JP4812734B2 - 金属用研磨液材料 - Google Patents

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Description

本発明は、特に半導体デバイスの配線工程に好適な金属用研磨液と、該金属用研磨液を用いた研磨方法とに係り、特に、金属用研磨液材料に関する。
近年、半導体集積回路(以下、LSIと記す)の高集積化、高性能化に伴って新たな微細加工技術が開発されている。化学機械研磨(以下、CMPと記す)法もその一つであり、LSI製造工程、特に多層配線形成工程における層間絶縁膜の平坦化、金属プラグ形成、埋め込み配線形成などにおいて頻繁に利用される技術である。この技術は、例えば特許文献1に開示されている。
また、最近はLSIを高性能化するために、配線材料として銅合金の利用が試みられている。しかし、銅合金は従来のアルミニウム合金配線の形成で頻繁に用いられたドライエッチング法による微細加工が困難である。そこで、あらかじめ溝を形成してある絶縁膜上に銅合金薄膜を堆積して埋め込み、溝部以外の銅合金薄膜をCMPにより除去して埋め込み配線を形成する、いわゆるダマシン法が主に採用されている。この技術は、例えば特許文献2に開示されている。
金属のCMPの一般的な方法は、円形の研磨定盤(プラテン)上に研磨パッドを貼り付け、研磨パッド表面を金属用研磨液で浸し、基体の金属膜を形成した面を押し付けて、その裏面から所定の圧力(以下、研磨圧力と記す)を加えた状態で研磨定盤を回し、研磨液と金属膜の凸部との機械的摩擦によって凸部の金属膜を除去するものである。
CMPに用いられる金属用研磨液は、一般には酸化剤及び固体砥粒からなっており、必要に応じてさらに酸化金属溶解剤、保護膜形成剤が添加される。CMPの基本的なメカニズムは、まず酸化によって金属膜表面を酸化し、その酸化層を固体砥粒によって削り取るというものであると考えられている。凹部の金属表面の酸化層は研磨パッドにあまり触れず、固体砥粒による削り取りの効果が及ばないので、CMPの進行とともに凸部の金属層が除去されて基体表面は平坦化される。この詳細については、非特許文献1に開示されている。
一般に、CMPによる研磨速度を高めるには、酸化金属溶解剤を添加することが有効であるとされている。これは、固体砥粒によって削り取られた金属酸化物の粒を研磨液に溶解させることにより、固体砥粒による削り取りの効果が増すためであるためと解釈できる。酸化金属溶解剤の添加によりCMPによる研磨速度は向上するが、一方、凹部の金属膜表面の酸化層もエッチング(溶解)されてしまう。これにより金属膜表面が露出すると、酸化剤によって金属膜表面がさらに酸化され、これが繰り返されると凹部の金属膜のエッチングが進行してしまうことになる。このため、酸化金属溶解剤を添加した場合には、研磨後に埋め込まれた金属配線の表面中央部分が皿のように窪む現象(以下ディッシングと記す)が発生し、平坦化効果が損なわれる。そこで、これを防ぐために、さらに保護膜形成剤が添加される。このような金属用研磨液では、凹部の金属膜表面の酸化層はあまりエッチングされず、しかし削り取られた酸化層の粒が効率良く溶解されてCMPによる研磨速度が大きいように、酸化金属溶解剤と保護膜形成剤との効果のバランスを取ることが重要である。
このように酸化金属溶解剤と保護膜形成剤とを添加して化学反応の効果を加えることにより、CMP速度(CMPによる研磨速度)が向上するとともに、CMPされる金属層表面の損傷(ダメージ)も低減されるという効果が得られる。
しかしながら、従来の固体砥粒を含む金属用研磨液を用いてCMPによる埋め込み配線形成を行う場合には、つぎの(1)〜(4)といった問題が生じる。
(1)埋め込まれた金属配線の表面中央部分が等方的に腐食されるディッシングの発生
(2)固体砥粒に由来する研磨傷(スクラッチ)の発生
(3)研磨後の基体表面に残留する固体砥粒を除去するための洗浄プロセスの複雑さ
(4)固体砥粒そのものの原価や廃液処理に起因するコストの上昇
また、金属用研磨液は、その大部分が水であるため、それを入れて運搬するための容器、運送及び研磨を行う側での保管、研磨装置に必要なタンクの容量などのため、貯蔵、製造のためにかなりのスペースが必要であり、また、これが金属用研磨液の研磨装置への供給自動化の障害となっていた。さらに、運搬容器のリサイクルに伴う費用の増大なども大きな問題となっている。
これらの問題点は、固体砥粒を多量に含まない金属用研磨液の濃縮液を用いることにより改善することができる。これにより、研磨液メーカの生産コストは低減され、結果として濃縮液を希釈したもののコストも下げることができる。また、濃縮液の使用には、研磨液生産設備のスケールを上げる必要がなくなるため、新たな設備投資を行わずに量産化に対応できるという利点がある。なお、濃縮液の使用によって得られる効果を考慮すると、10倍以上の濃縮液を調製できることが望ましい。
一方、ディッシングや研磨中の銅合金の腐食を抑制し、信頼性の高いLSI配線を形成するために、グリシン等のアミノ酢酸又はアミド硫酸からなる酸化金属溶解剤と、保護膜形成剤としてベンゾトリアゾール(以下、BTAと記す)とを含有する金属用研磨液を用いる方法が提唱されている。この技術は例えば特許文献3に記載されている。
米国特許第4944836号 特開平2−278822号公報 ジャーナル・オブ・エレクトロケミカル・ソサエティ誌(Journal of Electrochemical Society)第138巻11号(1991年発行)3460〜3464頁 特開平8−83780号公報
しかし、BTAの水に対する溶解度が低いため(2g/20℃水100cc)、一部の金属用研磨液においては10倍濃縮ができなかった(例えばBTA0.2重量%を含む金属用研磨液の濃縮は5倍まで可能、10倍では0℃以下で析出)。従って、研磨液を10倍以上濃縮可能であり、かつ、0℃以上の通常の環境で濃縮液中のBTAを析出させないような金属用研磨液が望まれている。
本発明は、高濃度の金属用研磨液材料を希釈することにより容易に調製することができ、信頼性の高い金属膜の埋め込みパターンの形成を実現する金属用研磨液を提供することを目的とする。さらに、本発明は、この金属用研磨液の製造方法と、それに用いられる金属用研磨液材料と、当該研磨液を用いる研磨方法とを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明では、酸化剤と、酸化金属溶解剤と、保護膜形成剤と、該保護膜形成剤の溶解補助剤と、水とを含有する金属用研磨液が提供される。
金属用研磨液は、さらに砥粒を含んでいてもよいが、実質的に固体砥粒を含んでいなくてもよい。固体砥粒を含む場合には、高速の研磨が実現できる。また、固体砥粒を含まない場合には、固体砥粒よりもはるかに機械的に柔らかい研磨パッドとの摩擦によってCMPが進むために研磨傷は劇的に低減される。
この金属用研磨液を調製するための材料として、本発明では、保護膜形成剤と、エステル、エーテル、多糖類、アミノ酸塩、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸塩、ビニルポリマ、スルホン酸、スルホン酸塩及びアミドから選択されるいずれか一つ以上と、を含有してなる金属用研磨液材料であり、
該金属用研磨液材料は、少なくとも酸化剤及び水を含む構成要素と、希釈剤と混合されて使用される金属用研磨液材料が提供される。本発明の金属用研磨液材料は、酸化剤、水及び/又は砥粒を、さらに含んでいてもよい。
また、本発明では、保護膜形成剤と、前記保護膜形成剤の溶解補助剤とを含有してなる金属用研磨液材料であり、
上記溶解補助剤は、上記保護膜形成剤の溶解度が25g/L以上の溶媒であり、
上記金属用研磨液材料は、少なくとも酸化剤及び水を含む構成要素と、希釈剤と混合されて使用される金属用研磨液材料が提供される。
さらに、本発明では、保護膜形成剤と、前記保護膜形成剤の溶解補助剤とを含有してなる金属用研磨液材料であり、
上記溶解補助剤は、アルコール、エーテル及びケトンから選ばれる少なくとも一種であり、
上記金属用研磨液材料は、少なくとも酸化剤及び水を含む構成要素と、希釈剤と混合されて使用される金属用研磨液材料が提供される。
さらにまた、本発明では、保護膜形成剤と、前記保護膜形成剤の溶解補助剤とを含有してなる金属用研磨液材料であり、
該金属用研磨液材料は、希釈剤により10倍以上に濃縮され、少なくとも酸化剤及び水を含む構成要素と混合されて使用される金属用研磨液材料が提供される。
ここで、金属用研磨液材料は、酸化金属溶解剤を含有してなること、保護膜形成剤の少なくとも一部は平均粒径100μm以下の固体であることが好ましい。
