JP4795900B2 - Fe−Ni系パーマロイ合金 - Google Patents
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そこで、材料メーカーとしては、PC材相当の特性を有するPB材あるいはPB材相当の特性を有するPD材といった材料の開発が脚光を浴びており、このことがファブリケータの設計の自由度を高め、ひいては性能の高い製品を市場に提供する上でも有効となる。
即ち、本発明はNi:40〜50mass%、C:0.015mass%以下、Si:1.0mass%以下、Mn:1.0mass%以下、P:0.01mass%以下、S:0.005mass%以下、O:0.006mass%以下およびAl:0.02mass%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなるFe−Ni系パーマロイ合金であって、下記のNi偏析量CNiSが0.15mass%以下、円相当直径0.1μm以上の非金属介在物の量が20個/mm 2 以下であり、最大透磁率μm=100000以上、初透磁率μ i =30000以上、保磁力Hc=0.02[Oe]以下の磁気特性を示すことを特徴とするFe−Ni 系パーマロイ合金である。
CNis=Ni成分分析値(mass%)×CiNis(c.p.s)/CiNiave.(c.p.s.)
CiNis:X線強度の標準偏差(c.p.s.)
CiNiave.:全X線強度の平均強度(c.p.s.)
(1)Niを35〜40mass%を含有する合金の場合、最大透磁率μm=50000以上、初透磁率μi=10000以上、保磁力Hc=0.05[Oe]以下の磁気特性を示すものであること。
(2)Niを40〜50mass%含有する合金の場合、最大透磁率μm=100000以上、初透磁率μi=30000以上、保磁力Hc=0.02[Oe]以下の磁気特性を示すものであること。
(3)Niを70〜85mass%を含有する合金の場合、最大透磁率μm=400000以上、初透磁率μi=200000以上、保磁力Hc=0.006[Oe]以下の磁気特性を示すものであること。
DNi=(D・t)1/2/μm
D:拡散係数、D=D0×exp(−Q/RT)
D0:振動数項=1.63×108/μm2・s−1
Q:Ni拡散の活性化エネルギー=2.79×105/J・mol−1
R: 気体定数=8.31/J・mol−1・K−1
T:温度/K
t:焼鈍時間/s
なお、ここにいう冷間圧熱工程は、通常行われる焼鈍、BA、酸洗などの工程も含むこともある。
すなわち、本発明は、Ni:40〜50mass%、C:0.015mass%以下、Si:1.0mass%以下、Mn:0.01〜1.0mass%、P:0.01mass%以下、S:0.005mass%以下、O:0.0060mass%以下およびAl: 0.001〜0.02mass%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物よりなる合金を連続鋳造法により、等軸晶の面積割合が1%以下の連続鋳造スラブとし、その連続鋳造スラブを均質化熱処理したのち、そのスラブを表面手入れしたのち、熱間圧延を施すことにより、Ni偏析量CNisを0.15mass%以下、好ましくは0.12mass%以下、より好ましくは0.10mass%以下の合金としたものである。
ところで、発明者らの研究によると、上記の連続鋳造スラブを、下記の温度、時間の条件を充足する均質化熱処理を行った場合には、当初予期した偏析量以下の材料を得ることができることがわかった。即ち、本発明者らは種々の実験により、下記式(1)で示されるNiの拡散距離DNiの値(D・t)1/2値が39以上で、かつ熱処理温度Tが1100℃〜1375℃の範囲内の条件で行われる均質化熱処理を施すことにより、熱間圧延後の熱延材のNi偏析量を0.15mass%に軽減できることを見いだした。
Ni拡散距離DNi=(D・t)1/2/μm (1)
拡散係数D=D0×exp(−Q/RT)
D0:振動数項=1.63×108/μm2・s−1
Q :Ni拡散の活性化エネルギー=2.79×105/J・mol−1
R :気体定数=8.31/J・mol−1・K−1
T:温度/K
t:焼鈍時間/s
なお、Ni偏析の程度を表す指標としては、EPMA(X線マイクロアナライザー)の線分析により得られたNi濃度分布データの標準偏差を求め、これをNi偏析量とした。
CNis(mass%)=Ni成分分析値(mass%)×CNis(c.p.s.)/CiNiave.(c.p.s.) …(2)
CiNis:板断面のX線強度の標準偏差(c.p.s.)
CiNiave.:板断面の全X線強度の平均強度(c.p.s.)
