JP4140276B2 - 光コネクタの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、単心又は多心の光ファイバの先端から露出させた光ファイバをフェルールに組み付けて固定させるための光コネクタの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から一般に利用されている光コネクタとしては、2本のガイドピンを有し、当該ガイドピンで高精度の位置合わせするMTコネクタ、さらにそのMTコネクタをハウジング内に内蔵したMPOコネクタが知られている。これらの多心コネクタは、近年、単心コネクタに置き換わって需要が増えつつある。このような多心コネクタに対する要求は単心コネクタの場合と同様であり、非常に低損失なものが要求される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、接続損失を低減させるためには、位置合わせ部品などの高精度化が必要不可欠であるが、精度向上を図るためには部品を製造するための金型などを高精度化することが必要であり、コストが上昇するという問題があった。
【0004】
そこで、本発明は上記課題を解決し、コスト上昇を抑えつつ接続損失を低減させた光コネクタの製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る光コネクタの製造方法は、設計中心位置としてあらかじめ定められた光ファイバ挿入孔の中心位置とフェルールに形成された光ファイバ挿入孔の中心位置とのずれ量a及び前記光ファイバ挿入孔の径Dを測定し、前記ずれ量a及び前記光ファイバ挿入孔の径Dに対して、d+2a≦D<d+3.0μmという関係を満たす径dを有する光ファイバを選択する光ファイバ選択ステップと、光ファイバ選択ステップにおいて選択された光ファイバを光ファイバ挿入孔に挿入し、光ファイバの中心が光ファイバ挿入孔の設計中心位置に一致するように光ファイバの位置決めをする位置決めステップと、位置決めステップにおいて位置決めされた光ファイバを光ファイバ挿入孔内で固定する光ファイバ固定ステップと、光ファイバが挿入されたフェルールの端面を研磨するステップと、を有し、位置決めステップでは、フェルールの接続端面の光ファイバ挿入孔から突出した光ファイバと位置決めするための光ファイバ位置決め部と、フェルールに形成された嵌合孔に嵌合された嵌合ピンを位置決めするための嵌合ピン位置決め部と、を備える光コネクタ組立治具を用いて、光ファイバの中心が光ファイバ挿入孔の設計中心位置に一致するように位置決めすることを特徴とする。
【0006】
光ファイバ挿入孔の設計中心値とのずれ量a、光ファイバ挿入孔の径Dに対して、d+2a≦Dという関係を満たす径dを有する光ファイバを選択すれば、光ファイバ挿入孔内で光ファイバの位置を調節することによって、光ファイバの中心を光ファイバ挿入孔の設計中心値に一致させることができる。すなわち、フェルールに形成された光ファイバ挿入孔の中心が設計中心位置からずれている場合であっても、光ファイバを設計中心位置に位置決めすることができ、光ファイバのコアを偏心なく位置合わせすることが可能となり光コネクタの接続損失を低減できる。従って、コストをかけてフェルールを高精度に成形しなくても、従来のフェルールを用いて光コネクタの接続損失を低減できる。また、光ファイバ挿入孔の径と光ファイバとの径の差が3.0μmより大きくなると、位置決めステップにおいて光ファイバの中心を設計中心位置に位置決めするのが困難になるので、D<d+3.0μmという関係を満たす光ファイバを満たす光ファイバを選択することが好適である。なお、位置決めステップにおいて、「光ファイバの中心が光ファイバ挿入孔の設計中心位置に一致するように光ファイバの位置決めをする」とは、完全に一致することまで要求するものではなく、実用的に問題が生じない範囲で一致すればよい。
更に、光ファイバ位置決め部と嵌合ピン位置決め部とを有する光コネクタ組立治具を用いて光ファイバの位置決めを行うことにより、光ファイバの位置決めを精度良く行うことができる。本発明に係る製造方法において、設計中心位置への位置決めは、真の中心位置に対して0.7μ m 以下の偏心を達成していれば、単心コネクタで用いられる高精度の単心フェルールと同等以上の性能を得ることができる。
【0007】
上記光コネクタの製造方法は、光ファイバ固定ステップでは、室温硬化型接着剤を光ファイバ挿入孔に充填させて光ファイバを固定することを特徴としても良い。
【0008】
