JP4804104B2 - 鉄道車両用側構体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鉄道車両用側構体及びその製造方法、とくにそれらの外枠(例えばドアフレーム、窓枠など)を備えていない開口部回りに関するものである。
従来より、鉄道車両用構体として、塗装が不要で、メンテナンスが容易で、腐食もないなどの多くの利点を有するステンレス鋼製のステンレス構体が用いられている。そのようなステンレス構体としては、図22(a)に示す軽量ステンレス構体201(外板+骨組み+外板横骨部材)や、図22(b)に示すダブルシートステンレス構体202(外板+一体プレス成形内板)のほか、いわゆるダブルスキンタイプのステンレス構体が知られている(例えば特許文献1参照)。
そして、鉄道車両用構体において、外板と外板横骨部材との接合には、熱歪みを低減する観点から、抵抗スポット溶接が多用されている。
一般の鉄道車両用構体、とくに側構体は強度設計上いくつかの留意点を有する。ここで、側構体とは、単数又は複数の側外板パネルにより構成されるものをいい、側外板パネルとは、外板に対し外板横骨部材が接合されて一体化されたものをいう。
車体自重・乗客により負荷される垂直荷重F1により、図23(a)に示すように、側外板パネル100は主として面内せん断作用を受ける。また、連結器を通じての車端圧縮荷重F2により、図23(b)に示すように、面内軸圧縮・面内曲げ作用も負荷される。強度上留意すべき破壊モードは、第1には側外板パネルの全体座屈である。
一般に、外板が広範囲で圧縮作用を受ける部位(例えば車端圧縮荷重時の車体中央腰板下部)では、図23(c)に示すように、所要の面外剛性をもつ防撓材である外板横骨部材101を外板102の内側に接合することが行われている。
また、一般に、鉄道車両の側構体は構体長手方向の圧縮作用を大きく受けるので、構体長手方向に沿って外板の内側に外板横骨部材を設けるのが普通である。外板が広範囲でせん断を受ける部位、例えば垂直荷重時における台車直上の戸袋部では、外板横骨部材を構体長手方向に対し45度の角度で外板に接合するのが理想であるが、そのような角度を持たせて接合することは製造上煩雑であるので、実際には横骨部材を水平方向(構体長手方向)あるいは垂直方向に配置している。なお、座屈強度上はどちらも同等である。
しかし、前述したようなステンレス構体では、いくつかの課題がある。
(i)第1の課題は、座屈強度である。
前述したように、外板と外板横骨部材との接合には、熱歪み低減の観点から、抵抗スポット溶接が多用されるが、既打点への分流を避けるためにその打点ピッチは通常50〜80mm程度である。この場合、横骨部材にうまく応力が分散せずに理論どおりの座屈強度を得られないことがある。つまり、防撓パネルとしての面外曲げ剛性が理論値よりも低下し、想定より低い荷重で全体座屈を引き起こす可能性がある。外板横骨部材に平行な方向の圧縮に対してスポット溶接点間で外板が座屈するおそれがあり、このような局部座屈に対しても理論上の座屈強度より劣る。
例えば、後述する座屈強度の考え方を参照すればわかるように、外板横骨部材101のピッチL101を80mmとし(図23(c)参照)、これと平行な方向に外板に圧縮応力が作用するとき、外板横骨部材が外板に連続して接合されていれば、概算で160MPaまで耐え得るのに、外板横骨部材が外板に80mmピッチでスポット溶接されているとすれば、わずか60MPa程度までしか耐えられない。また、圧接によるスポットまわりの歪みにより外板に初期歪みが生じ、これによっても局部の座屈強度が大きく低下する。
(ii)第2の課題は、応力集中部における永久変形(引張側)、あるいは局部座屈(圧縮側)である。
側外板には、側外板の開口部における隅部において応力集中が生じる。とくに通勤車用の側構体には窓、出入口などの開口部が多く、これらの隅部における応力集中が問題となる。これら応力集中部において引張側では永久変形、圧縮側では座屈変形を起こして最終的に破壊に至る。これに対する対策としては、引張側ではプレート状の外板横骨部材を内側に足して増厚し、応力を軽減することが考えられる。圧縮側も理論上は同様に対処が可能であるが、ステンレス構体ではいくつか問題がある。
(iii)第3の課題は、水密性である。
ステンレス構体の組立において多用される抵抗スポット溶接は重ね継手しか構成することができないため、外板どうし、あるいは外板と縁部材(窓枠、ドアマスクなど)との接合も重ね継手となる。
