JP4794925B2 - 複合構造体、酸素分離装置、及び化学反応装置 - Google Patents

複合構造体、酸素分離装置、及び化学反応装置 Download PDF

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本発明は、酸素の工業的選択透過・分離プロセス、あるいは炭化水素の部分酸化用隔膜リアクター等に応用される、金属部材とセラミックス部材とが、シール性を有しつつ接合されて構成された複合構造体、当該複合構造体を含んでなる酸素分離装置、及び化学反応装置に関するものである。
近年、イオン伝導材料を薄膜化し、これを用いて工業的に特定成分の分離や精製を行うプロセスは、著しく進歩・発展している。中でも、酸化物イオン伝導材料を用い、大気等の混合気体から酸素を選択的に透過させて分離・精製するプロセスは、医学用途のための小規模な酸素ポンプから、大規模な気体発生・精製プラントにまで適用が期待されている。また、最近では、酸化物イオン伝導材料の隔膜で酸素混合気体と炭化水素ガスとを隔絶し、酸素を選択的に透過させて炭化水素を部分酸化させる方法、所謂、隔膜リアクター等の化学反応装置への使用も検討されている。
この目的に利用できる酸化物イオン伝導性のセラミックス材料としては、酸素イオンのみを伝える酸化物イオン伝導体と、酸素イオンと電子又は正孔を同時に伝える酸化物イオン混合伝導体が知られている。中でも、酸化物イオン混合伝導体は、材料自体が電子又は正孔を伝えることができ、酸素イオンの移動を持続させるために必要な電荷の補償を、外部電流回路の形成をしなくても行えるので、酸素分離の用途には、より好適であると考えられている。即ち、酸化物イオン混合伝導体によって酸素分離を行うためには、この混合伝導体の両側の酸素ポテンシャルを異なるようにするだけでよい。この結果、酸素分圧の高い側から低い側に向かって酸素のみが混合伝導体を透過し、それ以外のガス成分は混合伝導体を透過することができず、酸素の選択的な透過・分離が行われる。
このような酸素の選択的透過・分離プロセス、あるいは隔膜リアクター等を実用化するためには、高い酸化物イオン伝導性を有する材料が必要である。その条件を満たす材料としてペロブスカイト型構造を有する酸化物イオン混合伝導体が検討されている。ペロブスカイト型構造は、一般式ABO3(A及びBは金属イオン)で表され、アニオンの酸素が12個配位するサイト(Aサイト)と、6個配位するサイト(Bサイト)にそれぞれカチオンが占有している結晶構造である。そして、上記の目的で検討されている材料の多くは、BサイトにCo又はFeを含んでいる。例えば、特許文献1に開示されている{LaxSr(1-x)}CoO3-α(x=0.1〜0.9、α=0〜0.5)、あるいは、特許文献2に開示されている{La(1-x)Srx}{Co(1-y)Fey}O3-δ(x=0.1〜1.0、y=0.05〜1.0、δ=0.5〜0)等の磁器組成物が、有力な候補材料として知られている。さらに、特許文献3においては、AxBax'yB’y'B’’y''3-z(AはIUPACによって採用される元素周期律表による1、2及び3族とf周期のランタノイド族からなる群から選択され、B、B’及びB’’がd周期の遷移金属から選択され、さらに0≦x≦1、0<x’≦1、0<y≦1、0≦y’≦1、0≦y’’≦1、x+x’=1、y+y’+y’’=1であり、zは組成物の電荷が中性であるときに与えられる数値である)と表される、極めて広い組成範囲の酸化物イオン輸送透過膜が提案され、その具体例としてLa0.2Ba0.8Co0.8Fe0.22.6等が示されている。
一方、酸素分離を行う際には、混合伝導体材料は800〜1000℃程度の温度で、1気圧以上の酸素分圧の高い環境に曝される。このため、従来のランタノイドやFeを含むことによってペロブスカイト型構造を安定化している材料では、その安定性は十分ではなく、酸素透過速度の低い別の結晶構造に変態してしまう問題が発生し易い。この問題を解決する材料として、特許文献4においては、{Ln1-aa}{BxB’yB’’z}O(3-δ)(ここで、LnはY又はランタノイド元素から選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせ。AはBa、Sr、Caの中から選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせ。BはCo、Fe、Cr、Gaの中からFe又はCoを必ず含んで選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせで、CrとGaのモル数の和が全B元素のモル数xに対し0%以上20%以下。B’はNb、Ta、Ti、Zrの中からNb又はTaを必ず含んで選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせで、TiとZrのモル数の和が全B’元素のモル数yに対し0%以上20%以下。B’’はCu、Ni、Zn、Li、Mgの中から選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせ。0.8≦a≦1、0<x、0<y≦0.5、0≦z≦0.2、0.98≦x+y+z≦1.02、δは電荷中性条件を満たすように決まる値。)と表される磁器組成物が提案されている。この材料は、Nb又はTaを含むことを特徴としており、ペロブスカイト型構造をより強力に安定化することと、高い酸素透過速度との両立を図っている。