このように、常温で硬化する接着剤を用いることにより、熱による部品の膨張などを考慮する必要がなく、精度良く光ファイバを取り付けて固定すれば、精度の良い光コネクタを製造することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、図面と共に本発明に係る光コネクタの製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0030】
図1は実施形態に係る光コネクタ1を示す斜視図、図2は図1に示す光コネクタ1の分解斜視図である。この光コネクタ1は、光ファイバの位置決め用部品としての多心用フェルールを適用させたMTコネクタである。図2に示されるように、光コネクタ1は、光ファイバFを固定する1組のフェルール3と、フェルール3どうしを結合するためフェルール3に挿入される1対の棒状ガイドピン(嵌合ピン)5と、相互に突き合わされたフェルール3どうしを結合する結合クリップ7とを備える。フェルール3は、平板上の結合部3aと、結合部3aの一端に一体に設けられたブロック状のファイバ挿入部3bとからなる。ファイバ挿入部3bには、例えば、8心のテープ状の光ファイバ心線2が挿入され、ゴム製のブーツ8によって固定される。結合部3a内には、被覆部の剥離により露出された8本の光ファイバFが収納されている。また、結合部3aには接着剤充填窓10が形成され、この接着剤充填窓10を通してエポキシ樹脂等の接着剤Rが注入され、この接着剤Rにより光ファイバFが固定されている。さらに、フェルール3には、1対のガイドピン5と嵌合する内周が略円形のガイド穴(嵌合孔)6が形成されている。
【0031】
次に、フェルール3について詳しく説明する。図3はフェルール3の接続端面3cを示す図であるが、フェルール3の接続端面3cには光接続口4が直線上に整列して形成されている。接続端面3cの光接続口4と反対面の光ファイバ導入口11とは、フェルール3を貫通する光ファイバ挿入孔12を通じて接続されている。図4はフェルール3の断面図であるが、同図に示されるように、光ファイバ挿入孔12は、光接続口4とほぼ同径で光接続口4から延びる光ファイバ位置決め孔12aと、光ファイバ位置決め孔12aの径よりも拡大された径を持つロート状の接着剤充填孔12bとを有している。なお、光ファイバ位置決め孔12aは、光ファイバFの先端部分の位置決めを行って心出しをさせる関係上光ファイバFと略同径となっており、例えば、光ファイバFの径が125μmである場合には、光ファイバ位置決め孔12aは126〜127μmである。接着剤充填孔12bは、126μm程度の光ファイバ位置決め孔12aに対して、150〜250μmに拡大されている。
【0032】
光ファイバ導入口11と光ファイバ位置決め孔12aとの間には、粘度が100〜3000cpの接着剤Rを収容させるための光ファイバ接着用凹部13が形成され、この凹部13の頂部には、接着剤Rを流し込むための矩形の開口をなす接着剤充填窓10が形成されている。
【0033】
なお、凹部13の底面13aには、その略全長にわたって延在する断面V字状又はC字上の光ファイバ整列溝9が8本形成されている。各光ファイバ整列溝9は、光ファイバ位置決め孔12aの延長上に位置し、光ファイバ位置決め孔12aと光ファイバ導入口11との間に延在する。
【0034】
次に、この光コネクタ1の製造方法について図5を参照しながら説明し、併せて実施形態に係る光コネクタ1について説明する。図5は、本実施形態に係る光コネクタ1の製造工程を示すフローチャートである。
【0035】
まず、フェルール3を成形する(S10)。フェルール3は、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂)にシリカ、ウィスカなどを配合して混練した材料を射出成形などの成形技術を用いて成形して製造する。
【0036】
次に、成形されたフェルール3において、光ファイバ挿入孔12の接続端面3cにおける光ファイバFの設計中心位置からのずれ量a及び光ファイバ挿入孔12の径Dを測定する(S12)。ここで、ずれ量aは東京光音電波製の偏心測定計によって測定し、光ファイバ挿入孔12の径Dはゲージピンによる通り止りによって測定する。
【0037】
続いて、フェルール3に挿入する光ファイバFを選択する(S14)。具体的には、フェルール3の光ファイバ挿入孔12のずれ量a及び径Dに基づいて、
d+2a≦D<d+3.0μm
の関係を満たす径dを有する光ファイバFを選択する。
【0038】
