JP4064885B2 - データ消去装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気ディスク装置を廃棄または再利用する際のデータ漏洩防止などのために、磁気ディスク装置内の磁気ディスクに記録されたデータを消去するデータ消去装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開2001−331904号公報には、磁気ディスク装置の製造工程において不良と判定された磁気ディスク装置に使われている不良でない磁気ディスクの再利用のために磁気ディスクに書き込まれたサーボデータを消去するための装置として、ディスク装置内のスピンドルモータを駆動して磁気ディスクを回転しつつ磁気ディスクの一部をデータ消去装置の永久磁石の空隙に挿入して磁気ディスクを回転しつつ磁界を印加することによってデータを消去するデータ消去装置が開示されている。しかしながらこれは、データ消去のために磁気ディスクを露出させる工程が必要であること、故障のために磁気ディスクが回転しなくなっている場合もあること、などから、磁気ディスク装置を廃棄または再利用する際のデータ漏洩防止のためのデータ消去装置としては不向きである。
【0003】
実用新案登録第3088608号には、ハードディスク装置全体を挿入し得る凹部を有するデータ消去装置が開示されている。磁気ディスクが金属製のケースで覆われた状態のままでデータを消去するためには一層強力な磁場が必要であるが、そのような強力な磁場の中で吸引力に抗して磁気ディスク装置を挿入/排出することは困難である。実用新案登録第3088608号のデータ消去装置においては、コイルに通電することにより発生する磁場が用いられているので挿入/排出時にはコイルに通電しないことでこの問題が解決されている。しかしながら、コイルに通電するための電源が常に必要であること、その都度電源の入/切の操作をする必要があることから、利便性の点に問題がある。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−331904号公報
【特許文献2】
実用新案登録第3088608号
【特許文献3】
WO98/49674
【特許文献4】
特開2002−270421号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明の目的は、磁気ディスク装置の廃棄または再利用の際のデータ消去に適し、利便性に優れたデータ消去装置を提案することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、磁気ディスク装置内の磁気ディスクに記録されたデータを消去するデータ消去装置であって、磁気ディスク装置全体を収容し得る空間を有し、該空間内に収容された磁気ディスク装置内の磁気ディスクに永久磁石による磁界を印加する磁場発生手段と、該磁場発生手段の空間内で磁気ディスク装置を磁界による吸引力に抗して挿入方向および排出方向に移動させる移動機構とを具備するデータ消去装置が提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明のデータ消去装置による消去の対象となる磁気ディスク装置の一例を示す分解斜視図である。図1において、磁気ディスク装置10は、アルミニウム合金製のベース12とカバー14で密閉されている。ベース12には、スピンドルモーター16が取付けてあり、スピンドルモーター16に磁気ディスク18がクランプ20を介し、ネジ22にて固定される。なお、磁気ディスク18の搭載枚数は磁気ディスク装置の仕様により決定され、スペーサ24の使用枚数もそれにより決まる。
【0008】
磁気ディスク18は、データを記憶するためのディスク状の記憶媒体である。磁気ディスク18には、アクチュエータ26に取付けられたヘッド28によりデータの読み書きが行われる。アクチュエータ26はVCM30により駆動される。
【0009】
図2は、本発明のデータ消去装置における永久磁石の基本的な配置及び構造を示す図である。図2に示すように、データ消去装置40は、永久磁石42と44およびヨーク46、更に永久磁石48と50およびヨーク52が筐体54に取付けられ、トレイ56が引出し式で筐体54に収容される構造になっている。
【0010】
図2中において、上側磁石部と下側磁石部の間の空隙は、磁気ディスク装置10内の磁気ディスク18(図1)のデータを消去する際に、磁気ディスク装置10全体を収容し得るデータ消去領域58を構成する。このデータ消去領域58に、図2で示した様に磁気ディスク装置10を挿入して、磁気ディスク18のデータを消去する。
