しかしながら、図6に示すようなAD変換回路では、複数のAD変換回路部103に対して、少なくとも同数の抵抗105及びコンデンサ106を設けなくてはならず、AD変換回路の小型化及びコストの低減が困難であった。また、上記スイッチングノイズによるデジタル値の誤差を防ぐ新たな機能の確立が求められている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、1つのアナログ出力から複数のAD変換を行うAD変換回路において、スイッチングノイズによる誤差発生を抑え、且つ、AD変換回路の小型化及びコストの低減を可能とするAD変換回路を提供することを目的とする。
(1)本発明のAD変換回路は、アナログ出力部と、第一AD変換回路部と、第二AD変換回路部とを備える。アナログ出力部は、アナログ信号を出力する。アナログ出力部は、アナログ信号を出力するものであれば何でもよいが、例えば、加速度センサ(Gセンサ)や温度センサ等のセンサであり、電圧等の変動をアナログ信号として出力するものが考えられる。
第一AD変換回路部及び第二AD変換回路部は、入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する回路であり、例えば、CPUやマイクロコンピュータ内に配置される。第一AD変換回路部は、第一サンプルホールド部と、第一制御部と、第一処理部とを備える。
第一サンプルホールド部は、第一スイッチと第一コンデンサとを有し、アナログ出力部の出力端子に接続される。第一制御部は、第一スイッチのオン、オフを制御する。第一処理部は、第一サンプルホールド部の出力をデジタル値に変換する。具体的には、第一処理部は、第一スイッチがオン状態の間に、第一コンデンサに入力されるアナログ信号の電荷を蓄積することにより、サンプリングする。
第二AD変換回路部は、第二サンプルホールド部と、第二制御部と、第二処理部とを備える。第二サンプルホールド部は、第二スイッチと第二コンデンサとを有し、アナログ出力部の出力端子に接続される。第二制御部は、第二スイッチのオン、オフを制御する。第二処理部は、第二サンプルホールド部の出力をデジタル値に変換する。具体的には、第二処理部は、第二スイッチがオン状態の間に、第二コンデンサに入力されるアナログ信号の電荷を蓄積することにより、サンプリングする。
ここで、スイッチとは、電気的に離隔した2点間を接続(オン)/非接続(オフ)するものであり、例えば、トランジスタ等のスイッチング素子等を用いてもよい。
そして、本発明の特徴的な事項は、以下のとおりである。すなわち、第一制御部は、第一スイッチがオンしてから第一スイッチがオフした後の第一所定時間を経過するまでの間、マスク信号を発生する。そして、第二制御部は、マスク信号が入力されている間、第二スイッチをオフ状態とする。ここで、第一所定時間とは、第一スイッチがオン状態からオフされることによりスイッチングノイズが発生している時間以上の時間である。
つまり、第一スイッチがオンしてからオフするまでの間は、マスク信号が発生している。ここで、第一スイッチがオンすることにより発生するスイッチングノイズは、第一スイッチがオンした直後に現れる。そして、第一スイッチがオンしてからオフするまでの間はマスク信号が発生しているため、第一スイッチがオンすることによるスイッチングノイズが発生する間は、第二スイッチがオン状態となることはない。つまり、第二サンプルホールド部は、第一スイッチがオンすることによるスイッチングノイズが発生する間は、サンプリングしない。このように、第一サンプルホールド部の第一スイッチがオンすることにより発生するスイッチングノイズは、第二サンプルホールド部のサンプリングに影響を及ぼさないようになる。
さらに、第一スイッチがオフした後にも第一所定時間内はマスク信号が発生している。ここで、第一スイッチがオフすることにより発生するスイッチングノイズは、第一スイッチがオフした直後に現れる。そして、第一スイッチがオフした後の第一所定時間経過するまでマスク信号が発生しているため、第一スイッチがオフすることによるスイッチングノイズが発生する間は、第二スイッチがオン状態となることはない。つまり、第二サンプルホールド部は、第一スイッチがオフすることによるスイッチングノイズが発生する間は、サンプリングしない。このように、第一サンプルホールド部の第一スイッチがオフすることにより発生するスイッチングノイズは、第二サンプルホールド部のサンプリングに影響を及ぼさないようになる。
