JP4785451B2 - 多心光コネクタ及びその組立方法 - Google Patents
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光コネクタ製造に際して、品質管理のために偏心量等を測定する方法あるいは装置は種々提案され特許出願されている(特許文献1、特許文献2)が、光ファイバがクリアランスに起因して設計上の中心から偏心すること自体を防止することが望ましい。
また、特許文献3、特許文献4は、本発明のような光ファイバ穴と光ファイバとのクリアランスに伴う光ファイバ偏心を問題とするものではないが、フェルールの前方端面に段差部を設ける点で本発明の一部と共通するので、特許文献として記載した。特許文献3(特開平11−352358:光コネクタの製造方法および光コネクタフェルール)は、光ファイバ内蔵型の光フェルールを作るために、端面側から光ファイバを挿入するというものであるが、前方端面に光ファイバを挿入し易くするためにテーパ挿入部付きの段付き面となっている。光ファイバ取り付け後、段付き面は研磨除去される。また、特許文献4(特開平10−122364:光コネクタのフェルール部品およびその部品を用いた光コネクタの製造方法)は、光コネクタ先端をフラット面と斜め面とし、フラット面を削り代としている。
光ファイバの偏心をなくすためには、光ファイバ穴との間のクリアランスをさらに小さくすることが考えられるが、現在のMT光コネクタフェルールにおける光ファイバ穴と光ファイバとの間のクリアランスは0.3〜1.5μmであり、クリアランスをこれ以上減らすと、光ファイバが挿入できなくなるため、現状クリアランスの維持は不可欠である。なお、現状クリアランスでも、光ファイバ挿入の際に光ファイバが光ファイバ穴の途中で引っかかる場合があるため、製造能力向上のためには逆にクリアランスの緩和が求められているという事情もある。
また、光ファイバを光ファイバ穴に挿入固定する際に、クリアランス量を光学的にモニタリングして偏心を小さくすることも考えられる。しかし、光ファイバの径(裸ファイバの径)0.125mmに対して光ファイバ穴の径は0.1258〜0.1265mmの寸法許容差で管理されており、光ファイバ穴とのクリアランスは1μm程度なので、通常の測定手段では正確なクリアランスの測定は不可能に近く、クリアランス量を光学的にモニタリングしながら偏心を小さくすることは現実的でない。
フェルールに、フェルール上面に開口して前記複数の光ファイバ穴のそれぞれの長さ方向中間部分のみを露出させる態様の光ファイバ押付け用窓部を、前記接着剤充填窓の前方に形成して、前記光ファイバ押付け用窓部と接着剤充填窓との間に前記複数の光ファイバ穴の挿入側部分を残し、前記光ファイバ押付け用窓部から挿入した光ファイバ押さえ部材により、前記複数の光ファイバ穴を挿通している複数の光ファイバのすべてを一括して押し下げて前記複数の光ファイバ穴の底面に押し付けることで、すべての光ファイバがそれぞれの光ファイバ穴内において同じ方向に偏って穴壁に接触している状態で、前記複数の光ファイバを前記複数の光ファイバ穴にそれぞれ接着固定したことを特徴とする。
請求項3は、請求項1又は2の多心光コネクタにおいて、光ファイバ押付け用窓部が接着剤充填窓の幅とほぼ同一の幅を有することを特徴とする。
請求項4は、請求項1〜3のいずれか1項の多心光コネクタにおいて、横一列の光ファイバ穴の中心を結ぶ光ファイバ穴中心線が、左右の嵌合ピン穴の中心を結ぶ嵌合ピン穴中心線に対して、光ファイバ穴と光ファイバとの間のクリアランス量cの概ね2分の1だけ上下方向にずれていることを特徴とする。
フェルールに、フェルール上面に開口して前記複数の光ファイバ穴のそれぞれの長さ方向中間部分のみを露出させる態様の光ファイバ押付け用窓部を、前記接着剤充填窓の前方に形成して、前記光ファイバ押付け用窓部と接着剤充填窓との間に前記複数の光ファイバ穴の挿入側部分を残し、前記光ファイバ押付け用窓部から挿入した光ファイバ押さえ部材により、前記複数の光ファイバ穴を挿通している複数の光ファイバのすべてを一括して押し下げて前記複数の光ファイバ穴の底面に押し付けることで、すべての光ファイバがそれぞれの光ファイバ穴内において同じ方向に偏って穴壁に接触している状態で、前記複数の光ファイバを前記複数の光ファイバ穴にそれぞれ接着固定することを特徴とする。
また、光ファイバの位置精度がクリアランス量に影響されないので、光ファイバ穴の許容寸法を大きく設定することが可能となり、光ファイバを光ファイバ穴に挿入する作業が容易になるので、多心光コネクタ組立の作業性が向上する。
