発明者らは、種々の実験により、図17の(A)に示すようにスペーサが配置されている表示装置において、カソードパネルの有効領域に対するスペーサの配置関係と、上述の輝度の均一性の経時変化の程度に、関係があることを見い出した。
図17の(A)に示すようにスペーサが配置された従来の表示装置について、カソードパネルCPとアノードパネルAPとを仮想的に分離したときの模式的な斜視図を、図19に示す。一点鎖線で囲まれた領域は、表示装置の表示領域と、表示装置の表示領域に対応するカソードパネルCPの有効領域を示す。カソードパネルCPの有効領域には、電子放出領域が、X軸方向−Y軸方向の2次元マトリックス状に配列されている。尚、図19において、電子放出領域の図示を省略した。表示装置の表示領域におけるカソードパネルCPとアノードパネルAPとの間には、3つのスペーサ群が設けられている。各スペーサ群は、複数の板状のスペーサ40が、X軸方向をスペーサ40の長手方向とし、スペーサ40の長手方向と直交するY軸方向に間隔を開けて配置されることにより構成されている。
図19において破線で示した部分の模式的なA−A断面図を、図20に示す。尚、図20においては、アノードパネルAPにおける蛍光体層、アノード電極、隔壁、及び、光吸収層等の図示を省略した。また、カソードパネルCPにおけるゲート電極、カソード電極、及び、電界放出素子等の図示を省略した。更には、アノードパネルAP、カソードパネルCP、及び、枠体26の断面のハッチングを省略した。後述の図21の(A)に関しても同様である。
図20に示すように、複数のスペーサ40は、スペーサ40の長手方向と直交するY軸方向に間隔を開けて、配置されている。1つのスペーサ群は、このようにして構成されている。それぞれ隣接するスペーサ40間の距離Wiは、例えば、全ての隣接するスペーサ40間で等しく設定されている。表示装置の周縁部(例えば、図20において枠体26を介して接合された部分)と、周縁部に隣接するスペーサ40との間の距離Woは、例えばそれぞれ隣接するスペーサ40間の距離Wiと等しくなるように、設定されている。従来、スペーサ40の間隔は、主に耐大気圧の観点から決定されており、間隔が均等であることが耐大気圧上好ましい。この場合、カソードパネルCPの有効領域におけるX軸方向に倣う端部と、該端部に隣接するスペーサ40との間の距離Weは、それぞれ隣接するスペーサ40間の距離Wiより短くなる。
発明者らは、種々の実験により、表示画像における輝度の均一性の経時変化が認められる領域は、カソードパネルCPの有効領域におけるX軸方向に倣う端部と、この端部に隣接するスペーサ40との間の領域であることを見い出した。以下、図21の(A)及び(B)を参照して説明する。
図21(A)及び(B)に、経時変化の前後におけるカソード電流比の変化と、スペーサ配置との関係を示す。既に図15を用いて説明したように、図21の(A)において、カソードパネルCPの有効領域には、図示せぬ帯状のカソード電極11が、図のY軸方向に延びている。また、図示せぬ帯状のゲート電極13が、図のX軸方向に延びている。帯状のカソード電極11と帯状のゲート電極13とが重複する重複領域が、電子放出領域EAとなる。従って、電子放出領域EAは、図21の(A)におけるX軸方向に、図示せぬゲート電極13に沿って配列されている。即ち、カソードパネルCPの有効領域におけるX軸方向に倣う端部と、この端部に隣接するスペーサ40との間には、電子放出領域EAの列が、X軸方向に沿って、配列されている。同様に、それぞれ隣接するスペーサ40間にも、電子放出領域EAの列が、X軸方向に沿って配列されている。電子放出領域EAの列の数は、距離Weあるいは距離Wiの値に応じて増減する。上述の電子放出領域EAの列に流れるカソード電流の経時変化を、模式的に図21の(B)に示す。
図21の(B)は、X軸方向に並ぶ各電子放出領域EAの列とアノード電極との間に流れるカソード電流について、初期状態(図18の(A)に対応する状態)と、表示装置を長時間駆動させた後(図18の(B)に対応する状態)との関係を、模式的に示したグラフである。尚、グラフにおける縦軸は、初期状態におけるカソード電流を基準に正規化されている。また、グラフにおける横軸は、図21の(A)におけるカソードパネルCPの有効領域のY軸方向の位置(より具体的には、表示領域において線順次表示される位置を規定するゲート電極13のY軸方向の位置)に対応する。発明者らの実験によれば、表示装置を長時間駆動させた後に、全体としてカソード電流が増加する傾向が認められる。しかし、増加する割合は一定ではなく、カソードパネルCPの有効領域におけるX軸方向に倣う端部と、該端部に隣接するスペーサ40との間(図においてWeと記された部分)における増加の割合は、相対的に小さい。また、全体としてカソード電流が減少する傾向が認められる場合もある(図において経時変化2と表示したグラフを参照)。この場合においても、減少する割合は一定ではなく、カソードパネルCPの有効領域におけるX軸方向に倣う端部と、この端部に隣接するスペーサ40との間(図においてWeと記された部分)における減少の割合は、相対的に小さい。表示装置に表示される画像の輝度は、カソード電流の値に応じて変化する。従って、カソード電流値の変化に相対的な差があると、輝度の均一性を悪化させる。
