JP2011068998A - Fe−Ni系パーマロイ合金 - Google Patents

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辰哉 伊藤
Tsutomu Omori
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Abstract

【課題】PD材の磁気特性を改善してPB材相当の磁気特性のものに格上げすること、またPC材に関しても更なる磁気特性の改善ならびにより高い感度と周波数の用途に対応できる材料を開発すること。
【解決手段】Ni:35〜40mass%もしくは70〜85mass%、C:0.015mass%以下、Si:1.0mass%以下、Mn:1.0mass%以下、P:0.01mass%以下、S:0.005mass%以下、O:0.006mass%以下およびAl:0.02mass%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなるFe−Ni系パーマロイ合金であって、Ni偏析量CNisが0.15mass%以下、円相当直径0.1μm以上の非金属介在物の量が20個/mm以下、最大透磁率μm=50000以上、初透磁率μ=10000以上、保磁力Hc=0.05[Oe]以下の磁気特性を示す冷延材もしくは熱延材からなるFe−Ni系パーマロイ合金。
【選択図】図2

Description

本発明は、磁気特性に優れたFe−Ni系パーマロイ合金に関するものである。
Fe−Ni系高透磁率合金、いわゆるパーマロイ合金は、通常、JIS C2531に規定されたPB材(40〜50mass%Ni)、PC材(70〜85mass%Ni−Mo−Cu)、PD材(35〜40mass%Ni−Fe)等が代表的なものである。これらの合金は、主として、PBは飽和磁束密度が大きい特徴を生かした用途、例えば時計のステータ、電磁レンズのポールピースなどに多く使用されており、PCはすぐれた透磁率を生かした高周波域での高感度トランスや磁気シールド材として用いられている。また、これらの合金の中には、Nb、Cr等の添加元素を加えることにより耐磨耗性や耐食性を付与して、磁気ヘッドやシールドケース等の用途に対応できるよう工夫されたものもある。(例えば、特許文献1)
その他、これらの合金の特性を改善したものとしては、特許文献2などでは、SやOなどの不純物元素を調整することにより、透磁率を向上させるとともに打ち抜き性を高めた発明例がある。また、最近では、低コスト化のため、PC材からPB材へ、またはPB材からPD材へといった材料の移行がみられ、ファブリケータの設計により、材料特性の不足を補うような方法も採用されつつある。
そこで、材料メーカーとしては、PC材相当の特性を有するPB材あるいはPB材相当の特性を有するPD材といった材料の開発が脚光を浴びており、このことがファブリケータの設計の自由度を高め、ひいては性能の高い製品を市場に提供する上でも有効となる。
特開昭60−2651号公報 特開昭62−142749号公報
本発明の目的は、上述した要望に応えられるFe−Ni系パーマロイ合金を提案することにある。すなわち、本発明はPD材の磁気特性を改善してPB材相当の磁気特性のものに格上げすること、またPC材に関しても更なる磁気特性の改善ならびにより高い感度と周波数の用途に対応できる材料を開発することにある。
上記目的の実現に向けた研究において、発明者らは、次のような要旨構成のとおりのFe−Ni 系パーマロイ合金が好ましいことを知見し、本発明に想到した。
即ち、本発明はNi:35〜40mass%、C:0.015mass%以下、Si:1.0mass%以下、Mn:1.0mass%以下、P:0.01mass%以下、S:0.005mass%以下、O:0.006mass%以下およびAl:0.02mass%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなるFe−Ni系パーマロイ合金であって、下記のNi偏析量CNiSが0.15mass%以下、円相当直径0.1μm以上の非金属介在物の量が20個/mm以下、最大透磁率μm=50000以上、初透磁率μ=10000以上、保磁力Hc=0.05[Oe]以下の磁気特性を示す冷延材もしくは熱延材からなることを特徴とするFe−Ni 系パーマロイ合金である。
Nis=Ni成分分析値(mass%)×CiNis(c.p.s)/CiNiave.(c.p.s.)
