JP4747320B2 - アミノ化合物の光学分割剤および光学分割法 - Google Patents

アミノ化合物の光学分割剤および光学分割法 Download PDF

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Description

本発明は、光学分割の技術分野に属し、特に、キラルなアミノ化合物の光学分割に有用な新規な試薬を提供することに関する。
光学分割、すなわち、キラルな有機化合物のラセミ体をエナンチオマー(鏡像異性体)に分離して所望の生理活性物質や機能性物質を得ることは、医学、農薬、食品などの分野において不可欠の技術の一つであり、特にアミノ酸やその他のキラルなアミノ化合物の光学分割は重要である。
光学分割に最も一般的に用いられている手法は、ラセミ体に光学活性な試薬(キラル誘導体化試薬:光学分割剤)を反応させてジアステレオマーを生成させた後、このジアステレオマーをそれらの物理的性質の差を利用し分離してから、ジアステレオマーを分解してエナンチオマーを得るものであり、各種の光学分割剤に基づく多くの光学分割法が提案されている。例えば、アミノ酸の光学分割については、特許第3400105号公報(特許文献1)、特許第3179512号公報(特許文献2)、特開平9−295962号公報(特許文献3)などに、また、その他のキラルなアミノ化合物の光学分割については、特開平7−10813号公報(特許文献4)、特許第2939510号公報(特許文献5)、特許第2876712号公報(特許文献6)などに、その例が見られる。
光学分割剤として実用的な機能を発揮するためには、当該光学分割剤が目的のラセミ体と反応(誘導体化)して生成するジアステレオマー間の物理的性質の差が充分に大きい(例えば、HPLCにおける分離度や分離係数が大きい)ことにより、それらのジアステレオマーが互いに確実に分離精製できることが必要である。さらに、ジアステレオマーを分解してエナンチオマーを単離、回収する(再生する)に際して、その条件により、目的のエナンチオマーが分解したり変性しないことなども要求される。しかし、これらの要件を充分に満たす光学分割剤ないしは光学分割法は少ない。
特許第3400105号公報 特許第3179512号公報 特開平9−295962号公報 特開平7−10813号公報 特許第2939510号公報 特許第2876712号公報
本発明の目的は、充分な物理的性質の差異を生じるジアステレオマーを形成することができ、さらに、ジアステレオマーから温和な条件で目的のエナンチオマーを再生することができる、キラルなアミノ化合物用の新規な光学分割剤を提供することにある。
本発明者は、このたび、対称型酸無水物構造の新しい化合物の合成に成功し、この化合物が如上の目的を達成し得る光学分割剤として機能することを見出し、本発明を導き出した。
かくして、本発明は、先ず、下記の式(I−1)または式(I−2)で表わされることを特徴とするシクロヘキサジエン−無水ジカルボン酸化合物を提供するものである。
Figure 0004747320
Figure 0004747320
式(I−1)および式(I−2)中、RおよびRは、互いに別異の原子または官能基を表わす。
本発明に従えば、さらに、上記の式(I−1)または式(I−2)のシクロヘキサジエン−無水ジカルボン酸化合物から成り、キラルなアミノ化合物の光学分割に用いられることを特徴とする光学分割剤が提供される。
さらに、本発明は、別の観点から、キラルなアミノ化合物を光学分割する方法であって、該アミノ化合物のラセミ体または部分分割された該アミノ化合物に、前記の式(I−1)または式(I−2)のシクロヘキサジエン−無水ジカルボン酸化合物を反応させてアミド化合物のジアステレオマーを生成させた後、該ジアステレオマーを分離精製する工程を含むことを特徴とする方法も提供する。
既述の式(I−1)または式(I−2)で表わされるシクロヘキサジエン−無水カルボン酸化合物は、光学分割剤(キラル誘導体化試薬)として、HPLCによる分離において分離係数および分離度のきわめて高いジアステレオマーを形成することができ、ジアステレオマーをきわめて効率的に分離精製することができる。
さらに、式(I−1)または式(I−2)の無水カルボン酸誘導体を光学分割剤として用いた場合には、分離精製後のジアステレオマーを弱酸性の温和な条件下における再生反応に供することができるので、分解や変性を起こすことなく、目的のエナンチオマーを得ることができ、且つ、光学分割剤(キラル誘導体化試薬)を回収することができる。
