JP3971586B2 - シール性を有する複合体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高温において優れたシール性を発揮する複合体に関する。本複合体は、純酸素、酸素富化空気などの製造装置、炭化水素ガスの部分酸化に代表される隔膜リアクター、固体酸化物燃料電池、酸素純化装置、及び熱交換器等に好適に使用される。
【0002】
【従来の技術】
800℃を超える高温領域でのシール技術について、例を挙げて以下に説明する。
まず、純酸素製造及び酸素富化空気製造について述べる。この技術は、製鉄・ガラス・セメントなど大量に酸素を消費する分野に、安価な酸素あるいは酸素富化空気を供給することにより、莫大な経済効果をもたらす。純酸素あるいは酸素富化空気を酸化物イオン伝導性と電子伝導性を同時に持つ混合伝導性酸化物を使って製造する原理は、酸素分圧の異なる2種類のガスを混合伝導性酸化物で隔離しておくことにより、酸素分圧の高い側から低い側へ酸化物イオンの形で酸素が酸化物中を透過する現象に基づいている。
【0003】
例えば、酸素含有混合ガス(空気など)を圧縮しておき、回収ガス(純酸素あるいは酸素富化空気)より高い酸素分圧とすることにより、酸素含有混合ガスから酸素ガスを分離する。酸素ガスを分離する効率は、混合伝導性酸化物の厚みが同じである場合、酸化物イオン伝導率に大きく依存するが、この伝導率は温度によって大きく変化するため、実用上800℃以上の温度領域が選ばれる。この温度領域においてガスシール性が低いと、得られる酸素の純度が低下したり、酸素富化空気の製造効率が低下するという問題が生じる。
【0004】
2番目の例として、同じく混合伝導性酸化物を用いた炭化水素ガスの部分酸化に代表される隔膜リアクターについて述べる。天然資源の有効活用の観点から天然ガス液体燃料化技術(gas to liquid =GTL)が注目を集めるようになってきているが、この技術は、その要素技術として重要なものである。隔膜リアクターの原理は、酸素含有ガス(例えば、空気)と炭化水素ガス(例えば、メタンを主成分とする天然ガス)を混合伝導性酸化物で隔離することにより、空気側から炭化水素ガス側に酸素が酸化物中を透過し、炭化水素ガス側の酸化物表面において炭化水素ガスを酸化させて合成ガス(一酸化炭素と水素の混合ガス)や部分酸化体などを得るものである。上述の酸素製造と同様、動作温度として800℃以上が選ばれる。この温度領域においてガスシール性が低いと、反応効率低下の大きな要因となるばかりか、極端な場合には炭化水素の完全燃焼が一気に起こり、爆発の危険性も生ずる。
【0005】
3番目の例として、発電効率が高く、クリーンな環境調和型の発電方式であることで注目されている酸化物イオン伝導性酸化物を用いた固体酸化物燃料電池について述べる。この技術は、燃料電池を高温動作させるため、廃熱をコ・ジェネレーションに利用すれば、最終的に70〜80%の総合エネルギー効率が期待できる利点を有し、現在盛んに研究開発が行われている。固体酸化物燃料電池の動作原理は、水素等の燃料ガスと空気を酸化物イオン伝導性酸化物で隔離して、酸化物中を酸化物イオンが移動することにより電力を得るものである。現在開発が進められているイットリア安定化ジルコニア(YSZ)は、酸化物イオン伝導性酸化物の中では高いイオン伝導率を有することで知られているが、上述した混合伝導性酸化物より低い。このため、YSZを用いた固体酸化物燃料電池の動作温度域は900℃以上となる。本技術においても、ガスシール性が低いと出力低下の最大の原因となったり、爆発といった最悪の事態を招く可能性がある。
【0006】
このように、800℃を超える高温領域でのシール技術は非常に重要な意味を持っており、種々のシール方法が考案されているが、その多くは開発が最も進んでいる燃料電池の分野で見ることができる。
【0007】
平板型構造の燃料電池の場合、電池セルとセパレーター(もしくはインターコネクター)の間をシールする必要がある。シール材として、セラミックス接着剤、ほう珪酸ガラスや珪酸ソーダガラスなどの各種ガラス、耐熱性金属ガスケット、酸化物微粉末を焼成した焼結体などが知られている。
【0008】
特開平5-325999号公報では、珪酸ソーダガラスの組成比を制御して、固相線以上、液相線以下の固液共存範囲で固相がマトリックスを形成し、液がシール材として機能する2元系以上の酸化物からなるシール材を開示している。
【0009】
特開平6-231784号公報では、セラミックス繊維で補強された金属箔を骨材とし、この骨材に珪酸ソーダガラスを保持させたシール材を開示している。
【0010】
特開平8-7904号公報では、セパレーターを予め酸素雰囲気中で熱処理して表面に酸化物層を形成することにより、セパレーターとガラス質のシール材の適合性を上げ、シール性を向上させている。
【0011】
特開平9-115530号公報では、セパレーターの上下面にそれぞれ凹部と突起部を備え、これらが嵌合するありほぞ継ぎ手構造とするとともに、セパレーターと固体電解質の間に耐熱性金属のガスケットを挿入し互いに面接触させて気密性を確保する方法を開示している。
【0012】
特開平10-116624号公報、特開平10-12252号公報、及び特開平11-154525号公報では、固体電解質燃料電池の動作温度より高い融点を持つ超微粒子酸化物を主成分とする原料粉末の焼結体をシール材に用いた固体電解質燃料電池を開示している。
