JPH09102408A - 磁性箔とその製造方法及びそれを用いた高周波用磁心 - Google Patents

磁性箔とその製造方法及びそれを用いた高周波用磁心

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JPH09102408A
JPH09102408A JP7287886A JP28788695A JPH09102408A JP H09102408 A JPH09102408 A JP H09102408A JP 7287886 A JP7287886 A JP 7287886A JP 28788695 A JP28788695 A JP 28788695A JP H09102408 A JPH09102408 A JP H09102408A
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Hiroshi Tsuge
植 弘 志 柘
Toshio Mukai
井 俊 夫 向
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高磁束密度を有する高周波対応の磁性材料を
提供する。 【解決手段】 重量百分率で、1%以上10%以下のA
lを含有し、厚さ5μm以上150μm以下のFe−A
l合金箔であって、箔を構成する結晶粒の50%以上
が、板面方位が(110)で圧延方向が[001]のゴ
ス方位の結晶粒からなる磁性箔。また冷間圧延条件と中
間焼鈍条件を特定し、仕上げ焼鈍を1000℃以上13
00℃以下の温度で非酸化性の雰囲気中にて行う磁性箔
の製造方法。上記磁性箔を用いて作製した高周波用磁
心。これにより、高磁束密度を有するFe−Al合金磁
性箔の提供が可能になり、トランス、インダクタ等高周
波磁性部品に適用することにより高性能化が達成され
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、トランス、インダ
クタ(リアクトル又はチョークコイル)等磁性部品の磁
心用の磁性箔とその製造方法、及びそれを用いた高周波
用磁心に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、高周波では酸化物系のソフトフェ
ライトが磁心損失が小さい故に使われてきたが、近年の
電子機器の小型化要求に伴い、高周波で利用される鉄心
材料にも磁束密度の高いものが要求されるようになって
きた。例えば、チョークコイルなどの直流重畳下の高周
波で使用される磁性材料には、磁束の飽和を避けるため
特に磁束密度の高いものが要求されることが多く、この
ような用途には金属系の磁性材料が使われている。
【0003】磁性材料のエネルギー損失(W)は、次式
のように表すことができる。すなわち、ヒステリシス損
失(Wh )と渦電流損失(We )からなり、ヒステリシ
ス損失は周波数(f)に比例し、渦電流損失は周波数の
二乗に比例する。 W=Wh +We =Ah f+Be 2 渦電流損失の項の係数であるBe は、
【数1】 と書くことができ、磁性材料の高電気抵抗率化、薄手化
により渦電流損失の低減が可能である。
【0004】Fe−3%Si合金を主成分とする方向性
珪素鋼板としては、二次再結晶法によるゴス方位(圧延
面:(110)、圧延方向:[001])の実現によ
り、圧延方向に1.8〜1.9Tに及ぶ高い磁束密度を
有するものが得られている。しかしながら、従来の珪素
鋼板は板厚が200〜400μmのものに限られてお
り、用途は商用の低周波数で駆動される電力用トランス
に限られている。高周波で使用可能にするには、渦電流
損失に基づく鉄損を低くする必要があり、そのためには
材料の電気抵抗率を上げるか板厚を薄くする必要があ
る。
【0005】方向性珪素鋼板の結晶配向にはMnS、A
lN等のインヒビターを使った二次再結晶が使われてい
る。しかし、板厚が薄くなると、再結晶焼鈍中にインヒ
ビターが分解して表面から抜けるために、完全な二次再
結晶組織が得にくいという問題がある。高周波用途に板
厚の薄い方向性珪素鋼板を得る試みは、1949年にM.
