対象物の平面に向けてレーザ光を照射し、その平面に対して水平方向にレーザ光を走査させることにより表面加工を行うレーザ加工装置が知られている。この種のレーザ加工装置には、照射するレーザ光を集光させるための集光部が備えられており、レーザ光を集光させてエネルギー密度の高い焦点位置を対象物の平面上に合わせることにより、当該平面に対する印字や剥離等の加工を行うことができる。このとき、レーザ光の集光角を大きくすれば、焦点位置におけるレーザ光のビーム径が小さくなりエネルギー密度が高くなるので、より微細な加工を行うことができる。
一般的なレーザ加工装置は、固体又は気体からなるレーザ媒質をレーザ励起光で励起させることによりレーザ光を発生させる。固体のレーザ媒質を励起させることにより発生するレーザ光は、固体レーザと呼ばれており、レーザ媒質としてNd:YAGやNd:YVO4などが用いられる。一方、気体のレーザ媒質を励起させることにより発生するレーザ光は、気体レーザと呼ばれており、レーザ媒質としてCO2やArなどが用いられる。一般的に、固体レーザを用いたレーザ加工装置には、断続的にレーザ光を発生するパルス発振PW(Pulse Wave)が採用され、気体レーザを用いたレーザ加工装置には、連続的にレーザ光を発生する連続発振CW(Continues Wave)が採用される。
固体レーザと気体レーザとでは波長等の特性が異なるため、ユーザは、用途に応じていずれかのレーザ光を用いたレーザ加工装置を選択している。一般的に、固体レーザの波長は気体レーザの波長よりも短いが、波長が短いレーザ光の方が、集光角を大きくすることにより、焦点位置におけるレーザ光のビーム径を小さくしてエネルギー密度を高くすることができるので、固体レーザは微細加工に適している。しかし、集光角を大きくした場合には、レーザ光の光軸方向に沿った焦点位置のずれに対して、対象物の表面上におけるビーム径の変動量が大きくなるといった特性もある。
一方で、レーザ光の焦点位置を光軸方向に沿って移動可能なレーザ加工装置も提案されている(例えば、特許文献1)。このような機構を利用すれば、レーザ光の光軸に対して直交方向(X方向及びY方向)にレーザ光を走査させるだけでなく、レーザ光の光軸方向(Z方向)に焦点位置を移動させることができるので、2次元の平面以外に曲面などの3次元形状の表面にも加工を行うことができる。
図28及び図29は、従来のレーザ加工装置200,300の一例を示した斜視図である。これらのレーザ加工装置200,300には、Z方向に焦点位置を移動させるような構成は備えられておらず、対象物に対してX方向及びY方向にのみレーザ光を走査させることができるようになっている。
図28に示したレーザ加工装置200は、レーザ発振部250、ビームエキスパンダ253、走査部209及び集光部215などの各構成部材を本体フレーム220で保持することにより形成されている。レーザ発振部250には、固体又は気体のレーザ媒質が備えられており、このレーザ媒質にレーザ励起光を入射させることにより、レーザ媒質を励起させてレーザ光を照射する。レーザ発振部250から照射されたレーザ光は、図28に破線で示すように、ビームエキスパンダ253、走査部209及び集光部215を通過して、装置の下面から対象物に向けて出力される。
ビームエキスパンダ253にはレンズが備えられており、レーザ発振部250からビームエキスパンダ253に入射したレーザ光は、ビームエキスパンダ253によりビーム径が拡大された後、走査部209へ送られる。走査部209には、1対のガルバノモータ251a,251bが備えられている。1対のガルバノモータ251a,251bの各回動軸にはガルバノミラー(不図示)が固定されており、ビームエキスパンダ253からのレーザ光は、これらのガルバノミラーで順次に反射された後、集光部215を通って対象物に照射される。集光部215は、レーザ光を対象物に向けて所定の集光角で集光させるための集光レンズであり、例えばfθレンズからなる。
各ガルバノモータ251a,251bは、回動軸が互いに直交するように配置されており、これらの直交する回動軸に各ガルバノミラーが取り付けられている。これにより、対象物に照射されるレーザ光は、一方のガルバノモータ251aを駆動させてガルバノミラーを回動させることにより走査される方向(X方向)と、他方のガルバノモータ251bを駆動させてガルバノミラーを回動させることにより走査される方向(Y方向)とが直交している。したがって、1対のガルバノモータ251a,251bをそれぞれ駆動させることにより、レーザ光の光軸に対して直交するX方向及びY方向にレーザ光を走査させることができる。
本体フレーム220には、互いに間隔を隔てて平行に配置された第1金属板221及び第2金属板222が含まれる。第1金属板221には、レーザ発振部250及びビームエキスパンダ253が取り付けられており、ビームエキスパンダ253に固定されているモータ保持台225により1対のガルバノモータ251a,251bが保持されている。レーザ発振部250には、第1金属板221に取り付けられる面とは反対側の面に、ヒートシンク258が固定されている。ヒートシンク258は、金属製の薄板が互いに平行になるように複数枚連結されることによって表面積の大きい構造に形成され、レーザ発振部250に取り付けられることにより、レーザ発振部250から発生する熱を効率よく放熱することができる。
第2金属板222の中央部には開口222aが形成されている。図28には図示していないが、ヒートシンク258の上方にはファンが配置されており、このファンが駆動されることにより、外部の空気が装置内に導入され、図28に矢印A2で示すように、開口222aを通ってヒートシンク258に供給されるようになっている。ヒートシンク258に供給された空気が複数枚の薄板の間を通過する際に、それらの薄板との間で熱交換が行われ、温まった空気がファンを介して外部に送り出されることにより、レーザ発振部250から発生する熱が放熱される。