【0013】
特開平9-129251号公報では、固体電解質燃料電池において、接合しようとする2つの材料の成分をともに含んだ材料をシール材として用いるシール方法を開示している。
上述の技術は、平板型の燃料電池を対象としているが、一方、円筒型構造の燃料電池の場合、円筒形のセルとこれを保持する仕切板との間をシールする必要がある。
【0014】
特開平5-29010号公報、及び特開平5-29011号公報では、円筒形セルとフランジ間、及びフランジとガスシール板(仕切板)間のシールにガラスを用いる固体電解質燃料電池を開示している。
【0015】
また、燃料電池以外の分野におけるシール技術については、P. S. Maiyaら(US Patent 5,725,218)が、メタンの部分酸化を行う隔膜リアクターにおいて、インコネルと固体電解質(SFC-2)の間のシール技術を開示している。シール材として、SrO, B2 O3 , SrFeCo0.5 O x 酸化物の混合粉末を選択し、これを加熱溶融することによりシール性を持たせている。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、800℃を超える温度領域でガスシールする技術は、莫大な経済効果をもたらし、同時に環境問題を解決する最先端技術を開発する上でなくてはならない要素技術となっている。
【0017】
しかしながら、従来の技術では、シールの形成に相当の手間をかけているにもかかわらず、信頼性、及び熱サイクル性の点でまだ改良の余地を残しており、容易にシール形成でき、しかも信頼性、及び熱サイクル性に優れたシール技術の確立が強く望まれていた。
【0018】
シール技術を困難なものにしている原因の一つは、材料固有の熱膨張率に起因している。すなわち、使用温度領域が非常な高温であることから、接合材料の熱膨張率の差がそれほど大きなものでなくても、高温になる程この差が顕著となってしまうためである。
【0019】
ここで、代表的な材料について、線熱膨張係数を以下に挙げておく。ペロブスカイト型酸化物イオン混合伝導性酸化物は、一般に非常に大きな線熱膨張係数を有する。例えば、高い酸素イオン伝導率を有することで知られるLa-Sr-Co-Fe系混合伝導性酸化物の室温から800℃までの平均の線熱膨張係数は、(La0 .2 Sr0.8 )(Co0.8 Fe0.2 )O x の場合で約26×10-6 /℃であり、(La0.2 Sr0.8 )(Co0.4 Fe0.4 Cu0.2 )O x の場合で約20×10-6 /℃である。これに対し、金属はステンレス鋼のSUS310Sで17.5×10-6 /℃(0-650℃の平均)、インコロイ(Incoloy 800)で14.2×10-6 /℃(0-100℃の平均)程度と線熱膨張係数は小さくなり、YSZでは、約10×10-6 /℃(0-1000℃の平均)と更に小さくなる。また、ガラスに至っては1×10- 6/℃(20-1000℃の平均)前後と、極端に小さな線熱膨張を示す。ガラスをシール材として使用する従来技術は、800℃を超える使用温度でガラス部分が溶融するため、気密性の高い液体シールが実現できることを利用したものである。
【0020】
しかしながら、溶融したガラスをシール材に用いた場合、使用中に接合部位からシール材が溶出してしまったり、上述した純酸素製造のように隔離する2種類のガスの圧力が同一でないと、溶融したガラスが圧力差に耐えないといった問題が発生する。また、ガラス材料では、高い接着強度が得られない、高温での長期使用において成分の蒸発や結晶化等のシール材の変質が生じ安定した特性が得られない、低温固化した場合の熱膨張差が原因で数回のヒートサイクルでシール性が保てなくなる、被接合材料(特に、酸化物固体電解質)と化学反応を起こして被接合材料を劣化させるといった問題点もあった。
【0021】
前出の特開平10-116624号公報、特開平10-12252号公報、特開平11-154525号公報、特開平9-129251号公報、及びUS Patent 5,725,218では、シール材の熱膨張率が接合しようとする2種類の材料の熱膨張率に近いため、熱膨張率の差異に起因した問題を解決し、高温での長期使用においても安定したガスシール性と耐熱サイクル性を付与することを狙ったものである。
【0022】
しかしながら、シール材の焼成温度が2つの被接合材料の焼成温度に近かったり、組み合わせによっては一方の被接合材料の焼成温度より高くなる場合があり、シール材を焼成する段階で被接合材料が熱によってダメージを受けるといった問題があった。また、都度シール材を調製し、焼結させるという手間のかかる方法であること、シール性にまだ改善の余地を残す、などの問題も有り、未だに実用化に供されていない。
【0023】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、800℃以上の高温領域において、容易にシール形成でき、しかも信頼性や熱サイクル特性に優れたシールを有する複合体及びその製造方法、並びにこの複合体を用いた装置を提供することを目的とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するための本発明の要旨は、次の通りである。