カソード電流が経時変化する要因の1つとして、カソードパネルに設けられた電界放出素子に気体の原子が付着し、その仕事関数が変化することが類推されている。発明者らは、実験により、表示装置の内部空間に微少の還元性の気体を加えると、経時変化により電界放出素子の仕事関数の値が小さくなることを確認した。また、微少の酸化性の気体を加えると、経時変化により電界放出素子の仕事関数の値が大きくなることも確認した。
カソードパネルCPの電子放出領域から放出された電子が、アノードパネルAPに設けられた蛍光体層に衝突すると、蛍光体層から種々の気体が放出される。上述のように、表示装置の内部空間は高真空である。従って、蛍光体層から放出された気体は、広く飛散し、複数の電子放出領域に到達する。カソードパネルCPの有効領域におけるX軸方向に倣う端部と、この端部に隣接するスペーサ40との間の距離Weは、それぞれ隣接するスペーサ40間の距離Wiより短い。このため、距離Weの領域に含まれる電子放出領域EAの列の数は、距離Wiの領域に含まれる電子放出領域EAの列の数よりも少ない。従って、定性的には、距離W i の領域に対応する部分の蛍光体層に入射する電子の量は、距離W e の領域に対応する部分の蛍光体層に入射する電子の量よりも多い。このため、距離W i の領域に対応する部分の蛍光体層から放出される気体の量は、距離W e の領域に対応する部分の蛍光体層から放出される気体の量よりも多くなる。従って、電子の衝突によって蛍光体層から放出された気体の原子が距離W i に対応する部分の電子放出領域EAに付着する程度は、距離W e に対応する部分の電子放出領域EAに気体の原子が付着する程度よりも相対的に大きくなると考えられる。
上述の特開平7−302560号公報や特開平8−171871号公報等には、表示装置におけるスペーサの種々の配置が開示されているが、表示画像における輝度の均一性の経時変化が認められる領域と、スペーサ40との関係についての議論はなされていない。
従って、本発明の目的は、表示装置におけるスペーサの位置関係を規定することにより、表示画像における輝度の均一性の経時変化を低減し得る平面型表示装置を提供することにある。
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る平面型表示装置は、複数の電子放出領域が設けられたカソードパネルと、蛍光体層及びアノード電極が設けられたアノードパネルとが、それらの周縁部で接合されて成る平面型表示装置であって、
平面型表示装置の表示領域に対応するカソードパネルの有効領域には、前記電子放出領域が、X軸方向−Y軸方向の2次元マトリックス状に配列されており、
平面型表示装置の表示領域におけるカソードパネルとアノードパネルとの間には、複数の板状のスペーサが、X軸方向をスペーサの長手方向とし、スペーサの長手方向と直交するY軸方向に間隔を開けて、配置されており、
カソードパネルの有効領域におけるX軸方向に倣う端部と、該端部に隣接するスペーサとの間に、X軸方向に沿って配列されている電子放出領域の列の数をNeとし、
それぞれ隣接するスペーサ間に、X軸方向に沿って配列されている電子放出領域の列の数をNiとするとき、
NeとNiが等しいことを特徴とする。
また、上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る平面型表示装置は、複数の電子放出領域が設けられたカソードパネルと、蛍光体層及びアノード電極が設けられたアノードパネルとが、それらの周縁部で接合されて成る平面型表示装置であって、
平面型表示装置の表示領域に対応するカソードパネルの有効領域には、前記電子放出領域が、X軸方向−Y軸方向の2次元マトリックス状に配列されており、
平面型表示装置の表示領域におけるカソードパネルとアノードパネルとの間には、複数の板状のスペーサが、X軸方向をスペーサの長手方向とし、スペーサの長手方向と直交するY軸方向に間隔を開けて、配置されていると共に、カソードパネルの有効領域におけるX軸方向に倣う端部に板状のスペーサが配置されており、
それぞれ隣接するスペーサ間に、X軸方向に沿って配列されている電子放出領域の列の数をNiとするとき、
全ての隣接するスペーサ間において、電子放出領域の列の数Niが等しいことを特徴とする。
本発明の第1の態様、あるいは、第2の態様に係る平面型表示装置(以下、これらを総称して、単に、本発明と呼ぶ場合がある)において、平面型表示装置の表示領域以外の領域におけるカソードパネルとアノードパネルとの間に、板状の第2のスペーサが配置されていてもよい。カソードパネルの有効領域のX軸方向に倣う端部と表示装置の周縁部との間に第2のスペーサが配置されるものであってもよいし、カソードパネルの有効領域のY軸方向に倣う端部と表示装置の周縁部との間に第2のスペーサが配置されるものであってもよい。第2のスペーサは、平面型表示装置の表示領域におけるカソードパネルとアノードパネルとの間に配置されるスペーサ(以下、第1のスペーサと呼ぶ場合がある)と同じ構成から成るものであってもよいし、別の構成から成るものであってもよい。
本発明の第1の態様に係る平面型表示装置において、「NeとNiが等しい」とは、表示装置における電子放出領域の列の総数とスペーサの数との関係で、電子放出領域の列に剰余分が生ずる場合に、剰余分が適宜割り振られて分散されている場合をも含み、数値が厳密に一致していない場合を包含する。