CiNis:X線強度の標準偏差(c.p.s.)
CiNiave.:全X線強度の平均強度(c.p.s.)
また、本発明は、Ni:70〜85mass%、C:0.015mass%以下、Si:1.0mass%以下、Mn:1.0mass%以下、P:0.01mass%以下、S:0.005mass%以下、O:0.006mass%以下およびAl:0.02mass%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなるFe−Ni系パーマロイ合金であって、下記のNi偏析量CNisが0.15mass%以下、円相当直径0.1μm以上の非金属介在物の量が20個/mm以下、最大透磁率μm=400000以上、初透磁率μ=200000以上、保磁力Hc=0.006[Oe]以下の磁気特性を示す冷延材もしくは熱延材からなることを特徴とするFe−Ni 系パーマロイ合金である。
Nis=Ni成分分析値(mass%) ×CiNis(c.P.s)/CiNiave.(c.p.s.)
CiNis:X線強度の標準偏差(c.p.s.)
CiNiave.:全X線強度の平均強度(c.p.s.)
なお、本発明にかかる合金は、上記の構成成分に加えてさらに、Mo、Cu、CoおよびNbのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上をそれぞれ15mass%以下、かつ合計で20mass%以下の範囲内で添加してなるものが好ましい。
また、本発明の合金においては、Ni偏析量CNisが0.10mass%以下、円相当直径0.1μm以上の非金属介在物の量が10個/以下であることが好ましい。
なお、本発明にかかる上記合金は、これを製造するに当たっては、連続鋳造時に、電磁攪拌を加えることなく連続鋳造し、得られる連続鋳造スラブの鋳造組織が等軸晶の面積割合が1%以下であるパーマロイ合金用鋳造スラブを用いることが好ましい。
なお、上記連続鋳造スラブは、熱間圧延に先立ち、その連続鋳造スラブを、1100℃〜1375℃の温度で、下記のNi拡散距離DNiが39以上となる条件で均質化熱処理を行うことが好ましく、さらに、熱間圧延工程の後は必要に応じて冷間圧延を行って製品とする。
Ni=(D・t)1/2/μm
D:拡散係数、D=D0×exp(−Q/RT)
:振動数項=1.63×10/μm・s−1
Q:Ni拡散の活性化エネルギー=2.79×10/J・mol−1
R: 気体定数=8.31/J・mol−1・K−1
T:温度/K
t:焼鈍時間/s
また、本発明の合金は、熱間圧延工程に続き冷間圧延工程を経て製造することが好ましく、上記冷間圧延工程後、さらに1100℃〜1200℃の磁気熱処理を施すことが好ましく、そして上記磁気熱処理については、水素雰囲気下で行うことが好ましい。
なお、ここにいう冷間圧延工程は、通常行われる焼鈍、BA、酸洗などの工程も含むこともある。
以上説明したように本発明によれば、磁気特性が従来レベルを超えて飛躍的に優れたFe−Ni系パーマロイ合金を得ることができ、とくに時計用ステ−タや電磁レンズのポールピースなどに用いられるPB材代替となるPD材、そしてより優れた磁気特性とより高い感度ならびに周波数特性を示すPC材を、それぞれ得ることができる。
Ni偏析量の測定方法を説明する図である。 鋳造スラブの断面模式図である。
発明者らは多くの実験を行なった結果、上述した課題の解決には次のような手段の採用が有効であることを知見し、本発明を開発した。