(1)1つ以上の酸化物材料を含む複数の部材を組み合わせて形成される貯留部を有する構造体と、前記構造体を構成する前記部材の軟化温度より低温の軟化温度を有する銀または銀合金とを含む複合体であって、前記部材の室温から 850 ℃までの平均線熱膨張係数が、 16 × 10 -6 / ℃以上 26 × 10 -6 / ℃以下であり、前記銀または銀合金が前記貯留部に充填され、且つ前記構造体を構成する前記部材の組み合せ境界部の一部又は全部に前記銀または銀合金が充填されてなることを特徴とするシール性を有する複合体。
【0027】
)前記構造体を構成する前記各部材は、セラミックス同士、又はセラミックスと金属の組み合わせとして構造体が構成されることを特徴とする(1)に記載のシール性を有する複合体。
【0029】
)前記構造体を構成する前記部材の一部が、酸化物イオン透過性を有する酸化物材料であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のシール性を有する複合体。
【0030】
)酸化物イオン透過性の酸化物層を有し一端が封じられた中空部材とフランジ部材とを少なくとも組み合わせてなる構造体と、銀又は銀合金との複合体であって、前記構造体は、室温から 850 ℃までの平均線熱膨張係数が、 16 × 10 -6 / ℃以上 26 × 10 -6 / ℃以下であり、前記中空部材の開放端と前記フランジ部材とを組み合わせて形成される貯留部を有し、前記貯留部に前記銀又は銀合金を充填してなることを特徴とするシール性を有する複合体。
【0032】
(5)室温から 850 ℃までの平均線熱膨張係数が 16 × 10 -6 / ℃以上 26 × 10 -6 / ℃以下であって、1つ以上の酸化物材料を含む複数の部材を組み合わせて貯留部を有する構造体を形成する工程と、前記構造体を構成する前記部材よりも低温で軟化する、銀、銀合金、銀を含む粘土、銀合金を含む粘土、銀を含むスラリー、及び銀合金を含むスラリーから選ばれる少なくとも1種の金属材料を前記貯留部に挿入する工程と、少なくとも前記貯留部を、当該貯留部に挿入された前記金属材料の軟化温度以上前記構造体を構成する前記部材の軟化温度未満の温度範囲に加熱して、前記金属材料を前記貯留部及び前記構造体を構成する部材の組み合せ境界部の少なくとも一方に充填しながら、前記金属材料を化させる工程とを含むことを特徴とするシール性を有する複合体の製造方法。
【0034】
)(1)〜()のいずれか1つに記載のシール性を有する複合体を備えてなる酸素分離装置。
【0035】
)(1)〜()のいずれか1つに記載のシール性を有する複合体を備えてなる隔膜リアクター。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0037】
−複合体の構造−
まず、本発明の複数部材を組み合わせて形成される「貯留部」とは、重力場のみ働いている状態で流動する材料を配したとき、流動材料が流出しないで留まる部分をし、重力以外の力(例えば、遠心力など)が働いている場合は含まない。
【0038】
次に、本発明の好ましい具体的を図1にあげる。図1は、1つ以上の酸化物材料を含む複数の部材を組み合わせて形成される貯留部を有する構造体と、前記構造体を構成する前記部材の軟化温度より低温の軟化温度を有する銀または銀合金とを含む銀又は銀合金との複合体の断面模式図である。いずれも、前記銀又は銀合金が前記構造体の貯留部に充填され、且つ前記構造体を形成する部材の組み合わせ境界部の一部又は全部に前記銀又は銀合金が充填されている。
【0039】
図1の(a)、(b)、(c)は、1つ以上の酸化物材料を含む2つの部材(1、2)からなる構造体と銀又は銀合金3との複合体で、銀又は銀合金3によって部材1と部材2の境界部4がシールされている。図1の(d)、(e)、(f)は、1つ以上の酸化物材料を含む3つの部材(5、6、7)からなる構造体と銀又は銀合金8との複合体で、銀又は銀合金8によって部材5と部材6の境界部9、及び/又は、部材5と部材7の境界部10がシールされている。
【0040】
前記銀又は銀合金は、前記構造体を形成する全ての部材に比較して低い軟化温度を有するものが選ばれる。すなわち、銀又は銀合金3は部材1、2のいずれよりも低い温度で軟化する部材であり、銀又は銀合金8は部材5〜7のいずれよりも低い温度で軟化する部材である。
【0041】
このように本発明に用いられる銀又は銀合金、構造体を形成する全ての部材が1000℃で軟化することなく安定な材料である場合には、次の2つの理由から好適に用いられる。第一の理由は、銀の融点が961℃であり、銀合金の融点もこの付近にあるため、軟化温度の関係が本発明の範囲に入るためである。銀又は銀合金が用いられる第二の理由は、銀の化学的な特性による。銀は、室温から200℃近くまでは酸化物が安定であるが、それ以上になると酸素を放出して金属が安定となる性質を持つ。即ち、大気中で熱処理しても高温では金属状態を保つことから、構造体を形成する部材との界面に酸化物が成長することにより複数部材の組み合わせ境界部でのシール性が損なわれるといったことがなく、信頼性の高いシールを実現することができるためである。更に、銀の化学的な安定性から、被接合部材が化学反応を受けて特性劣化することもない。
【0042】
銀合金の組成は、いずれの組成でもよいが、ここで述べた銀の特徴を損なわないためには、銀の配合成分として35質量%以上であることが望ましい。銀以外の成分としては、例えば、Cu、Zn、Pb、Cd、Ni、Sn、Mn、Li、In、Pd、Ti、Crなどを配合することができる。