F.Littmannによって初めて開示されている(US特許第
2473156号明細書)。この方法は、通常の二次再
結晶によって作製されたゴス方位の方向性珪素鋼板を出
発材料とし、再度それに圧下率で60〜90%の圧延を
施して10〜200μmの箔とし、さらに再度再結晶焼
鈍を施す方法である。この方法により、微細結晶粒から
なるゴス方位のFe−Si箔が得られることが知られて
いるが、工程が長すぎてコスト高になるという欠点があ
る。
【0006】薄手の珪素鋼板の結晶配向には、結晶面に
よる表面エネルギー差を駆動力とする二次再結晶を利用
することが有効とされている。清浄表面を有する珪素鋼
板を真空等の清浄雰囲気中で1200℃程度の温度で焼
鈍することにより、ゴス方位の集合組織が得られること
が知られている(例えば、J.L.Walter, J.Appl.Phys.3
6,1213(1965) )。最近になって、熱延板を出発材料と
してさらに配向度の高いゴス方位のFe−Si合金箔を
得る試みが報告されている(特開平5−186829号
公報、特開平5−186830号公報、特開平5−18
6831号公報、特開平7−76734号公報、及び荒
井賢一他、日本応用磁気学会誌19,433(199
5))。
【0007】これらの一連の特許公報や文献には、熱延
板に特定条件の中間焼鈍を挾んで2回又は3回の特定条
件の冷間圧延を施して箔状となし、1000〜1300
℃で焼鈍を施すことにより高磁束密度を得る方法が開示
されている。この焼鈍により、表面エネルギーを駆動力
とする二次再結晶が起こり、集積度の高いゴス方位が得
られ、その結果圧延方向に高い磁束密度が得られるとし
ている。上記特許公報はFe−Si系について結晶配向
の方法を開示したものであるが、その技術内容において
は、特にAlの添加量を0.01%以下に限定すること
を狙いとしている。その理由は、Alは酸素との親和力
が強い元素であるために、熱処理中に表面に酸化物を形
成し、表面エネルギーによる結晶粒の成長を阻害するた
めとしている。
【0008】鉄に固溶する元素で合金の電気抵抗率を高
める効果の最も大きいものはSiであり、次いでAlが
ある。溶質元素の増大による電気抵抗率の増加率は、F
e−Si系とFe−Al系とではほぼ同じである。Fe
−Si合金はSiが3.5wt%を超えると冷間圧延が
困難となるが、Fe−Al合金ではAlが10wt%ま
で冷間加工が可能であるという特徴を持つ。電気抵抗率
は溶質元素の増大にほぼ比例して増大し、Fe−10%
Al合金ではFe−3%Si合金の約2倍の96μΩc
mとなる。したがって、高周波で低鉄損の用途には、よ
り高電気抵抗率を有する箔の製造が可能なFe−Al系
が有利である。
【0009】この特徴に注目して、無方向性ではあるが
高周波用の磁心材料として関心を集めたことがある(J.
F.Nachman and W.J.Buehler, J.Appl.Phys.34,1325(196
3))。しかし、従来、Fe−Al系についての研究は少
なく、結晶配向については再結晶によって(100)配
向を得やすいとの報告が数例あるのみである(K.Foster
and D.Pavlovic, J.Appl.Phys.34,1325(1963)、又は、
C.Talowski,Th.Waeckerle and B.Cornut,IEEE Trans.Ma
g.30,4842(1994) )。Fe−Al系で結晶配向により高
磁束密度のものが得られるならば、高周波用の磁性材料
として有望と思われるが、現在までにFe−Al系で二
