JP4812176B2 - 固体電解質型燃料電池セルおよび燃料電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体電解質型燃料電池セルおよび燃料電池に関し、特に、空気極の表面に、固体電解質、燃料極を順次積層してなり、空気極、固体電解質、燃料極が同時に焼結された固体電解質型燃料電池セルおよび燃料電池に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来より、固体電解質型燃料電池はその作動温度が900〜1050℃と高温であるため発電効率が高く、第3世代の発電システムとして期待されている。
【0003】
一般に固体電解質型燃料電池セルには、円筒型と平板型が知られている。平板型燃料電池セルは、発電の単位体積当たり出力密度は高いという特徴を有するが、実用化に関してはガスシール不完全性やセル内の温度分布の不均一性などの問題がある。それに対して、円筒型燃料電池セルでは、出力密度は低いものの、セルの機械的強度が高く、またセル内の温度の均一性が保てるという特徴がある。両形状の固体電解質型燃料電池セルとも、それぞれの特徴を生かして積極的に研究開発が進められている。
【0004】
円筒型燃料電池の単セルは、図4に示すように開気孔率30〜40%程度のLaMnO3系材料からなる多孔性の空気極支持管2を形成し、その表面にY2O3安定化ZrO2からなる固体電解質3を被覆し、さらにこの表面に多孔性のNi−ジルコニアの燃料極4を設けて構成されている。
【0005】
燃料電池のモジュールにおいては、各単セルはLaCrO3系の集電体(インターコネクタ)5を介して接続される。発電は、空気極支持管2内部に空気(酸素)6を、外部に燃料(水素)7を流し、1000〜1050℃の温度で行われる。
【0006】
上記のような燃料電池セルを製造する方法としては、近年ではセルの製造工程を簡略化し且つ製造コストを低減するために、各構成材料のうち少なくとも2つを同時焼成する、いわゆる共焼結法が提案されている。この共焼結法は、例えば、円筒状の空気極成形体に固体電解質成形体及び集電体成形体をロール状に巻き付けて同時焼成を行い、その後固体電解質層表面に燃料極層を形成する方法である。またプロセス簡略化のために、固体電解質成形体の表面にさらに燃料極成形体を積層して、同時焼成する共焼結法も提案されている。
【0007】
この共焼結法は非常に簡単なプロセスで製造工程数も少なく、セルの製造時の歩留まり向上、コスト低減に有利である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
燃料極は金属粒子を主成分とし、他のセラミックスからなる空気極、固体電解質、集電体とは熱膨張係数が大きく異なるため、空気極成形体に、固体電解質成形体、集電体成形体および燃料極成形体を積層して、同時焼成する場合には、燃料極成形体の厚みを薄くしなければ剥離やクラックが発生するため、そのは厚みは20μm以下とされていた。
【0009】
しかしながら、通常、燃料電池は一方のセルの集電体と他方のセルの燃料極の一部分を金属フェルトで接続し、一方のセルの燃料極と他方のセルの燃料極を金属フェルトで一部分接続して、複数のセルを電気的に接続する必要があるが、上記の20μm以下の厚さの燃料極では電気抵抗が高く、発生した電流を効率良く集電することができず、結果として発電効率が低下するという問題があった。
【0010】
即ち、燃料極と集電体、燃料極同士は、一部接続されていたため、例えば金属フェルトに接していない燃料極の部分では、電流が燃料極中を金属フェルトまで流れる必要があるが、上記のように、共焼結法では燃料極を薄くせざるを得ないため、燃料極の電気抵抗が高く、流れる電流が少なくなるという問題があった。
【0011】
一方、空気極成形体、固体電解質成形体を積層して、同時焼成した後、固体電解質に燃料極を焼き付けて形成する場合には、膜厚を厚くすることはできるが、燃料極を構成する金属粒子の固体電解質表面への固着力が弱く、発電後に界面剥離を伴うという問題があった。
