JP4800646B2 - セラミックフィルタ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、セラミックフィルタ及びその製造方法に関する。
セラミックフィルタは、セラミック多孔体を利用したフィルタであり、物理的強度、耐久性、耐食性等に優れるため、例えば水処理や排ガス処理、或いは医薬・食品分野などの広範な分野において、液体やガス中の懸濁物質、細菌、粉塵等の除去に用いられている。
特に、セラミックフィルタにおいては、セラミック多孔体をそのままろ材として用いる場合もあるが、ろ過性能、流体透過量(即ち処理能力)の双方を向上させるため、セラミックからなる多孔質体(基材)の表面に、同じくセラミックからなるろ過膜を形成することが一般的である。例えば、ろ過膜の平均細孔径を0.01〜1.0μm程度と小さく構成してろ過性能を確保する一方、基材の平均細孔径を1〜数100μm程度に大きく構成して、基材内部の流動抵抗を低下させ、流体透過量(即ち処理能力)を向上させることが行われている。
また、セラミックフィルタは、基材をろ過目的に応じて種々の形状に加工したものが用いられるが、基材を単一の流路を有するチューブ状、又は並行する多数の流路を有するハニカム状(モノリス状も含む)としたものが汎用されている。チューブ状又はハニカム状基材の隔壁表面(支持体)、例えば流路の内壁面にろ過膜を形成したフィルタは、ハウジング内に収容し、基材外周面側と流路が開口する基材端面側とをO−リング等で気密的に隔離する構造とすることにより、クロスフロー型のフィルタとして利用されている。
このとき、上記セラミックフィルタは、従来から、ろ過膜における膜欠陥の発生を防止するため、ろ過膜の下地層となる中間膜が支持体の表面については、隔壁を構成する支持体の凹凸を確実に埋めるとともに、ろ過膜における膜欠陥の発生を防止するべく、可能な限り平滑に形成する必要があった。
例えば、上記ハニカムフィルタ用基材は、その基材を構成するセラミック多孔質体の50%細孔径(d50)を8.5〜13μmの範囲内とするとともに、複数のセルを区分する隔壁の平均表面粗さを3.0〜5.5μmの範囲内に制御することにより、隔壁を構成する支持体の凹凸を埋める必要がなくなり、中間膜が薄くても、その表面を平滑にすることができるため、不純物の除去性能に優れるとともに、流体透過量(即ち処理能力)が大きいハニカムフィルタの製造に好適に用いることができる(特許文献1参照)。
しかしながら、上記セラミックフィルタは、被浄化流体(被浄化水)のろ過を繰り返すと、ろ過膜の表面上に被ろ過物である堆積物(汚れ)が層状に堆積するため、定期的に通常使用時とは逆方向に逆洗圧力を負荷し、主流路内の堆積物(汚れ)を排出・除去する逆洗を実施する必要があった。
また、逆洗を繰り返し行っていくと、逆洗だけでは、徐々に堆積物(汚れ)が取り切れなくなるため、最終的には薬液洗浄を行う必要があるが、非常にコストがかかるという問題点があった。
特開2004−299966号公報
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、設置面積当りの膜面積を増やすことにより、ろ過膜への堆積物(汚れ)が溜まる時間を延長することができるため、セラミックフィルタの逆洗回数を低減することができるとともに、薬液洗浄も必要最小限にすることができるセラミックフィルタ及びその製造方法を提供することにある。
上述の目的を達成するため、本発明は、以下のセラミックフィルタ及びその製造方法を提供するものである。
[1] 二つの端面と外周面とを有し、一方の前記端面から他方の前記端面まで貫通する被浄化流体の主流路が複数形成された支持体からなる多孔質体と、前記主流路の内壁面に形成された中間膜と、前記中間膜の表面に形成されたろ過膜と、から構成され、前記主流路の、前記一方の端面側の開口部から流入した前記被浄化流体を、前記多孔質体の内部を透過させることにより浄化し、前記多孔質体の外周面から浄化流体として取り出すセラミックフィルタであって、前記中間膜の表面にセラミック凝集粒子からなる多数の凸部を有するとともに、前記中間膜の輪郭に沿って前記ろ過膜に多数の凸部が形成され、且つ、前記中間膜の凸部の高さが、ろ過膜膜厚の等倍以上であるセラミックフィルタ。