ところで、セラミックスであるペロブスカイト型酸化物イオン混合伝導体を酸素分離に用いるに際しては、酸化物イオン混合伝導体を単体のバルクとして用いるのではなく、これを薄い緻密質連続層として多孔質体上に形成し、セラミックス複合体化することが想定されている(非特許文献1)。さらに、このセラミックス複合体は、特許文献5等に開示されているように、フランジ状の金属部材に接合して複合構造体とし、さらに、この金属部材を酸素分離用プラントに結合して使用される。このようなセラミックス複合体と金属部材の接合は、シール性が確保されていることが必須である。また、これに加えて、熱応力等によるセラミックス複合体の破損を防ぐために、セラミックス複合体と金属部材の温度による寸法変化、いわゆる熱膨張係数を整合させることが必要不可欠である。熱膨張係数に大きな差がある状態で、金属フランジと混合伝導体と接合して複合構造体とすると、酸素分離を行うために複合構造体に加熱・冷却の履歴を繰り返し与えていく中で、混合伝導体のセラミックス部にヒビを生じて、リークしてしまう問題が頻発し、信頼性に欠ける。
特開昭56−92103号公報 特開昭61−21717号公報 特開平6−206706号公報 特開2002−12472号公報 特開2002−349714号公報 寺岡他, 日本セラミックス協会学術論文誌, Vol.97, No.4, pp467-72 (1989)
本発明者らは、SUS310やインコロイ800等の金属材料でフランジを作製し、これら金属部材を酸化物イオン混合伝導体と接合し、長時間の酸素分離試験を行う中で、上記の金属部材には酸化スケールを生じ、時間と共に消耗していく問題のあることを見出した。長期間酸素分離試験に供した後の複合構造体の金属部材には、表面にスケールを生じて金属光沢を失うと共に、酸素分離試験装置内には金属部材から脱離したスケールが大量に残っていた。また、このスケールの生成と脱離は、酸素分離試験を行っている期間中、ずっと進行を続ける。このため、酸素分離試験をより長期間、より高温で実施することによって、金属部材の消耗は、より深刻になることも判った。一方、混合伝導体の酸素透過速度は温度と共に増大することから、より多くの酸素を分離して、酸素製造コストを低減する観点からは、酸素分離装置の運転温度は800℃〜1000℃程度の温度範囲内で、なるべく高温にできることが望ましい。しかしながら、実際の酸素分離装置の運転は、前述の酸素分離条件下における金属部材の消耗の問題があることから、金属の耐久性等から許容される、なるべく高い温度と連続運転期間が選択されることとなっている。一方、金属部材の酸素分離環境化におけるスケールの発生と、それによる消耗を抑えることができれば、酸素分離装置の運転温度を高温にして酸化物イオン混合伝導体の酸素透過速度を増大させ、なおかつ装置の連続運転期間も延ばすことが可能となる。これらの背景により、金属部材のスケールの発生を抑制し、耐久性を向上させることは、酸素の製造コストを低減するために、重要な技術的課題であった。
そこで、本発明の目的は、高温で長期間酸素分離装置を運転しても、酸化スケールの発生による消耗が少ない金属部材を有し、なおかつこの金属部材と整合性のよい熱膨張係数を有する酸化物イオン混合伝導体が接合された、高信頼性かつ酸素製造コストの低減に有効な、酸素分離用複合構造体、酸素分離装置、及び化学反応装置を提供することである。
本発明者らは上記課題の解決を目指し、様々な金属部材と様々な組成の混合伝導体の組み合わせを検討した。その過程で、銅合金の一種であるアルミニウム青銅が、高温で長期間酸素分離条件下に曝されても、酸化スケールの発生による消耗が少ないことを見出した。また、アルミニウム青銅の中でも、Alの含有量が高いほど酸素分離条件下での耐久性に優れ、十分に酸素分離複合体用の金属部材として使用に適することが判った。アルミニウム青銅の酸化スケールの発生は大変少なく、使用後の金属部材の表面も金属光沢を保っており、従来用いられてきた金属部材とは異なっている。これまで一般に銅合金は、ステンレスや耐熱合金等と比較して、使用可能な温度範囲が低温度域に限られると考えられてきた。このため、酸素分離装置等のように800℃〜900℃程度の高温で、しかも高酸素分圧下といった、苛酷な使用環境下で優れた特性を発揮することは、意外な発見であった。さらに本発明者らは、このアルミニウム青銅製の金属部材と整合する熱膨張係数を有し、なおかつ酸素分離特性に優れるペロブスカイト型混合伝導体の検討を行った。因みに、アルミニウム青銅は、大気中での熱膨張係数が、100〜850℃の間で24ppm/℃程度の材料である。なお、発明者らの示す熱膨張係数の実測値は、空気を十分にフローさせながら試料を一度1000℃まで加熱して30分程度保持し、その後1℃/分の速度で冷却し、この冷却過程での寸法変化から測定した100℃と850℃の間での値である。
アルミニウム青銅の熱膨張係数は、ステンレス等の耐熱合金と比較して大きいので、これに整合する熱膨張係数を有するペロブスカイト型酸化物イオン混合伝導体は、比較的選択の幅がある。しかしながら、酸素分離特性とのバランスを求めると、材料組成の範囲は限定された。検討の結果、アルミニウム青銅との組み合わせで、繰り返し熱履歴を与えてもリークの発生が極めて少なくて信頼性が大変高く、なおかつ酸素透過速度も高くて、透過速度の劣化が小さくて分離特性が安定な、酸化物イオン混合伝導体の組成範囲を見出した。さらに、実際に酸素分離管を作製し、アルミニウム青銅製のフランジと接合して複合構造体とし、酸素分離試験を行ったところ、この組み合わせで優れた複合構造体を作製できることを確認し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、上記の知見に基づくものであり、その要旨は次の通りである。
