JP4809548B2 - 燃料電池スタック - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池スタックに関し、一層詳細には、小型かつ軽量な燃料電池スタックに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的な燃料電池スタックは、単位セルが所定数で互いに電気的に直列接続されるとともに積層されてなる積層体が1組のエンドプレートの間に介装され、かつ該1組のエンドプレートの外側に配置された1組のバックアッププレート同士がタイロッド等の緊締部材で緊締されることにより構成されている。この緊締により、積層体および1組のエンドプレートが加圧保持される。なお、一方のエンドプレートとバックアッププレートとの間には、通常、皿ばねやブラダー等が介装される。
【0003】
前記単位セルは、アノード側電極とカソード側電極との間に電解質層が介装されることにより構成された接合体と、該接合体を挟持する1対のセパレータとを備える。両セパレータにおけるアノード側電極に対向する面には、該アノード側電極に燃料ガス(例えば、水素を主成分とする水素含有ガス)を供給・排出するための第1ガス流路が設けられており、その一方で、カソード側電極に対向する面には、該カソード側電極に酸化剤ガス(例えば、酸素を含有する酸素含有ガス)を供給・排出するための第2ガス流路が設けられている。
【0004】
このように構成された燃料電池スタックを運転するに際しては、アノード側電極に供給された水素含有ガス中の水素がアノード側電極を構成する電極触媒層上で電離し、その結果、水素イオンと電子が生成する。このうち、水素イオンは電解質膜を介してカソード側電極側へと移動する。この間、電子は外部回路に取り出され、直流の電気エネルギとして利用された後、カソード側電極に至る。
【0005】
ここで、カソード側電極には空気等の酸素含有ガスが供給されている。このため、カソード側電極において、前記水素イオン、前記電子および酸素含有ガス中の酸素が反応し、その結果、水が生成する。
【0006】
この種の燃料電池スタックは、例えば、自動車等の車輌の車体に搭載される。この場合、上記の電気化学反応により発生した電気エネルギでモータを駆動することにより化学的エネルギを機械的エネルギに変換し、これにより車輌が走行する。このように燃料電池スタックを駆動源として走行する車輌、いわゆる燃料電池車は、温暖化の原因となるCO2や、公害の原因となるNOXあるいはSOX、炭化水素ガス等の排出量が著しく少ないことから、環境保護に対して大きく貢献することができるものとして着目されている。
【0007】
燃料電池スタックを車体に搭載する場合、例えば、両バックアッププレート、または一端のバックアッププレートと他端のエンドプレートにマウント用ブラケットがそれぞれ固定され、両マウント用ブラケットが車体に連結される。すなわち、燃料電池スタックは、マウント用ブラケットを介して車体に搭載される。
【0008】
ここで、マウント用ブラケットのうちの一方は、例えば、ボルト孔に通されたボルトで車体に堅牢に連結される。また、他方のマウント用ブラケットには、例えば、段部を有する長円状溝が設けられており、該長円状溝を通ったボルトがその頭部で段部の底面を適切な力で押圧することによって、車体に摺動自在に連結される。
【0009】
燃料電池車を走行させた場合、走行中の振動や発進および停止の繰り返し等によって燃料電池スタックに荷重が作用する。この荷重によって、あるいは燃料電池スタックを運転・停止するために該燃料電池スタックを昇温・降温させた際に該燃料電池スタックが熱膨張・収縮を起こすことによって、燃料電池スタックは、積層体の積層方向に沿って伸縮する。換言すれば、燃料電池スタックが積層方向に沿って寸法変化を起こす。
【0010】
さらに、前記電解質層は、上記の電気化学変化で生成した水分を吸収・放出することに追従して積層体の積層方向に沿って膨潤・収縮する。加えて、電解質層は、燃料電池スタックの運転・停止に伴う度重なる温度変化によって寸法が若干縮小する、いわゆるへたりを生じる。このへたりは、前記接合体を保持するシール部材や、セパレータ等においても同様に発生する。燃料電池スタックは、電解質層、シール部材、セパレータ等にこのような寸法変化が生じた際にも積層方向に沿って寸法変化を起こす。
【0011】