レーザ発振部250、ビームエキスパンダ253、モータ保持台225及びヒートシンク258などは、第1金属板221と第2金属板222との間に配置されている。第2金属板222には、第1金属板221に対向する面とは反対側の面に、ガルバノモータ251a,251bに駆動電流を供給する走査回路基板256が取り付けられている。この走査回路基板256には、増幅器などの各種電子部品が実装されている。
図29に示したレーザ加工装置300は、図28のレーザ加工装置200と同様に、レーザ発振部350、ビームエキスパンダ353、走査部309及び集光部315などの各構成部材を本体フレーム320で保持することにより形成されている。レーザ発振部350、ビームエキスパンダ353、走査部309及び集光部315の構成は、図28のレーザ加工装置200と同様であり、レーザ発振部350から照射されたレーザ光は、図29に破線で示すように、ビームエキスパンダ353によりビーム径が拡大された後、走査部309において1対のガルバノミラーで順次に反射され、集光部315を介して対象物に照射される。
本体フレーム320には、レーザ発振部350及びビームエキスパンダ353が取り付けられた1枚の金属板321が含まれる。この金属板321におけるレーザ発振部350及びビームエキスパンダ353が取り付けられている面と反対側の面には、図28のレーザ加工装置200と同様の構成を有するヒートシンク358が取り付けられている。ヒートシンク358の側方にはファン359が配置されており、このファン359が駆動されることにより、図29に矢印A3で示すように外部の空気がヒートシンク358に供給され、熱交換後の空気がファン359を介して外部に送り出される。これにより、レーザ発振部350から発生する熱が、金属板321及びヒートシンク358を介して効率よく放熱される。
各回動軸にガルバノミラーが取り付けられた1対のガルバノモータ351a,351bは、上記金属板321には直接取り付けられていないモータ保持台325により保持されている。このモータ保持台325には、ガルバノモータ351a,351bに駆動電流を供給する走査回路基板356が取り付けられている。走査回路基板356には、図28のレーザ加工装置200と同様に、増幅器などの各種電子部品が実装されている。
特開2000−202655号公報
図1は、本発明の実施の形態によるレーザ加工装置100の一構成例を示したブロック図である。このレーザ加工装置100は、対象物Wにレーザ光Lを照射することにより表面加工を行うための装置であり、レーザ制御部1、レーザ出力部2及び入力部3を備えている。本実施の形態において説明する表面加工には、剥離などの加工の他、文字やバーコードを対象物Wの表面に印字するマーキングなどの各種加工が含まれるものとする。
入力部3は、このレーザ加工装置100の動作に関する入力操作をユーザが行うための入力手段である。この例では、入力部3には液晶表示器からなる表示部(不図示)が備えられており、表示部の表示画面に各種情報を表示させることができる。表示部の表示画面上にはタッチパネルが取り付けられており、ユーザがタッチパネルに指を触れることにより、表示画面に表示されたボタンを選択する操作を行うことができるようになっている。ただし、このような構成に限らず、ユーザが押操作するための操作キーが入力部3に備えられたような構成であってもよいし、パーソナルコンピュータなどの入力装置が入力部3として用いられるような構成であってもよい。
レーザ制御部1は、レーザ出力部2の動作を制御するための制御装置であり、制御部4、メモリ部5、励起光発生部6及び電源7を備えている。制御部4は、プロセッサからなり、励起光発生部6やレーザ出力部2に備えられた各部の制御を行う。メモリ部5は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの半導体メモリからなり、制御部4が実行するコンピュータプログラムの他、入力部3からの入力信号に基づく当該レーザ加工装置100の動作設定などが記憶される。励起光発生部6は、電源7から駆動電圧が印加され、レーザ出力部2に供給するレーザ励起光を発生する。
図2は、励起光発生部6の一構成例を示した斜視図である。この励起光発生部6は、レーザ励起光源10及び集光部11をケーシング12内に固定することにより形成されている。レーザ励起光源10は、複数のレーザダイオードを一直線状に並べることにより形成されたレーザダイオードアレイを備えており、各レーザダイオードからレーザ光が放射されることにより、光軸が互いに平行な複数のレーザ光が集光部11に入射するようになっている。
集光部11は、集光レンズからなり、レーザ励起光源10から入射した複数のレーザ光を集光することによりレーザ励起光として出力する。集光部11から出力されるレーザ励起光は、光ファイバケーブル13を介してレーザ出力部2へ送られ、後述するように、このレーザ励起光を用いてレーザ出力部2内でレーザ媒質8が励起されることにより、対象物Wに照射するためのレーザ光Lが発生するようになっている。
図3は、レーザ出力部2の内部構成の一例を示した斜視図である。図1及び図3に示すように、レーザ出力部2は、レーザ発振部50、ミキシングミラー54、ビームエキスパンダ53、ベンドミラー55、走査部9、集光部15、走査回路基板56、ガイド用光源60、撮像部57、ヒートシンク58及びファン59などの各構成部材を本体フレーム20で保持することにより形成されている。
レーザ発振部50は、レーザ制御部1から光ファイバケーブル13を介して入力されるレーザ励起光をレーザ媒質8に入射させることにより、レーザ媒質8を励起させてレーザ光Lを照射するレーザ照射手段である。固体のレーザ媒質8としては、例えばNd:YAGやNd:YVO4などを用いることができる。この例では、ロッド状に形成されたNd:YAGがレーザ媒質8として使用され、発生するレーザ光Lの波長が1064nmに設定されている。