(1) 化学成分としてAlを8%以上含むアルミニウム青銅を含んでなる金属部材と、ペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物イオン混合伝導体を含んでなるセラミックス部材とが、シール性を有しつつ接合されて構成された複合構造体であって、該酸化物イオン混合伝導体を気孔率10%以上の多孔体としたときの大気中での熱膨張係数が、100〜850℃の間で23ppm/℃以上27ppm/℃以下であり、前記酸化物イオン混合伝導体の組成が下記の一般式(式1)で表されることを特徴とする複合構造体。
{Ln a Ba b 1-a-b }BαO (3- δ ) ・・・(式1)
(ここで、Lnは、Y又はランタノイド元素から選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせである。Aは、Sr又はCaから選ばれる1種又は2種の元素の組み合わせである。Bは、Cu、Ni、Zn、Li、Mg、Co、Fe、Cr、Ga、Nb、Ta、Ti又はZrの中から、Fe又はCoの中の少なくとも1種、及び、Nb又はTaの中の少なくとも1種を必ず含んで選ばれる、2種以上の元素の組み合わせである。但し、0≦a≦0.2、0.1≦b≦0.2、0.9≦α≦1.2、δは電荷中性条件を満たすように決まる値である。)
) 前記酸化物イオン混合伝導体の組成が下記の一般式(式2)で表されることを特徴とする(1)に記載の複合構造体。
{LnaBab1-a-b}{B1-x-yB’xB’’y}αO(3-δ)・・・(式2)
(ここで、Lnは、Y又はランタノイド元素から選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせである。Aは、Sr又はCaから選ばれる1種又は2種の元素の組み合わせである。Bは、Co、Fe、Cr又はGaの中から、Fe又はCoを必ず含んで選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせで、CrとGaのモル数の和が全B元素のモル数(1−x−y)に対し0%以上20%以下である。B'は、Nb、Ta、Ti又はZrの中から、Nb又はTaを必ず含んで選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせで、TiとZrのモル数の和が全B'元素のモル数xに対し0%以上20%以下である。B''は、Cu、Ni、Zn、Li又はMgの中から選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせである。但し、0≦a≦0.2、0.1≦b≦0.2、0.07<x≦0.5、0≦y≦0.15、0.9≦α≦1.2、δは電荷中性条件を満たすように決まる値である。)
) 前記酸化物イオン混合伝導体の組成が下記の一般式(式3)で表されることを特徴とする(1)に記載の複合構造体。
{LnaBab1-a-b}{B1-xB’x}αO(3-δ)・・・(式3)
(ここで、Lnは、Y又はランタノイド元素から選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせである。Aは、Sr又はCaから選ばれる1種又は2種の元素の組み合わせである。Bは、Co、Fe、Cr又はGaの中から、Fe又はCoを必ず含んで選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせで、CrとGaのモル数の和が全B元素のモル数(1−x)に対し0%以上20%以下である。B'は、Nb、Ta、Ti又はZrの中から、Nb又はTaを必ず含んで選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせで、TiとZrのモル数の和が全B'元素のモル数xに対し0%以上20%以下である。但し、0≦a≦0.2、0.1≦b≦0.2、0.07<x≦0.5、0.9≦α≦1.2、δは電荷中性条件を満たすように決まる値である。)
) アルミニウム青銅製の金属部材と、ペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物イオン混合伝導体を含んでなるセラミックス部材とが、シール性を有しつつ接合されて構成された複合構造体であって、前記セラミックス部材が多孔質支持体部と該多孔質支持体部の上に形成された緻密質連続層を含む膜部から構成されており、前記多孔質支持体部が気孔率10%以上50%以下であり、前記緻密質連続層が、厚さ1μm以上1mm以下のイオン混合伝導性酸化物からなることを特徴とする(1)〜()のいずれか1項に記載の複合構造体。
) (1)〜()のいずれかに記載の複合構造体を有することを特徴とする酸素分離装置。
) (1)〜()のいずれかに記載の複合構造体を有することを特徴とする化学反応装置。
本発明によれば、酸素分離用の複合構造体の金属部材をアルミニウム青銅で作製することにより、800〜900℃程度の高温で長期間、酸素分離装置を運転しても、酸化スケールの発生が少なく、金属部材の消耗を抑制することができる。また、このアルミニウム青銅製金属部材を、本発明が開示する酸化物イオン混合伝導体と接合して複合構造体とすることにより、金属部材とセラミックス部材の熱膨張係数の整合性に優れ、繰り返し熱履歴を与えた場合でもリークの発生が極めて少なく、信頼性の高い複合構造体を提供することが可能となる。さらに、上記酸化物イオン混合伝導体は、酸素分離特性も優れている。これらの結果、本発明によって、高信頼性で、酸素製造コストの低減に有効な、酸素分離用複合構造体を得ることが可能となる。
さらに、この複合構造体を用いた酸素分離装置、化学反応装置は、空気からの酸素分離、あるいは炭化水素の部分酸化等の化学反応を行う装置として、高性能化と低コスト化に資するところ大である。
