JP4788050B2 - 磁場装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷却した磁性体に磁場を作用させて対象物の物理的、化学的性質を変化させる磁場処理装置やそれらの物性測定装置等に応用される、または、冷却した磁性体を着磁して磁石装置に応用される磁場装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、バルク形状(塊状)の超電導体に磁場を印加することで、超伝導体を強力なバルク磁石として応用することが検討されている。
【0003】
この超電導バルク磁石の着磁方法及び応用機器として、例えば、特開平11−283822号公報には冷凍機で超電導体を冷却し着磁コイルにパルス電流を通電して超電導体に着磁をして超電導バルク磁石とする超電導磁石装置が、特開2000−277333号公報には強磁性体を超電導体に近接させた状態で着磁コイルにパルス電流を通電して超電導体に着磁をして超電導バルク磁石とする方法が開示されている。
【0004】
これらの公報においては、超電導体が磁場を捕捉し外部に磁場を発生できる能力(捕捉磁場性能)は低温になるほど向上することから、強力な超伝導バルク磁石を得るために、冷凍機等の冷却手段を用いて超電導体をより低温に冷却している。
【0005】
特に、特開平11−283822号公報に記載の磁石装置においては、所望の位置に磁場を発生させる構造を有していることから、冷凍機のコールドヘッドと着磁される超電導体との距離が長くなり、超電導体を冷凍機で直接冷却することが困難となっていた。このため、冷凍機のコールドヘッドと超電導体とを、熱伝導率のよい銅などの材質で形成されたコールドヘッド延長部を介して接続することで、超電導体を冷却している。
【0006】
また、超電導体の簡便な着磁法として、着磁コイルにパルス電流を通電するパルス着磁法が採用され、さらに、着磁の性能を上げることを目的として、特開2000−277333号公報に記載されているように、超電導体に強磁性体よりなるヨークを近接させ、これらを共に冷凍機で冷却して着磁を行うことが示されている。
【0007】
しかしながら、特開平11−283822号公報および特開2000−277333号公報に記載された磁場装置は、コールドヘッド延長部に熱伝導率の良い銅を用いているため、パルス磁場を印加した際にコールドヘッド延長部に大きな渦電流が誘起されるという問題を有していた。渦電流が生じると、コールドヘッド延長部がコールドヘッドを押圧することとなり、この結果として、冷凍機が破損を生じるようになるためである。
【0008】
また、コールドヘッドが管状部に保持された冷却手段においては、渦電流が生じることで、コールドヘッドを保持している管状部が座屈するという問題があった。さらに、管状部の破損は、冷凍機の機能を損なうだけでなく、内部に封入されている高圧ガスを噴出させる。高圧ガスが噴出すると、人体にけがを生じさせる危険性もある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、磁場を印加しても破損を生じることなく、耐久性、信頼性および安全性に優れた磁場装置を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明者等はコールドヘッド延長部に生じる渦電流を低減する方法について検討を重ねた結果、コールドヘッド延長部が異なる抵抗率を有することで上記課題を解決できることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明の磁場装置は、冷凍機の作用により冷却されたコールドヘッドを有する冷却装置と、磁性体に非定常磁場を印加する磁場発生装置と、電気伝導性を有する部材よりなり磁性体とコールドヘッドとを熱的に接続するコールドヘッド延長部と、コールドヘッド延長部と磁性体とを接続する伝熱材と、を有し、コールドヘッド延長部が、低抵抗部材と高抵抗部材の少なくとも2種類の抵抗率を有する部材よりなり、伝熱材と当接する部分の少なくとも外周部は高抵抗部材からなり、コールドヘッドと当接する部分が低抵抗部材からなり、伝熱材が、高抵抗部材よりなることを特徴とする。
【0012】
本発明の磁場装置は、電磁力を受けるコールドヘッド延長部が低抵抗部材と高抵抗部材とからなることで、コールドヘッド延長部に生じる渦電流が減少し、コールドヘッド延長部がコールドヘッドに与える電磁力を小さくすることができる。より詳しくは、高抵抗部材は、その電気抵抗の高さから渦電流が流れにくくなっている。このため、高抵抗部材は低抵抗部材に比べて、渦電流が生じにくく、この結果、渦電流の発生によるコールドヘッド延長部がコールドヘッドを押圧する応力が減少する。
【0013】
一般に、電気抵抗率を大きくすると熱伝導性は低下するが、本発明の磁場装置のコールドヘッド延長部は、低抵抗部材と高抵抗部材とを共存させているので、コールドヘッド延長部全体としての熱伝導性を大きく低下させることなく渦電流により生じる電磁力を低減することができる。
【0014】
冷却装置は、冷凍機の作用により冷却されたコールドヘッドを有する装置であり、磁性体を冷却するための低温を発生させる装置である。詳しくは、冷凍機の作用によりコールドヘッドに寒冷が発生し、この寒冷により磁性体が冷却される。冷却装置は、磁場を印加する所定の温度に磁性体を冷却することが好ましい。