また、本発明の第2の態様に係る平面型表示装置において、「全ての隣接するスペーサ間において、電子放出領域の列の数Niが等しい」とは、表示装置における電子放出領域の列の総数とスペーサの数との関係で、電子放出領域の列に剰余が生ずる場合に、剰余分が適宜割り振られて分散されている場合をも含み、数値が厳密に一致していない場合を包含する。
本発明において、スペーサは、例えばセラミックやガラスから構成することができる。スペーサをセラミックから構成する場合、セラミックとして、ムライトやアルミナ、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、ジルコニア、コーディオライト、硼珪酸塩バリウム、珪酸鉄、ガラスセラミック材料、これらに、酸化チタンや酸化クロム、酸化鉄、酸化バナジウム、酸化ニッケルを添加したもの等を例示することができる。例えば、特表2003−524280号公報等に記載されている材料等を用いることもできる。この場合、所謂グリーンシートを成形して、グリーンシートを焼成し、係るグリーンシート焼成品を切断することによってスペーサを製造することができる。また、スペーサを構成するガラスとして、ソーダライムガラスを挙げることができる。スペーサは、例えば、隔壁と隔壁との間に挟み込んで固定すればよく、あるいは又、例えば、アノードパネルにスペーサ保持部を形成し、スペーサ保持部によって固定すればよい。
本発明において、スペーサの表面に、帯電防止膜等の膜が設けられてもよい。帯電防止膜を構成する2次電子放出係数が1に近い材料として、グラファイト等の半金属、酸化物、ホウ化物、炭化物、硫化物、及び、窒化物等を用いることができる。例えば、グラファイト等の半金属及びMoSe2等の半金属元素を含む化合物、Cr2O3、Nd2O3、LaxBa2-xCuO4、LaxBa2-xCuO4、LaxY1-xCrO3等の酸化物、AlB2、TiB2等のホウ化物、SiC等の炭化物、MoS2、WS2等の硫化物、及び、BN、TiN、AlN等の窒化物等を挙げることができる。例えば、特表2004−500688号公報等に記載されている材料等を用いることもできる。帯電防止膜等のスペーサの表面に設けられる膜は、単一の種類の材料から成るものであってもよいし、複数の種類の材料から成るものであってもよい。例えば、膜は一層構造であって、複数の種類の材料からその層が構成されてもよいし、膜は複数層が積層して成り、それぞれの層が異なる材料から成るものであってもよい。これらの膜は、スパッタ法、蒸着法、化学的気相成長(CVD)法等、周知の方法により形成することができる。
ここで、平面型表示装置を冷陰極電界電子放出表示装置とする場合、冷陰極電界電子放出素子(以下、電界放出素子と略称する)は、
(a)支持体上に形成され、第1の方向に延びる帯状のカソード電極、
(b)カソード電極及び支持体上に形成された絶縁層、
(c)絶縁層上に形成され、第1の方向とは異なる第2の方向に延びる帯状のゲート電極、
(d)カソード電極とゲート電極の重複する重複領域に位置するゲート電極及び絶縁層の部分に設けられ、底部にカソード電極が露出した開口部、及び、
(e)開口部の底部に露出したカソード電極上に設けられた電子放出部、
から成る。第1の方向がX軸方向、第2の方向がY軸方向の場合であってもよいし、第1の方向がY軸方向、第2の方向がX軸方向の場合であってもよい。
電界放出素子の型式は特に限定されず、スピント型電界放出素子(円錐形の電子放出部が、開口部の底部に位置するカソード電極の上に設けられた電界放出素子)や扁平型電界放出素子(略平面の電子放出部が、開口部の底部に位置するカソード電極の上に設けられた電界放出素子)を挙げることができる。
カソード電極の射影像とゲート電極の射影像とは直交することが、即ち、第1の方向と第2の方向とは直交することが、冷陰極電界電子放出表示装置の構造の簡素化といった観点から好ましい。そして、カソードパネルにおいては、電子放出領域が2次元マトリックス状に配列されており、各電子放出領域には、1又は複数の電界放出素子が設けられている。
電界放出素子は、一般に、以下の方法で製造することができる。
(1)支持体上にカソード電極を形成する工程、
(2)全面(支持体及びカソード電極上)に絶縁層を形成する工程、
(3)絶縁層上にゲート電極を形成する工程、
(4)カソード電極とゲート電極との重複領域におけるゲート電極及び絶縁層の部分に開口部を形成し、開口部の底部にカソード電極を露出させる工程、
(5)開口部の底部に位置するカソード電極上に電子放出部を形成する工程。
あるいは又、電界放出素子は、以下の方法で製造することもできる。
(1)支持体上にカソード電極を形成する工程、
(2)カソード電極上に電子放出部を形成する工程、
(3)全面(支持体及び電子放出部上、あるいは、支持体、カソード電極及び電子放出部上)に絶縁層を形成する工程、
(4)絶縁層上にゲート電極を形成する工程、
(5)カソード電極とゲート電極との重複領域におけるゲート電極及び絶縁層の部分に開口部を形成し、開口部の底部に電子放出部を露出させる工程。