本発明の構成では、たとえ、第一スイッチがオンする際またはオフする際に、第二スイッチのオンになるタイミングが到来したとしても、第二スイッチをオン状態とすることなくオフ状態にすることができるため、第一スイッチのオンおよびオフによるスイッチングノイズが第二AD変換回路部に悪影響を及ぼすことを防ぐことができる。従って、本発明は、第一スイッチのオンおよびオフによるスイッチングノイズが第二AD変換回路部に影響を及ぼすことで発生する誤差を防ぐことができる。
以上、記述のとおり、本発明は、スイッチングノイズによるデジタル値の誤差発生を防ぐことができる。また、本発明のAD変換回路では、従来のスイッチングノイズ対策として設けられた抵抗及びコンデンサを用いることなく、スイッチングノイズの影響を抑えることができる。したがって、AD変換回路の小型化、及びコストの低減が可能となる。
(2)ここで、第一制御部は、さらに、第一スイッチがオンする第二所定時間前からマスク信号を発生することが好ましい。すなわち、第一制御部は、第一スイッチがオンする第二所定時間前から第一スイッチがオフした後の第一所定時間を経過するまでの間、マスク信号を発生する。
ここで、第二所定時間とは、第二スイッチがオフ状態からオンされることによりスイッチングノイズが発生している時間、および、第二スイッチがオン状態からオフされることによりスイッチングノイズが発生している時間のうち、長い方の時間以上の時間である。また、第二所定時間は、第一スイッチ以外のスイッチが複数ある場合(例えば、後述(6)の場合)、当該スイッチのうちで、上記スイッチングノイズの発生時間が最も長いスイッチに合わせて設定される。
ここで、第二スイッチがオンすることにより発生するスイッチングノイズは、第二スイッチがオンした直後に現れる。そして、第一スイッチがオンする第二所定時間前から第一スイッチがオフした後の第一所定時間を経過するまでの間は、マスク信号が発生している。従って、仮に、マスク信号が発生する直前に第二スイッチがオンしたとしても、それによるスイッチングノイズは、第一スイッチがオンするまでには消滅している。さらに、マスク信号が発生されなくなってから第二スイッチがオンしたとしても、その第一所定時間前に、既に第一スイッチはオフしている。従って、第二スイッチがオンすることによるスイッチングノイズが発生する間は、第一スイッチがオン状態となることはない。
さらに、第二スイッチがオフすることにより発生するスイッチングノイズは、第二スイッチがオフした直後に現れる。そして、第一スイッチがオンする第二所定時間前から第一スイッチがオフした後の第一所定時間を経過するまでの間は、マスク信号が発生している。従って、仮に、マスク信号が発生したと同時に強制的に第二スイッチがオフしたとしても、それによるスイッチングノイズは、第一スイッチがオンするまでには消滅している。従って、第二スイッチがオフすることによるスイッチングノイズが発生する間は、第一スイッチがオン状態となることはない。
このように、第二サンプルホールド部の第二スイッチがオンおよびオフすることにより発生するスイッチングノイズは、第一サンプルホールド部のサンプリングに影響を及ぼさないようになる。
(3)ここで、第二制御部は、一定の周期で第二スイッチをオン、オフさせ、マスク信号が入力されている間に第二スイッチをオンさせる周期となった場合、マスク信号が停止した直後に第二スイッチをオンさせることが好ましい。すなわち、第二制御部は、マスク信号入力中(第二スイッチがオフ状態中)に、決められた一定の周期により第二スイッチをオンさせるタイミングとなった場合、当該オンをキャンセルし、マスク信号が停止した直後に第二スイッチをオンさせる。これにより、本発明は、第二サンプルホールド部がサンプルホールドするサンプリングデータ数を減少させることなく、スイッチングノイズによる誤差を防ぐことができる。
マスク信号が発生している間、第二スイッチのオンはキャンセルされ、第二スイッチはオフ状態を維持することになる。このとき、本来、第二スイッチがオンされることにより得ることのできたサンプリングデータが得られず、第二AD変換回路部のサンプリングデータ数が減少してしまう虞がある。
しかし、本発明は、上記構成とすることにより、本来得る予定のサンプリングデータ数と同数のサンプリングデータを得ることができる。なお、マスク信号発信中における第二サンプルホールド部のサンプリングタイミングのズレは、AD変換処理全体からみると瞬間的なものであり、AD変換処理にほとんど影響はない。
したがって、本発明は、第二AD変換回路部の変換処理の正確性を維持すると共に、スイッチングノイズによる誤差発生を防ぐことができる。