また、本発明に従えば、光学分割剤として、施光性が逆になる鏡像異性体の双方〔(+)型および(−)型の双方〕を合成することができるので、試薬(光学分割剤)の選択によってR体とS体に由来するジアステレオマーの溶出順序を反転することが可能となり、エナンチオマーの存在比が大きく異なる場合などに微量成分が先に溶出するように設定することも可能である。
さらに、HPLC以外の分別結晶法などを用いて分離を行なう場合についても、光学分割剤が両鏡像異性体とも入手できることは溶解度等の調節を容易とするため、実用性に優れた光学分割法を提供することができる。
本発明に従いキラルなアミノ化合物の光学分割に使用されるのに好適なシクロヘキサジエン−無水ジカルボン酸化合物は、式(I−1)または式(I−2)から明らかなように、可逆的反応基(2個の無水型カルボン酸基:このカルボン酸のそれぞれがアミノ化合物のアミノ基と可逆的に反応する)と、光学活性中心(シクロヘキサジエン環の3位および6位に存在する2個の不斉炭素原子)とを併せ持つ対称構造から成り、このような構造の化合物が光学分割剤(可逆的キラル誘導体化試薬)として使用された例は見当たらない。
式(I−1)または式(I−2)に示されるように、本発明の化合物は、シクロヘキサジエン環の3位および6位における置換基(R,R)が、シクロヘキサジエン環平面の反対側にあるトランス型のシクロヘキサジエン−無水ジカルボン酸構造を呈しており、新規の化合物である。Rがフェニル基でありRが水素原子であるシス型の化合物は従来からも知られているが、このようなシス型のジ置換シクロヘキサジエン−無水ジカルボン酸化合物は、本発明が対象とするようなキラルなアミノ化合物の光学分割剤としては機能しない。
式(I−1)および式(I−2)において、RおよびRは、互いに別異の、原子または官能基を表わす。すなわち、式(I−1)および式(I−2)のRおよびRを構成する原子または官能基は、既述のようにシクロヘキサジエン環の3位および6位に2個の不斉炭素原子が存在して光学活性中心を形成し得るものであれば、原理的に特に限定されるものではなく、水素原子、ハロゲン原子、水酸基のような酸素を含む基本的特性基、エーテル基、カルボン酸およびエステル基、アシル基、アミノ基やシアノ基のような窒素原子を含む特性基、置換されていてもよい脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基、または複素環基などの各種の原子または官能基が適用可能である。好ましい原子および官能基の例としては、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基もしくはアルコキシル基、または置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基もしくはアンスリル基などが挙げられる。代表的なアルキル基およびアルコキシル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル等のアルキル基、およびこれらのアルキル基に対応するアルコキシル基である。フェニル基、ナフチル基もしくはアンスリル基は置換されていてもよく、特に蛍光性官能基を呈するように置換されたものが好ましく、例えば、好適な蛍光性官能基としてダンシル基(5−ジメチルアミノナフタレン−1−スルホニル基)を挙げることができる。
本発明に従い光学分割剤として使用される式(I−1)または式(I−2)で表わされる化合物は、各種の反応を工夫することにより合成することができる。図1は、特に好ましい合成法を示している。図に示すように、式(I−1)または式(I−2)のシクロヘキサジエン−無水カルボン酸化合物の合成は、大略、光異性化による原料ジエンの合成、Diels-Alder反応による対称型ジエステル化合物の合成、および分子内閉環による酸無水物の生成反応から成る。
光異性化による原料ジエンの合成は、一般に、出発原料であるトランス、トランス−1,4−ジ置換−1,3−ブタジエン〔図1中、(A−1)〕を超高圧水銀ランプを用いて光照射することによって行なわれ、これにより、シス,トランス−1,4−ジ置換−1,3−ブタジエン〔図1中、(A−2)〕を経て、ジメチルアセチレンジカルボキシレート(DMAD)〔図1中、(B)〕とDiels-Alder反応を行なわせる。よく知られているように、Diels-Alder反応はジエンとジエノフィルとの反応であり、ジエノフィルがジエンのRe面、Si面のどちら側から接近し反応するかにより2種類の対称型ジエステル化合物〔図1中、(I−1)’および(I−2)’〕が生成する。
