JP4801430B2 - 感熱性孔版原紙の穿孔方法 - Google Patents
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Description
押圧手段による押圧(印圧)により、ドラム内周面に供給されたインキがドラム開孔部、マスタ穿孔部を通って滲み出し、印刷用紙に転移して印刷画像が形成される。
マスタとしては、一般に、熱可塑性樹脂フィルムと、和紙等からなる多孔性の支持体とを接着剤にて接合したラミネート構造のものが使用されている。
特許文献1、2、3等に記載されているように、従来においては、穿孔の独立化を向上させるための改善が行われている。すなわち、従来においては「独立穿孔=良好な印刷状態」という認識が定着している。
その穿孔状態は、感熱性孔版原紙の断面形状を表した図13中の熱可塑性樹脂フィルム61a−1の記録デバイスと面した面(以下、「F面」という)を記録デバイス側から白抜き矢印方向に観察した場合、図14に示すような状態で表される。図13において符号61a−2は多孔性の支持体を示す。
穿孔径の大きさLm及びLsは、それぞれのドットピッチPm及びPsに対して45%以上80%以下、穿孔面積Sは走査ピッチPm及びPsの積の20%以上50%以下が望ましいとされている。
従来における孔版印刷装置の多くにおいては、文字画像もしくはベタ画像が占める割合が多く、前記F面の穿孔状態が分離、すなわち独立穿孔していれば、1つの穿孔ドットから供給されるインキの量がばらついても、その穿孔ドットに隣接した他の穿孔ドットから供給されるインキの転移によってカバーされることが多かったため、1つの穿孔ドット部から供給されるインキの転移量のばらつきに関してはあまり重要視しなくても問題となることはなかった。
そのため、前述したように、穿孔の状態をドットピッチに対する穿孔径の大きさもしくは穿孔面積の大きさによって規定し、それに合わせたインキを選択するだけで良かった。
にもかかわらず、1つの穿孔ドットから供給されるインキの転移量のばらつきを考慮せず、上述した従来の知見(認識)に基づいた制御条件下で感熱性孔版原紙に穿孔を施し、印刷ドラムからインキを印刷用紙に転移させて印刷を行っている。
このため、ベタ画像及びドット密集部の画像再現性は上述した理由からあまり問題となることはないものの、写真画像に対応した部位及び写真画像に対応した製版モードで製版した場合の印刷物などにおいて、再現性のばらつきが大きくなってしまうという問題が生じている。
請求項2に記載の発明によれば、穿孔部から印刷用紙へ転移するインキの主走査方向への付着量のばらつきを少なく抑えることができるので、品質の安定した印刷画像を得ることができる。
請求項3に記載の発明によれば、穿孔部から印刷用紙へ転移するインキの副走査方向への付着量のばらつきを少なく抑えることができるので、品質の安定した印刷画像を得ることができる。
請求項5に記載の発明によれば、感熱性孔版原紙を実質的に熱可塑性樹脂フィルムのみからなる構成にしたので、印刷ドラムから感熱性孔版原紙を介して印刷用紙にインキが転移する際に、和紙や和紙とPETもしくはPET単体からなる支持体の影響を受けずに済むので、印刷用紙へ転移するインキの付着量のばらつき抑制効果をより高めることができる。
まず、図1に基づいて、本実施形態における孔版印刷装置の全体構成及び孔版印刷プロセスの概要を説明する。
装置本体50の上部にはADF機能を備えた原稿読取部80が設けられており、その下方中央部には多孔性の印刷ドラム(版胴)101を有する印刷ドラム部100が設けられている。印刷ドラム部100の上方右側には製版装置90が設けられ、印刷ドラム部100の上方左側には排版装置70が設けられている。また、製版装置90の下方には給紙装置110が、印刷ドラム部100の下方には印圧部120が、排版装置70の下方には排紙部130が、それぞれ設けられている。
まず、原稿読取部80の上部に配置された図示しない原稿載置台に、印刷すべき画像を持った原稿60を載置し、図示しない操作パネル上の製版スタートキーを押す。この製版スタートキーの押下に伴い、まず排版工程が実行される。すなわち、この状態においては、印刷ドラム部100の印刷ドラム101の外周面に前回の印刷で使用された使用済みマスタ61bが装着されたまま残っている。