この際には、前記皿ばねやブラダー等が伸張する。このように、積層体が熱膨張または収縮することに追従して皿ばねやブラダー等が縮小または伸張することにより、積層体に対する加圧保持力が略均等に維持される。すなわち、積層体の加圧保持が良好に維持され、これにより単位セル同士の電気的な接触が維持される。
【0012】
そして、皿ばねやブラダー等が縮小または伸張する際には、前記マウント用ブラケットのうちの一方が車体に対して摺動する。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、燃料電池スタックを車体に搭載する場合には、一方のマウント用ブラケットが車体に摺動自在に連結されるが、これを堅牢に位置決め固定することはできない。すなわち、両マウント用ブラケットをともに堅牢に位置決め固定した場合には、例えば、積層体が熱膨張することが著しく抑制され、その結果、燃料電池スタックに大きな熱応力が作用してしまうことになるからである。
【0014】
このように摺動自在に連結されたマウント用ブラケットでは、車体を走行させた際に生じた振動や衝撃によって燃料電池スタックに加わる荷重を充分に受けることができない。そこで、車輌に堅牢に連結される側のマウント用ブラケットとしては、振動や衝撃による荷重を充分に受けることができるように大型のものが使用される。
【0015】
しかしながら、このために、燃料電池スタックを搭載するスペースが広大なものとなる。しかも、マウント用ブラケットの重量が大きくなるので必然的に燃料電池スタックの重量も大きくなり、したがって、該燃料電池スタックを搭載する車体を走行させる際に大きな駆動力が必要となってしまう。
【0016】
また、両バックアッププレートに固定されたマウント用ブラケットを介して燃料電池スタックを車体に搭載する場合、両バックアッププレートと両エンドプレートとの間に、エンドプレートの垂直方向の荷重を受けるための部材、例えば、ガイドピン等が必要となってしまう。
【0017】
一方、一端のバックアッププレートと他端のエンドプレートに固定されたマウント用ブラケットを介して燃料電池スタックを車体に搭載する場合、エンドプレートに固定されたマウント用ブラケットがバックアッププレートと干渉しないようにすることが必要となるので、レイアウトが困難となることがある。
【0018】
ところで、特開平7−249426号公報では、積層体をケース内に収容することによって積層体を加圧保持するためのスタッドボルトを不要とした構造が提案されている。しかしながら、この場合、1組のエンドプレートが保持されていないため、燃料電池スタックの運転・停止に伴って積層体が積層方向に沿って熱膨張・収縮して寸法変化することや、車体が振動することによってエンドプレートが位置ずれを起こすことがある。このような事態が生じた場合、積層体に対する加圧保持力が低下するので、該積層体を構成する単位セル同士の電気的な接触を維持することが困難となってしまう。
【0019】
これとは別に、積層体をケース内に収めるとともに該ケースの内部に圧力室を形成し、反応ガスを供給して積層体を加圧する構造が知られている(特開平7−335243号公報参照)。しかしながら、この場合、ケースをシリンダのように作用させるため、ケースを高い寸法精度で作製する必要がある。このため、ケース、ひいては燃料電池スタックの製造コストが高騰するという不具合がある。
【0020】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、バックアッププレートを不要とすることによりレイアウトが容易となり、しかも、積層体に対する加圧保持力を維持することができ、さらに、小型化かつ軽量化された燃料電池スタックを提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、本発明は、アノード側電極とカソード側電極との間に電解質が介装されてなる接合体と前記接合体を挟持する1組のセパレータとを有する単位セルが複数個積層された積層体を備える燃料電池スタックにおいて、
前記積層体を該積層体の積層方向端部から押圧保持するエンドプレートと、
前記積層体および前記エンドプレートを収容するケースと、
を備え、
前記エンドプレートは、前記積層体の積層方向端部に臨む内方端面と、前記内方端面の裏面である外方端面とを有し、
前記ケースは、前記積層体の積層方向に直交する方向に延在し、且つ内壁が前記エンドプレートの前記外方端面に対向する端部を有し、