(4)ここで、第二制御部は、マスク信号が入力されたときに第二スイッチがオン状態であった場合、第二スイッチを強制的にオフさせ、その後、マスク信号が停止した直後に第二スイッチをオンさせることが好ましい。つまり、マスク信号が発生したときに、第二スイッチがすでにオンされた状態である場合、第二制御部は、当該オン状態を強制的にオフさせ、その後、マスク信号が停止した直後に第二スイッチをオンさせる。
これにより、第二スイッチが強制的にオフされた場合でも、サンプリングデータ数は減少しない。
(5)ここで、第二処理部は、第二スイッチがオンされてからオフされるまでの時間である第二スイッチオン時間を予め記憶し、第二スイッチが第二スイッチオン時間でオン、オフされた場合にのみ、第二サンプルホールド部の出力をデジタル値に変換することが好ましい。すなわち、予め記憶された第二スイッチオン時間以外でサンプリングされたデータは、第二処理部でデジタル値に変換されることがない。
これにより、マスク信号により強制的に第二スイッチがオンからオフにされた場合であっても、そのオンからオフの間のサンプリングデータは、第二処理部で処理されず、余分なサンプリングデータを排除することができる。すなわち、第二処理部は、より正常なサンプリングデータに基づいて処理を実行できる。したがって、本発明は、AD変換の正確性をさらに向上させることができる。
(6)ここで、本発明は、上記(1)〜(5)の何れかにおいて、第三AD変換回路部をさらに備えてもよい。第三AD変換回路部は、第三スイッチと第三コンデンサとを有しアナログ出力部の出力端子に接続される第三サンプルホールド部と、第三スイッチのオン、オフを制御する第三制御部と、第三サンプルホールド部の出力をデジタル値に変換する第三処理部とを備える。
この場合、第二制御部は、さらに、第二スイッチがオンしてから第二スイッチがオフした後の第三所定時間を経過するまでの間、サブマスク信号を発生する。そして、第三制御部は、マスク信号及びサブマスク信号の少なくとも一方が入力されている間、第三スイッチをオフ状態とする。ここで、第三所定時間とは、第二スイッチがオン状態からオフされることによりスイッチングノイズが発生している時間以上の時間である。
これにより、上記(1)同様に、第一スイッチ及び第二スイッチのオン/オフによるスイッチングノイズは、第三サンプルホールド部のサンプリングに悪影響を及ぼさない。つまり、マスク信号により、第一スイッチのスイッチングノイズは、第二スイッチに対するのと同様に、第三スイッチによるサンプリングに対しても悪影響を与えない。そして、サブマスク信号により、第二スイッチのスイッチングノイズは、上記(1)の原理と同様に、第三スイッチによるサンプリングに対して悪影響を与えない。
したがって、1つのアナログ出力部から3つのAD変換処理を行うAD変換回路であっても、スイッチングノイズによる誤差発生を防ぐことができる。なお、第三制御部へのマスク信号の入力は、第一制御部から直接行われてもよく、第二制御部を介して行われてもよい。
(7)ここで、上記(6)において、第三制御部は、さらに、第二スイッチがオンする第四所定時間前からサブマスク信号を発生することが好ましい。ここで、第四所定時間とは、第三スイッチがオフ状態からオンされることによりスイッチングノイズが発生している時間、および、第三スイッチがオン状態からオフされることによりスイッチングノイズが発生している時間のうち、長い方の時間以上の時間である。また、第四所定時間は、第二所定時間同様、第一スイッチ及び第二スイッチ以外のスイッチが複数ある場合、当該スイッチのうちで、上記スイッチングノイズの発生時間が最も長いスイッチに合わせて設定される。
これにより、上記(2)の原理と同様に、第三スイッチによるスイッチングノイズは、第一スイッチ及び第二スイッチのサンプリングに悪影響を及ぼさない。
(8)ここで、上記(6)または(7)において、第三制御部は、一定の周期で第三スイッチをオン、オフさせ、マスク信号及びサブマスク信号の少なくとも一方が入力されている間に第三スイッチをオンさせる周期となった場合、マスク信号及びサブマスク信号の両方が停止状態となった直後に第三スイッチをオンさせることが好ましい。
ここで、マスク信号及びサブマスク信号の両方が停止状態とは、マスク信号及びサブマスク信号のどちらも第三制御部に入力されていない状態という意味である。これにより、上記(3)同様の効果を得ることができる。
(9)ここで、上記(6)〜(8)の何れかにおいて、第三制御部は、マスク信号及びサブマスク信号の少なくとも一方が入力されたときに第三スイッチがオン状態であった場合、第三スイッチを強制的にオフさせ、その後、マスク信号及びサブマスク信号の両方が停止状態となった直後に第三スイッチをオンさせることが好ましい。これにより、上記(4)と同様の効果を得ることができる。