このようにしてDiels-Alder反応によって生成した(+)−ジメチル−トランス−3,6−ジ置換−1,4−シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボキシレートと(−)−ジメチル−トランス−3,6−ジ置換−1,4−シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボキシレートの混合物は、適当なキラルカラムを用いて光学分割することにより、各ジエステル化合物に分離精製した後、それぞれをギ酸と過塩素酸の存在下で加熱攪拌して閉環反応を行なわせることにより、所望の(+)−トランス−3,6−ジ置換−1,4−シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボン酸無水物および(−)−トランス−3,6−ジ置換−1,4−シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボン酸無水物〔図1中、(I−1)および(I−2)〕が得られる。
如上の工程により合成される式(I−1)または式(I−2)の化合物は、キラルなアミノ化合物の光学分割剤として用いられるのに好適である。ここで、キラルなアミノ化合物とは、キラリティーを有する(すなわち、鏡像異性体が存在する)分子から成り、その分子構造中にアミノ基を有する有機化合物である。本発明が光学分割の対象とするキラルなアミノ化合物の代表例はアミノ酸であるが、式(I−1)または式(I−2)の化合物は、アミノ酸に限られず、医学、農薬、食品などの分野において有用な各種のアミノ化合物の光学分割にも適用できる。
かくして、如上のアミノ化合物のラセミ体(または部分分割されたアミノ化合物)に、式(I−1)または式(I−2)の化合物を反応させると、ジアステレオマーが形成する(すなわち、当該アミノ化合物がキラル誘導体化される)。式(I−1)または式(I−2)の化合物は、きわめて効率的にアミノ化合物のアミノ基と反応してアミド化合物から成るジアステレオマーを形成するが、この際式(I−1)または式(I−2)の化合物は対称構造であるため、2個のカルボン酸のいずれが反応しても同一構造のジアステレオマーが形成され構造異性体が生じることはない。
このようにして、本発明に従い式(I−1)または式(I−2)とキラルなアミノ化合物とにより生成されるジアステレオマーは、それらの間の物理的性質がきわめて大きく、この特性を利用して効率的にジアステレオマーを互いに分離精製することができる。分離精製には、カラムクロマトグラフィーや分別結晶法など、各種の手法が適用可能である。特に、HPLCにおける分離係数や分離度が大きく、例えば、式(I−1)または式(I−2)の化合物を用いてアミノ酸を光学分割した場合、分離係数(α)1.25〜1.80、分離度(Rs)4.92〜10.56というような非常に高い値も得られており、式(I−1)または式(I−2)の化合物が従来の光学分割用の試薬に比較して並外れて優れた分離能を有していることが示されている。このように優れた分離能が発揮されるのは、形成されたジアステレオマーにおいて、式(I−1)または式(I−2)の光学活性中心と、光学分割対象化合物の光学活性中心が近接しているためと考えられる。
なお、よく知られているように、分離係数(α)はクロマトグラム上のピーク相互の保持時間を示すもので、下記の式(1)で定義され、また、分離度(Rs)はクロマトグラム上のピーク相互の保持時間とそれぞれのピーク幅との関係を示すもので下記の式(2)で定義される(例えば、「財津潔編“薬学の機器分析学(第2版)”平成15年4月1日、(株)廣川書店発行」参照)。
Figure 0004747320
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式(I−1)または式(I−2)の化合物を用いる本発明の光学分割に従えば、上記のようにして分離精製したジアステレオマーは、弱酸性下の温和な条件、すなわち、一般的には、リン酸などの適当な酸を用いて常温下でpH4.5〜5.5の条件に供されてアミド型ジアステレオマーが加水分解されることにより、アミノ化合物を再生、単離することができ、併せて光分割剤である式(I−1)または式(I−2)の化合物を回収することができる。酸加水分解等の過酷な反応に基づき再生を行なう従来の光分割法では、ペプチド性医薬品などは分解する可能性があり適用できる化合物が制限されていた。これに対して、式(I−1)または式(I−2)の化合物を光学分割剤として用いれば、弱酸性の温和な条件下において再生可能であり、従来の光学分割用試薬と比較して飛躍的に適用範囲の拡大が可能になると考えられる。