【0043】
前記構造体を形成する部材1、2、5〜7の材質は、それぞれセラミックス又は金属であり、複数の部材を組み合わせて形成される貯留部を有する構造体は少なくとも2種の材料からなっている。そして、これら前記構造体を形成する複数部材は、室温から850℃までの平均線熱膨張係数として、16×10-6 /℃以上、26×10-6 /℃以下を有するものであることが望ましい。これは、銀系材料の室温から850℃までの平均線熱膨張係数が23×10-6 /℃程度であることから、上述の範囲をはずれると熱膨張差に基づく応力が発生し、シールの信頼性低下につながるためである。また、前記構造体を形成する複数の部材は、お互いなるべく近い平均線熱膨張係数を有するものであることが望ましい。一方、本発明では、800℃を超える高温においてもシール性を保持することができるシール構造に特徴を持つ複合体の提供を目的とするため、セラミックスや金属以外の、例えば、高分子材料など耐熱性のない材料は構造体を形成する部材としては好ましくない。
【0044】
本発明の複合体を純酸素、酸素富化空気などの製造装置、炭化水素ガスの部分酸化に代表される隔膜リアクター、あるいは固体酸化物燃料電池等に用いる場合には、構造体を形成する部材として酸化物イオン透過性の酸化物材料が含まれる。酸化物イオン透過性の酸化物材料としては、酸化ビスマス系、セリア系、ジルコニア系などの酸化物イオン伝導体や、ペロブスカイト型酸化物、パイロクロア型酸化物やセリアを含むジルコニアなどの酸化物イオン−電子混合伝導体など、850℃で10-2Scm-1以上の酸化物イオン伝導率を有する酸化物が好適に用いられるが、用途によってはこれ以下の伝導率を示す酸化物でもよい。
【0045】
本発明の複合体を純酸素、酸素富化空気などの製造装置、炭化水素ガスの部分酸化に代表される隔膜リアクター、あるいは固体酸化物燃料電池等に用いる場合、酸化物イオンの透過量を増大させ、製造効率、反応効率、あるいは発電効率を上げるために、可能な限り酸化物イオンの透過面積を増大させることが重要となる。そのための複合体の好ましい具体例を図2に示す。
【0046】
図2の具体例は、酸化物イオン透過性の酸化物層を有する一端が封じられた中空部材11と、中空部材11の外径より大きな外径を有するフランジ部材12が組み合わされた構造体(構造体の室温から 850 ℃までの平均線熱膨張係数は、 16 × 10 -6 / ℃以上 26 × 10 -6 / ℃以下である)と銀又は銀合金13との複合体の断面模式図である。いずれも、中空部材の開放端とフランジ部材とを組み合わせて貯留部が形成され、貯留部に銀又は銀合金が充填されることにより、中空部材11とフランジ部材12の境界部14がシールされる。これらの複合体を、ある空間に集積度高く並べることにより、透過面積を飛躍的に増大させることができる。
【0047】
図2に挙げた複合体は複数部材が形成する貯留部の断面形状が長方形になっているが、必ずしも長方形である必要はなく、図3のような貯留部の断面形状が三角形やその他の形状であってもよい。
【0048】
図2及び図3で例示した中で、図2(j)、あるいは図3(o)は、フランジ部材12を中空部材11の円筒内にも挿入するような形状となっており、中空部材11をより安定して固定することができる。またこの構造は、中空部材を安定に固定するだけでなく、境界部14の一部が何らかの原因で開口した場合でも貯留部で軟化した金属材料が流出してしまうのを防ぐことができるため、より信頼性の高い複合体とするうえで効果的である。同様の構造として、図2(k)あるいは図3(p)に例示したように、フランジ部材12とは別に中芯部材15をもうけてもよい。
【0049】
また、図3(q)に例示したように、フランジ部材12に更に別の部材16を組み合わせて、複数部材が形成する貯留部の断面形状をL字型にしてもよい。
【0050】
中空部材11は、酸化物イオン透過性の酸化物層を含む一端が封じられた円筒の形状であって、ここで酸化物イオンが選択透過される。従って、中空部材11は酸化物イオン透過性の酸化物層のみからなっていてもよい。この場合、酸化物イオン以外の物質が酸化物層を透過しないよう、中空部材全体が十分に緻密化していなければならない。そうでないと、せっかくシール性に優れた複合体を提供しても、酸化物イオン以外の不純物質が中空部材11を通って拡散してしまい、製造効率、反応効率、あるいは発電効率が低下する原因となる。
【0051】
緻密質の中空部材を製造する方法は、一般のセラミックス管製造方法がそのまま用いられる。即ち、所定の組成となるよう、原料粉を秤量、混合後、仮焼を行い、これを粉砕した後、成形を行う。成形は、静水圧プレス法(ラバープレス法)、押し出し成形法、泥奬鋳込み法、など一般的な方法が適用可能である。
【0052】
一方、酸化物イオン透過性の酸化物層が、一端が封じられた円筒形状の多孔体上に形成された構造の中空部材であってもよい。この場合、透過効率を上げるために酸化物イオン透過性の酸化物層は薄いほど有利であるが、一方、薄くなるに従い酸化物イオン以外の物質を透過しないようにすることが困難になる。この酸化物層に、僅かなクラックや微細なピンホールなどの欠陥が存在すると、酸化物層が薄いために、酸化物イオン以外の物質が容易に酸化物層を貫通してしまうからである。そのような場合、酸化物イオン透過性の酸化物層を更に厚く形成してもよい。また、実施例で述べるように、酸化物層の部分的な補修処理を行うこともでき、中空部材11にはそのような補修層があっても構わない。