【0012】
そこで、本出願人は、先に、空気極の表面に、固体電解質、第1燃料極、第2燃料極を順次積層してなり、前記空気極、前記固体電解質、前記第1燃料極が同時焼成され、前記第2燃料極が前記第1燃料極の表面に焼き付けて形成されている固体電解質型燃料電池セルを提案した。
【0013】
この固体電解質型燃料電池セルでは、薄い第1燃料極を同時焼成により形成した後、この第1燃料極の表面に、例えば膜厚100〜200μmの第2燃料極を焼き付けて形成することができ、厚い燃料極を形成することができるため、電気抵抗を小さくすることができ、発生した電流が効率よく燃料極中を流れ、集電効果を向上し、発電効率を向上することができる。
【0014】
しかしながら、空気極、固体電解質、集電体及び第1燃料極(3重点での電極反応に主に寄与する部材)を1500℃付近の高温で4層共焼結により作製し、その後第1燃料極表面に第2燃料極(主に集電に寄与する部材)を1000℃程度の還元雰囲気中で形成したセルを発電すると、所定の初期性能は発現するものの、時間とともに性能が劣化するものが発生したり、単位面積当たりの電流密度をある値以上に増やすことが困難であるという問題が発生した。
【0015】
セルを構成する各部材間の接合状態を観察したところ、第1燃料極と第2燃料極との界面で第2燃料極が局部的に剥離していた。剥離箇所は、セルを径方向でみると特に集電体の近傍、つまり第2燃料極の端部で発生頻度が高かった。
【0016】
この現象は、第2燃料極シートを第1燃料極表面に巻付けて焼き付けられるが、この第2燃料極シートの柔軟性が低いため、巻付けた直後に第2燃料極シートが元のフラットな状態に戻ろうとする作用が働き、その結果第2燃料極シートの剥離につながるものであると考察した。更に、シート厚が200μm前後のものを使用しており、一般的に巻付けに使用する他の固体電解質シート等よりも厚いがために、よりフラットな状態に戻ろうとする作用が助長されたためであり、その結果、膜間の抵抗成分が増加し、性能の劣化現象が発生することを見出し、本発明に至った。
【0017】
本発明では、第1および第2燃料極間の界面形成に着眼し、発電時の苛酷な環境下におかれても強固な界面結合を維持し、初期の高い出力性能を長期的に維持できる固体電解質型燃料電池セルおよび燃料電池を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の固体電解質型燃料電池セルは、空気極の表面に、固体電解質、第1燃料極、第2燃料極を順次積層してなり、前記空気極、前記固体電解質、前記第1燃料極が同時焼成され、前記第2燃料極が前記第1燃料極の表面に焼き付けて形成されるとともに、前記第2燃料極の厚みが100〜200μmであり、さらに、前記第1燃料極および前記第2燃料極中にセラミック粒子を含有し、該第2燃料極の前記第1燃料極側に形成された下層部のセラミック粒子の平均粒径が、前記第1燃料極のセラミック粒子の平均粒径よりも小さ
いことを特徴とする。
【0019】
第1燃料極を構成する金属粒子、例えばNi粒子は、3重点での電極反応を促進するための反応場を多数設けるため微粒化することが好ましく、一方第2燃料極を構成する金属粒子、例えばNi粒子は集電性を上げるためにNi粒子同士がネットワークを組み、且つ電極反応の際に使用する水素ガス、生成する水蒸気ガス等を系外に排出させる必要性があることから粗粒子であることが好ましく、形成する膜は多孔質であることが好ましい。
【0020】
また、それぞれの第1、第2燃料極を構成するセラミック粒子、例えばZrO2粒子は、膜の骨格組織を形成するのに重要な役割を担っており、他方、膜間の結合、特に固体電解質−第1燃料極間、第1燃料極−第2燃料極間において強固な結合状態を形成維持できるか否かは、上記ZrO2粒子間を如何に工夫して結合させるかにかかっている。
【0021】
