JP4094771B2 - セラミックフィルタ用基材とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミック多孔体からなる筒状の基材に原液流路となる多数のセルを穿設してなるモノリス型のセラミックフィルタ用基材とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
セラミックフィルタ用基材が、セラミックフィルタとして用いられる場合には、高分子膜等と比較して、物理的強度、耐久性に優れるため信頼性が高いこと、耐食性が高いため酸アルカリ等による洗浄を行っても劣化が少ないこと、更には、濾過能力を決定する細孔径の精密な制御が可能である点において、固液分離用のフィルタ等として有用である。
【0003】
セラミックフィルタは、平板状、チューブ状等、種々の形状に加工されたセラミック多孔体を濾材として濾過を行うが、単位体積当たりの濾過面積が大きく、濾過処理能力が高い点において、図2に示すようなセラミック多孔体からなる筒状のセラミックフィルタ用基材22に原液流路となる多数のセル23を穿設した、いわゆるモノリス型フィルタ21が広範に利用されている。
【0004】
モノリス型フィルタは、基材となるセラミック多孔体のみを濾材として、或いは透水量を確保しつつ濾過性能を向上させる観点から、セルの内周面に、基材となるセラミック多孔体の細孔に比して更に細孔径が小さいセラミック濾過膜(以下、単に「濾過膜」という。)を形成した状態で使用されている。
【0005】
モノリス型フィルタのセルとしては、基材の単位体積当たりの濾過面積を大きくとることができる点において、断面形状が四角形である四角セルも汎用されている。但し、セル内周面に90°以下のコーナー部が形成されることに起因して、▲1▼コーナー部に濾過ケークが溜まり易く逆洗浄による剥離除去が困難であり、また、▲2▼濾過膜形成時にコーナー部の膜厚のみが厚くなるため濾過速度が小さくなる、等の不具合がある。
【0006】
従って、モノリス型フィルタのセルとしては、五角形以上の多角セルのような90°以上、特に90°超のコーナー部を有するセル(例えば六角セル等)、或いは円形セルのようなコーナー部を有しないセル等が好ましいとされている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
モノリス型フィルタは一種のハニカム構造体であるため、他のハニカム構造体と同様に成形原料の坏土を押出成形し、乾燥した後、焼成する方法等によって製造することができる。
【0008】
しかしながら、上述の五角形以上の多角セル、円形セル等の90°以上のコーナー部を有するセルは、セル上下方向からの力に対する強度が低いため、モノリス型フィルタのように多数のセルが形成された押出成形体では押出成形体の自重や以後の工程(焼成工程等)で発生する振動等の外力により、製造されたフィルタ或いはセルが容易につぶれ変形してしまうという問題があった。
【0009】
上記のような問題は、横置きで焼成等を行う必要がある、大型のフィルタを製造する場合において、特に顕著な問題となっている。
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、より均一な膜厚でセル内周面に濾過膜を形成することができ、セル内周面に付着したケーク層を逆洗浄で剥離除去し易く、かつ、製造の際における自重や外力によるつぶれ変形を防止できるモノリス型フィルタ用基材を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らが鋭意検討した結果、五角形以上の多角セル、若しくは円形セルを有するモノリス型フィルタ用基材において、少なくとも1組の隣接するセル列の間に、基材を直線的に横断するセル壁を形成することにより従来技術の問題点を解決できることに想到して本発明を完成した。
【0011】
即ち、本発明によれば、セラミック多孔体からなる筒状の基材に、断面形状が五角形以上の多角形及び/又は円形である多数のセルを両端面に開口させ、筒状基材の長手方向に並列するように穿設したモノリス型のセラミックフィルタ用基材であって、前記断面形状が五角形以上の多角形及び/又は円形である前記セルを、基材断面を横断するように複数列からなる群を複数配列するとともに、当該複数の群の間に挟まれた特定のセル列のセルのみを四角形状とし、当該セル列における四角形状セルの、基材の断面横断方向において各々対向するセル壁を、基材断面を横断するように、平行かつ直線上に配列したことを特徴とするセラミックフィルタ用基材が提供される。
