JPH09295962A - 2,2−ジ置換−エタンスルホン酸誘導体およびその塩 - Google Patents

2,2−ジ置換−エタンスルホン酸誘導体およびその塩

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JPH09295962A
JPH09295962A JP5314297A JP5314297A JPH09295962A JP H09295962 A JPH09295962 A JP H09295962A JP 5314297 A JP5314297 A JP 5314297A JP 5314297 A JP5314297 A JP 5314297A JP H09295962 A JPH09295962 A JP H09295962A
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salt
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alkyl group
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ethanesulfonic acid
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JP5314297A
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English (en)
Inventor
Hiroyuki Nohira
博之 野平
Yoshio Aoki
良夫 青木
Yasutaka Mitsui
康敬 三井
Keisuke Matsuyama
恵介 松山
Kazutoshi Toyoda
和俊 豊田
Yasuo Chigusa
康男 千種
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nagase and Co Ltd
Original Assignee
Nagase and Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 光学活性な有機塩基化合物を製造するための
光学分割剤として、不整脈用剤、動脈硬化治療剤などの
医薬品またはその中間体として、あるいは、農薬の原料
として有用な新規な化合物を開発する。 【解決手段】 以下の式(1): 【化1】 [式中、R1は水素原子またはC1〜C8アルキル基を表
し、R2はC1〜C8アルキル基を表し、そして*は不斉
炭素の位置を表す]で示される2,2−ジ置換−エタンス
ルホン酸誘導体およびその塩を提供することにより、上
記課題を解決した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、下記式(1)で示さ
れる2,2−ジ置換−エタンスルホン酸誘導体およびそ
の塩、該エタンスルホン酸誘導体およびその塩の製造方
法、ならびに該エタンスルホン酸誘導体およびその塩の
光学活性体を光学分割剤として用いて、不斉炭素を有す
るある種の有機塩基化合物を光学分割する方法に関す
る。
【0002】光学活性な式(1)で示される化合物は、光
学活性な有機塩基化合物を製造するための光学分割剤と
して有用である。さらに、式(1)で示される化合物は、
不整脈用剤、動脈硬化治療剤などの医薬品またはその中
間体として、あるいは、農薬の原料として重要である。
【0003】
【従来の技術】従来、このような光学活性な有機塩基化
合物の製造に供される光学分割剤としては、天然物由来
の(+)−カンファー−10−スルホン酸が、トリカルボニ
ル−1−メチル−2−ジメチルアミノメチルシクロブタ
ジエン−鉄錯体の光学分割に用いられている[J.S.C.Che
m.Commun., 76-77頁 (1973)]。この光学分割剤は、天然
物に由来するので安価ではあるが、再結晶を多数回必要
とするなど、煩雑な工程を要し、また、得られた鉄錯体
の光学純度も低く、工業的な製造方法からはほど遠いも
のであった。さらに、キラルなホスホン酸化合物と塩基
性分割剤との相関関係が調べられている[Recil.Trav.Ch
im.Pays-Bas.111, 111 (1992)]。