本発明では、第2燃料極中の下層部(第1燃料極と当接する部分)におけるセラミック粒子の平均粒径を、第1燃料極のセラミック粒子の平均粒径よりも小さく制御することで、上記不具合を解決した。即ち、例えば、固体電解質を構成するZrO2膜と高温焼結により強固に結合されている第1燃料極内部のZrO2粒子の表面に、より微粒でサブミクロンレベルのZrO2粒子を付着堆積させ焼結(焼き付け)されるが、第2燃料極の成膜は共焼結温度に比較するとより低温(1000℃)での焼結により膜形成が行われるため、上記プロセスにより第2燃料極の下層部に存在するZrO2微粒子は第1燃料極のZrO2粒子と結合一体化し、強固な界面を形成できる。
【0022】
本発明では、第2燃料極における下層部のセラミック粒子の平均粒径は、上層部のセラミック粒子の平均粒径よりも小さいことが望ましい。特に、第2燃料極のセラミック粒子の平均粒径は、上層部が1〜2μm、下層部が0.1〜1μmであることが望ましい。
【0023】
このように、第2燃料極の上層部を構成するセラミック粒子の平均粒径を、下層部を構成するセラミック粒子よりも粗くすることにより、第2燃料極の膜自体を多孔質化させることができ、第1燃料極内で進行する電極反応に伴い還元ガスおよび水蒸気ガスの出入りを充分に行うことができる。
【0024】
さらに、本発明では、第2燃料極の上層部の厚みが100〜130μm、下層部の厚みが30〜50μmであることが望ましい。これにより、第1燃料極との接合強度を高くできるとともに、電極反応に関与するガスの流入・排出が良好であり、しかも集電能が良好で、熱膨張のミスマッチにより膜の剥離発生が生じることがない。
【0025】
本発明の燃料電池は、反応容器内に、上記した固体電解質型燃料電池セルを複数収容してなるものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の固体電解質型燃料電池セルは、図1に示すように固体電解質31の内面に円筒状の空気極32、外面に燃料極33を形成してセル本体34が形成されており、空気極32には集電体(インターコネクタ)35が電気的に接続されている。
【0027】
即ち、固体電解質31の一部に切欠部36が形成され、固体電解質31の内面に形成されている空気極32の一部が露出しており、この露出面37及び切欠部36近傍の固体電解質31の表面が集電体35により被覆され、集電体35が、固体電解質31の両端部表面及び固体電解質31の切欠部36から露出した空気極32の表面に接合されている。
【0028】
空気極32と電気的に接続する集電体35は、セル本体34の外面に形成され、ほぼ段差のない連続同一面39を覆うように形成されており、燃料極33とは電気的に接続されていない。連続同一面39は、固体電解質31の両端部と空気極32の一部とが連続したほぼ同一面となるまで、固体電解質31の両端部間を研磨することにより形成される。
【0029】
そして、本発明の固体電解質型燃料電池セルでは、燃料極33が、固体電解質31、空気極32、集電体35と同時焼成により形成された第1燃料極33aと、この第1燃料極33aの表面に焼き付けて形成された第2燃料極33bとから構成されている。これらの第1燃料極33aと第2燃料極33b中には、セラミック粒子を含有している。このセラミック粒子としては、固体電解質を形成するZrO2系材料との熱膨脹率のマッチングという点から、ZrO2が望ましい。第2燃料極33bは、図2に示すように、セラミック粒子の粒径により上層部33b1と下層部33b2により構成されている。
【0030】
第1燃料極33aの膜厚は5〜20μm、第2燃料極33bの上層部33b1の膜厚は100〜130μm、下層部33b2の膜厚は30〜50μmとされている。
【0031】
第2燃料極33bの上層部33b1における膜厚を100〜130μmとしたのは、100μmよりも薄くなると電気抵抗が未だ大きく、集電効果が小さいからである。また、130μmよりも厚くなると、他の固体電解質等の部材間との熱膨張のミスマッチにより膜の剥離を引き起こし易いからである。