(10)ここで、上記(6)〜(9)の何れかにおいて、第三処理部は、第三スイッチがオンされてからオフされるまでの時間である第三スイッチオン時間を予め記憶し、第三スイッチが第三スイッチオン時間でオン、オフされた場合にのみ、第三サンプルホールド部の出力をデジタル値に変換することが好ましい。これにより、上記(5)と同様の効果を得ることができる。
なお、本発明において、第二AD変換回路部及び第三AD変換回路部を複数有していても、同様の効果を得ることができる。また、新たに第四AD変換回路部を設けた場合、上記マスク信号及びサブマスク信号と同様に、新たなマスク信号を第三制御部が発生させればよく、本発明は、さらに複数のAD変換にも対応することができる。
本発明のAD変換回路によれば、1つのアナログ出力から複数のAD変換を行う場合においても、スイッチングノイズによる誤差発生が抑えられ、且つ、回路の小型化及びコストの低減が可能となる。
以下、本発明のAD変換回路の好適な実施形態について図面を参照して説明する。
<実施例1>
まず、AD変換回路1(実施例1)の具体的構成について図1を参照して説明する。図1は、AD変換回路1の構成図である。AD変換回路1は、例えば、エアバッグ装置において、加速度センサの出力(アナログ出力)を複数のAD変換回路部でAD変換する場合に用いられる。この場合、エアバッグ装置では、1つのエアバッグの袋体に対して、複数のAD変換回路部が設けられている。そして、当該複数のすべてのAD変換回路部が、袋体の展開許可に値するデジタル信号を出力したとき、袋体を展開させるようになっている。
図1に示すように、AD変換回路1は、アナログ出力部2と、第一AD変換回路部3と、第二AD変換回路部4とを備えている。アナログ出力部2は、出力端子21を有し、アナログ信号を出力端子21から出力する。
ここで、第一AD変換回路部3について説明する。第一AD変換回路部3は、第一サンプルホールド部31と、第一制御部32と、第一処理部33とを備え、アナログ信号をデジタル信号に変換する。
このうち第一サンプルホールド部31は、第一スイッチ31aと、第一コンデンサ31bとを有している。第一スイッチ31aは、一端がアナログ出力部2の出力端子21に接続され、他端が第一コンデンサ31b及び第一処理部33に接続されている。第一コンデンサ31bは、一端が第一スイッチ31aと第一処理部33との間に接続され、他端がグランド(GND)に接続されている。すなわち、第一サンプルホールド部31は、入力側がアナログ出力部2の出力端子21に接続され、出力側が第一処理部33に接続されている。
第一制御部32は、第一サンプルホールド部31に接続され、第一スイッチ31aのオン、オフを制御する。また、第一制御部32は、一定の周期で第一スイッチ31aをオン、オフさせる。さらに、第一制御部32は、後述する第二制御部42に第一マスクライン32aを介して接続されている。第一処理部33は、第一サンプルホールド部31に接続され、第一サンプルホールド部31の出力をデジタル値に変換する。
第一サンプルホールド部31は、第一スイッチ31aがオンされてからオフされるまでに入力される電荷を第一コンデンサ31bに保持する。そして、第一サンプルホールド部31は、この値を第一処理部33に出力する。そして、この値が第一処理部33によりデジタル値に変換される。
すなわち、第一AD変換回路部3は、第一制御部32が第一スイッチ31aを繰り返しスイッチング(オン/オフ)させ、第一サンプルホールド部31が入力電荷を順々にサンプリングし、そのサンプリングデータを第一処理部33がデジタル化することにより、アナログ信号をデジタル信号に変換している。
続いて、第二AD変換回路4について説明する。第二AD変換回路4は、第一AD変換回路3と同様の構成となっている。すなわち、第二AD変換回路部4は、第二サンプルホールド部41と、第二制御部42と、第二処理部43とを備え、アナログ信号をデジタル信号に変換する。
第二サンプルホールド部41は、第二スイッチ41aと、第二コンデンサ41bとを有している。第二スイッチ41aは、一端がアナログ出力部2の出力端子21に接続され、他端が第二コンデンサ41b及び第二処理部43に接続されている。第二コンデンサ41bは、一端が第二スイッチ41aと第二処理部43との間に接続され、他端がグランド(GND)に接続されている。すなわち、第二サンプルホールド部41は、入力側がアナログ出力部2の出力端子21に接続され、出力側が第二処理部43に接続されている。