本発明の提供する一つの酸素分離用複合構造体は、アルミニウム青銅製の金属部材と、ペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物イオン混合伝導体を含んでなるセラミックス部材とが、シール性を有しつつ接合されており、この酸化物イオン混合伝導体を気孔率10%以上の多孔体としたときの大気中での熱膨張係数が、100〜850℃の間で21ppm/℃以上29ppm/℃以下であることを特徴としている。
本発明におけるアルミニウム青銅とは、JIS H3250のC6191とC6241JIS、JIS H5120のCAC701、CAC703やCAC704で定められた合金が含まれる、組成範囲の銅合金である。このような銅合金のAlの含有量の範囲は、6%以上12%以下である。
先にも述べたように、この複合構造体は、金属部材をアルミニウム青銅製とすることにより、酸素分離条件下でも酸化スケールの発生が少なく、金属部材の消耗を抑制することができるのが特徴である。金属部材の酸素分離条件下での耐久性を向上するためには、金属部材に含まれるアルミニウム青銅が化学成分としてAlを多く含むことが望ましい。上述のとおり、アルミニウム青銅としては、Alが6%以上12%以下の範囲の材料が入手可能であるが、この中でも本発明においてはAlを8%以上含むアルミニウム青銅を用いることが、耐久性の観点から好ましい。このような材料としては、例えば、銅及び銅合金棒に関するJIS H3250の、C6191やC6241に規定されている材料等を挙げることができる。
金属部材の形状は特に限定はしないが、セラミックス部材と接合されている部分については、万が一セラミックス部材との間に、望ましくない応力が働いた場合にでも、当該応力を緩和できるような仕組みを有することが望ましい。このような仕組みの一つとしては、例えば、接合されている部分の金属の厚さを薄くして、ある程度の変形を許容するような方法を挙げることができる。また、この金属部材と接合される酸化物イオン混合伝導体は、気孔率10%以上の多孔体としたときの大気中での熱膨張係数が、100〜850℃の間で21ppm/℃以上29ppm/℃以下であるので、同じ温度範囲での熱膨張係数が24ppm/℃以上26ppm/℃以下程度であるアルミニウム青銅製の金属材料と整合しており、信頼性の高い酸素分離構造体を提供できる。
前記酸化物イオン混合伝導体として望ましいものは、上記の熱膨張係数の条件を満たすと共に、組成が下記の組成式(式1)で表される。
{LnaBab1-a-b}BαO(3-δ) ・・・(式1)
(ここで、Lnは、Y又はランタノイド元素から選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせである。Aは、Sr又はCaから選ばれる1種又は2種の元素の組み合わせである。Bは、Cu、Ni、Zn、Li、Mg、Co、Fe、Cr、Ga、Nb、Ta、Ti又はZrの中から、Fe又はCoの中の少なくとも1種、及び、Nb又はTaの中の少なくとも1種を必ず含んで選ばれる、2種以上の元素の組み合わせである。但し、0≦a≦0.2、0≦b≦0.2、0.9≦α≦1.2、δは電荷中性条件を満たすように決まる値である。)
このイオン混合伝導体は、ペロブスカイト型構造のAサイトにBaを0%以上20%以下含み、BサイトにCo又はFeの少なくとも一方、及び、Nb又はTaの少なくとも一方を含有することで、緻密体は勿論、多孔質支持体とした場合にでも、100〜850℃の間で21ppm/℃以上29ppm/℃以下の熱膨張係数をとることが特徴である。AサイトのBaの含有量を0%以上、20%以下に限定しているのは、この範囲を超えてBaを含有すると、熱膨張係数が小さくなり過ぎてしまい、アルミニウム青銅との整合性が低下するためである。BサイトにFe又はCoを必ず含むこととしているのは、高い酸素透過速度を確保するためである。ここで、より一層高い酸素透過速度を得るためには、必ずCoを含むことが望ましい。また、Bサイトに必ずNb又はTaを含有させることで、酸素分離特性の経時劣化等を抑制することができる。Y又はランタノイドの含有量を0≦a≦0.2と限定するのは、この範囲を超えて含有すると酸素透過速度が低下するためである。また、ペロブスカイト構造のAサイトとBサイトの比率αを0.9≦α≦1.2の範囲に限定するのは、この範囲を外れると酸素透過速度が低下したり、材料の強度が低下したりする問題が生じるためである。
上記(式1)のより好ましい組成は、下記の(式2)に表される組成である。
{LnaBab1-a-b}{B1-x-yB’xB’’y}αO(3-δ) ・・・(式2)
(ここで、Lnは、Y又はランタノイド元素から選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせである。Aは、Sr又はCaから選ばれる1種又は2種の元素の組み合わせである。Bは、Co、Fe、Cr又はGaの中から、Fe又はCoを必ず含んで選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせで、CrとGaのモル数の和が全B元素のモル数(1−x−y)に対し0%以上20%以下である。B’は、Nb、Ta、Ti又はZrの中から、Nb又はTaを必ず含んで選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせで、TiとZrのモル数の和が全B’元素のモル数xに対し0%以上20%以下である。B’’は、Cu、Ni、Zn、Li又はMgの中から選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせである。但し、0≦a≦0.2、0≦b≦0.2、0.07<x≦0.5、0≦y≦0.15、0.9≦α≦1.2、δは電荷中性条件を満たすように決まる値である。)