また、光ファイバ押付け用窓部から挿入した光ファイバ押さえ部材で光ファイバを光ファイバ穴の底面に押し付け、その状態で光ファイバを光ファイバ穴に接着固定するので、容易にすべての光ファイバを光ファイバ穴の底面に沿わせることができる。
この多心光コネクタ1はPPS(ポニフェニレンスルファイド)等の概ね角形で鍔部3を持つ樹脂成形品であるフェルール2からなり、後方に開口する心線挿入口4、上面に開口する接着剤充填窓5、横一列に並んでフェルール前方端面2aに開口する、長手方向全体が同一内径の複数の光ファイバ穴6、その両側の嵌合ピン穴7、光ファイバ穴6に光ファイバを案内する光ファイバガイド溝8を備えている。この多心光コネクタ1は、上記の通り横一例に並ぶ複数の光ファイバ穴6の両側に嵌合ピン穴7を備えた嵌合ピン穴位置決め方式の樹脂製の多心光コネクタであり、JIS C 5981のF12形多心光ファイバコネクタに相当し、一般にMTコネクタと称されているものである。図示例の多心光コネクタ1は、4心光ファイバテープ心線10に取り付ける4心光コネクタであり、光ファイバテープ心線10の心線挿入口4近傍をゴムブーツ12で保護し、先端側の被覆10aを除去した光ファイバ(裸ファイバ)9を光ファイバ穴6に挿入し接着固定する。
図5は光ファイバ9を光ファイバ穴6内で偏らせる態様の一例を示すもので、図4における嵌合ピン穴7と光ファイバ穴6と光ファイバ9との位置関係を模式的に示した図である(なお、光ファイバ穴6及び光ファイバ9は便宜上2つだけを図示している)。この実施例では、横一列の光ファイバ穴6の中心を結ぶ光ファイバ穴中心線L2を、左右の嵌合ピン穴7の中心を結ぶ嵌合ピン穴中心線L1に対して、光ファイバ穴6と光ファイバ9との間のクリアランス量cの2分の1(c/2)だけ上方向にずらしている。すなわち、L2のL1に対するずれ量をaとすると、a=c/2だけ上にずらす。例えばクリアランス量c=0.5μmの場合、L2をL1に対してa=0.25μmだけ上にずらす。
そして、光ファイバ9は図示ように光ファイバ穴6の底(下部穴壁)に押し付け、その状態で光ファイバ穴6内に接着固定する。
この時、光ファイバ9の中心位置O3と光ファイバ穴6の中心位置O2との距離はc/2となるので、実際に組み立てた多心光コネクタにおける光ファイバ9の中心位置O3は嵌合ピン穴中心線L1上に位置することになる。
したがって、フェルール設計上の光ファイバの位置を、そのような光ファイバ穴6内の偏った位置(図5の位置)に設定することで、実際に組み立てた多心光コネクタにおける光ファイバ9の位置と設計上の位置とのずれを極力なくすことができる。これにより多心光コネクタ1の接続損失を一層低減することが可能となる。また、光ファイバ位置のバラツキが小さくなるので、多心光コネクタ製造の歩留りが向上する。
また、光ファイバ9の位置精度がクリアランス量cに影響されないので、光ファイバ穴6の許容寸法を大きく設定することが可能となり、光ファイバ9を光ファイバ穴6に挿入する作業が容易になるので、多心光コネクタ組立の作業性が向上する。
そして、光ファイバ9は図7のように光ファイバ穴6の底(下部穴壁)に押し付け、その状態で光ファイバ穴6内に接着固定する。
この時、光ファイバ9の中心位置O3と光ファイバ穴6の中心位置O2との距離はc/2となるので、そして、a’−O1O4=(c/2+e/2)−e/2=c/2 なので、実際に組み立てた多心光コネクタにおける光ファイバ9の中心位置O3は左右の嵌合ピン11の中心を結ぶ嵌合ピン中心線L4上に位置することになる。こうして、光ファイバ穴6と光ファイバ9との間のクリアランスに起因するコアずれだけでなく、斜め研磨の多心光コネクタに特有のコアずれをも吸収して、コアずれの少ない光コネクタ接続が可能となる。
この段付きフェルール32の光ファイバ穴6に光ファイバ9を挿入し接着固定するに際して、光ファイバ穴6に挿入した光ファイバ9の先端を接続端面32aから突出させて、段差面33a上の光ファイバ用円弧溝6aの底に押し付けると、少なくとも光ファイバ9の先端は光ファイバ用円弧溝6aの底に沿って平行になり、それに従動して、光ファイバ9の光ファイバ穴内側に位置する部分も光ファイバ穴6の底に沿うように押し付けられる。その状態で光ファイバ9を光ファイバ穴6内で接着固定する。次いで前方端面を研磨して段差部33を除去すると、すべての光ファイバ9が光ファイバ穴6内で揃って下方に偏心した光フェルールが完成する。
光ファイバ9を光ファイバ穴6に挿入し接着固定するに際して、前記光ファイバ押付け用窓部43から挿入した光ファイバ押さえ部材44により、光ファイバ穴6を挿通している光ファイバ9を押し下げて、光ファイバ9を光ファイバ穴6の底面に押し付ける。その状態で光ファイバ9を光ファイバ穴6に接着固定する。これにより、すべての光ファイバ9を光ファイバ穴6内で揃って下方に偏心した光コネクタが完成する。