【0015】
ここで、磁性体とは、大なり小なり磁場と相互作用を生じる物質を示し、この磁性体には、強磁性体、常磁性体、反磁性体とがある。また、量子効果により磁場と相互作用を生じるという意味では、超電導体も磁性体に含まれる。
【0016】
冷却装置は、冷凍機とコールドヘッドとを有する装置であれば特に限定されるものではなく、従来の冷却装置に用いられた装置を用いることができる。冷却装置としては、たとえば、GM(Gifford−McMahon)冷凍機、スターリング冷凍機、パルス管冷凍機等の蓄冷型冷凍機をあげることができる。
【0017】
コールドヘッドは、管状部を介して冷凍機に接続されたことが好ましい。ここで、管状部とは、例えば、GM冷凍機の場合は内部でディスプレーサが往復運動をするシリンダーであり、パルス管冷凍機の場合は蓄冷器の円筒またはパルス管と呼ばれる中空の管を示す。すなわち、コールドヘッドが管状部に接続されることで、熱の流入を最小限に抑制し、コールドヘッドにより低温の寒冷が得られる。
【0018】
磁場発生装置は、磁性体に非定常磁場を印加する装置である。磁場発生装置が磁性体に非定常磁場を印加することで、たとえば、磁性体が着磁され、磁場空間を生じるようになる。
【0019】
磁場発生装置は、磁性体に非定常磁場を印加できる装置であれば特に限定されるものではなく、従来の磁場装置に用いられる磁場発生装置を用いることができる。また、この磁場発生装置は、固定式にすることが好ましい。
【0020】
磁場発生装置としては、例えば、電源からの通電により磁場を発生する種々の形状のコイルを用いることができる。この場合、時間的に変化する電流をコイルに流すことにより、磁性体に非定常磁場を印加することができる。
【0021】
磁性体に非定常磁場を印加するための電流は、特に限定されるものではなく、パルス状の電流を1回だけ通電することもできるし、繰り返し通電することもできる。また、周期的に変動する電流を通電することもできる。また、これらのパルス状電流、周期変動電流の波形形状は、正弦波、矩形波、鋸波、コンデンサ放電波等の各種形状のいずれを用いてもよい。
【0022】
磁場発生装置は、一定の磁場を発生する磁石を動かして磁性体との距離を変化させることができることが好ましい。この場合、磁場発生装置と磁性体との距離の変化に対応して変動する非定常磁場を磁性体に印加することができる。
【0023】
一定の磁場を発生する磁石としては、例えば、常伝導および超電導の電磁石を用いることができる。すなわち、常電導線や超電導線で構成されたコイルに、電源から時間的に変動しない一定の電流を流して構成される磁石である。
【0024】
また、一定の磁場を発生する磁石として、希土類磁石等の永久磁石や、バルク(塊)状の超電導体に磁場を捕捉させてなる超電導バルク磁石を用いることもできる。
【0025】
コールドヘッド延長部は、磁性体とコールドヘッドとを熱的に接続する部材である。コールドヘッド延長部が磁性体とコールドヘッドとを熱的に接続することで、磁性体の熱がコールドヘッドに伝導され、磁性体が冷却される。
【0026】
コールドヘッド延長部が電気伝導性を有する部材よりなることが好ましい。コールドヘッド延長部が電気伝導性を有する部材よりなると、磁性体の熱をコールドヘッドに効率よく伝導させることができる。すなわち、電気絶縁性の材料は、一般に、熱伝導性が低く、磁性体から熱を奪って冷却することに長時間を要するためである。
【0027】
本発明の磁場装置は、コールドヘッド延長部が、低抵抗部材と高抵抗部材の少なくとも2種類の抵抗率を有する部材よりなることで、コールドヘッド延長部に生じる渦電流が減少され、コールドヘッド延長部がコールドヘッドに与える電磁力が小さくなっている。すなわち、高抵抗部材が渦電流を阻害するため、渦電流により生じた電磁力が低減するためである。
【0028】
ここで、低抵抗部材とは、コールドヘッド延長部を構成する部材において最も抵抗率が小さな部材を示し、高抵抗部材とは低抵抗部材より抵抗率が大きな部材を示す。また、高抵抗部材は、1種以上でもよい。すなわち、高抵抗部材は低抵抗部材より高い抵抗値を有していればよく、高抵抗部材が、それぞれ異なる抵抗値を有する複数の部材であってもよい。
【0029】
また、高抵抗部材と低抵抗部材の抵抗率の差は、特に限定されるものではなく、コールドヘッド延長部が用いられたときに、渦電流の発生を低減できる差でよい。すなわち、コールドヘッド延長部の部位や、磁場発生装置により磁性体に付与される磁場が異なるため、コールドヘッド延長部に生じる渦電流が異なるためである。
【0030】
コールドヘッド延長部は、その抵抗率の変化が限定されるものではなく、たとえば、低抵抗部材と高抵抗部材の少なくとも2種類の抵抗率を有する複数の部材が一体に接合された構成の部材であっても、低抵抗部材から高抵抗部材へと抵抗率が傾斜した部材であってもよい。
【0031】
コールドヘッド延長部の低抵抗部材及び高抵抗部材に用いる材料は、使用する低温度領域で強度と熱伝導率が大きいことが好ましい。コールドヘッド延長部に用いられる標準的な材料として、例えば、無酸素銅、タフピッチ銅、ステンレス、電磁軟鉄、鉄基合金、銅合金、アルミ合金等をあげることができる。
【0032】