【0004】一方、1−フェニルエタンスルホン酸が、
種々のアミノ酸の光学分割剤として用いられている[Bul
l.Chem.Soc.Jpn., 60, 4321 (1987);化学工学、58巻、
686-688頁 (1994)]。また、α−(p−置換フェニル)エ
タンスルホン酸がα−アミノ酸の光学分割剤として用い
られている(特開昭59−170057)。しかし、これ
らのフェニルエタンスルホン酸誘導体は、特定のアミノ
酸に対して効率よく分割できるのみであり、用いる溶媒
も限定されるなど、工業用に適用するには課題が多かっ
た。また、これらのフェニルエタンスルホン酸誘導体
は、強アルカリを用いて処理するとラセミ化し、光学純
度が低くなる恐れがあった。従って、この誘導体を回収
して再使用する場合に不都合が生じるなどの問題点もあ
った。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、光学活
性な有機塩基化合物を製造するための光学分割剤として
効率的に使用することができる新規な光学分割剤を開発
しようとした。
【0006】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に鋭意検討した結果、特定の2,2−ジ置換−エタンス
ルホン酸誘導体またはその塩の光学活性体を用いて、不
斉炭素を有するある種の有機塩基化合物を効率的に光学
分割しうることを見い出した。
【0007】即ち、本発明は、以下の式(1):
【化5】 [式中、R1は水素原子またはC1〜C8アルキル基を表
し、R2はC1〜C8アルキル基を表し、そして*は不斉
炭素の位置を表す]で示されるエタンスルホン酸誘導体
またはその塩を提供するものである。
【0008】また、本発明は、上記の式(1)で示される
エタンスルホン酸誘導体またはその塩の製造方法であっ
て、以下の式(2):
【化6】 [式中、Xはハロゲン原子を表し、そしてR1、R2およ
び*は式(1)の定義に同じである]で示されるハロゲン
化エチル誘導体を適当な溶媒中で亜硫酸アルカリ金属塩
と反応させてエタンスルホン酸誘導体のアルカリ金属塩
を得、次いで、所望によりこのアルカリ金属塩を、イオ
ン交換樹脂を用いるかまたは複分解させることによりス
ルホン酸に変換することを特徴とする方法を提供するも
のである。
【0009】さらに、本発明は、以下の式(3):
【化7】 [式中、R3は未置換アリール基、または1〜3個のC1
〜C4アルキル基、C1〜C4アルコキシ基もしくはハロ
ゲン原子で置換されたアリール基を表し、R4はC1〜C
4アルキル基、または1〜3個のC1〜C4アルキル基も
しくはハロゲン原子で置換されていることもあるアリー
ル基で置換されたC1〜C4アルキル基を表し、Aは結
合、-CH2-、または-CH2CH2-を表し、そして*は
不斉炭素の位置を表す]で示されるアミン化合物を光学
分割する方法であって、上記の式(1)で示されるエタン
スルホン酸誘導体またはその塩の光学活性体を光学分割
剤として用いて分割することを特徴とする方法を提供す
るものである。
【0010】また、本発明は、側鎖にアミノ結合を持つ
α-アミノ酸、さらに具体的には上記式(1)で示される
エタンスルホン酸誘導体またはその塩のスルホン酸基と
塩を形成しうる少なくとも1個の窒素塩基性基をアミノ
酸側鎖に有するα-アミノ酸を光学分割する方法であっ
て、該エタンスルホン酸誘導体またはその塩の光学活性
体を光学分割剤として用いて分割することを特徴とする
方法を提供するものである。
【0011】さらに、本発明は、以下の式(4):
【化8】 [式中、R5は炭素原子が窒素原子で置換されていてもよ
いC2〜C10アルキレン基もしくはアルケニレン基、ま
たはC6〜C14アリーレン基を表し、Bは結合、−CH2
−、−CH=、または−N=を表し、そして*は不斉炭
素の位置を表す]で示されるα-アミノ酸を光学分割する
方法であって、上記式(1)で示されるエタンスルホン酸
誘導体またはその塩の光学活性体を光学分割剤として用
いて分割する方法を提供するものである。
【0012】本発明の新規なエタンスルホン酸誘導体の
特徴とするところは、式(1)に示すように、構造的にス
ルホン酸基のβ位に光学活性点が存在する点にある。こ
のことにより、本発明のエタンスルホン酸誘導体は塩基
性有機化合物などの被分割基質と特異的および/または