第二制御部42は、第二サンプルホールド部41に接続され、第二スイッチ41aのオン、オフを制御する。また、第二制御部42は、一定の周期で第二スイッチ41aをオン、オフさせる。第二処理部43は、第二サンプルホールド部41に接続され、第二サンプルホールド部41の出力をデジタル値に変換する。
そして、AD変換回路1において、第一制御部32は、第一スイッチ31aがオンする第二所定時間t2前から第一スイッチ31aがオフした後の第一所定時間t1を経過するまでの間、マスク信号(図2参照)を発生する。そして、第二制御部42は、このマスク信号が入力されている間、第二スイッチ41aをオフ状態とする。第一制御部32が出力するマスク信号は、第一マスクライン32aを介して、第二制御部42に入力される。
ここで、図1に示すように、アナログ出力部21と第一スイッチ31aとをつなぐ配線を第一ライン34とする。そして、一端が第一ライン34に接続され、他端が第二スイッチ41aに接続される配線を第二ライン44とする。すなわち、第一スイッチ31aは、第一ライン34を介してアナログ出力部2の出力端子21に接続され、第二スイッチ41aは、第二ライン44及び第一ライン34を介してアナログ出力部2の出力端子21に接続されている。アナログ出力部2から出力されるアナログ信号は、第一ライン34を介して第一AD変換回路部3に入力されると共に、第一ライン34及び第二ライン44を介して第二AD変換回路部4に入力される。
そして、第一スイッチ31aのオン/オフによって発生するスイッチングノイズは、第一ライン34及び第二ライン44を介して第二サンプルホールド部41に伝達される。また、第二スイッチ41aのオン/オフによって発生するスイッチングノイズは、同じく第一ライン34及び第二ライン44を介して第一サンプルホールド部31に伝達される。
次に、マスク信号について図2を参照してさらに説明する。図2は、第一AD変換回路部3おける各動作のタイミングチャートを示す図である。
第一AD変換回路部3には、図2に示すように、クロック信号が入力されている。そして、第一制御部32は、このクロック信号を基に、設定されたタイミングで第一スイッチ31aをオンまたはオフさせている。具体例を挙げると、第一制御部32は、図2におけるクロック波Bで第一スイッチ31aをオンさせ、クロック波Dで第一スイッチ31aをオフさせている。
そして、第一制御部32は、クロック波Bで第一スイッチ31aをオンさせることが設定されているため、そのクロック波Bを基準に、1つ前のクロック波Aでマスク信号を発生させることができる。つまり、実施例1において、第二所定時間t2は、クロック波Aの発生からクロック波Bの発生までの時間となる。
また、第一スイッチ31aがオンされている時間Ton1は予め設定できるため、マスク信号を停止するタイミングも設定可能である。すなわち、第一制御部32は、第一スイッチ31aをクロック波Dでオフした後、マスク信号をクロック波Eで停止することができる。つまり、実施例1において、第一所定時間t1は、クロック波Dの発生からクロック波Eの発生までの時間となる。
そして、このマスク信号は、発生と同時に第二制御部42に入力される。第二制御部42は、マスク信号が入力されている間は、第二スイッチ41aをオフ状態にする。なお、第一スイッチ31aのオン/オフの周期、第一所定時間t1、及び第二所定時間t2は、任意に設定可能であり、上記に限られるものではない。
実施例1においては、第一所定時間t1は、第一スイッチ31aのオフによるスイッチングノイズが発生している時間に設定されている。そして、第二所定時間t2は、第二スイッチ41aのオフによるスイッチングノイズが発生している時間に設定されている。
次に、AD変換回路1の作用について図3を参照してさらに説明する。図3は、AD変換回路1における各動作のタイミングチャートを示す図である。なお、図3(a)は、AD変換回路1において、マスク信号と第二スイッチ41aがオンする周期とが重ならない場合のタイミングチャートを示す。図3(b)は、マスク信号と第二スイッチ41aがオンする周期とが重なる場合のタイミングチャートを示す。図3(c)は、マスク信号と第二スイッチ41aのオン状態とが重なる場合のタイミングチャートを示す。
AD変換回路1において、第二制御部42は、第一制御部32がマスク信号を発生することによりマスク信号が入力され、当該マスク信号が入力されている間、第二スイッチ41aをオフ状態とする。