図3に示すように、レーザ出力部2の中央部には1枚の金属板21が配置されており、この金属板21が本体フレーム20の一部を構成している。金属板21は、熱伝導性の高い材料により形成され、ここではアルミ製の金属板が使用されている。金属板21の一方の主面には、レーザ発振部50が取り付けられている。金属板21の他方の主面には、レーザ発振部50に対向する位置にヒートシンク58が取り付けられている。ヒートシンク58は、金属製の薄板58aが互いに平行になるように複数枚連結されることによって表面積の大きい構造に形成された放熱部材であり、レーザ発振部50から発生する熱が金属板21を介してヒートシンク58に伝導されるようになっている。
ファン59は、ヒートシンク58の側方であって、ヒートシンク58に対して薄板58aが延びる方向に隣接した位置において、本体フレーム20の外側に取り付けられている。このファン59が駆動されることにより、図3に矢印A1で示すように、外部の空気が装置内に導入され、ヒートシンク58に供給されるようになっている(図13も参照)。ヒートシンク58に供給された空気が複数枚の薄板58aの間を通過する際に、それらの薄板58aとの間で熱交換が行われ、温まった空気がファン59を介して外部に送り出されることにより、レーザ発振部50から発生する熱が放熱される。
レーザ発振部50から照射されたレーザ光Lは、図3に破線で示すように、ミキシングミラー54、ビームエキスパンダ53、ベンドミラー55、走査部9及び集光部15を介して、レーザ出力部2から対象物Wに向けて出力される。集光部15は、レーザ光Lを対象物Wに向けて所定の集光角で集光させるための集光レンズであり、例えばfθレンズからなる。ビームエキスパンダ53は、後述するように2つのレンズを備えており、焦点位置制御用モータ53aを駆動させることにより、これらのレンズの相対距離を変化させ、集光部15を介して対象物Wへ集光されるレーザ光Lの焦点位置を光軸方向に移動させることができる。このとき、ビームエキスパンダ53、焦点位置制御用モータ53a及び制御部4は、レーザ光Lの焦点位置を光軸方向に移動させる焦点移動制御手段を構成している。
走査部9には、1対のガルバノミラー14a,14bと、これらのガルバノミラー14a,14bがそれぞれ回動軸に固定されたガルバノモータ51a,51bとが備えられている。走査回路基板56には、ガルバノモータ51a,51bを駆動させるためのスキャナ駆動回路52が形成されている。レーザ発振部50から照射されたレーザ光Lは、ミキシングミラー54で反射され、ビームエキスパンダ53を通過した後、ベンドミラー55で反射されて走査部9に入射する。走査部9に入射したレーザ光Lは、1対のガルバノミラー14a,14bで順次に反射された後、集光部15を介して対象物Wに照射される。各ガルバノモータ51a,51bは、回動軸が互いに直交するように配置されており、これらの直交する回動軸に各ガルバノミラー14a,14bが取り付けられている。
これにより、対象物Wに照射されるレーザ光Lは、一方のガルバノモータ51aを駆動させてガルバノミラー14aを回動させることにより走査される方向(X方向)と、他方のガルバノモータ51bを駆動させてガルバノミラー14bを回動させることにより走査される方向(Y方向)とが直交している。したがって、走査部9及びその動作を制御する制御部4は、対象物Wに向けて照射するレーザ光Lの光軸に対して直交するX方向及びY方向にレーザ光Lを走査させる走査手段を構成し、1対のガルバノモータ51a,51bは、X方向及びY方向にレーザ光Lを走査させるために駆動される走査用モータを構成している。この場合、上記焦点移動制御手段を構成しているビームエキスパンダ53、焦点位置制御用モータ53a及び制御部4は、対象物Wに向けて照射するレーザ光Lの光軸に対して平行なZ方向にレーザ光Lを走査させる手段と定義することもできる。
ガイド用光源60は、後述するように、レーザ出力部2の設置位置を調整する際に使用されるガイド光を照射する。ミキシングミラー54は、一方からの入射光を反射させ、他方からの入射光を透過させるミラーであり、ガイド用光源60から照射されるガイド光は、ミキシングミラー54を透過した後、レーザ光Lと同じ光路を通って対象物Wに照射される。ベンドミラー55は、ミキシングミラー54と同様に、一方からの入射光を反射させ、他方からの入射光を透過させるミラーである。撮像部57は、CCD(Charge Coupled Device)カメラにより構成され、ガルバノミラー14a,14bにより反射されて映し出される対象物Wの表面の画像が、ベンドミラー55を透過して撮像部57で撮像される。撮像部57で撮像した対象物Wの表面の画像は、表示装置(不図示)の表示画面に表示させることができる。
この例では、集光部15が、レーザ光Lの出射方向に対して、ガルバノミラー14a,14bよりも後に配置されているような構成が示されているが、このような構成に限らず、ビームエキスパンダ53とガルバノミラー14a,14bの間に配置された構成であってもよい。例えば、ビームエキスパンダ53の出射レンズ18を集光部15として兼用することも可能である。このように、ビームエキスパンダ53とガルバノミラー14a,14bの間に集光部15を配置することにより、ガルバノミラー14a,14bよりも後に集光部15を配置するような構成と比べて、より小さな光学系に設計することが可能であり、より高精度なスポット集光が可能となる。
図4は、レーザ発振部50の内部構成の一例を示した光路図である。レーザ発振部50は、レーザ媒質8、レンズ71〜73、ビームスプリッタ74、折り返しミラー75〜77、ダイクロイックミラー78、反射ミラー79、出力ミラー80、Qスイッチ81、アパーチャ82、ビームエキスパンダ83及びウィンドウ84などの各構成部材がケーシング70内に保持されることにより形成されている。ケーシング70は金属製であり、図3に示すように、レーザ発振部50はケーシング70ごと一体的に金属板21に取り付けられている。