以下に、本発明の特徴をさらに具体的に示すために実施例を記すが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
光学分割剤の合成
本発明に従うシクロヘキサジエン−無水ジカルボン酸化合物の1例として、式(I−1)または式(I−2)においてRがフェニル基であり、Rが水素原子であるトランス−3,6−ジフェニル−1,4−シクロヘキサジエン−1,2−無水ジカルボン酸(trans−3,6−diphenyl−1,4−cyclohexadiene−1,2−dicarboxylic
anhydride:以下、トランス−DCDAと略記することがある)を図1に示す工程に沿って合成した。
(1)原料ジエンの合成:
先ず、トランス、トランス−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエンから、以下のように光異性体化反応を行なわせることにより、シス,トランス−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエンを調製した。
トランス,トランス−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン(824mg、4mmol)にシクロヘキサン(400mL)を加え、撹拌溶解した。これを窒素置換し、さらにバブリングを行った。その後、超高圧水銀ランプ(>280
nm)を用いて窒素置換、撹拌しながら10時間の紫外線照射を行った。この反応液を減圧留去し、得られた残渣をアルミナカラムクロマトグラフィー(石油エーテル)により精製し、無色油状物(300mg、1.46mmol、36.5%)を得た。
1H−NMR (CD2Cl2):δppm 6.44(1H, dt,J=0.7,11.3Hz)、6.54(1H,d,J=11.4Hz)、6.74(1H,d,J=15.6Hz)、7.22-7.44(11H,m)。
FAB(+)-MS(質量分析):m/z 206.2[M]+
吸光度:λmax=313.4nm (ε=46700)。
(2)対称型ジエステルの合成:
上記の光反応により得られたシス,トランス−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエンにジメチルアセチレンジカルボキシレート(DMAD)を反応させてDiels−Alder反応によるジエステルの生成を試みた。反応条件は次のとおりである。
シス,トランス−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン(1.76mL=2.06g、10mmol)にDMAD(4.91mL=5.68g、40mmol)を加え、150℃で8時間加熱撹拌した。この反応液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)により精製した。減圧留去し、得られた残渣を60%v/v)メタノール水溶液に溶解し、下記逆相HPLCに1.4mLずつ付し、34分に溶出するピークを分取した。HPLC分離条件は下記に示す(逆相HPLC条件)。分取した溶液を減圧留去し、凍結乾燥を行った。得られたラセミ体の粉末をHex/IPA=90/10(v/v)に溶解し、下記順相HPLCに150μLずつ付し、18分と20分に溶出するピーク成分をそれぞれ分取し、光学分割を行った。HPLC分離条件は下記に示す(順相HPLC条件)。光学分割した溶液を減圧留去し、それぞれ無色針状結晶((+)−ジメチル トランス−3,6−ジフェニル−1,4−シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボキシレートは23mg、66.09μmol、0.66%、(−)−ジメチル トランス−3,6−ジフェニル−1,4−シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボキシレートは22mg、63.22μmol、0.63%)を得た。
<(+)−ジメチル トランス−3,6−ジフェニル−1,4−シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボキシレート>
m.p.(融点):110−113℃。
1H-NMR(CD2Cl2):δppm 3.47(6H,s)、4.54-4.55(2H,m)、5.81-5.82(2H,m)、7.23-7.34(10H,m)。