ところで、これらの継手では外部からの浸水を防ぐため、外部から浸水しない水密性を保つ工夫が必要であるが、重ね部で隙間を生じるのに加えスポット溶接は間欠的な接合法であるため、重ね部にあらかじめシール材をはさみ込んで溶接を行うことにより水密性を確保している。あるいは重ね端部に隅肉状にシール材を盛ることにより水密性を確保している。
しかし、風雨や洗車に伴うシール材の経年劣化によりシール切れが生じ、車内への浸水が発生するおそれがある。
(iv)第4の課題は、外板(側外板、妻外板)の美観性である。
ステンレス構体の組立において多用される抵抗スポット溶接は、施工時にスポット状に押圧を行うため、押圧力と入熱によりその周囲に歪みを生じ、また打点部には凹状の圧痕も生じるため、これらが外板の美観を損ねている。つまり、せっかく補強プレートをあてがっても、これを接合するためのスポット溶接が増え、圧接・入熱によるスポットまわりの歪みにより外板に初期歪みが生じ、かえって局部の座屈強度が低下させるおそれがある。かくして、車体中央の腰板下部や台車直上の戸袋板・幕板、および側開口隅部周辺では座屈が生じやすく、実際に座屈を生じている車両もあり、ステンレス構体の見映えを著しく悪化させている。とくに側外板、妻外板の美観を損ねることは製品価値を低下させることになる。
なお、スポット溶接による外板の「焼け」は電解処理により消すことが可能であるが、圧痕は深く、接合後の研磨等によって見えなくすることは困難である。また、カラーバンド(フィルム)により覆うこともできるが、覆っても、見る角度によっては、圧痕はさらに目立つことになりかねない。
(v)第5の課題は、内部骨組の煩雑さである。
内装、機器類を構体に取り付ける構造として、従来は主構造あるいは内部骨組(2次構造材)にネジ座を溶接付けしたり、あるいは取付金を別途設けたりすることにより対応していた。
これらの取付金、ネジ座はほとんどが車両毎の個別設計であり、構体への取り付け場所も車種、部位によってまちまちである。ネジ座、内部骨組、取付金等、部品点数が増し、部品製作、溶接付けに多大な工数を要している。また取り付け位置が標準化されていないので、取付けの寸法管理も煩雑である。
発明者は、外板と外板横骨部材との接合に、抵抗スポット溶接に代えて、レーザー溶接を利用すれば、前記課題を解決できることに着想し、レーザ溶接を利用した鉄道車両用構体を先に出願している(特願2004−206390号参照)。
特許第2763983号公報(段落0014,0020及び図4)
しかし、レーザ溶接を用いる場合に考えられる開口部近傍の構造は、開口部に生ずる応力集中を低減するために、例えば図24(a)(b)に示すように、シア(せん断力)を伝達しうる補強材(補強板)としてシアプレート103を、外板102a(外板パネル102A(外板102aの内側に外板横骨部材102bが配置されるもの)の外板102a)の内側であって開口部の周囲に接合する必要がある。それらを、外板パネル102Aの開口部の周縁に沿って、溶融池の底部が外板パネル102Aの外表面に達しないようにレーザ溶接しても、溶接線L101による歪みが外板102aの外側面に現れ、開口部周辺の見栄えが悪い。このように開口部周辺の見栄えが悪くなる傾向は、外板の外側面に、前記レーザ溶接による溶接線方向とほぼ平行に研磨加工(例えば、鉄道車両のステンレス構体で一般に使用されているベルトグラインド仕上げ)を施している場合に特に顕著になる。これは、前記研磨方向と溶接線方向とが一致していると光の散乱の具合により溶接線による歪みがほとんど見えなくなるが、それらの方向が異なっていると光の散乱の具合により溶接線による歪みが目立つようになるためである。
従って、開口部の周囲をレーザ溶接で接合すると、必ず外板仕上げに直交する方向の溶接線が生じるため、この部分の見栄えが悪化することになる。また、リベットを用いて直線的に結合する場合にも、その接合線に対応する同様な歪みがあらわれ、見栄えが悪くなる。
また、外板横骨部材の溶接線L102は外板の仕上げ方向(研磨方向)に一致するので、溶接線による歪みL202はあまり目立たないが、その歪みL202の止端P202では外板102aが同心円状に歪み、この歪みが目立つので、この部分付近で見栄えが悪くなる。
外板の肉厚を厚くすれば、溶接線による歪みが目立たなくなるようにするために有利であるが、軽量化の観点から、あまり厚くすることができないし、前記開口部が例えば窓ガラスを嵌める窓開口部であるような場合には、開口部周辺を外板一枚かそれに近い薄板構造にする必要があり、外板をあまり厚くすることができない。
そこで、発明者は、開口部を溶接線が水平方向(構体長手方向)に貫通する構造とすれば、そのような不具合を解決できることに着想し、本発明をなすに至ったものである。
本発明は、開口部周辺の見栄えをよくすることができる鉄道車両用側構体を提供することを目的とする。