すなわち、本発明は、Ni:35〜40mass%または70〜85mass%、C:0.015mass%以下、Si:1.0mass%以下、Mn:0.01〜1.0mass%、P:0.01mass%以下、S:0.005mass%以下、O:0.0060mass%以下およびAl: 0.001〜0.02mass%を含み、更に必要に応じてその他にMo、Cu、CoおよびNbを1種または2種以上をそれぞれ1〜15mass%、かつ合計で20mass%以下の範囲内で含み、残部はFeおよび不可避的不純物よりなる合金を連続鋳造法により、等軸晶の面積割合が1%以下の連続鋳造スラブとし、その連続鋳造スラブを均質化熱処理したのち、そのスラブを表面手入れしたのち、熱間圧延を施すことにより、Ni偏析量CNisを0.15mass%以下、好ましくは0.12mass%以下、より好ましくは0.10mass%以下の合金としたものである。
本発明において、特にNi偏析量に着目した理由は、このNiは、構成成分中で最も主要な成分であり、かつ該合金中での拡散速度が遅く、このNiが均質化律速となるためである。
本発明においては、所望のNi偏析量に抑えるために、連続鋳造スラブに対し、高温長時間の均質化熱処理を行う。なお、スラブに対して均質化熱処理を施すことなく熱間圧延を行った場合の、熱延材の一般的なNi偏析量は0.4%程度である。
ところで、発明者らの研究によると、上記の連続鋳造スラブを、下記の温度、時間の条件を充足する均質化熱処理を行った場合には、当初予期した偏析量以下の材料を得ることができることがわかった。即ち、本発明者らは種々の実験により、下記式(1)で示されるNiの拡散距離DNiの値(D・t)1/2値が39以上で、かつ熱処理温度Tが1100℃〜1375℃の範囲内の条件で行われる均質化熱処理を施すことにより、熱間圧延後の熱延材のNi偏析量を0.15mass%に軽減できることを見いだした。
Ni拡散距離DNi=(D・t)1/2/μm (1)
拡散係数D=D0×exp(−Q/RT)
0:振動数項=1.63×10/μm・s−1
Q :Ni拡散の活性化エネルギー=2.79×10/J・mol−1
R :気体定数=8.31/J・mol−1・K−1
T:温度/K
t:焼鈍時間/s
上記(1)式において、(D・t)1/2値は、Ni偏析の軽減度合いを表わす指標であり、高温、長時間になるほど値が大きくなり、それに従い偏析は軽減していく。
なお、Ni偏析の程度を表す指標としては、EPMA(X線マイクロアナライザー)の線分析により得られたNi濃度分布データの標準偏差を求め、これをNi偏析量とした。
上記均質化熱処理において、温度が1100℃未満では処理時間が長時間となり実用的でなく、一方1375℃を超えると酸化ロスによる歩留まりの低下や加熱脆化割れの危険性が生じる。従って、本発明では熱処理温度を1100℃〜1375℃の範囲としたのである。
本発明においては、かかる合金中に含まれる非金属介在物にも着目し、それの大きさと数を規定することにした。即ち、直径0.1μm以上の非金属介在物の割合を20個/mm以下、好ましくは15個/mm、より好ましくは10個/mm以下に制御することにしたのである。非金属介在物の分布を制御する方法としては、例えば、真空溶解による精錬やC脱酸等の高清浄化技術を適用することが有利に適合する。
板断面のNi偏析量CNis(mass%)は、板断面を常法に従い鏡面研磨し、その後、表1に示す条件にてEPMA(X線マイクロアナライザー)分析し、図1に示すところに従い、下記式(2)に基づいて算出したものである。なお、走査距離は、ほぼ板厚全長とした。
Nis(mass%)=Ni成分分析値(mass%)×CNis(c.p.s.)/CiNiave.(c.p.s.) …(2)
CiNis:板断面のX線強度の標準偏差(c.p.s.)
CiNiave.:板断面の全X線強度の平均強度(c.p.s.)