] 二つの端面と外周面とを有し、一方の前記端面から他方の前記端面まで貫通する被浄化流体の主流路が複数形成された支持体からなる多孔質体に、前記主流路に中間膜用スラリーを流し込み、中間膜用スラリーに含まれる固形分を主流路の内壁面において層状に堆積させて中間膜を形成させた後、更に、前記中間層が形成された主流路に、ろ過膜用スラリーを流し込み、ろ過膜用スラリーに含まれる固形分を前記中間膜の表面に層状に堆積させてろ過膜を形成させるセラミックフィルタの製造方法であって、前記中間膜用スラリーに含まれる固形分中のセラミック微粒子に、セラミック凝集粒子が、前記セラミック微粒子と前記セラミック凝集粒子の配合割合(質量比)が1:0.1〜1:10となるように配合され、且つ、前記セラミック微粒子の平均粒径が、前記セラミック凝集粒子の0.5倍以下であるセラミックフィルタの製造方法。
] セラミック凝集粒子の平均粒径が、中間膜膜厚の等倍以下である[]に記載のセラミックフィルタの製造方法。
本発明のセラミックフィルタ及びその製造方法は、設置面積当りの膜面積を増やすことにより、ろ過膜への堆積物(汚れ)が溜まる時間を延長することができるため、セラミックフィルタの逆洗回数を低減することができるとともに、薬液洗浄も必要最小限にすることができる。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜、設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
図5は、本発明のセラミックフィルタの一実施形態を示す図面であり、図5(a)は斜視図、図5(b)は部分拡大断面図である。
本発明で用いるセラミックフィルタは、図5(a)(b)に示すように、二つの端面4a,4bと外周面とを有し、一方の端面4aから他方の端面4bまで貫通する被浄化流体62の主流路が複数形成された支持体50からなる多孔質体2と、主流路の内壁面に形成された中間膜52と、中間膜52の表面に形成されたろ過膜54と、から構成され、主流路3の、一方の端面4a側の開口部から流入した被浄化流体(被浄化水)62を、多孔質体2の内部を透過させることにより浄化し、多孔質体2の外周面から浄化流体(浄化水)60として取り出すものである。
このセラミックフィルタ1を用いて、液体・ガス等の流体のろ過して浄化する場合には、被浄化流体62を、主流路3の一方の端面4a側の開口部(第一開口部11)から流入させ、多孔質体2の内部を透過させることにより浄化し、多孔質体2の外周面6から浄化流体60として取り出す。
従来のセラミックフィルタの場合、図11に示すように、中間膜の表面が平滑である(図12参照)ため、図9に示すように、中間膜の輪郭に沿ってろ過膜も平滑に形成されている(図9参照)。即ち、本発明のセラミックフィルタは、図5(b)に示す支持体50、中間膜52及びろ過膜54との構成(断面)が、図10に示すような状態にある。
尚、図9は、従来のセラミックフィルタの主流路の内壁面の表面状態の一例を示すSEM写真、図10は、従来のセラミックフィルタの主流路の内壁面の断面状態の一例を示すSEM写真、図11は、従来のセラミックフィルタの主流路の内壁面の中間膜形成時における表面状態の一例を示すSEM写真であり、図12は、図11の一部を拡大したSEM写真である。
図5(b)に示すように、被浄化流体(被浄化水)60のろ過を繰り返すと、ろ過膜54の表面上に被ろ過物である堆積物(汚れ)70が層状に堆積するため、定期的に通常使用時とは逆方向に逆洗圧力を負荷し、主流路3内の堆積物(汚れ)70を排出・除去する逆洗を実施する必要がある。また、逆洗を繰り返し行っていくと、逆洗だけでは、徐々に堆積物(汚れ)70が取り切れなくなるため、最終的には薬液洗浄を行う必要があるが、非常にコストがかかるという問題点があった。