前記エンドプレートの前記外方端面と、前記ケースの前記端部の前記内壁との間に、前記エンドプレートを前記積層体に指向して押圧する皿ばねが介装されており、
前記エンドプレートの前記外方端面は凹部または凸部を有し、かつ前記ケースの前記端部の前記内壁には、前記凹部または前記凸部に摺動自在に係合する凸部または凹部が設けられ、
さらに、前記エンドプレートの前記外方端面に、前記皿ばねを保持するための保持部が形成され、
前記エンドプレートは、互いに係合した前記凹部と前記凸部によって案内されながら、前記皿ばねの作用下に前記ケース内で変位することが可能であることを特徴とする。
【0022】
すなわち、本発明では、ケース内に収容された積層体は、押圧部材で押圧されることによって加圧保持される。このように構成することによってタイロッド等の緊締部材が不要となるので、該燃料電池スタックの外寸を、タイロッドを通す貫通孔を設けるための孔部形成代を必要とするバックアッププレートが使用される燃料電池に比して著しく小さくすることができる。換言すれば、燃料電池スタックの小型化を図ることができる。しかも、従来のようにバックアッププレートを使用する必要もない。したがって、軽量化を図ることもできる。
【0023】
また、1組のエンドプレートもともにケース内に収容され、かつ前記押圧部材の作用下に加圧保持されているので、運転・停止に伴って燃料電池スタックが熱膨張・収縮による寸法変化を起こした際や、該燃料電池スタックを搭載した車輌の走行中に振動等によって該燃料電池スタックに荷重が作用した際においても、単位セル同士の電気的な接触が確実に維持される。
【0024】
さらに、ケースとしては、寸法精度が高度でないないものでも使用することができる。したがって、燃料電池スタックの製造コストが高騰することもない。
【0025】
そして、この燃料電池スタックでは、エンドプレートに設けられた凹部または凸部がケースに設けられた凸部または凹部に摺動自在に係合されているので、エンドプレートを斜行させることなく積層体の積層方向に沿って変位させることができる。このため、積層体の一端面内では、該一端面に作用する圧力が略均等になる。すなわち、他の箇所に比して緩やかに加圧される箇所が発生することを回避することができるので、単位セル同士の間に接触不良が発生することを回避することができ、結局、内部抵抗が増加して燃料電池スタックの発電特性が低下してしまうことを回避することができる。
【0026】
加えて、凹部と凸部とが係合されることによりエンドプレートがケースに支持されるので、エンドプレートが燃料電池スタックから離脱することを回避することもできる。すなわち、凹部と凸部との係合によってエンドプレートの抜け止めがなされる。
【0027】
このような燃料電池スタックは、車輌の車体に搭載することができる。すなわち、本発明に係る燃料電池スタックは、車載用として好適に使用することができる。ここで、車輌は、燃料電池スタックの起電力を駆動源として走行するものであればよく、一般自家用車に特に限定されるものではない。
【0028】
この場合、燃料電池スタックと車体とを連結する連結部材を通すためのマウント用ボス部を前記ケースに設けるようにすればよい。このことから諒解されるように、本発明に係る燃料電池スタックは、マウント用ブラケットを設けることなく車輌に搭載することができる。このため、燃料電池スタックの一層の小型化および軽量化を図ることができる。
【0029】
しかも、この場合、ケースを車輌に堅牢に連結することができる。すなわち、車輌に対して摺動自在となるようにケースを連結する必要がない。このため、ケースのマウント用ボス部を大型なものとする必要がないので、燃料電池スタックの搭載スペースが広大化することを回避することもできる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る燃料電池スタックにつき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0031】
