JP4828676B2 - 粘着付与樹脂エマルジョンの製造方法 - Google Patents

粘着付与樹脂エマルジョンの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、粘着付与樹脂エマルジョンおよびその製造方法並びに水系粘・接着剤組成物に関する。かかる本発明の粘着付与樹脂エマルジョンが配合された水系粘・接着剤組成物は、ラベル、テープ、包装、建築等の各種の用途に利用できる。
【0002】
【従来の技術】
近年、粘着製品メーカーにおいてはコストダウンや生産性向上を目的に高速塗工が検討されたり、接着剤メーカーでは作業性向上のために初期接着性の改良が試みられている。これらの検討は、大気汚染がなく、安全衛生に優れ、省資源に適する等の種々の利点を有する水系粘・接着剤分野にも及んでいる。
【0003】
しかしながら、従来の粘着付与樹脂エマルジョンを配合した水系粘・接着剤組成物では、粘着付与樹脂エマルジョンの固形分濃度が50重量%程度のものが用いられていたため水系粘・接着剤組成物の固形分濃度が低くなって、乾燥性が劣り、高速塗工に対応できない、初期接着性が不足するといった問題が生じている。
【0004】
そこで、これらの問題を解決するための方法の一つとして粘着付与樹脂エマルジョンを高濃度化することにより水系粘・接着剤組成物の固形分濃度を高めるという方法が考えられている。しかしながら、従来の製造方法により高濃度化した粘着付与樹脂エマルジョンを製造する場合には、濃度が高くなればなるほど貯蔵安定性が低下、いわゆる皮張りが著しく発生しやすくなり、取り扱いが困難になるといった問題がある。
【0005】
粘着付与樹脂エマルジョンの貯蔵安定性を向上させるために、粘着付与樹脂をアクリル系モノマーに溶解して乳化重合し、粘着付与樹脂エマルジョンを得る方法や、粘着付与樹脂エマルジョンに保護コロイドとしてアクリル系重合体エマルジョンを混合する方法が考えられるが、これらの方法ではアクリル成分を比較的多く必要とし、粘着付与樹脂成分量が大きく減少してしまうため、当該方法で得られた粘着付与樹脂エマルジョンを用いた水系粘・接着剤組成物の粘着性能は十分ではなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、貯蔵安定性が良好でかつ良好な粘着性能を付与する高濃度粘着付与樹脂エマルジョンを提供するとともに、当該粘着付与樹脂エマルジョンを配合して得られる、高固形分濃度の水系粘・接着剤組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、既存のアクリル系重合体エマルジョン、ゴム系ラテックスおよび合成樹脂系エマルジョンからなる群より選ばれる少なくとも一種のベースポリマーに粘着付与樹脂エマルジョンを配合してなる水系粘・接着剤組成物の有する前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、粘着付与樹脂を乳化剤の存在下に乳化して粘着付与樹脂エマルジョンを製造する方法において、粘着付与樹脂の乳化工程にガラス転移温度(Tg)が−70〜0℃であるポリマーを添加し、かつ粘着付与樹脂エマルジョンの固形分濃度を55重量%以上にすることを特徴とする粘着付与樹脂エマルジョンの製造方法により高濃度粘着付与樹脂エマルジョンを製造することが可能であり、該粘着付与樹脂エマルジョンならびにアクリル系重合体エマルジョン、ゴム系ラテックスおよび合成樹脂系エマルジョンからなる群より選ばれる少なくとも一種のベースポリマーを含有してなる水系粘・接着剤組成物を用いることにより前記課題を解決できる事を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、粘着付与樹脂を乳化剤の存在下に乳化して粘着付与樹脂エマルジョンを製造する方法において、粘着付与樹脂の乳化工程にガラス転移温度(Tg)が−70〜0℃であるポリマーを粘着付与樹脂100重量部に対して5〜20重量部(固形分換算)添加し、かつ粘着付与樹脂エマルジョンの固形分濃度を55重量%以上にすることを特徴とする粘着付与樹脂エマルジョンの製造方法に関する。
【0009】
本発明で使用する粘着付与樹脂は、各種公知のものを使用できる。例えばロジン類、ロジン誘導体、石油系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール樹脂、ケトン樹脂が挙げられ、これらの1種を単独で、または2種以上を混合物として使用できる。
【0010】
ロジン類とはガムロジン、ウッドロジンもしくはトール油ロジンといったロジン、または前記ロジンを用いて不均化もしくは水素添加処理した安定化ロジンや重合ロジン、さらには、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸(なお、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸および/またはメタクリル酸をいい、以下(メタ)とは同様の意味である。)等で変性した不飽和酸変性ロジン等といったものが挙げられる。