本発明のセラミックフィルタの主な特徴は、図3に示すように、中間膜の表面に多数の凸部(凝集粒子)を有し(図4参照)、図1に示すように、中間膜の輪郭に沿ってろ過膜に多数の凸部が形成されたものである。即ち、本発明のセラミックフィルタは、図5(b)に示す支持体50、中間膜52及びろ過膜54との構成(断面)が、図2に示すような状態にあることが好ましい。
尚、図1は、本発明のセラミックフィルタの主流路の内壁面の表面状態の一例を示すSEM写真、図2は、本発明のセラミックフィルタの主流路の内壁面の断面状態の一例を示すSEM写真、図3は、本発明のセラミックフィルタの主流路の内壁面の中間膜形成時における表面状態の一例を示すSEM写真、図4は、図3の凸部を拡大したSEM写真である。
これにより、本発明のセラミックフィルタは、従来のセラミックフィルタと比較して、設置面積当りの膜面積を増やすことができるため、ろ過膜54への堆積物(汚れ)70が溜まる時間を延長することができる。即ち、本発明のセラミックフィルタは、セラミックフィルタの逆洗回数を低減することができるとともに、薬液洗浄も必要最小限にすることができる(図5(b)参照)。
本発明のセラミックフィルタは、中間膜の凸部の高さが、ろ過膜膜厚の等倍以上であ、より好ましくは、2〜50倍、更に好ましくは、4〜10倍である。これは、中間膜の凸部がろ過膜膜厚の等倍未満である場合、ろ過膜の形成時に凸部が平滑化されてしまうからである。
図6は、本発明のセラミックフィルタの他の実施形態を示す斜視図である。図6に示すように、本実施形態のセラミックフィルタ21においては、多孔質体22の外周面26を含む部分に、特定主流路が外部空間と連通するようにスリット状の補助流路25が形成されてなるとともに、特定主流路は、その両端面の開口部が封止されてなり、主流路23の、一方の端面24a側の開口部から流入した被浄化流体62を、多孔質体22の内部を透過させることにより浄化し、多孔質体22の外周面26及び補助流路の出口28から浄化流体60として取り出すことが好ましい(図5(b)参照)。このような所定の補助流路25が形成されてなる本実施形態のセラミックフィルタ21は、多孔質体22の中心部近傍の主流路23からの浄化流体の回収が容易となり、セラミックフィルタ21のろ過処理能力を10倍以上に飛躍的に向上させることが可能となる点において好ましい。また、セラミックフィルタ21内の流量分布、逆洗時の逆洗圧力分布を大幅に改善することができる点においても好ましい。
次に、本発明のセラミックフィルタの製造方法について説明する。本発明のセラミックフィルタは、従来公知のセラミックフィルタの製造方法に準じて製造することが可能である。まず、骨材、焼結助剤の他、分散媒、有機バインダ、必要により界面活性剤、可塑剤等を添加し、混練してなる坏土を押出成形してなる成形体を得る。骨材は、多孔質体の主たる構成要素であって、平均粒径5〜200μm程度のセラミック粒子からなる。骨材を含む坏土を成形し、焼成することにより、骨材の粒径に応じた細孔を有する多孔質体が形成される。骨材の材質は、ろ過の目的に適合するように適宜選択すればよいが、例えばアルミナ、ムライト、コージェライト、炭化珪素、陶磁器屑等を用いることができる。
また、焼結助剤は、骨材同士の結合を強化するための添加材であって、平均粒径5μm未満のセラミック粒子からなる。骨材とともに坏土に添加することにより、骨材間の結合が強化され、強固な多孔質体が形成される。焼結助剤の材質も特に限定されないが、例えばアルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、ガラスフリット、長石、コージェライト等を用いることができる。通常は、骨材どうしの結合強度を確保し、多孔質体の細孔閉塞を防止するため、骨材及び焼結助剤の全質量に対して、10〜35質量%程度添加すればよい。