次に、選択された光ファイバFをフェルール3に挿入し、光ファイバ挿入孔12内での光ファイバFの位置決めを行う(S16)。ここで、光ファイバFをフェルール3に挿入する方法について図6を参照しながら説明する。図6は、光ファイバFの挿入前のフェルール3を示す断面図である。図6に示されるように、先端部付近の被覆を除去した光ファイバFを光ファイバ導入口11からフェルール3に挿入する。光ファイバFを途中まで挿入したところで、接着剤充填窓10から接着剤Rを流し込み、さらに光ファイバFをフェルール3内に押しこんでいく。接着剤Rが付着した光ファイバFは光ファイバ挿入孔12に導入され、続いて光ファイバFは接続端面3cから突出する。以上のような方法で、光ファイバFはフェルール3に挿入される。なお、光ファイバ挿入孔12の接着剤充填孔12bはロート状になっているので、光ファイバFはスムーズに光ファイバ位置決め孔12aに進入していく。
【0039】
続いて、フェルール3に挿入された光ファイバFの中心を光ファイバ挿入孔12の設計中心位置に一致させるように光ファイバFの位置決めを行う(S16)。光ファイバFの位置決めには、位置決めを行うための光コネクタ組立治具20が用いられる。
【0040】
図7は、光コネクタ組立治具20と光ファイバFが挿入されたフェルール3を示す斜視図である。図7に示されるように、光コネクタ組立治具20は、光ファイバF及びガイドピン5が挿入される丸穴20a,20bを有するプレートによって構成されている。ここで、光コネクタ組立治具20に形成されている丸穴20aは、丸穴20aに挿通された光ファイバFの中心位置が設計中心位置と一致するような位置に形成されている。すなわち、フェルール3の接続端面3cから突出した光ファイバFを光コネクタ組立治具20の丸穴20aに挿入することによって、光ファイバFの位置決めを行うことができる。また、この光コネクタ組立治具20は、超硬鋼によって構成されていることが、精度や耐久性を向上させる上で好適である。このように、光コネクタ組立治具20を用いて、フェルール3に挿入された光ファイバFの位置決めを行い、位置決めされた状態で光ファイバFをフェルール3に固定する(S18)。本実施形態に係る製造方法では、光ファイバFを挿入するステップにおいて接着剤充填窓10から接着剤Rを流し込んで光ファイバFに付着させているので、その接着剤Rが硬化するのを待つ。なお、ここで用いられる接着剤Rは室温で硬化する室温硬化型接着剤であることが好ましい。加熱によって硬化する接着剤を用いると、接着剤を加熱したときの熱でフェルール3が膨張し、位置決めされた光ファイバFの位置がずれてしまうおそれがあるので室温硬化型接着剤を用いるのが良い。
【0041】
次に、上記の工程によって製造されたフェルール3の接続端面3cを研磨する(S20)ことによって光コネクタ1が完成する。
【0042】
続いて、本実施形態に係る光コネクタ1の製造方法、及び光コネクタ1、並びに光コネクタ組立治具20の効果について説明する。
【0043】
本実施形態に係る光コネクタ1の製造方法では、光ファイバFを選択するステップにおいて、フェルール3に形成された光ファイバ挿入孔12のずれ量a及び径Dに対して、d+2a≦D<d+3.0μmなる関係を有する光ファイバFを選択しているので、光ファイバ挿入孔12の設計中心位置からのずれ量aによらず、光ファイバFの位置を光ファイバ挿入孔12内で調節し、光ファイバFの中心を設計中心位置に位置決めすることができる。従って、フェルール3を成形する際に光ファイバ挿入孔12の精度を極度に高めなくても光ファイバFの位置決めすることができ、低コストで接続損失の少ない光コネクタ1を製造することができる。
【0044】
また、本実施形態に係る製造方法によって製造された光コネクタ1は、低コストで接続損失の少ない光コネクタ1である。
【0045】
また、本実施形態に係る製造方法において用いられた光コネクタ組立治具20は、接続端面3cから突出した光ファイバF及びガイドピン5を丸穴に挿入することによって、光ファイバFの位置決めを容易に行うことができる。
【0046】
以上、本発明に係る光コネクタ1及び光コネクタ1の製造方法について、実施形態に基づいて詳細に説明したが、本発明に係る光コネクタ1及び光コネクタ1の製造方法は上記実施形態に限定されるものではない。
【0047】
上記実施形態に係る製造方法では、丸穴が形成された光コネクタ組立治具20を用いて、光ファイバFの位置決めを行っているが、光ファイバFを載置する溝を有する光コネクタ組立治具を用いて、光ファイバFの位置決めを行っても良い。
【0048】
