JP4783496B2 - アミノ酸誘導体の光学異性体の分離方法 - Google Patents

アミノ酸誘導体の光学異性体の分離方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はアミノ酸誘導体の光学異性体の分離方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アミノ酸のアミノ基における水素原子がtert−ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、又はアシル基で置換・保護されたアミノ酸誘導体は、医薬品または医薬中間体として重要な化合物である。これらアミノ酸誘導体においては光学異性体が存在することが多く、これら光学異性体間ではその生理活性や毒性にしばしば大きな差が有ることが広く知られている。そのため、このような分野で使用されるアミノ酸誘導体においては、光学純度の高いものを製造することが非常に重要である。
【0003】
一般に、光学異性体の分離精製は、液体クロマトグラフィーを用いて行なうことができ、多糖類、アミノ酸誘導体などをシリカゲルに担持した光学異性体分離用のカラムも種々開発されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のようなアミノ酸誘導体については、通常の液体クロマトグラフィーでは分離が不可能であったり、あるいは分離できても不完全な分離しかできなかったり、分離に非常に長時間を要するといった問題がある。
【0005】
なお、1986年発行のジャーナルオブクロマトグラフィー第357巻の409頁〜415頁{Journal of Chromatography,357(1986)409-415)}には、アミノ酸誘導体の中でも特にダンシルアミノ酸については、β−シクロデキストリンを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により光学異性体の分離ができることが記載されているが、該文献に記載されている分離方法はβ−シクロデキストリンがナフタレン環を有する低分子化合物と複合体を作り易いという性質を利用したものであり、ナフタレン環を有しないアミノ酸誘導体の光学異性体分離について該分離方法をそのまま適用することはできない。例えば、上記文献には、分離因子(セパレーションファクター)は、移動相のpHが高くなるほど増大する傾向があり、pH6付近が最も好ましい旨が説明されているが、このようなpH領域で前記の様なアミノ酸誘導体の光学異性体の分離を行なっても分離できない。また、アミノ酸誘導体にナフタレン環を導入してから光学異性体を分離することも考えられるが、この場合にはナフタレン環を導入する工程が必要なばかりでなく、有用な光学純度の高いアミノ酸誘導体を得るためには分離後に元のアミノ酸誘導体に戻す工程が更に必要となり、実用的ではない。
【0006】
このようにアミノ酸のアミノ基における水素原子がアルコキシカルボニル基等の特定の置換基で置換されたアミノ酸誘導体について、光学異性体を効率よく分離する方法は知られていない。そこで、本発明はこのようなアミノ酸誘導体について光学異性体の分離を効率良く行ない、延いては光学純度の高いアミノ酸誘導体を製造する方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはこの課題を解決すべく、D型及びL型光学異性体を含む前記アミノ酸誘導体を、各光学異性体に対してそれぞれ異なる親和性を有する親水性化合物と共存させることにより両者に疎水性の差を発現させれば、この差を利用して両者を分離できるのではないかと考え、種々検討を行なった。その結果、上記アミノ酸誘導体を上記親水性化合物と単に共存さるだけでは十分な分離を行なうことはできなかったが、両者の混合物を特定の条件下で疎水性物質と接触させることによって光学異性体を分離することできることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、第一の本発明は、アミノ酸のアミノ基における水素原子の少なくとも一つが、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、又はアシル基で置換されたアミノ酸誘導体であって、D型及びL型の光学異性体が混在するアミノ酸誘導体と、前記2種類の光学異性体に対してそれぞれ異なる親和性を有する親水性化合物であって、多糖類及びその誘導体、並びにアミノ酸の天然光学活性化合物及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる親水性化合物と、を水性溶液中で混合し、次いで得られた水性溶液又は水性懸濁液を、pHが3.5以下となる条件下、又は前記アミノ酸誘導体の対イオンとなり得るイオンであって、水酸基、ニトロ基およびハロゲン原子からなる群より選ばれる置換基を有していてもよいアルキル基、又は水酸基、ニトロ基およびハロゲン原子からなる群より選ばれる置換基を有していてもよいアリール基からなる疎水性を有する原子団を含むイオンの共存下で、該水性溶液又は水性懸濁液よりも疎水性が高い液体又は固体からなる疎水性物質と接触させて該水性溶液又は水性懸濁液中に存在するD型アミノ酸誘導体とL型アミノ酸誘導体とを分離することを特徴とする前記アミノ酸誘導体の光学異性体の分離方法である。
【0009】
また、第二の本発明は、アミノ酸のアミノ基における水素原子の少なくとも一つが、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、又はアシル基で置換されたアミノ酸誘導体であって、D型及びL型の光学異性体が混在するアミノ酸誘導体から高純度のD型又はL型光学異性体を分離する分離工程を含む光学純度の高い前記アミノ酸誘導体を製造する方法であって、該分離工程において上記第一の本発明の分離方法を用いることを特徴とする光学活性アミノ酸誘導体の製造方法である。
【0010】
また、第三の本発明は、前記第一の本発明の分離方法で分離されたD型及びL型アミノ酸誘導体の量をそれぞれ測定し、測定された各量に基づいて前記アミノ酸誘導体の光学純度を決定することを特徴とする光学純度分析方法であり、第四の本発明は、アミノ酸のアミノ基における水素原子の少なくとも一つが、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、又はアシル基で置換されたアミノ酸誘導体であって、D型及びL型の光学異性体が混在するアミノ酸誘導体から高純度のD型又はL型光学異性体を分離する分離工程を含む光学純度の高い前記アミノ酸誘導体を製造する方法であって、該分離工程により分離された高純度のD型又はL型光学異性体の純度を上記第三の本発明の光学純度分析方法で確認することを特徴とする光学活性アミノ酸誘導体の製造方法である。
【0011】
