JP2912075B2 - ガスクロマトグラフィー用充填剤 - Google Patents

ガスクロマトグラフィー用充填剤

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JP2912075B2 JP4061397A JP6139792A JP2912075B2 JP 2912075 B2 JP2912075 B2 JP 2912075B2 JP 4061397 A JP4061397 A JP 4061397A JP 6139792 A JP6139792 A JP 6139792A JP 2912075 B2 JP2912075 B2 JP 2912075B2
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荘太郎 宮野
秀一 大井
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  • Separation Of Gases By Adsorption (AREA)
  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、異性体分離、ラセミ体
の光学分割など従来分離が困難であった化合物を分離す
るのに有用なガスクロマトグラフィー用充填剤に関す
る。更に詳しくは、本発明は光学活性の(S)−体およ
び(R)−体を包含する下記式(A)
【0002】
【化2】 で表される(S)−又は(R)−1,1’−ビナフチル
−2,2’−ビス(N−デシルカルボキシアミド)を固
定相成分として含有する新規なガスクロマトグラフィー
用充填剤に関する。
【0003】
【従来の技術】光学活性固定相を備えたガスクロマトグ
ラフィーにより鏡像異性体対を直接分離する方法は公知
であり、例えば、S.Allenmark著、 "Chromatographic En
antioseparation," Ellis Horwood Ltd., Chichester(1
988年刊)などの著書にも詳述されている。この方法にお
いては、光学活性化合物を含有するカラム充填剤を従来
一般に用いられている種々の方法、即ち固定相担体に担
持させてカラムに充填する充填カラム方式、あるいはキ
ャピラリーカラムの内部表面に被覆するキャピラリーカ
ラム方式などを用いて光学活性固定相を調製する。これ
まで該充填剤を調製するための光学活性化合物として
は、例えば、(1)(L)−バリン、(L)−ロイシ
ン、(L)−フェニルグリシン誘導体などの(L)−ア
ミノ酸類、(S)−1−(1−ナフチル)エチルアミン
誘導体などの光学活性アミン類や菊酸誘導体などの光学
活性カルボン酸類などから誘導される光学活性アミド化
合物;(2)3−トリフルオロアセチル−(1R)−カ
ンファーやN−サリチリデン−(R)−2−アミノ−
1,1−ジ(5−t−ブチル−2−オクチルオキシフェ
ニル)−1−プロパノールなどの光学活性金属錯体;
(3)シクロデキストリン誘導体などの糖誘導体など、
種々の化合物が提案されている。
【0004】上記方法によって調製される光学活性固定
相による鏡像異性体の分離の機構は、固定相が光学活性
であるため移動相中の溶質鏡像異性体の(R)−体と
(S)−体間で固定相に対する保持力にジアステレオメ
リックな差を生じるためである。固定相−移動相間に働
く保持力としては、上記(1)のタイプの固定相では主
に水素結合が、(2)のタイプでは配位結合が、(3)
のタイプでは立体的相互作用や疎水性相互作用が働いて
いるとされている。従って、これらの相互作用エネルギ
ーの差が鏡像異性体の(R)−体と(S)−体間で顕著
なほど分離能に優れることになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記提
案の充填剤は各々、適用できる鏡像異性体試料の範囲に
限界がある。これは上述したごとく、充填剤ごとに鏡像
異性体識別に有効に働く相互作用力が限定されているた
めである。
【0006】ガスクロマトグラフィーで熱不安定の試料
を分離し、分析するには温度的制約から、低温でも効率
良く運転できるカラムが望ましく、これには低融点充填
剤が必要となってくる。また、高沸点試料の分析へも適
用できるためにはカラム温度を高く保てることも必要
で、カラム充填剤の沸点及び熱安定性が高いことも要求
される。しかしながら、上記提案の充填剤は融点が比較