コールドヘッド延長部は、コールドヘッドの耐荷重をF0とし、磁場発生源により磁性体に磁場を印加した時にコールドヘッド延長部に働く力をF1、磁性体に働く力をF2、としたときに、F0≧F(F:F1とF2の合力とF1のうちいずれか大きい方)となるように、低抵抗部材と高抵抗部材が配置されていることが好ましい。ここで、F0、F1およびF2は力であり、力の方向も考慮されるものである。すなわち、耐荷重F0は、F1とF2の合力またはF1の力の方向が、コールドヘッドに対し圧縮方向となる場合は圧縮耐荷重、引張方向となる場合は引張耐荷重、曲げ方向となる場合は曲げ耐荷重とすることができる。
【0033】
ここで、コールドヘッドの耐荷重とは、コールドヘッドがコールドヘッド延長部から受ける荷重に対する耐荷重を示し、コールドヘッドが管状部を介して冷却装置に接続されたときには、管状部の耐荷重を示す。すなわち、コールドヘッドが管状部を介して冷却装置に接続されたときには、コールドヘッドの耐荷重は実質的には管状部の耐荷重であるためである。
【0034】
コールドヘッドが管状部を介して冷却装置に接続されたときに、例えば、F1とF2の合力またはF1の力の方向が引張方向の力となる場合、管状部の材料部分の面積をS、引張強度をσ0とし、安全率をαとすると、引張耐荷重はσ0×S/αで表すことができる。
【0035】
磁場発生装置が磁場を発生させたときに高磁場密度となる位置に高抵抗部材が配されることが好ましい。すなわち、磁場発生源により発生する非定常磁場は、磁性体にもっとも有効に印加されるように発せられるため、磁性体の近傍ほど磁場の時間変化の割合が大きくなっている。このような場所を高抵抗部材とすることで、渦電流が抑制でき、有効に渦電流により生じる電磁力を低減することができる。ここで、高磁場密度となる位置とは、最も大きな渦電流が発生する磁場発生装置の近傍を示す。すなわち、高抵抗部材が配される位置は、発生した磁場により異なるため一概に決定されるものではない。
【0036】
コールドヘッド延長部は、低抵抗部材の周囲に高抵抗部材が配される、あるいは、それぞれが異なる抵抗率を有する高抵抗部材のうち抵抗率がより大きいものがより小さいものの周囲に配置されていることが好ましい。すなわち、コールドヘッド延長部に生じる電磁力は、渦電流の強度が大きいほど、また、渦電流の流れるループが大きいほど大きくなる。このため、磁性体の近傍で、抵抗率が小さい部分の周囲を高抵抗部材とすることで、渦電流の強度とループを共に小さくすることができる。このため、効率よく電磁力を低減することができる。
コールドヘッド延長部は、伝熱材と当接する部分のすべてが高抵抗部材で形成されていることが好ましい。
【0037】
コールドヘッド延長部は、コールドヘッドと当接するコールドヘッド側ステージと、磁性体に接続される試料側ステージと、コールドヘッド側ステージと試料側ステージとを接合したロッドと、を有することが好ましい。コールドヘッド延長部が、コールドヘッド側ステージ、試料側ステージおよびロッドを有することで、コールドヘッド延長部の熱容量を不必要に大きくすることなく、磁性体を確実に、かつ効率良く冷却することができる。
【0038】
コールドヘッド延長部は、コールドヘッド側ステージと試料側ステージとがコールドヘッドと磁性体に接続されるため、ロッドは両ステージを保持するとともに低温を伝導させる必要最小限の太さとすることができる。これにより、コールドヘッド延長部の熱容量を低減することができ、コールドヘッド延長部を介して磁性体から熱を伝導させるときに、冷却に要する時間を短縮することができる。
【0039】
このようなコールドヘッド延長部として、例えば、コールドヘッドが円形で超電導体が円柱形状の場合、コールドヘッド延長部のコールドヘッド側および試料側の両ステージを円盤状のステージとし、両ステージより径の小さい円柱よりなり両端に両ステージが接合されたロッドと、を有するコールドヘッド延長部をあげることができる。
コールドヘッド延長部は、コールドヘッドと当接するコールドヘッド側ステージと、伝熱材に接続される試料側ステージと、コールドヘッド側ステージと試料側ステージとを接合したロッドと、を有し、試料側ステージの少なくとも外周部は高抵抗部材から形成されていることが好ましい。
試料側ステージは、高抵抗部材で形成されていることが好ましい。
【0040】
コールドヘッド延長部は、試料側ステージと磁性体とを接続する伝熱材を有することが好ましい。すなわち、磁性体が伝熱材を介して試料側ステージに接続されることでコールドヘッド延長部を変更することなく、磁性体の取り付け位置を調節することができる。
【0041】
伝熱材を構成する材質は、特に限定されるものではないが、高抵抗部材よりなることが好ましい。すなわち、伝熱材は、試料側ステージと磁性体とを接続する部材であるため、導電体に印加される磁場に曝される部材であり、低抵抗部材よりなると、渦電流を生じるためである。
【0042】
伝熱材は、低抵抗部材の周囲に高抵抗部材が配される、あるいは、それぞれが異なる抵抗率を有する高抵抗部材のうち抵抗率がより大きいものがより小さいものの周囲に配置されていることが好ましい。すなわち、伝熱材に生じる電磁力は、コールドヘッド延長部と同様に、渦電流の強度が大きいほど、また、渦電流の流れるループが大きいほど大きくなる。このため、磁性体の近傍で、抵抗率が小さい部分の周囲を高抵抗部材とすることで、渦電流の強度とループを共に小さくすることができる。このため、効率よく電磁力を低減することができる。
【0043】