図2は、板厚み5mmの熱延板のPB材のNi偏析量の測定結果を示す実測データのグラフである。冷間圧延板や磁気熱処理板のような板厚:0.2mm程度のものについても同様に測定した。
即ち、本発明は、成分偏析の中でもとくに拡散速度の遅いNiの偏析を制御することで、合金特性をコントロールすることとしたのである。ただし、種々検討した結果、特性を望ましいレベルにまで改善するためには、同時に、非金属介在物の制御や結晶粒径の制御をも併せて行うことが有効であることもわかった。
なお、これらの制御因子については、それぞれの合金成分によっても影響度が異なり、例えばPD材、PB材では、粒径と偏析の影響が大きく、一方、PC材では非金属介在物と成分偏析の影響がそれぞれ大きくなる。
その結果として、本発明では、PC材代替品としてのPB材を提供できるようになる。
1.高透磁率であること:少なくとも最大透磁率μm=100000以上、初透磁率μi=30000以上、
2.保磁力が小さいこと:少なくとも保磁力Hc=0.02[Oe]以下、
3.高周波特性が優れていること:例えば板厚0.35mm1kHzで実効透磁率μe=4000以上、なお、この高周波特性に関しては、同一板厚の実効透磁率μeでは差が無くとも、PB材ではPC材に比べて磁束密度が大きい(約2倍)ため、板厚をより薄くでき、磁気回路設計上、軽量化や低コスト化の点で有利となる。
(1) C:0.015mass%以下;Cは、0.015mass%を超えるとカーバイドが生成して結晶の成長を抑制するため、軟磁気特性を悪化させる元素である。このため、Cは、0.015mass%以下とする。
(2) Si:1.0mass%以下;Siは、脱酸成分の一つとして添加されるが、1.0mass%を超えた場合にはシリケート系の酸化物を生成し、MnSなどの硫化物の生成起点となる。生成したMnSは軟磁気特性に対して有害であり、磁壁移動の障壁となるためできるだけ少ない方が望ましい。このため、Siは、1.0mass%以下に限定する。
(3) Mn:1.0mass%以下;Mnは、脱酸成分として添加されるが1.0mass%を超えて含有していると、Siと同様にMnSの生成を促して軟磁気特性を悪化させる。しかし、一方で、PC材などでは、磁気特性に対しては規則格子の生成をコントロールする働きがあり、適量の添加が望ましい。このため、Mnは、1.0mass%以下、好ましくは0.01〜1.0mass%の範囲に規定することとした。
(4) P:0.01mass%以下;Pは、過剰に含有すると粒界、粒内にリン化物として析出し、軟磁気特性を悪化させるため、Pは0.01mass%以下に限定する。
(5) S:0.005mass%以下;Sは、その量が0.005mass%を超えると硫化物系介在物を生じ易くMnSやCaSとなって分散する。とくに、これらの硫化物は直径が0.1μm〜数μm程度の大きさのものであり、パーマロイ合金の場合は、磁壁の厚みとほぼ一致するため磁壁移動に対して有害となり、軟磁気特性を悪化させるため、Sは0.005mass%以下とする。
(6) Al:0.02mass%以下;Alは、重要な脱酸成分であり、添加量が少ない場合には脱酸が不十分であり非金属介在物の量が増加するのに加え、Mn、Siの影響により硫化物の形態がMnSとなりやすく粒成長が抑制される。一方、0.02mass%より多くなると、磁歪定数や磁気異方性定数が高くなり、軟磁気特性を悪化させる。このためAlの適正な添加範囲としては、0.02mass%以下、好ましくは0.001〜0.02mass%とする。
(7) O:0.0060mass%以下;Oは、脱酸により低減されて最終的に鋼中に残留するものであるが、鋼中に固溶して残留するOと、非金属介在物等の酸化物として残留するOとに分かれる。Oの量が多くなると非金属介在物の量が必然的に増え、磁気特性に悪影響を及ぼすことが知られているが、同時にSの存在形態に影響してくる。即ち、残留するOが多い場合、脱酸が不十分となり、硫化物がMnSとして存在しやすくなり磁壁の移動や粒成長を阻害する。このことからOは0.0060mass%以下とする。
初めに、上記成分組成の合金を溶製したのち連続鋳造法により連続鋳造スラブとする。このとき、電磁攪拌を行うことなく連続鋳造を行う。次いで、このように得られた連続鋳造スラブに対して均質化熱処理を行い、その後スラブの表面手入れを行ってから、熱間圧延を施す。このようにして得られた熱延材は、上述したNi偏析量CNisを0.15mass%以下にすることができる。
上記均質化熱処理の条件としては、上記式(1)で示されるNi拡散距離の値DNi(D・t)1/2値が39以上となる条件で、かつ熱処理温度T=1100℃〜1375℃の範囲内で行うことが適当である。
その結果、表3に示すとおり、本発明の合金では、等軸晶率が1%以下の鋳造スラブを用いたこともあってNi偏析量が小さく、そのために直流磁化特性、交流磁化特性とも大幅に改善されていることが確認された。なお、直流磁気特性の測定は、JIS45φ×33φリング試験片を1次、2次側とも50ターン巻線し反転磁場20[Oe]により測定した。交流磁化特性は70ターン巻線し、電流0.5mAで1kHzの周波数で実効透磁率μeを測定した。なお初透磁率μiに関しては、JIS C2531の定義に従い磁界の強さがそれぞれPB材は0.01[Oe]、PCに関しては0.005[Oe]で測定した。
Claims (1)
- Ni:40〜50mass%、C:0.015mass%以下、Si:1.0mass%以下、Mn:1.0mass%以下、P:0.01mass%以下、S:0.005mass%以下、O:0.006mass%以下およびAl:0.02mass%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなるFe−Ni系パーマロイ合金であって、下記のNi偏析量CNiSが0.15mass%以下、円相当直径0.1μm以上の非金属介在物の量が20個/mm2以下であり、最大透磁率μm=100000以上、初透磁率μi=30000以上、保磁力Hc=0.02[Oe]以下の磁気特性を示すことを特徴とするFe−Ni 系パーマロイ合金。
CNis=Ni成分分析値(mass%)×CiNis(c.p.s)/CiNiave.(c.p.s.)
CiNis:X線強度の標準偏差(c.p.s.)
CiNiave.:全X線強度の平均強度(c.p.s.)
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