上記第一の本発明の分離法方によれば、アミノ酸のアミノ基における水素原子の少なくとも一つが特定の置換基で置換されたアミノ酸誘導体についてD型とL型の光学異性体を効率よく分離することができる。また、該分離方法は上記第二〜第四の本発明に見られるように、光学活性アミノ酸誘導体の製造方法や、アミノ酸誘導体の光学純度分析方法に応用することができる。
【0012】
本発明は、理論に拘束されるものではないが、本発明の分離方法においては次のような機構により光学異性体の分離が可能になったものと思われる。即ち、D型及びL型の光学異性体を含むアミノ酸誘導体が前記のような作用を有する親水性化合物と水性溶液中で共存すると、該親水性化合物に対して強い親和性を有する光学異性体は何らかの形で相互作用を起こしてもう一方の光学異性体よりも親水性の高い複合体となるが、これらを疎水性物質接触させたとしても両者の該疎水性物質に対する親和性(例えば吸着力)の差が十分ではないため両者を分離することはできない。一方、水性溶液のpHを3.5以下にしたときには、アミノ酸誘導体のカルボキシル基が解離しなくなるため、相対的に疎水性が高くなっている光学異性体(すなわち親水性化合物と複合体を形成していないか若しくは上記複合体より不安定な複合体を形成していると思われる光学異性体)の疎水性が更に高まるのに対し、上記複合体においては親水性化合物の効果が大きくその親水性はあまり変わらないため、両者の疎水性物質へ対する平衡分配率が変化し、結果として光学異性体を効率良く分離することが可能になったものと思われる。また、疎水性を有する原子団を含むイオンを含有させた場合には、相対的に疎水性が高くなっている光学異性体のカルボキシル基が解離したとしても該イオンとイオン対を形成するために疎水性は高まるのに対し、より安定な複合体の光学異性体はその近傍の親水性化合物の存在によりこのようなイオン対を形成できず、或いは、対イオンの効果が弱められて上記と同様に疎水性物質への平衡分配率が変化し、光学異性体の分離が可能になったものと思われる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の分離方法では、アミノ酸のアミノ基における水素原子の少なくとも一つが、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、又はアシル基で置換されたアミノ酸誘導体(以下、本アミノ酸誘導体ともいう。)であって、D型及びL型の光学異性体(以下、単にそれぞれD体及びL体ともいう。)が混在するアミノ酸誘導体からD体又はL体を分離する。
【0014】
上記本アミノ酸誘導体はアミノ酸のアミノ基における水素原子の少なくとも一つが、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、又はアシル基で置換され、アミノ酸のカルボキシル基が残存しており、且つD型とL型の光学異性体が存在し得るアミノ酸誘導体であれば特に限定されない。なお、本発明の分離方法は、不整炭素を2以上有するアミノ酸誘導体の光学異性体の分離についても適用可能であるが、分離効果の高さの観点から、2種類の光学異性体を有する不整炭素を1つ有するアミノ酸誘導体を用いるのが好適である。
【0015】
本アミノ酸誘導体において、そのアミノ基の水素原子の少なくとも一つが上記置換基で置換されるアミノ酸(以下、基本アミノ酸ともいう。)としては、公知のアミノ酸が制限なく使用できる。基本アミノ酸として好適なアミノ酸を例示すれば、アラニン、プロリン、ロイシン、イソロイシン、バリン、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン、セリン、メチオニン、グルタミン、グルタミン酸、リジン等が挙げられる。
【0016】
また、上記基本アミノ酸のアミノ基の置換基となるアルコキシカルボニル基等は、特に限定されないが、分離性およびアミノ酸誘導体自身の有用性の観点から、それぞれ次のような基であるのが好適である。すなわち、アルコキシカルボニル基は、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert−アミルオキシカルボニル基等の炭素数2〜10の基であるのが好適である。また、アラルキルオキシカルボニルは、ベンジルオキシカルボニル基、p−ニトロベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基等の炭素数8〜15の基であるのが好適であり、アリールオキシカルボニル基は、フェニルオキシカルボニル基、m−ニトロフェニルオキシカルボニル基、p−メチルフェニルオキシカルボニル基、m−メチルフェニルオキシカルボニル基、2,4−ジメチルフェニルオキシカルボニル基、2,4,6−トリメチルフェニルオキシカルボニル基等の炭素数7〜10の基であるのが好適であり、アルケニルオキシカルボニル基は、1−ブテンオキシカルボニル基、2−ブテンオキシカルボニル基等の炭素数4〜10の基であるのが好適であり、更にアシル基は、ホルミル基、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ベンゾイル基等の炭素数1〜7の基であるのが好適である。
【0017】
これらの置換基の中でも特に高い分離が期待されることから、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、tert−アミルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、フェニルオキシカルボニル基、ホルミル基、アセチル基、プロパノイル基、又はベンゾイル基が特に好ましい。
【0018】
本発明の分離方法において好適に用いられる本アミノ酸誘導体を具体的に示せば、N−(tert−ブトキシカルボニル)−アラニン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−プロリン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−ロイシン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−イソロイシン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−バリン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−トリプトファン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−フェニルアラニン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−セリン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−メチオニン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−グルタミン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−グルタミン酸