先に説明したように、電界放出素子には収束電極が備えられていてもよい。即ち、例えばゲート電極及び絶縁層上には更に層間絶縁層が設けられ、層間絶縁層上に収束電極が設けられている電界放出素子、あるいは又、ゲート電極の上方に収束電極が設けられている電界放出素子とすることもできる。ここで、収束電極とは、開口部から放出され、アノード電極へ向かう放出電子の軌道を収束させ、以て、輝度の向上や隣接画素間の光学的クロストークの防止を可能とするための電極である。アノード電極とカソード電極との間の電位差が数キロボルトのオーダーであって、アノード電極とカソード電極との間の距離が比較的長い、所謂高電圧タイプの冷陰極電界電子放出表示装置において、収束電極は特に有効である。収束電極には、収束電極制御回路から相対的な負電圧(例えば、0ボルト)が印加される。収束電極は、必ずしも各電界放出素子毎に設けられている必要はなく、例えば、電界放出素子の所定の配列方向に沿って延在させることにより、複数の電界放出素子に共通の収束効果を及ぼすこともできる。
スピント型電界放出素子にあっては、電子放出部を構成する材料として、モリブデン、モリブデン合金、タングステン、タングステン合金、チタン、チタン合金、ニオブ、ニオブ合金、タンタル、タンタル合金、クロム、クロム合金、及び、不純物を含有するシリコン(ポリシリコンやアモルファスシリコン)から成る群から選択された少なくとも1種類の材料を挙げることができる。スピント型電界放出素子の電子放出部は、真空蒸着法の他、例えばスパッタリング法やCVD法によっても形成することができる。
扁平型電界放出素子にあっては、電子放出部を構成する材料として、カソード電極を構成する材料よりも仕事関数Φの小さい材料から構成することが好ましく、どのような材料を選択するかは、カソード電極を構成する材料の仕事関数、ゲート電極とカソード電極との間の電位差、要求される放出電子電流密度の大きさ等に基づいて決定すればよい。電界放出素子におけるカソード電極を構成する代表的な材料として、タングステン(Φ=4.55eV)、ニオブ(Φ=4.02〜4.87eV)、モリブデン(Φ=4.53〜4.95eV)、アルミニウム(Φ=4.28eV)、銅(Φ=4.6eV)、タンタル(Φ=4.3eV)、クロム(Φ=4.5eV)を例示することができる。電子放出部は、これらの材料よりも小さな仕事関数Φを有していることが好ましく、その値は概ね3eV以下であることが好ましい。係る材料として、炭素(Φ<1eV)、セシウム(Φ=2.14eV)、LaB6(Φ=2.66〜2.76eV)、BaO(Φ=1.6〜2.7eV)、SrO(Φ=1.25〜1.6eV)、Y2O3(Φ=2.0eV)、CaO(Φ=1.6〜1.86eV)、BaS(Φ=2.05eV)、TiN(Φ=2.92eV)、ZrN(Φ=2.92eV)を例示することができる。仕事関数Φが2eV以下である材料から電子放出部を構成することが、一層好ましい。尚、電子放出部を構成する材料は、必ずしも導電性を備えている必要はない。
あるいは又、扁平型電界放出素子において、電子放出部を構成する材料として、係る材料の2次電子利得δがカソード電極を構成する導電性材料の2次電子利得δよりも大きくなるような材料から適宜選択してもよい。即ち、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、金(Au)、コバルト(Co)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)等の金属;ゲルマニウム(Ge)等の半導体;炭素やダイヤモンド等の無機単体;及び酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化バリウム(BaO)、酸化ベリリウム(BeO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化錫(SnO2)、フッ化バリウム(BaF2)、フッ化カルシウム(CaF2)等の化合物の中から、適宜選択することができる。尚、電子放出部を構成する材料は、必ずしも導電性を備えている必要はない。
あるいは又、扁平型電界放出素子にあっては、特に好ましい電子放出部の構成材料として、炭素、より具体的にはアモルファスダイヤモンドやグラファイト、カーボン・ナノチューブ構造体、ZnOウィスカー、MgOウィスカー、SnO2ウィスカー、MnOウィスカー、Y2O3ウィスカー、NiOウィスカー、ITOウィスカー、In2O3ウィスカー、Al2O3ウィスカーを挙げることができる。電子放出部をこれらから構成する場合、5×106V/m以下の電界強度にて、冷陰極電界電子放出表示装置に必要な放出電子電流密度を得ることができる。また、電子放出部を構成する材料が電気抵抗体であれば、各電子放出部から得られる放出電子電流を均一化することができ、よって、冷陰極電界電子放出表示装置に組み込まれた場合の輝度ばらつきの抑制が可能となる。更に、これらの材料は、冷陰極電界電子放出表示装置内の残留ガスのイオンによるスパッタ作用に対して極めて高い耐性を有するので、電界放出素子の長寿命化を図ることができる。
カーボン・ナノチューブ構造体として、具体的には、カーボン・ナノチューブ及び/又はグラファイト・ナノファイバーを挙げることができる。より具体的には、カーボン・ナノチューブから電子放出部を構成してもよいし、グラファイト・ナノファイバーから電子放出部を構成してもよいし、カーボン・ナノチューブとグラファイト・ナノファイバーの混合物から電子放出部を構成してもよい。カーボン・ナノチューブやグラファイト・ナノファイバーは、巨視的には、粉末状であってもよいし、薄膜状であってもよいし、場合によっては、カーボン・ナノチューブ構造体は円錐状の形状を有していてもよい。カーボン・ナノチューブやグラファイト・ナノファイバーは、周知のアーク放電法やレーザアブレーション法といったPVD法、プラズマCVD法やレーザCVD法、熱CVD法、気相合成法、気相成長法といった各種のCVD法によって製造、形成することができる。