【0011】
永久磁石42は図中上面がS極、下面がN極となるように配置され、永久磁石44は上面がN極、下面がS極となるように配置されている。つまり、永久磁石42および永久磁石44は、互いに吸着し合う極性となるように隣接配置されている。また、永久磁石48は上面がN極、下面がS極となるように配置され、永久磁石50は上面がS極、下面がN極となるように配置されている。つまり、永久磁石48および永久磁石50も、互いに吸着し合う極性となるように隣接配置されている。
【0012】
永久磁石42,44,48および50は、磁場発生手段として機能する。磁場発生手段全体としてみれば、その表裏面において異なる極性同士が隣接している。
【0013】
鉛直方向に対抗する永久磁石42と48は、その対抗面同士が同じ極性を示している。また、鉛直方向に対抗している永久磁石44と50も、その対抗面同士が同じ極性を示している。したがって、永久磁石42と48は互いに反発しあい、また永久磁石44と50も互いに反発しあう事になる。この反発により、データ消去領域58において形成される磁場は水平方向を主とするものである。したがって、図2に示した様に磁気ディスク装置10をデータ消去領域58に挿入すると、当該磁場の向きは磁気ディスク18の接線方向と一致する事になる。
【0014】
永久磁石42および永久磁石44の上面には、ヨーク46が設けられている。また、永久磁石48および永久磁石50の下面にはヨーク52が設けられている。ヨーク46およびヨーク52の機能としては、磁束密度の向上及び外部空間への不必要な磁束の漏れを抑制することである。
【0015】
図3は、発生磁場を模式的に示した図である。鉛直方向に対抗する様に配置された永久磁石42と48は互いに反発しあい、また永久磁石44と50も互いに反発しあう。この反発により、水平方向の磁場が形成され、この領域に磁気ディスク18を平行して挿入すれば、記憶されたデータを効率良く消去する事が出来る。
【0016】
磁気ディスク18のデータの記録には、水平記録方式が採用されていることから、データを消去するためには磁気ディスク18と平行な方向の磁場を利用する事が望ましく、また磁場の強度は磁気ディスク18の保持力よりも大きい事が必要である。
【0017】
永久磁石42,44,48および50としては、高保持力の磁気ディスクの消去のためには、磁束密度の高いNd−Fe−B系永久磁石を用いる事が望ましい。図3においてデータ消去は、磁場発生手段による磁場が水平方向を向いている磁場領域を利用する。この磁場の領域に磁気ディスクを平行して挿入すれば、磁気ディスクに記憶されたデータを効率良く消去する事が出来る。
【0018】
一方、永久磁石44,50(N極)から漏洩した磁束は、ヨーク46,52をそれぞれ経由して永久磁石42,48(S極)に戻る。これにより、磁束密度の向上及び外部空間への不必要な磁束の漏れを抑制する事が出来る。具体的なヨークの材料としては強磁性体、例えばJIS SS400等が望ましい。
【0019】
この原理を利用し、磁気ディスク18のデータ消去をするのであるが、磁気ディスク装置10を構成している部品が磁性体であれば、磁石に吸引し、データ消去領域58を通過させる事は難しい。
【0020】
本発明では、この課題を解決する為に、駆動機構を備える事で磁気ディスク装置を磁石の吸引力に抗してデータ消去領域58に通過させ、操作性を向上させる。
【0021】
図4は、本発明の第1の実施形態に係るデータ消去装置60の斜視図であり、図5はデータ消去装置60のカバー61を外した状態の図で、その内部構造を説明するための図である。
【0022】
図5に示す様に永久磁石42と44及びヨーク46が、上フレーム62に取付けられており、永久磁石48及び50とヨーク52(図5には図示せず)が下フレーム64に取付けられている。また、上フレーム62と下フレーム64は、サイドフレーム66と68に取付けられ、これらの組立て品がベース70上のスタンド72に取付けられる。
【0023】
磁石の磁束がカバー61の外側に多大に漏れることで精密機器が正常に動作しない等の悪影響を及ぼす恐れがある。そのため、図6に示すように、フレーム62,66,68の周りにシールド板73を取り付け、外部に漏れる磁束を低減させるようにしても良い。シールド板73の材料としては、鉄板、けい素鋼板、パーマロイ等が使用される。
【0024】
本装置の基本的な機構としては、ハンドル74を回す事により、HDDホルダ76が直進し上側磁石部と下側磁石部の間の空隙を移動する。
【0025】