保護膜形成剤は、アンモニア、アルキルアミン、アミノ酸、イミン及びアゾール並びにその塩、メルカプタン、多糖類、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸塩及び水溶性ポリマから選択される少なくとも一種であるのが好ましく、特にアゾール類であるのが好ましい。
また、保護膜形成剤は、キトサン、エチレンジアミンテトラ酢酸、L−トリプトファン、キュペラゾン、トリアジンジチオール、ベンゾトリアゾール、4−ヒドロキシベンゾトリアゾール、4−カルボキシル−1H−ベンゾトリアゾールブチルエステル、トリルトリアゾール、ナフトトリアゾール、ポリリンゴ酸、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリビニルアルコールから選択される少なくとも一種であるであるのが好ましい。
本発明の金属用研磨液材料は、濃縮されたもの、特に10倍以上に濃縮されたものであるのが好ましい。
この本発明の金属用研磨液材料を用いれば、これを希釈し、必要に応じて適宜成分を追加することにより、容易に金属用研磨液を調製することができる。
本発明の金属用研磨液材料は、成分がすべて混合された組成物であってもよく、また、成分のうちの任意のいずれかを含む二以上の組成物の組み合わせとしてもよい。すなわち、本発明の金属用研磨液材料は、第1の構成要素と第二の構成要素とを、互いに混合していない状態で備えるようにしてもよい。ここで、第1の構成要素は、酸化剤、酸化金属溶解剤、上記保護膜形成剤及び上記溶解補助剤からなる成分群のうちの少なくとも一成分を含み、第2の構成要素は、当該成分群の残りの成分を含む。また、第1及び第2の構成要素は、それぞれ必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。
また、保護膜形成剤の少なくとも一部は、平均粒径100μm以下の固体とし、この混合工程により、これを金属用研磨液中に溶解又は分散することが望ましい。なお、本明細書では、特に断らない限り、数平均粒径を単に平均粒径と呼ぶ。
従来の研磨液とは異なり、本発明の金属用研磨液は、希釈により容易に当該研磨液を調製することのできる高濃度の金属用研磨液材料を用いることにより、金属用研磨液の生産コストを低減したり、運搬するための容器、運送及び研磨を行う側での保管、研磨装置のタンク等の容量を小さくしたりすることができる。
この金属用研磨液においては、主として保護膜形成剤の水に対する溶解度の向上を目的に、金属用研磨液に溶解補助剤を添加する。これにより、研磨特性に応じたより広範でかつ高濃度の金属用研磨液材料を調製することが可能となる。
A.成分
つぎに、本発明の金属用研磨液材料及び金属用研磨液の各成分について説明する。
(1)溶解補助剤
本発明において、溶解補助剤は、保護膜形成剤の溶解度が25g/L以上の溶媒、又は、界面活性剤であることが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
a.界面活性剤
界面活性剤の添加により、保護膜形成剤の疎水性基に界面活性剤を吸着させ、界面活性剤の親水性基により水との相溶性を増大させることにより、溶解性を向上させることができる。
界面活性剤としては、例えば、エステル、エーテル、多糖類、アミノ酸塩、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸塩、ビニルポリマ、スルホン酸、スルホン酸塩及びアミドなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、一以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、界面活性剤には、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン界面活性剤がある。そのそれぞれについて、本発明に好適な具体例をつぎに挙げる。
陰イオン界面活性剤としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、及び、リン酸エステル塩が挙げられる。
カルボン酸塩には、石鹸、N−アシルアミノ酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシプロピレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチドなどがある。
スルホン酸塩には、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルスルホン酸塩などがある。
硫酸エステル塩には、硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアリルエーテル硫酸塩、ポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩などがある。
リン酸エステル塩には、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルリン酸塩、ポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテルリン酸塩などがある。
陽イオン界面活性剤としては、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩などが挙げられる。
両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン、レシチン、アルキルアミンオキサイドなどが挙げられる。
非イオン界面活性剤には、エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型がある。また、フッ素系界面活性剤も、好適に使用できる。
エーテル型としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルなどが挙げられる。
エーテルエステル型としては、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテルなどが挙げられる。
エステル型としては、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンエステル、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、プロピレングリコールエステル、ショ糖エステルなどが挙げられる。
含窒素型としては、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミド等が例示される。
さらに、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、メトキシ酢酸、エトキシ酢酸、3−エトキシプロピオン酸及びアラニンエチルエステル等のエステル;
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルケニルエーテル、アルキルポリエチレングリコール、アルキルポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリエチレングリコールアルケニルエーテル、アルケニルポリエチレングリコール、アルケニルポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルケニルポリエチレングリコールアルケニルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルケニルエーテル、アルキルポリプロピレングリコール、アルキルポリプロピレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリプロピレングリコールアルケニルエーテル、アルケニルポリプロピレングリコール、アルケニルポリプロピレングリコールアルキルエーテル及びアルケニルポリプロピレングリコールアルケニルエーテル等のエーテル;
メチルタウリン酸、硫酸メチル、硫酸ブチル、ビニルスルホン酸、1−アリルスルホン酸、2−アリルスルホン酸、メトキシメチルスルホン酸、エトキシメチルスルホン酸、3−エトキシプロピルスルホン酸及びスルホコハク酸等のスルホン酸;