伝熱材は、強磁性体よりなることが好ましい。伝熱材が高抵抗部材である強磁性体よりなることで、磁性体により多くの磁場を効率的に印加できるようになる。すなわち、強磁性体は磁場がかかると強く磁化され、それ自体が磁場を発生するようになる。このため、たとえば、強磁性体を磁性体に近接させて着磁コイルによりパルス磁場を印加すると、磁性体には着磁コイルが発するパルス磁場だけでなく、そのパルス磁場により磁化された強磁性体による磁場が重畳して印加される。それ故、磁性体に実効的にかかる磁場は、強磁性体のない場合よりも大きくなる。
【0044】
強磁性体は、磁場装置として磁性体により強い磁場を効果的に印加する観点から、飽和磁化または残留磁化ができるだけ大きいことが好ましい。このような条件を満たす強磁性体としては、たとえば、パーメンジュール、電磁軟鉄、ケイ素鋼、センダスト、パーマロイ、Nd−Fe−B、Sm−Co等をあげることができる。
【0045】
磁場発生装置は、パルス電流を通電することにより非定常磁場を発生するコイルを有することが好ましい。コイルにパルス電流を通電するため、より大きな電流が通電でき、より大きな磁場を磁性体に印加することができる。従って、磁場装置としての性能をより高めることができる。
【0046】
パルス電流が通電されるコイルの形状は、ソレノイド型、渦巻型(内径ゼロのソレノイド)等を用いることが好ましい。ソレノイド型の場合には、コイルのボアに導電体が位置するように配置でき、渦巻型の場合には、磁性体と対向するように配置できる。
【0047】
コールドヘッド延長部は、コイルの外部に低抵抗部材が配されることが好ましい。コイルの外部に低抵抗部材が配されることで、より効果的にコールドヘッド延長部に生じる電磁力を低減することができる。例えば、コイルがソレノイド型の場合、中心ボアの巻線が巻かれている長さの範囲(中心軸に垂直な両端面の内側)は発生する磁場が極めて強く、この領域から遠ざかると磁場強度は急激に減少する。従って、コイルの中心軸に垂直な端面より外側に低抵抗部材を配置することにより、より効果的に電磁力を低減することができる。
【0048】
なお、コイルの外部とは、コイルにおいては電流により磁場を発する部分が問題となるので、コイル表面の凹凸に関わらず、実質的にはコイル巻線の端面を示す。
【0049】
磁性体は、超電導体であることが好ましい。磁性体が超電導体よりなることで、テスラ級の強力な磁場をコンパクトに発生する強磁場発生装置となる。
【0050】
超電導体は、RE−Ba−Cu−O(REはY(イットリウム)、La(ランタン)、Nd(ネオジム)、Sm(サマリウム)、Eu(ユーロピウム)、Gd(ガドリニウム)、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホルミウム)、Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)、Yb(イッテルビウム)、Lu(ルテチウム)から選ばれる少なくとも1種)を有することが好ましい。これらの元素を主成分とする超電導体にすることにより、磁場を捕捉する性能が高い超電導体が得られる。
【0051】
また、超電導体がRE−Ba−Cu−Oを有することで、この超電導体を冷却装置により冷却し、コイルにより磁場を印加すると、超電導体が着磁され自分自身で磁場を発するようになり、強力な磁石装置としての磁場装置にすることができる。
【0052】
超電導体は、結晶方位の揃ったRE1Ba2Cu3Oxで表される超電導相の中に、絶縁体であるRE2Ba1Cu1O5相またはRE4Ba2Cu2O10相が数μm以下のサイズで微細に分散しているものを用いることが好ましい。この場合、磁場を捕捉する性能をより高くすることができ、磁場装置としての性能をより高めることができる。
【0053】
また、超電導体には、Pt(白金)、Ag(銀)、Au(金)等の超電導体と反応しない貴金属を添加したものを用いることができる。超電導体がこれらの元素を含有することで、超電導体が着磁され自分自身で磁場を発する超電導磁石の特性が向上する。詳しくは、Ptは、超電導磁石においてピン止め点としての機能を向上させる。またAg、Auは、超電導体の強度を向上させ、着磁時に電磁力により破壊されることが防止される。
【0054】
さらに、超電導体の周囲に、上記超電導体より膨張係数の大きい金属のリングを嵌めたものを用いることができる。これらの場合には、超電導体の機械的強度が向上し、磁場装置としての耐久性や信頼性を向上させることができる。
【0055】
コールドヘッド延長部は、非導電性かつ熱伝導性の材料よりなる伝熱ブロックを介して磁性体と接続されることが好ましい。非導電性の伝熱ブロックを用いることでコールドヘッド延長部を磁場発生装置から遠ざけることができるとともに、伝熱ブロックに生じる渦電流をゼロにすることができ、結果的に、コールドヘッド延長部に働く電磁力を大幅に低減することができる。また、伝熱ブロックが熱伝導性を有しているため、冷却性能が損なわれない。
【0056】
本発明の磁場装置は、その製造方法は、特に限定されるものではない。
【0057】
本発明の磁場装置は、電磁力を受けるコールドヘッド延長部が低抵抗部材と高抵抗部材とからなることで、コールドヘッド延長部に生じる渦電流が減少し、コールドヘッド延長部がコールドヘッドに与える電磁力が小さくなっている。
【0058】
【発明の実施の形態】