立体選択的な結合を形成し、安定な構造を持ったジアス
テレオマー塩を形成することが予測される。
【0013】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を詳しく説明す
る。本明細書において、C1〜C4アルキル基およびC1
〜C8アルキル基とは、それぞれ1〜4個および1〜8
個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基を
意味する。従って、C1〜C4アルキル基には、例えば、
メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチ
ル、イソブチル、s-ブチルまたはt-ブチル基などが含ま
れ、C1〜C8アルキル基には、C1〜C4アルキル基に加
えて、例えば、n-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル
またはn-オクチル基などが含まれる。
【0014】ハロゲン原子とは、フッ素、塩素、臭素ま
たはヨウ素を意味する。
【0015】アリール基とは、1価の芳香族炭化水素基
を意味し、例えば、フェニル、ビフェニリルまたはナフ
チル基などが含まれる。
【0016】C1〜C4アルコキシ基とは、アルキル部分
が1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアル
キル基からなるアルコキシ基を意味する。従って、C1
〜C4アルコキシ基には、例えば、メトキシ、エトキ
シ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソ
ブトキシ、s-ブトキシまたはt-ブトキシ基などが含まれ
る。
【0017】1〜3個のC1〜C4アルキル基、C1〜C4
アルコキシ基もしくはハロゲン原子で置換されたアリー
ル基とは、1〜3個の上記定義のC1〜C4アルキル基、
1〜C4アルコキシ基もしくはハロゲン原子で置換され
た上記定義のアリール基を意味する。置換基が複数存在
する場合、それらは同一または異なる基またはハロゲン
原子から選択されてよい。このような置換されたアリー
ル基の例には、例えば、メチルフェニル、エチルフェニ
ル、n-プロピルフェニル、イソプロピルフェニル、n-ブ
チルフェニル、イソブチルフェニル、s-ブチルフェニ
ル、t-ブチルフェニル、メトキシフェニル、エトキシフ
ェニル、n-プロポキシフェニル、イソプロポキシフェニ
ル、フルオロフェニル、ブロモフェニル、クロロフェニ
ル、ヨードフェニル、メチルナフチル、エチルナフチ
ル、n-プロピルナフチル、イソプロピルナフチル、n-ブ
チルナフチル、イソブチルナフチル、s-ブチルナフチ
ル、t-ブチルナフチル、メトキシナフチル、エトキシナ
フチル、n-プロポキシナフチル、イソプロポキシナフチ
ル、フルオロナフチル、ブロモナフチル、クロロナフチ
ル、ヨードナフチル、フルオロビフェニル、ブロモビフ
ェニル、クロロビフェニルまたはヨードビフェニル基な
どが含まれる。
【0018】1〜3個のC1〜C4アルキル基もしくはハ
ロゲン原子で置換されていることもあるアリール基で置
換されたC1〜C4アルキルには、例えば、ベンジル、α
-フェニルエチル、β-フェニルエチル、α-フェニルプ
ロピル、β-フェニルプロピル、γ-フェニルプロピル、
α-フェニルブチル、β-フェニルブチル、γ-フェニル
ブチル、δ-フェニルブチル、イソブチルベンジル、ク
ロロベンジル、ブロモベンジル、フルオロベンジル、ヨ
ードベンジル、ナフチルメチル、α-ナフチルエチル、
β-ナフチルエチル、α-ナフチルプロピル、β-ナフチ
ルプロピル、γ-ナフチルプロピル、α-ナフチルブチ
ル、β-ナフチルブチル、γ-ナフチルブチル、δ-ナフ
チルブチル、イソブチルナフチルメチル、フルオロナフ
チルメチル、クロロナフチルメチル、ブロモナフチルメ
チル、ヨードナフチルメチル、フルオロビフェニルメチ
ル、クロロビフェニルメチル、ブロモビフェニルメチル
またはヨードビフェニルメチル基などが含まれる。
【0019】また、炭素原子が窒素原子で置換されてい
てもよいC2〜C10のアルキレン基には、例えば、−C
2−NH−、−CH=N−、−CH2−NH−CH
2−、−CH=N−CH2−などが含まれる。また、炭素