【0053】
一端が封じられた円筒形状の多孔体は、耐熱性があり、その上に形成される酸化物層と極端な反応を起こすことがなければ、その材質は問わないが、望ましい材質としては、その上に形成される酸化物層と同一系列の酸化物である。これは、酸化物層と多孔体の熱膨張率の整合がよいため、酸化物層内に発生する応力を最小限にすることができ、より信頼性の高い酸化物イオン透過性の酸化物層が形成できるためである。
【0054】
酸化物イオン透過性の酸化物層を、一端が封じられた円筒形状の多孔体上に形成するには、まず、次のようにして多孔体を製造する。通常のセラミックス合成と同様に、原料粉の混練−仮焼のプロセスを経た後、例えば、ポリビニルアルコール微粉末を仮焼粉に混合して、成型・焼成を行う。これは、焼成の段階でポリビニルアルコール微粉末が酸化・気化により除かれ、残ったセラミックス部分が焼結されて堅固なネットワークを形成して多孔化するためである。多孔質セラミックスを製造する際、仮焼粉に混合する微粉末は、このように焼成の段階で除かれればよいため、ポリビニルアルコールでなくてもよく、その他の有機化合物や炭素粉、クルミの殻、更にはおがくずでもよい。但し、これら仮焼粉に混合される有機材料の粒径は、多孔体の通気性能や機械的強度と関係してくるので、適宜、用途に応じて選択される。
【0055】
この多孔体の上に形成される酸化物イオン透過性の酸化物層も種々の形成法がある。例えば、仮焼粉を溶媒に分散させたスラリーを用いて多孔体上に塗布、あるいは浸漬し、焼成してもよいし、電気泳動電着法などにより仮焼粉を堆積させ、これを焼成してもよい。また、これらの湿式法以外にも、気相法であるCVDなどの薄膜作製法を用いてもよい。
【0056】
フランジ部材12の材質は耐熱性のあるものであればいずれを用いてもよく、鉄、クロム、ニッケルからなるステンレス、銅合金、耐熱合金、あるいはセラミックスなど、幅広く用いることができる。但し、800℃を超える高温での使用が前提であるため、高温条件下で部材自体が極端な酸化、あるいは溶融など、構造部材としてみたときの劣化がないことが、フランジ部材12の部材に関わる制限となる。望ましい材料としては、セラミックスや耐熱合金であるが、最も望ましい材料は、中空部材11と同一の材料である。熱膨張率の整合がよく、熱サイクル性に特に優れるためである。
【0058】
図1〜に示したように、本発明の複合体では、金属部材の上面は自由表面になっている。この構造は、シール性を保持している金属部材の昇華速度がごくわずかでも、長時間使用により銀又は銀合金が徐々に減少してシール性が保てなくなる場合に対して、銀又は銀合金の補充が容易にできる利点を提供する。また、接合される複合部材と銀又は銀合金の組み合わせによっては、濡れ性が非常に悪くなる場合がある。極端な場合、銀又は銀合金が境界部を完全に被覆できずにシール性が発現しないことがある。このような場合には、濡れ性改善のための添加元素を補充して再度熱処理すれば、境界部での濡れ性が改善してシール性を付与することができ、本発明の構造ではこのような問題にも対処が容易である。
【0059】
本発明の複合体は、銀又は銀合金の軟化温度より低い温度で用いることが望ましい。銀又は銀合金の流動性が失われることにより、非常に優れた差圧耐性が可能となるためである。銀又は銀合金の軟化温度より低い温度で複合体を用いるには、逆に、複合体が使用される温度より若干高い軟化温度を有する銀又は銀合金を適宜選択すればよい
【0060】
−複合体の製造方法−
本発明の複合体は、次のようにして製造することができる。即ち、室温から 850 ℃までの平均線熱膨張係数が 16 × 10 -6 / ℃以上 26 × 10 -6 / ℃以下であって、1つ以上の酸化物材料を含む複数の部材を組み合わせて貯留部を有する構造体を形成してから、前記構造体形成部材よりも低温で軟化する、銀、銀合金、銀を含む粘土、銀合金を含む粘土、銀を含むスラリー、及び銀合金を含むスラリーから選ばれる少なくとも1種の金属材料を前記貯留部に挿入した後、少なくとも前記貯留部を前記金属材料の軟化温度以上前記構造体形成部材の軟化温度未満の温度範囲に加熱して、前記金属材料を前記貯留部及び/又は前記構造体を形成する部材の組み合わせ境界部に充填しつつ金属材料を硬化する。貯留部はシール性に寄与している金属材料が軟化温度で流出するのを防ぐ働きをしている。
【0061】
金属材料は、熱処理によりいったん流動させから貯留部及び/又は構造体を形成する部材の組み合わせ境界部に充填されるため、貯留部の形状に見合うサイズのインゴット、粉末、粒状、線状、その他いずれの形状のものを用いてもよい。更に、挿入しようとする金属の粉末を含んだ粘土やスラリー状にしたものを用いてもよい。この場合、金属材料の硬化、及び軟化の処理は別々に行ってもよいが、熱処理を連続して行うことにより、一度に金属材料を貯留部及び/又は構造体を形成する部材の組み合わせ境界部に充填することができる。
【0062】
−酸素分離装置の構成−
次に、本発明によるシール性に優れた複合体を用いた酸素分離装置の例を図に示す。これは、加圧した空気から酸素イオンのみを輸送し、常圧の純酸素を得る酸素製造装置の例である。図では便宜上2つの複合体を描いているが、さらに多くの複合体を設置しても、基本的な構成は変わらない。