本発明の磁場装置について、図1〜図16を用いて説明する。
【0059】
(実施形態例1)
実施形態例1は、真空容器5中に磁性体として超電導体1を配し、冷却装置2で低温を発生させ、この低温をコールドヘッド延長部4を介して超電導体1に伝導して超電導体1を冷却し、冷却された超電導体1が磁場発生コイル3により非定常磁場を印加されて着磁され、超電導体1より磁場を発する磁石装置となる磁場装置である。実施形態例1の磁場装置の構成を図1に示した。
【0060】
超電導体1は、15重量%のAg2O(酸化銀)と0.5重量%のPt(白金)を添加して溶融法で作製したSm−Ba−Cu−O系超電導体を用いた。超電導体1は、直径60mm、高さ20mmの円柱状に形成された。超電導体1は、冷却や電磁力によるクラックの発生を防ぐため、ステンレスリングとスタイキャストにより補強された状態で着磁される。
【0061】
冷却装置2は、GM冷凍機を用い、GM冷凍機の冷却部21は管状部であるシリンダ22とコールドヘッド23からなり、33Kまで冷却することができる。コールドヘッド23は、シリンダ22ののびる方向に対して垂直な方向に広がる円盤状に形成されている。
【0062】
また、シリンダ22の耐荷重F0は、圧縮荷重の場合22000N、引張荷重の場合4000Nであった。
【0063】
磁場発生コイル3は、巻数112ターンのソレノイドコイルを用い、電源(図示せず)より図2に示した波形のパルス電流を通電し、超電導体1に非定常磁場を印加する。また、超電導体1は、超電導体1とコイル3の中心が互いに一致するように配置されている。このため、非定常磁場を印加しても、超電導体1には電磁力は働かず、超電導体1がコールドヘッド23を押圧する力F2=0となっている。
【0064】
コールドヘッド延長部4は、コールドヘッド23の表面と一致する円盤状に形成されたコールドヘッド側ステージ41と、コールドヘッド側ステージ41に一体に形成された柱状のロッド42と、ロッド42のコールドヘッド側ステージ41が接合されていない端部側にコールドヘッド側ステージ41と並行な状態で一体に形成された円盤状を有する試料側ステージ43と、から構成される。
【0065】
コールドヘッド側ステージ41は冷却装置2のコールドヘッド23に接続され、超電導体1は伝熱材としての伝熱ブロック7を介して試料側ステージ43に取り付けられている。また、伝熱ブロック7は、超電導体1の端面の形状と一致する直径60mm、高さ20mmの円柱状のサファイアブロックであった。
【0066】
コールドヘッド延長部4は、コールドヘッド側ステージ41およびロッド42が低抵抗部材である無酸素銅(30Kでの抵抗率:0.0006μΩm)により形成され、試料側ステージ43が高抵抗部材であるタフピッチ銅(30Kでの抵抗率:0.0108μΩm、ステンレス0.4μΩm)により形成された。
【0067】
真空容器5は、シリンダ22、コールドヘッド23、コールドヘッド延長部4、伝熱ブロック7および超電導体1を収容した内部を真空雰囲気下に保持するとともに、磁場発生コイル3により発生した磁場が超電導体1に印加できるようにその一部が磁場発生コイル3の軸心部に挿入された部材である。
【0068】
実施形態例1の磁場装置は、真空容器5中にコールドヘッド23の低温が超電導体1の熱を奪って冷却できるように、コールドヘッド延長部4、伝熱ブロック7および超電導体1が収容される。このとき、超電導体1は、磁場発生コイル3の中心と超電導体1の中心とが一致する位置で真空容器5中に保持される。また、コールドヘッド延長部4の低抵抗部位であるロッド42は、伝熱ブロック7を介することで、磁場発生コイル3の端面から突出した位置に配置された。
【0069】
その後、真空容器5の内部を真空状態に保持し、冷却装置2を作動させて超電導体1を冷却する。超電導体1が冷却された状態で、図2に示されたパルス電流を磁場発生コイル3に通電して、超電導体1を着磁した。
【0070】
(評価)
実施形態例1の磁場装置の評価として、超電導体に着磁時にコールドヘッド延長部に生じる力を測定した。また、試料側ステージ43をタフピッチ銅に替えてステンレス(30Kでの抵抗率:0.4μΩm)としたときの力も測定した。この測定結果を図3に示した。なお、図3の縦軸は、図1においてコールドヘッド延長部4の中心軸をz軸とし、右向きを正とした時の電磁力Fであり、F>0はシリンダ22に引張力が、F<0は圧縮力が働くことを意味する。また、斜線の範囲は、圧縮耐荷重以下かつ引張耐荷重以下(22000N≦F≦4000N)の許容荷重範囲を示す。
【0071】
図3に示されたように、試料側ステージがタフピッチ銅およびステンレスのいずれの部材よりなっても、圧縮耐荷重および引張耐荷重に対して、F0≧F1(=|F1+F2|)となっており、管状部に働く電磁力が耐荷重以下に低減している。
【0072】
この結果、実施形態例1の磁場装置は、冷凍機の破損がなく、耐久性、信頼性、安全性に優れた磁場装置となっている。
【0073】
(比較例1)
比較例1は、図4にその構成が示された磁場装置である。比較例1の磁場装置は、伝熱ブロック7を介することなく試料側ステージ43が直接超電導体1に接続されるとともに、コールドヘッド延長部4が無酸素銅よりなる以外は、実施形態例1の磁場装置と同様の磁場装置である。
【0074】
比較例1は、伝熱ブロック7を用いていないため、試料側ステージ43およびロッド42が磁場発生コイル3の軸心部の内部に配置されている。