【0012】
本発明のセラミックフィルタ用基材においては、当該特定のセル列において、セルの一部を外部空間と連通するように破断してスリット状の空隙部を形成し、当該空隙部と連通するセルの縁端部を封止することが好ましい。
【0013】
また、本発明のセラミックフィルタ用基材を用いるセラミックフィルタにおいては、原液流路となるセラミックフィルタ用基材のセルの内周面に、セラミック多孔体である基材の細孔に比して更に細孔径が小さいセラミック濾過膜を少なくとも1層形成することが好ましい。
また、本発明によれば、断面形状が五角形以上の多角形及び/又は円形である多数のセルを両端面に開口させ、筒状基材の長手方向に並列するように穿設したセラミック多孔体からなる筒状のモノリス型のセラミックフィルタ用基材の製造方法であって、前記断面形状が五角形以上の多角形及び/又は円形である前記セルを、基材断面を横断するように複数列からなる群を複数配列するとともに、当該複数の群の間に挟まれた特定のセル列のセルのみを四角形状とし、当該セル列における四角形状セルの、基材の断面横断方向において各々対向するセル壁を、基材断面を横断するように、平行かつ直線上に配列してなる成形体を押出成形し、得られた押出成形体を、前記直線上に配列した四角形状のセル壁の基材断面横断方向が鉛直方向で、押出成形体の長手方向が水平になるように横置きに乾燥し、焼成することを特徴とするセラミックフィルタ用基材の製造方法が提供される。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、五角形以上の多角セルや円形セルを有するモノリス型フィルタ用基材において、少なくとも1組の隣接するセル列の間に、基材を直線的に横断するセル壁を形成したことを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、より均一な膜厚でセル内周面に濾過膜を形成することができ、セル内周面に付着したケーク層を逆洗浄で剥離除去し易いことに加え、製造の際における自重や外力によるつぶれ変形を防止できるモノリス型フィルタ用基材が提供される。以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本明細書において「断面形状」というときは、基材、即ちフィルタのセル穿設方向と直交する断面における形状をいうものとする。
【0016】
本発明のセラミックフィルタ用基材(以下、単に「フィルタ用基材」という。)は、セラミック多孔体からなる筒状の基材に被処理液体(以下、「原液」という。)の流路となる多数のセルを穿設したハニカム構造を呈する、いわゆるモノリス型のフィルタ用基材である。
【0017】
モノリス型フィルタは、原液を多数のセルに供給し、多孔体からなる基材の細孔で、或いはセル内周面に形成されたセラミック濾過膜により原液を濾過する一方、基材の細孔を透過して外部空間に流出した濾過液を回収する濾過方式のフィルタであり、平板状、或いはチューブ状のフィルタ等と比較して単位体積当たりの濾過面積を大きくとることができ、濾過処理能力が高いという特徴がある。
【0018】
(1)基材
一般に、モノリス型フィルタの基材は筒状体で構成されるが、基材の断面形状は特に限定されず円形、正方形、長方形、或いは六角形等のものを用いることができる。但し、押出成形がし易く、焼成変形が少なく、また、ハウジングとのシールがし易い点において、断面形状が円形である筒状体(即ち円筒体)を特に好適に用いることができる。
【0019】
基材は、物理的強度、耐久性、耐食性に優れるセラミックで構成するが、その種類は特に限定されず、例えばアルミナ、チタニア、ムライト、ジルコニア、コージェライト、或いはこれらの混合物等、種々のセラミック材料の中から原液や洗浄薬液に対する耐食性、製造の容易さ、コスト等、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0020】
また、基材のサイズは特に限定されず、基材の長手方向の全長としては通常150〜2000mm程度、基材が円筒体である場合には外径30mmφ以上のものが汎用されるが、本発明は横置きで焼成等を行う必要がある、外径90mmφ×長さ500mm以上の大型のフィルタを製造する場合に、特に好適に用いることができる。
【0021】