的高かったり、耐熱性が不十分であったりして分析可能
温度範囲が狭いという欠点を有するものが多い。特に、
上記(2)のタイプの金属錯体型の充填剤は水分などに
も敏感で、性能を保つためには細心の注意を必要とし、
利用し易いとは言い難い。
【0007】これらの難点を克服しようとする試みも多
いが、これらの充填剤は一般的に調製が煩雑であり、高
価である。また、天然物から調製される充填剤が多いこ
とから、(R)−体、(S)−体の光学活性カラム充填
剤を任意に作り分けることが難しいことも難点の一つで
ある。このような背景から、容易に調製できしかも広範
囲の鏡像異性体に優れた分離能を示すガスクロマトグラ
フィー用光学活性充填剤の開発が強く望まれている。
【0008】本発明者らは、上述の課題を解決するた
め、光学活性化合物を固定剤として用いるクロマトグラ
フィー用充填剤について従来から研究を行い、先に光学
活性な(S)−体および(R)−体の1,1’−ビナフ
チル−2,2’−ジカルボン酸を出発原料として合成さ
れる式(A)の化合物および式(A)化合物のポリアミ
ド誘導体の製法並びに該ポリアミド誘導体が液体クロマ
トグラフィー用充填剤の固定相としてラセミ体分割に有
効であること発見して論文に発表した[Bull.Chem.Soc.J
pn.,94,2260-2265(1991)]。
【0009】本発明者らは、引き続いて鋭意研究を重ね
た結果、式(A)の化合物が更に容易に合成できるこ
と、また式(A)の化合物をガスクロマトグラフィーの
充填剤として任意に(R)−体又は(S)−体を選んで
用いることにより各種のラセミ体混合物から光学活性な
(R)−体および(S)−体を効率よく分割できること
を発見して本発明を完成した。従って、本発明の目的
は、各種のラセミ体混合物から光学活性な(R)−体お
よび(S)−体化合物を分割するのに有用な式(A)化
合物を固定相成分として含有するガスクロマトグラフィ
ー用充填剤を提供するにある。即ち、本発明の主眼は既
存のガスクロマトグラフィー用光学活性充填剤がすべ
て、炭素の四面体構造に基づく炭素中心性不斉による光
学活性化合物から誘導されたものであるのに対し、軸性
分子不斉を有する式(B)で示される(R)−又は
(S)−1,1’−ビナフチル−2,2’−ジカルボン
酸から誘導される式(A)の化合物からなることを特徴
とする新規充填剤を提供することにより、ラクトン、ア
ミン誘導体、アミノ酸誘導体、アルコール誘導体、カル
ボン酸誘導体など、広範囲の鏡像異性体の分離に適用で
き、且つ比較的低いカラム温度、好ましくは100℃以
下においても液相として使用することができ、耐熱性に
も優れており、広い使用温度範囲にわたって良好なピー
クを与える光学活性固定相を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明で使用する式
(A)の化合物は、公知化合物であり、従来提案の合成
方法により容易に製造することができる。即ち、出発原
料である光学活性の(S)−体および(R)−体を包含
する後記式(B)の1,1’−ビナフチル−2,2’−
ジカルボン酸は、先に本発明者らが発表した方法により
容易に合成することができる[Bull.Chem.Soc.Jpn.,62,9
56-957(1989)参照]。次に式(B)の化合物から式
(A)の化合物を合成するには、有機溶媒の存在下ある
いは不存在下で、光学活性の式(B)の化合物をハロゲ
ン化剤でハロゲン化して酸ハロゲン化物とした後、n−
デシルアミンと反応させることにより容易に得られる。
これらの方法に関しては、公知の方法により当該技術者
には容易に合成できる[Bull.Chem.Soc.Jpn.,94,2260-22
65(1991)参照]。本発明の式(A)化合物の製造法を反
応式で示すと以下のように表すことができる。
【0011】
【化3】
【0012】上述のようにして得ることのできる光学活
性な式(A)の化合物は、ガスクロマトグラフィー用充
填剤の固定相として用いることにより、種々の化合物を
分離することができる。特に、従来ガスクロマトグラフ
ィーでは分離が困難であったラセミ体などの鏡像異性体
対の光学分割に優れた効果を発揮する。本発明の充填剤
は、種々の官能基を有する化合物の分離に適用できる
が、一般的には、ラクトン、アミノ酸誘導体、アミン誘
導体、カルボン酸誘導体などの極性化合物に対して優れ
た分離能を有する。また、本発明の式(A)化合物は単