B’の量を0.07<x≦0.5の範囲に限定するのは、これよりも含有量が少なくなると熱膨張係数の改善効果やペロブスカイト型構造の安定性が低下し、これよりも多いと酸素透過速度が低下するためである。より高い酸素透過速度を実現するためには、xは0.3以下の範囲が望ましく、ペロブスカイト相の安定性が使用環境下で確保可能であるならば、xは0.2以下の範囲がより望ましい。また、Cu等を含むB’’の含有量を0≦y≦0.15の範囲に限定するのは、この範囲を超えて多く含有すると酸素透過速度が低下したり、ペロブスカイト型構造の安定性が不十分になるためである。逆に、この範囲内で適当な量のB’’元素を含有することにより、酸素透過速度を向上させることが可能となる。B’’の元素としてCuやLiを含むと、焼結温度が低下し過ぎて問題が生じる場合もある。従って、B’’の元素はNi、Zn、及びMgのみで構成されることが望ましい。
(式2)で表される材料に対し、酸素透過速度の安定性等、信頼性の確保に主眼をおいた場合には、Bサイトに低価数元素B’’を含まない、下記の(式3)で表される酸化物イオン混合伝導体がより好ましい。
{LnaBab1-a-b}{B1-xB’x}αO(3-δ) ・・・(式3)
(ここで、Lnは、Y又はランタノイド元素から選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせである。Aは、Sr又はCaから選ばれる1種又は2種の元素の組み合わせである。Bは、Co、Fe、Cr又はGaの中から、Fe又はCoを必ず含んで選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせで、CrとGaのモル数の和が全B元素のモル数(1−x)に対し0%以上20%以下である。B’は、Nb、Ta、Ti又はZrの中から、Nb又はTaを必ず含んで選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせで、TiとZrのモル数の和が全B’元素のモル数xに対し0%以上20%以下である。但し、0≦a≦0.2、0≦b≦0.2、0.07<x≦0.5、0.9≦α≦1.2、δは電荷中性条件を満たすように決まる値である。)
(式1)〜(式3)で表される材料に対し、アルミニウム青銅との熱膨張係数の整合性の観点から、より好ましい酸化物イオン混合伝導体は、組成が次の(式4)で表され、なおかつ気孔率10%以上の多孔体としたときの大気中での熱膨張係数が、100〜850℃の間で23ppm/℃以上27ppm/℃以下であることを特徴とする。
{LnaBab1-a-b}{B1-xB’x}αO(3-δ) ・・・(式4)
(ここで、Lnは、Y又はランタノイド元素から選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせである。Aは、Sr又はCaから選ばれる1種又は2種の元素の組み合わせである。Bは、Co、Fe、Cr又はGaの中から、Fe又はCoを必ず含んで選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせで、CrとGaのモル数の和が全B元素のモル数(1−x)に対し0%以上20%以下である。B’は、Nb、Ta、Ti又はZrの中から、Nb又はTaを必ず含んで選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせで、TiとZrのモル数の和が全B’元素のモル数xに対し0%以上20%以下である。但し、0≦a≦0.2、0.1≦b≦0.2、0.07<x≦0.5、0.9≦α≦1.2、δは電荷中性条件を満たすように決まる値である。)
この式において、0.1≦b≦0.2と、Baの含有量をより限定することにより、熱膨張係数がより狭い範囲に制御され、アルミニウム青銅との整合性がより高くなる。
本発明に係る酸化物イオン混合伝導体は、多少の不純物を含んでも、特性に大きな劣化は見られない。ただし、その許容量は元素のモル比にして全体の5%以下、望ましくは2%以下の程度である。この範囲を外れて不純物を含むと、異相を生成したり、酸素透過速度が低下する等の問題が生じる。一方、本発明の酸化物イオン混合伝導体は、第2相と複合化することが可能である。例えば、AgやAg−Pd、Pt等の金属と複合化すれば、焼結性を向上したり、材料強度を向上させることができる。
本発明の提供する酸素分離用複合構造体のセラミックス部材において、酸化物イオン混合伝導体は、緻密質の自立膜として使用される場合もあるが、より高い酸素分離速度を実現するためには、多孔質支持体部の上に緻密質連続層を含む膜部を形成したセラミックス複合体として用いることが望ましい。特に、多孔質支持体として用いられるときに、当該酸化物イオン混合伝導体の有するペロブスカイト相の高い安定性を活かすことができる。本発明で開示する複合構造体で、酸化物イオン混合伝導体を多孔質支持体に用いた場合、緻密質連続層には多孔質支持体と同じ組成の混合伝導体を用いても良いし、健全な緻密質連続層の形成が可能な範囲においては、組成の異なる混合伝導体を用いても良い。この多孔質支持体部の気孔率を10%以上50%以下とするのは、この範囲外となると、酸素透過速度が低下したり、機械的特性が低下してしまう等の問題を生じるためである。また、緻密質連続層の厚さは1μm以上1mm以下とするのが好ましい。この範囲外となると、酸素透過速度が低下したり、リークが増大して得られる酸素の純度が低下する等の問題を生じるためである。
これらのセラミックス複合体の形状は、平板型であっても良いし、管状、あるいは片端を閉じた管形状のいわゆるタンマン形状であっても良い。また、緻密質連続層には、表面での酸素交換反応を促進するための触媒層を形成して用いても良い。