次再結晶によりゴス方位を得たという公知文献はない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、高磁束密度
を有し、高周波で利用が可能であるFe−Al系磁性材
料とその製造方法及びそれを用いた高周波用磁心を提供
することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、重量百分率で
1%以上10%以下のAlを含有し、厚さ5μm以上1
50μm以下のFe−Al合金箔であって、箔を構成す
る結晶粒の50%以上が、板面方位が(110)で圧延
方向が[001]のゴス方位の結晶粒からなることを特
徴とする磁性箔である。本発明の磁性箔は、特に厚さ5
0μm以下において高い磁束密度を示す。また、本発明
は、重量百分率で1%以上10%以下のAlを含有し、
残部はFe及び不可避的不純物からなる合金鋳片に熱間
圧延を施して厚さ1mm以上5mm以下の鋼帯となし、
中間焼鈍を間に挾む2回以上の冷間圧延を施して厚さ5
μm以上150μm以下の圧延箔となし、その後この圧
延箔に仕上げ焼鈍を行う工程で、中間焼鈍を700℃以
上1000℃以下の温度で行い、各回の冷間圧延を60
%以上90%以下の圧下率で行い、仕上げ焼鈍を100
0℃以上1300℃以下の温度で非酸化性雰囲気中にて
行うことを特徴とする磁性箔の製造方法である。冷間圧
延前の熱延板に800℃以上1200℃以下の熱延板焼
鈍を施すことにより磁束密度のより高い磁性箔を得るこ
とがである。さらに、本発明は、重量百分率で1%以上
10%以下のAlを含有し、厚さ5μm以上150μm
以下のFe−Al合金箔であって、箔を構成する結晶粒
の50%以上が、板面方位が(110)で圧延方向が
[001]のゴス方位の結晶粒からなる磁性箔を用い、
圧延方向が周方向となるように巻き回したことを特徴と
する高周波用磁心である。本発明の高周波用磁心は特に
重量百分率で3%以上7%以下のAlを含有していると
きに低損失特性を示す。
【0012】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を詳細に説明す
る。表面エネルギーを駆動力とする二次再結晶では、一
次再結晶から二次再結晶に移行する過程でどの方位の結
晶粒が成長するかという二次再結晶核の選択性に表面エ
ネルギーの効果が現れ、表面エネルギーの小さい結晶粒
が優先的に成長を始め、表面エネルギーの大きい結晶粒
が浸食されていく。鉄系合金では、清浄表面が実現され
ていれば、(110)面の表面エネルギーが最も低く、
その次に(100)面の表面エネルギーが低いとされ
る。微量酸素が存在する条件下では、(100)面の表
面エネルギーの方が(110)面のそれよりも低くなる
場合が生じ、現象が複雑になる。前述のように、従来、
Alは熱処理中に箔表面に酸化物を形成し、結晶粒の成
長を阻害すると思われていた。
【0013】しかし、本発明者らは、高濃度のAlを含
むFe−Al基の合金では、そのような酸化物は観察さ
れず、むしろ表面エネルギーを駆動力とする二次再結晶
が起こりやすいことを見い出したのである。より詳しく
は、Fe−Al系合金における二次再結晶後の組織は、
ゴス方位(圧延面:(110)、圧延方向:[00
1])の結晶粒とキューブ方位(圧延面:(100)、
圧延方向:[001])の結晶粒が混在し、その比率が
製造条件によって変化することを実験において観察し
た。一連の実験の中で、本発明者らは、合金中の不純物
を制御し、箔にするまでの圧延条件と焼鈍条件を特定す
ることにより、箔を構成する結晶粒の50%以上をゴス
方位とすることができることを見い出した。さらに、本
発明者らは、Fe−Al合金箔において箔の厚さが薄い