【0075】
(比較例2)
比較例2は、図5にその構成が示された磁場装置である。比較例2の磁場装置は、コールドヘッド延長部4の試料側ステージ43が無酸素銅よりなる以外は、実施形態例1の磁場装置と同様の磁場装置である。
【0076】
(評価)
比較例1および2の磁場装置の評価として、超電導体1に着磁を行ったときのコールドヘッド延長部4に生じる力を測定した。具体的な測定条件は、実施形態例1の磁場装置の評価と同様の操作により行われた。比較例1および2の測定結果を図6に示した。
【0077】
図6より、比較例1の磁場装置で超電導体1にパルス磁場を印加した時に、コールドヘッド延長部4に働く力は図6の破線に示された値となる。すなわち、コールドヘッド延長部4には、シリンダ22の圧縮耐荷重を越える61000Nの力が働いた。このため、比較例1の磁場装置は、シリンダ22が座屈した。
【0078】
また、比較例の磁場装置においても比較例1のときと同様に、コールドヘッド延長部4に230000Nの圧縮力がはたらき、やはりシリンダ22が座屈を生じた。
【0079】
すなわち、コールドヘッド延長部4の全体が無酸素銅により形成された比較例1および2の磁場装置は、シリンダ22が座屈を生じるため、磁場装置として十分な性能を発揮できなくなっている。
【0080】
(参考形態例1)
参考形態例1は、図7にその構成が示された磁場装置である。参考形態例1は、実施形態例1の磁場装置のコールドヘッド延長部4の全体を無酸素銅とし、伝熱ブロック7に替えて強磁性体のパーメンジュール(30Kでの抵抗率:0.2μΩm)よりなる伝熱材6とした以外は、実施形態例1の磁場装置と同様な磁場装置である。
【0081】
また、パーメンジュールは超電導体と同じφ60の円柱状であった。
【0082】
(評価)
参考形態例1の磁場装置の評価として、超電導体1に着磁を行ったときのコールドヘッド延長部4に生じる力を測定した。具体的な測定条件は、実施形態例1の磁場装置の評価と同様の操作により行われた。測定結果を図8に示した。
【0083】
図8より、圧縮耐荷重及び引張耐荷重に対し、F0≧F1(=|F|)となっている。すなわち、強磁性体1の磁化により生じる力は、コールドヘッド延長部4に生じる渦電流による力と逆向きになるので、試料側ステージ43を熱伝導率の高い無酸素銅のままで電磁力が低減した。
【0084】
また、参考形態例1の磁場装置は、超電導体1に当接した状態で強磁性体のパーメンジュールを伝熱材6として配置しているので、強磁性体のヨーク効果により超電導体1により有効に磁場を印加することができた。
【0085】
(実施形態例2)
実施形態例2は、図9にその構成が示された磁場装置である。実施形態例2は、伝熱ブロック7に替えて強磁性体のパーメンジュールとステンレスとからなる複合伝熱材61を用いた以外は、実施形態例1の磁場装置と同様な磁場装置である。
【0086】
パーメンジュールとステンレスとからなる複合伝熱材61は、直径40mmの円柱状のパーメンジュールを、内径40mm、外径60mmのステンレスリングの軸心部に嵌入して形成された円柱状の部材である。
【0087】
(評価)
実施形態例2の磁場装置の評価として、超電導体に着磁を行ったときのコールドヘッド延長部にかかる力を測定した。また、実施形態例2の磁場装置の評価は、試料側ステージ43をステンレスに替えてタフピッチ銅としたときの力も測定した。具体的な測定条件は、実施形態例1の磁場装置の評価と同様にして行われた。測定結果を図10に示した。
【0088】
図10より、実施形態例2の磁場装置は、圧縮耐荷重及び引張耐荷重に対し、F0≧F1(=|F|)となっていることが確認される。
【0089】
また、複合伝熱材61のパーメンジュールの直径を超電導体1の直径よりも小さい直径40mmとしているので、磁場を集中させて超電導体1に印加させることができる。
【0090】
(実施形態例3)
実施形態例3は、図11にその構成が示された磁場装置である。実施形態例3は、試料側ステージ43を無酸素銅とステンレスとから形成された円盤状のステージ用部材とした以外は、参考形態例1の磁場装置と同様な磁場装置である。
【0091】
試料側ステージ43は、直径54mmの円板状の無酸素銅が、内径54mm、外径70mmのステンレスリングに嵌入した構造を有する。
【0092】
(評価)
実施形態例3の磁場装置の評価として、超電導体1に着磁を行ったときのコールドヘッド延長部4にかかる力を測定した。具体的な測定条件は、実施形態例1の磁場装置の評価と同様にして行われた。測定結果を図12に示した。
【0093】
図12より、実施形態例3の磁場装置は、圧縮耐荷重及び引張耐荷重に対し、F0≧F1(=|F|)となっていることが確認される。すなわち、試料側ステージ43の中央部分が熱伝導率の高い低抵抗部材である無酸素銅であり、その外周部に高抵抗部材のステンレスを配しているので、磁場発生コイル3から発生した磁場の高密度となる部分が高抵抗となっている。このため、コールドヘッド延長部4全体の熱伝導性を保持したまま、渦電流による電磁力が低減される。
【0094】
(実施形態例4)
実施形態例4は、図13にその構成が示された磁場装置である。実施形態例4は、試料側ステージ43をタフピッチ銅とステンレスとから形成された円盤状のステージ用部材とし、かつ伝熱ブロック7に替えてタフピッチ銅とパーメンジュールとから形成された円柱状の複合部材とした伝熱材6を用いた以外は、実施形態例1の磁場装置と同様な磁場装置である。
