JP4795574B2 - 制振ゴム組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えばケーブルダンパなどの制振部材を形成するのに適した制振ゴム組成物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
斜張橋や吊り橋などの橋梁においてケーブルの振動を減衰するために使用されるケーブルダンパなどの制振部材は、一般にゴムの組成物を加硫することで形成される。
制振部材のもとになるゴム組成物(制振ゴム組成物)としては、例えば天然ゴムやイソプレンゴムを主体とする基材ゴムに、補強剤としてのシリカと、カップリング剤としてのアルコキシシランとを配合したものなどが知られている(特開平10−81787号公報)。
【0003】
上記制振ゴム組成物を加硫して得られる制振部材は、ケーブルダンパなどとして適切な弾性率と、優れた振動減衰性能とを有するとともに、これらの特性の温度依存性が小さく、広い温度域で安定した性能を示すという利点がある。
制振部材の特性の好適な範囲は、制振部材の形状、構造等によって異なるが、例えば橋梁用のケーブルダンパとして一般的なせん断型のダンパ構造においては、測定温度+20℃での、10〜20%せん断変形時のせん断弾性率が0.98〜3.43MPaであるのが好ましい。また振動減衰能力としては、測定温度+20℃での損失正接tanδが0.45以上、特に0.5以上であるのが好ましい。また特性の温度依存性としては、例えば測定温度−10℃での12.5%せん断変形時のせん断弾性率G[−10℃]と、測定温度+20℃での12.5%せん断変形時のせん断弾性率G[+20℃]との比G[−10℃]/G[+20℃]が3以下であるのが好ましい。
【0004】
前記の組成物から形成される制振部材は、これらの特性を全て満足しうるものである。
しかし上記各成分を配合し、混練して制振ゴム組成物を製造する過程でシリカとアルコキシシランとが反応して、揮発性、可燃性などを有するアルコールが発生して、作業所内の環境を汚染したり、あるいは引火、爆発の危険性を生じたりしやすいという問題がある。
【0005】
また上記の反応は、混練条件や混練時の環境条件などによって進行する度合いが大きく異なるため、制振部材の特性が大きく変動しやすいという問題もある。このため、制振部材の品質を安定させるのが難しい。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
補強剤としてカーボンブラックを用いたゴム組成物は古くから知られているが、かかるゴム組成物を加硫して制振部材を形成しても、シリカとアルコキシシランとを用いたものに比べて振動減衰性能が十分でないという問題がある。
そこで、カーボンブラックの配合割合を増加させると振動減衰性能が向上するという知見に基づいて、カーボンブラックの配合割合をこれまでよりも増加させることが検討されたが、配合割合を増加させるほど、弾性率が上昇して制振部材が硬くなる傾向がある。
【0007】
とくに前記の、基材ゴムとして天然ゴムやイソプレンゴムを用いた系では、カーボンブラックの配合割合を、制振部材として良好な振動減衰性能が得られるようにこれまでよりも多めに設定して制振部材を形成すると、その弾性率が、制振部材として適切な範囲をはるかに超えてしまい、当該制振部材が著しく硬いものとなる。このため、制振部材として使い物にならないという問題を生じる。
ゴム軟化剤を添加すれば、制振部材をある程度は柔軟化することができる。しかし、組成物の混練中にスリップを引き起こしやすくなるため、作業者の技能の程度によって、あるいは混練時の条件等が僅かに変わるだけで、その品質が大きく変動しやすい。特にカーボンブラックの分散の度合いが大きく変化しやすく、品質の安定した制振ゴム組成物を、生産性よく製造できないという別の問題を生じる。
【0008】
さらにシリカとカーボンブラックとを併用することも検討されたが、形成される制振部材は、特にケーブルダンパ用としては振動減衰性能が未だ十分でなく、しかもシリカによる加硫遅れの問題もある。
この発明の目的は、カーボンブラックとゴム軟化剤とを使用しているにも拘らず、シリカ系と同等の良好な性能を有する制振部材を製造することができる、新規な制振ゴム組成物を、混練中のスリップの発生をより確実に防止して、品質を安定させつつ、生産性よく製造するための製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