【0032】
一方、第2燃料極33bの下層部33b2の膜厚を30〜50μmとしたのは、30μmよりも薄くなると第1燃料極33aとの結合力が低下し、また50μmよりも厚くなると第1燃料極33a内での電極反応に伴うガスの流入排出の透過速度が遅くなり、経時的に性能劣化が生じやすいからである。
【0033】
第2燃料極33bの上層部33b1の膜厚を100〜130μm、下層部33b2の膜厚を30〜50μmとすることにより、第1燃料極33aとの接合強度を高くできるとともに、電極反応に関与するガスの流入・排出が良好であり、しかも集電能が良好で、熱膨張のミスマッチにより膜の剥離発生を抑制できる。
【0034】
第1燃料極33aのセラミック粒子の平均粒径は1〜2μmとされている。これは、共焼結により作製される第1燃料極33aは1500℃付近の高温熱処理により成膜を施すため、この範囲内ならば固体電解質との界面形成が構造的に安定しており、またNi粒子の反応サイト数という観点からもNi粒子の支持のための骨格を十分に形成することができる。一方、第1燃料極33aのセラミック粒子の平均粒径が1μmよりも小さい場合には共焼結の際過緻密化を引き起こし、固体電解質との界面へ向かってのクラックの成長を促す傾向があり、2μmよりも大きい場合にはNi粒子の骨格による支持力が弱くなり、結果的に固体電解質との界面固着力が低下する傾向があるからである。
【0035】
また、第2燃料極33bの上層部33b1および下層部33b2を構成するセラミック粒子の平均粒径は、上層部33b1では比較的粗粒子、一方下層部33b2では微粒子である必要がある。
【0036】
上層部33b1のセラミック粒子は、集電能に関わる金属粒子の粒成長を抑制し、且つネットワークを形成させうるための骨格形成を担い、更にガスの透過性を良好に保つために膜自体をより多孔質化させる必要があることから、平均粒径は1〜2μmの範囲が望ましい。一方、平均粒径が1μmよりも小さくなると、ガスの透過性が悪く性能が劣化するという事態を招きやすく、2μmよりも大きくなると骨格の形成が不十分でNi粒子の粒成長を招きやすくなる。
【0037】
一方、下層部33b2のセラミック粒子は、その更に下側に位置する第1燃料極33aとの接合を強固にする役割を担っている。そのため、第2燃料極33bの下層部33b2におけるセラミック粒子の平均粒径を、第1燃料極33a中のセラミック粒子の平均粒径よりも小さくすることが重要である。
【0038】
このように、固体電解質に高温焼結により強固に結合されている第1燃料極内部のZrO2セラミック粒子の表面に、より微粒でサブミクロンレベルのZrO2粒子を付着堆積させ、焼き付けることにより、第2燃料極33bの下層部33b2に存在するセラミック微粒子は第1燃料極33aのセラミック粒子と結合一体化し、強固な界面を形成できる。
【0039】
第1燃料極33aの骨格を形成しているより粗いセラミック粒子表面に、より微粒なセラミック粒子を付着堆積させ、その後焼き付けることで強固な界面を形成するという点から、下層部33b2を構成するセラミック粒子の平均粒径は0.1〜1μmの範囲が望ましく、特には、0.4〜0.7μmが望ましい。
【0040】
一方、下層部33b2のセラミック粒子の平均粒径が0.1μmよりも小さくなると、膜内の緻密化が進行し電極材としての役割を失い、また1μmよりも大きくなると第1燃料極33aとの接合強度が低下するからである。
【0041】
このような上層部33b1と下層部33b2で組織構造の異なる第2燃料極33bの作製方法について説明する。第2燃料極33bを構成する金属粒子は平均粒径が7〜10μmの粉体を用い、一方膜の骨格形成に用いるセラミック(ZrO2)粒子は平均粒子径が1〜2μmの粉体と、例えばZrO2を生成するZrおよびYの金属有機塩を用いる。
【0042】