ほど表面エネルギーの効果が大きく、より完全なゴス方
位の結晶粒からなる集合組織が得られるという全く新し
い知見を獲得するに至った。
【0014】図1は、仕上げ焼鈍前の最終圧延の圧下率
をほぼ一定にし、Fe−Al合金箔の厚さのみを変え
て、二次再結晶後の圧延方向の磁束密度B8 (印可磁場
800A/mにおける磁束密度)を測定したものであ
る。集合組織の変化を反映して、磁束密度は箔の厚さが
薄くなるほど大きくなっている。また、Fe−Al合金
箔はAlの含有量が10wt%まで冷間圧延加工が可能
であるために電気抵抗率の高い箔が得られる。本発明者
らは、Fe−Al合金箔を用いて磁心を作製し、高周波
においてFe−Si合金箔磁心よりも低損失の磁心が得
られることを見い出した。
【0015】本発明においては、合金中の不純物の量は
できるだけ少ないことが望ましく、特に酸素の量は30
ppm以下にするのが望ましい。酸素濃度が30ppm
を越えると、キューブ方位が出やすくなり、体積百分率
で50%以上のゴス方位を得るのに後述の仕上げ焼鈍に
おいて長時間を必要とする。
【0016】本発明においては、Alの含有量を重量百
分率で1%以上10%以下に限定する。これは、Alの
含有量が1%未満では、900℃以上の温度でγ/α変
態点が現れ、本発明のプロセスが適用できないからであ
る。一方、Alの含有量が10%を越えると、合金が硬
くなり、冷間圧延ができなくなる。本発明の高周波用磁
心にとってより望ましいAlの含有量の範囲は、重量百
分率で3%以上7%以下である。この範囲では合金の電
気抵抗率が高いために低損失の磁心が作製でき、同時に
磁歪定数の値や加工性に関しても磁心に適した範囲であ
るからである。また、合金の工業的製造過程で不可避的
に混入するSi及びMnはその量が1%以下であるなら
ば、本発明の作用を妨げない。
【0017】次に、本発明の製造工程を、溶解・鋳造、
熱間圧延、冷間圧延/中間焼鈍、仕上げ焼鈍、および巻
き回の順に説明する。 (a)溶解・鋳造 合金鋳片の製造は、少規模では高周波加熱による真空溶
解炉を、中規模では電気炉を、大規模では転炉をそれぞ
れ用いて行うことができる。いずれの方法においても、
通常の精練手法により溶鋼の酸素量を十分に減らした上
で、Alの添加を行うことにより酸素含有量の低い鋳片
を得ることができる。
【0018】(b)熱間圧延/熱延板焼鈍 合金鋳片の熱間圧延の条件は特に限定しないが、鋳片の
加熱温度は1100〜1300℃、圧延仕上げ温度は6
00〜900℃が好ましい。熱延板の板厚は、通常1m
m以上5mm以下である。仕上げ温度が低い場合には、
800℃以上1200℃以下の温度で熱延板焼鈍を行う
と、最終の磁性箔の特性向上につながる。この時の焼鈍
温度が800℃未満では十分な再結晶が起こらず、12
00℃超では結晶粒が粗大化し引き続く冷間圧延時に割
れが発生しやすい。
【0019】(c)冷間圧延/中間焼鈍 熱延板は、表面酸化層を除去した後に冷間圧延に供す
る。本発明においては、箔の厚さ、それを実現する冷間
圧延の圧下率と圧延間の中間焼鈍の条件をそれぞれ下記
のように限定する。まず、箔の厚さは、5μm以上15
0μm以下に限定する。箔の厚さは薄いほど好ましい
が、下限の5μmは、現在の圧延技術ではそれ未満の厚
さの箔は工業的には製造できないからである。上限の1
50μmは、その厚さを越えると、二次再結晶によるゴ
ス方位粒が十分に得られず、実用的に意味のある磁束密
度が得られないことから決まる。より好ましい箔の厚さ
の範囲は、5μm以上50μm以下である。前述のよう
に、箔の配向度は厚さが薄いほど高くなり、50μm以