原子が窒素原子で置換されていてもよいC2〜C10のア
ルケニレン基には、例えば、−CH=CH−、−CH=
CH−CH2−、−CH2−NH−CH=CH−、−CH
=N−CH=CH−などが含まれる。また、C6〜C14
アリーレン基には、1,2−フェニレン、1,2−ナフチ
レン基などが含まれる。
【0020】本発明の上記式(1)のエタンスルホン酸誘
導体およびその塩の中に、光学分割剤としてより好まし
い群が存在する。即ち、R1が水素原子またはC1〜C4
アルキル基であり、R2がC1〜C4アルキル基である式
(1)のエタンスルホン酸誘導体またはその塩が光学分割
剤として好ましい。本発明の化合物を光学分割剤として
用いるときには、勿論その光学活性体を用いる。
【0021】本発明の上記式(1)のエタンスルホン酸誘
導体およびその塩は、例えば、対応するカルボン酸(5)
を出発原料として、以下の反応式1に従って製造するこ
とができる。
【化9】 [反応式中、R1、R2、Xおよび*は式(1)および式
(2)の定義に同じであり、Mはアルカリ金属を表す]。
【0022】(1)初めに、出発原料であるカルボン酸
(5)を、エーテルなどの適当な溶媒中、水素化リチウム
アルミニウムなどの還元試薬で還元することによってア
ルコール(6)に変換する。この出発原料であるカルボン
酸(5)は、市販品から入手可能であるか、または自体既
知の方法によって製造することができる。
【0023】(2)次いで、得られたアルコール(6)を無
水p−トルエンスルホン酸またはp−トルエンスルホン
酸ハライドとピリジンなどの塩基の存在下に反応させ、
スルホン酸エステル(7)を合成する。用いる無水p−ト
ルエンスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸ハライ
ドの量は、アルコール(6)に対して1〜5当量が適当で
あり、好ましくは1〜2.5当量であり、より好ましく
は1.0〜1.5当量である。本反応は通常氷冷下〜室温
で行われるが、より望ましくは室温で行う。本反応は、
ほぼ定量的である。
【0024】(3)次いで、スルホン酸エステル(7)とハ
ロゲン化リチウムを、メチルイソブチルケトン(以下、
MIBKと略記する)などの溶媒中、加熱下に反応さ
せ、ハロゲン化物(2)を生成させる。用いるハロゲン化
リチウムの量は、スルホン酸エステル(7)に対して1〜
5当量が適当であり、好ましくは1〜2.5当量であ
り、より好ましくは1.0〜2.0当量である。本反応に
おいて使用してよい溶媒はアセトンであり、ハロゲン化
リチウムとしては、臭化リチウムが好ましく用いられ
る。反応温度は通常、50℃〜150℃であり、反応は
約0.5〜36時間で終了する。本反応は、ほぼ定量的
であり、光学純度を保持したまま進行する。
【0025】(4)次いで、ハロゲン化物(2)と亜硫酸ア
ルカリ金属塩をアルコール/水溶媒中で反応させること
により、本発明のエタンスルホン酸誘導体のアルカリ金
属塩(1a)を得る。用いる亜硫酸アルカリ金属塩の量
は、ハロゲン化物に対して1〜5当量が適当であり、好
ましくは1〜2.5当量である。本反応は、反応温度6
0℃〜100℃にて、約20時間で終了する。本反応は
光学純度を保持したまま進行する。
【0026】(5)最後に、エタンスルホン酸誘導体のア
ルカリ金属塩(1a)を複分解することにより、あるいは
イオン交換樹脂で処理することにより、本発明のエタン
スルホン酸誘導体(1)を得ることができる。
【0027】上記の方法は、出発原料としてカルボン酸
(5)の光学活性体またはラセミ体のどちらを用いて行う
こともできる。光学活性体を用いたときには、光学活性
なエタンスルホン酸誘導体またはその塩が得られるので
好ましい。
【0028】本発明の式(1)で示されるエタンスルホン
酸誘導体またはその塩の光学活性体は、塩基性有機化合
物を光学分割するのに有用である。例えば、本発明のエ
タンスルホン酸誘導体またはその塩の光学活性体を用い
て、上記式(3)で示されるアミン化合物を光学分割する
ことができる。これらアミン化合物の中で、特にR3
フェニルもしくはナフチル基、または1〜3個のC1
4アルキル基もしくはハロゲン原子で置換されたフェ
ニルもしくはナフチル基であり、R4がC1〜C4アルキ
ル基、または1〜3個のC1〜C4アルキル基もしくはハ