【0011】
また、ロジン誘導体としては、前記ロジン類から誘導される各種公知のものを使用できる。具体的には前記ロジン類のエステル化物、フェノール変性物およびそのエステル化物等といったものが挙げられる。
【0012】
ロジン類のエステル化物としては、前記ロジン類と多価アルコールとをエステル化反応させて得られたものをいう。多価アルコールとしては、たとえばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの2価アルコール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセリンなどの4価アルコール;ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール等が挙げられ、これらの1種を単独でまたは2種以上を組合せて使用できる。
【0013】
ロジン類のフェノール変性物、およびそのエステル化物としては、前記ロジン類にフェノール類を付加させたもの、前記ロジン類にフェノールを付加させ次いでエステル化したもの、ならびにレゾール型フェノール樹脂とロジン類を反応させて得られるいわゆるロジン変性フェノール樹脂とそのエステル化物等といったものが挙げられる。
【0014】
また、石油系樹脂とはC5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5−C9共重合系石油樹脂、ピュアモノマー樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂や、これらの水素化物等を例示できる。
【0015】
テルペン系樹脂としてはα−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂や、α−ピネン、β−ピネン等のテルペン類とスチレン等の芳香族モノマーを共重合させた芳香族変性のテルペン系樹脂等を例示できる。
【0016】
また、フェノール樹脂とは、一般にフェノール類とホルムアルデヒドの縮合物をいう。フェノール類としては、フェノール、m−クレゾール、3,5−キシレノール、p−アルキルフェノール、レゾルシンなどが挙げられ、これらとホルムアルデヒドをアルカリ触媒で付加反応させたレゾールや、酸触媒で縮合反応させて得られるノボラック等を例示できる。また、ロジンにフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂等も例示できる。
【0017】
ケトン樹脂とは、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、シクロヘキサノン、またはメチルシクロヘキサノンとホルムアルデヒドの縮合物等をいう。
【0018】
これら粘着付与樹脂の軟化点は特に限定されず、200℃以下の高軟化点のものから液状のものまで各種用途に応じて適宜選択して使用できる。
【0019】
乳化剤としては、重量平均分子量が10万以下、好ましくは5万以下の各種公知のアニオン系および/またはノニオン系乳化剤を使用できる。重量平均分子量を10万以下とすることにより乳化能の低下を防ぎ、製品粘度が高くなりすぎないため好ましい。例としてはα−オレフィンスルホン化物、アルキルサルフェート、アルキルフェニルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンアラルキルフェニルエーテルのスルホコハク酸のハーフエステル塩、ロジン石鹸等のアニオン系乳化剤や、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のノニオン系乳化剤を例示でき、これらの1種を単独でまたは2種以上を混合して使用できる。乳化剤の使用量は、通常粘着付与樹脂100重量部に対し、固形分換算で1〜10重量部程度、好ましくは1〜5重量部である。乳化剤の使用量が1重量部より少ない場合には乳化ができず、また、10重量部より多い場合には耐水性、粘着性能が低下するため好ましくない。
【0020】
また、ガラス転移温度(Tg)が−70〜0℃であるポリマー(以後低Tgポリマーと示す。)としては、アクリル系ポリマー、オレフィン系ポリマー、ゴム系ポリマーからなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。これらポリマーは粘着剤に使用されているベースポリマーと類似しているために粘着性能を良好に保つことが可能である。
【0021】