下で特に高い磁束密度を得ることができる。
【0020】厚さ1〜5mmの熱延板から一回の冷間圧
延によって所定の厚さまで落とすと、圧延率が90%を
越え、引き続く再結晶によって高配向の磁性箔を得るこ
とができない。本発明においては、仕上げ焼鈍前に最適
な集合組織を得るために、中間焼鈍を挾んで二回以上の
圧延を施して、最終板厚にする。中間焼鈍は、700℃
以上1000℃以下の温度で行い、各回の冷間圧延の圧
下率を60%以上90%以下とする必要がある。中間焼
鈍温度が700℃未満では短時間で再結晶を行わせるこ
とができない。また、1000℃を越えると結晶粒が粗
大化し、引き続く圧延再結晶で最適な再結晶集合組織を
得ることができない。圧延と再結晶の繰り返しを行う場
合、圧下率が60%以上90%以下の範囲においての
み、ゴス方位の(110)[001]成分を一次再結晶
集合組織として保持できる。特に、仕上げ焼鈍前の最終
圧延の圧下率が90%を越えると、(100)面を表面
に平行に持つ結晶粒が優先的に成長するようになる。こ
れらのことから、各回の圧下率はすべて上記の範囲に限
定される。
【0021】(d)仕上げ焼鈍 上記条件で最終圧延が施された圧延箔に対して、仕上げ
焼鈍を行う。この仕上げ焼鈍は表面エネルギーを駆動力
とする二次再結晶を行わせるためであり、焼鈍温度は1
000℃以上1300℃以下にする必要がある。温度が
1000℃未満では二次再結晶が起こり難く、1300
℃超では高温であるために熱効率の点で実生産上好まし
くない。昇温速度は特に限定しない。昇温中に一次再結
晶が起こり、到達温度近傍で二次再結晶が起こるような
条件であれば良く、10〜1000℃/分程度の許容範
囲がある。到達温度での保持時間は、温度によって異な
るが、通常1分以上20時間以下が好適である。焼鈍分
離材としてAl2 3 粉末等の酸化物の粉末を利用して
も良い。表面エネルギーを駆動力とする二次再結晶を行
わせるためには、箔表面の酸化を抑制しなければならな
い。焼鈍雰囲気としては、酸素濃度の低いAr又はN2
雰囲気、あるいはAr又はN2 とH2 との混合雰囲気、
又は真空などの非酸化性雰囲気を用いることができる。
【0022】(e)巻き回 上記の箔を巻き回し、磁心を作製する。スリッター等に
より箔を圧延方向に沿って切断し、所定の幅の帯状の箔
とする。この箔を巻き回し、磁心とする。箔を巻き回す
る際に層間の電気的な絶縁が必要であり、箔の表面に絶
縁被覆材を塗布し、絶縁処理をする。絶縁被覆材とし
て、Al2 3 等の酸化物の粉末を利用しても良い。こ
の切断加工及び巻き回は、仕上げ焼鈍の工程の前に行っ
ても良い。仕上げ焼鈍を行い、二次再結晶した箔を巻き
回した場合には加工による歪みを取るための歪み取り焼
鈍を行う。歪み取り焼鈍の条件は特に限定しないが、熱
処理温度は600〜1000℃が好ましい。
【0023】
【実施例】以下に、本発明を実施例により説明する。実施例1 重量百分率でFe−5%Alの組成の鋳片を真空溶解に
より作製した。合金の化学分析結果を、表1に示す。S
iを除いてすべての元素が0.003%以下に抑えられ
ている。特に、OとNは0.001%以下、Sは0.0
003%以下になっている。鋳片を1200℃に加熱
後、熱間圧延を施し、板厚3.8mmに仕上げた。仕上
げ温度は700℃とした。熱延板に、中間焼鈍を挾んで
二回以上の冷間圧延を施し、板厚10〜200μmの圧
延箔を作製した。表2にその具体的な作製条件を示す。
最終圧延の圧下率は75〜80%とほぼ一定にし、その
前段の圧延は圧下率で60〜80%の範囲で行った。中
間焼鈍はAr雰囲気中で行い、すべて900℃で10分