本発明に係る酸化物イオン混合伝導体の多孔質支持体を製造する方法としては、セラミックス多孔体を製造するために通常用いられる方法が使用可能である。その方法の一つとして、必要な元素を含む酸化物を原料とし、これを焼成する方法がある。また、原料として、酸化物の他に塩類、例えば、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩等の有機酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物等のハロゲン化物、あるいは水酸化物、オキシハロゲン化物を用い、これらを所定の割合で混合して、焼成する方法がある。また、上記塩類の内で、水に可溶なものを所定の割合で水に溶解して蒸発乾燥する方法、あるいは、フリーズドライ法やスプレードライ法によって乾燥した後、焼成する方法、水に可溶な塩類を水に溶解した後、アンモニア水等のアルカリ性溶液を添加して、水酸化物の沈殿とし、焼成する共沈法、あるいは、原料に金属アルコキシドを用い、これを加水分解してゲルを得て、焼成するゾルゲル法等も適用可能である。
多孔質支持体の焼成は、仮焼と、本焼成(焼結)の2段階で行うのが一般的である。仮焼は、400〜1100℃の温度範囲で、数時間〜十数時間程度行い、仮焼粉を製造するのが通常である。この仮焼粉をそのまま成形して本焼成を行っても良いし、仮焼粉にポリビニルアルコール(PVA)等の樹脂を気孔形成材として混合し、成形、本焼成しても良い。本焼成の温度は、組成等によって異なるが、通常700〜1300℃、好ましくは1000〜1250℃の範囲である。本焼成の時間は、組成と焼成温度によって異なるが、通常、数時間以上を要する。本焼成の雰囲気は、一般には大気中で十分であるが、必要に応じて制御雰囲気下で焼成しても良い。また、多孔質支持体の成形の手段としては、通常のバルクセラミックスの製造と同様に、仮焼粉や混合粉をダイスに詰めて、加圧、成型しても良いし、泥漿鋳込み法や、押し出し成型法等を用いても良い。
一方、緻密質連続膜は、セラミックス膜を製造するために通常用いられる方法により作製できる。真空蒸着法等のPVDやCVDと言った、いわゆる薄膜形成手法によって成膜しても良いが、より簡便で経済的には、多孔質支持体の上にスラリー状にした原料粉や仮焼粉を塗布し、焼成する方法が好ましい。緻密質連続膜の焼成温度は、膜がガスリークを起こさないように緻密化すると共に、この焼成過程で多孔質支持体の気孔率が大きく低下することのない条件を選択する必要がある。通常の焼成温度は、700〜1300℃、好ましくは1000〜1250℃の範囲である。また、焼成時間には、通常で数時間を要する。この緻密質連続膜の焼成は、多孔質支持体の焼成の後に別々に行っても良いし、支持体の焼成と同時に行っても良い。緻密質連続膜の密度は、ガスリークを起こさないために、相対密度(理論密度に対する比)として、好ましくは85%以上、より好ましくは93%以上の範囲である。また、緻密質連続膜の表面に触媒層を付与する場合は、緻密質連続膜の焼成後、原料を分散したスラリー等を塗布し、緻密質連続膜の焼成温度よりも低温で焼き付けを行うことが好ましい。
上述の製法で得たセラミックス部材と、金属部材とをシール性を有しつつ接合する方法としては、セラミックスを金属と接合するために通常用いられる方法が使用可能である。その方法の一つとして、銀ロウ等の金属をソルダーとして用い、これを金属部材との間に入れて加熱処理して接合する、金属ソルダー法がある。また、ソルダーにジルコニア等を含有する酸化物を用いた酸化物ソルダー法、金属と酸化物の混合ソルダーを用いる方法、金やニッケル、モリブデン等の高融点金属を含むソルダーを用いる方法等がある。また、接合層をイオンプレーティング等の気相法によって形成する方法、あるいは金属部材とセラミックス複合体とを焼きばめ等によって機械的に接合する方法、金属の箔を挟んで圧着する方法等を用いても良い。またさらに、金属部材との接合に先立って、セラミックス部材の接合部分とその周囲に、メッキやイオンプレーティング等によって、金や銀等の保護層のコーティングを施しておくと、接合箇所の信頼性をさらに向上させることが可能である。
上記のプロセスで形成した酸素分離用の複合構造体によって、例えば、酸素を含有する混合気体から酸素の選択的透過・分離を行うためには、複合材料の両面の酸素ポテンシャルが異なるようにすれば良い。大気から酸素を分離するためには、原料大気側を加圧するか、酸素の取り出し側を減圧してやれば良い。例えば、原料大気側を10〜30気圧に加圧し、透過酸素側を1気圧として酸素を製造することができる。また、原料大気側を1〜30気圧とし、透過酸素側をポンプで0.05気圧程度に減圧しても良い。また、酸素富化空気を製造するためには、原料大気側を10〜30気圧に加圧し、反対側に1気圧の大気を供給すればよい。この酸素分離の操業温度は、500〜1000℃、好ましくは650〜950℃の範囲である。
このように、本発明に係る複合構造体は、純酸素、あるいは、酸素富化空気の製造装置等に応用できる。また、さらに、酸素分離以外の用途、特に酸化反応が関与する化学反応装置、例えば、メタンから一酸化炭素と水素からなる合成ガスを製造するメタンの部分酸化反応の反応装置にも利用できる。
以下に、本発明の実施例を説明する。但し、本発明はこの内容に限定されるものではない。
(実施例1)
Al含有量が6%及び8%のアルミニウム青銅をアルミナ製の容器に入れて900℃に加熱し、雰囲気を10気圧の大気雰囲気として3ヶ月保持した。常温に冷却後、観察を行った。いずれの試料においても、試料表面に少量のスケールが発生してはいるものの、基本的に金属光沢を保っていた。また、試料の入っていた容器内に残留するスケールも極少量であり、試料の質量減少もそれぞれ0.2%及び0.1%であり、アルミニウム青銅におけるスケールの発生とそれに伴う消耗は、比較例1で述べるステンレス等と比較して大変少量であること、アルミニウム青銅の中でもAlの含有量が多い方がより優れていることが判った。以上の結果から、酸素分離用の複合構造体の金属部材をアルミニウム青銅製とすることにより、酸素分離条件下でも酸化スケールの発生が少なく、金属部材の消耗を抑制可能であることが確認された。