Figure 2011068998
上記のNi成分分析値(mass%)とは、素材に含まれるNi含有量であり、化学的あるいは物理的方法により分析する値である。
非金属介在物個数の測定は、以下に示す方法で行った。初めに、製品表面を機械研磨したのちバフ研磨まで仕上げ、その後、研磨面を非水溶媒(アセチルアセトン10v/v%+テトラメチルアンモニウムクロライド1w/v%+メタノール溶液)中で定電位電界(SPEED法)を行う。この時の電解条件は、電界電位100mVで10C(クーロン)/cmにて実施した。観察は走査型電子顕微鏡(SEM)にて、1mmの面積で円相当直径0.1μm以上の非金属介在物をカウントしたものである。なお、円相当直径とは、ここの介在物の面積を真円に換算した場合の直径をいう。
以上説明したところから明らかなように、本発明の特徴は、成分組成の大幅な変更を伴うことなしに、合金の特性を飛躍的に向上させた点にある。このことは、次のように考えることができる。即ち、合金の軟磁気特性を支配する要因には種々のものがあるが、例えば、結晶粒の大きさや結晶方位、不純物成分、非金属介在物、空孔などはよく知られている。ところで、けい素鋼板などでは、結晶方位を制御することにより、特定方向の軟磁気特性を飛躍的に向上させて交流トランス等の電力効率を著しく改善させることが知られている。
これに対し、本発明では、これまで考慮されたことのなかった、特にNiの偏析に着目してこれを制御することにより、Fe−Ni系パーマロイ合金の磁気特性を大幅に改善できることを見出し、またそのための適正な製造条件を見出した。
即ち、本発明は、成分偏析の中でもとくに拡散速度の遅いNiの偏析を制御することで、合金特性をコントロールすることとしたのである。ただし、種々検討した結果、特性を望ましいレベルにまで改善するためには、同時に、非金属介在物の制御や結晶粒径の制御をも併せて行うことが有効であることもわかった。
かかる非金属介在物の制御は、真空溶解や脱酸方法の適正化により酸化物や硫化物の生成元素を低減することにより行う。一方、結晶粒の制御(粗大化)は、成分偏析の軽減とMnSやCaS等の硫化物や酸化物などの非金属介在物量を低減することで実現できる。この意味において、非金属介在物の制御については、介在物自体を低減することによる磁気特性の改善の他、結晶粒の制御による磁気特性の改善という2つの点から有効である。
これらの制御因子については、それぞれの合金成分によっても影響度が異なり、例えばPD材、PB材では、粒径と偏析の影響が大きく、一方、PC材では非金属介在物と成分偏析の影響がそれぞれ大きくなる。
さて、本発明の作用効果を実現する上で不可欠となるNi偏析低減の方法としては、高温長時間の拡散熱処理が有効であることは上述したとおりであるが、それだけでは不十分であることがわかった。即ち、発明者らの研究によると、Niの偏析は、凝固組織のデンドライトアーム間隔と密接な関連があり、デンドライトアーム間隔が小さい方がNi偏析の軽減に有利であることがわかった。この意味において、普通造塊材に比べると連続鋳造材では、デンドライトアーム間隔が1/5〜1/10と非常に小さいため連続鋳造材を利用した場合には、小さなエネルギーでNi偏析を軽減することができることが判明した。
本発明に係る合金は、上述した結晶粒径や非金属介在物の量や形態を満足しているものについて、これらのNi偏析量の大きさを0.15mass%以下とすることにより、従来合金に比べて透磁率は2〜5倍、保磁力は1/2〜1/7程度とすることができ、そしてその改善効果はNi偏析量が小さくなるに従い高くなる。
その結果として、本発明では、PB材代替品としてのPD材、またより高い磁気特性を有するPC材を提供できるようになる。
PB材の代替となるPD材(35〜40mass%Ni)に要求される特性としては次のような特性を示すものが好ましい実施形態である。
1.高透磁率であること:少なくとも最大透磁率μm=50000以上、初透磁率μ=10000以上、
2.保磁力が小さいこと:少なくとも保磁力Hc=0.05[Oe]以下、