請求項1の発明は、開口部を有する外板と、車両長手方向に配置され、前記外板の車内側に接合される取付フランジを有する複数の外板横骨部材と、前記外板の車内側であって、前記開口部の周縁に設けられるシアプレートとを備え、前記複数の外板横骨部材のうち、前記開口部に向かって延在する外板横骨部材の端部が、前記シアプレートの端部に突き当てられ、前記開口部に向かって延在する外板横骨部材の取付フランジと前記シアプレートとは、前記外板に対して車両長手方向に連続して溶接される、ことを特徴とする。ここで、シアプレートとは、外板に重ねられる板で、主として面内せん断を伝達するものである。開口部は、例えば表示灯、表示機器などを設ける開口部を意味するが、窓枠がない窓部も含む。接合には、レーザ溶接のほか、スポット溶接、プラグ溶接、隅肉溶接等の溶接や、リベット結合が含まれる。
このようにすれば、前記複数の外板横骨部材のうち、前記開口部に向かって延在する外板横骨部材の端部が、前記シアプレートの端部に突き当てられ、前記開口部に向かって延在する外板横骨部材の取付フランジと前記シアプレートとは、外板に対して車両長手方向に連続して溶接されるので、縦方向(上下方向)の接合線をなくすとともに、接合線の止端をなくし、開口部周辺の見栄えを向上させることができる。
この場合、請求項2に記載のように、前記外板横骨部材の前記取付フランジ部と前記シアプレートとは、同じ板厚である、構成とすればよい。ここで、外板横骨部材の形状は、特に制限されず、断面Z形状でも、断面ハット形状でもよい。
請求項3に記載のように、前記外板は、車両長手方向に研磨加工が施され、前記外板横骨部材の前記取付フランジと前記シアプレートとは、前記外板に対してレーザ溶接により接合され、前記レーザ溶接による溶接線が、前記取付フランジ及び前記シアプレートにおいて車両長手方向に沿って連続的に延びる、構成とすることができる。
このようにすれば、レーザ溶接による溶接線の方向と研磨方向とが車両長手方向で一致することになり、光の散乱の具合により接合線による歪みをほとんど見えなくすることができる。
請求項に記載のように、前記シアプレートに対して車内側であって、前記開口部周縁に設けられる補強枠部材をさらに備え、前記外板横骨部材は、前記取付フランジ部と、前記外板に対して離間する頭部とを有し、前記補強枠部材は、前記開口部の周縁に設けられる外枠部と、前記外枠部から連続して形成され前記外板に対して略直交方向に延びる接続枠部と、前記接続枠部から連続して形成され前記外板に対して略平行に延びる内枠部とを有し、前記複数の外板横骨部材のうち、前記開口部に向かって延在する外板横骨部材の前記頭部と、前記補強枠部材の前記内枠部とが接合される、ことが望ましい。
このようにすれば、外板横骨部材の上に補強枠部材を載せる形で、シアプレートのみでは強度が不足する場合に対応することが可能となる。
請求項に記載のように、前記補強枠部材の前記外枠部と前記シアプレートとの間には、空間部が形成されている、ことが望ましい。
このようにすれば、外枠部を外板に接合しないことで、接合線に対応する歪みが外板に形成されるのが回避される。
請求項に記載のように、前記補強枠部材の前記外枠部と前記シアプレートとの間には、焼け止め部材が設けられている構成とすることも可能である。
このようにすれば、焼け止め部材により、外枠部を外板に接合する場合に、熱影響により外板が歪むのが回避される。
請求項に記載のように、前記補強枠部材の前記外枠部は、前記シアプレートに接合されている構成とすることも可能である。
このようにすれば、シアプレートを焼け止め部材として機能させることができ、構造が単純で、施工が容易である。
請求項に記載のように、前記シアプレートのうち、前記開口部に向かって延在する外板横骨部材の端部と前記開口部との間であって、前記外板横骨部材の前記頭部の幅に対応する部分が、車内側に突出する、構成とすることも可能である。
このようにすれば、車内側に突出する部分によって、剛性が高められるとともに、前記外板横骨部材の前記頭部の幅に対応する部分が外板に接触しないようになるので、外板の、熱影響による歪みを抑制することができる。
シア(せん断力)の伝達を悪化させることなく、外板に対する、接合の影響による歪みを抑制するためには、前記外板横骨部材の前記頭部に対応する部分全体を浮き上がり部とする必要はなく、請求項に記載のように、前記補強枠部材の前記外枠部は、前記シアプレートに接合され、前記シアプレートは、前記外枠部が接合される部分だけ前記外板から離れて浮き上がった中空突部を有する、構成としてもよい。この場合、外板横骨部材の本体部に対応する部分に中空突部を設ける必要はない。