【0095】
試料側ステージ43は、直径54mmの円板状のタフピッチ銅が、内径54mm、外径70mmのステンレスリングに嵌入した構造を有する。
【0096】
また、伝熱材6は、直径60mmのパーメンジュールの円板に複数のタフピッチ銅の円柱が貫通した構造を有する。この伝熱材6を、パーメンジュールとタフピッチ銅の状態がわかるように、円柱状の一方の端面を図14に示した。図14より、伝熱材6は、高抵抗部材であるタフピッチ銅の周囲に、タフピッチ銅より高い抵抗値を有する高抵抗部材のパーメンジュールが配された構造を有している。
【0097】
(評価)
実施形態例4の磁場装置の評価として、超電導体1に着磁を行ったときのコールドヘッド延長部4にかかる力を測定したところ、抵抗率が比較的無酸素銅に近いタフピッチ銅を試料側ステージ43と伝熱材6に部分的に用いたことで、コールドヘッド延長部4全体の熱伝導性を高く保ちながら、渦電流により生じる電磁力を低減できた。さらに、強磁性体のヨーク効果で、超電導体1に有効に磁場を印加することができることが確認された。
【0098】
(実施形態例5)
実施形態例5は、冷凍機2で冷却した磁性体としてのリング状超電導体1を磁場発生コイルにより非定常磁場を印加して着磁し、超電導体1のボア内に磁場を発するNMR用の磁石装置となる磁場装置である。本磁場装置の冷凍機冷却部を図15に示した。
【0099】
リング状超電導体1は、15重量%のAg2O(酸化銀)と0.5重量%のPt(白金)を添加して溶融法で作製したSm−Ba−Cu−O系超電導体を2個積層して形成された。冷却や電磁力によるクラックの発生を防ぐため、リング状超電導体1は、ステンレスリングとスタイキャストにより補強された。
【0100】
冷凍機2には、パルス管冷凍機が用いられた。図15に示された冷凍機冷却部21は連結管、圧力切替装置、圧縮機(いずれも図示せず)へと接続されている。冷凍機冷却部21は、管状部である蓄冷器22とコールドヘッド23とパルス管(下部のブロック内にあり図には示されず)から構成される。
【0101】
コールドヘッド延長部4は、コールドヘッド側ステージ41、ロッド42、試料側ステージ43からなる。コールドヘッド側ステージ41は冷凍機冷却部21のコールドヘッド23に接続され、超電導体1は伝熱材6を介して試料側ステージ43に接続されている。
【0102】
コールドヘッド延長部4のコールドヘッド側ステージ41およびロッド42はともに無酸素銅よりなり、試料側ステージ43は、タフピッチ銅とステンレスとから形成された円盤状のステージ用部材よりなる。
【0103】
試料側ステージ43は、直径35mmの円板状のタフピッチ銅が、内径35mm、外径55mmのステンレスリングに嵌入した構造を有する。
【0104】
また、伝熱材6は、強磁性体である電磁軟鉄よりなる。
【0105】
蓄冷器22は内部に蓄冷材が入った円筒であり、コールドヘッド延長部4及び超電導体1に働く電磁力を受ける部材である。この場合の耐荷重F0は、圧縮耐荷重と引張耐荷重となる。
【0106】
磁場発生源3はソレノイドコイルを用い、電源(図示せず)より図3に示されたパルス電流を通電することで超電導体1に磁場を印加する。超電導体1は、2個の超電導体1の境界がコイルの中心と一致するように配置されている。従って、非定常磁場を超電導体1に印可したときに、超電導体1に電磁力は働かない。このため、F2=0となっている。
【0107】
真空容器5は、リング状超電導体1が内部に保持されたときに、リング状超電導体1の軸心の中空部に嵌入される凹部が形成されている。この凹部は、軸心部に外気が侵入できるように空間が形成されている。
【0108】
実施形態例5の磁場装置は、リング状超電導体1が超電導磁石となったときに、リング状超電導体1の軸心部の空間の内部に磁場が生じる磁場装置である。
【0109】
(評価)
実施形態例5の磁場装置の評価として、超電導体1に着磁を行ったときのコールドヘッド延長部4にかかる力を測定したところ、圧縮耐荷重及び引張耐荷重に対し、F0≧F1(=|F|)となっていた。
【0110】
また、着磁された超電導体1によりボアの中に強磁場を発生することができるため、実施形態例5の磁場装置は、ボア内に測定試料を置いて信号を検出するNMR用磁石装置として利用できる。
【0111】
(参考形態例2)
参考形態例2は、冷凍機2で冷却した磁性材料等の測定材料1に磁場発生コイル3を用いて非定常磁場を印加し、その時の材料特性を測定する物性評価装置として用いられる磁場装置である。参考形態例2の磁場装置を図16に示した。
【0112】
冷凍機2は、実施形態例6とは別のタイプのパルス管冷凍機を用いた。図16に示す冷凍機冷却部21は連結管、圧力切替装置、圧縮機(いずれも図示せず)へと接続されている。
【0113】
冷凍機冷却部21は管状部である蓄冷器22とコールドヘッド23とパルス管24とからなり、蓄冷器22でコールドヘッド23およびパルス管24を支持している。
【0114】
コールドヘッド延長部4は、冷凍機冷却部21とは垂直な方向にコールドヘッド23からロッド45として横に伸び、その先端がステージ46となっている。測定材料1はステージ46に取り付けられ所定の温度に冷却される。すなわち、コールドヘッド延長部4は、一方の端部がコールドヘッド23に接続されたロッド45と、ロッド45の他方の端部に一体に接合されたステージ46と、からなる。