レーザ制御部1から光ファイバケーブル13を介してレーザ発振部50に入力されるレーザ励起光は、レンズ71で集光されてビームスプリッタ74に入射する。ビームスプリッタ74は、入射したレーザ励起光の一部を透過させ、他のレーザ励起光を反射させることにより、互いに直交する2方向へレーザ励起光を分離させる。ビームスプリッタ74を透過したレーザ励起光は、折り返しミラー75で反射された後、レンズ72を通って反射ミラー79に入射する。反射ミラー79は、一方からの入射光を反射させ、他方からの入射光を透過させるミラーであり、レンズ72からのレーザ励起光は反射ミラー79を透過してレーザ媒質8の一端部に入射し、他端部から出射してダイクロイックミラー78で反射される。
一方、ビームスプリッタ74で反射されたレーザ励起光は、折り返しミラー76,77で順次に反射された後、レンズ73を通ってダイクロイックミラー78に入射する。ダイクロイックミラー78は、一方からの入射光を反射させ、他方からの入射光を透過させるミラーであり、レンズ73からのレーザ励起光はダイクロイックミラー78を透過してレーザ媒質8の他端部に入射し、一端部から出射して反射ミラー79で反射される。反射ミラーで反射されたレーザ励起光は、レーザ媒質8の一端部に再び入射し、他端部から出射してダイクロイックミラー78で反射される。
このようにして、ビームスプリッタ74で分離された2つのレーザ励起光は、それぞれレーザ媒質8を通過した後、ダイクロイックミラー78で反射され、Qスイッチ81及びアパーチャ82を通って出力ミラー80に入射する。出力ミラー80は、入射したレーザ励起光の一部を透過させ、他のレーザ励起光を反射させる。出力ミラー80で反射されたレーザ励起光は、アパーチャ82及びQスイッチ81を通って再びダイクロイックミラー78で反射され、レーザ媒質8の他端部に入射した後、一端部から出射して反射ミラー79で反射される。反射ミラー79で反射されたレーザ励起光は、レーザ媒質8の一端部に再び入射し、他端部から出射してダイクロイックミラー78で反射される。
このように、反射ミラー79及び出力ミラー80でレーザ励起光を反射させ、レーザ励起光をレーザ媒質8に繰り返し入射させることにより、レーザ光の誘導放出を行うことができる。すなわち、レーザ励起光の照射によって励起されたレーザ媒質8には、エネルギー準位の反転分布が形成され、この状態でレーザ媒質8の放出光をレーザ媒質8に再入射させれば、レーザ媒質8において同波長かつ同位相の光が新たに放出される。このようにしてレーザ媒質8の放出光が増幅され、レーザ光が生成される。
Qスイッチ81は、レーザ発振を制御するためのものであり、オン/オフ切替によってレーザ光を回折させる。Qスイッチ81は、オン状態のときにのみレーザ光を回折させ、オフ状態のときにはレーザ光を回折させることなくそのまま通過させる。アパーチャ82には、微小な開口部が形成されており、Qスイッチ81がオフ状態のときには、Qスイッチ81を通過したレーザ光がアパーチャ82を通過するが、Qスイッチ81がオン状態のときには、レーザ光が回折されることにより、Qスイッチ81を通過したレーザ光がアパーチャ82を通過できないようになっている。したがって、Qスイッチ81によるオン/オフ切替によって、レーザ光をパルス発振PW(Pulse Wave)により断続的に発生させることができる。アパーチャ82を通過した後、出力ミラー80を透過したレーザ光は、ビームエキスパンダ83によりビーム径が拡大された後、ウィンドウ84を通ってレーザ発振部50から出力される。
図5は、走査部9の一構成例を示した斜視図である。図6は、図5に示した走査部9を異なる角度から見た斜視図である。図7は、図5に示した走査部9の側面図である。図5及び図6では、走査部9とともにビームエキスパンダ53、ガイド用光源60、ミキシングミラー54、ベンドミラー55、ポインタ用光源64及び固定ミラー66も併せて図示している。また、図7では、走査部9とともにポインタ用光源64を併せて図示している。なお、図5〜図7では、説明を簡略化するために集光部15の構成を省略して示している。
レーザ発振部50から照射されたレーザ光Lは、ミキシングミラー54で反射されてビームエキスパンダ53に入射し、このビームエキスパンダ53でビーム径が調整された後、ベンドミラー55で反射される。ベンドミラー55で反射されたレーザ光Lは、1対のガルバノミラー14a,14bでさらに反射され、対象物Wへ照射される。このとき、1対のガルバノミラー14a,14bでレーザ光Lを走査することによって焦点位置が移動する領域を作業領域WSとし、この作業領域WSを対象物Wの表面に合わせることにより、エネルギー密度が高い焦点位置を対象物Wの表面に合わせて良好に表面加工を行うことができる。
レーザ光Lのエネルギー密度は、焦点位置に対してZ方向の両側に向かうにつれて徐々に低くなる。焦点位置を中心にして所定値以上のエネルギー密度が得られるZ方向の範囲は、焦点深度と呼ばれており、一般的には、焦点位置におけるエネルギー密度に対して半分以上のエネルギー密度が得られるZ方向の範囲として定義される。焦点深度は、焦点位置における集光角に依存しており、集光角が大きいほど焦点深度が小さくなる。
ガイド用光源60は、ガイド光Gを照射して作業領域WS内に所定のガイドパターンを表示させる。すなわち、ガイド用光源60からのガイド光Gがミキシングミラー54及びビームエキスパンダ53を通過し、ベンドミラー55で反射された後、1対のガルバノミラー14a,14bでさらに反射されることにより、作業領域WS内にガイドパターンが表示される。このガイドパターンは、ミキシングミラー54からレーザ光Lと同じ光路を通るガイド光Gによって、レーザ光Lの焦点位置を中心とした一定領域を表す図形として表示される。
ポインタ用光源64は、レーザ光Lの焦点位置を可視的に示すためのポインタ光Pを照射している。ポインタ光Pは、ガルバノミラー14bの裏面に形成されたポインタ用ミラー14d及び固定ミラー66で順次に反射され、レーザ光Lの焦点位置においてレーザ光Lの光軸と交差するように、作業領域WSに向けて照射される。したがって、対象物Wの表面にガイド光Gによるガイドパターンを表示させた状態で、そのガイドパターンの中心にポインタ光Pが照射されるようにレーザ出力部2の設置位置を調整することにより、作業領域WSを対象物Wの表面に合わせることができる。