た、請求項10に記載のように、前記シアプレートのうち、前記開口部に向かって延在する外板横骨部材の端部と前記開口部との間であって、前記外板横骨部材の前記頭部の幅に対応する部分の厚さが、当該部分以外よりも厚い厚肉部である、構成としてもよい。
請求項1〜10の鉄道車両用側構体の製造は、次の請求項11の発明により簡単に実現することができる。
請求項11の発明は、開口部を有する外板と、車両長手方向に配置される外板横骨部材と、前記開口部の周縁に設けられるシアプレートとを備えた鉄道車両用側構体の製造方法であって、前記外板に前記開口部を形成し、形成された前記開口部の周縁でかつ車内側に前記シアプレートを配置し、前記開口部に向かって延在する前記外板横骨部材の端部を、前記シアプレートの端部に突き当てて、当該外板横骨部材を配置し、車両長手方向に沿って、前記外板横骨部材から前記シアプレートを経て少なくとも前記開口部へ至るように連続的にレーザビームを照射して、前記外板と前記外板横骨部材、前記外板と前記シアプレートとを接合する、ことを特徴とする。
このようにすれば、車両長手方向に沿って連続的にレーザビームを照射することにより、外板と外板横骨部材との接合、及び外板とシアプレートとを接合し、かつ溶接線の止端をなくすことができる。これにより、止端による外板の歪みを無くすことができ、開口部周辺の見栄えを向上させることができる。
本発明は、上記のように、複数の外板横骨部材のうち、外板の開口部に向かって延在する前記外板横骨部材の端部を、シアプレートの端部に突き当て、前記開口部に向かって延在する前記外板横骨部材の取付フランジと前記シアプレートとを、前記外板に対して車両長手方向に連続して溶接しているので、縦方向(上下方向)の接合線や横方向の接合線の止端を開口部周辺からなくし、開口部周辺の見栄えを向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。
図1は本発明に係る一実施の形態である鉄道車両用構体を示す斜視図、図2は外板と外板横骨部材との関係を示す説明図である。
図1に示すように、鉄道車両用構体11は、左右の側構体12と、屋根構体13と、前後の妻構体14と、台枠15とを備える。側構体12は、外板3と、その外板3の内側に水平方向(車体前後方向)に延びるように配置される外板横骨部材としての外板横骨部材4A,4Bとを有し、それらがレーザ溶接手段を用いてレーザ溶接にて接合されている。なお、屋根構体13及び妻構体14も同様である。
この外板横骨部材4A(4B)は、断面コの字形状の本体部4Aaと、その本体部4Aaの両端縁に連続して互いに反対方向に延びる取付フランジ部4Ab,4Acとを有し、断面ハット形状に構成され、この取付フランジ部4Ab,4Acの部分において外板3にレーザ溶接される。なお、この外板の内面側に外板横骨部材4A,4Bを接合するレーザ溶接は、溶融池の底部が外板の外側面に到達しないようにするために、部分溶け込みレーザ溶接が用いられる。
外板3は、外側面にレーザビームによる溶接線方向とほぼ平行に研磨加工が施され、レーザビームによる溶接線方向と外側面についての研磨加工方向(表面研削仕上げ方向)とがほぼ同じ方向となっている表面研磨材が用いられる。「研磨加工」は、ベルトグラインダによるベルトグラインド(BG)仕上げといわれるもので、「JIS R 6001」で規定される砥粒を接着したベルトを回転させ鋼板の表面を一方向に断続的に(不連続に)研磨することにより仕上げるものである(「JIS G 4305」でNo.3やNo.4なる記号で示される表面仕上げに該当する)。
レーザー溶接に用いられるレーザ照射装置は、具体的には図示していないが、多関節ロボットの手首に取付けられる。この多関節ロボットは、複数軸(たとえば6軸)を有し、溶接されるべき薄板(例えば外板3)が固定された状態で、予め定める溶接線L11(図2参照)に沿ってレーザ照射装置を移動させることができるものである。レーザ照射装置は、重ねレーザ溶接を行うもので、レーザ集光器と押圧手段としての押さえローラとが一体に取付けられ、押さえローラRが溶接線L11に沿って移動してワークの溶接位置近傍を押圧しつつ、レーザ集光器からレーザビームBを溶接位置に照射することで、重ね部分の密着性を確保しつつ、レーザビームBの焦点距離を正確に保つことができる構成とされている。
また、外板3の開口部(窓開口部24、ドア開口部25)の周縁に設けられる後述するドアフレーム1(窓枠、ドアマスクなど)と外板3との接合も、連続レーザ溶接により行われている。継手は重ね継手でも突合せ継手でもよい。なお、具体的に図示していないが、外板どうしの接合も連続レーザ溶接により行われている。