FAB(+)-MS:m/z 349.3[M+H]+
元素分析(C22H20O4として)計算値:C,75.85;H,5.79。
実測値:C,75.74;H,5.87。
比旋光度:[α]26 =+188.5度(c0.34、CHCl3)。
光学純度:97.7%。
<(−)−ジメチル トランス−3,6−ジフェニル−1,4−シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボキシレート>
m.p.:110-112℃。
1H-NMR(CD2Cl2):δppm 3.47(6H,s)、4.54-4.55(2H,m)、5.81-5.82(2H,m)、7.23-7.34(10H,m)。
FAB(+)-MS:m/z349.3[M+H]+
元素分析(C22H20O4として)計算値:C,75.85;H,5.79。
実測値:C,75.84;H,5.97。
比旋光度:[α]26 =−189.4度(c 0.33,CHCl3)。
光学純度:97.5%。
逆相HPLC条件
充填カラム:Super-ODS(内径10mm X 100mm、東ソー製)、40℃
移動相:CH3OH/THF/H2O=45/5/50(v/v)
流速:3.0mL/min
検出波長:280nm
順相HPLC条件
充填カラム:CHIRALPAK AD-H(内径4.6mm X 250mm、ダイセル製)、25℃
移動相:Hex/IPA=90/10(v/v)
流速:0.5mL/min
検出波長:280nm
(3)酸無水物の生成:
上記(2)のようにして得られ光学異性体を形成するジエステル体のそれぞれにつき、以下のように、ギ酸と過塩素酸の存在下に加熱して分子内閉環反応を試みた。
(+)−トランス−3,6−ジフェニル−1,4−シクロヘキサジエン−1,2−無水ジカルボン酸((+)−トランス−DCDA)と(−)−トランス−3,6−ジフェニル−1,4−シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボキシレート((−)−トランス−DCDA)の合成
(+)−ジメチル トランス−3,6−ジフェニル−1,4−シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボキシレート(10mg、28.74μmol)、または(−)−ジメチル トランス−3,6−ジフェニル−1,4−シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボキシレート(10mg、28.74μmol)をギ酸(300μL)にそれぞれ撹拌溶解した。この溶液に過塩素酸(15μL)をそれぞれ加え、100℃で50分間加熱撹拌した。これを室温に戻し、析出した結晶を濾取し、得た粗結晶をジイソプロピルエーテルで洗い、それぞれ無色粉末((+)−トランス−3,6−ジフェニル−1,4−シクロヘキサジエン−1,2−無水ジカルボン酸((+)−トランス−DCDA)は7.25mg、24.01μmol、85.54%、(−)−トランス−3,6−ジフェニル−1,4−シクロヘキサジエン−1,2−無水ジカルボン酸((−)−トランス−DCDA)は6.52mg、21.59μmol、77.77%)を得た。
<(+)−トランス−3,6−ジフェニル−1,4−シクロヘキサジエン−1,2−無水ジカルボン酸((+)−トランス−DCDA)>
m.p.:147-149℃。
1H-NMR(CD2Cl2):δppm 4.60-4.61(2H,m)、5.97-5.99(2H,m)、7.29-7.41(10H,m)。
FAB(+)-MS:m/z303.2[M+H]+
比旋光度:[α]28 D=+40.1度(c 0.10,CHCl3)。
光学純度:99.2%。
<(−)−トランス−3,6−ジフェニル−1,4−シクロヘキサジエン−1,2−無水ジカルボン酸((−)−トランス−DCDA)>
m.p.:145-148℃。
1H-NMR(CD2Cl2):δppm 4.60-4.61(2H,m)、5.97-5.99(2H,m)、7.29-7.40(10H,m)。
FAB(+)-MS:m/z 303.2[M+H]+
比旋光度:[α]28 D=−39.8度(c 0.11,CHCl3)。
光学純度:99.2%。
ジアステレオマーの生成