ロゲン原子で置換されていることもあるフェニルもしく
はナフチル基で置換されたC1〜C4アルキル基であり、
Aが結合または-CH2-である式(3)のアミン化合物を
光学分割するのが好ましい。さらに好ましくは、R3
フェニルもしくはナフチル基、または1個のC1〜C4
ルキル基もしくはハロゲン原子で置換されたフェニルも
しくはナフチル基であり、R4がC1〜C4アルキル基、
または1個のC1〜C4アルキル基もしくはハロゲン原子
で置換されていることもあるベンジル基であるアミン化
合物を光学分割する。式(3)で示されるアミン化合物の
ラセミ体は、既知の有機合成によって、または市販品か
ら入手することができる。
【0029】また、本発明のエタンスルホン酸誘導体ま
たはその塩の光学活性体を用いて、側鎖にアミノ結合を
持つα-アミノ酸を分割することができる。これらα-ア
ミノ酸は、さらに具体的には上記式(1)で示されるエタ
ンスルホン酸誘導体またはその塩のスルホン酸基と塩を
形成しうる少なくとも1個の窒素塩基性基をアミノ酸側
鎖に有するα-アミノ酸である。このようなα-アミノ酸
には、DL−ヒスチジン、DL−トリプトファン、DL
−トリプタジン、DL−リジン、DL−アルギニンなど
が含まれる。
【0030】さらに、本発明のエタンスルホン酸誘導体
またはその塩の光学活性体を用いて、例えば上記式(4)
で示されるα-アミノ酸を分割することができる。これ
らα-アミノ酸には、R5が−CH=N−であり、Bが−
CH=である化合物、即ちDL−α−アミノ−1H−イ
ミダゾール−4−プロピオン酸(DL−ヒスチジン)、R
5が1,2−フェニレンであり、Bが−N=である化合
物、即ちDL−α−アミノ−1H−インダゾール−3−
プロピオン酸(トリプタジン)、R5が1,2−フェニレン
であり、Bが−CH=である化合物、即ちDL−α−ア
ミノ−1−H−インドール−3−プロピオン酸(DL−ト
リプトファン)などが含まれる。これらのα−アミノ酸
のなかで、DL−トリプトファンを光学分割するのが好
ましい。式(4)で示される化合物のラセミ体は、既知の
有機合成によって、または市販品から入手することがで
きる。
【0031】本発明のエタンスルホン酸誘導体またはそ
の塩の光学活性体を用いる塩基性有機化合物の光学分割
は次のようにして行う。即ち、本発明の光学活性なエタ
ンスルホン酸誘導体またはその塩と被分割基質[塩基性
有機化合物、例えば上記式(3)で表されるアミン化合物
またはその塩]を適当な溶媒中で所望により加熱して反
応させ、ジアステレオマー塩を析出させる。次いで、析
出した該ジアステレオマー塩を分取する。所望により再
結晶などの精製処理を行って精製ジアステレオマー塩を
得、これを複分解することにより目的とする光学活性な
塩基性有機化合物を得ることができる。
【0032】用いる光学活性なエタンスルホン酸誘導体
またはその塩と被分割基質との当量比は、特に制限はな
いが0.1〜1:1が適当であり、好ましくは0.25〜
1:1であり、より好ましくは0.5〜1.0:1であ
る。用いる反応溶媒は、用いるエタンスルホン酸誘導体
またはその塩と被分割基質の組合せに依存して適宜選択
してよいが、例えば、メタノールなどのアルコール類、
エーテル類、エステル類、炭化水素類、水および/また
はこれらの混合物を用いることができる。再結晶溶媒と
しても、上記と同様の溶媒を選択することができる。
【0033】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく
説明するが、本発明はこれら実施例によって限定される
ものではない。これら実施例において、化合物の光学純
度はエナンチオマー過剰率(%e.e.)で表示した。
【0034】実施例1 (S)−2−p−イソブチルフェ
ニルプロパンスルホン酸の調製 (S)−2−(p−イソブチルフェニル)プロピオン酸を出
発原料として、(S)−2−p−イソブチルフェニルプロ
パンスルホン酸を次のように合成した。 1-1.(S)−2−p−イソブチルフェニル−1−プロ
パノールの調製 水素化リチウムアルミニウム(18.4g、485mモ
ル)を無水ジエチルエーテル中に懸濁させた。この懸濁
液に対し、(S)−2−(p−イソブチルフェニル)プロピ
オン酸(50g、242mモル)(光学純度98.7%e.