、N−(tert−ブトキシカルボニル)−リジン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−チロシン等のアルコキシカルボニル基で置換されたアミノ酸誘導体;N−ベンジルオキシカルボニル−アラニン、N−ベンジルオキシカルボニル−プロリン、N−ベンジルオキシカルボニル−ロイシン、N−ベンジルオキシカルボニル−イソロイシン、N−ベンジルオキシカルボニル−バリン、N−ベンジルオキシカルボニル−トリプトファン、N−ベンジルオキシカルボニル−フェニルアラニン、N−ベンジルオキシカルボニル−セリン、N−ベンジルオキシカルボニル−メチオニン、N−ベンジルオキシカルボニル−グルタミン、N−ベンジルオキシカルボニル−グルタミン酸、N−ベンジルオキシカルボニル−リジン等のアラルキルカルボニル基で置換されたアミノ酸誘導体;N−フェニルオキシカルボニル−アラニン、N−フェニルオキシカルボニル−プロリン、N−フェニルオキシカルボニル−ロイシン、N−フェニルオキシカルボニル−イソロイシン、N−フェニルオキシカルボニル−バリン、N−フェニルオキシカルボニル−トリプトファン、N−フェニルオキシカルボニル−フェニルアラニン、N−フェニルオキシカルボニル−セリン、N−フェニルオキシカルボニル−メチオニン、N−フェニルオキシカルボニル−グルタミン、N−フェニルオキシカルボニル−グルタミン酸、N−フェニルオキシカルボニル−リジン等のアリールオキシカルボニル基で置換されたアミノ酸誘導体、N−ベンゾイル−アラニン、N−ベンゾイル−プロリン、N−ベンゾイル−ロイシン、N−ベンゾイル−イソロイシン、N−ベンゾイル−バリン、N−ベンゾイル−トリプトファン、N−ベンゾイル−フェニルアラニン、N−ベンゾイル−セリン、N−ベンゾイル−メチオニン、N−ベンゾイル−グルタミン、N−ベンゾイル−グルタミン酸、N−ベンゾイル−リジン等のアシル基で置換されたアミノ酸誘導体等が挙げられる。これらの中でも分子中における不整炭素数が1個であるものが特に好適に用いられる。
【0019】
本発明の分離方法においては本アミノ酸誘導体についてD体とL体の分離を行なうため、本発明の分離方法で分離対象として用いる本アミノ酸誘導体(未分離アミノ酸誘導体ともいう。)においてはD体及びL体が混在する。未分離アミノ酸誘導体におけるD体又はL体の含有割合は特に限定されないが、一般的な合成方法によって得られる本アミノ酸誘導体のD体又はL体の光学純度は、通常90〜99.9%であることから、このような光学純度の本アミノ酸誘導体を使用するのが好適である。
【0020】
上記の様な未分離アミノ酸誘導体は、例えば、基本アミノ酸(該基本アミノ酸に光学異性体が存在する場合にはラセミ体を)を出発原料として塩基の存在下、ジ−tert−ブチルカーボネートやクロロギ酸エステルまたはアシルクロライド等と反応させることにより得ることができる。通常、このような有機化学的合成反応を用いて本アミノ酸誘導体を合成した場合には、光学純度の高い本アミノ酸を得ることは困難であり、ラセミ体或いは光学純度80〜99%のものが得られる。
【0021】
本発明の分離方法においては、未分離アミノ酸誘導体と、該未分離アミノ酸誘導体に含まれるD体及びL体に対してそれぞれ異なる親和性を有する親水性化合物(以下、キラルセレクタともいう。)とを水性溶液中で混合し、次いで得られた水性溶液又は水性懸濁液を、pHが3.5以下となる条件下、又は前記アミノ酸誘導体の対イオンとなり得る疎水性を有する原子団を含むイオンの共存下で疎水性物質と接触させて該水性溶液又は水性懸濁液中に存在するD型アミノ酸誘導体とL型アミノ酸誘導体とを分離する。
【0022】
キラルセレクタとしては、D体及びL体に対してそれぞれ異なる親和性を有する親水性化合物であれば公知の化合物が特に限定なく使用できる。一般に光学活性な化合物及び内部にキラルな裂講や空間を有するホスト化合物(内部に他の化合物やイオン等を包摂して包摂化合物を形成し得る化合物)は、D型異性体とL型異性体とに対する親和性が異なるので、このような化合物の中で親水性のものが、本発明におけるキラルセレクタとして好適に使用することができる。なお、ここで親水性とは、水に対して僅かでも溶解性を有することを意味する。キラルセレクタが疎水性の場合は、D体とL体の分離を効率よく行なうことができない。
【0023】
本発明でキラルセレクタとして使用できる化合物としては、多糖類及びその誘導体、並びにアミノ酸の天然光学活性化合物及びその誘導体が挙げられ、これら化合物を具体的に例示すれば次のような化合物が挙げられる。
【0024】
即ち、多糖類としては、α―シクロデキストリン、β―シクロデキストリン、γ―シクロデキストリン等が例示される。また、多糖類誘導体としては、ヘプタキス(2、6−O−ジメチル)−β―シクロデキストリン、ヘプタキス(2、3、6−O−トリメチル)−β―シクロデキストリン、ヘプタキス(2、6−O−ヒドロキシプロピル)−β―シクロデキストリン、ヘプタキス(2、3、6−O−ヒドロキシプロピル)―β―シクロデキストリン、ヘプタキス(2、6−O−メチルー3−O−アセチル)−β―シクロデキストリン、ヘキサキス(2、6−O−ジメチル)−β―シクロデキストリン、ヘキサキス(2、3、6−O−トリメチル)−β―シクロデキストリン、ヘキサキス(2、6−O−ヒドロキシプロピル)−β―シクロデキストリン、ヘキサキス(2、3、6−O−ヒドロキシプロピル)―β―シクロデキストリン、ヘキサキス(2、6−O−メチルー3−O−アセチル)−β―シクロデキストリン、オクタキス(2、6−O−ジメチル)−β―シクロデキストリン、オクタキス(2、3、6−O−トリメチル)−β―シクロデキストリン、オクタキス(2、6−O−ヒドロキシプロピル)−β―シクロデキストリン、オクタキス(2、3、6−O−ヒドロキシプロピル)―β―シクロデキストリン、オクタキス(2、6−O−メチルー3−O−アセチル)−β―シクロデキストリン等のシクロデキストリン誘導体が例示される。また、アミノ酸の天然光学活性化合物としては、フェニルアラニン、トリプトファン、ロイシン等が、さらにこれらの誘導体としてはN−(tert−ブトキシカルボニル)−L−トリプトファン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−D−トリプトファン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−フェニルアラニン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−D−フェニルアラニン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−ロイシン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−D−ロイシン等が例示される。なお、これら化合物は単独で用いても2種類以上を併用してもかまわない。
【0025】