発明者は、上記の目的を達成するために、制振ゴム組成物を構成する各成分について種々、検討を行った。その結果、基材ゴムとしてスチレンブタジエン共重合ゴム(以下「SBR」とする)を用いると、カーボンブラックとゴム軟化剤とを併用した系において、常温(+20℃)付近で優れた振動減衰性能を発揮するとともに適切な弾性率を有し、しかもこれらの特性の温度依存性が比較的小さい制振部材が得られることを見出した。そこで上記各成分の最適な配合割合などについてさらに検討した。
【0011】
すなわちスチレンブタジエン共重合ゴムを50重量%以上の割合で含有する基材ゴム100重量部に、カーボンブラックを100重量部以上、ゴム軟化剤を80重量部以上の割合で配合すれば、前記SBRの機能と、当該SBRと組み合わせるカーボンブラックおよびゴム軟化剤の配合割合との相乗作用によって、広い温度域で、安定して良好な性能を有する制振部材を製造することが可能となる。
【0012】
上記の制振ゴム組成物を製造するための、この発明の製造方法は、ゴム軟化剤の一部で油展した固形の基材ゴムと、ゴム軟化剤の残部の少なくとも一部を吸油させたカーボンブラックと、さらにゴム軟化剤の残部がある場合は当該残部のゴム軟化剤とを混練することを特徴とするものである。
かかるこの発明の製造方法では、ゴム軟化剤の一部を基材ゴムの油展に用いることで固形化し、またゴム軟化剤の残部の少なくとも一部、好ましくは全部をカーボンブラックに吸油させることで固形化して混練に供している。このため、例えさらにゴム軟化剤の残部があり、これをそのまま混練に供したとしても、混練系の大部分は固形であるため、特に混練初期にスリップを引き起こしにくくなる。
【0013】
したがってこの発明の製造方法によれば、作業者の技能や混練時の条件等に拘らず、前記制振ゴム組成物を、品質を安定させつつより効率的に、生産性よく製造することが可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明を説明する。
〈制振ゴム組成物〉
この発明の製造方法によって製造される制振ゴム組成物は、前記のようにSBRを50重量%以上の割合で含有する基材ゴム100重量部に、カーボンブラックを100重量部以上、ゴム軟化剤を80重量部以上の割合で配合してなるものである。
【0015】
このうち基材ゴムにおけるSBRの含有割合が50重量%以上に限定されるのは、この範囲未満では、前述したSBRの機能が十分に発揮されないため、広い温度域で安定して良好な性能を有する制振部材を形成できないからである。
なおSBRの機能をさらに十分に発揮させるためには、SBRの含有割合は、上記の範囲内でもより多いのが好ましく、特に基材ゴムの全量がSBR、すなわちSBRの含有割合が100重量%であるのが好ましい。
【0016】
SBRと併用してもよい他のゴムとしては、例えば天然ゴム、アクリロニトリルブタジエン共重合ゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、臭素化パラメチルスチレン−イソブチレン共重合ゴム、エチレンプロピレン共重合ゴム、エチレンプロピレンジエン共重合ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、多硫化ゴム、エピクロルヒドリンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム等の1種または2種以上が挙げられる。
【0017】
またカーボンブラックの配合割合が、基材ゴム100重量部に対して100重量部以上に限定されるのは、この範囲未満では、SBRを主体とする基材ゴムを十分に補強して、制振部材に高い振動減衰性能を付与できないからである。
なお振動減衰性能をさらに向上することを考慮すると、基材ゴム100重量部に対するカーボンブラックの配合割合は、上記の範囲内でも特に110重量部以上であるのが好ましく、120重量部以上であるのがさらに好ましい。
【0018】
ただし制振部材が硬くなりすぎないように、その弾性率を好適な範囲に維持することを考慮すると、基材ゴム100重量部に対するカーボンブラックの配合割合は、上記の範囲内でも特に200重量部以下であるのが好ましく、180重量部以下であるのがより好ましく、150重量部以下であるのがさらに好ましい。