また、モノリス型フィルタは、セル内部からの濾過液を基材を透過させて回収する濾過方式を採用するため、基材は多孔体であることが必要である。基材が多孔体であるので濾別する物質によっては、基材自体を濾材として濾過を行うことも可能であるが、後述するようにセル内周面に形成したセラミック濾過膜により濾過を行うのが通常である。
【0022】
基材には、原液の流路となる多数のセルを穿設するが、本発明のフィルタ用基材においては、多数のセルを並列するように穿設したセル列を、複数列形成する。即ち、各セルは無作為に穿設するのではなく、基材の少なくとも1方向にセルが並列するように構成する。
【0023】
セルの孔径については、単位体積当たりの濾過面積の確保、逆洗浄時における付着固形物の剥離し易さ、濾過液の基材中における透水抵抗の低減等の観点から原液の性状(固形分濃度、固形分の大きさ、粘度等)にあった孔径を選択すればよい。例えば上水の濾過に使用する場合であれば1〜5mm程度であることが好ましい。また、基材の強度を確保するため、全てのセルの空隙容積が基材体積の80%以下であることが好ましい。
【0024】
また、本発明のフィルタ用基材においては、断面形状が五角形以上の多角形及び/又は円形である多数のセルを基材に穿設する。五角形以上の多角セル(六角セル等)のような90°以上、特に90°超のコーナー部を有するセル、或いは円形セルのようなコーナー部を有しないセルは、より均一な膜厚でセル内周面に濾過膜を形成することができ、また、セル内周面に付着したケーク層を逆洗浄で剥離除去し易いからである。
【0025】
上述の観点からは円形セルが最も優れているが、基材の単位体積当たりの濾過面積を大きくとれる点においては各セルの端面を接するように最密配置できる六角セルの方が好ましい。コーナー部が鈍角である六角セルは均一な濾過膜の形成、ケーク層の剥離除去の点でも比較的良好であるため、総合的に判断すると六角セルが特に好ましい。
なお、本発明においては必ずしもフィルタ用基材全体を同一のセル形状とする必要はなく、複数のセル形状を適宜組み合わせて穿設しても良い。
【0026】
上述のように本発明のフィルタ用基材においては、断面形状が五角形以上の多角形及び/又は円形である多数のセルを並列するように穿設したセル列を複数列有するが、少なくとも1組の隣接するセル列の間に、基材を直線的に横断するセル壁を形成している(以下、「直線状セル壁」という。)。
【0027】
図3(a)や図3(b)に示す如く、複数のセル列33a,33b,33cのうち少なくとも1組の隣接するセル列の間に、直線状セル壁34a,34bを形成する構造とすれば、セル形状に拘わらず直線状セル壁34a,34b方向の力に対する強度を向上させることができる。従って、押出成形体等を直線状セル壁34a,34bが鉛直方向に位置するように横置きすることにより、自重や外力によるつぶれ変形を防止することが可能となる。
【0028】
一方、例えば図3(c)や図3(d)のように、円形セル41や六角セル42を最密配置してセル列43を構成すると、全てのセル壁44a,44bが基材をジグザグ状に横断するように形成されるため(以下、「ジグザグ状セル壁」という。)、製造時に押出成形体の自重や以後の工程(焼成工程等)で発生する振動等の外力により、製造されたフィルタ或いはセルが容易につぶれ変形してしまうおそれがある。
【0029】
なお、直線状セル壁は少なくとも1組の隣接するセル列の間に形成されていれば足り、必ずしも図3(a),(b)のセル列33bのようにセル列の両側に形成されている必要はない。
【0030】
更に、本発明においては、複数のセル列のうち、特定のセル列のみにおけるセルの断面形状を上辺と底辺とが平行する四角形状とし、当該セルの上辺或いは底辺が各々一直線上に存在するように各セルを並列することが好ましい。このような構造は、特定のセル列の両側に直線状セル壁が形成されることに加え、基材全体のセルの壁厚を均一にすることができるという特徴がある。
即ち、基材の押出成形において坏土を型内に送り込む際に、特別な調整を施さなくても坏土が口金から均一に押し出されるため、内部歪みの少ない成形体を得ることができ、焼成時のクラックを防止できる点において有利である。
【0031】
一方、基材全体のセルの壁厚を不均一にすると、坏土を供給する口金の孔径を基材の部分毎に変更・調整するという煩雑な操作を行わない限り、成形体中において坏土の疎な部分と密な部分が形成され易い。
このような成形体であっても本発明のつぶれ変形防止の効果を得られる場合はあるが、乾燥・焼成時の収縮が部分毎に異なるため、クラックを生ずるおそれがある点には留意すべきである。