図7は、データ消去装置60の側面図であり、図8は、HDDホルダ76がハンドル74の回転により直動する機構部について説明するために上下フレーム62,64、サイドフレーム66、スタンド72、ガイドレール92、および足93を取り除いた状態を示す図である。
【0026】
図8において、ベアリングホルダ78と80に支えられたボールネジ82に、ギア83を介してハンドル74が取付けられている。一方、HDDホルダ76は、サポートフレーム84により、ボールネジ82に連動されたボールネジナットブラケット86に取付けられている。これにより、ハンドル74を回転させることで、HDDホルダ76が直動する構造になっている。尚、HDDホルダ76には4個のエンプラベアリング88が取付けられており、ガイドレール90及び92(図5)に設けられた溝の間を移動する構造になっている。
【0027】
図9は、データ消去の対象となる磁気ディスク装置10をデータ消去装置60に搭載した図である。磁気ディスク装置10をHDDホルダ76に搭載すると、強力な磁力によって引き込まれるため、それを防ぐためガイドレール90に取付けられたストッパ94をHDDホルダ76の溝に引っ掛け固定する。また、磁気ディスク装置10をHDDホルダ76に搭載した後に、それを固定する為、サポートフレーム84をHDDホルダ76に取付ける。
【0028】
実際の作業としては、ハンドル74を回転する事で、HDDホルダ76が直動し、上側磁石部と下側磁石部の間のデータ消去領域58を通過させる。
【0029】
HDDホルダ76は、エンプラベアリング88(図8)がガイドフレーム90及び92の溝をスライドしながら移動し図10の位置で停止する。これは、図11に示す様に、エンプラベアリング88とガイドフレーム90及び92の溝の端面が突当たった位置である。この突当たった位置で、ハンドル74を逆回転させる事により、HDDホルダ76が後退し、再び磁石部を通過し図9の位置に戻る。
【0030】
尚、本説明でHDDホルダ76の移動について、ボールネジ82を使用している例を記述したが、台形ネジについても同様の動作となる。また、他にタイミングベルト方式、ラック&ピニオン方式、ウォームギア方式等によるHDDホルダ76の移動方式も考えられる。
【0031】
また、本装置は可般が出来る様コンパクトであることが望ましく、図12に示す様にハンドル74は脱着式となっており、ハンドルナット75により固定される構造となっている。
【0032】
以上の様に、HDDホルダ76に磁気ディスク装置10を搭載し、上側磁石部と下側磁石部の間のデータ消去領域58を通過させることで、磁気ディスク18のデータは消去される。
【0033】
図13は、本発明の第2の実施形態に係るデータ消去装置100の斜視図であり、図14はデータ消去装置100のカバー102を外した状態の図で、その内部構造を説明するための図である。
【0034】
図4〜図12を参照して説明したデータ消去装置60と同一の構成要素については同一の参照番号を付してその説明を省略する。データ消去装置60と異なる点としては、HDDホルダ76が、モータ104に結合されたボールネジ106により、上側磁石部と下側磁石部の間の空隙を移動する。上下フレーム62,64とサイドフレーム66,68からなる組み立て品はベース70上に直接取り付けられる。図15に示すように、外部に漏れる磁束を低減するため、シールド板73をフレーム62,66,68の周囲に取り付けても良い。
【0035】
図16は、データ消去装置100において、永久磁石42と44及びヨーク46、上フレーム62とサイドフレーム66,68を取り外した図であり、磁気ディスク装置10のデータ消去の動作について説明する図である。モータ104のシャフト108とボールネジ106は、カップリング109により連結される。ボールネジ106には、ボールネジナットブラケット110が取り付けられており、ボールネジ106が回転することにより、ボールネジナットブラケット110が直動する。ボールネジナットブラケット110には、HDDホルダ76が取付けられており、これによりボールネジ106が回転する事により、HDDホルダ76が直動する構造となっている。従って、全体構造としてはモータ104のシャフト108が回転する事により、HDDホルダ76が直動する機構になる。また、シャフト112及びシャフト114は、HDDホルダ76が直進移動する際のガイドになり、振れを抑制する手段として構成される。
【0036】