使用済みマスタ61bは、排版剥離ローラ対71a、71bの左側に配設された排版コロ対73a、73bと排版剥離ローラ対71a、71bとの間に掛け回された排版搬送ベルト対72a、72bで矢印Y1方向へ搬送されつつ排版ボックス74内へ排出され、印刷ドラム101の外周面から引き剥がされて排版工程が終了する。このとき、印刷ドラム101は反時計回り方向への回転を続けている。剥離・排出された使用済みマスタ61bは、その後、圧縮板75により排版ボックス74の内部で圧縮される。
原稿60の読み取りは、周知である縮小式の原稿読取方式で行われ、その画像が読み取られた原稿60は原稿トレイ80A上に排出される。画像センサ89で光電変換された電気信号は、装置本体50内の図示しないアナログ/デジタル(A/D)変換基板に入力され、デジタル画像信号に変換される。
このように搬送されるマスタ61に対して、サーマルヘッド91にライン状に並んだ複数個の微小な発熱抵抗体が、図示しないA/D変換基板から送られてくるデジタル画像信号に応じて各々選択的に発熱し、発熱した発熱抵抗体に接触しているマスタ61の熱可塑性樹脂フィルムが溶融穿孔される。
このように、画像情報に応じたマスタ61の位置選択的な溶融穿孔により、画像情報が穿孔パターンとして書き込まれる。
こうして、印刷ドラム101の開孔部及び製版済みマスタ61aの穿孔パターン部(共に図示せず)からインキが滲み出し、この滲み出たインキが印刷用紙62の表面に転移して印刷画像が形成される。この給版工程後の1枚目の印刷を版付けと呼ぶ場合もある。
プレスローラ103はインキローラ105と対向する位置をもって印刷ドラム101の外部に配置されている。
次に、図示しないテンキーで印刷枚数をセットし、図示しない印刷スタートキーを押下すると上記試し刷りと同様の工程で、給紙、印刷及び排紙の各工程がセットした印刷枚数分繰り返して行なわれ、孔版印刷の全工程が終了する。
従来、製版済みマスタ61aの穿孔状態は、図14に示したようなものであると考えられてきたが、実際の穿孔状態はF面を上から観察した場合、図2に示すような状態となっている。
図2(a)中のD−D線での断面図である図2(b)に示すように、F面の熱可塑性樹脂フィルム61a−1の穿孔(溶融)面積を最大面積(Sf)として、K面に近づくにつれ次第に穿孔面積が小さくなっていき、K面にて熱可塑性樹脂フィルム61a−1の穿孔面積が最小面積(Sk)となるすり鉢状となっている。図2において符号61a−2は支持体を示す。
そこで、印刷物の画像品質にばらつきが生じている原因は印刷ドラム101から供給されるインキの印刷用紙62への転移量がばらついているためであり、その原因は各々の穿孔ドットからのインキの転移状態がばらついているためと考え、調査を進めた。
種々の条件下で製版を行い、その穿孔状態を確認したところ、図3に示すように、図2でのF面での熱可塑性樹脂フィルム61a−1の穿孔面積であるSfとSf’の面積は同じであるものの、K面の熱可塑性樹脂フィルム61a−1の穿孔面積であるSkとSk’の面積が異なる状態が存在することが判った。
換言すると、製版条件の違いにより図3(a)で斜線(断面表示ではない)により示された部位の面積Sが面積Sfに占める割合に差が生じるということである。
また、穿孔径においても穿孔面積同様に、LmとLm’、LsとLs’がLfm及びLfsに占める割合に差を生じさせている。
なお、感熱性孔版原紙の種類によっては、図4(図2相当図)及び図5(図3相当図)に示すように、支持体側においても熱可塑性樹脂フィルム61a−1が逆向きのすり鉢状になっているものも存在する。しかしながら、その影響度はほとんど無く、その穿孔状態の違い(支持体側においてもすり鉢となっているか否かの違い)によってインキ転移量のばらつきに差を生じさせないことが本発明者らの実験により確認されている。
F面での熱可塑性樹脂フィルム61a−1の穿孔面積Sfに対して、F面での熱可塑性樹脂フィルム61a−1の穿孔面積SfからK面の熱可塑性樹脂フィルム61a−1の穿孔面積Skを差し引いた部分の面積Sが占める割合をSpとし、Spの違いによる印刷物への影響度の検証と、各走査方向におけるF面での熱可塑性樹脂フィルム61a−1の穿孔径Lfm及びLfsに対して、前記穿孔径Lfm及びLfsからK面の熱可塑性樹脂フィルム61a−1の穿孔径Lkm及びLksを差し引いた各々の値が占める割合をLmp及びLspとしたときのLmp及びLspの差による影響度の検証を行った。