e.)の無水ジエチルエーテル(50ml)溶液を氷冷下に
滴下し、室温で1時間撹拌した。この反応液に、1N塩
酸を滴下してpHを1に調製し、トルエン(200ml
×3)で抽出した。トルエン層を硫酸マグネシウムで乾
燥し、溶媒を留去して、目的とする(S)−2−(p−イ
ソブチルフェニル)−1−プロパノール(43.9g)を収
率95.0%で得た。この反応生成物の分析結果を以下
に示す。IR(フィルム)[ν(cm-1)] :4328(w)、4049(w)、3346
(s)、2954(s)、2868(s)、1899(m)、1792(w)、1676(w)、
1636(w)、1514(s)、1465(s)、1421(m)、1383(s)、1366
(s)、1336(m)、1282(w)、1219(w)、1186(w)、1168(w)、
1124(m)、1112(m)、1070(m)、1037(s)、1013(s)、976
(m)、921(w)、883(m)、844(s)、798(s)、729(w)、578
(m)、546(s)。 1H NMR(CDCl3)[δ(ppm)](TMS標準) :0.90(d,
J=6.8Hz, 6H)、1.26(d, J=7.2Hz, 3H)、1.85(sep, J=
6.8Hz, 1H)、2.45(d, J=7.2Hz, 2H)、2.91(dd,J1=13.8H
z, J2=6.8Hz, 2H)、3.67(d, J=6.8Hz, 2H)、7.05-7.17
(m,4H)。 13C NMR(CDCl3)[δ(ppm)](TMS標準) :17.6、
22.4、30.2、42.0、45.1、68.8、127.1、129.4、140.
0、140.8。
【0035】1-2.(S)−2−p−イソブチルフェニ
ルプロピル p−トルエンスルホネートの調製 上記1-1で調製した(S)−2−p−イソブチルフェニ
ル−1−プロパノール(5.0g、26.3mモル)をピリ
ジン(21.2ml)に溶解した。この溶液に対し、p−
トルエンスルホン酸クロリド(7.5g、39.3mモル)
を氷冷下に加え、この温度で30分撹拌し、次いで室温
にてさらに3時間撹拌した。この反応液に水(1.5m
l)を投入し、20分撹拌して反応を終了させた。次い
で、反応液を水(200ml)に投入し、トルエン(10
0ml×2)で抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥し、
溶媒を留去して、目的とする(S)−2−p−イソブチル
フェニルプロピル p−トルエンスルホネート(8.83
g)を収率97.0%で得た。この反応生成物の分析結果
を以下に示す。IR(フィルム)[ν(cm-1)] :4059(w)、3660(w)、2955
(s)、2872(s)、2731(w)、2590(w)、2285(w)、1913(w)、
1802(w)、1596(s)、1508(s)、1490(s)、1461(s)、1420
(m)、1361(s)、1308(m)、1290(m)、1208(m)、1185(s)、
1173(s)、1120(m)、1096(s)、1020(s)、967(s)、844
(s)、750(s)、726(m)、709(m)、685(m)、662(s)、615
(m)、597(m)、568(s)、550(s)。 1H NMR(CDCl3)[δ(ppm)](TMS標準) :0.89(d,
J=6.4Hz, 6H)、1.27(d, J=6.8Hz, 3H)、1.82(sep, J=
6.7Hz, 1H)、2.43(s, 3H)、3.01-3.11(m, 1H)、3.99(d
d, J1=9.6Hz, J2=8.0Hz, 1H)、4.07(dd, J1=9.6Hz, J2=
6.4Hz, 1H)、7.00(d, J=8.4Hz, 2H)、7.04(d, J=8.0Hz,
2H)、7.25-7.30(m, 2H)、7.68(d, J=8.0Hz, 2H)。 13C NMR(CDCl3)[δ(ppm)](TMS標準) :21.3、
26.1、33.9、42.5、48.7、78.7、130.6、131.5、133.