そして、図2に示すように、外板横骨部材4Aは、レーザ溶接(溶接線U)の間隔S1を80mm(ハット幅S2=50mm)とすることで、外板横骨部材4Aのピッチ80mmを実現している。他の部位も同様にして外板横骨部材4Bのハット幅(70mm)とレーザ溶接の間隔(100mm)を決定した。隣り合う外板横骨部材4A,4Bのレーザ溶接の間隔S3は、50〜100mmである。ただし、外板3の部位ごとに横骨部材の断面形状を決定していくと、横骨部材に多くの種類が生じるので、外板横骨部材の断面形状は、この実施の形態では、上記2種類に限定している。外板横骨部材4A,4Bの高さH1は25mmであるが、これは側構体12の外板3の全体座屈強度から決定したものである。なお、レーザ溶接の間隔S1は、基本的には外板厚と座屈強度とから決定され、間隔が小さいほど座屈には強くなるが、あまり小さいとレーザ溶接の溶接線の数が多くなりすぎる一方、あまり広いとわずかの荷重にも座屈してしまうので、実際には60〜120mmの範囲であるが、部品製作、見栄え的にもよくバランスする望ましい値は、S1=90〜100mmである。
かくして、窓開口部24の隅部、ドア開口部25の上隅部付近に設けられる外板横骨部材4Aのハット幅S2(コの字部分の幅)は50mm、その他の部位に設けられる外板横骨部材4Bのハット幅は70mmとして、側構体が形成されている。よって、作用する応力の高く荷重負担が大きい窓開口部24の隅部、ドア開口部25の上隅部付近に設けられる外板横骨部材4Aのハット幅を、その他の部位に設けられる外板横骨部材4Bのハット幅よりも小さくしている。なお、構体長手方向に直交する方向の面外曲げについては別途設けた縦骨部材により補強することになる。
ところで、側構体12は、側構体12を複数のユニットに分割して製造し、それらユニットを別々に製造した後にそれらユニットをレーザ溶接により接合して側構体とされる。具体的には、図3(a)(b)に示すように、幕板部21Aa,21Baを含む側ユニット21A,21Bおよびドアフレーム23を別々に製造し、その後、それらをレーザ溶接にて結合し、側溝体12とするものである。側ユニット21A,21Bはレーザ溶接を用いて組立てられる。ドアフレーム23の結合方法もレーザ溶接である。側ユニット21A,21Bの幕板部21Aa,21Baどうしの結合方法はレーザ溶接、あるいはアーク溶接である。
また、例えば、前述した側ユニット21Aの組立方法は、図4に示すように、側外板3を幕板31A、吹寄板31B、腰板31Cに分割し、それぞれの板31A〜31Cに外板横骨部材32A〜32C(外板横骨部材32Bは図面上1つであるが複数の外板横骨部材4Aに対応し、外板横骨部材32A,32Cも図面上1つであるが複数の外板横骨部材4Bに対応している)をレーザ溶接にて接合することで、幕板パネル33A、吹寄板パネル33B、腰板パネル33Cを製作する。
このとき、例えば図5(a)〜(d)に示すように、幕板31Aと外板横骨部材32Aのフランジ部とで重ね継手が構成されており、幕板31Aに対し外板横骨部材32A側からの部分溶け込みレーザ溶接により両者が接合される。板31B,31Cと外板横骨部材32B,32Cのフランジ部との接合も同様である。なお、窓枠(図示せず)は同様にしてあらかじめ吹寄板31Bにレーザ溶接により接合しておく。
吹寄板31Bの下端縁、および幕板31Aの下端縁にはせぎり部が設けられており、吹寄板31Bの下端縁のせぎり部と腰板31Cの上端、および幕板31Aの下端と吹寄板31Bの上端とで重ね継手を形成し、この部分をレーザ溶接することにより側ユニット21Aを形成する(図6参照)。
さらに前記重ね継手部に位置する腰帯35、幕帯34をレーザ溶接により外板3に接合する(図7参照)。このとき腰帯35、幕帯34の存在により、幕板パネル33Aと吹寄パネル33B、あるいは吹寄パネルと腰板パネルのレーザ溶接による施工に支障がないように幕帯34、腰帯35を配置することができれば、幕帯34、腰帯35をあらかじめ吹寄板31Bに接合しておくこともできる。
次に戸先柱部材36A、戸尻柱部材36B、間柱部材36Cの各柱部材を外板横骨部材32の頭部にレーザ溶接により接合する(図4,図5(d)、図7参照)。このとき短尺の溶接線であってもよいし、あるいはリング状の溶接線ならばさらに接合強度が安定する。
最後に、強度上の必要に応じて、腰帯35、幕帯34と戸尻柱部材36Bの結合部およびその近傍にガセット38A〜38Dをレーザ溶接にて接合して側ユニット21Aを完成させることができる(図8参照)。