カーボンブラックとしては、ゴムの補強剤として知られる種々のカーボンブラックを、いずれも使用することができる。しかし特に、ケーブルダンパ等の制振部材に、広い温度域で安定して、良好な性能を付与することを考慮すると、1次粒子径が20nm以下で、かつDBP吸油量が110ml/100g以上であるカーボンブラックを用いるのが好ましい。
【0019】
カーボンブラックの配合量を多くするほど、制振部材は、先に述べたように振動減衰性能が向上するものの、弾性率が高くなって硬くなる傾向を示す。またカーボンブラックの粒子径を小さくするほど、制振部材の振動減衰性能を向上できるものの、カーボンブラックの、基材ゴムへの分散性が低下する傾向を示し、分散性が低すぎると、却って制振部材の振動減衰性能を低下させるおそれがある。
そこで制振部材の振動減衰性能と弾性率とのバランスとを考慮して、基材ゴムとしてSBRを用いた系で、カーボンブラックの配合割合を前記の範囲内でもできるだけ小さい値に維持して弾性率の上昇を防止しつつ、振動減衰性能を向上することを考慮すると、上記のようにカーボンブラックの1次粒子径は20nm以下で、かつDBP吸油量は110ml/100g以上であるのが好ましい。
【0020】
なおカーボンブラックの1次粒子径の下限値、およびDBP吸油量の上限値は特に限定されない。現在は、1次粒子径が10nmより少し上で、かつDBP吸油量が130ml/100gより少し下のものが、入手可能な最も細かいカーボンブラックであるが、今後それより細かなものが入手可能となった際には、そのようなカーボンブラックも使用可能であり、かかるカーボンブラックを使用することでさらなる性能向上が期待できる。
【0021】
カーボンブラックの具体例としては、例えばASTM D1765−82aに規定されたN−110(タイプ名SAF、1次粒子径11〜19nm、DBP吸油量113ml/100g)、N−220(タイプ名ISAF、1次粒子径20〜22nm、DBP吸油量106〜117ml/100g)、N−339(1次粒子径24〜26nm、DBP吸油量118〜123ml/100g)、N−285(タイプ名ISAF−HS、1次粒子径22〜24nm、DBP吸油量124〜129ml/100g)、N−347(タイプ名HAF−HS、1次粒子径27〜30nm、DBP吸油量126〜128ml/100g)、N−550(タイプ名FEF、1次粒子径39〜50nm、DBP吸油量105〜127ml/100g)、N−660(タイプ名GPF、1次粒子径62〜80nm、DBP吸油量80〜92ml/100g)、N−770(タイプ名SRF、1次粒子径70〜75nm、DBP吸油量63ml/100g)などが挙げられる。中でも特に、1次粒子径が20nm以下で、かつDBP吸油量が110ml/100g以上の範囲に入るN−110が好ましい。
【0022】
またこの発明において、ゴム軟化剤の配合割合が、前記のように基材ゴム100重量部に対して80重量部以上に限定されるのは、この範囲未満では、カーボンブラックで補強したことによる弾性率の上昇を抑えて、制振部材に良好な柔軟性を付与できないからである。
なお混練時にスリップが生じて混練できなくなったり、あるいはカーボンブラックの分散が不十分になったりするのを防止するとともに、制振部材の弾性率が低くなりすぎて、振動減衰性能が低下するのを防止することを考慮すると、ゴム軟化剤の配合割合は、上記の範囲内でも特に150重量部以下であるのが好ましい。
【0023】
ゴム軟化剤としては、例えば鉱物油系軟化剤としてアロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、パラフィン系プロセスオイル、植物油系軟化剤としてひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油などが挙げられる。またさらにサブ、脂肪酸および脂肪酸塩などもゴム軟化剤として使用できる。
これらはそれぞれ単独で使用されるほか、2種以上を併用することもできる。中でも特に基材ゴムとの相溶性が良く、しかも安価なアロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルが好適に使用される。
【0024】
制振ゴム組成物には、上記各成分に加えて、従来同様に加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤、老化防止剤、充てん剤、粘着性付与剤、スコーチ防止剤その他、種々の添加剤を配合することができる。