独でガスクロマトグラフィー充填剤として用いることが
できるとともに、従来既知の充填剤、例えばシリコーン
オイルOV−17、OV−1701、SE−30、SF
−96、SP−2100、XE−60など、また、PE
G−20M、FFAPなどと併用することもできる。
【0013】本発明のガスクロマトグラフィー用充填剤
をカラムに充填するには、従来一般に行われている方
法、即ち固定相担体に担持させてカラムに充填する充填
カラム方式あるいは固定相のみでカラムの内部表面を被
覆するキャピラリーカラム方式などをそのまま採用して
行うことができる。充填カラム方式では、例えばシリカ
ゲル、ガラスビーズ、ケイソウ土、アルミナなどの多孔
性担体に式(A)の化合物を均一に吸着させることによ
り行うことができる。多孔性担体には特別な制約はな
く、例えば粒径サイズ約1〜約100μm、細孔径サイ
ズ約50〜約500オングストロームの球状の担体を好
ましく例示することができる。キャピラリーカラム方式
では、例えば内径約0.1〜約0.5mm、長さ約10
〜約100mのガラス製あるいはステンレス製のキャピ
ラリーカラムの内部表面に式(A)の化合物をダイナミ
ック法あるいはスタティック法などの当該技術を用いて
均一にコーティングさせることにより行うことができ
る。
【0014】以下、本発明について参考例ならびに実施
例を挙げて更に詳細に説明する。
【参考例1】(S)−1,1’−ビナフチル−2,2’−ビス(N−
デシルカルボキシアミド)[式(A)の化合物]の合
成。 式(B)に包含される(S)−1,1’−ビナフチル−
2,2’−ジカルボン酸を塩化チオニルと加熱還流する
ことにより得られる酸クロライド965mg(2.54
ミリモル)を窒素気流下で乾燥ベンゼン40mlに撹拌
溶解し、デシルアミン961mg(6.11ミリモ
ル)、トリエチルアミン850μl(6.11ミリモ
ル)を順次加え、一時間加熱還流する。2規定塩酸水溶
液10mlで2回、10%炭酸ナトリウム水溶液で2
回、蒸留水で3回洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥
する。溶媒をエバポレーターで留去後、残渣をシリカゲ
ル100gを用いたカラムクロマトグラフィーにより精
製し、粘性の高いオイル状の(S)−1,1’−ビナフ
チル−2,2’−ビス(N−デシルカルボキシアミド)
を1.48g(収率:94.0%)得た。
【0015】[α]D 20=-117.4°(c 1.01, アセトン) IR (液膜) 1631, 1563, 1331, 1301, 825, 756cm-1 1 H-NMR (CDCL3) δ(ppm)=0.80-1.24(38H, m, CH2 and C
H3), 2.82-3.14(4H, m,N-CH2), 6.96-8.04(14H, m, NH
and ArH) 分析値 C=81.04% ; H=9.30% ; N=4.41% C42H56N2O2としての 計算値 C=81.24% ; H=9.09% ; N=4.51%
【0016】
【参考例2】(R)−1,1’−ビナフチル−2,2’−ビス(N−
デシルカルボキシアミド)[式(A)の化合物]の合
成。 参考例1の(S)−体の1,1’−ビナフチル−2,
2’−ジカルボン酸を(R)−体に代えた他は参考例1
の方法に準じて(R)−1,1’−ビナフチル−2,
2’−ビス(N−デシルカルボキシアミド)を合成し
た。 [α]D 20=+117.4°(c 1.01, アセトン)
【0017】
【参考例3】(S)−体の式(A)化合物をコーティングしたキャピ
ラリーカラムの調製 。 メンブランフィルターで濾過、次いで減圧で脱気した塩
化メチレンに(S)−体の式(A)の化合物を0.12
%(W/V)、OV−17を0.08%(W/V)の濃
度となるように溶解させた固定相液体を調製する。これ
をガラスキャピラリーカラムの中に気泡が入らないよう
に慎重に通し、溶液の出口に接続しておいた内径1mm
程度のシリコーンチューブをクリップで押え気泡が残ら
ないように端を封じる。他端を真空ポンプに接続し、最
初は50mmHg程度の減圧にし、溶媒をカラムの端か
ら蒸発させてゆく。溶液の端がカラムの内部に進むにつ
れ、蒸発の速度が遅くなるので圧力を徐々に下げてゆ
く。この操作は室温で行うが、室温が20℃以下の場合
は溶媒の蒸発が円滑に進行しないので、25℃程度に恒
温した水槽内で行った方が良好な結果が得られる。この