そして、前述したところの側構体12の製造方法は、屋根構体13、妻構体14、台枠15の製造にも適用することができる。例えば、屋根構体13の場合は、屋根外板どうしを連続レーザ溶接により接合した後、垂木と屋根外板を外板側からのレーザ溶接により接合した適当な大きさの屋根ユニットを用いる。このとき屋根構体では高度な美観を要求されないので、レーザ溶接は貫通溶接でも部分溶け込み溶接でもよい。台枠15の場合は、側梁と横梁とをガセットを介してレーザ溶接もしくは抵抗スポット溶接にて接合して枠組を製作した後、キーストンプレートの床板と横梁とを床板側からのレーザ溶接により接合した適当な大きさの台枠ユニットを用いる。このとき台枠下部および床板面は、車体完成後は死角もしくは隠蔽部となり美観の要求はないので、レーザ溶接は貫通溶接でも部分溶け込み溶接でもよい。
そして、これら左右の側構体12、屋根構体13、妻構体14および台枠15が接合されて、鉄道車両用構体11が組み立てられる。
続いて、本発明の特徴点である、表示灯などの開口部周辺の構造について、さらに説明する。以下の説明においては、窓開口部24上側の幕部に設けられ行先表示器(図示せず)が設けられる矩形状の開口部26について説明するが、そのほか、前記幕部に位置し非常灯(図示せず)が設けられる円形状の開口部27、半自動ドアスイッチ(図示せず)が設けられるドア開口部の横の開口部28、ドアコック(図示せず)が設けられる腰部の開口部29等にも同様に適用することができる。
図9(a)に示すように、矩形状の開口部26周縁の内側には、開口部26に対応する形状を有する枠形状のシアプレート41が設けられている。このシアプレート41は、外板横骨部材4Aと同じ肉厚を有するので、外板横骨部材4A(取付フランジ部4Aa)とシアプレート41とが連続する部分は段差がなく、連続してレーザ溶接されている。
このようにすれば、図9(b)に示すように、外板横骨部材4Aからのレーザ溶接線L11が、開口部26の部分を貫通して、連続することになるので、外板仕上げに直交する方向の溶接線がなくなるとともに、溶接線の止端もなくなる。よって、外板の表面に現れる溶接線L11による歪みL21が目立たなくなるので、開口部周辺の見栄えを向上させることができる。
また、この場合、外板3に対し、その内側に、構体長手方向に延び外板3を補強する外板横骨部材4Aをレーザ溶接手段を用いるレーザ溶接により接合する場合には、図10に示すように、外板3に対し外板横骨部材4Aをレーザ溶接した後、外板横骨部材4A毎に、必要とする開口部に対応する部分U1を例えばプラズマ切断やレーザ切断により取り除くことで、所定の形状の開口部を有する外板パネルが得られる。この場合、後で打ち抜かれる開口部のコーナ部となる部分U11に予め切り込みや切り欠きを設けておき、続く打ち抜き加工が容易になるように構成することも可能である。また、必要とする開口部に対応する部分及びその近傍の外板横骨部材を予め切り取っておくこともできる。
さらに、開口部26周囲に薄板構造部を必要とする場合には、図11に示すように、外板横骨部材4Aの本体部4Aaの一部を切り取って(切り取り部分U12参照)、薄板構造とすることも可能である。
前記実施の形態は、次のように変更することも可能である。
(i)シアプレート41だけで強度が不足する場合には、例えば図12に示すように、開口部26に対応する開口を有する環状の補強枠部材51を配設することができる。この補強枠部材51は、外板3の内側に位置するとともに、外板3と平行に延び外板横骨部材4Aの本体部4Aaに溶接される板状の内枠部51Aと、この内枠部51Aの内周縁より外方に延びる板状の接続枠部51Bと、この接続枠部51Bの外周縁より内枠部51Aと平行に延び開口部26に対応する開口を有する板状の外枠部51Cとを有する構成とすることができる。この場合、外枠部51Cは、図13(a)に示すように、シアプレート41との間に空間部Sが形成され、外枠部51Cを外板3に接合しないことで、溶接熱が外板3に及ぶのが回避される構成としている。
また、空間部とすることなく、図13(b)に示すように、外枠部51Cは、シアプレート41との間にやけ止め部材52を設けることも可能である。また、図14に示すように、外枠部51Cは、シアプレート41に内周縁の一部L12が溶接され、それの円形状の開口においてプラグ溶接されている(溶接部分P301参照)構成とすることも可能である。