本実施の形態に係る燃料電池スタックの概略全体斜視図を図1に示すとともに、概略平面切欠図を図2に示す。この燃料電池スタック10は、所定数の単位セル12が互いに電気的に直列に接続されるとともに矢印A方向に積層されてなる積層体14と、該積層体14を挟持する1組の集電用電極16a、16bと、このうちの集電用電極16aの外側に配設されたエンドプレート18と、これら積層体14、集電用電極16a、16bおよびエンドプレート18を収容するケース20とを備える。そして、エンドプレート18とケース20の一端面との間には、押圧部材としての複数個の皿ばね22が介装されている。
【0032】
まず、単位セル12の構成につき概略説明する。
【0033】
積層体14の要部拡大断面図である図3に示されるように、単位セル12は、アノード側電極30とカソード側電極32との間に電解質層34が介装されることにより構成された接合体36を備える。電解質層34としては、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水を含浸させたもの等のような水素イオン導電体が選定される。
【0034】
アノード側電極30およびカソード側電極32は、カーボンクロス等からなるガス拡散層(図示せず)と、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が前記ガス拡散層の表面に一様に積層されてなる電極触媒層(図示せず)とをそれぞれ有し、電極触媒層同士が電解質層34を介して対向するように該電解質層34に接合されている。このうち、電解質層34は額縁状シール部材38の開口部に収容保持されており、一方、カソード側電極32またはアノード側電極30はガスケット40a、40bの開口部に収容保持されている。単位セル12は、これらガスケット40a、40bと接合体36を保持する額縁状シール部材38とが1対のセパレータ42a、42bで挟持されることによって構成される。
【0035】
これらセパレータ42a、42bにおけるアノード側電極30に対向する面には、該アノード側電極30に水素含有ガスを供給・排出するための第1ガス流路44が設けられている。同様に、カソード側電極32に対向する面には、該カソード側電極32に酸素含有ガスを供給・排出するための第2ガス流路46が設けられている。
【0036】
ここで、単位セル12の概略全体斜視図である図4に示すように、セパレータ42a、42b、ガスケット40a、40bおよび額縁状シール部材38には、右上隅角部(エンドプレート18側を正面とした場合の左上隅角部)に水素含有ガスを通過させるための第1ガス入口通路48が設けられており、かつその対角位置には、未反応の水素含有ガスを通過させるための第1ガス出口通路50が設けられている。同様に、左上隅角部(エンドプレート18側を正面とした場合の右上隅角部)には酸素含有ガスを通過させるための第2ガス入口通路52が設けられており、その対角位置には、未反応の酸素含有ガスを通過させるための第2ガス出口通路54が設けられている。勿論、第1ガス入口通路48および第1ガス出口通路50はいずれも第1ガス流路44に連通しており、一方、第2ガス入口通路52および第2ガス出口通路54はいずれも第2ガス流路46に連通している。
【0037】
セパレータ42a、42b、ガスケット40a、40bおよび額縁状シール部材38には、さらに、第1ガス入口通路48と第2ガス出口通路54との間、および、第2ガス入口通路52と第1ガス出口通路50との間に、冷却水通路56a、56bがそれぞれ設けられている。
【0038】
積層体14は、所定数の上記単位セル12が互いに電気的に直列接続されて積層されることにより構成されている(図1参照)。このうち、両端に位置する単位セル12、12には、集電用電極16a、16bがそれぞれ電気的に接続される。エンドプレート18は、漏電防止用の絶縁プレート58aを介して集電用電極16aの外側に配置されている。
【0039】
なお、エンドプレート18のケース20側に臨む端面には複数個の支軸60が接合されており(図1および図2参照)、前記皿ばね22はこれら支軸60に保持されている。また、図1および図5に示すように、エンドプレート18の左右端部には、凹部としての横溝64、64がそれぞれ設けられている。
【0040】
ケース20は、金属製の有底面枠体からなる。このケース20と集電用電極16bとの間にも、漏電を防止するために絶縁プレート58bが介装されている(図1参照)。該絶縁プレート58bにも、第1ガス入口通路48、第1ガス出口通路50、第2ガス入口通路52、第2ガス出口通路54および冷却水通路56a、56bが設けられている。
【0041】