図8及び図9は、ビームエキスパンダ53の動作によってレーザ光Lの焦点位置が移動する態様を示した側面図であり、図8は焦点位置がレーザ出力部2に対して遠い場合、図9は焦点位置がレーザ出力部2に近い場合を示している。図10は、ビームエキスパンダ53の一構成例を示した正面図及び断面図である。なお、図8及び図9では、説明を簡略化するために、ミキシングミラー54、ベンドミラー55及び集光部15の構成を省略して示している。
ビームエキスパンダ53には、レーザ発振部50からのレーザ光Lが入射する入射レンズ16と、入射レンズ16を通過したレーザ光Lを走査部9に向けて出射する出射レンズ18とが備えられている。入射レンズ16及び出射レンズ18は、互いに平行に配置され、焦点位置制御用モータ53aを含む駆動手段が入射レンズ16を平行移動させることにより、出射レンズ18との相対距離を変化させることができるようになっている。ただし、出射レンズ18を固定した状態で入射レンズ16を移動させるような構成に限らず、入射レンズ16を固定した状態で出射レンズ18を移動させるような構成であってもよいし、入射レンズ16及び出射レンズ18をそれぞれ移動させるような構成であってもよい。
入射レンズ16と出射レンズ18との相対距離が変化すると、出射レンズ18から出射されるレーザ光Lの集光角が変化することにより、レーザ光Lの光軸方向に焦点位置が移動し、レーザ出力部2に対する作業領域WSの距離が変化する。具体的には、入射レンズ16と出射レンズ18との相対距離が短くなると、図8に示すように焦点位置がレーザ出力部2から遠くなり、入射レンズ16と出射レンズ18との相対距離が長くなると、図9に示すように焦点位置がレーザ出力部2に近くなる。
図11は、集光角2θとスポット径2rの関係について説明するための模式図である。集光角2θは、焦点位置における中心点に対するレーザ光Lの漸近線の拡がり角であり、スポット径2rは、焦点位置におけるレーザ光Lのビーム径である。一般的に、集光角2θとスポット径2rとの間には、下記の関係式が成立する。ここで、λはレーザ光Lの波長であり、πは円周率である。
r=λ/πθ
このように、rはθに反比例し、λに比例している。したがって、集光角2θが大きくなるほどスポット径2rが小さくなり、波長λが短くなるほどスポット径2rが小さくなる。すなわち、集光角2θを大きくし、又は、波長λを短くすれば、スポット径2rを小さくすることができるので、焦点位置におけるエネルギー密度をより高くして、加工性能を向上させることができる。一般的に、固体のレーザ媒質を用いた場合の方が、気体のレーザ媒質を用いる場合よりも発生するレーザ光Lの波長λが短いので、本実施の形態のように固体のレーザ媒質8を用いた場合には、集光角2θを大きくすることによってスポット径2rを比較的小さくすることができる。
図12は、図3に示したレーザ出力部2の分解斜視図である。図13は、図3に示したレーザ出力部2を異なる角度から見た斜視図である。図14は、図13に示したレーザ出力部2の分解斜視図である。なお、以下の説明では、レーザ発振部50からレーザ光Lが照射される方向を前方、レーザ出力部2から対象物Wに向けてレーザ光Lが出力される方向を下方として説明する。本体フレーム20には、上述した金属板21の他に、下面板22、前面板23及び背面板24が含まれる。
図15は、下面板22の構成を示した図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図、(d)は背面図を示している。下面板22は、長方形に形成されたアルミ製の板状部材であり、その長手方向が前後方向に沿って延びている。下面板22の前側には、対象物Wに向けて出力されるレーザ光Lが通過するための開口22aが形成されており、この開口22aに集光部15が対向配置される。下面板22の上面における開口22aよりも前側には、前面板23が上方に向かって延びるように固定される。
図16は、前面板23の構成を示した図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図、(d)は背面図を示している。前面板23は、長方形に形成されたアルミ製の板状部材であり、その短手方向の長さが下面板22の短手方向の長さとほぼ一致している。前面板23は、その短手方向が下面板22の短手方向に沿うように下面板22の上面に固定され、その長手方向が上下方向に沿って延びている。前面板23の前面には、ガイド用光源60、ミキシングミラー54及びビームエキスパンダ53が、この順序で上下方向に並べて取り付けられている。下面板22の上面における前面板23よりも前方の領域には、撮像部57及びベンドミラー55が、この順序で前後方向に並べて取り付けられている。前面板23には、ミキシングミラー54が対向する位置に、レーザ発振部50からのレーザ光Lを通過させるための開口23aが形成されるとともに、ベンドミラー55が対向する位置に、走査部9に向けてレーザ光Lを通過させるための開口23bが形成されている。
図17は、背面板24の構成を示した図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図、(d)は正面図を示している。背面板24は、長方形に形成されたアルミ製の板状部材であり、その短手方向の長さが下面板22の短手方向の長さとほぼ一致している。背面板24は、その短手方向が下面板22の短手方向に沿うように下面板22の上面後端部に固定され、長手方向が上下方向に沿って延びている。背面板24の長手方向の長さは、前面板23の長手方向の長さとほぼ一致している。背面板24の上部右側には、前方に配置されるヒートシンク58に対向する位置に2つの開口24aが上下に並べて形成されており、これらの開口24aにそれぞれ対向するように、背面板24の背面に2つのファン59が取り付けられる。また、背面板24の中央部左側には、光ファイバケーブル13を通すための開口24bが形成されている。