押出成形して得られた成形体を乾燥し、これを流路方向と垂直に所定の長さに切断した後に焼成して多孔質体を得ることができる。なお、得られる多孔質体の平均細孔径は1〜30μm程度である。次いで、得られた多孔質体の主流路の内壁面に中間膜を形成する。
中間膜は、平均細孔径が大きい多孔質体の主流路の内壁面(即ち、支持体)に、ろ過膜を製膜する際、平均粒子径が小さい骨材粒子を含むろ過膜用スラリー(製膜用スラリー)が支持体の細孔内部にまで入り込み、支持体の細孔を閉塞することを防止するための部材である。
ここで、本発明のセラミックフィルタの製造方法の主な特徴は、平均粒径3μm程度のセラミック微粒子に、平均粒径90μmのセラミック凝集粒子を所定の割合で配合したスラリーを用いて多孔質体の主流路の内壁面(即ち、支持体)に製膜した後、焼成することにある。これにより、表面に多数の凸部を有する中間膜を形成することができる。具体的には、セラミック微粒子及びセラミック凝集粒子を水等の分散媒中に分散し、必要に応じ、焼結助剤、有機バインダ、pH調整剤、界面活性剤等を添加することにより中間膜用スラリー(製膜用スラリー)を調製しこれを用いて支持体に製膜した後、乾燥・焼成して中間膜を形成する。また、前記セラミック微粒子の平均粒径は、前記セラミック凝集粒子の0.5倍以下であることが好ましい。
ここで、セラミック凝集粒子の平均粒径は、中間膜膜厚の等倍以下であることが好ましく、より好ましくは、0.05〜1倍、更に好ましくは、0.1〜1倍である。これは、凝集粒子はあくまで中間膜の構成要素の一つであるからである。
また、セラミック微粒子とセラミック凝集粒子との配合割合(質量比)は、1:0.1〜1:10である。これは、1:0.1より凝集粒子が少ないと、中間膜表面の凸部がほとんど存在せず、また、1:10より凝集粒子が多いと、凝集粒子が最密充填した場合の空隙を微粒子が埋めることができず、膜欠陥となってしまうからである。尚、セラミック微粒子とセラミック凝集粒子の材質も特に限定されないが、アルミナ質(より好ましくは、アルミナ)であることが好ましい。
ろ過膜は、セラミックフィルタのろ過機能を確保するための部材であり、多孔質体を構成する骨材に比して平均粒径の小さい、平均粒径0.1〜5μm程度のセラミック微粒子を含むスラリーを用いて多孔質体の主流路の内壁面(即ち、支持体)に製膜された中間膜の表面に製膜した後、焼成することにより形成することができる。具体的には、セラミック微粒子を水等の分散媒中に分散し、必要に応じ、焼結助剤、有機バインダ、pH調整剤、界面活性剤等を添加することによりろ過膜用スラリー(製膜用スラリー)を調製しこれを用いて中間膜に製膜した後、乾燥・焼成してろ過膜を形成する。ろ過膜の平均細孔径は0.1〜5μm程度である。
次に、本発明のセラミックフィルタの中間膜及びろ過膜の形成方法は、例えば、図7に示すような製膜装置37を用いる方法を挙げることができる。具体的には、前述の製膜用スラリー33を用意し、多孔質体32の他方の端面4bから一方の端面4aの方向に製膜用スラリー33を流通させるのと略同時に、真空ポンプPにより外周面36側を減圧状態とすると、製膜用スラリー33に含まれる固形分が主流路の内壁面において層状に堆積して製膜層が形成される。ここで、製膜用スラリー33を流通させるに際して、その流通線束が小さく外周面側の減圧度が大きいほど、両開口部における製膜層の膜厚差は大きくなる。従って、製膜用スラリー33の流通線束と減圧度とを制御することにより、中間膜又はろ過膜の膜厚を第二開口部から第一開口部に向かうに従って徐々に薄くなるように製膜することもできる。