そして、ケース20のエンドプレート18に臨む端面には、支軸60に対応する箇所に挿入孔66が設けられている。支軸60をこの挿入孔66に挿入して端部の皿ばね22をケース20の内面に設けられた環状凹部67の底面に着座させることによって、皿ばね22が圧縮されるとともにケース20とエンドプレート18との間に介装される。このため、エンドプレート18が皿ばね22によって積層体14側に指向して常時弾発付勢され、結局、積層体14がエンドプレート18で押圧保持される。換言すれば、積層体14がエンドプレート18によって加圧保持される。
【0042】
また、ケース20の側面には、エンドプレート18に設けられた横溝64(図1および図5参照)に対応する箇所に、寸法が該横溝64に比してやや小さい突起部材68が接合されている。すなわち、この突起部材68はエンドプレート18の横溝64に摺動自在に係合されており、この係合によりエンドプレート18がケース20に支持されている。
【0043】
さらに、このケース20における前記絶縁プレート58bに臨む端面には、第1ガス入口通路48、第1ガス出口通路50、第2ガス入口通路52、第2ガス出口通路54および冷却水通路56a、56bが設けられている。そして、ケース20の外面の各隅角部には、該ケース20を自動車車体に連結する図示しないボルト(連結部材)を通すための貫通孔72が設けられたマウント用ボス部74が接合されている。
【0044】
上記のようにして構成された燃料電池スタック10に対し、ケース20の第1および第2ガス入口通路48、52に水素含有ガス供給源、酸素含有ガス供給源(ともに図示せず)がそれぞれ連結され、かつ第1および第2ガス出口通路50、54にガス回収機構(図示せず)がそれぞれ連結される。さらに、ケース20の冷却水通路56aに図示しない冷却水供給源が連結される一方で冷却水通路56bに図示しない冷却水回収機構が連結される。
【0045】
このように、本実施の形態では、積層体14をケース20内に収容して皿ばね22(押圧部材)で加圧保持するようにしているので、タイロッドを使用する必要がない。したがって、燃料電池スタック10の外寸を、タイロッドを通す貫通孔を設けるための孔部形成代を必要とするバックアッププレートが使用される燃料電池スタックに比して著しく小さくすることができる。すなわち、燃料電池スタック10を小型化することができるので、この燃料電池スタック10を自動車車体に搭載する際のスペースも狭小化することができる。
【0046】
該燃料電池スタック10は、図示しない自動車等(車輌)の車体の所定の箇所に配置された後、ケース20の各マウント用ボス部74の貫通孔72に通された図示しないボルトが前記自動車車体に設けられたボルト穴に螺合されることにより該自動車車体に位置決め固定される。
【0047】
本実施の形態に係る燃料電池スタック10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
【0048】
この燃料電池スタック10を発電させるには、まず、該燃料電池スタック10の近傍に配置された図示しないヒータを付勢する。これにより燃料電池スタック10が加熱され、所定の運転温度まで昇温される。
【0049】
燃料電池スタック10が昇温した後、水素含有ガス供給源および酸素含有ガス供給源から水素含有ガス、酸素含有ガスをそれぞれ供給する。このうち、水素含有ガスは、第1ガス入口通路48および第1ガス流路44を介してアノード側電極30の電極触媒層に到達する。そして、該電極触媒層上で、水素含有ガス中の水素が下記反応式(A)に従って電離する。
【0050】
H2→2H++2e…(A)
なお、水素含有ガス中の水素以外の成分および未反応の水素は、第1ガス流路44および第1ガス出口通路50を介して前記ガス回収機構へと送気される。
【0051】
電離によって生成した水素イオンは、電解質層34を移動してカソード側電極32の電極触媒層に到達する。また、電子は、集電用電極16aを介して燃料電池の外部へと取り出され、図示しないモータ等の負荷を付勢する電気エネルギとして使用された後、集電用電極16bを介してカソード側電極32の電極触媒層に到達する。
【0052】
一方、酸素含有ガスは、第2ガス入口通路52および第2ガス流路46を介してカソード側電極32の電極触媒層に到達する。そして、酸素含有ガス中の酸素は、該電極触媒層に到達した水素イオンおよび電子と、下記反応式(B)に従って互いに結合する。