カソード電極、ゲート電極、収束電極の構成材料として、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、白金(Pt)、亜鉛(Zn)等の金属;これらの金属元素を含む合金(例えばMoW)あるいは化合物(例えばTiN等の窒化物や、WSi2、MoSi2、TiSi2、TaSi2等のシリサイド);シリコン(Si)等の半導体;ダイヤモンド等の炭素薄膜;ITO(酸化インジウム−錫)、酸化インジウム、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物を例示することができる。また、これらの電極の形成方法として、例えば、電子ビーム蒸着法や熱フィラメント蒸着法といった蒸着法、スパッタリング法、CVD法やイオンプレーティング法とエッチング法との組合せ;スクリーン印刷法;メッキ法(電気メッキ法や無電解メッキ法);リフトオフ法;レーザアブレーション法;ゾル・ゲル法等を挙げることができる。スクリーン印刷法やメッキ法によれば、直接、例えば帯状のカソード電極やゲート電極を形成することが可能である。
絶縁層や層間絶縁層の構成材料として、SiO2、BPSG、PSG、BSG、AsSG、PbSG、SiON、SOG(スピンオングラス)、低融点ガラス、ガラスペーストといったSiO2系材料;SiN系材料;ポリイミド等の絶縁性樹脂を、単独あるいは適宜組み合わせて使用することができる。絶縁層や層間絶縁層の形成には、CVD法、塗布法、スパッタリング法、スクリーン印刷法等の公知のプロセスが利用できる。
第1開口部(ゲート電極に形成された開口部)あるいは第2開口部(絶縁層に形成された開口部)の平面形状(支持体表面と平行な仮想平面で開口部を切断したときの形状)は、円形、楕円形、矩形、多角形、丸みを帯びた矩形、丸みを帯びた多角形等、任意の形状とすることができる。第1開口部の形成は、例えば、異方性エッチング、等方性エッチング、異方性エッチングと等方性エッチングの組合せによって行うことができ、あるいは又、ゲート電極の形成方法に依っては、第1開口部を直接形成することもできる。第2開口部の形成も、例えば、異方性エッチング、等方性エッチング、異方性エッチングと等方性エッチングの組合せによって行うことができる。
電界放出素子においては、電界放出素子の構造に依存するが、1つの開口部内に1つの電子放出部が存在してもよいし、1つの開口部内に複数の電子放出部が存在してもよいし、ゲート電極に複数の第1開口部を設け、係る第1開口部と連通する1つの第2開口部を絶縁層に設け、絶縁層に設けられた1つの第2開口部内に1又は複数の電子放出部が存在してもよい。
電界放出素子において、カソード電極と電子放出部との間に抵抗体層を設けてもよい。抵抗体層を設けることによって、電界放出素子の動作安定化、電子放出特性の均一化を図ることができる。抵抗体層を構成する材料として、シリコンカーバイド(SiC)やSiCNといったカーボン系材料、SiN、アモルファスシリコン等の半導体材料、酸化ルテニウム(RuO2)、酸化タンタル、窒化タンタル等の高融点金属酸化物を例示することができる。抵抗体層の形成方法として、スパッタリング法や、CVD法やスクリーン印刷法を例示することができる。1つの電子放出部当たりの電気抵抗値は、概ね1×106〜1×1011Ω、好ましくは数十ギガΩとすればよい。
カソードパネルを構成する支持体として、あるいは又、アノードパネルを構成する基板として、ガラス基板、表面に絶縁膜が形成されたガラス基板、石英基板、表面に絶縁膜が形成された石英基板、表面に絶縁膜が形成された半導体基板を挙げることができるが、製造コスト低減の観点からは、ガラス基板、あるいは、表面に絶縁膜が形成されたガラス基板を用いることが好ましい。ガラス基板として、高歪点ガラス、ソーダガラス(Na2O・CaO・SiO2)、硼珪酸ガラス(Na2O・B2O3・SiO2)、フォルステライト(2MgO・SiO2)、鉛ガラス(Na2O・PbO・SiO2)を例示することができる。
アノードパネルを構成するアノード電極と蛍光体層の構成例として、(1)基板上に、アノード電極を形成し、アノード電極の上に蛍光体層を形成する構成、(2)上述したように、基板上に、蛍光体層を形成し、蛍光体層上にアノード電極を形成する構成、を挙げることができる。尚、(1)の構成において、蛍光体層の上に、アノード電極と導通した所謂メタルバック膜を形成してもよい。また、(2)の構成において、アノード電極の上にメタルバック膜を形成してもよい。