ここで、第二処理部43は、第二スイッチ41aがオンされてからオフされるまでの時間である第二スイッチオン時間Ton2を予め記憶し、第二スイッチ41aがこの第二スイッチオン時間Ton2でオン、オフされた場合にのみ、第二サンプルホールド部41の出力をデジタル値に変換する。
まず、図3(a)に示すように、AD変換回路1では、通常、第一スイッチ31aのオン/オフの周期及びマスク信号の周期と、第二スイッチ41aのオン/オフの周期とが重ならないように設定されている。
しかし、一般のAD変換回路において複数のAD変換回路部を有する場合、実際には、各周期に多少の時間的誤差が含まれることが多い。すなわち、各動作のタイミングを決める周波数(周期と逆数関係)が、設定された周波数と僅かに異なってしまう場合が多い。例えば、第一スイッチ31aのスイッチング周波数と第二スイッチ41aのスイッチング周波数とを10kHzに設定したとしても、実際には、一方が10.01kHzで、他方が9.99kHzとなってしまう。
また、一般のAD変換回路において、複数のAD変換回路部における各スイッチング周波数(あるいは、クロック)が異なるように設定されることもある。すなわち、複数あるAD変換回路部のそれぞれの動作が、設定により異なる周波数となることもあり、または、周波数の異なる別々のクロックを基にすることもある。
したがって、各スイッチのオン/オフの周期は、偶然的あるいは必然的に重なる可能性がある。しかしながら、AD変換回路1では、マスク信号が、第一スイッチ31aがオンする第二所定時間t2前から第一スイッチ31aがオフした後の第一所定時間t1を経過するまでの間発生しているため、各スイッチのオンからオフまでの動作が重なることがない。
図3(b)に示すように、マスク信号が発生しているときに、第二スイッチ41aがオンする周期となった場合、当該オンはキャンセルされる(すなわち、第二スイッチ41aはオンされない)。そして、キャンセルされた第二スイッチ41aのオンは、マスク信号が停止した直後に実行される。つまり、第二制御部42は、マスク信号が入力されている間に第二スイッチ41aをオンさせる周期となった場合、マスク信号が停止した直後に第二スイッチ41aをオンさせている。
また、図3(c)に示すように、第二スイッチ41aがオン状態であるときにマスク信号が発生した場合、第二スイッチ41aは強制的にオフされる(すなわち、第二スイッチ41aはオン状態からオフになる)。そして、第二スイッチ41aは、マスク信号が停止した直後に再びオンされる。つまり、第二制御部42は、マスク信号が入力されたときに第二スイッチ41aがオン状態であった場合、第二スイッチ41aを強制的にオフし、その後、マスク信号が停止した直後に第二スイッチ41aをオンさせている。
したがって、AD変換回路1では、第一スイッチ31aがオンからオフとなる間に第二スイッチ41aがオンまたはオフすることはなく、第二スイッチ41aがオンからオフとなる間に第一スイッチ31aがオンまたはオフすることはない。
すなわち、AD変換回路1では、第一スイッチ31aのオン/オフにより発生するスイッチングノイズが第二サンプルホールド部41に入り込むことはなく、第二スイッチ41aのオン/オフにより発生するスイッチングノイズが第一サンプルホールド部31に入り込むことはない。
マスク信号によりオフにされた第二スイッチ41aは、マスク信号停止直後に再びオンされる。これにより、第二サンプルホールド部41におけるサンプリングデータ数は減少しない。
さらに、AD変換回路1において、第二処理部43は、第二スイッチオン時間Ton2を予め記憶し、第二スイッチ41aが第二スイッチオン時間Ton2でオン、オフされた場合にのみ、第二サンプルホールド部41の出力をデジタル値に変換している。したがって、図3(c)に示すように、第二スイッチ41aが第二スイッチオン時間Ton2を経過する前にオフされた場合であっても、当該サンプリングデータはデジタル値に変換されない。すなわち、第二処理部43で誤変換が生じることはない。
以上より、AD変換回路1は、AD変換処理の正確性を維持すると共に、スイッチングノイズによる誤差発生を防ぐことができる。また、AD変換回路1では、従来のように、第一ライン34及び第二ライン44上に抵抗やコンデンサを設ける必要がなく、AD変換回路の小型化、及びコストの低減を可能とする。
なお、AD変換回路1は、第二AD変換処理部4が複数ある場合であっても、第一制御部32が当該複数の第二制御部42にマスク信号を送信することにより、第一AD変換回路部3と複数の第二AD変換回路4とが互いにスイッチングノイズを受けることを防ぐことができる。
<実施例2>