【0053】
O2+4H++4e→2H2O…(B)
なお、酸素含有ガス中の酸素以外の成分、未反応の酸素および生成した水蒸気は、第2ガス流路46および第2ガス出口通路54を介して前記ガス回収機構へと送気される。
【0054】
このように運転されている間に燃料電池が所定の温度を超えないように、前記冷却水供給源から冷却水を供給する。この冷却水は、燃料電池スタック10の冷却水通路56aを介して矢印A方向(図1参照)に沿って流通され、各単位セル12内で折り返して冷却水通路56bに導入されて、最終的に前記冷却水回収機構によって回収される。
【0055】
また、運転の最中には、燃料電池スタック10が熱膨張して矢印A方向に沿って寸法変化を起こすが、この寸法変化量に応じて皿ばね22が圧縮し、エンドプレート18への弾発付勢を続行する。この際、エンドプレート18は、ケース20に接合された突起部材68に横溝64が摺動自在に係合されているので、突起部材68に案内されて積層体14に接近する方向に変位する。すなわち、突起部材68はガイドとして機能する。このため、エンドプレート18が斜行することが回避される。
【0056】
その結果、積層体14の一端面内では、該一端面に作用する圧力が略均等になる。すなわち、積層体14において、他の箇所に比して緩やかに加圧される箇所が発生し難くなるので、単位セル12同士の間に接触不良が発生し難くなる。換言すれば、単位セル12同士の電気的な接触を維持することができるので、結局、内部抵抗が増加して燃料電池スタック10の発電特性が低下してしまうことを回避することができる。
【0057】
この燃料電池スタック10が搭載された燃料電池車を走行させると、走行中の振動や、発進および停止の繰り返し等によって燃料電池スタック10に荷重が作用する。しかしながら、この場合、ケース20が車体に堅牢に連結されているので、この荷重を充分に受けることができる。したがって、積層体14に対する加圧保持力が低下することを回避することができる。すなわち、この場合においても、単位セル12同士の電気的な接触を維持することができる。
【0058】
しかも、この場合、横溝64が突起部材68に係合されることに伴ってエンドプレート18がケース20に支持されているので、該エンドプレート18が積層体14に接近または離間する方向以外に変位することはない。すなわち、横溝64および突起部材68は、エンドプレート18の抜け止めとしても機能する。このため、エンドプレート18がケース20の開口上端を介して燃料電池スタック10から離脱することを回避することができる。
【0059】
このように、本実施の形態においては、積層体14をケース20に収容し、かつ皿ばね22によって弾発付勢されたエンドプレート18で積層体14を加圧保持するようにしている。このため、燃料電池スタック10における単位セル12同士の電気的な接触を維持しながら該燃料電池スタック10の小型化を図ることができる。また、エンドプレート18は、従来のように積層体の両端に設ける必要は特になく、少なくとも片側に設ければよい。しかも、バックアッププレートを使用する必要がないので、燃料電池スタック10の軽量化を図ることもできる。
【0060】
なお、上記した実施の形態においては、横溝64をエンドプレート18の左右端部に設けて凹部としているが、図6に示すように、下に臨む端面に天井溝80を設けて凹部とするようにしてもよい。この場合、突起部材68をケース20の底面に接合するようにすればよい。勿論、突起部材68に替えて、ケース20自体を一部突出させることによって突起部を設けるようにしてもよい。
【0061】
また、図7および図8に示すように、エンドプレート18のケース20側に臨む端面に円柱状の突起部(凸部)82を設けるとともにケース20に挿入孔84(凹部)を設け、該挿入孔84に突起部82を摺動自在に挿入するようにしてもよい。
【0062】
さらに、突起部材や突起部(凸部)の形状は、図1〜図8に示される角柱状または円柱状のものに限定されるものではなく、三角形であってもよいし、多角形であってもよい。いずれの場合においても、凸部を離脱させることなく案内することが可能なように凹部の形状を設定すればよい。
【0063】