これらの出発原料を所定の調合組成でスラリー化し、例えばドクターブレード等の成形手段により厚さ150μm程度のシートを成形する。成形時、調製したスラリー中の平均粒径が1〜2μmのセラミック粉体はシートの表面(上)側に主に存在し、一方ZrおよびYの金属有機塩は反対のフィルム(下)側に沈降し主に存在する。
【0043】
このような現象は、スラリー中のZrO2源である粉体と金属有機塩で分子量が異なるためである。より分子量の大きい金属有機塩はより小さい粉体に比べると成形時に沈降分離し易く、しかも金属有機塩はその側鎖同士でからみやすくネットワーク構造を形成しやすいために、例えばNiからなる金属粒子を包含した状態で沈降する。また、上層および下層部でのそれぞれの膜厚の制御は、スラリー中の溶媒量、すなわち粘度を調整することにより可能となる。
【0044】
第1燃料極を構成するセラミック粒子と第2燃料極の下層部を構成するセラミック粒子との各粒子径の大小関係について、図2を用いて説明する。相互間で強固な結合界面を形成するためには、界面近傍でのセラミック粒子同士の焼結を促進させる必要がある。そのためには、第1燃料極のより粗粒なセラミック粒子41の表面に、例えば金属有機塩から生成させうるようなよりサブミクロンなセラミック粒子42を付着堆積させ熱処理を加える。そうすることにより、よりサブミクロンなセラミック粒子42はより粗粒なセラミック粒子41表面を覆うように成長し、その結果界面と垂直方向にセラミック粒子による骨格が延びていく組織構造を成す。
【0045】
尚、図2において、符号43は第2燃料極33bの上層部33b1のセラミック粒子、45は第1燃料極33aのNi粒子、46は第2燃料極33bの下層部33b2のNi粒子、47は第2燃料極33bの上層部33b1のNi粒子を示す。
【0046】
固体電解質31は、例えば3〜15モル%のY2O3含有した部分安定化あるいは安定化ZrO2が用いられる。また、空気極32としては、例えば、LaをCa又はSrで10〜30原子%、Yで5〜20原子%置換したLaMnO3が用いられ、集電体35としては、例えば、CrをMgで10〜30原子%置換したLaCrO3が用いられる。
【0047】
第1燃料極33a及び第2燃料極33bとしては、50〜80重量%Niを含むZrO2(Y2O3含有)サーメットが好適に用いられる。第1燃料極に用いるNi粉体は平均粒径が0.2〜0.6μm、YSZ粉体は0.4〜0.8μmで、膜厚は5〜20μmの範囲に制御する。
【0048】
固体電解質31、空気極32、集電体35、第1燃料極33a及び第2燃料極33bとしては、上記例に限定されるものではなく、公知材料を用いても良い。
【0049】
以上のように構成された固体電解質型燃料電池セルの製法は、まず、円筒状の空気極成形体を形成する。この円筒状の空気極成形体は、例えば所定の調合組成に従いLa2O3、Y2O3、CaCO3およびMn2O3の素原料を秤量、混合する。
【0050】
この後、例えば、1500℃程度の温度で2〜10時間仮焼し、その後4〜8μmの粒度に粉砕調製する。調製した粉体に、バインダーを混合、混練し押出成形法により円筒状の空気極成形体を作製し、さらに脱バインダー処理し、1200〜1250℃で仮焼を行うことで円筒状の空気極仮焼体を作製する。
【0051】
次に、固体電解質成形体を貼り付けるためのペーストの作製について説明する。Mn拡散防止層としての機能を有するペーストは、Y2O3、CaOの少なくとも一種を含有するZrO2粉末と、YDC粉末(Y2O3を30重量%ドープしたCeO2)とを混合仮焼し、その後粒度調製した上記混合粉末に溶媒としてトルエンを添加し作製する。このペーストを円筒状の空気極仮焼体の表面に塗布してMn拡散防止層の塗布膜を形成した。
【0052】