このうち加硫剤としては、例えば硫黄、有機含硫黄化合物、有機過酸化物等が挙げられる。
また加硫促進剤としては、例えばスルフェンアミド系、グアニジン系、チウラム系、ジチオカーバミン酸系、チアゾール系、チオウレア系などの有機促進剤が挙げられる。
【0025】
加硫促進助剤としては、例えばステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸などの脂肪酸や、あるいは亜鉛華などの金属酸化物などが挙げられる。
加硫遅延剤としては、例えば芳香族有機酸やニトロソ化合物などが挙げられる。
老化防止剤としては、例えばイミダゾール類、アミン類、フェノール類などが挙げられる。
【0026】
充てん剤としては、例えば炭酸カルシウム、クレー、硫酸バリウム、珪藻土などが挙げられる。
粘着性付与剤としては、例えばクマロン・インデン樹脂、芳香族系樹脂、芳香族・脂肪族混合系樹脂、ロジン系樹脂、シクロペンタジエン系樹脂などが挙げられる。
さらにスコーチ防止剤としては、有機酸系、ニトロソ化合物系などのスコーチ防止剤が挙げられる。特にニトロソ化合物系であるN−(シクロヘキシルチオ)フタルイミドは強力な早期加硫防止剤であって、スルフェンアミド系またはチアゾール系の加硫促進剤との併用によって加工安全性をコントロールできるという利点を有する。
【0027】
上記以外にも、制振ゴム組成物にはたとえば分散剤、溶剤などを適宜配合してもよい。
〈制振ゴム組成物の製造方法〉
上記制振ゴム組成物は、前述したゴム軟化剤によるスリップを防止しつつ、均一な特性を有する制振ゴム組成物を効率よく製造するため、前述したようにゴム軟化剤の一部で油展した固形の基材ゴムと、ゴム軟化剤の残部の少なくとも一部を吸油させたカーボンブラックと、さらにゴム軟化剤の残部がある場合は当該残部のゴム軟化剤とを混練する、この発明の製造方法によって製造される。
【0028】
上記の製造方法においては、基材ゴム100重量部に対して30重量部以下、好ましくは20重量部以下、より好ましくは10重量部以下程度の少量であれば、ゴム軟化剤単独で添加しても、スリップを防止して、均一な特性を有する制振ゴム組成物を効率よく製造することは可能である。ただし基材ゴムを油展した後の、ゴム軟化剤の残部の全量をカーボンブラックに吸油させて、ゴム軟化剤単独での添加を極力なくするのが、混練時のスリップを防止する上で最も好ましい。
【0029】
混練には、従来同様に、種々の容量を有するニーダなどを使用すればよい。かくして製造される制振ゴム組成物は、前述したように橋梁用として一般的なせん断型のダンパ構造のケーブルダンパなど、従来公知の種々の、制振部材の成形原料として使用することができる。制振部材を製造するに際しては、従来同様に、制振部材の形状に対応した型に所定量の制振ゴム組成物を充てんして、加圧下で加熱して基材ゴムを加硫させればよい。
【0030】
【実施例】
以下にこの発明を、実施例、比較例に基づいて説明する。
実施例1
前出のカーボンブラックN−110と、アロマ系プロセスオイル〔出光興産(株)製のダイアナプロセスオイルX−140〕とを重量比で4:6の割合で配合し、混練機を用いて混練してカーボンブラックN−110にアロマ系プロセスオイルを吸油させることで混練物を得た。
【0031】
次に、油展SBR〔住友化学(株)製のSBR1712、SBR100重量部に対するゴム軟化剤の油展量37.5重量部〕137.5重量部と、上記の混練物138重量部と、80重量部のカーボンブラックN−110と、下記の各添加剤とを、3Lニーダを用いて混練して制振ゴム組成物を得た。
(添加剤) (重量部)
酸化亜鉛 5
老化防止剤6PPD 2
老化防止剤FR 2
ステアリン酸 1
加硫促進剤(スルフェンアミド系) 1
加硫促進剤(グアニジン系) 0.5
N−(シクロヘキシルチオ)フタルイミド 0.3
制振ゴム組成物における、SBR100重量部に対するカーボンブラックN−110の合計の配合割合は135.2重量部、ゴム軟化剤の合計の配合割合は120.3重量部であった。
【0032】
実施例2、3、比較例1
カーボンブラックN−110とアロマ系プロセスオイルとの混練物、およびカーボンブラックN−110を、それぞれ表1に示す配合割合で配合したこと以外は実施例1と同様にして制振ゴム組成物を得た。
実施例4