メチルタウリン酸アンモニウム塩、メチルタウリン酸ナトリウム塩、硫酸メチルナトリウム塩、硫酸エチルアンモニウム塩、硫酸ブチルアンモニウム塩、ビニルスルホン酸ナトリウム塩、1−アリルスルホン酸ナトリウム塩、2−アリルスルホン酸ナトリウム塩、メトキシメチルスルホン酸ナトリウム塩、エトキシメチルスルホン酸アンモニウム塩、3−エトキシプロピルスルホン酸ナトリウム塩、
及びスルホコハク酸ナトリウム塩等のスルホン酸塩;
プロピオンアミド、アクリルアミド、メチル尿素、ニコチンアミド、コハク酸アミド及びスルファニルアミド等のアミド等も、好適な界面活性剤として挙げられる。
ただし、被研磨物が半導体集積回路用シリコン基板などの場合は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン化物等による汚染は望ましくないため、酸又はそのアンモニウム塩が望ましい。なお、被研磨物がガラス基板などの場合は、この限りではない。
界面活性剤の配合量は、金属用研磨液(すなわち、金属用研磨液材料に必要に応じて添加物を加え、希釈剤により希釈した、研磨液として使用可能な状態)において、酸化剤、酸化金属溶解剤、保護膜形成剤、界面活性剤及び水の総量100gに対して0.01〜3gとすることが好ましく、0.03〜1gとすることがより好ましく、0.1〜0.8gとすることが特に好ましい。この配合量が0.01g未満では、界面活性剤の添加効果が現れない傾向があり、3gを超えるとCMP速度が低下してしまう傾向がある。
b.溶媒
保護膜形成剤の水に対する溶解度の向上を目的に、本発明では、研磨液材料に保護膜形成剤の溶解度が25g/L以上の溶媒が添加される。なお、この溶媒における保護膜形成剤の溶解度は、40g/L以上であることが好ましく、50g/L以上であればさらに好ましく、特に良溶媒を用いることが望ましい。
本発明に好適な溶解補助剤としての溶媒には、アルコール類、エーテル類、ケトン類等の有機溶媒を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、任意の二以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明において、溶解補助剤として用いるのに好適な溶媒としては、
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−プロピン−1−オール、アリルアルコール、エチレンシアノヒドリン、1−ブタノール、2−ブタノール(S)−(+)−2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、t−ブチルアルコール、パーフルオロ−t−ブチルアルコール、t−ペンチルアルコール、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、グリセリン、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール等のアルコール;
ジオキサン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2,2−(ジメトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジアセトンアルコール、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエーテル;
アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトンなどが挙げられる。
これらの溶媒の中でも、メタノール、エタノール、2−プロパノール、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、アセトン、メチルエチルケトンがより好ましい。
この溶媒の配合量は、特に制限はないが、金属用研磨液材料の総量100gに対して50g未満とすることが好ましく、25g未満とすることがより好ましい。この配合量が50g以上では研磨界面の状態が水系の場合とは異なり、CMP速度が低下する恐れがある。
(2)保護膜形成剤
保護膜形成剤は、金属表面に保護膜を形成するものである。この保護膜形成剤としては、アンモニア、アルキルアミン、アミノ酸、イミン、アゾール等の含窒素化合物及びその塩、メルカプタン等の含硫黄化合物、並びに、多糖類、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸塩及びビニル系ポリマ等の水溶性ポリマが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、二以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に好適な保護膜形成剤としては、例えば、
アンモニア;
ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、プロピレンジアミン等のアルキルアミンや、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム及びキトサン等のアミン;
グリシン、L−アラニン、β−アラニン、L−2−アミノ酪酸、L−ノルバリン、L−バリン、L−ロイシン、L−ノルロイシン、L−イソロイシン、L−アロイソロイシン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、サルコシン、L−オルニチン、L−リシン、タウリン、L−セリン、L−トレオニン、L−アロトレオニン、L−ホモセリン、L−チロシン、3,5−ジヨ−ド−L−チロシン、β−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−L−アラニン、L−チロキシン、4−ヒドロキシ−L−プロリン、L−システィン、L−メチオニン、L−エチオニン、L−ランチオニン、L−シスタチオニン、L−シスチン、L−システィン酸、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、S−(カルボキシメチル)−L−システィン、4−アミノ酪酸、L−アスパラギン、L−グルタミン、アザセリン、L−アルギニン、L−カナバニン、L−シトルリン、δ−ヒドロキシ−L−リシン、クレアチン、L−キヌレニン、L−ヒスチジン、1−メチル−L−ヒスチジン、3−メチル−L−ヒスチジン、エルゴチオネイン、L−トリプトファン、アクチノマイシンC1、アパミン、アンギオテンシンI、アンギオテンシンII及びアンチパイン等のアミノ酸;
ジチゾン、クプロイン(2,2’−ビキノリン)、ネオクプロイン(2,9−ジメチル−1,10−フェナントロリン)、バソクプロイン(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)及びキュペラゾン(ビスシクロヘキサノンオキサリルヒドラゾン)等のイミン;
ベンズイミダゾール−2−チオール、2−[2−(ベンゾチアゾリル)]チオプロピオン酸、2−[2−(ベンゾチアゾリル)]チオブチル酸、2−メルカプトベンゾチアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1−ジヒドロキシプロピルベンゾトリアゾール、2,3−ジカルボキシプロピルベンゾトリアゾール、4−ヒドロキシベンゾトリアゾール、4−カルボキシル−1H−ベンゾトリアゾール、4−メトキシカルボニル−1H−ベンゾトリアゾール、4−ブトキシカルボニル−1H−ベンゾトリアゾール、4−オクチルオキシカルボニル−1H−ベンゾトリアゾール、5−ヘキシルベンゾトリアゾール、N−(1,2,3−ベンゾトリアゾリル−1−メチル)−N−(1,2,4−トリアゾリル−1−メチル)−2−エチルヘキシルアミン、トリルトリアゾール、ナフトトリアゾール、ビス[(1−ベンゾトリアゾリル)メチル]ホスホン酸等のアゾール;
ノニルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、トリアジンチオール、トリアジンジチオール、トリアジントリチオール等のメルカプタン;
アルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロース、カードラン及びプルラン等の多糖類;
グリシンアンモニウム塩及びグリシンナトリウム塩等のアミノ酸塩;
ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリシン、ポリリンゴ酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸アンモニウム塩、ポリメタクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリフマル酸、ポリ(p−スチレンカルボン酸)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、アミノポリアクリルアミド、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸アンモニウム塩、ポリアミド酸ナトリウム塩及びポリグリオキシル酸等のポリカルボン酸及びその塩;
ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリアクロレイン等のビニル系ポリマが挙げられる。
これらの保護膜形成剤の中でも、キトサン、エチレンジアミンテトラ酢酸、L−トリプトファン、キュペラゾン、トリアジンジチオール、ベンゾトリアゾール、4−ヒドロキシベンゾトリアゾール、4−カルボキシル−1H−ベンゾトリアゾールブチルエステル、トリルトリアゾール、ナフトトリアゾール、ポリリンゴ酸、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリビニルアルコールが、大きいCMP速度と小さいエッチング速度とを両立する上で好ましい。
保護膜形成剤の配合量は、金属用研磨液において、酸化剤、酸化金属溶解剤、保護膜形成剤、溶解補助剤及び水の総量100gに対して、0.0001mol〜0.05molとすることが好ましく、0.0003mol〜0.005molとすることがより好ましく、0.0005mol〜0.0035molとすることが特に好ましい。この配合量が0.0001mol未満では、エッチングの抑制が困難となる傾向があり、0.05molを超えるとCMP速度が低くなってしまう傾向がある。
また、金属用研磨液材料の調製に使用する保護膜形成剤のうち、室温での水に対する溶解度が5重量%未満のものの配合量は、室温での水に対する溶解度の2倍以内とすることが好ましく、1.5倍以内とすることがより好ましい。すなわち、通常、保護膜形成剤の配合量は、研磨液材料全量100gに対して0.0001〜0.05molであり、0.0003〜0.05molとすることが好ましく、0.0005〜0.0035molとすることがさらに好ましい。この配合量が溶解度の2倍以上では濃縮品を5℃に冷却した際の析出を防止するのが困難となる。
本発明では、固体の保護膜形成剤を用いて金属用研磨液材料を調製する場合、平均粒径100μm以下のものを用い、これを金属用研磨液材料(互いに混合していない二以上の構成要素(単一物質又は組成物)により研磨液材料が構成されている場合は、構成要素(単一物質又は組成物)の少なくとも一つ)中に溶解又は分散させることが好ましい。このように粒径の小さい保護膜形成剤は、粉砕などにより得ることができる。このように粒径の小さいものを用いれば、表面積が大きくなるため、溶解速度を速めることができる。また、溶解しきれない状態で小さな粒子として分散している場合であっても、他の成分及び/又は希釈剤の混合に際して、短時間で溶解させることができる。このため平均粒径は、50μm以下が好ましく、20μm以下がさらに好ましい。
(3)酸化剤
本発明において用いられる酸化剤は、金属を酸化することのできる化合物である。本発明に好適な酸化剤としては、過酸化水素、硝酸、過ヨウ素酸カリウム、次亜塩素酸及びオゾン水などが挙げられる。これらの酸化剤のうち、特に過酸化水素(H2O2)が好ましい。被研磨物が集積回路用素子を含むシリコン基板である場合、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン化物などによる汚染は望ましくないため、不揮発成分を含まない酸化剤が望ましい。ただし、オゾン水は組成の時間変化が激しいので過酸化水素が最も適している。なお、被研磨物が半導体素子を含まないガラス基板などである場合は、不揮発成分を含む酸化剤であっても差し支えない。
この酸化剤の配合量は、金属用研磨液において、酸化剤、酸化金属溶解剤、保護膜形成剤、溶解補助剤及び水の総量100gに対して、0.003mol〜0.7molとすることが好ましく、0.03mol〜0.5molとすることがより好ましく、0.2mol〜0.3molとすることが特に好ましい。この配合量が、0.003mol未満では、金属の酸化が不十分でCMP速度が低い場合があり、0.7molを超えると、研磨面に荒れが生じる傾向がある。なお、金属用研磨液材料における酸化剤の配合量は、全量100gに対して通常0.03〜0.7molとする。この配合量は、全量100gに対して0.3〜0.5molとすることが好ましく、0.2〜0.3molとすることがさらに好ましい。
(4)酸化金属溶解剤
酸化金属溶解剤としては、水溶性の化合物が望ましく、有機酸、硫酸、又は、それらのアンモニウム塩などが本発明に好適なものとして挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二以上の化合物を組み合わせて用いてもよい。これらの化合物は、研磨剤又は研磨剤材料を調製する場合、水溶液の形で添加するようにしてもよい。
酸化金属溶解剤の具体例としては、
ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2−メチル酪酸、n−ヘキサン酸、3,3−ジメチル酪酸、2−エチル酪酸、4−メチルペンタン酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等の有機酸;
硫酸、硝酸、クロム酸等の無機酸;
アンモニア;
上述の有機酸又は無機酸のアンモニウム塩等の塩類(例えば過硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム等);
などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、二以上を混合して用いてもよい。
これらの化合物のうち、ギ酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸は、銅、銅合金、銅酸化物又は銅合金酸化物の膜(又は、これらのうちの少なくとも1種の金属層を含む積層膜)に対して好適である。特に、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸については実用的なCMP速度を維持しつつ、エッチング速度を効果的に抑制できるという点で好ましい。
本発明における酸化金属溶解剤の配合量は、金属用研磨液において、酸化剤、酸化金属溶解剤、保護膜形成剤、溶解補助剤及び水の総量100gに対して、0.000001〜0.005molとすることが好ましく、0.00005mol〜0.0025molとすることがより好ましく、0.0005mol〜0.0015molとすることが特に好ましい。この配合量が0.005molを超えると、エッチングの抑制が困難となる傾向がある。なお、金属研磨液材料における酸化金属溶解剤の配合量は、研磨液材料全量100gに対して、通常1×10−6〜0.005molであり、5×10−5〜0.0025molとすることが好ましく、0.0005〜0.0015molとすることがさらに好ましい。
(5)砥粒
本発明の金属用研磨液は、固体砥粒を実質的に含まなくともよいが、含んでいてもよい。
砥粒を用いる場合、その混合の順番及び混合対象は特に限定されるものではない。金属用研磨液材料が互いに混合していない二以上の構成要素(単一物質又は組成物)により構成されている場合は、構成要素(単一物質又は組成物)のいずれに砥粒が含まれていても差し支えなく、二以上の構成要素に砥粒が含まれていてもかまわない。
砥粒としては、例えば、
シリカ、アルミナ、セリア、チタニア、ジルコニア、ゲルマニア、炭化珪素等の無機物砥粒;
ポリスチレン、ポリアクリル、ポリ塩化ビニル等の有機物砥粒
のいずれでもよいが、研磨液中での分散安定性がよく、CMPにより発生する研磨傷(スクラッチ)の発生数の少ない、平均粒径が100nm以下のコロイダルシリカ、コロイダルアルミナが好ましい。なお、砥粒の平均粒径は、例えば、バリア層の研磨速度がより大きくなり、二酸化シリコンの研磨速度がより小さくなる20nm以下がより好ましい。
コロイダルシリカは、シリコンアルコキシドの加水分解又は珪酸ナトリウムのイオン交換による製造方法が知られており、コロイダルアルミナは硝酸アルミニウムの加水分解による製造方法が知られている。