シート状の第1固体電解質成形体として、所定粉末にトルエン、バインダー、市販の分散剤を加えてスラリー化したものをドクターブレード等の方法により、例えば、100〜120μmの厚さに成形したものを用い、円筒状の空気極仮焼体の表面に形成されたMn拡散防止層の塗布膜の表面に、第1固体電解質成形体を貼り付けて仮焼し、空気極仮焼体の表面に第1固体電解質仮焼体を形成する。尚、第1固体電解質成形体を仮焼したが、仮焼しなくても良い。
【0053】
次に、シート状の第1燃料極成形体を作製する。まず、例えば、所定比率に調製したNi/YSZ混合粉体にトルエン、バインダーを加えてスラリー化したものを準備する。
【0054】
前記第1固体電解質成形体の作製と同様、成形、例えば、厚さ15μmのシート状の第2固体電解質成形体を成形、乾燥する。この第2固体電解質成形体上に第1燃料極層成形体を印刷、乾燥した後、第1固体電解質仮焼体上に、第1燃料極層成形体が形成された第2固体電解質成形体を、第1固体電解質仮焼体に第2固体電解質成形体が当接するように巻き付け、積層する。
【0055】
次に、固体電解質成形体の調製同様、100〜120μmの厚さに成形した集電体成形体を所定箇所に貼り付ける。
【0056】
この後、円筒状空気極仮焼体、Mn拡散防止層の塗布膜、第1固体電解質仮焼体、第2固体電解質成形体、第1燃料極成形体および集電体成形体の積層体は、例えば、大気中1400〜1550℃の温度で、4層同時に共焼成される。
【0057】
次に、シート状の第2燃料極成形体を作製する。所定比率に調製したNi粉体、Y2O3を含有するZrO2(YSZ)粉体、ZrおよびYの金属有機塩に、トルエン、バインダーを加えてスラリー化したものを準備し、その後ドクターブレード等の方法により150〜250μmの厚さのシートを成形する。
【0058】
第2燃料極は、空気極、固体電解質、第1燃料極および集電体を共焼結させた後に、シート状の第2燃料極成形体を第1燃料極上に積層し、還元雰囲気下において1000℃以下で熱処理(焼き付け)することにより行う。熱処理温度が1000℃よりも高くなると、膜の焼成収縮に伴って膜内部に亀裂が進行し、更には界面を横切って第1燃料極、固体電解質内部にまでクラックが生成するおそれがあるからである。また、Ni粉体を出発粉体に用いていることから、酸化に因る体積膨張からの膜剥離を阻止するため、還元雰囲気下での成膜が好ましい。
【0059】
このように作製した第2燃料極の膜は、膜の表面状態が優れ、また下地の第1燃料極膜との界面の接合状態も良好である。また、シートの巻き付けによる形成を施しているので、膜厚が均一である。集電機能と併せ、部材間との構造的な安定性を図れるように第2燃料極を構成する異なるYSZ源の混在、混在比率、粒子径比率、更には膜厚の制御を行っているので、界面剥離、膜内部のクラック生成に伴う分極、実抵抗の増大を阻止でき、単セルで得た初期の高い出力密度を良好に集電でき、長時間にわたって維持できる。
【0060】
尚、上記例では円筒状の固体電解質型燃料電池セルにおいて説明したが、平板型燃料電池セルであっても良い。
【0061】
さらに、上記例では、空気極仮焼体、第1固体電解質仮焼体を形成した例について説明したが、これらが、空気極成形体、第1固体電解質成形体であっても良い。
【0062】
本発明の燃料電池は、例えば、図3に示すように、反応容器51内に、酸素含有ガス室仕切板53、燃焼室仕切板55、燃料ガス室仕切板57を用いて酸素含有ガス室A、燃焼室B、反応室C、燃料ガス室Dが形成されている。反応容器51内には、上記した複数の有底筒状の固体電解質型燃料電池セル59が収容されており、これらの固体電解質型燃料電池セル59は、燃焼室仕切板55に形成されたセル挿入孔60に挿入固定されており、その開口部61は燃焼室仕切板55から燃焼室B内に突出しており、その内部には酸素含有ガス室仕切板53に固定された酸素含有ガス導入管63の一端が挿入されている。燃焼室仕切板55には、余剰の未反応燃料ガスを反応室Cから燃焼室Bに排出するために、複数の排気孔64が形成されており、燃料ガス室仕切板57には、燃料ガス室Dから反応室C内に供給するための供給孔が形成されている。
【0063】