カーボンブラックN−110とアロマ系プロセスオイルとの混練物、およびカーボンブラックN−110を、それぞれ表1に示す配合割合で配合するとともに、さらにアロマ系プロセスオイルを単独で、表1に示す配合割合で配合したこと以外は実施例1と同様にして制振ゴム組成物を得た。
【0033】
【表1】
【0034】
従来例1
天然ゴム100重量部と、シリカ135重量部と、トリエトキシフェニルシラン〔信越化学(株)製のKBE103〕20重量部と、下記の各添加剤とを、3Lニーダを用いて混練してシリカ系の制振ゴム組成物を得た。
(添加剤) (重量部)
酸化亜鉛 5
老化防止剤6PPD 2
老化防止剤FR 2
ステアリン酸 1
加硫促進剤(スルフェンアミド系) 1
加硫促進剤(チウラム系) 0.7
N−(シクロヘキシルチオ)フタルイミド 0.3
上記各実施例、比較例の制振ゴム組成物について、以下の試験を行って、その特性を評価した。
【0035】
〈せん断動的粘弾性試験〉
上記各実施例、比較例の制振ゴム組成物に、それぞれ基材ゴム100重量部あたり1.5重量部の硫黄を加えて、ロールで練りこんだ後、所定の型を用いて直径25mm(=25×10-3m)×厚み5mm(=5×10-3m)の円板状にプレス加硫するとともに、このプレス加硫と同時に、図1(a)(b)に示すように円板10の上下両面に、それぞれ測定装置への取付用の、板状の金具11、12を加硫接着して、制振部材としての、せん断型のダンパ構造を有するケーブルダンパのモデルを作製した。加硫の条件は160℃×25分間とした。
【0036】
次いでこのモデルのせん断動的粘弾性特性を、1.5トン動的試験機〔東京衡機(株)製〕を用いて測定した。
すなわち+20℃または−10℃の恒温槽中に3時間以上、収容して温度を安定化したケーブルダンパのモデルを、それぞれ同じ温度の恒温槽中にセットした上記1.5トン動的試験機に、2枚の金具11、12を介して取り付けた。
次に、下側の固定金具12を固定した状態で、上側の固定金具11を、図中白矢印で示す水平方向に繰り返し変位させて、円板10をせん断変形させた。
【0037】
せん断変形は、上側の固定金具11の、水平方向の変位量d(m)と、円板10の高さt(=5×10-3m)とから、下記式(i):
【0038】
【数1】
【0039】
によって求められるせん断変形D(%)の最大値が12.5%となる水平変位をサイン波で4サイクル繰り返し行った。
そして3サイクル目の水平変位における、せん断変形D(%)と水平荷重との関係を測定した。
次に、上記のように測定して得た、図2に示す、せん断変形D(%)と水平荷重との関係を示すヒステリシスループ曲線から、下記式(ii):
【0040】
【数2】
【0041】
により、等価減衰定数heを求めた。なお式(ii)中のΔWは、変位1サイクルあたりの損失エネルギー(図2においてヒステリシスループ曲線で囲まれた全領域の面積)を示しWは、最大振幅に至るまでに蓄積された弾性歪みエネルギー(図2において斜線の領域の面積)を示す。また図2中のFは最大伸び時(この場合は伸びD=12.5%)の水平荷重を示す。さらに曲線Lは、所定の伸び時におけるヒステリシスループ曲線上のa点の水平荷重とc点の水平荷重との中間点(b点)を、伸びなし時(D=0%)から最大伸び時(D=12.5%)までの全範囲でプロットした曲線である。
【0042】
また上記ヒステリシスループ曲線のうち水平変位Dの最大値(=12.5%)における変位量d(m)と、この最大水平変位時の水平荷重F(N)とから、下記式(iii):
【0043】
【数3】
【0044】
により水平ばね定数Khを求め、この水平ばね定数Khと、円板10の高さt(=5×10-3m)と、円板10の水平方向の断面積A(=4.9×10-4m2)とから、下記式(iv):
【0045】
【数4】
【0046】
によりせん断弾性率Gを求めた。
また下記式(v):
【0047】
【数5】
【0048】
により損失正接tanδを求めた。
そして測定温度+20℃での12.5%せん断変形時のせん断弾性率G[+20℃]により、ケーブルダンパのモデルの柔軟性を評価した。すなわちせん断型のダンパ構造のケーブルダンパにおいては、前記のように測定温度+20℃での10〜20%せん断変形時のせん断弾性率が0.98〜3.43MPaであるのが好ましいことから、上記の測定結果がこの範囲に入るか否かによって、各モデルの柔軟性の良否を判定した。
【0049】