また、本発明のセラミックフィルタの中間膜及びろ過膜の形成方法は、製膜用スラリー33の流通と略同時に減圧状態とすることにより、形成される製膜層の膜厚は製膜用スラリー33が流入する他方の端面4bから一方の端面4aに向かうに従って徐々に薄くなるように形成される。製膜層の全体が所望とする膜厚となる分に相当する量のろ過水34を多孔質体32の外周面36より排出する。なお、多孔質体32の一方の端面4a側から流出した製膜用スラリー33は循環させればよい。その後、製膜層の形状が保持されるように、ろ過水34の排出完了後、ろ過水側を減圧状態として多孔質体32を真空脱水し、次いで、乾燥及び焼成することにより、中間膜又はろ過膜を形成することができる。
更に、本発明のセラミックフィルタは、場合により所定の箇所にシール材を備えてなるものであってもよい。本発明にいうシール材とは、多孔質体の端面、具体的には図5(b)における一方の端面4aから被浄化流体62が多孔質体2内部に侵入することを防止するための部材をいい、多孔質体2の一方の端面4a、及び一方の端面4a近傍のろ過膜54を被覆するように形成することが好ましい。
シール材は、例えばホウケイ酸ガラス、ケイ酸ガラス、長石質ガラス等のガラス状物質(ガラスフリット等)からなる釉薬を所定の箇所に塗布した後、焼成することにより形成することができる。但し、ろ過膜と同等以下の細孔径を有するものである限りにおいて釉薬には限定されず、場合によってはシール材の代わりにろ過膜を形成することによって、多孔質体の端面から被浄化流体が多孔質体内部に侵入することを防止することも可能である。
また、図6に示すような、所定の補助流路25が形成されたセラミックフィルタ21を製造する方法について説明する。スリット状の補助流路25は、多孔質体22の焼成前又は焼成後に、ダイヤ電着カッター等の刃物により、補助流路25を形成すべき特定主流路の列が外部空間と連通するように破断して形成すればよい。ここで、補助流路25に連通する特定主流路については、浄化流体への被浄化流体の混入を防止するため多孔質体22の両端面の開口部を目詰め部材等により封止して封止部27を形成する。即ち、なお、特定主流路の内壁面にはろ過膜を形成する必要はない。
次に、被浄化流体として被浄化水を用いる場合における、本発明のセラミックフィルタの使用方法について概説する。図8に示すように、本実施形態のセラミックフィルタ41は、多孔質体42の主流路の内壁面に所定のろ過膜45が形成されてなり、多孔質体2の一方の端面4a、及びその近傍のろ過膜45にシール材43が被覆形成されており、このシール材43の部分において、O−リング46を介してハウジング44内に収容されている。このセラミックフィルタ41を用いて被浄化水を浄化する場合には、主流路の一方の端面4a側の第一開口部から被浄化水を流入させ、ろ過膜45と多孔質体42の内部を透過させることにより浄化し、多孔質体42の外周面6から浄化水として取り出す。
ろ過の繰り返しに伴い、ろ過膜45の表面上に堆積物が層状に堆積するため、定期的に通常使用時とは逆方向に逆洗圧力を負荷して逆洗する。逆洗に際しては、まず多孔質体の42の外周面6側から第一次的な逆洗圧力を負荷して堆積物をろ過膜45から剥離させた後、次いで他方の開口部(第二開口部)側から第二次的な逆洗圧力を負荷することにより、第一開口部から堆積物を排出して除去することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜3、比較例1及び比較例2)
骨材として、粒径が5〜300μmとなるように篩い分けしたアルミナを使用し、これに、焼結助材として粒径0.5〜5μmの長石、分散媒として水、有機バインダとしてメチルセルロースを添加し、混練して得られた坏土を押出成形することにより複数の主流路を有するハニカム状の成形体を得た。この成形体を乾燥した後、所定の長さとなるように流路方向と垂直に切断し、これを焼成することにより外径180mm、流路の内径2.5mm、長さ1000mm、主流路数が約2000個のハニカム状の多孔質体を得た。水銀圧入法により測定した多孔質体の平均細孔径は10μmであった。