本発明においては、上記キラルセレクタの中でも分離能が高いことから、各種シクロデキストリン又はその誘導体を用いるのが好適である。また、シクロデキストリン誘導体としては、入手の容易さ、水に対する溶解度、分離能の点から、シクロデキストリンの水酸基あるいは水素原子の一部がヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、トリフルオロアセチル基、アセチル基で置換されたシクロデキストリンを用いるのが好適である。
【0026】
本発明で使用するキラルセレクタの量は、該キラルセレクタが親和性を有するD体若しくはL体の量に対して十分な量となるように、使用する未分離アミノ酸誘導体の量及びその光学純度等に応じて適宜決定すればよいが、十分な分離効果が得られ、且つ過剰使用および粘度上昇による操作性低下を防止するという観点から、水性溶液中の濃度で1mM〜100mMの範囲で使用するのが好適である。
【0027】
本発明の分離方法においては、キラルセレクタと、未分離アミノ酸誘導体中のD体あるいはL体との接触を良くし、高い分離効果を得るために、未分離アミノ酸誘導体と上記キラルセレクタとは、水性溶液中で混合される。ここで、水性溶液とは水を含有する溶液、即ち、水、又は水及び水に対して溶解性を有する有機化合物の混合溶液を意味するが、未分離アミノ酸誘導体中のD体又はL体とキラルセレクタとの相互作用を効率よく起こし、高い分離効果を得るためには、水と有機化合物との混合溶液を用いるのが好適である。この時用いる有機化合物は、水に対して混和性を有するものであれば特に限定されず、アセトニトリル等のニトリル化合物;メタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、エタノール、ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、オクタノール等の脂肪族アルコール;フェノール等の芳香族アルコール;エチレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子などが挙げられる。これらの中でも、光学異性体分離後の除去の容易さの点から、沸点の低いアセトニトリル、メタノール、イソプロピルアルコール、エタノール等が好適に使用される。有機化合物との使用量は特に限定されないが、水と該有機化合物の合計質量を基準として0.01〜50質量%、特に有0.1〜25質量%となる量であるのが好適である。
【0028】
水性溶液中で未分離アミノ酸誘導体とキラルセレクタとを混合させる方法は、特に限定されず、それぞれ所定量の未分離アミノ酸誘導体及びキラルセレクタを計りとり、水性溶液に同時にあるいは順次添加し、攪拌混合すればよい。このとき未分離アミノ酸誘導体とキラルセレクタとの量比は、キラルセレクタのモル数が少なくとも未分離アミノ酸誘導体中のキラルセレクタに対する親和性の高い光学異性体のモル数より多くなる量であれば特に限定されないが、分離効果の高さの点から、未分離アミノ酸誘導体(即ちD体とL体の合計)モル数に対するキラルセレクタのモル数の比{キラルセレクタモル数/(D体モル数+L体モル数)}が1000〜1、特に100〜5とするのが好適である。
【0029】
本発明の分離方法では、上記のようにして調製された未分離アミノ酸誘導体及びキラルセレクタを含む水性溶液又は水性懸濁液を、▲1▼そのpHが3.5以下となる条件下、又は▲2▼使用する本アミノ酸誘導体の対イオンとなり得る“疎水性を有する原子団を含むイオン”(以下、疎水性対イオンとも言う。)の共存下で疎水性物質と接触させる必要がある。上記▲1▼又は▲2▼の条件を満足しないで疎水性物質と接触させた場合には、D体とL体との疎水性に有効な差が生じないためと思われるが、良好な分離効果が得られない。
【0030】
上記▲1▼の条件を満足させるためには、pH調整剤を用いて水性溶液又は水性懸濁液のpHが3.5以下となるように調整すればよい。この時使用できるpH調整剤は、水性溶液のpHを3.5以下に調整できるものであれば特に限定されず、リン酸、硫酸、塩酸等の鉱酸類;及びギ酸、酢酸、乳酸、プロピオン酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸などの有機酸類が制限なく使用できる。これらpH調整剤の濃度は特に制限されないが、一般的には1〜100mM、好適には1〜30mMの範囲で使用される。また、分離効果の高さから、水性溶液又は水性懸濁液のpHは、1〜3、特に1.4〜2.5とするのが好適である。なお、pH調節は疎水性物質と接触させる前に行われていればよく、未分離アミノ酸とキラルセレクタとの混合前に行なってもよい。
【0031】
また、前記▲2▼の条件下で疎水性物質との接触を行なう場合に共存させる疎水性対イオンは、本アミノ酸誘導体中のカルボキシル基等のイオン化し得る部位が水性溶液中でイオン化した際に、その反対の電荷を有するイオンとして存在し、イオンペアを形成するものであれば特に限定されない。上記疎水性対イオンが有する“疎水性を有する原子団”とは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、ドデシル基、オクタデシル基などのアルキル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基等の疎水性を増大させる作用を有する原子団を意味する。なお、これら原子団は、全体として疎水性を有していればよく、その一部にヒドロキシル基、ニトロ基等の官能基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子を有していてもよい。
【0032】
疎水性対イオンは、水性溶液中でイオン化し、カチオンあるいはアニオンを形成する化合物(以下、疎水性対イオン形成化合物ともいう。)の形で水性溶液に添加して使用される。このような化合物としては、上記の疎水性を有する原子団を有するアミン化合物、アンモニウム化合物、ホウ素化合物、リン化合物、スルホン酸化合物などが使用できる。なお、アミン化合物は中性であるため、水性溶液中で水素イオンを付加させてカチオンとして存在させる必要がある。そのためには水性溶液のpHを使用するアミン化合物のpKa以下にして使用する。
【0033】
本発明で使用できる疎水性対イオンを与える化合物を例示すれば、アミン化合物としては、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロピルアミン、ジイソプロピルメチルエタノールアミン、トリブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン等が挙げられる。
【0034】
また、アンモニウム化合物としては、これらアミン化合物の塩酸塩、臭素酸塩、水酸化塩等のアンモニウム塩の他、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、リン酸テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。