前記アクリル系ポリマーとしては、各種公知の(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする単独重合体もしくは共重合体をそのまま使用できる。使用される(メタ)アクリル酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等をあげることができる。さらに所望により本特許に逸脱しない範囲で、(メタ)アクリル酸や、酢酸ビニル、スチレン等の共重合可能なモノマーを併用することもできる。
【0022】
オレフィン系ポリマーとしては、エチレン−プロピレン共重合物、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合物、エチレン−アクリル酸エステル共重合物等が挙げられ、またゴム系ポリマーとしては、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、液状イソプレンゴム等が挙げられる。
【0023】
これら低Tgポリマーのガラス転移温度(Tg)は−70℃〜0℃であり、−65℃〜−5℃とすることが好ましく、−60℃〜−10℃とすることがさらに好ましい。これはTgを0℃以下とすることにより製品の貯蔵安定性(皮張り性)が良好となり、Tgを−70℃以上とすることにより耐熱性の低下を抑制できるためである。また、低Tgポリマーの重量平均分子量は1万〜200万、好ましくは10万〜100万である。低Tgポリマーの重量平均分子量を200万以下とすることにより製品粘度が高くなりすぎず、重量平均分子量を1万以上とすることにより凝集力を向上させることが可能となる。
【0024】
低Tgポリマーは、上記に例示した1種を単独でまたは2種以上を混合して使用できる。また低Tgポリマーの種類は、配合する粘・接着剤のベースポリマー種と類似しているか、もしくは該ベースポリマーとの相溶性が良好なものを選択するのが性能上好ましい。
【0025】
さらに低Tgポリマーの形態としては、液状、水溶液、ラテックスまたはエマルジョン状としたもの、さらには溶剤により溶液としたものの何れでも良く、エマルジョン等の場合、その固形分濃度も高い必要はなく、特に制限無く使用できる。
【0026】
粘着付与樹脂の乳化方法は特に制限されないが、高圧乳化の操作を経る高圧乳化法により行うのが好ましい。高圧乳化時の圧力は10〜50MPaとするのが好ましい。高圧乳化法は、具体的には前記粘着付与樹脂をベンゼン、トルエン等の溶剤に溶解したのち前記乳化剤及び軟水を添加し、高圧乳化機を用いて乳化した後、減圧下に溶剤を水と共に除去する方法により行う。本発明の乳化工程は、このように粘着付与樹脂エマルジョンが得られるまでの工程をいい、高圧乳化法においては、粘着付与樹脂を有機溶剤に溶解してから乳化を経て、溶剤除去のための減圧蒸留までの工程を乳化工程という。
【0027】
低Tgポリマーの添加時期は、乳化工程であれば特に限定されるものではないが、高圧乳化法においては、低Tgポリマーを溶液として添加する場合は乳化剤を添加する前に行ない、ラテックスまたはエマルジョン状の低Tgポリマーとして添加する場合は軟水添加後または溶剤を減圧除去する前に行なうのが好ましい。これは上記添加時期に低Tgポリマーを添加することにより貯蔵安定性が向上するためである。何れの場合も乳化工程の最後に減圧濃縮工程があるため、添加する低Tgポリマーの固形分濃度に関わらず、製品濃度を任意に調整することができる。
【0028】
低Tgポリマーの添加量は、粘着付与樹脂100重量部に対し、5〜20重量部である。5重量部に満たない場合は製品の貯蔵安定性(皮張り性)の改善効果が認められず、50重量部を超える場合は粘着性能の低下や製品粘度が上昇して取り扱いが困難になる場合があるため好ましくない。
【0029】
かくして得られた高濃度粘着付与樹脂エマルジョンの固形分濃度は、通常55重量%以上となるように適宜に調整して用いる。高濃度粘着付与樹脂エマルジョンの固形分濃度が55重量%未満では高濃度化の効果が認められない。また、高濃度粘着付与樹脂エマルジョンの固形分濃度の上限としては特に制限が無いが、70重量%以下とすることが好ましい。これは70重量%を超えると高粘度になり取り扱いが困難になる場合があるためである。得られたエマルジョンの平均粒子径は、通常0.2〜2μm程度であり、大部分は0.5μm以下の粒子として均一に分散している。また、該エマルジョンは白色ないし乳白色の外観を呈し、2〜9程度のpHを有する。
【0030】
本発明の水系粘・接着剤組成物はアクリル系重合体エマルジョン、ゴム系ラテックスおよび合成樹脂系エマルジョンからなる群より選ばれる少なくとも一種のベースポリマーに前記粘着付与樹脂エマルジョンを配合してなるものであり、これら水系粘・接着剤組成物の固形分濃度は通常40〜70重量%であり、好ましくは55〜70重量%である。