砥粒の配合量は、金属用研磨液(すなわち、金属用研磨液材料に必要に応じて添加物を加え、希釈剤により希釈した、研磨液として使用可能な状態)の全重量に対して0.01〜10重量%であることが好ましく、0.05〜5重量%の範囲であることがより好ましい。0.01重量%以下では、砥粒を含有する効果が見られず、10重量%以上ではCMPによる研磨速度は飽和し、それ以上加えても増加は見られない。なお、金属用研磨液材料における砥粒の配合量は、研磨液材料全量に対して、0.01〜10重量%とすることが好ましく、0.05〜5重量%とすることがさらに好ましい。
(6)水
本発明の金属用研磨液材料は、水を含んでいてもよい。含有する水の量は、他の成分やその水への溶解度等に応じて適宜定めることができるが、通常、50〜98重量%とする。本発明の水分量は、70〜90重量%とすることが好ましい。なお、例えば、酸化剤として過酸化水素水を用いる場合など、あらかじめ水分を含む成分を用いる場合、当該水分含有成分を含む金属用研磨液材料の水分量は、75〜85重量%とするとこがさらに好ましく、この水分含有成分を含まない金属用研磨液材料の水分量は、80〜90重量%とすることがさらに好ましい。
B.金属用研磨液の製造方法
本発明の金属用研磨液は、本発明の金属用研磨液材料を希釈剤により希釈して調製される。金属用研磨液材料における各成分の濃度(組成比)は、使用時に添加される希釈剤の組成及び添加量と、調製される金属用研磨液における各成分の濃度(組成比)とに応じて定められる。
希釈剤として水を用いる場合は、金属用研磨液材料を、金属用研磨液の水以外の成分と同じ組成・組成比とし、水の含有量を減らして、高濃度の状態にしておく。このようにすれば、希釈に際して水が添加されることにより、所望の組成の金属用研磨液を得ることができる。
また、希釈剤として水溶液を用いる場合、酸化剤、酸化金属溶解剤、保護膜形成剤及び該保護膜形成剤の溶解補助剤のうちの少なくとも一つを含む水溶液を用いることが望ましい。この場合、酸化剤、酸化金属溶解剤、保護膜形成剤及び該保護膜形成剤の溶解補助剤からなる成分群のうちの少なくとも一成分を含む金属用研磨液材料を、該成分群のうちの少なくとも一成分の水溶液である希釈用水溶液により希釈することにより、本発明の金属用研磨液を調製する。なお、この際、所望の成分をさらに添加することができる。
このように希釈用水溶液を用いる場合の、金属用研磨液材料の各成分濃度は、金属用研磨液材料、希釈用水溶液(及び必要に応じて追加される添加物)を混合した結果、所望の組成・濃度の金属用研磨液が得られるように定められる。こうすることにより、溶解しにくい成分を水溶液の形で配合することができるため、金属用研磨液材料の濃度をより高濃度にすることができる。この目的のため、水溶液には、溶解度の低い保護膜形成剤と溶解補助剤とを含有させることが好ましい。
金属用研磨液材料が、互いに混合していない二以上の構成要素(単一物質又は組成物)から構成される場合、これらの構成要素と希釈剤との混合の順番は、特に限定されるものではなく、各成分の溶解度や溶解させる際の液温などに応じて適宜定めることができ、例えば、一つ又は複数の構成要素に希釈剤を加えて混合し、これにさらに別の構成要素と混合したり、先に構成要素どうしを混合した後、これに希釈剤を加えて混合したり、あらかじめ各構成要素に希釈剤を加えて混合しておき、これらを混合するなど、任意の方法を用いることができる。
具体的には、例えば、酸化剤からなる第1の構成要素Aと、酸化金属溶解剤、保護膜形成剤、溶解補助剤及び水からなる第2の構成要素Bとにより構成される金属用研磨液材料を用いる場合、金属用研磨液の製造方法(すなわち、この研磨液材料の希釈方法)には、つぎの(1)〜(5)などが挙げられるが、これらのうちいずれを選択してもよい。
(1)構成要素Aと構成要素Bとを混合し、その混合液を希釈剤により希釈する方法
(2)構成要素Aを希釈剤により希釈し、これを構成要素Bと混合する方法
(3)構成要素Bを希釈剤により希釈し、これを構成要素Aと混合する方法
(4)構成要素Aと構成要素Bとを、希釈剤によりそれぞれ希釈し、希釈後の構成要素Aと希釈後の構成要素Bとを混合する方法
(5)構成要素Aと構成要素Bと希釈剤とを、ほぼ同時に混合する方法
なお、保護膜形成剤といった溶解度の低い成分は、2つ以上の構成要素に分けて入れることにより、溶媒(通常、水)の量を増やすことなく構成要素の各液に溶解させることができる場合がある。
例えば、保護膜形成剤を2つの構成要素に分ける場合、金属用研磨剤材料を、酸化剤、保護膜形成剤及び溶解補助剤からなる第1の構成要素Aと、酸化金属溶解剤、保護膜形成剤、溶解補助剤及び水からなる第2の構成要素Bとにより構成する。
また、保護膜形成剤を3つの構成要素に分ける場合、金属用研磨液材料を、例えば、保護膜形成剤及び酸化剤からなる第1の構成要素A、保護膜形成剤及び酸化金属溶解剤からなる第2の構成要素B、保護膜形成剤及び溶解補助剤からなる第3の構成要素Cにより構成することもできる。
このように、金属用研磨液材料を複数の構成要素に分ける場合、同じ配合成分を複数の構成要素に分けて入れることにより、溶解度の低い保護膜形成剤を溶媒(通常、水)に多量に溶解することができるので、高濃度の金属用研磨液材料を得ることができる。ここで、成分を分配する構成要素の数は、上述の例の2又は3に限られるものではなく、必要に応じて適宜決定することができる。
なお、本発明は、上記の例示のみでなく、金属用研磨液の各成分を分けて高濃度の組成物とし、それを希釈する方法であれば、適宜採用することができる。
本発明の金属用研磨液において、酸化剤として好適である過酸化水素は、温度が40℃より高温になると分解を始めることから、この温度以上で保管又は使用した場合、酸化剤濃度が変化してしまい、研磨速度に悪影響を与える恐れがある。このため、酸化剤及びそれを含む混合物は、40℃以下にすることが望ましい。
しかし、溶解度は、一般に液温が高い方が大きいため、低溶解度の化合物の溶液については、高濃度の溶液を得るという観点から、液温を高くする方が望ましい。
そこで、本発明の金属用研磨液の製造方法では、酸化剤を含む第1の構成要素は40℃以下にし、他の構成要素は室温〜100℃の範囲に加温し、かつ、第1の構成要素と他の構成要素又は希釈剤を混合する際に、混合後の液温が40℃以下となるようにすることが好ましい。
なお、低溶解度の化合物を加温して溶解させた場合、温度が低下すると溶解した成分の一部が析出することがある。このような場合は、使用に際して、再度、加温して溶解させればよい。
C.研磨方法
つぎに、本発明の研磨方法について説明する。
本発明の研磨方法は、本発明の金属用研磨液を用いて金属膜を研磨する工程によって、少なくとも当該金属膜の一部を除去するものである。本発明の研磨方法は、銅と、銅合金、銅酸化物及び銅合金酸化物(以下、単に銅合金と記す)とから選ばれた少なくとも1種の金属層を含む積層膜からなる金属膜の研磨に特に適している。
表面に所望のパターンの凹部を有する基体上に銅、銅合金(銅/クロム等)を含む金属膜を形成・充填したものの表面を、本発明の金属用研磨液を用いてCMPすると、基体の凸部の金属膜が選択的にCMPされて、凹部に金属膜が残され、所望の導体パターンが得られる。
なお、本発明者らは、研磨工程におけるエッチング速度を10nm/min以下に抑制できれば、好ましい平坦化効果が得られることを見出した。エッチング速度の低下に伴うCMP速度の低下が許容できる範囲であれば、エッチング速度はさらに低い方が望ましく、5nm/min以下に抑制できれば、例えば50%程度の過剰CMP(金属膜をCMP除去するに必要な時間の1.5倍のCMPを行うこと)を行っても、ディッシングは問題とならない程度にとどまる。さらに、エッチング速度を1nm/min以下に抑制できれば、100%以上の過剰CMPを行ってもディッシングは問題とならない。
ここで、エッチング速度は、金属用研磨液中に被研磨基板(表面に凹部を有する基体上に金属膜を形成・充填した基板)を浸し、室温(25℃)で100rpmで攪拌したときの、金属膜のエッチング速度であり、金属膜厚差を電気抵抗値から換算して求める。
本発明の金属用研磨液を用いた研磨方法は、本発明の金属用研磨液を研磨定盤上の研磨パッドに供給し、被研磨面と接触させて被研磨面と研磨パッドを相対運動させて研磨するものである。
研磨する装置としては、被研磨面を有する半導体基板等を保持するホルダーと研磨パッドを貼り付けた(回転数が変更可能なモータ等を取り付けてある)研磨定盤を有する一般的な研磨装置が使用できる。なお、研磨パッドには、一般的な不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂などを使用でき、特に制限がない。