【0032】
断面形状が上辺と底辺とが平行する四角形状のセルとしては、正方形セル、長方形セル、平行四辺形セル、台形セル等が挙げられ、これらの形状を適宜組み合わせても良い。
中でもセル内周面のコーナー部が全て90°に構成される正方形セル、長方形セルはセル壁方向の力に対する強度が高い点において好ましい。
【0033】
なお、本発明のフィルタ用基材においては、均一な濾過膜の形成、ケーク層の剥離除去の観点から五角形以上の多角セル及び/又は円形セルを基本的なセル形状として採用し、つぶれ変形防止の効果を得られる必要最小限のセル列を上記四角セルで構成することが好ましい。上記四角セルのセル列が多過ぎる場合には、均一な濾過膜の形成、ケーク層の剥離除去の点で不具合を生じるおそれがあるからである。但し、このような場合にあっても、四角セルのコーナー部を面取りする(例えばセル形状を擬八角形とする、或いはコーナー部をR形状とする)ことにより、上記不具合を抑制することは可能である。
【0034】
上記四角セルとすべき「特定のセル列」の数は、フィルタの大きさ、形状等により異なるが、外径180mmφ×長さ1000mmの円筒状基材にセル列を61列形成したフィルタを例とすれば9列程度のセル列を上記四角セルとする(即ち、直線状セル壁を9列のセル列の両側に合計18箇所形成する)ことにより、つぶれ変形防止の効果を得ることができる。
【0035】
(2)スリット
大型のフィルタにおいては、複数のセル列のうちの一部のセル列において、セルの一部を外部空間と連通するように破断してスリット状の空隙部(以下、単に「スリット」という。)を形成する場合がある(特願平10-328003号等)。
【0036】
このような構造は基材中心部近傍のセルからの濾過液の回収が容易となりフィルタの透水量(即ち濾過処理能力)を10倍以上に飛躍的に向上させることが可能となる他、フィルタ内の透水量分布、逆洗浄時の逆圧力分布を大幅に改善することができる点において非常に有用である。
【0037】
本発明の構造は上述のスリットを形成したフィルタにも適用することができる。この場合にあっては、既述のセルを四角形状とした「特定のセル列」にスリットを形成することが好ましい。
【0038】
スリットは、基材の焼成前若しくは焼成後に、ダイヤ電着カッター等の刃物により、スリットを形成すべきセル列(以下、「スリット形成列」という。)を外部空間と連通するように破断して形成するが、スリット形成列のセルの内壁が六角セルや円形セルのように、ジグザグ状セル壁として形成されていると、当該ジグザグ状セル壁に沿って刃物が入ってしまい、隣接するセル列との間のセル壁を破損するおそれがあるからである。
【0039】
一方、本発明の構造におけるセルを四角形状とした「特定のセル列」においてはセルの内壁が直線的に構成されるため、セルの内壁に沿って刃物が入ってもセル壁を破損することがない。また、スリット形成列のセルは、濾過液内への原液の混入を防止するため基材縁端の開口部を目詰め部材等により気密的に封止する構造を採り、原液は供給されない。即ち、セル内壁に濾過膜を形成する必要はなく、ケーク層が形成される場合もないため、セル形状を四角としても不具合を生じることがない点においても好ましい。
【0040】
(3)濾過膜
本発明のフィルタ用基材を用いるセラミックフィルタにあっては、既述の如く原液流路となるセラミックフィルタ用基材のセルの内周面に、セラミック多孔体である基材の細孔に比して更に細孔径が小さいセラミック多孔質膜(以下、「濾過膜」という。)を形成することが好ましい。
【0041】
このような構造では、濾過機能は専ら多孔質膜が果たすため、基材自体の細孔径については1〜数100μm程度まで大きくすることができる。従って、基材内における濾過液の流動抵抗を低下させ、フィルタの透水量を増加させることが可能となる。
【0042】
濾過膜は細孔径が数10μm以下の薄膜であり、基材同様にセラミックにより構成される。濾過膜は、基材内周面にセラミック骨材粒子(以下、単に「骨材粒子」という。)を含むスラリーを製膜し、焼成することにより基材内壁に固着させることができる。
【0043】
例えば、前記骨材粒子を水等の分散媒中に分散し、必要に応じ有機バインダ、pH調整剤、界面活性剤等を添加することにより製膜用のスラリーとし、従来公知の方法、例えばディップ製膜法、本出願人が既に開示した特公昭63-66566号公報に記載の濾過製膜法等を用いてセル内周面に成膜して乾燥し、更に当該製膜体を1300℃程度の高温で焼成する等の方法によりフィルタとすることができる。