実際に、磁気ディスク装置のデータを消去するためには、まず対象となる磁気ディスク装置10をHDDホルダ76に搭載する。尚、この図16においては、説明のためにホルダカバー116(図14)は外してある。次に、サポートプレート118をHDDホルダ76に取付ける。スタートボタン120を押す事により、制御回路122がモータ104を回転させる。この回転により、HDDホルダ76が直動し上側磁石部と下側磁石部の間のデータ消去領域58を通過し、図17の位置まで移動する。
【0037】
図17の位置において、HDDホルダ76に取付けたブロックパッド124がマイクロスイッチ126を踏む事でモータ104が逆回転し、今度はHDDホルダ76が後退する。HDDホルダ76は、再度磁石部を通過し、図16の位置まで戻る。図16の位置まで戻ったHDDホルダ76はブロックパッド124がマイクロスイッチ128を踏む事で、モータ104の回転が停止する。
【0038】
図18は、モータ104の正転/反転の切替えやモータ104の停止を行うセンサ部について説明する為の図である。図の様にHDDホルダ76に取付けたブロックパッド124がマイクロスイッチ128を踏む事で、モータ104の回転を反転させたり、停止させたりする。尚、図18では、マイクロスイッチを2個使っている例を示しているが、これは1個目のマイクロスイッチ128が作動しなかった場合を考え、2個目のマイクロスイッチ129を作動させる事で、確実に上記動作を行うために配置している。
【0039】
尚、上記の説明でHDDホルダ76の移動について、ボールネジを使用している例を記述したが、台形ネジについても同様の動作となる。また、他にタイミングベルト方式やラック&ピニオン方式等によるHDDホルダ76の移動方式も考えられる。
【0040】
【発明の効果】
金属製のケースで覆われた状態のままで磁気ディスク上のデータを消去し得る強い磁場の吸引力に抗して磁気ディスク装置の挿入/排出が可能なデータ消去装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のデータ消去装置による消去の対象となる磁気ディスク装置の一例を示す分解斜視図である。
【図2】本発明のデータ消去装置の基本的な構成を示す図である。
【図3】本発明のデータ消去装置において発生される磁場を模式的に示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るデータ消去装置の斜視図である。
【図5】図4のカバー61を取り外した状態を示す斜視図である。
【図6】シールド板73を取り付けた例を示す図である。
【図7】図5のデータ消去装置の側面図である。
【図8】図7の上下フレーム、サイドフレームおよびガイドレールを取り除いた側面図である。
【図9】データ消去装置に磁気ディスク装置を収容した状態を示す平面図である。
【図10】HDDホルダ76が停止位置にある状態を示す平面図である。
【図11】HDDホルダ76のガイドフレーム90,92に沿った移動を説明する図である。
【図12】ハンドルの脱着を説明する図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係るデータ消去装置の斜視図である。
【図14】図13のカバー102を取り外した状態を示す斜視図である。
【図15】シールド板73を取り付けた例を示す図である。
【図16】図14の上フレーム62、ヨーク46、永久磁石42,44、およびサイドフレーム66,68を取り外した状態を示す平面図である。
【図17】HDDホルダ76が停止位置にある状態を示す平面図である。
【図18】ブロックパッド124とマイクロスイッチ128,129の位置関係を示す斜視図である。

Claims (4)

  1. 磁気ディスク装置内の磁気ディスクに記録されたデータを消去するデータ消去装置であって、
    磁気ディスク装置全体を収容し得る空間を有し、該空間内に収容された磁気ディスク装置内の磁気ディスクに永久磁石による磁界を印加する磁場発生手段と、
    該磁場発生手段の空間内で磁気ディスク装置を磁界による吸引力に抗して挿入方向および排出方向に移動させる移動機構とを具備するデータ消去装置。
  2. 前記移動機構は、回転運動を並進運動に変換することによって吸引力に抗した移動を可能にする変換機構を含む請求項1記載のデータ消去装置。
  3. 前記移動機構は前記変換機構に回転力を与えるための回動可能なハンドルを含む請求項2記載のデータ消去装置。
  4. 前記移動機構は前記磁気ディスク装置を固定するフレームを含む請求項記載のデータ消去装置。
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