【0031】
アクリル系重合体エマルジョンは、一般に各種のアクリル系粘・接着剤に用いられているものを使用でき、(メタ)アクリル酸エステル等のモノマーの一括仕込み重合法、モノマー逐次添加重合法、乳化モノマー逐次添加重合法、シード重合法等の公知の乳化重合法により容易に製造することができる。
【0032】
使用される(メタ)アクリル酸エステルとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等をあげることができ、これらを単独でもしくは二種以上を混合して用いる。また、得られるエマルジョンに貯蔵安定性を付与するため前記(メタ)アクリル酸エステルに換えて(メタ)アクリル酸を少量使用してもよい。さらに所望により(メタ)アクリル酸エステル重合体の接着特性を損なわない程度において、たとえば、酢酸ビニル、スチレン等の共重合可能なモノマーを併用できる。なお、アクリル系重合体エマルジョンに用いられる乳化剤にはアニオン系乳化剤、部分ケン化ポリビニルアルコール等を使用でき、その使用量は重合体100重量部に対して0.1〜5重量部程度、好ましくは0.5〜3重量部である。
【0033】
アクリル系重合体エマルジョンと粘着付与樹脂エマルジョンの使用割合は、アクリル系重合体エマルジョン100重量部(固形分換算)に対して、粘着付与剤樹脂エマルジョンを通常2〜40重量部程度(固形分換算)とするのがよい。粘着付与剤樹脂エマルジョンが2重量部に満たない場合には、粘着付与樹脂を添加することによる改質がほとんど認められず、また40重量部を越える場合には凝集力が低下する傾向にありいずれの場合も適当ではない。
【0034】
また、ゴム系ラテックスとしては、水系粘・接着剤組成物に用いられる各種公知のものを使用できる。例えば天然ゴムラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、クロロプレンラテックス等が挙げられる。
【0035】
ゴム系ラテックスと粘着付与樹脂エマルジョンの使用割合は、ゴム系ラテックス100重量部(固形分換算)に対して、粘着付与樹脂エマルジョンを通常10〜150重量部程度(固形分換算)とするのがよい。粘着付与剤樹脂エマルジョンが10重量部に満たない場合には、粘着付与樹脂を添加することによる改質がほとんど認められず、また150重量部を越える場合には凝集力が低下する傾向にありいずれの場合も適当ではない。
【0036】
さらに、合成樹脂系エマルジョンとしては、水系接着剤組成物に用いられる各種公知のものを使用でき、例えば酢酸ビニル系エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン、ウレタン系エマルジョン等の合成樹脂エマルジョンがあげられる。
【0037】
合成樹脂系エマルジョンと粘着付与樹脂エマルジョンの使用割合は、合成樹脂系エマルジョン100重量部(固形分換算)に対して、粘着付与剤樹脂エマルジョンを通常2〜40重量部程度(固形分換算)とするのがよい。粘着付与剤樹脂エマルジョンが2重量部に満たない場合には、粘着付与樹脂を添加することによる改質がほとんど認められず、また40重量部を越える場合には凝集力が低下する傾向にありいずれの場合も適当ではない。
【0038】
本発明の水系粘・接着剤組成物は、アクリル系重合体エマルジョン、ゴム系ラテックスおよび合成樹脂系エマルジョンからなる群より選ばれる少なくとも一種のベースポリマーを併用することもでき、さらに必要に応じて消泡剤、増粘剤、充填剤、酸化防止剤、耐水化剤、造膜助剤等を使用することができる。
【0039】
【発明の効果】
本発明の、貯蔵安定性を保持しつつ良好な粘着性能を付与する高濃度化した粘着付与樹脂エマルジョンを、アクリル系重合体エマルジョン、ゴム系ラテックスおよび合成樹脂系エマルジョンからなる群より選ばれる少なくとも一種のベースポリマーに配合した水系粘・接着剤組成物は、高固形分で乾燥性に優れ、高速塗工適性や良好な初期接着性を要求される用途に適している。また、本発明によれば、保護コロイドとしてアクリル系重合体エマルジョンを粘着付与樹脂エマルジョンに混合し、貯蔵安定性を向上させる方法に比較して、アクリル系重合体エマルジョンの使用量を少なくすることが可能である。
【0040】
【実施例】
以下に製造例、実施例及び比較例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、各例中、部及び%は特記しない限りすべて重量基準である。
【0041】
製造例1(低Tgポリマーの製造)
攪拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた反応装置に、酢酸エチル57部、トルエン33部、アクリル酸ブチル97部およびアクリル酸3部を仕込んだ後、窒素気流下に系内温度が約75℃となるまで昇温した。次いで、あらかじめアゾビスイソブチロニトリル0.5部および酢酸エチル10部を仕込んだ滴下ロートから約3時間を要して系内に滴下し、さらに5時間同温度に保って重合反応を完結させ、固形分49.6%、ガラス転移温度−50℃、重量平均分子量25万のアクリル系重合体溶液を得た。