【0044】
骨材粒子のセラミック種は特に限定されず、例えばアルミナ、チタニア、ムライト、ジルコニア、シリカ、スピネル、或いはそれらの混合物等を用いることができる。但し、粒子径が制御された原料を入手し易く、安定なスラリーを形成でき、かつ、耐食性が高い材質(例えばアルミナ等)を用いることが好ましい。濾過膜の細孔径は骨材粒子の粒径により制御することができる。
濾過膜は少なくとも1層形成することが好ましく、2層以上形成してもよい。
【0045】
【実施例】
以下、本発明のフィルタ用基材を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例により限定されるものではない。
【0046】
(フィルタ用基材の基本構造)
実施例1,比較例1とも、基材としては、直径180mm、長さ1000mmの円筒状であって、水銀圧入法による平均細孔径が20μm、JIS浸漬法による気孔率が40%のアルミナ多孔体からなるハニカム構造体を用いた。
当該ハニカム構造体は、押出成形により1列に最大53個のセルを穿設したセル列を61列、合計約2200個のセルを形成した。
【0047】
次いで、ダイヤ電着カッターを用いて、押出成形された円筒体の長手方向の中心部に6列おきにスリットを設けた。
スリットの幅はスリット形成列のセルの高さより小さい1.2mmに設定し、スリットの各縁端部はR形状に加工した。スリットを形成した押出成形体を、乾燥し、焼成することにより基材を製造した。
【0048】
図1,図4に示すように、スリット形成列6,56のセルの基材2,52縁端開口部はガラス質からなる封止部材5,55を充填して被覆し、焼成することにより気密的に封止した。
【0049】
(実施例1)
図1は、本発明のフィルタ用基材の一の実施例を示す概略図である。
実施例1のフィルタ用基材2においては、スリット形成列6のセルは幅2.5mm、高さ2mmの長方形セル3a、スリット形成列6と隣接するセル列は幅2.5mm、最大高さ2.4mmのホームベース状の五角セル3b、残りのセル列は対辺2.5mmの六角セル3cとし、五角セル3bが長方形セル3aと高さ方向に並列するように配置した。セルの壁厚は全て0.65mmとした。即ち、フィルタ用基材2の長方形セル3aからなるセル列の上下には直線状セル壁7が形成された。
【0050】
(比較例1)
図4は、比較例1のフィルタ用基材を示す概略図である。
比較例1のフィルタ基材52は、全てのセルを壁厚0.65mm、対辺2.5mmの六角セル53で構成した。即ち、フィルタ用基材52の全てのセル列間にジグザグ状セル壁が形成された。
【0051】
(結果)
実施例1及び比較例1のフィルタ用基材について、焼成時のつぶれ変形について評価した。焼成時のつぶれ変形は、実施例1及び比較例1のフィルタ用基材を3基づつ製造し、焼成後のフィルタ縁端面の最大外径と最小外径との差を各々測定してn=3の平均値を算出し、比較することにより評価した。その結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
比較例1のフィルタ用基材では、焼成後のフィルタ用基材縁端面の最大外径と最小外径との差の平均値が3.92mmと大きく、フィルタ用基材の焼成時につぶれ変形が認められた。一方、実施例1のフィルタ用基材では、焼成後のフィルタ用基材縁端面の最大外径と最小外径との差の平均値が0.33mmと小さくフィルタ用基材の焼成時におけるつぶれ変形は殆ど認められなかった。
即ち、実施例1のフィルタ用基材では、隣接するセル列の間に直線状セル壁7を形成し、更には特定のセル列のセルを長方形セル3aとした効果が認められた。
【0054】
なお、実施例1のフィルタ用基材2は、長方形セル3a、五角セル3b、六角セル3cを巧みに組み合わせて配置することにより、フィルタ用基材全体のセルの壁厚を均一とし、かつ、セルを最密配置に構成したものである。
【0055】
このような構造は、特定のセル列の両側に直線状セル壁が形成されるためつぶれ変形の防止効果が高いことに加え、基材全体のセルの壁厚を均一としたため、基材の押出成形において坏土を型内に送り込む際に、特別な調整を施さなくても坏土が型から均一に押し出される。従って、内部歪みの少ない成形体を得ることができ、焼成時のクラックを防止することが可能である。
【0056】
更に、スリット形成列は基材縁端のセル開口部を気密的に封止するため、その分だけ濾過面積が減少することになるが、実施例1の構造ではスリット形成列のセル高さを、スリットを形成し得る必要最低限の高さとすればよいため、濾過面積の減少を最小限に抑制することが可能である。