次に、AD変換回路5(実施例2)の具体的構成について図4を参照して説明する。図4は、AD変換回路5の構成図である。なお、図4において、実施例1と同構成となるものには、同番号を付して説明を省略する。
図4に示すように、AD変換回路5は、アナログ出力部2と、第一AD変換回路部3と、第二AD変換回路部4と、第三AD変換回路部6とを備えている。第三AD変換回路部6は、第三サンプルホールド部61と、第三制御部62と、第三処理部63とを備え、アナログ信号をデジタル信号に変換する。
このうち第三サンプルホールド部61は、第三スイッチ61aと、第三コンデンサ61bとを有している。第三スイッチ61aは、一端がアナログ出力部2の出力端子21に接続され、他端が第三コンデンサ61b及び第三処理部63に接続されている。第三コンデンサ61bは、一端が第三スイッチ61aと第三処理部33との間に接続され、他端がグランド(GND)に接続されている。すなわち、第三サンプルホールド部61は、入力側がアナログ出力部2の出力端子21に接続され、出力側が第三処理部33に接続されている。なお、一端が第二ライン44に接続され、他端が第三スイッチ61aに接続される配線を第三ライン64とする。
第三制御部62は、第三スイッチ61aのオン、オフを制御する。したがって、第三制御部62は、第三サンプルホールド部61に接続されている。また、第三制御部62は、第一制御部32に第二マスクライン32bを介して接続され、第二制御部42にサブマスクライン42aを介して接続されている。また、第二マスクライン32bは、一端が第一マスクライン32aに接続され、他端が第三制御部62に接続されている。
マスク信号は、第一マスクライン32a及び第二マスクライン32bを介して、第二制御部42及び第三制御部62に入力される。第三処理部63は、第三サンプルホールド部61に接続され、第三サンプルホールド部61の出力をデジタル値に変換する。
ここで、第二制御部42は、実施例1の機能に加えて、第二スイッチ41aがオンする第四所定時間t4前から第二スイッチ41aがオフした後の第三所定時間t3を経過するまでの間、サブマスク信号を発生する。つまり、第二制御部42は、サブマスク信号をサブマスクライン42aを介して第三制御部62に出力する。そして、第三制御部62は、マスク信号及びサブマスク信号の少なくとも一方が入力されている間、第三スイッチ61aをオフ状態とする。
ここで、マスク信号について、第一所定時間t1は、第一スイッチ31aのオフによるスイッチングノイズが発生している時間に設定されている。そして、第二所定時間t2は、第二スイッチ41aのオフによるスイッチングノイズが発生している時間に設定されている。なお、実施例2において、第二スイッチ41a及び第三スイッチ61aのオン/オフによるスイッチングノイズが発生している時間がすべて等しいため、第二所定時間t2は、第二スイッチ及び第三スイッチのどのスイッチングノイズに合わせて設定してもよい。
サブマスク信号について、第三所定時間t3は、第二スイッチ41aのオフによるスイッチングノイズが発生している時間に設定されている。そして、第四所定時間t4は、第三スイッチ61aのオフによるスイッチングノイズが発生している時間に設定されている。
ここで、サブマスク信号及びAD変換回路5の作用について図5を参照して説明する。なお、実施例2において、マスク信号は、実施例1と同様である。図5(a)は、AD変換回路5において、マスク信号と第二スイッチ41aがオンする周期とが重ならない場合のタイミングチャートを示す。図5(b)は、AD変換回路5において、マスク信号と第二スイッチ41aがオンする周期とが重なる場合のタイミングチャートを示す。図5(c)は、AD変換回路5において、マスク信号と第二スイッチ41aのオン状態とが重なる場合のタイミングチャートを示す。
図5(a)に示すように、サブマスク信号は、第二スイッチ41aのオンを基準に、第四所定時間t4前に出力される。そして、第二制御部42に予め第二スイッチオン時間Ton2が設定されているため、それを基準に、サブマスク信号は、第二スイッチ41aがオフした後の第三所定時間t3を経過後に停止される。
ここで、実施例2において、サブマスク信号は、図5(b)及び(c)に示すような「マスク信号と第二スイッチ41aのオンとが重なる場合」においては、上記と別の基準により、発生(出力/停止)させている。