図18は、金属板21の構成を示した図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図、(d)は背面図を示している。金属板21は、互いに平行に配置された前面板23及び背面板24の間に前後方向に延びるように配置される。金属板21は、その前後方向の長さが前面板23と背面板24の間隔とほぼ一致し、上下方向の長さが前面板23及び背面板24の長手方向の長さとほぼ一致している。したがって、金属板21を前面板23と背面板24の間に配置することにより、金属板21の前端面が前面板23の背面に当接し、後端面が背面板24の前面に当接する。また、金属板21の下端面が下面板22の上面に当接されることにより、金属板の上端面が前面板23及び背面板24の各上端面と面一になる。
金属板21は、その下端面、前端面及び後端面が、それぞれ下面板22、前面板23及び背面板24に固定される。金属板21は、下面板22、前面板23及び背面板24の各短手方向に対して中央部に配置されている。これにより、金属板21の左右両側には、それぞれ下面板22の上面、前面板23の背面、背面板24の前面により区画された空間が形成され、これらの空間内にレーザ出力部2の各種構成部材が配置されるようになっている。
金属板21の左側には、走査部9、レーザ発振部50、走査回路基板56及びビームサンプラ部65が配置される。ビームサンプラ部65は、レーザ発振部50から照射されるレーザ光Lの大部分を透過させるとともに、一部のレーザ光Lを反射させて、後述するパワーモニタ67へ供給する。ビームサンプラ部65は、金属板21の左側の空間において前面板23の背面に固定され、レーザ発振部50に備えられたウィンドウ84に対向する。
走査部9には、ガルバノモータ51a,51bを保持するモータ保持台25が備えられており、このモータ保持台25が、金属板21の左側の空間において下面板22の上面に取り付けられる。モータ保持台25が下面板22の上面に取り付けられた状態では、ガルバノモータ51a,51bの回動軸にそれぞれ取り付けられているガルバノミラー14a,14bが、下面板22に形成されている開口22aの上方に対向する。レーザ発振部50及び走査回路基板56は、この順序で金属板21の左側の主面に対して上下方向に並べて固定される。
レーザ発振部50のケーシング70は、当該ケーシング70の前側下部に矩形の凹部70aが形成されることにより、側面視においてL字状に形成されている。モータ保持台25は、少なくともその一部が凹部70a内に配置される。走査回路基板56は、ケーシング70の凹部70aよりも後側の下方に配置される。走査回路基板56は、ガルバノモータ51aを駆動させることによりレーザ光LをX方向に走査させるX方向走査回路基板56aと、ガルバノモータ51bを駆動させることによりレーザ光LをY方向に走査させるY方向走査回路基板56bとからなる。X方向走査回路基板56a及びY方向走査回路基板56bには、レーザ制御部1とレーザ出力部2を接続する配線ケーブルを介して、レーザ制御部1の電源7から電流が供給される。
X方向走査回路基板56aには、電源7からX方向走査回路基板56aに供給される電流を増幅してガルバノモータ51aに駆動電流を供給するオペアンプ(不図示)などの各種電子部品が実装されている。また、Y方向走査回路基板56bには、電源7からY方向走査回路基板56bに供給される電流を増幅してガルバノモータ51bに駆動電流を供給するオペアンプ(不図示)などの各種電子部品が実装されている。X方向走査回路基板56a及びY方向走査回路基板56bにそれぞれ実装されているオペアンプは、走査部9によりレーザ光Lを走査させるために駆動される走査用モータ51a,51bに駆動電流を供給する走査用増幅器である。X方向走査回路基板56a及びY方向走査回路基板56bは、互いに平行に配置され、それぞれの実装面が上方を向くように上下に並べた状態で、金属板21の左側の主面及び下面板22の上面に固定される。
金属板21の右側には、上述したヒートシンク58、ポインタ用光源64及び固定ミラー66の他に、パワーモニタ67及び焦点位置制御回路基板68が配置される。ヒートシンク58は、金属板21に固定されるアルミ製の取付板58bを備えており、この取付板58bにおける金属板21に当接する面とは反対側の面に、アルミ製の複数枚の薄板58aがそれぞれ右方向に突出するように連結されている。ポインタ用光源64は、前面板23の背面に固定される光源保持台64aにより保持されている。固定ミラー66は、下面板22の上面に固定されるミラー保持台66aにより保持されている。
パワーモニタ67は、レーザ発振部50から照射されるレーザ光Lのレーザ光量を検出するためのレーザ光量検出手段である。このパワーモニタ67は、金属板21の右側の主面に固定され、金属板21に形成されている開口21aを介して、レーザ発振部50から照射されてビームサンプラ部65により反射されるレーザ光Lを検出する。焦点位置制御回路基板68は、電源7から焦点位置制御回路基板68に供給される電流を増幅して焦点位置制御用モータ53aに駆動電流を供給するオペアンプ(不図示)などの各種電子部品が実装されている。この焦点位置制御回路基板68に実装されているオペアンプは、ビームエキスパンダ53によりレーザ光Lの焦点位置を移動させるために駆動される焦点位置制御用モータ53aに駆動電流を供給する焦点位置制御用増幅器である。
焦点位置制御回路基板68は、ヒートシンク58の下方において、金属板21の右側の主面及び下面板22の上面に固定される。ただし、本実施の形態のように焦点位置制御回路基板68が金属板21の右側の主面に固定されるような構成に限らず、金属板21の左側の主面に固定されるような構成であってもよい。この場合、X方向走査回路基板56a及びY方向走査回路基板56bが金属板21の右側の主面に固定されるような構成であってもよい。X方向走査回路基板56a、Y方向走査回路基板56b及び焦点位置制御回路基板68は、金属板21の左側又は右側の主面に適宜に固定することが可能であり、これらの回路基板の全てが、金属板21の左側又は右側のいずれか一方の主面に固定されるような構成であってもよい。