(ii)前記実施の形態では、平板状のシアプレート41を用いているが、溶接熱が外板3に及ぶのを回避するために、例えば図15に示すように、シアプレート41Aが、外板横骨部材4Aの本体部に対応する部分が浮き上がった浮き上がり部41Aaを有する構成としたり、図16に示すように、シアプレート41Bは、外枠部51Cが溶接される部分だけ浮き上がった浮き上がり部41Baを有する構成とすることも可能である。また、図17に示すように、前記焼け止め部材52Aは、外板横骨部材3の本体部に対応する部分に対応する大きさの焼け止めブロックで、シアプレート41に、ビス止めなどにより予め接合されている構成としてもよいし、例えば図18に示すように、シアプレート41Cは、前記外板横骨部材の本体部に対応する部分だけ厚肉部41Caとされている構成とすることも可能である。これら図15〜図18に示す場合にも、外枠部51Cの開口においてプラグ溶接されている(溶接部分P301参照)。
(iii)前記実施の形態では、外板に対し外板横骨部材をレーザ溶接した後、必要とする開口部に対応する部分を取り除くことで、所定の形状の開口部を有する外板パネルを得るようにしているが、図19に示すように、外板3に対し外板横骨部材4Aを連続的に溶接する前に、必要とする開口部に対応する部分U1の外板横骨部材4Aおよびその部分近傍の外板横骨部材4Aを取り除き、その取り除いた部分にシアプレート41を配置し、外板3に対する外板横骨部材4Aの連続溶接後に、前記必要とする開口部に対応する部分を外板3およびシアプレート41から一緒に取り除くことも可能である。なお、後で取り除かれる開口部のコーナ部となる部分U11に予め切り込みや切り欠きを設けておく点は図10に示す場合と同様である。
また、図20に示すように、開口部26となる部分に対応する開口を有するシアプレート41を配置するとともに、シアプレート41の前記開口内であって連続的に溶接される一部に対応する部位につまり溶接線L11が形成されることになる部位に、シアプレート41と同じ板厚のダミープレート42を設けておき、外板3に対する外板横骨部材4Aの連続レーザ溶接後に、ダミープレート42を、外板3から前記必要とする開口部を取り除く際に一緒に取り除く構成とすることもできる。
さらに、前記外板に対し前記外板横骨部材をレーザ溶接する前に、図21に示すように、必要とする開口部に対応する部分及びその近傍に位置する外板横骨部材4Aを取り除いておき、その取り除いた部分に、外板横骨部材4Aに対応する凸形状を有するアダプタユニット43(銅ブロックなどで相反骨部材を擬装したもの)を配置し、外板3に対する外板横骨部材4Aの連続溶接後に、アダプタユニット43を取り除く構成とすることも可能である。この場合は、レーザ溶接手段は、高さ方向に変位させることなく、溶接動作を行うことができる。なお、アダプタユニットは、溶接されず、アダプタユニットを取り去ると、必要部分のみ溶接されている状態となる。
(iv)前記実施の形態においては、溶接手段としては、部分溶け込みレーザ溶接、すなわち複数の板状部材を重ね合せ、その面外方向からレーザビームを移動しながら連続的に照射し、レーザビームを照射した板状部材の反対側に位置する板状部材の内部までの領域を加熱溶融して、それにより生じた溶融池の底部が前記反対側の板状部材の外側面に到達しないように、レーザビームの出力またはビーム移動速度を制御しながら前記複数の板状部材を接合するレーザ溶接を行うものを用い、前記反対側の板状部材の外側面に対応する外板の外側面に、予め前記レーザビームよる溶接線方向とほぼ平行に研磨加工が施されているものを用いたものについては説明しているが、本発明は、溶接手段については特に制限されず、外板も前述したような研磨加工が施されているものに制限されない。
本発明に係る一実施の形態である鉄道車両用側構体を示す斜視図である。 外板と外板横骨部材との関係を示す説明図である。 (a)(b)はそれぞれ側構体の組立方法の説明図である。 本発明に係る鉄道車両の側構体を組み立てる手順の一例を示す説明図である。 (a)はレーザ溶接継手の原理の説明図、(b)〜(d)はそれぞれ外板の説明図である。 本発明に係る鉄道車両の側構体を、車外側から見た状態を示す図である。 同鉄道車両の側構体を、車内側から見た状態を示す図である。 同鉄道車両の側構体を、車内側から見た状態を示す斜視図である。 (a)(b)はそれぞれ本発明に係る鉄道車両の側構体において、開口部周辺の構造を示す断面図である。 別の実施の形態についての説明図である。 別の実施の形態についての説明図である。 別の実施の形態についての説明図である。 (a)は図12のA−A線における断面図、(b)は別の実施の形態についての図13(a)と同様の図である。 別の実施の形態についての説明図である。 別の実施の形態についての説明図である。 別の実施の形態についての説明図である。 別の実施の形態についての説明図である。 別の実施の形態についての説明図である。 本発明に係る溶接方法の説明図である。 本発明に係る溶接方法の説明図である。 本発明に係る溶接方法の説明図である。 (a)(b)はそれぞれ従来のステンレス構体の説明図である。 (a)(b)はそれぞれ従来の鉄道車両用構体の変形の状態の説明図、(c)は従来の外板と外板横骨部材との関係を示す説明図である。 (a)(b)はそれぞれ、レーザ溶接を用いる場合に考えられる開口部近傍の構造を車体内方側、車体外方側から見た状態を示す斜視図である。