とした。作製した圧延箔に、酸素濃度0.01ppm以
下のAr雰囲気で1200℃で1時間の仕上げ焼鈍を施
した。この時の昇温速度は20℃/分とした。
【0024】仕上げ焼鈍を施した箔の磁束密度を測定し
た。図1に、厚さ12μmと50μmの箔の磁束密度B
8 (印加磁場800A/mにおける磁束密度)の測定結
果を示す。測定試料は長さ120mm、幅25.4mm
で、単板試験機で50Hzの磁界印加の下に室温で測定
した。図1では昇温中の配向の変化を調べるために、9
00〜1200℃の温度で10分保持した後に急冷した
箔の磁束密度を図の左側に示し、到達温度1200℃で
の保持時間の効果を調べるために1時間保持後の箔の磁
束密度を図の右側に示した。
【0025】図1から分るように、1100℃から12
00℃にかけて二次再結晶が始まり、急激に磁束密度が
向上している。1200℃で1時間保持後の到達磁束密
度は、板厚が薄い方が大きい。
【0026】また、種々の板厚が圧延箔について、12
00℃で1時間保持後の磁束密度を測定した結果を、図
2に示す。板厚が200μmの時の磁束密度は、一次再
結晶終了時の磁束密度の値とほぼ同じである。
【0027】箔の再結晶集合組織を調べたところ、10
0μm以下の箔ではすべて二次再結晶が起こっていた。
図3に、板厚が50μmの時の金属組織写真を示す。写
真中の白いコントラストの部分が二次再結晶によって成
長したゴス方位粒であり、黒いコントラストの部分がキ
ューブ方位粒である。
【0028】また、X線回析強度から、ゴス方位の結晶
粒とキューブ方位の結晶粒の割合を求めた。その結果
を、図4に示す。二次再結晶の起こっている100μm
以下の箔については、面積率で80%以上がゴス方位の
結晶粒からなることが確認される。板厚が200μmの
時には、金属組織写真の観察結果から、二次再結晶によ
るゴス配向は観察されず、ほぼ一次結晶状態のままであ
った。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】実施例2 実施例1に用いたFe−5%Al合金と同じ鋳片を用い
て、厚さ1.3mm、2.5mm及び3.8mmの熱延
板を用意した。これらの熱延板を用いて、磁性箔の特性
に及ぼす冷間圧延条件の影響を調べた。一回圧延、二回
圧延、三回圧延の三通りの方法で圧延し、箔の最終厚さ
はすべて50μmとした。圧延の詳細条件、及び仕上げ
焼鈍後の箔におけるゴス方位粒の割合と箔の磁束密度の
値を、表3に示す。ここで、圧延間の中間焼鈍条件及び
仕上げ焼鈍条件は実施例1と同じにした。表3に示すよ
うに、圧下率90%超では、ゴス方位粒の割合は50%
未満であり、磁束密度としても高い値は得られない。中
間焼鈍をはさんで2回以上の圧延を施して、最終圧延圧
下率を90%以下にすることにより、ゴス方位粒の割合
が50%以上になり、高い磁束密度が得られることが分
る。
【0032】
【表3】
【0033】実施例3 実施例1と同じ合金を用いて、最終仕上げ焼鈍雰囲気の
効果を調べた。厚さ3.8mmの熱延板に表2の試料N
o. 5に示したのと同じ条件で冷間圧延を行い、最終板
厚50μmの圧延箔を作製した。この圧延箔に、仕上げ
焼鈍の雰囲気を純水素にして1200℃、1時間の焼鈍
を施した結果、高純度Ar中焼鈍の場合と同じく二次再
結晶が起こり、ゴス方位の結晶粒からなる磁性箔が得ら
れた。箔の磁束密度B8 を測定した結果、1.67Tと
高い値が得られた。
【0034】実施例4 実施例1と同じ熱延板を用いて、冷間圧延前の熱延板焼
鈍の効果を調べた。熱延板焼鈍は、1100℃で10分
行った。最終板厚50μmの圧延箔を、表2の試料No.