研磨条件には制限はないが、研磨定盤の回転速度は基板が飛び出さないように200rpm以下の低回転が好ましい。また、被研磨面(被研磨膜)を有する被研磨物(半導体基板など)の研磨パッドへの押しつけ圧力は、9.8〜98.1kPa(100〜1000gf/cm)であることが好ましく、研磨速度のウエハ面内均一性及びパターンの平坦性を満足するためには、9.8〜49.0kPa(100〜500gf/cm)であることがより好ましい。
研磨している間、研磨パッドには金属用研磨液がポンプ等により連続的に供給される。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に研磨液で覆われていることが好ましい。
研磨終了後の半導体基板は、流水中でよく洗浄後、スピンドライヤ等を用いて半導体基板上に付着した水滴を払い落としてから乾燥させることが好ましい。
本発明の研磨方法では、本発明の金属用研磨液をあらかじめ調製し、これを研磨装置のタンク(研磨液溜り)に入れるか、又は、タンク内で金属用研磨液を調製し、これを研磨パッドへの供給に用いるようにしてもよく、また、本発明の金属用研磨液材料と希釈剤とを研磨装置に入れ、研磨装置内(配管内を含む)で混合して、本発明の研磨液を調製しつつ研磨パッドへ供給するようにしてもよい。いずれの場合も、金属用研磨液の調製には、上述した本発明の金属用研磨液の製造方法を適用することができる。
金属用研磨液材料を用いて研磨装置内で金属用研磨液を調製する方法としては、例えば、金属用研磨液材料を供給する配管と希釈剤を供給する配管とを、途中で合流させることにより配管内を流れる各溶液を混合し、これによって希釈された金属用研磨液を研磨パッドに供給する方法がある。
混合には、圧力を付した状態で狭い通路を通して液どうしを衝突混合する方法、配管中にガラス管などの充填物を詰め液体の流れを分流分離、合流させることを繰り返し行う方法、配管中に動力で回転する羽根を設ける方法など通常に行われている方法を採用することができる。
また、金属用研磨液を配管内で調製する方法として、金属用研磨液材料を供給する配管と希釈剤を供給する配管とを独立に設け、それぞれから所定量の液を研磨パッドに供給し、研磨パッドと被研磨面の相対運動によって両液を混合する方法もある。
なお、これらの配管により混合する方法では、金属用研磨液材料が複数の構成要素から構成されている場合、構成要素ごとに配管を設けることで、上述の各方法と同様に金属用研磨液を調製することができる。
本発明の研磨方法では、金属用研磨液材料の酸化剤を含む構成要素を40℃以下に保持し、他の構成要素を室温から100℃の範囲に加温し、かつ、これらの構成要素を混合した後、混合物も40℃以下とするようにすることもできる。温度が高いと溶解度が高くなるため、金属用研磨液の溶解度の低い構成要素の溶解度を上げるために好ましい方法である。
なお、成分(酸化剤以外)を室温から100℃の範囲で加温して溶解させた構成要素は、温度が下がると溶液中に成分が析出するため、温度が低下したその構成要素を用いる場合は、あらかじめ加温して析出物を溶解させる必要がある。これには、加温し溶解させた構成要素(混合液)を送液する手段と、析出物を含む液を攪拌しておき、送液し配管を加温して溶解させる手段とを設けることにより対処することができる。
なお、加温した構成要素を混合することにより、酸化剤を含む構成要素の温度が40℃より高くなると、酸化剤が分解してくる恐れがある。そこで、加温する構成要素の温度と、冷却する酸化剤を含む構成要素の温度と、その混合比とは、混合後の温度が40℃以下となるように定めることが好ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、研磨条件等はつぎの通りである。
(研磨条件)
定量ポンプを用いて研磨装置内の研磨定盤上の研磨パッドに金属用研磨液を供給しつつ、研磨パッドと基体とをそれぞれ回転させて、つぎの研磨条件により被研磨基体を研磨した。なお、研磨液は、特に記載のない限り、研磨前にあらかじめ調製して一容器(研磨液溜り)に保持し、これを定量ポンプへ供給した。
基体:厚さ1μmの銅膜を形成したシリコン基板
研磨パッド:IC1000(ロデール社製商品名)
研磨圧力:20.6kPa(210g/cm
基体と研磨定盤との相対速度:36m/min
(研磨品評価項目)
CMP速度:銅膜のCMP前後での膜厚差を電気抵抗値から換算して求めた。
エッチング速度:25℃、100rpmで攪拌した金属用研磨液への浸漬前後の銅層膜厚差を電気抵抗値から換算して求めた。
また、実際のCMP特性を評価するため、絶縁層中に深さ0.5μmの溝を形成して公知のスパッタ法によって銅膜を形成し、公知の熱処理によって埋め込んだシリコン基板を基体として用いて、CMPを行った。CMP後の基体の目視、光学顕微鏡観察、及び電子顕微鏡観察によりエロージョン及び研磨傷発生の有無を確認した。
(経時変化)
金属用研磨剤材料を調製した直後にそれを用いて金属用研磨剤を調製した場合と、金属用研磨剤材料を調製してから20日間経過した後にそれを用いて金属用研磨剤を調製した場合とについて、それぞれの金属用研磨剤を用いて上述の条件でCMPを行い、CMP速度及びエッチング速度を測定して、両者に差異があるか否か確認した。
実施例1
(1)金属用研磨液材料の調製
まず、酸化金属溶解剤であるDL−リンゴ酸(試薬特級)1.5重量部に水61.5重量部を加えて溶解して、溶液Aを得た。つぎに、保護膜形成剤であるベンゾトリアゾール2重量部を、保護膜形成剤の良溶媒であるエタノール5重量部に溶解させ、溶液Bを得た。最後に、溶液Aに溶液Bを加えて混合し、金属用研磨液材料である金属用研磨液10倍濃縮液を得た。
なお、得られた濃縮液は、0℃で保存しても固体の析出は見られなかった。
(2)金属用研磨液の調製
この金属用研磨液10倍濃縮液7重量部に、酸化剤である過酸化水素水(試薬特級、30%水溶液)33.2重量部を加え、さらに希釈剤として水63重量部を加えて希釈し、金属用研磨液を得た。
(3)CMP試験
得られた金属用研磨液を用いて、上述の研磨条件でCMPを行ったところ、CMP速度は129nm/min、エッチング速度は0.5nm/minといずれも良好であり、金属用研磨液材料の経時変化によるCMP速度及びエッチング速度の差は見られなかった。また、エロージョン及び研磨傷の発生も見られなかった。
実施例2
(1)金属用研磨液材料の調製
まず、DL−リンゴ酸(試薬特級)1.5重量部に水61重量部を加えて溶解し、溶液Aを得た。次に、保護膜形成剤であるベンゾトリアゾール2重量部及びポリアクリル酸アンモニウム塩0.5重量部を、これらの保護膜形成剤の良溶媒であるメタノール5重量部に溶解して、溶液Bを得た。最後に、溶液Aに溶液Bを加えて、金属用研磨液材料である金属用研磨液10倍濃縮液を得た。
(2)金属用研磨液の調製
得られた金属用研磨液10倍濃縮液7重量部を、希釈剤である水63重量部により希釈した後、さらに酸化剤である過酸化水素水(試薬特級、30%水溶液)33.2重量部を加えて、金属用研磨液を得た。
(3)CMP試験
得られた金属用研磨液を用い、実施例1と同様の条件でCMPを行ったところ、CMP速度は179nm/min、エッチング速度は0.5nm/minといずれも良好であり、かつ、金属用研磨液材料の経時変化によるCMP速度及びエッチング速度の差は見られなかった。また、エロージョン及び研磨傷の発生も見られなかった。
実施例3
(1)金属用研磨液材料の調製
DL−リンゴ酸(試薬特級)1.5重量部と、保護膜形成剤であるポリビニルアルコール0.3重量部とに、水58.7重量部を加えて溶解させ、溶液Aを得た。次に、保護膜形成剤であるトリルトリアゾール2.5重量部をアセトン7重量部に溶解させ、溶液Bを得た。最後に、溶液Aに溶液Bを加え、金属用研磨液10倍濃縮液を得た。
(2)金属用研磨液の調製
得られた金属用研磨液10倍濃縮液7重量部に、希釈剤である水63重量部を加えて希釈した後、これに酸化剤である過酸化水素水(試薬特級、30%水溶液)33.2重量部を加えて、金属用研磨液を得た。
(3)CMP試験
得られた金属用研磨液を用い、実施例1と同様の条件でCMPを行ったところ、CMP速度は170nm/min、エッチング速度は0.4nm/minと、いずれも良好であり、かつ、金属用研磨液材料の経時変化によるCMP速度及びエッチング速度の差は見られなかった。また、エロージョン及び研磨傷の発生も見られなかった。
実施例4
(1)金属用研磨液材料の調製