符号の説明
B レーザビーム
R 押さえローラ
3,102,102a 外板
4A,4A’,4B,101,102b 外板横骨部材
4Aa 本体部
24 窓開口部
25 ドア開口部
26〜29 開口部
41,41A,41B,41C,103 シアプレート
41Aa,41Ba 浮き上がり部
41Ca 厚肉部
42 ダミープレート
43 アダプタユニット
51 補強枠部材
51A 内枠部
51B 接続枠部
51C 外枠部
52,52A 焼け止め部材

Claims (11)

  1. 開口部を有する外板と、
    車両長手方向に配置され、前記外板の車内側に接合される取付フランジを有する複数の外板横骨部材と、
    前記外板の車内側であって、前記開口部の周縁に設けられるシアプレートとを備え、
    前記複数の外板横骨部材のうち、前記開口部に向かって延在する外板横骨部材の端部が、 前記シアプレートの端部に突き当てられ、
    前記開口部に向かって延在する外板横骨部材の取付フランジと前記シアプレートとは、前記外板に対して車両長手方向に連続して溶接される、鉄道車両用側構体。
  2. 前記外板横骨部材の前記取付フランジ部と前記シアプレートとは、同じ板厚である、請求項1記載の鉄道車両用構体。
  3. 前記外板は、車両長手方向に研磨加工が施され、
    前記外板横骨部材の前記取付フランジと前記シアプレートとは、前記外板に対してレーザ溶接により接合され、
    前記レーザ溶接による溶接線が、前記取付フランジ及び前記シアプレートにおいて車両長手方向に沿って連続的に延びる、請求項1に記載の鉄道車両用側構体。
  4. 前記シアプレートに対して車内側であって、前記開口部周縁に設けられる補強枠部材をさらに備え、
    前記外板横骨部材は、
    前記取付フランジ部と、前記外板に対して離間する頭部とを有し、
    前記補強枠部材は、
    前記開口部の周縁に設けられる外枠部と、前記外枠部から連続して形成され前記外板に対して略直交方向に延びる接続枠部と、前記接続枠部から連続して形成され前記外板に対して略平行に延びる内枠部とを有し、
    前記複数の外板横骨部材のうち、前記開口部に向かって延在する外板横骨部材の前記頭部と、前記補強枠部材の前記内枠部とが接合される、請求項1に記載の鉄道車両用側構体。
  5. 前記補強枠部材の前記外枠部と前記シアプレートとの間には、空間部が形成されている、請求項に記載の鉄道車両用側構体。
  6. 前記補強枠部材の前記外枠部と前記シアプレートとの間には、焼け止め部材が設けられている、請求項に記載の鉄道車両用側構体。
  7. 前記補強枠部材の前記外枠部は、前記シアプレートに接合されている、請求項に記載の鉄道車両用側構体。
  8. 前記シアプレートのうち、前記開口部に向かって延在する外板横骨部材の端部と前記開口部との間であって、前記外板横骨部材の前記頭部の幅に対応する部分が、車内側に突出する、請求項に記載の鉄道車両用側構体。
  9. 前記補強枠部材の前記外枠部は、前記シアプレートに接合され、
    前記シアプレートは、前記外枠部が接合される部分だけ前記外板から離れて浮き上がった中空突部を有する、請求項に記載の鉄道車両用側構体。
  10. 前記シアプレートのうち、前記開口部に向かって延在する外板横骨部材の端部と前記開口部との間であって、前記外板横骨部材の前記頭部の幅に対応する部分の厚さが、当該部分以外よりも厚い厚肉部である、請求項に記載の鉄道車両用側構体。
  11. 開口部を有する外板と、車両長手方向に配置される外板横骨部材と、前記開口部の周縁に設けられるシアプレートとを備えた鉄道車両用側構体の製造方法であって、
    前記外板に前記開口部を形成し、
    形成された前記開口部の周縁でかつ車内側に前記シアプレートを配置し、
    前記開口部に向かって延在する前記外板横骨部材の端部を、前記シアプレートの端部に突き当てて、当該外板横骨部材を配置し、
    車両長手方向に沿って、前記外板横骨部材から前記シアプレートを経て少なくとも前記開口部へ至るように連続的にレーザビームを照射して、前記外板と前記外板横骨部材、前記外板と前記シアプレートとを接合する、鉄道車両用側構体の製造方法
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