また、反応容器51には、例えば水素からなる燃料ガスを導入する燃料ガス導入口65、例えば、空気を導入する酸素含有ガス導入口67、燃焼室B内で燃焼したガスを排出するための排気口69が形成されている。
【0064】
このような固体電解質型燃料電池は、酸素含有ガス室Aからの酸素含有ガス、例えば空気を、酸素含有ガス導入管63を介して固体電解質型燃料電池セル59内にそれぞれ供給し、かつ、燃料ガス室Dからの燃料ガスを複数の固体電解質型燃料電池セル59間に供給し、反応室Cにて反応させ発電し、余剰の空気と未反応燃料ガスを燃焼室Bにて燃させ、燃焼したガスが排気口69から外部に排出される。
【0065】
尚、本発明の燃料電池は、上記した図3の燃料電池に限定されるものではなく、反応容器内に、上記した燃料電池セルを複数収容していれば良い。
【0066】
【実施例】
円筒状の固体電解質型燃料電池セルを共焼結法により作製するため、まず円筒状の空気極仮焼体を以下の手順で作製した。市販の純度99.9%以上のLa2O3、Y2O3、CaCO3、Mn2O3を出発原料として、1500℃で仮焼し、(La0.56Y0.14Ca0.3)0.97-0.98MnO3を作製し、その後、4μmの粒度に粉砕調整し、これを用いて、押出成形後、1250℃の条件で脱バイ、仮焼し、空気極仮焼体を作製した。
【0067】
次に、Y2O3を8モル%の割合で含有する平均粒径が1〜2μmのZrO2粉末を用いてスラリーを調製し、ドクターブレード法により厚さ100μmと厚さ15μmの第1及び2固体電解質成形体としてのシートを作製した。
【0068】
次に、第1燃料極成形体の作製について説明する。平均粒径が0.4μmのNi粉末に対し、Y2O3を8モル%の割合で含有する平均粒径が0.4〜0.8μmのZrO2(YSZ)粉末を準備し、Ni/YSZ比率(重量分率)が65/35になるように調合し、粉砕混合処理を行い、スラリー化した。その後、調製したスラリーを第2固体電解質成形体上に、30μmの厚さになるように全面に印刷し、その後乾燥し、第1燃料極成形体を第2固体電解質成形体上に形成した。
【0069】
一方、第2燃料極成形体は、表1に示すように、平均粒径が10μmのNi粉末に対し、Y2O3を8モル%の割合で含有する平均粒径が1〜2μmのZrO2(YSZ)粉末、およびZr、Yのそれぞれの金属有機塩を準備し、Ni含有比率(重量分率)が72重量%になるように調合、混合し、その後市販の有機溶媒とバインダーでスラリーを調製し、粘度を調整してドクターブレード法により第2燃料極シートを作製した。
【0070】
次に、市販の純度99.9%以上のLa2O3、Cr2O3、MgOを出発原料として、これをLa(Mg0.3Cr0.7)0.97O3の組成になるように秤量混合した後1500℃で3時間仮焼粉砕し、この固溶体粉末を用いてスラリーを調製し、ドクターブレード法により厚さ100μmの集電体成形体を作製した。
【0071】
Mn拡散防止層のペーストは、Y2O3を8mol%含有するZrO2粉末(8YSZ)と組成式(CeO2)0.7(Y2O3)0.3で表わされるYDC粉末とを8YSZ:YDC=1:9(重量分率)になるように混合し、この混合粉末に溶媒としてトルエンを添加し作製した。
【0072】
まず、前記空気極仮焼体に、Mn拡散防止層のペーストを塗布し、この塗布膜に、前記第1固体電解質成形体を、その両端部が開口するようにロール状に巻き付け1150℃で5時間の条件で仮焼した。仮焼後、第1固体電解質仮焼体の両端部間を空気極仮焼体を露出させるように平坦に研磨し、連続した同一面を形成するように加工した。
【0073】
次に、第1固体電解質仮焼体表面に、燃料極成形体が形成された第2固体電解質成形体を、第1固体電解質仮焼体と第2固体電解質成形体が当接するように積層し、乾燥した後、上記連続同一面に集電体成形体を貼り付け、この後、大気中1550℃で3時間の条件で焼成を行い、表1に示す各仕様の異なる共焼結体(円筒セル)をそれぞれ50本作製した。