保護膜形成剤であるナフトトリアゾール0.06重量部を、保護膜形成剤の良溶媒であるメチルエチルケトン0.6重量部に溶解させて、溶液Aを得た。また、酸化剤である過ヨウ素酸カリウム10重量部を水20重量部に溶かして、溶液Bを得た。つぎに、溶液Aに溶液Bを加えて、溶液C(第1の構成要素)を得た。
一方、酸化金属溶解剤であるDL−酒石酸(試薬特級)0.05重量部に水30重量部を加えて溶解させ、溶液Dを得た。また、ナフトトリアゾール0.01重量部をメチルエチルケトン0.1重量部に溶解させて、溶液Eを得た後、溶液Dにこの溶液Eを加え、溶液F(第2の構成要素)を得た。
続いて、DL−酒石酸0.1重量部に水40重量部を加え溶解し、希釈剤である溶液G(希釈用水溶液)を得た。
以上により、金属用研磨液材料である溶液C,F,Gが得られた。
(2)金属用研磨液の調製
得られた溶液Cと、溶液Fと、溶液Gとを、重量比3/3/4で混合して、金属用研磨液を得た。
(3)CMP試験
得られた金属用研磨液を用いて、実施例1と同様の条件でCMPを施したところ、CMP速度は126nm/min、エッチング速度は0.4nm/minと、いずれも良好であり、かつ、金属用研磨液材料の経時変化によるCMP速度及びエッチング速度の差は見られなかった。また、エロージョン及び研磨傷の発生も見られなかった。
実施例5
(1)金属用研磨液材料の調製
DL−リンゴ酸(試薬特級)0.15重量部に、保護膜形成剤であるポリアクリルアミド0.4重量部と水50重量部とを加えて溶解させ、溶液Aを得た。つぎに、ベンゾトリアゾール0.2重量部をエチレングリコール0.7重量部に溶解させて溶液Bを得た。最後に、45℃に加温した溶液Aに、45℃に保持したまま溶液Bを加えて、金属用研磨液材料である溶液Cを得た。溶液Cも45℃に保持した。
(2)金属用研磨液の調製
この45℃の溶液Cを、45℃に加温した水20重量部により希釈した後、これに20℃の過酸化水素水(試薬特級、30%水溶液)33.2重量部を注ぎ込んで、金属用研磨液を得た。なお、得られた金属用研磨液は、36℃であった。
(3)CMP試験
上記金属用研磨液を用いて、実施例1と同様の条件でCMPを施したところ、CMP速度は167nm/min、エッチング速度は0.3nm/minと、いずれも良好であり、かつ、金属用研磨液材料の経時変化によるCMP速度及びエッチング速度の差は見られなかった。また、エロージョン及び研磨傷の発生も見られなかった。
実施例6
(1)金属用研磨液材料の調製
実施例1と同様にして、金属用研磨液材料を調製した。ただし、ベンゾトリアゾールは、溶解前にあらかじめ乳鉢に入れて乳棒で5分間粉砕した。粉砕後のベンゾトリアゾールを光学顕微鏡で観察した結果、平均粒径は80μmであった。この前処理により粒径を小さくしたベンゾトリアゾールを用いたことにより、本実施例では、ベンゾトリアゾールをエタノール中に完全に溶解させるのに要する時間が、5分から2分に短縮された。
(2)金属用研磨液の調製及びCMP試験
上記金属用研磨液材料を用い、実施例1と同様にして金属用研磨液を調製し、これを用いて実施例1と同様の条件でCMPを施した。その結果、CMP速度は130nm/min、エッチング速度は0.5nm/minと、いずれも良好であり、かつ、金属用研磨液材料の経時変化によるCMP速度及びエッチング速度の差は見られなかった。また、エロージョン及び研磨傷の発生も見られなかった。
実施例7
実施例2の金属用研磨液に、さらに砥粒として平均粒径100nmのコロイダルシリカ1重量部を加え、分散させて金属用研磨液を得た。これを用いて実施例1と同様の条件でCMPを施したところ、CMP速度は252nm/min、エッチング速度は0.6nm/minといずれも良好であり、かつ、金属用研磨液材料の経時変化によるCMP速度及びエッチング速度の差は見られなかった。また、エロージョン及び研磨傷の発生も見られなかった。
実施例8
実施例2と同様にして、金属用研磨液を調製した。ただし、金属用研磨液材料を、溶液Aに、溶液Bと、平均粒径48nmのコロイダルシリカ10重量部とを加えることにより調製した。
これを用いて実施例1と同様の条件でCMPを施したところ、CMP速度は250nm/min、エッチング速度は0.5nm/minといずれも良好であり、かつ、金属用研磨液材料の経時変化によるCMP速度及びエッチング速度の差は見られなかった。また、エロージョン及び研磨傷の発生も見られなかった。
実施例9
実施例1の金属用研磨液を用い、実施例1と同様の条件でCMPを施した。ただし、金属用研磨液は、配管内で混合して調製した。すなわち、金属用研磨液10倍濃縮液7重量部に水63重量部を加えて希釈した希釈液と、過酸化水素水(試薬特級、30%水溶液)とを、それぞれ別々の容器に入れ、各々の容器から定量ポンプでそれぞれ液を送って、希釈液/過酸化水素水=7/3の供給速度比(体積比)で合流させ、内部に長さ3mmのガラス管を多数充填させた配管内を通過させた後、装置内部の研磨パッドに供給して研磨を行った。
その結果、CMP速度は129nm/min、エッチング速度は0.5nm/minといずれも良好であり、かつ、金属用研磨液材料の経時変化によるCMP速度及びエッチング速度の差は見られなかった。また、エロージョン及び研磨傷の発生も見られなかった。
実施例10
実施例4の金属用研磨液を用い、実施例1と同様にしてCMPを行った。ただし、金属用研磨液は、配管内で混合して調製した。すなわち、溶液Cと、溶液F及び溶液Gの混合液とをそれぞれ別の容器に入れ、各々の容器から別々に定量ポンプで液を送って、溶液C/(溶液F+溶液G)=3/7の供給速度比(体積比)で合流させ、装置内部の研磨パッドに供給して研磨を行った。
その結果、CMP速度は125nm/min、エッチング速度は0.4nm/minといずれも良好であり、かつ金属用研磨液材料の経時変化によるCMP速度及びエッチング速度には差の差は見られなかった。また、エロージョン及び研磨傷の発生も見られなかった。
実施例11
金属用研磨液10倍濃縮液の調製においてエタノールの添加量を5重量部から50重量部に増やした以外は実施例1と同様にして金属用研磨液を調製し、これを用いてCMPを行ったところ、エッチング速度は0.5nm/min、CMP速度は62nm/minであった。
実施例12
(1)金属用研磨液材料の調製
まず、保護膜形成剤であるベンゾトリアゾール2重量部に水66重量部を加え、さらに界面活性剤であるポリオキシエチレン(10)グリコール0.4重量部を加えて、40℃の湯浴中で攪拌羽根により攪拌し、溶解させた。この溶液に、さらに酸化金属溶解剤であるDL−リンゴ酸(試薬特級)1.5重量部を加えて溶かし、金属用研磨液材料である金属用研磨液10倍濃縮液を得た。
なお、得られた濃縮液は、0℃で保存しても固体の析出は見られなかった。
(2)金属用研磨液の調製
この金属用研磨剤10倍濃縮液7重量部に、希釈剤として水63重量部を加えて希釈し、これに酸化剤として過酸化水素水(試薬特級、30%水溶液)33.2重量部を加えて、金属用研磨液を得た。
(3)CMP試験
得られた金属用研磨液を用いて、実施例1と同様にしてCMPを行ったところ、CMP速度は187nm/min、エッチング速度は0.7nm/minといずれも良好であり、かつ、金属用研磨液材料の経時変化によるCMP速度及びエッチング速度の差は見られなかった。また、エロージョン及び研磨傷の発生も見られなかった。
実施例13
保護膜形成剤であるトリルトリアゾール2重量部に、水66重量部を加え、続いて、やはり保護膜形成剤であるポリオキシエチレン(9)オクチルフェニルエーテル0.4重量部を加え、40℃の湯浴中で攪拌羽根により攪拌し溶解させた。この溶液に、さらにDL−酒石酸(試薬特級)1.5重量部を加えて溶かし、金属用研磨液材料である金属用研磨液10倍濃縮液を得た。
(2)金属用研磨液の調製
得られた金属用研磨液10倍濃縮液7重量部に、水63重量部を加えて希釈し、これに過酸化水素水(試薬特級、30%水溶液)33.2重量部を加えて、金属用研磨液を得た。
(3)CMP試験
この金属用研磨液を用いて、実施例1と同様にしてCMPを行ったところ、CMP速度は186nm/min、エッチング速度は0.3nm/minといずれも良好であり、かつ、金属用研磨液材料の経時変化によるCMP速度及びエッチング速度の差は見られなかった。また、エロージョン及び研磨傷の発生も見られなかった。
実施例14
(1)金属用研磨液材料の調製
保護膜形成剤であるベンゾトリアゾール0.05重量部と、界面活性剤である硫酸ブチルアンモニウム0.1重量部と、酸化剤である過ヨウ素酸カリウム10重量部とを、水20重量部に加え、40℃の湯浴中で攪拌羽根により攪拌して溶かし、溶液Aを得た。