金属板21の前側下部には、走査部9を配置するための切欠き21bが形成されており、この切欠き21bに対して左側にモータ保持台25を配置し、右側に光源保持台64a及びミラー保持台66aを配置することにより、切欠き21bを介して金属板21の左右両側に跨って走査部9を配置することができる。金属板21の右側の主面には、切欠き21bに沿ってフード26が取り付けられることにより、レーザ出力部2の外部からヒートシンク58へ供給される空気が走査部9側へ流れるのを防止し、防塵効果を向上することができるようになっている。
本実施の形態では、レーザ発振部50、走査回路基板56及び焦点位置制御回路基板68を1枚の金属板21に取り付けて、それらの各部から発生する熱を当該金属板21に取り付けられているヒートシンク58を介して効率よく放熱することができる。レーザ発振部50はレーザ励起光でレーザ媒質8を励起させるため発熱量が多く、走査回路基板56や焦点位置制御回路基板68もガルバノモータ51a,51bや焦点位置制御用モータ53aに駆動電流を供給するオペアンプが実装されているため発熱量が多い。
図28や図29のような従来のレーザ加工装置200,300とは異なり、本実施の形態のレーザ加工装置100には、レーザ光Lの焦点位置を光軸方向に移動させるための焦点位置制御用モータ53aに駆動電流を供給する焦点位置制御回路基板68が備えられている。そのため、発生する熱も従来のレーザ加工装置200,300と比べて多くなるが、レーザ発振部50、走査回路基板56及び焦点位置制御回路基板68から発生する熱が1枚の金属板21を介してヒートシンク58から放熱されるような構成とすることにより、効果的に放熱を行うことができるとともに、装置を小型化することができる。
また、本実施の形態では、レーザ発振部50、走査回路基板56及び焦点位置制御回路基板68のうち最も発熱量の多いレーザ発振部50に対向する位置にヒートシンク58が取り付けられる。このような態様で金属板21にヒートシンク58を取り付けることにより、レーザ発振部50からヒートシンク58への熱伝導が効率よく行われるので、レーザ発振部50から発生する熱をより効果的に放熱することができる。
さらに、本実施の形態では、走査回路基板56及び焦点位置制御回路基板68が金属板21の異なる面に取り付けられる。これにより、走査回路基板56及び焦点位置制御回路基板68をそれぞれヒートシンク58に対して比較的近い位置に取り付けることができるので、これらの回路基板56,68からヒートシンク58への熱伝導が効率よく行われ、さらに効果的に放熱を行うことができる。
本実施の形態のように固体のレーザ媒質8に対して両端部からレーザ励起光を入射させるような構成を有するレーザ発振部50では、レーザ媒質に対して一端部のみからレーザ励起光を入射させるような構成と比べて出力されるレーザ光のエネルギーが高くなり、発熱量も多くなるが、上記のような構成により、レーザ発振部50から発生する熱を効果的に放熱することができる。また、本実施の形態のように断続的にレーザ光を発生させるような構成を有するレーザ発振部50では、Qスイッチ81が発熱するため、連続的にレーザ光を発生させるような構成と比べて発熱量が多くなるが、上記のような構成により、レーザ発振部50から発生する熱を効果的に放熱することができる。
以下では、図19〜図27を参照して、レーザ出力部2に備えられている各構成部材についてさらに詳細に説明する。
<ビームサンプラ部65>
図19は、ビームサンプラ部65の構成を示した図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は右側面図、(d)は背面図を示している。ビームサンプラ部65は、前面板23の背面に取り付けられる本体65aと、本体65aの一側面に取り付けられたミラー部65bとを備えている。本体65aは、ミラー部65bが取り付けられている面がレーザ発振部50から照射されるレーザ光Lに対して45°傾いて対向した状態で、前面板23に固定される。ミラー部65bは、レーザ発振部50から照射されるレーザ光Lの一部を反射させ、金属板21の開口21aを介してパワーモニタ67へ供給する。
<走査回路基板>
図20は、走査回路基板56の構成を示した図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は背面図、(d)は左側面図を示している。X方向走査回路基板56aは、長方形状の第1基板561aと、この第1基板561aの上方に対向するように配置される第2基板562aとからなる。第2基板562aは、第1基板561aよりも小さく形成され、第1基板561aの一部に対向するように配置される。ここでは、第2基板562aは、第1基板561aの後端部に固定され、第1基板561aに対して上方に一定間隔を隔てて平行に配置されている。
Y方向走査回路基板56bは、長方形状の第1基板561bと、この第1基板561bの上方に対向するように配置される第2基板562bとからなる。第2基板562bは、第1基板561bよりも小さく形成され、第1基板561bの一部に対向するように配置される。ここでは、第2基板562bは、第1基板561bの後端部に固定され、第1基板561bに対して上方に一定間隔を隔てて平行に配置されている。
X方向走査回路基板56aの第1基板561aの右側縁には、L字形状の基板固定部材56cが取り付けられている。同様に、Y方向走査回路基板56bの第1基板561bの右側縁には、L字形状の基板固定部材56dが取り付けられている。これらの基板固定部材56c,56dは、熱伝導性の高い材料で形成され、金属板21に当接させた状態で固定されることにより、X方向走査回路基板56a及びY方向走査回路基板56bから発生する熱を金属板21へ効率よく伝導することができるようになっている。ここでは、基板固定部材56c,56dは、アルミ製の板状部材をL字形状に折り曲げることにより形成されるものとする。
X方向走査回路基板56a及びY方向走査回路基板56bは、それぞれの第1基板561a,561bにおける左側縁の前後両端部が、ボス56eを介して連結され、これらのボス56e内を通して下面板22に締結されるねじ56fにより、下面板22に固定される。X方向走査回路基板56a及びY方向走査回路基板56bは、ボス56eにより互いに一定間隔を隔てて平行に連結される。