なお、この検証試験は、サーマルヘッド91への通電パルス幅(エネルギー供給時間)を可変することで異なる穿孔状態を作り出しており、F面の熱可塑性樹脂フィルム61a−1の穿孔面積Sfは同じ状態になるように、通電パルス幅と印加電力の関係を事前実験にて得て、実験を行った。
印字周期:10ms/l
感熱性孔版原紙:Satelioマスタ
サーマルヘッド:A3-600dpi、A3-400dpi、B4-300dpi
パルス幅:5段階で可変
印加電力:各パルス幅に対応した値に調整(Sfを同等となるように調整)
インキ:Satelioインキ Type400
印刷用紙:インクジェットプリンタ用紙
検証手順:上記条件下で製版された感熱性孔版原紙を印刷ドラムに巻装し、SatelioA−400にて印刷を行い、得られた印刷画像サンプルを光学顕微鏡にて観察し、PCへ画像データとして取り込み、前記画像データを三谷商事(株)製の画像解析ソフトWinROOFにて解析した。
試験結果を表1に示す。各ばらつき比は条件1のばらつき比を1としたときの値を記載している。
使用インキにより値は多少変わるが、ばらつき比の傾向は変わらないと考え、本実験において使用インキは現システムに最適なものを選択している。
また、印刷用紙は、穿孔の影響度合いのみに着目したいため、インキの滲みが少ない用紙を選択した。
図7に各解像度における主走査径比と印刷ばらつき比の関係を、図8に各解像度における副走査径比と印刷ばらつき比の関係をそれぞれ示す。
図7及び図8から判るように、穿孔径比の関係については主走査方向及び副走査方向ともに同じ傾向を示し、主走査方向の穿孔径比Lmp及び副走査方向の穿孔径比Lspが、それぞれ300dpi=16%、400dpi=21%、600dpi=30%を超えると、印刷ばらつき比の増加量が増している(結果2)。
図9において、1平方インチ中の穿孔可能ドット数は、例えば主走査及び副走査方向の解像度が、主走査=600dpi、副走査=600dpiであれば、1平方インチ中の穿孔可能ドット数は、600×600=360000[個]になる。
したがって、上記解像度の場合、ばらつきの少ない印刷状態を得るには、図9で得られた関係式に当てはめて考えると、面積比は40%以下が望ましい。
表1における条件1と条件4では、記録デバイスから熱を受ける面の熱可塑性樹脂フィルムが穿孔された穿孔部の面積Sfを合わせた形で穿孔を施し、同じ穿孔ドット数分の上記印刷物の印刷面積を比較した結果、両者の平均値において差異はなかった。
しかしながら、上記のように面積比Spの値が、図9で得られた関係式の値を超えると、すなわち上記(式2)を満足しないと、印刷状態のばらつきが大きくなる。
同様に、主走査方向の穿孔径比Lmpの値が上記(式4)を満足しないと、印刷状態のばらつきが大きくなる。また、副走査方向の穿孔径比Lspの値が上記(式6)を満足しないと、印刷状態のばらつきが大きくなる。
したがって、上記(式1)、(式2)を満足するように、あるいは(式3)、(式4)を満足するように、あるいは(式5)、(式6)を満足するように、サーマルヘッド91へのエネルギー供給量を制御する。
穿孔自体の大きさは、使用環境や印刷用紙などの特性に合わせ、各々の条件に合わせて感度調整すればよい。
また、本発明においては、サーマルヘッドを使用した例に沿って検証実験を行い、説明している。その検証実験の際に同一穿孔状態を得るための通電パルスと印加電力の関係について調査したところ、図12に示す関係が得られた。
図12から判るように、パルス幅を短くするにつれて印加電力値は指数的に増大していくので、通電パルスを短くすることはサーマルヘッドの耐パワー性の面からあまり望ましくない。
条件1のパルス幅をさらに短くして面積比をゼロに近づけようとしたが、使用したサーマルヘッドの製品寿命を含めた動作可能範囲で実現することはできなかった。
以上のことから、サーマルヘッドを使用した孔版印刷装置においては、図2(a)、図3(a)に示した斜線部Sをゼロにすることは、実質的に不可能であると考えられる。
なお、レーザによる穿孔においては斜線部Sをほとんどゼロになるように穿孔を施すことが可能であるが、装置コストが増大するとともに取り扱い性の面から問題がある。
61a−1 熱可塑性樹脂フィルム
62 記録媒体としての印刷用紙