次いで、平均粒径が3μmとなるように篩い分けしたアルミナ微粒子と、平均粒径が90μmのアルミナ凝集粒子とを、表1に示すように配合し、分散媒として水、焼結助剤としてガラスフリット、有機バインダとして多糖類水溶性ガムを添加してなる中間膜用スラリーをそれぞれ調製した。
上記中間膜用スラリーを用いて、図7に示すような製膜装置37を使用して多孔質体32の主流路の内壁面に製膜した後、乾燥・焼成して中間膜を形成した。なお、製膜用スラリー33(中間膜用スラリー)を多孔質体32の主流路内を流通させるに際しては、流通と同時に真空ポンプPにより外周面36側を減圧状態とした。このときの流通線束は1m/minであり、外周面の減圧度は−100kPaであった。それぞれ得られた中間膜の表面形状をSEM(走査型電子顕微鏡)で観測する(図3、図4、図11、図12及び図13参照)とともに、その平均細孔径を水銀圧入法により測定した。その結果を表1に示す。
次いで、平均粒径が0.1〜1.0μmとなるよう篩い分けしたアルミナを使用し、分散媒として水、有機バインダーとして多糖類水溶性ガム及びポリビニルアルコールを添加してなるろ過膜用スラリーを調製し、図7に示すような製膜装置37を使用して、多孔質体32の主流路の内壁面に予め製膜された中間膜表面に製膜した後、乾燥、焼成してろ過膜を形成し、セラミックフィルタ(実施例1〜3、比較例1及び比較例2)を製造した。
尚、製膜用スラリー33(ろ過膜用スラリー)を多孔質体32の主流路内を流通させるに際しては、流通と同時に真空ポンプPにより外周面36側を減圧状態とした。このときの流通線束は1m/minであり、外周面の減圧度は−100kPaであった。それぞれ得られたろ過膜の表面形状(図1及び図9参照)及び断面形状(図2及び図10参照)をSEM(走査型電子顕微鏡)で観測するとともに、その平均細孔径を水銀圧入法により測定した。その結果を表1に示す。
尚、上記セラミックフィルタの製造方法の主なプロセスは、(1)多孔質体作製、(2)中間膜製膜、(3)乾燥(80℃)、(4)焼成(950℃)、(5)ろ過膜製膜、(6)乾燥(80℃)、(7)焼成(950℃)で行った。
それぞれ得られたセラミックフィルタ(実施例1〜3、比較例1及び比較例2)のろ過膜の膜面積をSEM微構造観察より得た膜凸部形状から算出し、最終的な評価を行った。尚、膜面積は、比較例1を1とした場合における比率として表1に示す。また、セラミックフィルタの評価は、比較例1を基準として、膜面積の比率が1.0以上1.2未満の場合を(△)、膜面積の比率が1.2以上の場合を(○)、ろ過膜形成不能の場合を(×)とした。
(考察:実施例1〜3、比較例1及び比較例2)
表1の結果から、実施例1では、セラミック微粒子とセラミック凝集粒子との配合割合(質量比)が十分でなかったため、比較例1(図11参照)と比較しても中間膜の表面に変化がなかったため、満足なろ過膜面積の増加を得ることができなかった(図9参照)。一方、実施例2では、セラミック凝集粒子の配合割合を増すことにより、比較例1(図11参照)と比較して中間膜の表面に多数の凸部を形成することができるため(図13参照)、ろ過膜の膜面積を1.4倍にまで向上することができ、更に、実施例3では、ろ過膜の膜面積を2.3倍まで向上させることができた(図3参照)。これにより、実施例1〜3では、セラミック微粒子とセラミック凝集粒子との配合割合(質量比)を制御することにより、ろ過膜の膜面積を任意に制御できることを確認した(図1参照)。一方、比較例2では、セラミック凝集粒子だけで中間膜を形成しようとした場合、中間膜の細孔径をほぼ倍(0.9μm)にすることができたが、ろ過膜を形成することはできなかった。
本発明のセラミックフィルタは、特に、セラミック多孔体を利用したフィルタであり、物理的強度、耐久性、耐食性等に優れるため、例えば水処理や排ガス処理、或いは医薬・食品分野などの広範な分野において、液体やガス中の懸濁物質、細菌、粉塵等の除去に好適に用いることができる。また、本発明のセラミックフィルタの製造方法は、このようなセラミックフィルタを好適に製造することができる。
