ナトリウム水溶液消費量(Yml)を求め、次式によってカルボキシル基量(mmol/g)を算出した。
カルボキシル基量(mmol/g)=0.1Y/X
(6)洗濯耐久性(Ω・cm)
試料繊維をJIS L0217 番号103(洗剤は花王株式会社製アタック(登録商標)使用)に記載の方法で10回繰り返し洗濯処理した後、(3)の方法で単糸の体積抵抗率を測定した。
(実施例1)
AN90%、アクリル酸メチル10%からなるAN系重合体(30℃ジメチルホルムアミド中での極限粘度[η]:1.2)10部を48%のチオシアン酸ナトリウム水溶液90部に溶解した紡糸原液を、定法に従って紡糸、延伸した後、乾燥して、短繊維繊度3.3dTexの原料繊維を得た。該原料繊維をヒドラジンヒドラート15%水溶液に浴比1:10で浸漬し、110℃で1時間架橋導入処理を行った。架橋導入処理後の窒素増加量は、1.0%であった。なお、窒素増加量は、原料繊維と架橋導入処理後の繊維について元素分析で窒素含有量を求め、その差から算出した。次いで架橋導入処理後の繊維を水酸化ナトリウムの1%水溶液中で、95℃で1時間加水分解処理を行い、水洗、乾燥した。得られた繊維はカルボキシル基を1.7mmol/g含有していた。
上記で得られた繊維を3%の硝酸銀水溶液に浴比1:10として25℃で1時間浸漬し、カルボキシル基に銀イオンを導入し、水洗した。その後、水酸化ナトリウムでpH11に調整したグルコースの10%水溶液に45℃で1時間浸漬して銀イオンを還元し、繊維を銀で被覆した。銀で被覆した繊維を、非鉄金属用水溶性防錆添加剤(キレスライトCW−12:キレスト社製)を用いて防錆加工処理し、実施例1の導電性繊維を作製した。得られた繊維の引張伸度、結節強度、洗濯耐久性試験前の体積抵抗率、洗濯耐久性試験後の体積抵抗率、25℃65%RHでの飽和吸湿率を求め、表1に記載した。
(実施例2)
非鉄金属用水溶性防錆添加剤に変えて銀変色防止剤(ニューダインシルバー:大和化成製)を使用する以外は実施例1と同様にして実施例2の導電性繊維を作製した。得られた繊維の評価結果を表1に併記した。
(実施例3)
防錆処理加工を行わないこと以外は実施例1と同様にして実施例3の導電性繊維を作製した。得られた繊維の評価結果を表1に併記した。
(実施例4)
グルコースの10%水溶液に45℃で1時間浸漬する代わりにヒドラジンヒドラート2%水溶液に25℃で1時間浸漬すること以外は実施例1と同様にして実施例4の導電性繊維を作製した。得られた繊維の評価結果を表1に併記した。
(実施例5)
グルコースの10%水溶液に45℃で1時間浸漬する代わりにヒドラジンヒドラート2%水溶液に25℃で1時間浸漬すること及び防錆加工処理を行わないこと以外は実施例1と同様にして実施例5の導電性繊維を作製した。得られた繊維の評価結果を表1に併記した。
(比較例1)
実施例1で作製した原料繊維を、ヒドラジンヒドラート30%水溶液に浴比1:10で浸漬し、100℃で3時間架橋処理を行った。架橋導入処理後の窒素増加率は、1.6%であった。次いで、架橋導入処理後の繊維を水酸化ナトリウムの1%水溶液中で、95℃で3時間加水分解処理を行い、水洗、乾燥した。得られた繊維はカルボキシル基を3.0mmol/g含有していた。次に、得られた繊維を5%塩化亜鉛水溶液で、20℃、30分間処理し、基材繊維を作製した。
この繊維100gを、0.1g/l塩化パラジウム塩酸水溶液に浸漬し、5分間撹拌した後、水洗、脱水した。その後、下記めっき浴に15分間浸漬して無電解めっき処理を行い、比較例1の導電性繊維を得た。得られた繊維の評価結果を表1に併記した。
めっき浴:硫酸銅5水塩4.0g/l、酒石酸カリウムナトリウム12.5g/l、水酸化ナトリウム5.0g/l、ホルムアルデヒド水溶液36.0g/l。
Figure 0004830406

Claims (5)

  1. 架橋構造を有し、かつカルボキシル基を有する基材繊維に金属被膜を形成すべき金属の金属イオン及び/又は金属錯イオンを導入した後、該イオンを還元糖類により還元し金属被膜を形成せしめた繊維であり、かつ該繊維の引張伸度と結節強度の積が12以上であることを特徴とする導電性繊維。
  2. 10回洗濯後の単糸の体積抵抗率が10Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1に記載の導電性繊維。
  3. 20℃65%RHにおける飽和吸湿率が5重量%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性繊維。
  4. 金属被膜を形成せしめた後、防錆剤による防錆加工処理を施したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電性繊維。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の導電性繊維を含有することを特徴とする繊維構造体。
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