3.高周波特性が優れていること:例えば板厚0.35mm1kHzでの実効透磁率μ=3000以上(もともと高周波特性に関してはPD材は電気抵抗値が高いためPB材とPD材とでは差が小さいという特徴がある)
また、PC材(70〜85mass%Ni)の特性の向上に関しては、透磁率のより一層の向上と保磁力の低減を図ることである。目標とする数値としては、最大透磁率μm=400000以上、初透磁率μ=200000以上、保磁力Hc=0.006[Oe]程度以下である。
次に、本発明にかかる合金の成分組成を上述した範囲に限定した理由について説明する。
(1) C:0.015mass%以下;Cは、0.015mass%を超えるとカーバイドが生成して結晶の成長を抑制するため、軟磁気特性を悪化させる元素である。このため、Cは、0.015mass%以下とする。
(2) Si:1.0mass%以下;Siは、脱酸成分の一つとして添加されるが、1.0mass%を超えた場合にはシリケート系の酸化物を生成し、MnSなどの硫化物の生成起点となる。生成したMnSは軟磁気特性に対して有害であり、磁壁移動の障壁となるためできるだけ少ない方が望ましい。このため、Siは、1.0mass%以下に限定する。
(3) Mn:1.0mass%以下;Mnは、脱酸成分として添加されるが1.0mass%を超えて含有していると、Siと同様にMnSの生成を促して軟磁気特性を悪化させる。しかし、一方で、PC材などでは、磁気特性に対しては規則格子の生成をコントロールする働きがあり、適量の添加が望ましい。このため、Mnは、1.0mass%以下、好ましくは0.01〜1.0mass%の範囲に規定することとした。
(4) P:0.01mass%以下;Pは、過剰に含有すると粒界、粒内にリン化物として析出し、軟磁気特性を悪化させるため、Pは0.01mass%以下に限定する。
(5) S:0.005mass%以下;Sは、その量が0.005mass%を超えると硫化物系介在物を生じ易くMnSやCaSとなって分散する。とくに、これらの硫化物は直径が0.1μm〜数μm程度の大きさのものであり、パーマロイ合金の場合は、磁壁の厚みとほぼ一致するため磁壁移動に対して有害となり、軟磁気特性を悪化させるため、Sは0.005mass%以下とする。
(6) Al:0.02mass%以下;Alは、重要な脱酸成分であり、添加量が少ない場合には脱酸が不十分であり非金属介在物の量が増加するのに加え、Mn、Siの影響により硫化物の形態がMnSとなりやすく粒成長が抑制される。一方、0.02mass%より多くなると、磁歪定数や磁気異方性定数が高くなり、軟磁気特性を悪化させる。このためAlの適正な添加範囲としては、0.02mass%以下、好ましくは0.001〜0.02mass%とする。
(7) O:0.0060mass%以下;Oは、脱酸により低減されて最終的に鋼中に残留するものであるが、鋼中に固溶して残留するOと、非金属介在物等の酸化物として残留するOとに分かれる。Oの量が多くなると非金属介在物の量が必然的に増え、磁気特性に悪影響を及ぼすことが知られているが、同時にSの存在形態に影響してくる。即ち、残留するOが多い場合、脱酸が不十分となり、硫化物がMnSとして存在しやすくなり磁壁の移動や粒成長を阻害する。このことからOは0.0060mass%以下とする。
(8) Mo:15mass%以下;Moは、PCの磁気特性を実用的な製造条件で得るために有効な成分であり、結晶磁気異方性や磁歪に影響する規則格子の生成条件を制御する働きを有する。規則格子は磁気熱処理後の冷却条件に影響を受け、Moを含まないものでは非常に早い冷却速度が必要になるが、Moをある程度含有させることにより、工業上実用的な冷却条件で最大の特性を得ることができる。しかし、多すぎると、最適冷却速度が遅くなりすぎたり、Feの含有量が少なくなり、飽和磁束密度が少なくなる。このため、Moの量は、1〜15mass%の範囲が好ましい。
(9) Cu:15mass%以下;Cuは、Moと同様、主にPC材の規則格子の生成条件を制御する働きを有するが、Moの効果に対してCuは冷却速度の影響を少なくするように作用して磁気特性を安定化させる。また、このCuの適量の添加は、電気抵抗を高めることから交流下での磁気特性を向上させることもわかっている。しかしながら、このCuの量が多すぎると、Feの含有量が少なくなり、飽和磁束密度が少なくなる。このため、Cuの量は15mass%以下、とくに1〜15mass%の範囲が好ましい。