アノード電極は、全体として1つのアノード電極から構成されていてもよいし、複数のアノード電極ユニットから構成されていてもよい。後者の場合、アノード電極ユニットとアノード電極ユニットとは抵抗体膜によって電気的に接続されている必要がある。抵抗体膜を構成する材料として、シリコンカーバイド(SiC)やSiCNといったカーボン系材料;SiN系材料;酸化ルテニウム(RuO2)、酸化タンタル、窒化タンタル、酸化クロム、酸化チタン等の高融点金属酸化物;アモルファスシリコン等の半導体材料を挙げることができる。抵抗体膜のシート抵抗値として、1×10-1Ω/□乃至1×1010Ω/□、好ましくは1×103Ω/□乃至1×108Ω/□を例示することができる。アノード電極ユニットの数(An)は2以上であればよく、例えば、直線状に配列された蛍光体層の列の総数をα列としたとき、An=αとし、あるいは、α=β・An(βは2以上の整数であり、好ましくは10≦β≦100、一層好ましくは20≦β≦50)としてもよいし、一定の間隔をもって配設されるスペーサの数に1を加えた数とすることができるし、ピクセルの数あるいはサブピクセルの数と一致した数、あるいは、ピクセルの数あるいはサブピクセルの数の整数分の一とすることもできる。また、各アノード電極ユニットの大きさは、アノード電極ユニットの位置に拘わらず同じとしてもよいし、アノード電極ユニットの位置に依存して異ならせてもよい。
アノード電極(アノード電極ユニットを包含する)は、導電材料層を用いて形成すればよい。導電材料層の形成方法として、例えば、電子ビーム蒸着法や熱フィラメント蒸着法といった蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザアブレーション法といった各種のPVD法;各種のCVD法;スクリーン印刷法;リフトオフ法;ゾル・ゲル法等を挙げることができる。即ち、導電材料から成る導電材料層を形成し、リソグラフィ技術及びエッチング技術に基づき、この導電材料層をパターニングしてアノード電極を形成することができる。あるいは又、アノード電極のパターンを有するマスクやスクリーンを介して導電材料をPVD法やスクリーン印刷法に基づき形成することによって、アノード電極を得ることもできる。尚、抵抗体膜も同様の方法で形成することができる。即ち、抵抗体材料から抵抗体膜を形成し、リソグラフィ技術及びエッチング技術に基づきこの抵抗体膜をパターニングしてもよいし、あるいは、抵抗体膜のパターンを有するマスクやスクリーンを介して抵抗体材料のPVD法やスクリーン印刷法に基づく形成により、抵抗体膜を得ることができる。基板上(あるいは基板上方)におけるアノード電極の平均厚さ(後述するように隔壁を設ける場合、隔壁の頂面上におけるアノード電極の平均厚さ)として、3×10-8m(30nm)乃至1.5×10-7m(150nm)、好ましくは5×10-8m(50nm)乃至1×10-7m(100nm)を例示することができる。
アノード電極の構成材料は、平面型表示装置の構成によって適宜選択すればよい。即ち、平面型表示装置が透過型(アノードパネルが表示面に相当する)であって、且つ、基板上にアノード電極と蛍光体層がこの順に積層されている場合には、基板は元より、アノード電極自身も透明である必要があり、ITO(インジウム錫酸化物)等の透明導電材料を用いる。一方、平面型表示装置が反射型(カソードパネルが表示面に相当する)である場合、及び、透過型であっても基板上に蛍光体層とアノード電極とがこの順に積層されている場合には、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、金(Au)、銀(Ag)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、白金(Pt)、亜鉛(Zn)等の金属;これらの金属元素を含む合金あるいは化合物(例えばTiN等の窒化物や、WSi2、MoSi2、TiSi2、TaSi2等のシリサイド);シリコン(Si)等の半導体;ダイヤモンド等の炭素薄膜;ITO(酸化インジウム−錫)、酸化インジウム、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物を例示することができる。尚、抵抗体膜を形成する場合、抵抗体膜の抵抗値を変化させない導電材料からアノード電極を構成することが好ましく、例えば、抵抗体膜をシリコンカーバイド(SiC)から構成した場合、アノード電極をモリブデン(Mo)から構成することが好ましい。
蛍光体層は、単色の蛍光体粒子から構成されていても、3原色の蛍光体粒子から構成されていてもよい。また、蛍光体層の配列様式は、ドット状であっても、帯状であってもよい。尚、ドット状や帯状の配列様式においては、隣り合う蛍光体層の間の隙間がコントラスト向上を目的とした光吸収層(ブラックマトリックス)で埋め込まれていてもよい。
平面型放出表示装置がカラー表示の場合、直線状に配列された蛍光体層の1列は、全てが赤色発光蛍光体層で占められた列、緑色発光蛍光体層で占められた列、及び、青色発光蛍光体層で占められた列から構成されていてもよいし、赤色発光蛍光体層、緑色発光蛍光体層、及び、青色発光蛍光体層が順に配置された列から構成されていてもよい。ここで、蛍光体層とは、アノードパネル上において1つの輝点を生成する蛍光体層であると定義する。また、1画素(1ピクセル)は、1つの赤色発光蛍光体層、1つの緑色発光蛍光体層、及び、1つの青色発光蛍光体層の集合から構成され、1サブピクセルは、1つの蛍光体層(1つの赤色発光蛍光体層、あるいは、1つの緑色発光蛍光体層、あるいは、1つの青色発光蛍光体層)から構成される。更には、アノード電極ユニットにおける1サブピクセルに相当する大きさとは、1つの蛍光体層を囲むアノード電極ユニットの大きさを意味する。