場合、サーモスタットによる温度調節では、ヒーターの
ON−OFF時の微妙な温度変化もコーティングに悪影
響を及ぼすので、恒温槽に10リットル程度の大きな水
層を用い、スライダックにより温度調節を行う。
【0018】
【参考例4】(R)−体の式(A)化合物をコーティングしたキャピ
ラリーカラムの調製。 参考例3の(S)−体の式(A)化合物を(R)−体の
式(A)化合物に代えた他は参考例3の方法に準じて
(R)−体の式(A)化合物をコーティングしたキャピ
ラリーカラムを調製した。
【0019】
【実施例1〜3】参考例3で調製した(S)−体の式
(A)化合物をコーティングしたキャピラリーカラムを
用い、下記の測定条件でラセミ体のラクトン化合物の分
離を行い、保持係数より分離係数(α)を求めた。その
結果を表−1に示す。
【0020】[測定条件] カラム: 内径0.25mm,外径1.0mm,
長さ25m 検出器: FID 注入口温度: 180℃ カラム温度: 130℃ キャリアガス: He 流量: 1.0kg/cm2 スプリット比: 1:100
【0021】
【表−1】No 試料(ラセミ体) α 1 4-フェニル-4-ヘ゜ンタノリト゛ 1.021 2 4-フェニル-4-ヘキサノリト゛ 1.029 3 4-フェニル-4-ヘフ゜タノリト゛ 1.023
【0022】
【実施例4〜14】参考例3で調製した(S)−体の式
(A)化合物をコーティングしたキャピラリーカラムを
用い、実施例1の方法と同様にしてラセミ体の各種アミ
ノ酸誘導体の分離を行い、保持係数より分離係数(α)
を求めた。その結果を表−2に示す。
【0023】
【表−2】 No アミノ酸誘導体[R1CH(COO-iso-Pr)-NHCO-CF3] α R1 4 -CH3(アラニン) 1.050 5 -iso-C3H7(ハ゛リン) 1.053 6 -CH(CH3)C2H5(アロ-イソロイシン) 1.039 7 -CH(CH3)C2H5(イソロイシン) 1.033 8 -n-C3H7(n-ハ゛リン) 1.055 9 -iso-C4H9(ロイシン) 1.047 10 -n-C4H9(n-ロイシン) 1.050 11 -Ph(フェニルク゛リシン) 1.015 12 -CH2Ph(フェニルアラニン) 1.041 13 フ゜ロリン 1.016 14 ク゛ルタミン酸 1.026
【0024】
【実施例15〜18】参考例4で調製した(R)−体の
式(A)化合物をコーティングしたキャピラリーカラム
を用い、実施例1の方法と同様にしてラセミ体の各種ア
ルコール誘導体の分離を行い、保持係数より分離係数
(α)を求めた。その結果を表−3に示す。
【0025】
【表−3】 No アルコール誘導体[R1CHR2-OCONH-iso-C3H7] α R1 R2 15 -CH3 -n-C6H13 1.021 16 -CH3 -Ph 1.026 17 -iso-C3H7 -Ph 1.032 18 -n-C4H9 -Ph 1.028
【0026】
【発明の効果】本発明によれば、異性体分離、ラセミ体
の光学分割など従来分離が困難であった化合物を分離す
るのに有用なガスクロマトグラフィー用充填剤を提供で
きる。光学活性の(S)−体又は(R)−体の1,1’
−ビナフチル−2,2’−ビス(N−デシルカルボキシ
アミド)をガスクロマトグラフィーの固定相成分として
用いることにより、ラセミ体混合物から光学活性のアミ
ノ酸誘導体などを分割可能にする。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−75952(JP,A) 特開 平2−290898(JP,A) 特開 平1−119339(JP,A) 特開 昭60−226831(JP,A) 特開 昭60−108751(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G01N 30/48 B01D 53/02 CA(STN)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式(A) 【化1】 で表される(S)−又は(R)−1,1’−ビナフチル
    −2,2’−ビス(N−デシルカルボキシアミド)を固
    定相成分として含有することを特徴とするガスクロマト
    グラフィー用充填剤。
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