実施例1で合成した(+)および(−)−トランス−DCDAについて光学分割剤(可逆的キラル誘導体化試薬)としての評価を行なった。キラルなアミノ化合物のモデル化合物としてフェニルアラニン(Phe)のラセミ体(DL−Phe)を用い、合成した試薬(+)および(−)−トランス−DCDAの反応性(ジアステレオマー生成能)および可逆性(再生反応)について検討した。すなわち、図4に示すように先ずDL−Pheのキラル誘導体化を行ない、トランス−DCDAの無水カルボンとPheのアミノ基を反応させてアミド化合物であるジアステレオマーを生成させた。このジアステレオマーとなったトランス−DCDA−D−Phe及びトランス−DCDA−L−Pheピークを逆相HPLCを用いて分離精製した後、酸性条件下においてアミドの加水分解が生じる再生反応を行ない、各エナンチオマーおよび試薬(光学分割剤)の回収を試みた(後述の実施例3参照)。
ジアステレオマー生成(キラル誘導体化)は、20mMの(+)または(−)−トランス−DCDAの脱水アセトニトリル溶液25μLをDL−Pheの0.4Mホウ酸塩緩衝液(pH7.0)125μLに加えて、40℃で30分間反応させることにより行なった。得られた反応液をアセトニトリルを含むリン酸塩緩衝液(pH7.0)を移動相とするODSカラムから成る逆相HPLCで分離精製した結果のクロマトグラムを図5(a)に示す。なお、図5(b)には、対照としてL−Pheを(+)−トランス−DCDAを用いて同様の条件で誘導体化した反応液のクロマトグラムである。図5(a)に示されるように、誘導体である各ジアステレオマーと考えられるピークが26分、31分に認められた。図5(b)から理解されるように、26分に溶出するピーク(ピーク1)がL−Phe由来、31分に溶出するピーク(ピーク2)がD−Phe由来のピークであり、その分離係数αは1.25、分離度Rsは4.92であった。
また、図6は同様にDL−PheとL−Pheを反応の光学活性中心を有する試薬(−)−トランス−DCDAを用いて誘導体化した反応液のクロマトグラムであり、誘導体である各ジアステレオマーと考えられるピークが(+)−トランス−DCDAを用いた場合と同様に26分、31分に認められた。(−)−トランス−DCDAでは26分に溶出するピーク(ピーク1)がD−Phe由来、31分に溶出するピーク(ピーク2)がL−Phe由来のピークであり、(+)−トランス−DCDAを用いた場合とは溶出順序の反転が認められた。これは試薬(+)−トランス−DCDAと(−)−トランス−DCDAがエナンチオマーであることに起因しており、試薬の選択によって溶出順序の制御が可能であることが示された。
さらに、アラニン(Ala)のラセミ体(DL−Ala)およびイソロイシン(Ile)のラセミ体(DL−Ile)を用い、実施例1で合成した試薬トランス−DCDAの有用性について同様に検討した。
図7はDL−AlaとDL−Ileを(+)−トランス−DCDAを用いて誘導体化した反応液のクロマトグラムである。移動相中のアセトニトリル含量は分析対象にあわせて変更した。DL−Alaの反応液を分析した結果、誘導体である各ジアステレオマーと考えられるピークが17分(L−Ala由来)および24分(D−Ala由来)に認められ、その分離係数はα=1.45、分離度はRs=7.89であった。またDL−Ileの場合は13分にL−Ile由来、22分にD−Ile由来のピークが認められ、その分離係数はα=1.80、分離度はRs=10.56であった。
現在広く用いられているアミノ基に対する光学分割試薬であるOPAとキラルチオールを用いる反応では、分離係数αは約1.1、分離度Rsは約1から3の化合物が多く報告されている。これらに比べても、本発明に従うトランス−DCDAがきわめて優れたアミノ化合物用化学分割剤であることが理解される。
再生反応によるアミノ化合物の単離
誘導体化反応(ジアステレオマー生成反応)の可逆性について、実施例2で生成したジアステレオマー(+)または(−)−トランス−DCDA−DL−PheからのPhe再生を指標として検討した。まず、ジアステレオマーとなった2本の誘導体ピークをそれぞれ分取し、各フラクションに1Mリン酸水溶液を加えて酸性としPheの再生を試みた。再生したPheは、o−フタールアルデヒド(OPA)とBoc−L−Cysによりプレカラム蛍光誘導体化した後、この反応液を逆相セミミクロHPLCによりキラル分割し、各エナンチオマーの定量を行なった。OPA反応後の標品DL−Pheのクロマトグラムにおいて、L−Phe誘導体は15.9分に、D−Phe誘導体は17.8分に溶出し、良好に各エナンチオマーを定量、単離できた(図8)。