蛍光体層は、発光性結晶粒子(例えば、粒径5〜10nm程度の蛍光体粒子)から調製された発光性結晶粒子組成物を使用し、例えば、赤色の感光性の発光性結晶粒子組成物(赤色蛍光体スラリー)を全面に塗布し、露光、現像して、赤色発光蛍光体層を形成し、次いで、緑色の感光性の発光性結晶粒子組成物(緑色蛍光体スラリー)を全面に塗布し、露光、現像して、緑色発光蛍光体層を形成し、更に、青色の感光性の発光性結晶粒子組成物(青色蛍光体スラリー)を全面に塗布し、露光、現像して、青色発光蛍光体層を形成する方法にて形成することができる。基板上における蛍光体層の平均厚さは、限定するものではないが、3μm乃至20μm、好ましくは5μm乃至10μmであることが望ましい。
発光性結晶粒子を構成する蛍光体材料としては、従来公知の蛍光体材料の中から適宜選択して用いることができる。カラー表示の場合、色純度がNTSCで規定される3原色に近く、3原色を混合した際の白バランスがとれ、残光時間が短く、3原色の残光時間がほぼ等しくなる蛍光体材料を組み合わせることが好ましい。赤色発光蛍光体層を構成する蛍光体材料として、(Y2O3:Eu)、(Y2O2S:Eu)、(Y3Al5O12:Eu)、(Y2SiO5:Eu)、(Zn3(PO4)2:Mn)を例示することができるが、中でも、(Y2O3:Eu)、(Y2O2S:Eu)を用いることが好ましい。また、緑色発光蛍光体層を構成する蛍光体材料として、(ZnSiO2:Mn)、(Sr4Si3O8Cl4:Eu)、(ZnS:Cu,Al)、(ZnS:Cu,Au,Al)、[(Zn,Cd)S:Cu,Al]、(Y3Al5O12:Tb)、(Y2SiO5:Tb)、[Y3(Al,Ga)5O12:Tb]、(ZnBaO4:Mn)、(GbBO3:Tb)、(Sr6SiO3Cl3:Eu)、(BaMgAl14O23:Mn)、(ScBO3:Tb)、(Zn2SiO4:Mn)、(ZnO:Zn)、(Gd2O2S:Tb)、(ZnGa2O4:Mn)を例示することができるが、中でも、(ZnS:Cu,Al)、(ZnS:Cu,Au,Al)、[(Zn,Cd)S:Cu,Al]、(Y3Al5O12:Tb)、[Y3(Al,Ga)5O12:Tb]、(Y2SiO5:Tb)を用いることが好ましい。更には、青色発光蛍光体層を構成する蛍光体材料として、(Y2SiO5:Ce)、(CaWO4:Pb)、CaWO4、YP0.85V0.15O4、(BaMgAl14O23:Eu)、(Sr2P2O7:Eu)、(Sr2P2O7:Sn)、(ZnS:Ag,Al)、(ZnS:Ag)、ZnMgO、ZnGaO4を例示することができるが、中でも、(ZnS:Ag)、(ZnS:Ag,Al)を用いることが好ましい。
アノードパネルには、更に、蛍光体層から反跳した電子、あるいは、蛍光体層から放出された二次電子が他の蛍光体層に入射し、所謂光学的クロストーク(色濁り)が発生することを防止するための、あるいは又、蛍光体層から反跳した電子、あるいは、蛍光体層から放出された二次電子が隔壁を越えて他の蛍光体層に向かって侵入したとき、これらの電子が他の蛍光体層と衝突することを防止するための、隔壁が、複数、設けられていることが好ましい。
隔壁の平面形状としては、格子形状(井桁形状)、即ち、1サブピクセルに相当する、例えば平面形状が略矩形(ドット状)の蛍光体層の四方を取り囲む形状を挙げることができ、あるいは、略矩形あるいは帯状の蛍光体層の対向する二辺と平行に延びる帯状形状を挙げることができる。隔壁を格子形状とする場合、1つの蛍光体層の領域の四方を連続的に取り囲む形状としてもよいし、不連続に取り囲む形状としてもよい。隔壁を帯状形状とする場合、連続した形状としてもよいし、不連続な形状としてもよい。隔壁を形成した後、隔壁を研磨し、隔壁の頂面の平坦化を図ってもよい。
隔壁の形成方法として、スクリーン印刷法、ドライフィルム法、感光法、サンドブラスト形成法を例示することができる。ここで、スクリーン印刷法とは、隔壁を形成すべき部分に対応するスクリーンの部分に開口が形成されており、スクリーン上の隔壁形成用材料をスキージを用いて開口を通過させ、基板上に隔壁形成用材料層を形成した後、係る隔壁形成用材料層を焼成する方法である。ドライフィルム法とは、基板上に感光性フィルムをラミネートし、露光及び現像によって隔壁形成予定部位の感光性フィルムを除去し、除去によって生じた開口に隔壁形成用の材料を埋め込み、焼成する方法である。感光性フィルムは焼成によって燃焼、除去され、開口に埋め込まれた隔壁形成用の材料が残り、隔壁となる。感光法とは、基板上に感光性を有する隔壁形成用材料層を形成し、露光及び現像によってこの隔壁形成用材料層をパターニングした後、焼成を行う方法である。サンドブラスト形成法とは、例えば、スクリーン印刷やロールコーター、ドクターブレード、ノズル吐出式コーター等を用いて隔壁形成用材料層を基板上に形成し、乾燥させた後、隔壁を形成すべき隔壁形成用材料層の部分をマスク層で被覆し、次いで、露出した隔壁形成用材料層の部分をサンドブラスト法によって除去する方法である。