(10) Co:15mass%以下;Coは、磁束密度を高め、同時に適量添加により透磁率を向上させる働きをもつ。しかしながら、このCoの量が多すぎると、透磁率を低下させると同時にFeの含有量が少なくなり、飽和磁束密度が少なくなる。このため、Coの量は15mass%以下、とくに1〜15mass%の範囲が好ましい。
(11) Nb:15mass%以下;Nbは、磁気特性に対する効果は少ないが材料の硬度を高め耐摩耗性を向上させることから、磁気ヘッドなどの用途には欠かせない成分である。また、同時にモールド成形などによる磁気劣化を低減するためにも有効である。しかしながら、この成分の量が多すぎるとFeの含有量が少なくなり飽和磁束密度が少なくなる。このためNbの量は、15mass%以下、好ましくは1〜15mass%の範囲とする。
次に、本発明にかかるFe−Ni系パーマロイ合金の製造方法について説明する。
初めに、上記成分組成の合金を溶製したのち連続鋳造法により連続鋳造スラブとする。このとき、電磁攪拌を行うことなく連続鋳造を行う。次いで、このように得られた連続鋳造スラブに対して均質化熱処理を行い、その後スラブの表面手入れを行ってから、熱間圧延を施す。このようにして得られた熱延材は、上述したNi偏析量CNisを0.15mass%以下にすることができる。
上記均質化熱処理の条件としては、上記式(1)で示されるNi拡散距離の値DNi(D・t)1/2値が39以上となる条件で、かつ熱処理温度T=1100℃〜1375℃の範囲内で行うことが適当である。
均質化熱処理を施したスラブは、熱間圧延を経てさらに冷間圧延と焼鈍を数回繰り返したのち製品とすることが好ましい。製品の厚みは用途によりまちまちであるが一般に、高周波特性が要求される巻鉄心などの用途では0.1mm以下の積層薄板が用いられ、磁気ヨーク、トランス、シールド機等では0.2〜1.0mm程度が多く用いられている。
熱間圧延に供する上記スラブとしては、図2(a)に示すように、スラブの断面の面積割合(等軸晶の面積/スラブの面積×100)にして1%以下の等軸晶をもつものを用いる。その理由は、Ni偏析量の軽減がより容易となるからである。図2(b)に示すような等軸晶の多いもの(20mass%)は、Ni偏析の軽減はより難しいものとなる。本発明で用いるスラブについて、電磁攪拌を使用しないで連続鋳造したスラブを用いることが好ましい理由は、連続鋳造スラブは、比較的凝固速度が速く等軸晶が少ない。また、電磁攪拌を使用しない方が、凝固過程で生じる柱状デンドライト組織の生長が阻害されず、等軸晶がさらに少なくなるからである。なお、図2は鋳造スラブの鋳造方向に対して垂直断面の模式図である。なお、同じような等軸晶の少ないスラブであれば、普通造塊により製造したものも使用可能である。
表1に、この実施例で用いた試験材の成分組成を示す。この試験材は、PC材相当のものは10トンを真空溶解し、一方、PD材およびPB材相当のものは60トンを大気溶解したのち連続鋳造し、それぞれの得られた連続鋳造スラブについて、均質化処理を施したものと施さないものをそれぞれ製造し、ついで常法に従って熱間圧延を行い、引き続き冷間圧延と焼鈍を繰り返して数%の調質圧延を施して0.35mm厚みの製品としたものである。その後、得られた試験材は水素中で1100℃で3hrの磁気熱処理を行い、直流磁化特性と交流磁化特性(実効透磁率μ)を測定した。Ni偏析は、熱延板および、冷間圧延板、さらに磁気熱処理板の板厚み方向の断面において測定した。熱延板のNi偏析の程度と冷間圧延板の磁気熱処理後のNi偏析の程度はほぼ同等であった。表2、表3のNi偏析量は、磁気熱処理板の測定値である。