次に、酸化金属溶解剤であるDL−酒石酸(試薬特級)0.05重量部に水30重量部を加えて溶解させ、これに保護膜形成剤ベンゾトリアゾール0.15重量部と、界面活性剤である硫酸ブチルアンモニウム0.1重量部とを加え、40℃の湯浴中で攪拌羽根により攪拌して溶かし、溶液Bを得た。
以上により、金属用研磨剤材料である溶液A及び溶液Bが得られた。また、DL−酒石酸0.1重量部に水40重量部を加え、溶解させて希釈用水溶液を得た。
(2)金属用研磨剤の調製
得られた溶液A、溶液B及び希釈用水溶液を、重量比3/3/4で混合して、金属用研磨液を得た。
(3)CMP試験
この金属用研磨液を用い、実施例1と同様にしてCMPを行ったところ、CMP速度は126nm/min、エッチング速度は0.4nm/minといずれも良好であり、かつ、金属用研磨液材料の経時変化によるCMP速度及びエッチング速度の差は見られなかった。また、エロージョン及び研磨傷の発生も見られなかった。
実施例15
(1)金属用研磨液材料の調製
DL−リンゴ酸(試薬特級)0.15重量部に、水50重量部を加えて溶解させ、得られた溶液を45℃に保持しつつ、ベンゾトリアゾール0.2重量部と、界面活性剤であるコハク酸アミド0.7重量部とを加えて溶解させ、溶液Aを得た。
(2)金属用研磨液の調製
この45℃の溶液Aを、45℃に加温した水20重量部により希釈した後、得られた希釈液に20℃の過酸化水素水(試薬特級、30%水溶液)33.2重量部を注ぎ込んで、金属用研磨液を得た。得られた研磨液は36℃であった。
(3)CMP試験
この金属用研磨液を用い、実施例1と同様にしてCMPを行ったところ、CMP速度は127nm/min、エッチング速度は0.3nm/minといずれも良好であり、かつ、金属用研磨液材料の経時変化によるCMP速度及びエッチング速度の差は見られなかった。また、エロージョン及び研磨傷の発生も見られなかった。
実施例16
(1)金属用研磨液材料の調製
実施例12と同様にして、金属用研磨液材料を調製した。ただし、本実施例では、ベンゾトリアゾールに実施例6と同様の前処理を施し、平均粒径を80μmとした。これにより、ベンゾトリアゾールを完全に溶解させるのに要する時間が15分から5分に短縮された。
(2)金属用研磨液の調製及びCMP試験
上記金属用研磨液材料を用い、実施例12と同様にして金属用研磨液を調製し、これを用いて実施例1と同様にしてCMPを行った。その結果、CMP速度は185nm/min、エッチング速度は0.6nm/minといずれも良好であり、かつ金属用研磨液材料の経時変化によるCMP速度及びエッチング速度の差は見られなかった。また、エロージョン及び研磨傷の発生も見られなかった。
実施例17
実施例12の金属用研磨液に、さらに砥粒として平均粒径100nmのコロイダルシリカ1重量部を加え、分散させて金属用研磨液を得た。これを用いて実施例1と同様にしてCMPを行ったところ、CMP速度は250nm/min、エッチング速度は0.6nm/minといずれも良好であり、かつ、金属用研磨液材料の経時変化によるCMP速度及びエッチング速度の差は見られなかった。また、エロージョン及び研磨傷の発生も見られなかった。
実施例18
実施例12と同様にして、金属用研磨液を調製した。ただし、金属用研磨液材料を、実施例12の金属用研磨液10倍濃縮液に、さらに平均粒径48nmのコロイダルシリカ10重量部を加えることにより調製した。
これを用いて実施例1と同様の条件でCMPを施したところ、CMP速度は244nm/min、エッチング速度は0.6nm/minといずれも良好であり、かつ、金属用研磨液材料の経時変化によるCMP速度及びエッチング速度の差は見られなかった。また、エロージョン及び研磨傷の発生も見られなかった。
実施例19
実施例12の金属用研磨液を用いて、実施例1と同様の条件でCMPを施した。ただし、金属用研磨液は、配管内で混合して調製した。すなわち、金属用研磨液10倍濃縮液7重量部に水63重量部を加えて希釈した希釈液と、過酸化水素水(試薬特級、30%水溶液)33.2重量部とを、それぞれ別の容器に入れ、各々の容器から別々に定量ポンプで液を送って、希釈液/過酸化水素水=7/3の供給速度比(体積比)で合流させ、内部に長さ3mmのガラス管を多数充填させた配管内を通過させた後、装置内部の研磨パッドに供給して研磨を行った。
その結果、CMP速度は177nm/min、エッチング速度は0.5nm/minといずれも良好であり、かつ、金属用研磨液材料の経時変化によるCMP速度及びエッチング速度の差は見られなかった。また、エロージョン及び研磨傷の発生も見られなかった。
実施例20
実施例14の金属用研磨液を用い、実施例1と同様にしてCMPを行った。ただし、金属用研磨液は、配管内で混合して調製した。すなわち、溶液Aと、溶液B及び希釈用水溶液の混合液とをそれぞれ別の容器に入れ、各々の容器から別々に定量ポンプで液を送って、溶液A/(溶液B+希釈用水溶液)=3/7の供給速度比(体積比)で合流させ、装置内部の研磨パッドに供給して研磨を行った。
その結果、CMP速度は124nm/min、エッチング速度は0.4nm/minといずれも良好であり、かつ、金属用研磨液材料の経時変化によるCMP速度及びエッチング速度の差は見られなかった。また、エロージョン及び研磨傷の発生も見られなかった。
比較例1
エタノールを添加しない以外は実施例1と同様にして、金属用研磨液10倍濃縮液を調製した。これを5℃で冷蔵保存したところ、固体が析出してしまい、そのまま金属用研磨液を調製して評価することが困難となった。
比較例2
ポリオキシエチレン(10)グリコールを添加しない以外は実施例12と同様にして、金属用研磨液10倍濃縮液を調製した。これを5℃で冷蔵保存したところ、固体が析出してしまい、そのまま金属用研磨液を調製して評価することが困難となった。
本発明は、高濃度の金属用研磨液材料を提供するものであって、運搬・貯蔵等にはこの高濃度研磨液材料を用い、実際の研磨を行う場合には、これに希釈剤等を加えて研磨液を容易に調製することができる。従って、本発明によれば、金属用研磨液の製造コストを低減し、研磨液貯蔵・運搬容器の使用個数を減らし、また、保管場所や研磨装置のタンク等の容量を小さくすることができ、かつ、信頼性の高い金属膜の埋め込みパターンを形成することができる。ゆえに、本発明は、特に半導体装置の製造等において有用である。

Claims (8)

  1. 保護膜形成剤と、前記保護膜形成剤の溶解補助剤と、を含有してなる金属用研磨液材料であり、
    上記保護膜形成剤は、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸塩及び水溶性ポリマから選択される少なくとも一種と、室温での水に対する溶解度が5重量%未満のアゾールと、を含有してなり、
    上記溶解補助剤は、上記アゾールの溶解度が25g/L以上の有機溶媒であり、
    上記金属用研磨液材料は濃縮されたものであり、希釈剤により希釈され、少なくとも酸化剤及び水を含む構成要素と混合されて使用される金属用研磨液材料。
  2. さらに酸化金属溶解剤を含有してなる請求項記載の金属用研磨液材料。
  3. 前記保護膜形成剤は、ベンゾトリアゾール及びトリルトリアゾールから選択される少なくとも一つを含有してなる請求項1又は2記載の金属用研磨液材料。
  4. 上記金属用研磨液材料は、10倍以上に濃縮されたものである請求項1〜のいずれか記載の金属用研磨液材料。
  5. 保護膜形成剤と、前記保護膜形成剤の溶解補助剤と、を含有してなる金属用研磨液材料であり、
    上記保護膜形成剤は、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸塩及び水溶性ポリマから選択される少なくとも一種と、室温での水に対する溶解度が5重量%未満のアゾールと、を含有してなり、
    上記溶解補助剤は、アルコール、エーテル及びケトンから選ばれる少なくとも一種の有機溶媒であり、
    上記金属用研磨液材料は濃縮されたものであり、希釈剤により希釈され、少なくとも酸化剤及び水を含む構成要素と混合されて使用される金属用研磨液材料。
  6. さらに酸化金属溶解剤を含有してなる請求項記載の金属用研磨液材料。
  7. 前記保護膜形成剤は、ベンゾトリアゾール及びトリルトリアゾールから選択される少なくとも一つを含有してなる請求項5又は6記載の金属用研磨液材料。
  8. 上記金属用研磨液材料は、10倍以上に濃縮されたものである請求項のいずれか記載の金属用研磨液材料。
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