蛍光体層からの光を吸収する光吸収層が隔壁と基板との間に形成されていることが、表示画像のコントラスト向上といった観点から好ましい。ここで、光吸収層は、所謂ブラックマトリックスとして機能する。光吸収層を構成する材料として、蛍光体層からの光を99%以上吸収する材料を選択することが好ましい。このような材料として、カーボン、金属薄膜(例えば、クロム、ニッケル、アルミニウム、モリブデン等、あるいは、これらの合金)、金属酸化物(例えば、酸化クロム)、金属窒化物(例えば、窒化クロム)、耐熱性有機樹脂、ガラスペースト、黒色顔料や銀等の導電性粒子を含有するガラスペースト等の材料を挙げることができ、具体的には、感光性ポリイミド樹脂、酸化クロムや、酸化クロム/クロム積層膜を例示することができる。尚、酸化クロム/クロム積層膜においては、クロム膜が基板と接する。光吸収層は、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法とエッチング法との組合せ、真空蒸着法やスパッタリング法、スピンコーティング法とリフトオフ法との組合せに、スクリーン印刷法、リソグラフィ技術等、使用する材料に依存して適宜選択された方法にて形成することができる。
冷陰極電界電子放出表示装置にあっては、カソード電極及びゲート電極に印加された電圧によって生じた強電界が電子放出部に加わる結果、量子トンネル効果により電子放出部から電子が放出される。そして、この電子は、アノードパネルに設けられたアノード電極によってアノードパネルへと引き付けられ、蛍光体層に衝突する。そして、蛍光体層への電子の衝突の結果、蛍光体層が発光し、画像として認識することができる。
冷陰極電界電子放出表示装置において、カソード電極はカソード電極制御回路に接続され、ゲート電極はゲート電極制御回路に接続され、アノード電極はアノード電極制御回路に接続されている。尚、これらの制御回路は周知の回路から構成することができる。実作動時、アノード電極制御回路の出力電圧vAは、通常、一定であり、例えば、5キロボルト〜12キロボルトとすることができる。あるいは又、アノードパネルとカソードパネルとの間の距離をd(但し、0.5mm≦d≦10mm)としたとき、vA/d(単位:キロボルト/mm)の値は、0.5以上20以下、好ましくは1以上10以下、一層好ましくは5以上10以下を満足することが望ましい。
冷陰極電界電子放出表示装置の実動作時、カソード電極に印加する電圧vC及びゲート電極に印加する電圧vGに関しては、階調制御方式として電圧変調方式を採用した場合、
(1)カソード電極に印加する電圧vCを一定とし、ゲート電極に印加する電圧vGを変化させる方式
(2)カソード電極に印加する電圧vCを変化させ、ゲート電極に印加する電圧vGを一定とする方式
(3)カソード電極に印加する電圧vCを変化させ、且つ、ゲート電極に印加する電圧vGも変化させる方式がある。
カソードパネルとアノードパネルとを周縁部において接合するが、接合は接着層を用いて行ってもよいし、あるいは、ガラスやセラミック等の絶縁剛性材料から成る枠体と接着層とを併用して行ってもよい。枠体と接着層とを併用する場合には、枠体の高さを適宜選択することにより、接着層のみを使用する場合に比べ、カソードパネルとアノードパネルとの間の対向距離をより長く設定することが可能である。尚、接着層の構成材料としては、フリットガラスが一般的であるが、融点が120〜400゜C程度の所謂低融点金属材料を用いてもよい。係る低融点金属材料としては、In(インジウム:融点157゜C);インジウム−金系の低融点合金;Sn80Ag20(融点220〜370゜C)、Sn95Cu5(融点227〜370゜C)等の錫(Sn)系高温はんだ;Pb97.5Ag2.5(融点304゜C)、Pb94.5Ag5.5(融点304〜365゜C)、Pb97.5Ag1.5Sn1.0(融点309゜C)等の鉛(Pb)系高温はんだ;Zn95Al5(融点380゜C)等の亜鉛(Zn)系高温はんだ;Sn5Pb95(融点300〜314゜C)、Sn2Pb98(融点316〜322゜C)等の錫−鉛系標準はんだ;Au88Ga12(融点381゜C)等のろう材(以上の添字は全て原子%を表す)を例示することができる。
カソードパネルとアノードパネルと枠体の三者を接合する場合、三者を同時に接合してもよいし、あるいは、第1段階でカソードパネル又はアノードパネルのいずれか一方と枠体とを接合し、第2段階でカソードパネル又はアノードパネルの他方と枠体とを接合してもよい。三者同時接合や第2段階における接合を高真空雰囲気中で行えば、カソードパネルとアノードパネルと枠体と接着層とにより囲まれた空間は、接合と同時に真空となる。あるいは、三者の接合終了後、カソードパネルとアノードパネルと枠体と接着層とによって囲まれた空間を排気し、真空とすることもできる。接合後に排気を行う場合、接合時の雰囲気の圧力は常圧/減圧のいずれであってもよく、また、雰囲気を構成する気体は、大気であっても、あるいは窒素ガスや周期律表0族に属するガス(例えばArガス)を含む不活性ガスであってもよい。
排気を行う場合、排気は、カソードパネル及び/又はアノードパネルに予め接続されたチップ管を通じて行うことができる。チップ管は、典型的にはガラス管を用いて構成され、カソードパネル及び/又はアノードパネルの無効領域(平面型表示装置としての実用上の機能を果たす中央部の表示領域である有効領域を額縁状に包囲する領域)に設けられた貫通部の周囲に、フリットガラス又は上述の低融点金属材料を用いて接合され、空間が所定の真空度に達した後、熱融着によって封じ切られる。尚、封じ切りを行う前に、平面型表示装置全体を一旦加熱してから降温させると、空間に残留ガスを放出させることができ、この残留ガスを排気により空間外へ除去することができるので好適である。