【0042】
製造例2(低Tgポリマーエマルジョンの製造)
(1)アクリル酸ブチル97部およびアクリル酸3部
(2)過硫酸カリウム0.5部、pH調整剤(重ソウ)0.3部、および水18部
撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた四つ口フラスコ中、70℃の窒素ガス気流下で、水100部およびアニオン系乳化剤(商品名ハイテノールS、固形分50%、第一工業製薬(株)製)2部を溶解した後、70℃窒素ガス気流下で撹拌しながら上記(1)および(2)の合計の1/10量を滴下して30分間予備反応を行ない、その後、(1)および(2)の合計の9/10量を2時間かけて滴下して重合を行なった。滴下終了後、70℃で1時間完結反応を行ない室温に冷却後、100メッシュ金網で濾過して取出し、固形分45.7%、ガラス転移温度−50℃、重量平均分子量100万のアクリル系重合体エマルジョンを得た。
【0043】
製造例3(ベースポリマーエマルジョンの製造)
(1)アクリル酸ブチル48.5部、アクリル酸2−エチルヘキシル48.5部、アクリル酸3部
(2)アニオン系乳化剤(商品名ハイテノールS、固形分50%、第一工業製薬(株)製)3部、および水35部
(3)過硫酸カリウム0.75部、オクチルメルカプタン0.75部、および水30部
上記(1)を(2)と混合して乳化モノマー液を調製した。次いで撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた四つ口フラスコ中に上記(3)を仕込み、80℃の窒素ガス気流下で攪拌しながら、上記乳化モノマー液の1/6量を滴下して30分間予備反応を行ない、その後、残りの5/6量を3時間かけて滴下して重合を行なった。滴下終了後、80℃で3時間完結反応を行ない室温に冷却後、100メッシュ金網で濾過して取出し、固形分60.3%、ガラス転移温度−55℃、重量平均分子量120万のアクリル系重合体エマルジョンを得た。
【0044】
実施例1
軟化点160℃の重合ロジンエステル(商品名「ペンセルD−160」、荒川化学工業(株)製)100部と製造例1のアクリル系重合体溶液10部(固形分換算)をトルエン60部に100℃にて約1時間溶解した後、80℃まで冷却してアニオン系乳化剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を3部(固形分換算)および水160部を添加し、75℃にて1時間強撹拌し予備乳化を行なった。得られた予備乳化物を高圧乳化機(マントンガウリン社製)により30MPaの圧力で高圧乳化して乳化物を得た。次いで、減圧蒸留装置に前記乳化物を仕込み、50℃、130hPaの条件下に6時間減圧蒸留を行ない、固形分60%の粘着付与樹脂エマルジョンを得た。
【0045】
実施例2
軟化点160℃の重合ロジンエステル(商品名「ペンセルD−160」、荒川化学工業(株)製)100部をトルエン60部に100℃にて約1時間溶解した後、80℃まで冷却してアニオン系乳化剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を3部(固形分換算)および水160部、次いで製造例2のアクリル系共重合体エマルジョンを10部(固形分換算)添加し、75℃にて1時間強撹拌し予備乳化を行なった。その後は実施例1と同様の操作を行ない、固形分60%の粘着付与樹脂エマルジョンを得た。
【0046】
実施例3
軟化点160℃の重合ロジンエステル(商品名「ペンセルD−160」、荒川化学工業(株)製)100部をトルエン60部に100℃にて約1時間溶解した後、80℃まで冷却してアニオン系乳化剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を3部(固形分換算)および水160部を添加し、75℃にて1時間強撹拌し予備乳化を行なった。得られた予備乳化物を高圧乳化機(マントンガウリン社製)により30MPaの圧力で高圧乳化して乳化物を得た。次いで、減圧蒸留装置に前記乳化物と製造例2のアクリル系重合体エマルジョン10部(固形分換算)を仕込み、50℃、130hPaの条件下に6時間減圧蒸留を行ない、固形分60%の粘着付与樹脂エマルジョンを得た。
【0047】
実施例4
実施例3において、製造例2のアクリル系重合体エマルジョン10部(固形分換算)の代りに、製造例2のアクリル系重合体エマルジョン20部(固形分換算)を用いた以外は実施例3と同様の操作を行ない、固形分65%の粘着付与樹脂エマルジョンを得た。