0、133.4、142.5、144.1、148.2、155.1。
【0036】1-3.(S)−2−p−イソブチルフェニ
ルプロピルブロミドの調製 上記1-2で調製した(S)−2−p−イソブチルフェニ
ルプロピル p−トルエンスルホネート(61.6g、1
76mモル)と臭化リチウム・1水和物(27.7g、2
64mモル)をMIBK(700ml)に溶解し、還流温
度(118℃)で1時間撹拌した。この反応液を水(30
0ml)に投入し、トルエン(300ml×3)で抽出し
た。トルエン層を水洗し、溶媒を留去して、目的とする
(S)−2−p−イソブチルフェニルプロピルブロミド
(44.87g)を収率99.9%で得た。この反応生成物
の分析結果を以下に示す。IR(フィルム)[ν(cm-1)] :2955(s)、2919(s)、2872
(s)、1901(m)、1508(w)、1460(m)、1384(m)、1367(m)、
1290(m)、1226(s)、1202(m)、1167(m)、1120(m)、1044
(m)、1014(s)、897(m)、844(s)、797(s)、738(m)、656
(s)。 1H NMR(CDCl3)[δ(ppm)](TMS標準) :0.90(d,
J=6.4Hz, 6H)、1.41(d, J=6.8Hz, 3H)、1.85(sep, J=
6.7Hz, 1H)、2.54(d, J=6.8Hz, 2H)、3.05-3.15(m, 1
H)、3.44(dd, J1=9.6Hz, J2=8.4Hz, 1H)、3.57(dd, J1=
10.0Hz, J2=5.6Hz,1H)、7.07-7.13(m, 4H)。 13C NMR(CDCl3)[δ(ppm)](TMS標準) :20.1、
22.6、30.4、40.5、42.1、45.3、126.9、129.5、140.
6、141.2。
【0037】1-4.(S)−2−p−イソブチルフェニ
ルプロパンスルホン酸の調製 上記1-3で調製した(S)−2−p−イソブチルフェニ
ルプロピルブロミド(4.50g、17.6mモル)に水/
エタノール(32ml/45ml)の混合溶媒を加えた。
この混合物に亜硫酸ナトリウム(11.00g、87.3
mモル)を投入し、還流温度(81℃)で66時間撹拌し
た。反応終了後、この反応溶液を約半量となるまで濃縮
した後、トルエン(40ml)で抽出し、未反応の原料を
トルエン層に回収した。水層を濃縮乾固し、残査をメタ
ノール(150ml)に懸濁し、不溶物を濾去した。濾過
残査をメタノール(20ml)で洗浄し、合一したメタノ
ール溶液を濃縮乾固して、(S)−2−p−イソブチルフ
ェニルプロパンスルホン酸ナトリウム(4.76g)を得
た。この濃縮残査に35%塩酸(1.98g)とトルエン
(20ml)を加え、トルエン層を取り出した。このトル
エン層から、溶媒を留去して、目的とする(S)−2−p
−イソブチルフェニルプロパンスルホン酸(1.85g)
を収率40.9%で得た。この反応生成物の分析結果を
以下に示す。IR(フィルム)[ν(cm-1)] :2955(s)、1731(w)、1555
(w)、1514(m)、1461(m)、1420(w)、1384(w)、1367(w)、
1161(s)、1161(s)、1044(s)、932(m)、844(m)、797
(m)、720(m)、667(w)、615(m)、573(m)、515(s)、462
(w)。 1H NMR(D2O)[δ(ppm)](TMS(CH2)3SO3Na
標準) :0.78(d, J=6.4Hz, 6H)、1.33(d, J=6.8Hz, 3
H)、1.82-1.66(m, 1H)、2.33(d, J=6.8Hz, 2H)、3.04-
3.16(m, 2H)、3.44(dd, J1=9.6Hz, J2=8.4Hz, 1H)、7.0