【0057】
本発明のフィルタ用基材には、セルを最密配置した上で、直線状セル壁を形成する部分のみセル形成のピッチをずらす構造や図3(b)のセル配置も包含され、これらの構造でもつぶれ変形防止の効果を得ることができる。
但し、前者は基材全体のセルの壁厚が不均一であることに起因して内部歪みによる焼成時のクラック等が懸念され、後者はフィルタ用基材全体のセル数(即ち濾過面積)が減少するため、実施例1の構造の方がより好ましい。
【0058】
なお、実施例1の構造は、基材全体の壁厚が均一である限りにおいては、セル形成のピッチをずらした構造でも実施例1の構造と同等、或いはそれ以上の効果を得ることができる。
例えば、図5に示すように、五角セル3bに対して長方形セル3aを半ピッチづつずらして形成する構造を採用することも可能である。
【0059】
【発明の効果】
本発明のフィルタ用基材は、基本的に断面形状が五角形以上の多角セル形又は円形セルで構成されているため、より均一な膜厚でセル内周面に濾過膜を形成することができ、セル内周面に付着したケーク層を逆洗浄で剥離除去が容易である。更に、隣接するセル列の間に基材を直線的に横断するセル壁を形成しているので、製造の際における自重や外力によるつぶれ変形をも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1のフィルタ用基材を示す概略図であって、(a)はフィルタ用基材端面の拡大図、(b)はフィルタ用基材全体の斜視図である。
【図2】 従前のフィルタ用基材の一の実施態様を示す概略斜視図である。
【図3】 セル列の間に形成されるセル壁の例を示す概略図であって、(a),(b)は参考例のフィルタ用基材、(c),(d)は従前のフィルタ用基材を示す。
【図4】 比較例1のフィルタ用基材を示す概略図であって、(a)はフィルタ用基材端面の拡大図、(b)はフィルタ用基材全体の斜視図である。
【図5】 本発明の他の実施例におけるフィルタ用基材端面の拡大図である。
【符号の説明】
2…基材、3…セル(3a…長方形セル、3b…五角セル、3c…六角セル)、4…スリット、5…封止部材、6…スリット形成列、7…直線状セル壁、21…フィルタ、22…基材、23…セル、31…円形セル、32…六角セル、33…セル列、34…直線状セル壁、41…円形セル、42…六角セル、43…セル列、44…ジグザグ状セル壁、52…基材、53…セル、54…スリット、55…封止部材、56…スリット形成列。
Claims (3)
- セラミック多孔体からなる筒状の基材に、断面形状が五角形以上の多角形及び/又は円形である多数のセルを両端面に開口させ、筒状基材の長手方向に並列するように穿設したモノリス型のセラミックフィルタ用基材であって、
前記断面形状が五角形以上の多角形及び/又は円形である前記セルを、基材断面を横断するように複数列からなる群を複数配列するとともに、当該複数の群の間に挟まれた特定のセル列のセルのみを四角形状とし、当該セル列における四角形状セルの、基材の断面横断方向において各々対向するセル壁を、基材断面を横断するように、平行かつ直線上に配列したことを特徴とするセラミックフィルタ用基材。 - 前記特定のセル列において、
セルの一部を外部空間と連通するように破断してスリット状の空隙部を形成し、当該空隙部と連通するセルの縁端部を封止した、請求項1に記載のセラミックフィルタ用基材。 - 断面形状が五角形以上の多角形及び/又は円形である多数のセルを両端面に開口させ、筒状基材の長手方向に並列するように穿設したセラミック多孔体からなる筒状のモノリス型のセラミックフィルタ用基材の製造方法であって、
前記断面形状が五角形以上の多角形及び/又は円形である前記セルを、基材断面を横断するように複数列からなる群を複数配列するとともに、当該複数の群の間に挟まれた特定のセル列のセルのみを四角形状とし、当該セル列における四角形状セルの、基材の断面横断方向において各々対向するセル壁を、基材断面を横断するように、平行かつ直線上に配列してなる成形体を押出成形し、
得られた押出成形体を、前記直線上に配列した四角形状のセル壁の基材断面横断方向が鉛直方向で、押出成形体の長手方向が水平になるように横置きに乾燥し、焼成することを特徴とするセラミックフィルタ用基材の製造方法。
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