【0048】
実施例5
実施例3において、製造例2のアクリル系重合体エマルジョン10部(固形分換算)の代りに、製造例3のアクリル系重合体エマルジョン10部(固形分換算)を用いた以外は実施例3と同様の操作を行ない、固形分60%の粘着付与樹脂エマルジョンを得た。
【0049】
比較例1
実施例1において、製造例1のアクリル系重合体溶液を添加しないこと以外は実施例1と同様の操作を行ない、固形分50%の粘着付与樹脂エマルジョンを得た。
【0050】
比較例2
実施例1において、製造例1のアクリル系重合体溶液を添加しないこと以外は実施例1と同様の操作を行ない、固形分60%の粘着付与樹脂エマルジョンを得た。
【0051】
比較例3
実施例3において、製造例2のアクリル系重合体エマルジョン10部(固形分換算)に代えて、あらかじめカゼイン2部を28%アンモニア水0.3部と水10部で加熱溶解したカゼイン(ガラス転移温度約120℃、重量平均分子量約20万)のアンモニア水を用いた以外は、実施例3と同様の操作を行ない、固形分55%の粘着付与樹脂エマルジョンを得た。尚、該エマルジョンは固形分55%を超えると著しく粘度が上昇したため取り扱えなかった。
【0052】
比較例4
実施例3において、減圧蒸留時間を6時間から4時間に変える以外は、実施例3と同様の操作を行ない、固形分50%の粘着付与樹脂エマルジョンを得た。
【0053】
(粘着付与樹脂エマルジョンの貯蔵安定性評価)
上記実施例および比較例で得られた粘着付与樹脂エマルジョン50gを、500mlのガラス瓶に入れて蓋をし、50℃循風乾燥機中で3日間放置後、皮張り物を200メッシュ金網濾取して重量を測定し、皮張り発生量を固形換算パーセントで算出した。結果を表1に示す。
【0054】
(水系粘着剤組成物の性能評価)
製造例3で得られたアクリル系重合体エマルジョン100部(固形換算)に、前記実施例および比較例で得られた粘着付与樹脂エマルジョン10部(固形換算)を混合した調製物に、さらに増粘剤(商品名「プライマルASE−60」、日本アクリル社(株)製)0.5部(固形換算)を添加しアンモニア水にて増粘させて粘着剤組成物を得た。得られた水系粘着剤組成物を厚さ38μmのポリエステルフィルムにサイコロ型アプリケーターにて乾燥膜厚が25μm程度となるように塗布し、次いで該粘着剤組成物中の水分を除去して試料テープを作成し、以下の性能評価方法にて各種試験を行った。
【0055】
(粘着性能試験)
以下の試験方法により粘着特性を評価した。評価結果は表1に示す。
【0056】
(1)接着性
試料テープ(巾25mm×長さ150mm)をポリプロピレン板に貼り付け、PSTC−1に準じて20℃で、剥離速度300mm/分で180゜剥離を行い、その時の巾25mmあたりの接着力(g/25mm)を測定した。
【0057】
(2)凝集力
試料テープ(25mm×25mm)をステンレス板に貼り付け、60℃で1kg荷重し、落下時間(分)を測定した。
【0058】
(水系粘着剤組成物の初期接着性)
エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョン(商品名「スミカフレックス400」、住友化学工業(株)製)100重量部(固形分換算)に、前記実施例および比較例で得られた粘着付与樹脂エマルジョン20部(固形分換算)を混合し粘着剤組成物を調製した。得られた粘着剤組成物を段ボール原紙(坪量280g/m)に300μmサイコロ型アプリケーターで塗布し、この上に幅25mmの短冊状の上質紙(坪量70g/m)を貼り合せ、次いで剥離した時に上質紙が全面材破するまでの時間を測定した。試験結果は表1に示す。
【0059】
【表1】
Figure 0004828676

Claims (4)

  1. 粘着付与樹脂を乳化剤の存在下に乳化して粘着付与樹脂エマルジョンを製造する方法において、粘着付与樹脂の乳化工程にガラス転移温度(Tg)が−70〜0℃であるポリマーを粘着付与樹脂100重量部に対して5〜20重量部(固形分換算)添加し、かつ粘着付与樹脂エマルジョンの固形分濃度を55重量%以上にすることを特徴とする粘着付与樹脂エマルジョンの製造方法。
  2. 乳化剤がアニオン系および/またはノニオン系乳化剤である請求項1に記載の粘着付与樹脂エマルジョンの製造方法。
  3. ガラス転移温度が−70〜0℃であるポリマーが、アクリル系ポリマー、オレフィン系ポリマーおよびゴム系ポリマーからなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1〜2のいずれかに記載の粘着付与樹脂エマルジョンの製造方法。
  4. 乳化工程が高圧乳化の操作を経る請求項1〜3のいずれかに記載の粘着付与樹脂エマルジョンの製造方法。
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