【0035】
また、ホウ素化合物としては、テトラフェニルホウ素ナトリウム、テトラ(クロロフェニル)ホウ素ナトリウムなどのイオン性ホウ素化合物等が;リン化合物としては、塩化テトラフェニルフォスフィン、塩化テトラオクチルフォスフィン等が;さらにスルホン酸化合物としては、トルエンスルホン酸、オクチルスルホン酸、ドデシルスルホン酸等が挙げられる。
【0036】
これら化合物の中でも水性溶液に対する溶解度の点からトリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、テトラブチルアミン、テトラアミルアミン、ドデシルスルホン酸等が好適に使用される。
【0037】
前記疎水性対イオンの使用量は、未分離アミノ酸誘導体中に存在するD体又はL体のうちキラルセレクタとの親和性が低いものに対して十分な量であれば特に限定されず、用いる未分離アミノ酸誘導体の種類及び量、キラルセレクタの種類等に応じて分離効果の観点から最適な量を適宜決定すればよいが、通常は、水性溶液又は水性懸濁液中の濃度で表して0.01mM〜50mM、特に0.1mM〜30mMの範囲となる量使用するのが好適である。
【0038】
また、上記疎水性対イオンを含有する水性溶液のpHは、分離対象となる本アミノ酸誘導体がイオン化し、疎水性対イオンとイオンペアを形成することができるpH領域であれば特に制限されないが、一般的には、緩衝液のpH調整の容易さや、使用後の廃液処理の容易さを勘案してpH=4〜8の範囲、特にpH=4〜7の範囲とするのが好適である。なお、このようなpHに調整するためには、前記した無機酸及び有機酸の他に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムなどのアルカリ性塩類、リン酸水素ナトリウム、リン酸2水素カリウム等の塩類、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸、モルホリンプロパンスルホン酸などのpH緩衝液用有機化合物などが使用できる。
【0039】
疎水性対イオンを与える化合物の添加及び必要に応じて行なうpH調節は、疎水性物質と接触させる前に行われていればよく、未分離アミノ酸とキラルセレクタとの混合前に行なってもよい。
【0040】
また、疎水性物質と接触される前記水性溶液又は水性懸濁液には、任意成分として、イオン強度を調整するための塩類、或いは本発明の分離方法を光学純度分析方法に適用する際にD体及びL体の検出を容易にするための“紫外領域、可視領域に吸収スペクトルを有する化合物”等を添加することもできる。このとき、塩類としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなどが使用でき、“紫外領域、可視領域に吸収スペクトルを有する化合物”としてはトルエンスルホン酸、トルエンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、フルオレセイン、フェノールフタレイン、ニールブルー、エオシン、クマリンなどの芳香族を有する有機化合物等が使用できる。
【0041】
本発明の分離方法においては、“未分離アミノ酸誘導体及びキラルセレクタを含む水性溶液又は水性懸濁液”を前記▲1▼又は▲2▼の条件を満足するような条件下で疎水性物質接触させ、該疎水性物質に対する親和性の差を利用してD体とL体を分離する。
【0042】
ここで使用する疎水性物質とは、前記水性溶液よりも疎水性が高く、これと容易に分離できる物質であれば特に制限無く液体または固体の疎水性物質が使用される。例えば、液体の疎水性物質としては、クロロホルム、ジクロロメタン、ヘキサン、オクタノール等の水に不溶若しくは難溶の有機溶媒を使用することができる。また、固体の疎水性物質としては疎水的表面を有する固体であれば特に制限無く使用することができる。このような物質を例示すれば、シリカ、チタニア等の無機微粒子の表面に、オクタデシル基、オクチル基、ブチル基、メチル基、フェニル基、シアノプロピル基等の炭素数1以上の疎水性基を有する化合物を結合させた固体;シリカ、チタニア等の無機微粒子の表面にポリスチレン、シリコーン、ポリメタクリル酸メチル等の疎水性ポリマーを吸着あるいは結合させた固体;ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル等の疎水性を有する高分子の微粒子固体;ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル等の高分子の微粒子表面にオクタデシル基、オクチル基、ブチル基、メチル基、フェニル基、シアノプロピル基等の炭素数1以上の疎水性基を有する化合物を結合させた固体などをあげることができる。さらにこれらの固体の表面に疎水性を調整するために、スルホニル基、アミノ基、アンモニウム基等のイオン交換基を有する化合物を結合させて用いることもできる。また、固体の疎水性物質を用いる場合には、表面積が大きいほど一度に分離できる本アミノ酸誘導体の量が大くなるため、疎水的表面を有する固体の微粒子を用いることが好ましい。
【0043】
本発明の分離方法において“未分離アミノ酸誘導体及びキラルセレクタを含む水性溶液又は水性懸濁液”と疎水性物質とを接触させ、D体とL体を分離する方法は特に限定されず、次のような方法により好適に行なうことができる。
【0044】
即ち、固体の疎水性物質を中空管に充填し、クロマトグラフフィーの分離カラムとして用いることにより、光学異性体の分離を行うことができる。この場合には、移動相としてキラルセレクタを含み前記▲1▼又は▲2▼の条件を満足する水性溶液を分離カラムに流し、分離カラムの上流に未分離アミノ酸誘導体を注入し液体クロマトグラフィーを行えばよい。カラム内の水性溶液中で未分離アミノ酸誘導体とキラルセレクタとが混合されると共に、カラム内の充填物である疎水性物質と接触し、一定時間の経過の後に分離カラムの下流から各光学異性体が分離された状態(換言すれば異なる保持時間で)で流出する。流出する移動相を特定の波長での紫外吸収、電気電導度、屈折率等を経時的に観測し、クロマトグラフを得ることができ、該クロマトグラフよりD体又はL体の流出を検出し、これを分取することにより光学純度が向上した本発明のアミノ酸誘導体を得ることができる。該液体クロマトグラフィーによる方法は、操作が簡便であり、且つ分離性能が高いため、本発明の分離方法として特に好適な態様であると言える。
【0045】
また、予め未分アミノ酸誘導体及びキラルセレクタを水性溶液中で混合し、次いで前記▲1▼又は▲2▼の条件を満足するように調製した水性溶液又は水性懸濁液(以下、このように調製された水性溶液又は水性懸濁液を単に調製済水性溶液ともいう。)を疎水性物質接触させることによってもD体とL体とを分離することができる。
【0046】