すなわち、図5(b)に示すように、マスク信号と第二スイッチ41aがオンする周期とが重なる場合、第二スイッチ41aのオンはキャンセルされる。このため、第二制御部42は、本来、第二スイッチがオンされるはずであった周期を基準に、サブマスク信号を発生することができない場合がある。つまり、第二制御部42に設定された第二スイッチ41aのオン/オフ周期以外で第二スイッチ41aがオンすることになり、サブマスク信号の発生が想定周期外で行わなくてはならなくなる。
この問題は、サブマスク信号の発生基準を、マスク信号が停止したときとすること、すなわち、第二スイッチ41aのオンではなくマスク信号の停止時とすることにより解決される。つまり、第二制御部42に予めマスク信号の発生時間Tmを記憶させる。そして、マスク信号発生中に第二スイッチ41aのオンがキャンセルされた場合、第二制御部42はそれを検知し、マスク信号が入力された時間と発生時間Tmとから、次のサブマスク信号の出力タイミングを決定する。
また、図5(c)に示すように、マスク信号と第二スイッチ41aのオン状態とが重なる場合においても、サブマスク信号の発生基準は、マスク信号が停止したときとする。つまり、第二スイッチ41aが第二スイッチオン時間Ton2を経過する前に、マスク信号によりオフされた場合、第二制御部42はそれを検知し、マスク信号が入力された時間と発生時間Tmとから、次のサブマスク信号の出力タイミングを決定する。
すなわち、第二制御部42は、「マスク信号と第二スイッチ41aのオンとが重なる場合」においても、第二スイッチ41aがオンする第四所定時間t4前から第二スイッチ41aがオフした後の第三所定時間t3を経過するまでの間、サブマスク信号を発生することができる。
したがって、第一スイッチ31a、第二スイッチ41a、及び第三スイッチ61aの各オン/オフの動作は重なることはない。すなわち、AD変換回路5は、スイッチングノイズが各サンプルホールド部に悪影響を及ぼすことはなく、スイッチングノイズによる誤差発生を防ぐことができる。
ここで、第三制御部62は、マスク信号及びサブマスク信号の少なくとも一方が入力されている間に第三スイッチ61aをオンさせる周期となった場合、マスク信号及びサブマスク信号の両方が停止状態となった直後に第三スイッチ61aをオンさせる。この動作は、図3(b)及び図5(b)における第二スイッチ41aのオン/オフに相当する。
さらに、第三制御部62は、マスク信号及びサブマスク信号の少なくとも一方が入力されたときに第三スイッチ61aがオン状態であった場合、第三スイッチ61aを強制的にオフさせ、その後、マスク信号及びサブマスク信号の両方が停止状態となった直後に第三スイッチ61aをオンさせる。この動作は、図3(c)及び図5(c)における第二スイッチ41aのオン/オフに相当する。なお、両方が停止状態とは、例えば、マスク信号及びサブマスク信号の両方が発生している場合、一方が停止し、さらに他方が停止した状態であり、両方の信号の何れもが発生していない状態である。
また、第三処理部63は、第三スイッチ61aがオンされてからオフされるまでの時間である第三スイッチオン時間(図示せず)を予め記憶し、第三スイッチ61aがこの第三スイッチオン時間でオン、オフされた場合にのみ、第三サンプルホールド部61の出力をデジタル値に変換する。
これにより、AD変換回路5では、第二サンプルホールド部41同様、第三サンプルホールド部61におけるサンプリングデータ数の減少を抑え、より正確にAD変換することができる。
以上より、AD変換回路5は、AD変換処理の正確性を維持すると共に、スイッチングノイズによる誤差発生を防ぐことができる。また、AD変換回路5では、従来のように、第一ライン34、第二ライン44、及び第三ライン64上に抵抗やコンデンサを設ける必要がなく、AD変換回路の小型化、及びコストの低減を可能とする。
なお、マスク信号の伝達経路は、上記に限るものではない。例えば、マスク信号は、第一制御部32から第一マスクライン32aを介して第二制御部42に入力され、同時に、第二制御部42からサブマスクライン42aを介して第三制御部62に入力されてもよい。
また、第二AD変換回路部4及び第三AD変換回路部6が複数ある場合でも、マスク信号を複数ある第二AD変換回路部4及び第三AD変換回路部6のそれぞれに入力させ、サブマスク信号を複数ある第三AD変換回路部6に入力させることにより、実施例2同様の効果を得ることができる。
また、本発明のAD変換回路は、AD変換回路1に第三AD変換回路部6を加えるのと同様に、さらに、例えば第四AD変換回路部(図示せず)を加えることが可能である。すなわち、本発明のAD変換回路は、AD変換回路部が2つ、及び3つの場合に限られるものではなく、複数のAD変換回路部を有する場合でも同様の効果を発揮することができる。