また測定温度+20℃での損失正接tanδの大小により、振動減衰性能を評価した。すなわちせん断型のダンパ構造のケーブルダンパにおいては、前記のように測定温度+20℃での損失正接tanδが0.45以上、特に0.5以上であるのが好ましいことから、上記の測定結果がこの範囲に入るか否かによって、各モデルの振動減衰性能の良否を判定した。
さらに測定温度+20℃での12.5%せん断変形時のせん断弾性率G[+20℃]と、測定温度−10℃での12.5%せん断変形時のせん断弾性率G[−10℃]との比G[−10℃]/G[+20℃]を求めて、ケーブルダンパのモデルの、特性の温度依存性を評価した。すなわちせん断型のダンパ構造のケーブルダンパにおいては、前記のように比G[−10℃]/G[+20℃]が3以下であるのが好ましいことから、計算結果がこの範囲に入るか否かによって、各モデルの特性の温度依存性の良否を判定した。
【0050】
〈製造作業性試験〉
各成分を混練して実施例、比較例の制振ゴム組成物を製造する際の作業性を、混練により均一な組成物が得られるのに要した時間の長短と、混練時におけるアルコール発生の有無とで評価した。
以上の結果を表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
表より、シリカとアルコキシシランとを用いた従来例1の制振ゴム組成物を用いると、良好な特性を有するケーブルダンパを形成できるものの、組成物の混練時にアルコールが発生することが確認された。
またカーボンブラックとゴム軟化剤とを用いた系のうち、カーボンブラックの配合割合が、基材ゴム100重量部に対して100重量部未満であった比較例1の制振ゴム組成物を用いると、ケーブルダンパの柔軟性は良好であるものの、振動減衰性能が不十分になることがわかった。
【0053】
これに対し各実施例の制振ゴム組成物を用いると、従来例1と同等の良好な特性を有するケーブルダンパを、組成物の混練時にアルコールを生じることなしに形成できることがわかった。また上記各実施例の制振ゴム組成物は、従来例1に比べて、より短い混練時間で製造できることもわかった。
実施例5
カーボンブラックN−110とアロマ系プロセスオイルとの混練物、およびカーボンブラックN−110を、それぞれ前記表1に示す配合割合で配合するとともに、さらにアロマ系プロセスオイルを単独で、表1に示す配合割合で配合したこと以外は実施例1と同様にして制振ゴム組成物を得た。
【0054】
比較例2
カーボンブラックN−110とアロマ系プロセスオイルとの混練物を配合せず、カーボンブラックN−110を、前記表1に示す配合割合で配合するとともに、アロマ系プロセスオイルを単独で、表1に示す配合割合で配合したこと以外は実施例1と同様にして制振ゴム組成物を得ようとした。しかし混練を60分間、継続しても均一な組成物が得られなかったので作業を断念した。
【0055】
上記実施例5について前記せん断動的粘弾性試験、および製造作業性試験を行った。結果を実施例1の結果とあわせて表3に示す。
【0056】
【表3】
【0057】
表より、比較例2では、前記のように混練を断念せざるをえなかった。これに対し、この発明にかかる製造方法を実施した実施例1、5ではともに均一な組成物を製造することができた。ただし両実施例を比較すると、アロマ系プロセスオイル単独の配合割合が小さい実施例1の方が、実施例5に比べて混練時間を短くできることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例、比較例の組成物を用いて形成した、制振部材としてのケーブルダンパのモデルを示す図であって、同図(a)は正面図、同図(b)は平面図である。
【図2】上記ケーブルダンパのモデルのせん断動的粘弾性特性を測定した際に得られる、せん断変形D(%)と水平荷重との関係を示すヒステリシスループ曲線を示すグラフである。
Claims (1)
- スチレンブタジエン共重合ゴムを50重量%以上の割合で含有する基材ゴム100重量部に、カーボンブラックを100重量部以上、ゴム軟化剤を80重量部以上の割合で配合した制振ゴム組成物を製造する方法であって、前記ゴム軟化剤の一部で油展した固形の基材ゴムと、ゴム軟化剤の残部の少なくとも一部を吸油させたカーボンブラックと、さらにゴム軟化剤の残部がある場合は当該残部のゴム軟化剤とを混練することを特徴とする制振ゴム組成物の製造方法。
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