例えば、疎水性物質として液体を用いる場合には、調製済水性溶液と疎水性物質を容器に導入し、攪拌機を用い或いは容器が分液ロートのように密閉できる構造である場合には容器を激しく振とうする等して攪拌し、その後静置して液を2層分離させ、2層の液を別々に回収することにより行なうことができる。この場合には、疎水性層には疎水性の強い光学異性体(若しくはその複合体)が多く、また水性溶液層には親水性の強い光学異性体(若しくはその複合体)が多くなるように用いたキラルセレクタの特性に応じた比率で分配され、各層においてD体又はL体が濃縮される。この濃縮により十分な光学純度のD体又はL体が得られない場合は、上記操作で分離回収された一方の層について減圧留去等により液体を除去し、その後に再び同様の分離操作を繰り返すことにより、光学純度の高いD体又はL体を得ることができる。
【0047】
また、疎水性物質として固体を用いる場合には、調製済水性溶液に固体の疎水性物質を投入して攪拌することにより接触させ、一定時間経過後に濾過により固体の疎水性物質を取り除き、液体成分を回収することにより行なうことができる。この場合には、疎水性の強い光学異性体(若しくはその複合体)は固体疎水性物質に多く吸着されるため、濾液には親水性の強い光学異性体(若しくはその複合体)が多くなる。1回の操作で十分な分離が行なえない場合は、前記と同様に濾液について減圧留去等により液体を除去し、その後に再び同様の分離操作を繰り返すことにより、光学純度の高いD体又はL体を得ることができる。なお、固体疎水性物質に吸着した光学異性体についても疎水性有機溶媒で洗浄し、洗浄液を回収し、回収された液から溶媒を除去することによりもう一方の光学異性体を回収することも勿論可能である。この場合にも操作を繰り返すことにより高純度化を図ることができる。
【0048】
上記の様な本発明の分離方法で分離された光学異性体は、一般に夾雑物(分離に用いたキラルセレクタや各種塩類等)を含む溶液又は懸濁液の形で得られることが多いが、これら溶液等から光学純度の向上したアミノ酸誘導体を単離することも勿論可能である。このような単離方法としては、種々の方法を用いることができるが、一例をあげれば、減圧留去により液体成分を除去し、その後、アミノ酸誘導体は溶解するが他の夾雑物は溶解しない溶媒を添加してアミノ酸誘導体のみを溶解させ、ろ過等により分離した後、溶媒を除去する方法が挙げられる。
【0049】
本発明の分離方法によれば、D体とL体が混在する本アミノ酸誘導体から、D体とL体容とを容易に分離することができる。したがって、該分離方法は、前記したような化学合成的方法、或いは酵素や微生物を用いた反応により、ラセミ体又は光学活性な基本アミノ酸から未分離アミノ酸誘導体(すなわち、D体とL体が混在する本アミノ酸誘導体)を得て、該未分離アミノ酸の光学分離を行ない高純度(高い光学純度)のD体又はL体を製造する方法における光学分離工程として好適に採用することができる。
【0050】
また、本発明の分離法方によれば、未分離アミノ酸誘導体に含まれるD体及びL体の量を定量することもできるので、光学純度が未知の未分離アミノ酸誘導体の光学純度分析方法としても好適に採用することができる。特に本発明の分離方法の中でも前記した液体クロマトグラフィーによる方法は、簡便で分離性能が高いばかりでなく、D体及びL体を単離しなくても検量線等を用いることによりそれぞれの量を高精度で求めることができるので、優れた光学純度分析方法(光学純度測定方法)になる。
【0051】
さらに、上記の光学純度分析方法は、上記の様な優れた特徴を有するため、例えば、前記したような方法により基本アミノ酸から未分離アミノ酸誘導体を得て、該未分離アミノ酸の光学分離(光学分割)を行ない高純度(高い光学純度)のD体又はL体を製造する方法における工程管理の手法として好適に採用することができる。なお、この場合において、光学分離方法としては、本発明の分離方法の他、光学異性体の結晶形を利用して物理的に分離する方法、ジアステレオマーの分離を原理とする方法{具体的には、安定なジアステレオマー(分子錯体を含む)に転化し、ついで結晶分別、クロマトグラフィー、蒸留等の操作により分離する方法、キラルな吸着剤やキラルな溶媒を用いて選択的に吸着、抽出する方法等}、不斉変換法、不斉反応を利用する方法等、公知の光学分割法が採用できることは勿論である。
【0052】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0053】
実施例1
キラルセレクタとしてβ−シクロデキストリン(東京化成社製)11.35gを0.1%リン酸水溶液(容量比)1Lに溶解してシクロデキストリン濃度が10mM、pH2とした溶液に対して、アセトニトリル(和光純薬工業社製)を10%(容量比)混合した水性溶液を調製した。この溶液を移動相とし、疎水性物質としてシリカゲル粒子表面にオクタデシル基を化学結合した固定相が充填された分離カラムInertsil ODS―2(GLサイエンス社製)を用い、N-(tert−ブトキシカルボニル)−DL−アラニン{(D体/L体)モル比=1/2}を該分離カラムに注入して高速液体クロマトグラフィーを行なって、クロマトグラムを得た。
【0054】
なお、本実施例で用いた高速液体クロマトグラフィーの構成と条件は、以下の通りである。
【0055】
ポンプ:Waters社製600E
インジェクター:Waters社製U6K
カラムオーブン:島津製作所社製CTO10A
検出器:Waters社製991J
移動相流速:1ml/min
カラム温度:30℃
カラムサイズ:内径4.6mm、長さ250mm
検出波長: 210nm。
【0056】
上記のようにして得られたクロマトグラムに基づいて、分離能(Rs)で光学異性体分離の程度を評価したところ、Rs=2.25であり、良好な分離が行われていることが確認された。
【0057】
なお、分離能(Rs)とは、この分離能Rsは2本のピークがどの位良く分離しているかを表すものであり、下記式で定義される値である。この値が大きいほど2本のピークが良く分離していることを示し、Rsが0のときは2本のピークが全く分離されていないことを示し、また、Rs>1のときは2本のピークは底辺部分でも完全に分離した状態であることを示す。
【0058】
Rs=2(tR2−tR1)/(W1+W2
但し、上式中のtR1は、2種類の成分からなる化合物を分離して得られたクロマトグラムにおけるピーク1の保持時間を表し、tR2はピーク2の保持時間を表し、W1はピーク1の底辺(時間長)を表し、W2はピーク2の底辺(時間長)を表す。
【0059】
実施例2
分離カラムをシリカゲル粒子表面にオクチル基を化学結合した固定相が充填されたInertsil C8(GLサイエンス社製)に変える以外は実施例1と同様の方法で、N-(tert−ブトキシカルボニル)−DL−アラニン{(D体/L体)モル比=1/2}の分離を行ないその程度を評価したところ、Rsは2.03であり良好な分離を行うことができた。
【0060】
実施例3
アセトニトリルの割合を15%(容量比)に変えて実施例1と同様の方法でN-(tert−ブトキシカルボニル)−DL−メチオニン{(D体/L体)モル比=1/2}の分離を行ないその程度を評価したところ、Rsは1.46であり良好な分離を行うことができた。