【0063】
中空部材21は、銀又は銀合金23によってフランジ部材22との境界部24がシールされた構造となっている。また、本装置は、中空部材21の固定を助け、且つ銀又は銀合金23の万が一の流出を防ぐ中芯部材25を具備している。21〜25よりなる構造体は、集積板26に取り付けられており、銀又は銀合金27によって、集積板26との境界部28がシールされている。更に、集積板26は、酸素分離容器29に取り付けられ、銀又は銀合金30によって、酸素分離容器29との境界部31がシールされている。
【0064】
この構造は、本発明の複合体の組み合わせによって、高温(例えば、850℃)に昇温された酸素分離容器29を領域32と領域33に分割した構造となっている。本装置は、基本的には酸化物イオン透過性の酸化物層を含んだ一端が封じられた円筒形状の中空部材21によって、酸素を領域32から領域33に分離回収するため、領域32に存在する酸素の分圧を領域33の酸素分圧より高く設定しておけばよい。例えば、領域32に1MPaに加圧した空気を導入しておけば、領域32の酸素分圧は0.1MPaより高くなるため、常圧の領域33(常圧酸素=0.1MPa)で分離回収することが可能になる。この際、3種類の境界部(24、28、31)が銀又は銀合金(23、27、30)によってシールされているため、両領域(32、33)が混合することなく、高純度の酸素が分離回収される。そして、領域32に常にフレッシュな空気を供給することにより、酸素分離を長期間にわたり持続させることができる。フレッシュな空気を供給しながら一定の加圧状態に保つ方法は、例えば、昇圧器によって加圧した空気を流量制御装置によって一定流量で導入口34より供給し、酸素分離によって酸素濃度が低下した酸素貧化空気を、背圧弁(図示せず)を使って排出口35より排出させることにより実現することができる。
【0065】
領域32の加圧空気の圧力は、高ければ高いほど酸素透過の駆動力が大きくなるため分離速度を上げることができるが、あまり上げすぎると両領域の差圧が大きくなりすぎて複合体の構成部材が破損する危険性が出てくる。一方、加圧空気の圧力をあまりに下げすぎると酸素分圧が0.1MPaを下回り、酸素を分離することができない。また、酸素分圧を0.1MPaより若干高いレベルに設定しても、分離によって空気側の酸素濃度が低下して実効的にほとんど酸素透過の駆動力が発生しない状況となる。これを避けるには、供給するフレッシュな空気の導入量を無限に上げ、酸素濃度の低下を実質上無視できるようにすればよいが、実際的ではない。従って、酸素分離に適当な空気の圧力(括弧内−酸素分圧)としては、0.5MPa(0.105MPa)以上、3MPa(0.63MPa)以下であり、更に望ましくは、0.6MPa(0.126MPa)以上、2MPa(0.42MPa)以下である。
【0066】
酸化物イオン透過性の酸化物層を有する一端が封じられた中空部材21は、前述したように、酸化物イオン透過性の酸化物層のみからなっていてもよいし、酸化物イオン透過性の酸化物層が一端が封じられた円筒形状の多孔体上に形成された構造でもよい。更に、酸化物イオン透過性の酸化物層に補修層が形成されていてもよい。いずれにしても、酸化物イオンのみ輸送し、その他のガス成分に対しては透過させない構造となっている。
【0067】
に挙げた例では、フランジ部材22と集積板26を別の材料からなるものとし、両者のシール性を実現するために、銀又は銀合金27を用いた。この構造は、中空部材21とフランジ部材22の複合体を一つのユニットとしてメンテナンス(交換など)を行うことを想定した場合、利便性に優るためである。一方、このような利便性より装置構造の簡便性を重視する場合には、集積板26に中空部 21を直接組み合わせて、銀又は銀合金27を用いて境界部をシールする構造とすれば、22〜25を省略することもできる。
【0068】
−隔膜リアクターの構成−
次に、本発明によるシール性に優れた複合体を用いた隔膜リアクターの例を図に示す。これは、メタンを主成分とする天然ガスと空気を酸化物イオン透過性の酸化物で隔離し、空気側から天然ガス側に輸送された酸素イオンが、天然ガス側の酸化物表面でメタンを部分酸化して合成ガス(一酸化炭素と水素)を得る装置の例である。図では便宜上2つの複合体を描いているが、さらに多くの複合体を設置しても、基本的な構造は変わらない。また、空気の代わりに酸素を用いてもよい。
【0069】
中空部材37は、銀又は銀合金39によってフランジ部材38との境界部40がシールされた構造となっている。また、本装置は、中空部材37の固定を助け、且つ銀又は銀合金39の万が一の流出を防ぐ中芯部材41を具備している。37〜41よりなる構造体は、集積板42に取り付けられており、銀又は銀合金43によって、集積板42との境界部44がシールされている。更に、集積板42は、リアクター容器45に取り付けられ、銀又は銀合金46によって、リアクター容器45との境界部47がシールされている。
【0070】