<パワーモニタ>
図21は、パワーモニタ67の構成を示した図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は背面図、(d)は左側面図を示している。パワーモニタ67は、円筒部67aと、この円筒部67aの右端面に連結された矩形板67bとからなる本体67cを備えている。パワーモニタ67は、円筒部67aの左端面が金属板21の右側の主面に当接した状態で固定される。本体67c内には、レーザ発振部50から照射されてビームサンプラ部65により反射されるレーザ光Lを検出するためのセンサ(不図示)が保持されており、円筒部67aの左端面に形成されている開口67dを介して、金属板21の開口21aを通過するレーザ光Lが取り込まれるようになっている。
<ヒートシンク>
図22は、ヒートシンク58の構成を示した図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は正面図、(d)は右側面図を示している。ヒートシンク58は、上述の通り、金属板21に固定されるアルミ製の取付板58bと、この取付板58bの右側面からそれぞれ右方向に向かって突出するアルミ製の複数枚の薄板58aとからなる。各薄板58aは、長方形状に形成され、その長辺が前後方向に延びるように矩形形状の取付板58bの右側面に連結されている。これにより、複数枚の薄板58aは、上下方向に互いに一定間隔を隔てて平行に配置されている。
<ミキシングミラー>
図23は、ミキシングミラー54の構成を示した図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は背面図、(d)は左側面図を示している。ミキシングミラー54は、前面板23の前面に取り付けられる本体54aと、本体54aの一側面に取り付けられたミラー部54bとを備えている。本体54aは、ミラー部54bが取り付けられている面が、レーザ発振部50から前面板23の開口23aを介して入射するレーザ光Lに対して45°傾いて対向した状態で、前面板23に固定される。本体54aの前面板23に対向する側面には開口54cが形成されており、レーザ発振部50から入射するレーザ光Lは、上記開口54cを介してミラー部54bで反射され、ビームエキスパンダ53へ送られる。
<ビームエキスパンダ>
図24は、ビームエキスパンダ53の構成を示した図であり、(a)は斜視図、(b)は背面図、(c)は底面図、(d)は左側面図を示している。ビームエキスパンダ53は、入射レンズ16及び出射レンズ18が上下に並んだ状態で、前面板23の前面に取り付けられる保持部材53dによって保持される。保持部材53dは、前面板23の前面に当接して固定される固定板53eと、固定板53eに連結された箱状の収容部53fとからなる。収容部53fには、その下面から下方に突出するようにビームエキスパンダ53が保持されるとともに、このビームエキスパンダ53を動作させるための焦点位置制御用モータ53aが内部に収容されている。収容部53fの右側面には、焦点位置制御回路基板68に接続され、焦点位置制御用モータ53aを焦点位置制御回路基板68に対して電気的に接続するための回路基板53gが取り付けられている。
<ベンドミラー>
図25は、ベンドミラー55の構成を示した図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は背面図、(d)は左側面図を示している。ベンドミラー55は、下面板22の上面に取り付けられる本体55aと、本体55aの一側面に取り付けられたミラー部55bとを備えている。本体55aは、ミラー部55bが取り付けられている面が、ビームエキスパンダ53から入射するレーザ光Lに対して45°傾いて対向した状態で、下面板22に固定される。本体55aの撮像部57に対向する側面には開口55cが形成されており、走査部9のガルバノミラー14a,14bにより反射されて映し出される対象物Wの表面の画像が、ベンドミラー55及び開口55cを透過して撮像部57で撮像されるようになっている。
<撮像部>
図26は、撮像部57の構成を示した図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は背面図、(d)は左側面図を示している。撮像部57は、CCDカメラ57aと、ベンドミラー55を透過した光をCCDカメラ57aに導くためのミラー部57bとを備えている。CCDカメラ57aは、カメラ保持部材57cにより保持され、このカメラ保持部材57cが下面板22の上面に固定されることにより、CCDカメラ57aが左方向を向いた状態で取り付けられる。ミラー部57bは、ミラー保持部材57dにより保持されている。ミラー保持部材57dは、ミラー部55bが取り付けられている面が、ベンドミラー55を透過する光に対して45°傾いた状態で、下面板22に固定される。これにより、ベンドミラー55を透過する光がミラー部57bで反射して、CCDカメラ57aに入射するようになっている。
<ファン>
図27は、ファン59の構成を示した図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は背面図、(d)は左側面図を示している。ファン59は、背面板24の背面に固定されるカバー部材59bと、カバー部材59内に回転自在に保持された羽根59aと、羽根59aを回転駆動させるためのモータ59cとを備えている。カバー部材59bは、直方体形状の箱状に形成され、その内部に羽根59a及びモータ59cを収容している。羽根59aはモータ59cの駆動軸(不図示)に回転自在に取り付けられ、モータ59cが駆動されることにより、駆動軸を中心に高速で回転するようになっている。
以上、レーザ出力部2に備えられている各構成部材の具体的構成について説明したが、本発明は、上記のような構成を有するレーザ加工装置100に限らず、本発明の範囲内において他の構成を有するレーザ加工装置にも適用可能である。