L−PheおよびD−Pheの再生率についてまとめたグラフが図9である。既述のように、Pheをトランス−DCDAで誘導体化した反応液をpH5.0、7.0において25℃で放置し、2、4、6、24時間後にOPAとBoc−L−Cysによりプレカラム蛍光誘導体化を行なった後、再生したL−Phe量、D−Phe量を逆相HPLCを用いて分析した。時間経過とともに、(+)−トランス−DCDA−L−Pheの減少とL−Pheの増加が認められた。D−Pheについても同様に、時間経過とともに(+)−トランス−DCDA−D−Pheの減少とD−Pheの増加が認められた。(−)−トランス−DCDA−L−Pheおよび(−)−トランス−DCDA−D−Pheについても同様であった。
図9に示すように、本発明に従う(+)および(−)−トランス−DCDAを用いた場合、ともにpH7.0ではPheの再生が認められたかったのに対し、酸性条件下のpH5.0では時間の経過に伴なって再生が認められ、24時間後には約80から90%のPheの再生が認められ、それとともに(+)および(−)−トランス−DCDAが回収された。以上の結果は、(+)および(−)−トランス−DCDA誘導体からのDL−Phe再生反応が弱酸性下で生じることを示しており、(+)および(−)−トランス−DCDAが温和な条件において可逆性を有する優れた光学分割剤(可逆的キラル誘導体化試薬)であることが理解される。
以上の記述から明らかなように、本発明は、産業のいろいろな分野において有用なアミノ化合物に対する優れた光学分割剤と光学分割法を提供し、医薬、農薬、食品などの開発に資することができる。
本発明のシクロヘキサジエン−無水ジカルボン酸化合物を合成する反応スキームを示す。 本発明の化合物の前駆体となるジエステルの同定データを示す。 本発明の化合物の属する(+)−トランス−DCDAのH−NMRスペクトログラムである。 本発明に従う化合物を用いてキラル誘導体化(ジアステレオマー形成)およびフェニルアラニンのエナンチオマーを再生、単離する工程を概示する。 本発明に従う化合物を用いてキラル誘導体化されたアミノ酸のHPLCにおけるクロマトグラムである。 本発明に従う化合物を用いてキラル誘導体化されたアミノ酸のHPLCにおけるクロマトグラムの別の例である。 本発明に従う化合物を用いてキラル誘導体化されたアミノ酸のHPLCにおけるクロマトグラムのさらに別の例である。 本発明に従う化合物を用いて誘導体化したアミノ酸から該アミノ酸を再生するときのHPLCにおけるクロマトグラムである。 本発明に従う化合物を用いて誘導体化アミノ酸から該アミノ酸を再生するときの再生率と再生時間との関係をまとめたグラフである。

Claims (7)

  1. 下記の式(I−1)または式(I−2)で表わされることを特徴とするシクロヘキサジエン−無水ジカルボン酸化合物。
    Figure 0004747320
    Figure 0004747320
    〔式(I−1)および式(I−2)中、RおよびRは、互いに別異の原子または官能基を表わし、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基またはアルコキシル基、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基またはダンシル基から選ばれる。〕
  2. がフェニル基であり、Rが水素原子であることを特徴とする請求項1のシクロヘキサジエン−無水ジカルボン酸化合物。
  3. 請求項1に記載の式(I−1)または式(I−2)のシクロヘキサジエン−無水ジカルボン酸化合物から成り、キラルなアミノ化合物の光学分割に用いられることを特徴とする光学分割剤。
  4. キラルなアミノ化合物を光学分割する方法であって、前記アミノ化合物のラセミ体または部分分割された前記アミノ化合物に、請求項1に記載の式(I−1)または式(I−2)のシクロヘキサジエン−無水カルボン酸化合物を反応させてアミド化合物のジアステレオマーを生成させた後、該ジアステレオマーを分離精製する工程を含むことを特徴とする方法。
  5. 分離精製したジアステレオマーを弱酸性条件下に加水分解することにより、前記アミノ化合物を再生、単離する工程を含むことを特徴とする請求項4の方法。
  6. ジアステレオマーの分離精製が逆相HPLCによることを特徴とする請求項4または請求項5の方法。
  7. キラルなアミノ化合物がアミノ酸であることを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれかの方法。
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