この構造は、本発明の複合体の組み合わせによって、高温(例えば、850℃)に昇温されたリアクター容器45を領域48と領域49に分割した構造となっている。本装置は、空気を空気導入口52より供給し、酸化物イオン透過性の酸化物層を有する一端が封じられた中空部材37を通って、天然ガスの存在する領域48側に酸化物イオンが輸送され、中空部材37表面において天然ガスを部分酸化する。領域48は、還元性ガスであるため極端に酸素分圧が低い状態になっているため、常圧でも加圧状態でもよい。また、領域49側は、これに比して極めて高い酸素分圧になっているため、加圧してもよいし、常圧のままでも構わない。この際、複合体のシール性が悪いと両領域のガスが中空部材37表面以外で混合されるため、完全酸化反応が起こるなど、望ましい反応に制御することができなかったり、最悪の場合、混合により爆発の危険性が生ずる。本複合体の場合、3種類の境界部(40、44、47)が銀又は銀合金(39、43、46)によってシールされているため、高効率のリアクターとして動作させることができる。
【0071】
天然ガスを供給しながら一定の加圧状態に保つ場合には、酸素分離装置の場合と同様、例えば、加圧した天然ガスを流量制御装置によって一定流量で導入口50より供給し、部分酸化されて生成した合成ガスを、背圧弁(図示せず)を使って排出口51より排出することにより実現することができる。一方、空気を供給しながら一定の加圧状態に保つ場合には、加圧した空気を流量制御装置によって一定流量で導入口52より供給し、中空部材37の透過に寄与しなかった酸素貧化空気を、背圧弁(図示せず)を使って排出口53より排出することにより実現することができる。
【0072】
領域48と領域49の圧力バランスは、酸素分離装置の時のような制限は特にない。但し、領域48に導入する天然ガスは、もともと高圧で供給され、また回収される合成ガスも、高圧のままその後の反応に供される場合が多いので、そういった場合には、加圧された状態で動作させる。なお、加圧範囲は、リアクターにかかる負荷を考えて選定されるが、一般には3MPa程度以下であり、望ましくは2MPa程度以下である。一方、領域49に導入する空気は、天然ガスと同程度に加圧して導入することにより両領域にかかる差圧を最小限にすることができる点で望ましいが、加圧する分コストアップにつながるため、圧力条件は適宜決定される。
【0073】
酸化物イオン透過性の酸化物層を有する一端が封じられた中空部材37は、前述したように、酸化物イオン透過性の酸化物層のみからなっていてもよいし、酸化物イオン透過性の酸化物層が一端が封じられた円筒形状の多孔体上に形成された構造でもよい。さらに、酸化物イオン透過性の酸化物層に補修層が形成されていてもよい。いずれにしても、酸化物イオンのみ輸送し、その他のガス成分に対しては透過させない構造となっている。また、中空部材37の天然ガス側最表面には、メタンを部分酸化させる触媒層が形成されている。この触媒層には、触媒活性のあるものを含んでいればいずれを用いてもよい。例えば、Ni、Ruなど一般に知られているものが好適に使用される。
【0074】
に挙げた例では、フランジ部材38と集積板42を別の材料からなるものとし、両者のシール性を実現するために、銀又は銀合金43を用いた。この構造は、中空部材37とフランジ部材38の複合体を一つのユニットとしてメンテナンス(交換など)を行うことを想定した場合、利便性に優るためである。一方、このような利便性より装置構造の簡便性を重視する場合には、集積板42に中空部材37を直接組み合わせて、銀又は銀合金43を用いて境界部をシールする構造とすれば、38〜41を省略することもできる。
【0075】
【実施例】
実際に、次のようにして図で例示した酸素分離装置を組み上げた。即ち、中空部材21は、酸化物イオン透過性の酸化物層が一端が封じられた円筒形状の多孔体上に形成された構造とし、フランジ部材22、及び中芯部材25はSUS304、集積板26、及び酸素分離容器29はSUS310Sを用いた。中空部材21は、スラリーコート法を用いて、多孔体上に約50μmの厚さの酸化物イオン透過性酸化物層を形成した。多孔体と、その上に形成される酸化物層は同一組成の酸化物とした。また、複数部材を組み合わせて形成される貯留部に銀粘土を挿入し、銀の軟化温度で熱処理して、銀からなる23、27及び30を形成した。
【0076】
領域32の圧縮空気の圧力を1MPaに保持し、850℃にて実験を行ったところ、毎分600ccの酸素が分離生成することを確認した。得られた酸素の純度は約98%であり、2%の窒素ガスが混入していることがわかったが、詳細に原因を追究したところ、中空部材21の多孔体上に形成された酸化物イオン透過性の酸化物層において極微量のガスリークが認められた。
【0077】
そこで、スラリーコート法で用いたスラリーに、開放端を除く中空部材21の表面を浸漬し、中空部材21の内側を減圧することにより、リーク箇所を選択的に補修した。補修後、焼成して得た中空部材21は、酸化物イオン透過性酸化物層の厚さは変化しておらず、上述と同様の実験で、ほぼ同じ速度で酸素を分離できることを確認するとともに、リークは完全に抑えられ、99.999%以上の純度の酸素を得ることに成功した。このことから、複合体に存在する境界部においてはいっさいのリークはなく、高温において完全なシール性が実現できていることが確認された。
【0078】
また、上記酸素分離装置を室温まで冷却後、再度850℃に昇温する熱サイクルを10回加えた後、850℃で再度実験したところ、1回目の実験を完全に再現できることが確認された。
【0079】
【発明の効果】