【0061】
実施例4
分離カラムをシリカゲル表面にフェニル基を化学結合した固定相が充填されたInertsil PH(GLサイエンス社製)に、アセトニトリルの割合を15%(容量比)に変えて、実施例1と同様にしてN-(tert−ブトキシカルボニル)−DL−ロイシン{(D体/L体)モル比=1/2}の分離を行ないその程度を評価したところ、Rsは2.18であり、良好な分離を行うことができた。
【0062】
実施例5
キラルセレクタとしてβ―シクロデキストリンの水酸基がヒドロキシプロピル化されたシクロデキストリンであるCAVASOL W7 HP(ワッカーケミカルズイーストアジア社製)43.2gを用い、0.1%リン酸溶液(容量比)1Lに溶解してシクロデキストリン濃度を30mMとした溶液に対して、アセトニトリル(和光純薬工業社製)を20%(容量比)混合した溶液を移動相とし、カラムはInertsil ODS−2(GLサイエンス社製)を用いて、N-(tert−ブトキシカルボニル)−DL−フェニルアラニン{(D体/L体)モル比=1/2}の高速液体クロマトグラフィーによる分離を行なった。なお、装置は実施例1で用いたのと同じ装置を用いたが、感度が良好であるため検出波長は254nmを用いた。この時のRsは1.56であり、やはり良好な分離を行うことができた。
【0063】
実施例6
β−シクロデキストリン(東京化成社製)11.35gを、10mMリン酸トリエチルアミン(東京化成社製)溶液1Lに溶解してシクロデキストリン濃度を10mMとした溶液に対して、アセトニトリル(和光純薬工業社製)を15%(容量比)混合した溶液を移動相とし、カラムはInertsil ODS−2(GLサイエンス社製)を用いて、実施例5と同様にしてN-(tert−ブトキシカルボニル)−DL−トリプトファン{(D体/L体)モル比=1/2}の高速液体クロマトグラフィーによる分離を行なったところ、Rs=1.59であった。
【0064】
実施例7
リン酸トリエチルアミンをリン酸テトラブチルアンモニウム(GLサイエンス社製)に、アセトニトリルの割合を10%(容量比)に変えて、さらに検出波長を210nmに変えて、実施例6と同様にN-(tert−ブトキシカルボニル)−DL−プロリン{(D体/L体)モル比=1/2}の分離を行なったところ、Rs=1.91であった。
【0065】
実施例8
キラルセレクタとしてのCAVASOL W7 HP(ワッカーケミカルズイーストアジア社製)43.2gを、10mMリン酸テトラブチルアンモニウム溶液(GLサイエンス社製)1Lに溶解してシクロデキストリン濃度を30mMとした溶液に対して、アセトニトリル(和光純薬工業社製)を15%(容量比)混合した溶液を移動相とし、カラムとしてInertsil ODS−2(GLサイエンス社製)を用いて、実施例1と同様にしてN-(tert−ブトキシカルボニル)−DL−チロシン{(D体/L体)モル比=1/2}の高速液体クロマトグラフィーによる分離を行なった。但し、ピークの検出は、検出波長210nmを用いて吸光度をモニターした。その結果、Rsは1.96であった。
【0066】
実施例9
pH調整剤に10mMクエン酸ナトリウムを用いpHを2.8とし、キラルセレクタにアミノ酸誘導体であるN−(tert−ブトキシカルボニル)−L−トリプトファンを用い、分離対象をN−ベンジルオキシカルボニルーDL−ロイシン{(D体/L体)モル比=1/2}として実施例1と同様に高速液体クロマトグラフィーを行った。但し、ピークの検出は検出波長254nmを用いて吸光度をモニターした。その結果はRs=0.34であり、分離を行うことができた。
【0067】
実施例10
pH調整剤に10mMクエン酸ナトリウムを用いpH3.4とし、キラルセレクタにアミノ酸誘導体であるベンジルオキシカルボニルーL−アラニンを用い分離対象をN−ベンゾイルーDL−バリン{(D体/L体)モル比=1/2}として実施例1と同様にして高速液体クロマトグラフィー分析を行った。但し、ピークの検出は、検出波長254nmを用いて吸光度をモニターした。その結果、Rsは0.08であり分離を行うことができた。
【0068】
実施例1〜10の結果を表1にまとめる。
【0069】
【表1】
Figure 0004783496
【0070】
実施例11
試料として予めD型50%、L型50%の比率で混合したN-(tert−ブトキシカルボニル)−DL−アラニンの5%溶液50μlを用い、実施例1と同様にして分離し、得られたクロマトピークの面積を算出した。その結果、面積の比率はD型50%、L型50%となった。面積の比率は混合した比率と同じであり、本発明の分離定法を用いれば、簡便な操作で正しく光学純度を測定できることが確認された。
【0071】
また、各クロマトピークに相当するカラムからの溶出液をそれぞれ分取した。先に溶出したクロマトピークの溶出液を溶出液1、後に溶出したクロマトピークの溶出液を溶出液2とした。次いで、溶出液1、溶出液2について以下の操作を行い、各溶出液に含まれるアミノ酸誘導体の光学純度を測定した。
【0072】
即ち、分液ロート中に、上記溶出液および、上記溶出液とほぼ等体積のクロロホルムを加え、1分間振とう後、10分間静置した。その後、クロロホルム層をナスフラスコに取り出し、減圧留去によりクロロホルムを除き、白色固体を得た。次いで、該白色固体にジオキサン1mlを添加して上記白色固体を再溶解し、不溶分を濾別除去した。濾液のジオキサン溶液に4N塩化水素ジオキサン溶液0.1mlを加え混合して脱保護(tert−ブトキシカルボニル基の水素原子への置換)を行った後、12時間放置して生成したアミノ酸塩酸塩を濾過して回収し、真空下で十分乾燥した後、10mMリン酸緩衝液(pH7.0)0.1mlに溶解した。次いで、得られたリン酸緩衝液溶液10μlを、市販のアミノ酸光学異性体分離用カラム(ダイセル化学工業株式会社製CHIRALPAK WE)を用いて下記条件で分離分析した。
【0073】
分析条件:
ポンプ:Waters社製600E
インジェクター:Waters社製U6K
カラムオーブン:島津製作所社製CTO10A
検出器:Waters社製991J
移動相組成:0.25mM 硫酸銅水溶液
移動相流速:0.6ml/min
カラム温度:50℃
カラムサイズ:内径4.6mm、長さ250mm
検出波長: 210 nm。
【0074】
その結果から溶出液1及び溶出液2からそれぞれ得られた前記白色固体は、それぞれ100%D型のN−(tert−ブトキシカルボニル)−アラニン及び100%L型のN−(tert−ブトキシカルボニル)−アラニンであることが確認された。
【0075】
比較例1
キラルセレクタであるβ―シクロデキストリンは移動相に添加しない他は実施例1と同様にしてN-(tert−ブトキシカルボニル)−DL−アラニンの分離を行ったがRs=0となり、D型とL型はまったく分離されなかった。
【0076】
比較例2〜4