(比較例1)
代表的な高温用金属材料である、オーステナイト系ステンレスのSUS310、鉄ベース耐熱合金のインコロイ800、及び銅合金の高力黄銅CAC301(Al含有量1%)をアルミナ製の容器に入れて900℃に加熱し、雰囲気を10気圧の大気雰囲気として3ヶ月保持した。常温に冷却後、観察を行った。ステンレスとインコロイでは、試料の冷却後の表面には、スケールが発生して変色して金属光沢を失っていると共に、試料を納めて熱処理を行った容器の中には、試料表面から脱離したスケールが大量に溜まっていた。それぞれの試料の質量減少は1.9%、及び2.7%であった。また、黄銅の試料は、スケールが発生していると共に、試料が軟化して変形してしまっていた。
(実施例2)
様々な組成の多孔体試料を作製し、大気中での熱膨張係数を測定した。
試料の原料としては、Ba、Sr、及びCaについては炭酸塩、それ以外の元素については酸化物の試薬を用いた。それぞれ所要量を秤量した後、イソプロピルアルコールを分散媒として、ジルコニアボールと共に24時間ボールミル混合を行った。得られたスラリーを乾燥、解砕し、MgO製の角さやに詰め、大気中で850℃12時間の仮焼を行った。次に、得られた仮焼粉を粉砕して、PVAと有機系バインダーを混練した後、40mm角のダイスに詰めて板状に一軸成形し、さらに氷嚢に詰めてCIP成形を行った。その後、得られた成形体をMgO製の角さや内で、1000〜1250℃の範囲の焼結温度にて5時間焼成を行い、焼結体を得た。さらに、ダイヤモンドカッターを用いて得られた焼結体を切断し、約5mm×5mm×20mmの棒状試料を得た。試料の密度を試料寸法と質量より求め、X線密度に対する相対密度を算出した。さらに、気孔率を[100−相対密度(%)]の関係より求めた。熱膨張係数の測定に供した試料は、気孔率が10%以上であることを確認した。
熱膨張係数は、示差熱膨張係数により、標準試料にα−アルミナを用いて測定した。測定に際しては、空気を十分にフローさせながら、一度1000℃まで加熱して30分程度保持し、その後1℃毎分で90℃まで冷却し、この冷却過程での寸法変化から100℃と850℃の間での熱膨張係数を算出した。
表1に、試料の組成と、100℃と850℃の間での熱膨張係数の測定値を示す。試料の組成は、下記の組成式(式2)に従い、組成比と元素で表した。
{LnaBab1-a-b}{B1-x-yB’xB’’y}αO(3-δ) ・・・(式2)
試料No.2〜6及び8〜13が、本発明の範囲に含まれる実施例である。
表1から、本発明の範囲内の材料の多孔体の熱膨張係数は、23ppm/℃以上27ppm/℃以下となっており、0.1≦b≦0.2の範囲内にAサイトのBaの含有量限定されており、アルミニウム青銅(熱膨張係数24ppm/℃程度)との整合性が特に優れていることが判る。
(比較例2)
実施例2と同様に、様々な組成の多孔体試料を作製し、大気中での熱膨張係数を測定して表1に示した。表のNo.14〜18が比較例である。No.14〜18は、bが本発明の範囲外である。また、No.16〜18は、αも本発明の範囲外であり、No.18は、yも本発明の範囲外である。
Figure 0004794925
(実施例3)
実施例2と同様の方法で、本発明の範囲内のBa0.08Sr0.92Co0.905Nb0.13-δ、及びBa0.2Sr0.8Co0.905Nb0.13-δの組成について、タンマン管形状の酸素分離管を作製した。タンマン管は、外径20mmφ、内径14mmφ、長さ100mm程度の寸法で、多孔質支持体の外側に緻密質連続層を形成した。多孔質支持体と緻密質連続層の組成は、同一組成とした。
また、JIS H3250のC6191に規定されているアルミニウム青銅の棒材から、ブロック状の試料を切り出した。この板材と、上記組成のタンマン管の開口部側を、それぞれ銀ロウを用いて接合し、10個の複合構造体の作製を試みた。その結果、Ba0.08Sr0.92Co0.905Nb0.13-δでは9個、Ba0.2Sr0.8Co0.905Nb0.13-δでは10個の複合構造体の全てを、酸素分離管が金属ブロックに接合された健全な状態で回収することができた。さらに、得られた複合構造体について、常温と900℃の間を10回往復するヒートサイクルテストを実施したところ、前者については10個の複合体の内の8個、後者については10個の複合構造体の内の9個について、試験完了後も酸素分離管は健全であり、アルミニウム青銅ブロックとガスシール性を保った状態で接合されていた。一方、それぞれ残りの1個については、10回のサイクルテストの後、アルミニウム青銅ブロックとの接合部にガスのリークが発生していた。
さらに、上記サイクルテスト完了後でも健全であったBa0.2Sr0.8Co0.905Nb0.13-δ酸素分離管とアルミニウム青銅を含んでなる複合構造体を酸素分離装置に取り付け、900℃に加熱し、酸素分離管の外側の雰囲気を10気圧の大気雰囲気としたところ、分離管の内側には酸素が透過した。この透過した酸素ガスを回収し、純度99%以上の酸素を1ヶ月の間、連続的に安定して得ることができた。また、酸素分離を終了し、酸素分離装置を常温まで冷却したところ、複合構造体を健全な状態で回収することができた。この酸素分離試験の前後において、アルミニウム青銅製の部材は金属光沢を保っており、スケールの発生は僅かであった。
(比較例3)
実施例3と同様の方法で、本発明の範囲外のBa0.5Sr0.5Co0.905Nb0.13-δの組成について、タンマン管形状の酸素分離管を作製し、アルミニウム青銅の板材と銀ロウを用いて接合し、10個の複合構造体の作製を試みた。その結果、10個の複合構造体の全てが、酸素分離管が金属ブロック近傍で破損し、2つに分離してしまった状態で回収された。