図8(a)は光コネクタ組立治具21を示す斜視図、図8(b)は光コネクタ組立治具21をB−B方向から見た部分図である。光コネクタ組立治具21は、光ファイバFを載置するためのV溝22a及びガイドピン5を載置するためのV溝22bが形成された位置決め部材22と、V溝22a,22bに載置された光ファイバF及びガイドピン5を押える押え部材23と、を有している。光ファイバFを効率良くV溝22aに押さえつけることができるように、押え部材23のファイバ押え面23aは弾性体によって構成されている。このような光コネクタ組立治具21によれば、接続端面3cから突出した光ファイバF及びガイドピン5を位置決め部材22のV溝22a,22bに載置し、押え部材23で光ファイバF及びガイドピン5をV溝22a,22bに押さえつけることによって、光ファイバ挿入孔12(図8(b)に仮想線で示す)の精度によらず、光ファイバFの中心が設計中心位置に一致するように位置決めを行うことができる。
【0049】
また、上記実施形態では超硬鋼からなる光コネクタ組立治具20が好適であると説明したが、本発明に係る光コネクタ組立治具他の材料によって構成されていても良い。例えば、光コネクタ組立治具がシリコンによって構成されることとすれば、ダイサー等の加工機によって量産することができるので好ましい。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、光ファイバ挿入孔とその設計中心値とのずれ量a、光ファイバ挿入孔の径Dに対して、d+2a≦Dという関係を満たす径dを有する光ファイバを選択し、光ファイバ挿入孔内で光ファイバの位置を調節することによって、光ファイバの中心を光ファイバ挿入孔の設計中心値に一致させることができる。これにより、コストをかけてフェルールを高精度に成形しなくても、従来のフェルールを用いて光コネクタの接続損失を低減できる。
【0051】
また、D<d+3.0μmという関係を満たす光ファイバを満たす光ファイバを選択することにより、光ファイバ挿入孔12内での光ファイバの位置決めを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光コネクタを示す斜視図である。
【図2】光コネクタを示す分解斜視図である。
【図3】光コネクタフェルールの接続端面を示す図である。
【図4】光コネクタフェルールの断面図である。
【図5】光コネクタの製造工程を示すフローチャートである。
【図6】光コネクタフェルールに光ファイバを挿入する過程を説明する図である。
【図7】光コネクタ組立治具を示す斜視図である。
【図8】光コネクタ組立治具を示す斜視図である。
【符号の説明】
1…光コネクタ、2…光ファイバテープ、3…フェルール、4…光接続口、5…ガイドピン、6…ガイド穴、7…クリップ結合部、8…ブーツ、9…整列溝、10…接着剤充填窓、11…光ファイバ導入口、12…光ファイバ挿入孔、13…凹部、20、21…光コネクタ組立治具、22…位置決め部材、23…押え部材。

Claims (2)

  1. 設計中心位置としてあらかじめ定められた光ファイバ挿入孔の中心位置とフェルールに形成された光ファイバ挿入孔の中心位置とのずれ量a及び前記光ファイバ挿入孔の径Dを測定し、前記ずれ量a及び前記光ファイバ挿入孔の径Dに対して、
    d+2a≦D<d+3.0μm
    という関係を満たす径dを有する光ファイバを選択する光ファイバ選択ステップと、
    前記光ファイバ選択ステップにおいて選択された光ファイバを前記光ファイバ挿入孔に挿入し、前記光ファイバの中心が光ファイバ挿入孔の前記設計中心位置に一致するように前記光ファイバの位置決めをする位置決めステップと、
    前記位置決めステップにおいて位置決めされた光ファイバを前記光ファイバ挿入孔内で固定する光ファイバ固定ステップと、
    光ファイバが挿入された前記フェルールの端面を研磨するステップと、
    を有し、
    前記位置決めステップでは、前記フェルールの接続端面の前記光ファイバ挿入孔から突出した光ファイバと位置決めするための光ファイバ位置決め部と、前記フェルールに形成された嵌合孔に嵌合された嵌合ピンを位置決めするための嵌合ピン位置決め部と、を備える光コネクタ組立治具を用いて、光ファイバの中心が光ファイバ挿入孔の前記設計中心位置に一致するように位置決めすることを特徴とする光コネクタの製造方法。
  2. 前記光ファイバ固定ステップでは、室温硬化型接着剤を前記光ファイバ挿入孔に充填させて前記光ファイバを固定することを特徴とする請求項1に記載の光コネクタの製造方法。
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