そして、エンドプレート18に凸部を設け、かつケース20に凹部を設けるようにしてもよいことはいうまでもない。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る燃料電池スタックによれば、単位セルを積層した積層体をケース内に収容し、かつ該積層体を押圧部材によって押圧されたエンドプレートで加圧保持するようにしている。
【0065】
このため、タイロッド等の緊締部材を使用する必要がないので、燃料電池スタックの外寸が、タイロッド等を通す貫通孔を設けるための孔部形成代を必要とするバックアッププレートが使用される燃料電池スタックに比して著しく小さくなる。すなわち、小型化を図ることができる。しかも、従来のようにエンドプレートを2枚も使用する必要は特になく、さらに、バックアッププレートを使用する必要もない。したがって、軽量化を図ることもできる。しかも、燃料電池スタックの運転・停止に伴い積層体が熱膨張・収縮した際や、燃料電池スタックを構成する部材にへたりが生じた場合においても、積層体に対する加圧保持力が低下することも回避することができる。
【0066】
さらに、エンドプレートに設けられた凹部または凸部を、ケースに設けられた凸部または凹部に摺動自在に係合するようにしているので、単位セル同士の間に接触不良が発生することを回避することができ、結局、内部抵抗が増加して燃料電池スタックの発電特性が低下してしまうことを回避することができる。また、エンドプレートの抜け止めもなすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る燃料電池スタックの概略全体斜視図である。
【図2】図1の燃料電池スタックの概略平面切欠図である。
【図3】図1の燃料電池スタックを構成する積層体の要部拡大断面図である。
【図4】図3の積層体を構成する単位セルの概略全体斜視図である。
【図5】図1および図2の燃料電池スタックの概略正面切欠図である。
【図6】図5とは別の形状の凹部および凸部を有する燃料電池スタックの概略正面切欠図である。
【図7】図5、図6とは別の形状の凹部および凸部を有する燃料電池スタックの概略平面切欠図である。
【図8】図7の燃料電池スタックの概略正面切欠図である。
【符号の説明】
10…燃料電池スタック 12…単位セル
14…積層体 16a、16b…集電用電極
18…エンドプレート 20…ケース
22…皿ばね 30…アノード側電極
32…カソード側電極 34…電解質層
36…接合体 42a、42b…セパレータ
60…支軸 64…横溝(凹部)
66…挿入孔 68…突起部材(凸部)
74…マウント用ボス部 80…天井溝(凹部)
82…突起部(凸部) 84…挿入孔(凹部)
Claims (2)
- アノード側電極とカソード側電極との間に電解質が介装されてなる接合体と前記接合体を挟持する1組のセパレータとを有する単位セルが複数個積層された積層体を備える燃料電池スタックにおいて、
前記積層体を該積層体の積層方向端部から押圧保持するエンドプレートと、
前記積層体および前記エンドプレートを収容するケースと、
を備え、
前記エンドプレートは、前記積層体の積層方向端部に臨む内方端面と、前記内方端面の裏面である外方端面とを有し、
前記ケースは、前記積層体の積層方向に直交する方向に延在し、且つ内壁が前記エンドプレートの前記外方端面に対向する端部を有し、
前記エンドプレートの前記外方端面と、前記ケースの前記端部の前記内壁との間に、前記エンドプレートを前記積層体に指向して押圧する皿ばねが介装されており、
前記エンドプレートの前記外方端面は凹部または凸部を有し、かつ前記ケースの前記端部の前記内壁には、前記凹部または前記凸部に摺動自在に係合する凸部または凹部が設けられ、
さらに、前記エンドプレートの前記外方端面に、前記皿ばねを保持するための保持部が形成され、
前記エンドプレートは、互いに係合した前記凹部と前記凸部によって案内されながら、前記皿ばねの作用下に前記ケース内で変位することが可能であり、
前記皿ばねが複数個存在するとともに、前記エンドプレートの前記凹部または前記凸部は、前記複数個の皿ばね同士の間隙に配置されることを特徴とする燃料電池スタック。 - 請求項1記載の燃料電池スタックにおいて、当該燃料電池スタックは車輌の車体に搭載されるものであり、前記ケースには、前記燃料電池スタックと前記車体とを連結する連結部材を通すためのマウント用ボス部が設けられていることを特徴とする燃料電池スタック。
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