本試験の結果から、本発明の複合構造体は、アルミニウム青銅製の金属部材の消耗が少なく、また、セラミックス部材は、金属部材との熱膨張係数の整合性が高いため、酸素分離管を作製し、金属部材と接合して複合構造体とした時に、大幅に信頼性の向上した複合構造体を提供可能であることが確認された。また、本発明の複合構造体を酸素分離装置や化学反応装置に用いることで、高性能でかつ高信頼性、低コストの装置を提供可能であることが確認された。

Claims (6)

  1. 化学成分としてAlを8%以上含むアルミニウム青銅を含んでなる金属部材と、ペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物イオン混合伝導体を含んでなるセラミックス部材とが、シール性を有しつつ接合されて構成された複合構造体であって、
    該酸化物イオン混合伝導体を気孔率10%以上の多孔体としたときの大気中での熱膨張係数が、100〜850℃の間で23ppm/℃以上27ppm/℃以下であり、
    前記酸化物イオン混合伝導体の組成が下記の一般式(式1)で表されることを特徴とする複合構造体。
    {Ln a Ba b 1-a-b }BαO (3- δ ) ・・・(式1)
    (ここで、Lnは、Y又はランタノイド元素から選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせである。Aは、Sr又はCaから選ばれる1種又は2種の元素の組み合わせである。Bは、Cu、Ni、Zn、Li、Mg、Co、Fe、Cr、Ga、Nb、Ta、Ti又はZrの中から、Fe又はCoの中の少なくとも1種、及び、Nb又はTaの中の少なくとも1種を必ず含んで選ばれる、2種以上の元素の組み合わせである。但し、0≦a≦0.2、0.1≦b≦0.2、0.9≦α≦1.2、δは電荷中性条件を満たすように決まる値である。)
  2. 前記酸化物イオン混合伝導体の組成が下記の一般式(式2)で表されることを特徴とする請求項1に記載の複合構造体。
    {LnaBab1-a-b}{B1-x-yB’xB’’y}αO(3-δ)・・・(式2)
    (ここで、Lnは、Y又はランタノイド元素から選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせである。Aは、Sr又はCaから選ばれる1種又は2種の元素の組み合わせである。Bは、Co、Fe、Cr又はGaの中から、Fe又はCoを必ず含んで選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせで、CrとGaのモル数の和が全B元素のモル数(1−x−y)に対し0%以上20%以下である。B'は、Nb、Ta、Ti又はZrの中から、Nb又はTaを必ず含んで選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせで、TiとZrのモル数の和が全B'元素のモル数xに対し0%以上20%以下である。B''は、Cu、Ni、Zn、Li又はMgの中から選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせである。但し、0≦a≦0.2、0.1≦b≦0.2、0.07<x≦0.5、0≦y≦0.15、0.9≦α≦1.2、δは電荷中性条件を満たすように決まる値である。)
  3. 前記酸化物イオン混合伝導体の組成が下記の一般式(式3)で表されることを特徴とする請求項1に記載の複合構造体。
    {LnaBab1-a-b}{B1-xB’x}αO(3-δ)・・・(式3)
    (ここで、Lnは、Y又はランタノイド元素から選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせである。Aは、Sr又はCaから選ばれる1種又は2種の元素の組み合わせである。Bは、Co、Fe、Cr又はGaの中から、Fe又はCoを必ず含んで選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせで、CrとGaのモル数の和が全B元素のモル数(1−x)に対し0%以上20%以下である。B'は、Nb、Ta、Ti又はZrの中から、Nb又はTaを必ず含んで選ばれる1種又は2種以上の元素の組み合わせで、TiとZrのモル数の和が全B'元素のモル数xに対し0%以上20%以下である。但し、0≦a≦0.2、0.1≦b≦0.2、0.07<x≦0.5、0.9≦α≦1.2、δは電荷中性条件を満たすように決まる値である。)
  4. アルミニウム青銅製の金属部材と、ペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物イオン混合伝導体を含んでなるセラミックス部材とが、シール性を有しつつ接合されて構成された複合構造体であって、前記セラミックス部材が多孔質支持体部と該多孔質支持体部の上に形成された緻密質連続層を含む膜部から構成されており、前記多孔質支持体部が気孔率10%以上50%以下であり、前記緻密質連続層が、厚さ1μm以上1mm以下のイオン混合伝導性酸化物からなることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の複合構造体。
  5. 請求項1乃至のいずれか1項に記載の複合構造体を有することを特徴とする酸素分離装置。
  6. 請求項1乃至のいずれか1項に記載の複合構造体を有することを特徴とする化学反応装置。
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