91 記録デバイスとしてのサーマルヘッド
101 印刷ドラム
Claims (5)
- 少なくとも熱可塑性樹脂フィルムを有する感熱性孔版原紙を記録デバイスにより穿孔製版し、製版された感熱性孔版原紙を印刷ドラムの外周面に巻装し、前記印刷ドラムの内側からインキを供給するとともに記録媒体を前記印刷ドラムに押圧して印刷を行う孔版印刷装置における感熱性孔版原紙の穿孔方法であって、
前記熱可塑性樹脂フィルムの前記記録デバイスと面した面が前記記録デバイスにより穿孔された面積Sfに対して、前記面積Sfから前記熱可塑性樹脂フィルムの前記記録デバイスに面した面と反対側の面が前記記録デバイスにより穿孔された面積Skを差し引いた値が占める面積比Sp=(Sf−Sk)/Sfを、解像度及び前記記録デバイスへのエネルギー供給量を変えて求め、各条件下における前記面積比とその印刷ばらつき比との関係をグラフ化し、前記グラフから各解像度間での印刷ばらつきを抑制できる前記面積比Spの値を抽出し、前記記録デバイスの穿孔可能ドット数と前記抽出された面積比Spとの関係近似式を求め、前記関係近似式に基づいて前記穿孔可能ドット数に対応した前記面積比Spを求め、これを超えないように前記記録デバイスを制御することを特徴とする感熱性孔版原紙の穿孔方法。 - 少なくとも熱可塑性樹脂フィルムを有する感熱性孔版原紙を記録デバイスにより穿孔製版し、製版された感熱性孔版原紙を印刷ドラムの外周面に巻装し、前記印刷ドラムの内側からインキを供給するとともに記録媒体を前記印刷ドラムに押圧して印刷を行う孔版印刷装置における感熱性孔版原紙の穿孔方法であって、
前記熱可塑性樹脂フィルムの前記記録デバイスと面した面が前記記録デバイスにより穿孔された穿孔部の主走査方向径Lfmに対して、前記主走査方向径から前記熱可塑性樹脂フィルムの前記記録デバイスに面した面と反対側の面が前記記録デバイスにより穿孔された穿孔部の主走査方向径Lkmを差し引いた値が占める主走査比Lmp=(Lmf−Lkm)/Lmfを、解像度及び前記記録デバイスへのエネルギー供給量を変えて求め、各条件下における前記主走査比とその印刷ばらつき比との関係をグラフ化し、前記グラフから各解像度間での印刷ばらつきを抑制できる前記主走査比Lmpの値を抽出し、前記記録デバイスの穿孔可能ドット数と前記抽出された主走査比Lmpとの関係近似式を求め、前記関係近似式に基づいて前記穿孔可能ドット数に対応した前記主走査比Lmpを求め、これを超えないように前記記録デバイスを制御することを特徴とする感熱性孔版原紙の穿孔方法。 - 少なくとも熱可塑性樹脂フィルムを有する感熱性孔版原紙を記録デバイスにより穿孔製版し、製版された感熱性孔版原紙を印刷ドラムの外周面に巻装し、前記印刷ドラムの内側からインキを供給するとともに記録媒体を前記印刷ドラムに押圧して印刷を行う孔版印刷装置における感熱性孔版原紙の穿孔方法であって、
前記熱可塑性樹脂フィルムの前記記録デバイスと面した面が前記記録デバイスにより穿孔された穿孔部の副走査方向径Lfsに対して、前記副走査方向径から前記熱可塑性樹脂フィルムの前記記録デバイスに面した面と反対側の面が前記記録デバイスにより穿孔された穿孔部の副走査方向径Lksを差し引いた値が占める副走査比Lsp=(Lfs−Lks)/Lfsを、解像度及び前記記録デバイスへのエネルギー供給量を変えて求め、各条件下における前記副走査比とその印刷ばらつき比との関係をグラフ化し、前記グラフから各解像度間での印刷ばらつきを抑制できる前記副走査比Lspの値を抽出し、前記記録デバイスの穿孔可能ドット数と前記抽出された副走査比Lspとの関係近似式を求め、前記関係近似式に基づいて前記穿孔可能ドット数に対応した前記副走査比Lspを求め、これを超えないように前記記録デバイスを制御することを特徴とする感熱性孔版原紙の穿孔方法。 - 請求項1乃至3のうちの何れか1つに記載の感熱性孔版原紙の穿孔方法において、
前記記録デバイスとして、主走査方向に配列された複数の発熱体を備えたサーマルヘッドを用いることを特徴とする感熱性孔版原紙の穿孔方法。 - 請求項1乃至3のうちの何れか1つに記載の感熱性孔版原紙の穿孔方法において、
前記感熱性孔版原紙として、実質的に熱可塑性樹脂フィルムのみからなるものを用いることを特徴とする感熱性孔版原紙の穿孔方法。
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