その結果、表2、表3に示すとおり、本発明の合金では、等軸晶率が1%以下の鋳造スラブを用いたこともあってNi偏析量が小さく、そのために直流磁化特性、交流磁化特性とも大幅に改善されていることが確認された。なお、直流磁気特性の測定は、JIS45φ×33φリング試験片を1次、2次側とも50ターン巻線し反転磁場20[Oe]により測定した。交流磁化特性は70ターン巻線し、電流0.5mAで1kHzの周波数で実効透磁率μを測定した。なお初透磁率μに関してはJIS C2531の定義に従い磁界の強さがそれぞれPB材は0.01[Oe]、PCに関しては0.005[Oe]で測定した。
以上の試験結果から、PD材(36Ni)ではPB材に匹敵する透磁率と保磁力を有し、実効透磁率は電気抵抗が高いことからPB材より更に向上していることを確認した。またPB材では、PC材に匹敵する透磁率と保磁力を得ることが確認でき、PC材に比べると飽和磁束密度が高くなっていた。また、PC材については、透磁率のさらなる向上と保持力の低下が図られていることが確認できた。
Figure 2011068998
Figure 2011068998
Figure 2011068998
本発明は、磁気ヘッドや磁気シールド材、トランスコアの鉄心等の材料として用いられる。

Claims (5)

  1. Ni:35〜40mass%、C:0.015mass%以下、Si:1.0mass%以下、Mn:1.0mass%以下、P:0.01mass%以下、S:0.005mass%以下、O:0.006mass%以下およびAl:0.02mass%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなるFe−Ni系パーマロイ合金であって、下記のNi偏析量CNiSが0.15mass%以下、円相当直径0.1μm以上の非金属介在物の量が20個/mm以下、最大透磁率μm=50000以上、初透磁率μ=10000以上、保磁力Hc=0.05[Oe]以下の磁気特性を示す冷延材もしくは熱延材からなることを特徴とするFe−Ni 系パーマロイ合金。
    Nis=Ni成分分析値(mass%)×CiNis(c.p.s)/CiNiave.(c.p.s.)
    CiNis:X線強度の標準偏差(c.p.s.)
    CiNiave.:全X線強度の平均強度(c.p.s.)
  2. Ni:70〜85mass%、C:0.015mass%以下、Si:1.0mass%以下、Mn:1.0mass%以下、P:0.01mass%以下、S:0.005mass%以下、O:0.006mass%以下およびAl:0.02mass%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなるFe−Ni系パーマロイ合金であって、下記のNi偏析量CNisが0.15mass%以下、円相当直径0.1μm以上の非金属介在物の量が20個/mm以下、最大透磁率μm=400000以上、初透磁率μ=200000以上、保磁力Hc=0.006[Oe]以下の磁気特性を示す冷延材もしくは熱延材からなることを特徴とするFe−Ni 系パーマロイ合金。
    Nis=Ni成分分析値(mass%) ×CiNis(c.P.s)/CiNiave.(c.p.s.)
    CiNis:X線強度の標準偏差(c.p.s.)
    CiNiave.:全X線強度の平均強度(c.p.s.)
  3. 請求項1または2に記載の合金において、Ni偏析量CNisが0.10mass%以下であることを特徴とするFe−Ni系パーマロイ合金。
  4. 合金の上記構成成分に加えてさらに、Mo、Cu、CoおよびNbのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を、それぞれ15mass%以下かつ合計で20mass%以下の範囲内で添加したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のFe−Ni系パーマロイ合金。
  5. 円相当直径0.1μm以上の非金属介在物の量が10個/mm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のFe−Ni系パーマロイ合金。
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