5に示したのと同じ条件で作製し、実施例1と同じくA
r中で1200℃、1時間の仕上げ焼鈍を施した。箔の
磁束密度B8 を測定した結果、熱延板焼鈍をしないもの
に比べ、0.02T高い1.64Tが得られた。
【0035】実施例5 実施例1と同じ合金の磁性箔を用いて作製した磁心を高
周波で駆動したときの特性を調べた。厚さ3.8mmの
熱延板を、表2の試料No. 5に示した条件で冷間圧延を
行い、最終板厚50μmの圧延箔を作製した。比較材と
してFe−3%Si合金を用いた。Fe−3%Si合金
の化学分析結果を、表4に示す。Fe−3%Si箔はF
e−5%Al箔と溶解から最終焼鈍までの工程を全く同
様にして作製した。
【0036】箔の厚さが50μmのFe−5%AlとF
e−3%Siにスリット加工を施し、幅16mm、長さ
1.2mのリボン状の箔とした。この箔にAl2 3
末を焼鈍分離材として塗布し、仕上げ焼鈍を施した。仕
上げ焼鈍条件は、実施例1と同様にした。箔の層間の電
気的な絶縁のためにAl2 3 粉末を絶縁被覆材として
塗布し、箔を巻き回することにより内径28mm、外径
32mm、高さ16mmの巻き磁心とした。その後、8
00℃、10分の歪み取り焼鈍をAr雰囲気中で行っ
た。この巻き磁心をケースに入れて巻線を施し、B−H
アナライザーを用いて磁束密度が200mTのときの鉄
損の測定を行った。その結果を、図5に示す。図5から
Fe−5%Al合金の方が周波数の高い領域で低損失で
あり、例えば20kHzではFe−3%Siに比べ損失
が約3割低減できることが分る。
【0037】
【表4】
【0038】
【発明の効果】本発明により、高磁束密度を有するFe
−Al合金磁性箔の提供が可能になり、それをトラン
ス、インダクタ等高周波磁性部品に適用することにより
高性能化が達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明磁性箔の仕上げ焼鈍時における昇温中の
各温度の磁束密度と到達温度1200℃で1時間保持後
の磁束密度を示す。
【図2】本発明の圧延箔の厚さに対する磁束密度の変化
を示す。
【図3】本発明の厚さ50μmの圧延箔の仕上げ焼鈍後
の二次再結晶金属組織写真を示す。
【図4】本発明磁性箔のゴス方位粒とキューブ方位粒の
割合の板厚依存性を示す。
【図5】厚さ50μmのFe−5%Al箔とFe−3%
Si箔を巻き回して磁心としたときの損失の周波数依存
性を示す。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量百分率で、1%以上10%以下のAl
    を含有し、厚さ5μm以上150μm以下のFe−Al
    合金箔であって、箔を構成する結晶粒の50%以上が、
    板面方位が(110)で圧延方向が[001]のゴス方
    位の結晶粒からなることを特徴とする磁性箔。
  2. 【請求項2】箔の厚さが5μm以上50μm以下である
    ことを特徴とする請求項1に記載の磁性箔。
  3. 【請求項3】重量百分率で、1%以上10%以下のAl
    を含有し、残部はFe及び不可避的不純物からなる合金
    鋳片に熱間圧延を施して厚さ1mm以上5mm以下の鋼
    帯とし、中間焼鈍を間に挾む2回以上の冷間圧延を施し
    て厚さ5μm以上150μm以下の圧延箔とし、その後
    この圧延箔に仕上げ焼鈍を行う工程で、中間焼鈍を70
    0℃以上1000℃以下の温度で行い、各回の冷間圧延
    を60%以上90%以下の圧下率で行い、仕上げ焼鈍を
    1000℃以上1300℃以下の温度で非酸化性雰囲気
    中にて行うことを特徴とする、磁性箔の製造方法。
  4. 【請求項4】冷間圧延前の熱延板に800℃以上120
    0℃以下の熱延板焼鈍を施すことを特徴とする請求項3
    に記載の磁性箔の製造方法。
  5. 【請求項5】請求項1または2に記載の磁性箔を圧延方
    向が周方向となるように巻き回した高周波用磁心。
  6. 【請求項6】重量百分率で、3%以上7%以下のAlを
    含有する請求項1または2に記載の磁性箔を圧延方向が
    周方向となるように巻き回した高周波用磁心。
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JP2010150615A (ja) * 2008-12-25 2010-07-08 Kahei Okanda 表面加工された合金の製造方法及び表面加工された合金
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