このように光ファイバ9の軸が光ファイバ9の湾曲のために傾いてしまうのを防止するために、図13、図14に示した方法を併用することができる。すなわち、光ファイバ押付け用窓43から挿入した光ファイバ押さえ部材44で光ファイバ9を押し下げて、光ファイバ9の浮きをなくすことができる。その状態で接着固定することで、光ファイバ9が光ファイバ穴6内で浮くことによる光ファイバ9の軸の傾きを防止でき、接続損失が増すことを防止できる。
2、22、42 フェルール
2a、22a、42a 接続端面
43 光ファイバ押付け用窓部
44 光ファイバ押さえ部材
3 鍔部
4 心線挿入口
5 接着剤充填窓
6 光ファイバ穴
7 嵌合ピン穴
8 光ファイバガイド溝
9 光ファイバ
10 光ファイバテープ心線
11 嵌合ピン
c (光ファイバ穴と光ファイバとの間の)クリアランス
e (嵌合ピン穴と嵌合ピンとの間の)クリアランス
a、a’ 光ファイバ穴中心線L2の嵌合ピン穴中心線L1に対するずれ量
O1 嵌合ピン穴の中心
O2 光ファイバ穴の中心
O3 光ファイバの中心
O4 嵌合ピンの中心
L1 嵌合ピン穴中心線
L2、L2’光ファイバ穴中心線
Claims (6)
- 後方に開口する心線挿入口と、前記心線挿入口に連通するとともに上面に開口する接着剤充填窓と、横一列に並んでフェルール前方端面に開口する、長手方向全体が同一内径の複数の光ファイバ穴と、その両側の位置決め用の嵌合ピン穴とを備えた嵌合ピン穴位置決め方式の樹脂製の多心光コネクタであって、
フェルールに、フェルール上面に開口して前記複数の光ファイバ穴のそれぞれの長さ方向中間部分のみを露出させる態様の光ファイバ押付け用窓部を、前記接着剤充填窓の前方に形成して、前記光ファイバ押付け用窓部と接着剤充填窓との間に前記複数の光ファイバ穴の挿入側部分を残し、前記光ファイバ押付け用窓部から挿入した光ファイバ押さえ部材により、前記複数の光ファイバ穴を挿通している複数の光ファイバのすべてを一括して押し下げて前記複数の光ファイバ穴の底面に押し付けることで、すべての光ファイバがそれぞれの光ファイバ穴内において同じ方向に偏って穴壁に接触している状態で、前記複数の光ファイバを前記複数の光ファイバ穴にそれぞれ接着固定したことを特徴とする多心光コネクタ。 - 前記光ファイバ押付け用窓部は、フェルール長手方向寸法がフェルール厚み方向寸法より小であることを特徴とする請求項1記載の多心光コネクタ。
- 前記光ファイバ押付け用窓部が接着剤充填窓の幅とほぼ同一の幅を有することを特徴とする請求項1又は2記載の多心光コネクタ。
- 横一列の光ファイバ穴の中心を結ぶ光ファイバ穴中心線が、左右の嵌合ピン穴の中心を結ぶ嵌合ピン穴中心線に対して、光ファイバ穴と光ファイバとの間のクリアランス量cの概ね2分の1だけ上下方向にずれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多心光コネクタ。
- 斜め研磨の多心光コネクタに適用され、横一列の光ファイバ穴の中心を結ぶ光ファイバ穴中心線が、左右の嵌合ピン穴の中心を結ぶ嵌合ピン穴中心線に対して、光ファイバ穴と光ファイバとの間のクリアランス量cの概ね2分の1に、嵌合ピン穴と嵌合ピンとの間のクリアランス量の概ね2分の1を加えたクリアランス合計量だけ上下方向にずれていることを特徴とする請求項4記載の多心光コネクタ。
- 後方に開口する心線挿入口と、前記心線挿入口に連通するとともに上面に開口する接着剤充填窓と、横一列に並んでフェルール前方端面に開口する、長手方向全体が同一内径の複数の光ファイバ穴と、その両側の位置決め用の嵌合ピン穴とを備えた嵌合ピン穴位置決め方式の樹脂製の多心光コネクタを組み立てる多心光コネクタの組立方法であって、
フェルールに、フェルール上面に開口して前記複数の光ファイバ穴のそれぞれの長さ方向中間部分のみを露出させる態様の光ファイバ押付け用窓部を、前記接着剤充填窓の前方に形成して、前記光ファイバ押付け用窓部と接着剤充填窓との間に前記複数の光ファイバ穴の挿入側部分を残し、前記光ファイバ押付け用窓部から挿入した光ファイバ押さえ部材により、前記複数の光ファイバ穴を挿通している複数の光ファイバのすべてを一括して押し下げて前記複数の光ファイバ穴の底面に押し付けることで、すべての光ファイバがそれぞれの光ファイバ穴内において同じ方向に偏って穴壁に接触している状態で、前記複数の光ファイバを前記複数の光ファイバ穴にそれぞれ接着固定することを特徴とする多心光コネクタの組立方法。
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