【0074】
この共焼結体の第1燃料極の表面に、第2燃料極シートを有機溶剤とバインダーで調製した密着液を介して巻き付け、その後還元雰囲気中1000℃、10時間の条件で熱処理して焼付けを行った。
【0075】
作製した第2燃料極膜の評価は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いての膜厚およびYSZ粒子径の測定(インターセプト法)、さらに端部の剥離有無の状況から良品本数を算出し、その結果を表1に記載した。尚、第2燃料極の端部の剥離については、円筒セルの外面を1000℃の水素ガス雰囲気中に10時間晒した後に観察した。
【0076】
【表1】
【0077】
表1より、調製した第2燃料極用スラリー中に金属有機塩から成るYSZ添加を行わなかった本発明範囲外の試料No.1は、作製したセルが高頻度で剥離を伴った。これは、還元雰囲気中での成膜の段階から第1および第2燃料極間での接合性が悪く、実際発電後の試料を確認すると上記界面での剥離が顕著であった。一方、本発明品である試料No.2〜17は、作製したセル本数の85%以上が剥離を生じず、優れた良品率であった。いずれにおいても還元雰囲気中での成膜、更に発電を行った後の試料において界面からの膜剥離を生じることが無く、セルを構成する各部材の組織内および各界面においても特に異常な箇所は見られなかった。
【0078】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の固体電解質型燃料電池セルでは、第2燃料極を構成するYSZ粒子の組織構造、特に第1燃料極との界面におけるYSZの骨格形成を粒子径、膜厚の観点から制御することで、十分な集電能を長期にわたり維持発揮できる。また、膜ならびに界面構造の面でも長期的に欠陥も無く安定していることから、耐久性という点でも優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の円筒状の固体電解質型燃料電池セルを示す断面図である。
【図2】図1の燃料極の一部を拡大して示す説明図である。
【図3】本発明の燃料電池を示す説明図である。
【図4】従来の円筒状の固体電解質型燃料電池セルを示す斜視図である。
【符号の説明】
31・・・固体電解質
32・・・空気極
33・・・燃料極
33a...第1燃料極
33b...第2燃料極
33b1...第2燃料極の上層部
33b2...第2燃料極の下層部
35・・・集電体
41・・・第1燃料極のセラミック粒子
42...第2燃料極の下層部のセラミック粒子
43...第2燃料極の上層部のセラミック粒子
Claims (4)
- 空気極の表面に、固体電解質、第1燃料極、第2燃料極を順次積層してなり、前記空気極、前記固体電解質、前記第1燃料極が同時焼成され、前記第2燃料極が前記第1燃料極の表面に焼き付けて形成されるとともに、前記第2燃料極の厚みが100〜200μmであり、さらに、前記第1燃料極および前記第2燃料極中にセラミック粒子を含有し、該第2燃料極の前記第1燃料極側に形成された下層部のセラミック粒子の平均粒径が、前記第1燃料極のセラミック粒子の平均粒径よりも小さいことを特徴とする固体電解質型燃料電池セル。
- 前記第2燃料極における前記下層部のセラミック粒子の平均粒径は、前記上層部のセラミック粒子の平均粒径よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の固体電解質型燃料電池セル。
- 前記第2燃料極におけるセラミック粒子の平均粒径は、前記上層部が1〜2μm、前記下層部が0.1〜1μmであることを特徴とする請求項2記載の固体電解質型燃料電池セル。
- 反応容器内に、請求項1乃至3のうちいずれかに記載の固体電解質型燃料電池セルを複数収容してなることを特徴とする燃料電池。
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