本発明のセラミックフィルタの主流路の内壁面の表面状態の一例(実施例2)を示すSEM写真である。 本発明のセラミックフィルタの主流路の内壁面の断面状態の一例を示すSEM写真である。 本発明のセラミックフィルタの主流路の内壁面の中間膜形成時における表面状態の一例(実施例2)を示すSEM写真である。 図3の凸部を拡大したSEM写真である。 本発明のセラミックフィルタの一実施形態を示す図面であり、図5(a)は斜視図、図5(b)は部分拡大断面図である。 本発明のセラミックフィルタの他の実施形態を示す斜視図である。 製膜方法の一例を模式的に示す図面である。 ハウジング内に収容されたセラミックフィルタの概略断面図である。 従来のセラミックフィルタの主流路の内壁面の表面状態の一例(比較例1)を示すSEM写真である。 従来のセラミックフィルタの主流路の内壁面の断面状態の一例を示すSEM写真である。 従来のセラミックフィルタの主流路の内壁面の中間膜形成時における表面状態の一例を示すSEM写真である。 図11の一部を拡大したSEM写真である。 本発明のセラミックフィルタの主流路の内壁面の中間膜形成時における表面状態の他の例(実施例2)を示すSEM写真である。
符号の説明
1,21,41…セラミックフィルタ、2,22,32,42…多孔質体、3,23…主流路、4a,24a…一方の端面、4b,24b…他方の端面、5,45…ろ過膜、6,26,36…外周面、11…第一開口部、12…第二開口部、25…補助流路、27…封止部、28…補助流路の出口、33…製膜用スラリー、34…ろ過水、37…製膜装置、P…真空ポンプ、43…シール材、44…ハウジング、46…O−リング、50…支持体、52…中間膜、54…ろ過膜、60…浄化流体(浄化水)、62…被浄化流体(被浄化水)、70…堆積物(汚れ)。

Claims (3)

  1. 二つの端面と外周面とを有し、一方の前記端面から他方の前記端面まで貫通する被浄化流体の主流路が複数形成された支持体からなる多孔質体と、前記主流路の内壁面に形成された中間膜と、前記中間膜の表面に形成されたろ過膜と、から構成され、前記主流路の、前記一方の端面側の開口部から流入した前記被浄化流体を、前記多孔質体の内部を透過させることにより浄化し、前記多孔質体の外周面から浄化流体として取り出すセラミックフィルタであって、
    前記中間膜の表面にセラミック凝集粒子からなる多数の凸部を有するとともに、前記中間膜の輪郭に沿って前記ろ過膜に多数の凸部が形成され、且つ、前記中間膜の凸部の高さが、ろ過膜膜厚の等倍以上であるセラミックフィルタ。
  2. 二つの端面と外周面とを有し、一方の前記端面から他方の前記端面まで貫通する被浄化流体の主流路が複数形成された支持体からなる多孔質体に、前記主流路に中間膜用スラリーを流し込み、中間膜用スラリーに含まれる固形分を主流路の内壁面において層状に堆積させて中間膜を形成させた後、更に、前記中間層が形成された主流路に、ろ過膜用スラリーを流し込み、ろ過膜用スラリーに含まれる固形分を前記中間膜の表面に層状に堆積させてろ過膜を形成させるセラミックフィルタの製造方法であって、
    前記中間膜用スラリーに含まれる固形分中のセラミック微粒子に、セラミック凝集粒子が、前記セラミック微粒子と前記セラミック凝集粒子の配合割合(質量比)が1:0.1〜1:10となるように配合され、且つ、前記セラミック微粒子の平均粒径が、前記セラミック凝集粒子の0.5倍以下であるセラミックフィルタの製造方法。
  3. 前記セラミック凝集粒子の平均粒径が、前記中間膜膜厚の等倍以下である請求項2に記載のセラミックフィルタの製造方法。
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