【0115】
ロッド45は無酸素銅よりなり、磁場発生コイル3の軸に垂直な端面より外側に配置されている。ステージ46はステンレスよりなり、測定材料1を磁場発生コイル3の軸心部に保持する部材である。
【0116】
コールドヘッド延長部4及び測定材料1に働く電磁力は、コールドヘッド延長部4の長手方向に働き、コールドヘッド23を介して蓄冷器22に対する曲げ荷重として働く。従って、この場合の蓄冷器22の耐荷重F0は曲げ耐荷重となる。
【0117】
磁場発生コイル3はソレノイドコイルを用い、電源(図示せず)より図3に示したパルス電流、または周期変動電流を通電することで、測定材料1に磁場を印加する。測定材料1は中心が磁場発生コイル3の中心と一致するように配置されている。このため、非定常磁場の印加による電磁力が働かず、F2=0となっている。
【0118】
(評価)
参考形態例2の磁場装置の評価として、測定材料1に磁場を印加したときのコールドヘッド延長部4にかかる力を測定したところ、荷重に対し、F0≧F1(=|F|)とすることができる。
【0119】
このため、参考形態例2の磁場装置は、測定材料1の温度や印加する磁場の強度、周期等を変化させた時の物理的、化学的特性を測定する物性評価装置として用いることができる。
【0120】
【発明の効果】
本発明の磁場装置は、電磁力を受けるコールドヘッド延長部が低抵抗部材と高抵抗部材とからなることで、コールドヘッド延長部に生じる渦電流が減少し、コールドヘッド延長部がコールドヘッドに与える電磁力が小さくなっている。このため、本発明の磁場装置は、耐久性、信頼性、安全性に優れた装置となっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施形態例1の磁場装置の構成を示した図である。
【図2】 磁場装置の磁場発生コイルに通電されるパルス電流を示した図である。
【図3】 実施形態例1の磁場装置の評価の測定結果を示した図である。
【図4】 比較例1の磁場装置の構成を示した図である。
【図5】 比較例2の磁場装置の構成を示した図である。
【図6】 比較例の磁場装置の評価の測定結果を示した図である。
【図7】 参考形態例1の磁場装置の構成を示した図である。
【図8】 参考形態例1の磁場装置の評価の測定結果を示した図である。
【図9】 実施形態例2の磁場装置の構成を示した図である。
【図10】 実施形態例2の磁場装置の評価の測定結果を示した図である。
【図11】 実施形態例3の磁場装置の構成を示した図である。
【図12】 実施形態例3の磁場装置の評価の測定結果を示した図である。
【図13】 実施形態例4の磁場装置の構成を示した図である。
【図14】 実施形態例4の磁場装置の評価の測定結果を示した図である。
【図15】 実施形態例5の磁場装置の構成を示した図である。
【図16】 参考形態例2の磁場装置の構成を示した図である。
【符号の説明】
1…超電導体 2…冷却装置 3…磁場発生コイル
4…コールドヘッド延長部 5…真空容器
6…伝熱材 7…伝熱ブロック
Claims (8)
- 冷凍機の作用により冷却されたコールドヘッドを有する冷却装置と、
磁性体に非定常磁場を印加する磁場発生装置と、
該磁性体と該コールドヘッドとを熱的に接続するコールドヘッド延長部と、
該コールドヘッド延長部と該磁性体とを接続する伝熱材と、
を有し、
該コールドヘッド延長部が、低抵抗部材と高抵抗部材の少なくとも2種類の抵抗率を有する部材よりなり、該伝熱材と当接する部分の少なくとも外周部は高抵抗部材からなり、該コールドヘッドと当接する部分が低抵抗部材からなり、
該伝熱材が、高抵抗部材よりなることを特徴とする磁場装置。 - 前記コールドヘッド延長部は、前記伝熱材と当接する部分のすべてが高抵抗部材で形成されている請求項1記載の磁場装置。
- 前記コールドヘッド延長部は、前記コールドヘッドと当接するコールドヘッド側ステージと、前記伝熱材に接続される試料側ステージと、該コールドヘッド側ステージと該試料側ステージとを接合したロッドと、を有し、
該試料側ステージの少なくとも外周部は高抵抗部材から形成されている請求項1〜2のいずれかに記載の磁場装置。 - 前記試料側ステージは、高抵抗部材で形成されている請求項3記載の磁場装置。
- 前記磁場発生装置は、パルス電流を通電することにより非定常磁場を発生するコイルを有する請求項1記載の磁場装置。
- 前記コールドヘッド延長部は、前記コイルの外部に前記低抵抗部材が配される請求項5記載の磁場装置。
- 前記磁性体は、超電導体である請求項1〜6のいずれかに記載の磁場装置。
- 前記超電導体は、RE−Ba−Cu−O(REはY(イットリウム)、La(ランタン)、Nd(ネオジム)、Sm(サマリウム)、Eu(ユーロピウム)、Gd(ガドリニウム)、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホルミウム)、Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)、Yb(イッテルビウム)、Lu(ルテチウム)から選ばれる少なくとも1種)を有する請求項7記載の磁場装置。
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