濃度10mMの酢酸ナトリウム緩衝液を用いて移動相のpHを表2に示すように3.5よりも大きな値とする他は実施例1と同様にしてN-(tert−ブトキシカルボニル)−DL−アラニンの分離を行った。その結果を表2中に示した。何れの場合もRs=0となり、D型とL型はまったく分離されなかった。
【0077】
【表2】
Figure 0004783496
【0078】
比較例5
疎水性対イオンを生成する化合物であるトリエチルアミンを添加しない移動相を用いる他は実施例5と同様にしてN-(tert−ブトキシカルボニル)−DL−トリプトファンを分離分析した。その結果を表2中に示した。表2に示されるようにRs=0となりD型とL型はまったく分離できなかった。
【0079】
比較例6
比較例5においてpHの調整剤としてリン酸緩衝液(リン酸2水素カリウム、リン酸水素2ナトリウムを混合したもの)を加え、pHが実施例5と同じ7になるようにして分離を行なったが、やはりRs=0となりD型とL型はまったく分離できなかった。
【0080】
比較例7
市販の光学異性体分離用カラムであるスミキラルOA7000(β―シクロデキストリンをシリカゲル微粒子表面に固定化した担体を使用した分離カラム)を充填として使用し、移動相として、アセトニトリル20%を含有する20mMKH2PO4水溶液(pH2.5)を用い、N-(tert−ブトキシカルボニル)−DL−フェニルアラニン{(D体/L体)モル比=1/2}を注入して高速液体クロマトグラフィーを行なった。なお、この時採用した装置および条件は、以下の通りである。
【0081】
ポンプ:Waters社製600E
インジェクター:Waters社製U6K
カラムオーブン:島津製作所社製CTO10A
検出器:waters社製991J
移動相流速:1ml/min
カラム温度:30℃
カラムサイズ:内径4.6mm、長さ250mm
検出波長: 210nm
得られたクロマトグラムについて分離能を調べたところRs=0であり、D体とL体はまったく分離されていなかった。
【0082】
実施例12
ラセミ体のN-(tert−ブトキシカルボニル)−DL−アラニン{(D体/L体)モル比=1}を、キラルセレクタとしてのβ−シクロデキストリンを10mM含みリン酸を用いてpH2に調整された水性溶液10mlに100mMの濃度となるよう溶解した。この水性溶液と、液体の疎水性物質であるクロロホルム10mlとを50ml分液ロートに入れ、3分間振とう後、静置した。その後疎水性物質を5ml取り出し、減圧留去してクロロホルムを除去し、白色固体を得た。次いで得られた白色固体をキラルセレクタとしてのβ−シクロデキストリンを10mM含みリン酸を用いてpH2に調整された水性溶液10mlに100mMの濃度となるよう溶解し、該溶液を上記と同様にしてクロロホルム10mlと接触させた後に分離し、さらにクロロホルムを除去し、白色固体を回収した。この白色固体について同様の分離操作を合計分離操作回数が5回となるように更に繰り返して白色固体を得た。最終的に得られた白色固体について、実施例11における溶出液1から得た白色固体と同様にして脱保護を行なった後に市販のアミノ酸光学異性体分離用カラムを使用して液体クロマトグラフィーを行った。その結果、該白色固体中の(D体/L体)モル比は0.53であった。
【0083】
【発明の効果】
本発明は、D体とL体が混在した特定の置換基を有する本アミノ酸誘導体から、D体とL体とを分離する、新しい方法を提供するものである。しかも、従来の分離方法と比べると分離能が高く、例えば前記した液体クロマトグラフィーによる方法を採用することにより、D体とL体とを完全且つ容易に分離することが可能となる。
【0084】
したがって、本発明の分離方法は、光学活性の低い本アミノ酸誘導体から光学分割により光学純度の高い本アミノ酸誘導体を製造する際の光学分割法として好適に採用できるばかりでなく。光学純度の測定方法としても好適に採用できる。さらに、従来の光学分割法を採用して光学純度の高い本アミノ酸誘導体を製造する際の工程管理にも応用できる。

Claims (5)

  1. アミノ酸のアミノ基における水素原子の少なくとも一つが、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、又はアシル基で置換されたアミノ酸誘導体であって、D型及びL型の光学異性体が混在するアミノ酸誘導体と、前記2種類の光学異性体に対してそれぞれ異なる親和性を有する親水性化合物であって、多糖類及びその誘導体、並びにアミノ酸の天然光学活性化合物及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる親水性化合物と、を水性溶液中で混合し、次いで得られた水性溶液又は水性懸濁液を、pHが3.5以下となる条件下、又は前記アミノ酸誘導体の対イオンとなり得るイオンであって、水酸基、ニトロ基およびハロゲン原子からなる群より選ばれる置換基を有していてもよいアルキル基、又は水酸基、ニトロ基およびハロゲン原子からなる群より選ばれる置換基を有していてもよいアリール基からなる疎水性を有する原子団を含むイオンの共存下で、該水性溶液又は水性懸濁液よりも疎水性が高い液体又は固体からなる疎水性物質と接触させて該水性溶液又は水性懸濁液中に存在するD型アミノ酸誘導体とL型アミノ酸誘導体とを分離することを特徴とする前記アミノ酸誘導体の光学異性体の分離方法。
  2. 前記2種類の光学異性体に対してそれぞれ異なる親和性を有する親水性化合物としてシクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体を用いることを特徴とする請求項1に記載の分離方法。
  3. アミノ酸のアミノ基における水素原子の少なくとも一つが、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、又はアシル基で置換されたアミノ酸誘導体であって、D型及びL型の光学異性体が混在するアミノ酸誘導体から高純度のD型又はL型光学異性体を分離する分離工程を含む光学純度の高い前記アミノ酸誘導体を製造する方法であって、該分離工程において請求項1又は請求項2に記載の分離方法を用いることを特徴とする光学活性アミノ酸誘導体の製造方法。
  4. 請求項1又は請求項2に記載の方法で分離されたD型及びL型アミノ酸誘導体の量をそれぞれ測定し、測定された各量に基づいて前記アミノ酸誘導体の光学純度を決定することを特徴とする光学純度分析方法。
  5. アミノ酸のアミノ基における水素原子の少なくとも一つが、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、又はアシル基で置換されたアミノ酸誘導体であって、D型及びL型の光学異性体が混在するアミノ酸誘導体から高純度のD型又はL型光学異性体を分離する分離工程を含む光学純度の高い前記アミノ酸誘導体を製造する方法であって、該分離工程により分離された高純度のD型又はL型光学異性体の純度を請求項4に記載の光学純度分析方法で確認することを特徴とする光学活性アミノ酸誘導体の製造方法。
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