本発明によれば、高温で高い信頼性を有するシール性に優れた複合体を提供でき、これまでシール性改善がネックとなり開発が遅れている幅広い分野に対して、実用化の可能性を高めることができる。特に、純酸素、酸素富化空気などの製造装置、炭化水素ガスの部分酸化に代表される隔膜リアクター、固体酸化物燃料電池、酸素純化装置、及び熱交換器等に応用することで、開発のスピードアップに大きく貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の好ましい具体的であって、1つ以上の酸化物材料を含む複数の部材を組み合わせて形成される貯留部を有する構造体と銀又は銀合金との複合体の断面模式図である。
【図2】 本発明の別の好ましい具体的であって、酸化物イオンの透過面積を増大させるのに効果的な複合体の断面模式図である。
【図3】 図2で示した複合体の別の好ましい具体的であって、酸化物イオンの透過面積を増大させるのに効果的な複合体の断面模式図である。
【図】 本発明によるシール性に優れた複合体を用いた酸素分離装置の例を示した図である。
【図】 本発明によるシール性に優れた複合体を用いた隔膜リアクターの例を示した図である。
【符号の説明】
1 貯留部を有する構造体を形成する1つの部材
2 貯留部を有する構造体を形成する別の部材
銀又は銀合金
4 部材1と部材2の境界部
5 貯留部を有する構造体を形成する1つの部材
6 貯留部を有する構造体を形成する別の部材
7 貯留部を有する構造体を形成するさらに別の部材
銀又は銀合金
9 部材5と部材6の境界部
10 部材5と部材7の境界部
11 中空部材
12 フランジ部材
13 銀又は銀合金
14 中空部材11とフランジ部材12の境界部
15 中芯部材
16 別の部材
21 中空部材
22 フランジ部材
23 銀又は銀合金
24 中空部材21とフランジ部材22の境界部
25 中芯部材
26 集積板
27 銀又は銀合金
28 フランジ部材22と集積板26の境界部
29 酸素分離容器
30 銀又は銀合金
31 集積板26と酸素分離容器29の境界部
32 複合体によって隔離された1つの領域
33 複合体によって隔離された別の領域
34 空気導入口
35 酸素貧化空気排出口
36 分離・回収酸素
37 中空部材
38 フランジ部材
39 銀又は銀合金
40 中空部材37とフランジ部材38の境界部
41 中芯部材
42 集積板
43 銀又は銀合金
44 フランジ部材38と集積板42の境界部
45 隔膜リアクター容器
46 銀又は銀合金
47 集積板42と隔膜リアクター容器45の境界部
48 複合体によって隔離された1つの領域
49 複合体によって隔離された別の領域
50 天然ガス導入口
51 合成ガス排出口
52 空気導入口
53 酸素貧化空気排出口

Claims (7)

  1. 1つ以上の酸化物材料を含む複数の部材を組み合わせて形成される貯留部を有する構造体と、前記構造体を構成する前記部材の軟化温度より低温の軟化温度を有する銀または銀合金を含む複合体であって、
    前記部材の室温から850℃までの平均線熱膨張係数が、16×10-6/℃以上26×10-6/℃以下であり、前記銀または銀合金が前記貯留部に充填され、且つ前記構造体を構成する前記部材の組み合わせ境界部の一部又は全部に前記銀または銀合金が充填されてなることを特徴とするシール性を有する複合体。
  2. 前記構造体を構成する前記各部材は、セラミックス同士、又はセラミックスと金属の組み合わせとして構造体が構成されることを特徴とする請求項1記載のシール性を有する複合体。
  3. 前記構造体を構成する前記部材の一部が、酸化物イオン透過性を有する酸化物材料であることを特徴とする請求項1又は2に記載のシール性を有する複合体。
  4. 酸化物イオン透過性の酸化物層を有し一端が封じられた中空部材とフランジ部材とを少なくとも組み合わせてなる構造体と、銀又は銀合金との複合体であって、
    前記構造体は、室温から850℃までの平均線熱膨張係数が、16×10-6/℃以上26×10-6/℃以下であり、前記中空部材の開放端と前記フランジ部材とを組み合わせて形成される貯留部を有し、前記貯留部に前記銀又は銀合金を充填してなることを特徴とするシール性を有する複合体。
  5. 室温から 850 ℃までの平均線熱膨張係数が 16 × 10 -6 / ℃以上 26 × 10 -6 / ℃以下であって、1つ以上の酸化物材料を含む複数の部材を組み合わせて貯留部を有する構造体を形成する工程と、
    前記構造体を構成する前記部材よりも低温で軟化する、銀、銀合金、銀を含む粘土、銀合金を含む粘土、銀を含むスラリー、及び銀合金を含むスラリーから選ばれる少なくとも1種の金属材料を前記貯留部に挿入する工程と、
    少なくとも前記貯留部を、当該貯留部に挿入された前記金属材料の軟化温度以上前記構造体を構成する前記部材の軟化温度未満の温度範囲に加熱して、前記金属材料を前記貯留部及び前記構造体を構成する部材の組み合せ境界部の少なくとも一方に充填しながら、前記金属材料を硬化させる工程とを含むことを特徴とするシール性を有する複合体の製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のシール性を有する複合体を備えてなる酸素分離装置。
  7. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のシール性を有する複合体を備えてなる隔膜リアクター。
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