2(d, J=8.0Hz, 2H)、7.13(d, J=8.0Hz, 2H)。 13C NMR(D2O)[δ(ppm)](TMS(CH2)3SO3Na
標準) :17.1、17.7、25.5、31.6、40.3、54.3、122.4、
125.1、135.6、139.2。[α]D 25 :−20.5°(c1.0、メタノール)。
【0038】実施例2 (S)−3−メチル−2−フェニ
ルブタンスルホン酸の調製 実施例1と同様の方法で調製した(S)−3−メチル−2
−フェニルブチルブロミド(16.15g、71.1mモ
ル)を水/エタノール(112ml/160ml)の混合
溶媒に溶解した。この溶液に亜硫酸ナトリウム(44.4
g、352mモル)を投入し、還流温度(81℃)で20
時間撹拌した。反応終了後、この反応液をトルエン(2
00ml)で抽出し、未反応の原料をトルエン層に回収
した。水層を濃縮乾固し、残査をメタノール(1.0L)
に懸濁し、不溶物を濾過により除去した。次いで、濾過
母液を濃縮乾固して、(S)−3−メチル−2−フェニル
ブタンスルホン酸ナトリウムを得た(15.9g)。この
濃縮残査を水(0.5L)に溶解し、イオン交換樹脂(アン
バーライトC−200;ロームアンドハース社製)カラ
ムに注入し、透過液を分取した。その透過液から溶媒を
留去して、目的とする(S)−3−メチル−2−フェニル
ブタンスルホン酸(11.81g)を収率72.8%で得
た。この反応生成物の分析結果を以下に示す。IR(KBr)[ν(cm-1)] :3401(s)、3049(w)、2966(w)、
2355(m)、1719(m)、1560(w)、1496(m)、1455(m)、1414
(w)、1390(m)、1373(m)、1214(s)、1149(s)、1044(s)、
791(m)、703(s)、591(s)、521(m)、474(w)。 1H NMR(D2O)[δ(ppm)](TMS(CH2)3SO3Na
標準) :0.74(d, J=6.8Hz, 3H)、0.90(d, J=6.8Hz, 3
H)、1.94(oct, J=6.8Hz, 1H)、2.93(q, J=6.7Hz, 1H)、
3.35(d, J=7.2Hz, 2H)、7.25-7.30(m, 3H)。 13C NMR(D2O)[δ(ppm)](TMS(CH2)3SO3Na
標準) :21.5、22.5、35.5、50.8、56.8、128.9、130.
6、131.4、145.1。融点 :39.6〜42.2℃。[α]D 25 :−23.4°(c1.0、メタノール)。
【0039】実施例3 (R)−2−フェニルプロパンス
ルホン酸の調製 (R)−2−フェニルプロピオン酸(光学純度98.9%
e.e.)を出発原料として実施例1と同様の方法で調製
した(R)−2−フェニルプロピルブロミド(747m
g、375mモル)を水/エタノール(5.4ml/7.5
ml)の混合溶媒に溶解した。この溶液に亜硫酸ナトリ
ウム(44.4g、352mモル)を投入し、還流温度(8
1℃)で20時間撹拌した。反応終了後、この反応液を
トルエン(20ml)で抽出し、未反応の原料をトルエン
層に回収した。水層を濃縮乾固し、残査をメタノール
(25ml)に懸濁し、不溶物を濾過により除去した。次
いで、濾過母液を濃縮乾固して、(R)−2−フェニルプ
ロパンスルホン酸ナトリウム(2.577g)を得た。こ
の濃縮残査を水(1.0L)に溶解し、イオン交換樹脂(ア
ンバーライトC−200;ロームアンドハース社製)カ
ラムに注入し、透過液を分取した。その透過液から溶媒
を留去して、目的とする(R)−2−フェニルプロピルス
ルホン酸(1.02g)を収率35.8%で得た。この反応
生成物の分析結果を以下に示す。IR(フィルム)[ν(cm-1)] :3424(s)、1741(w)、1643
(w)、1496(w)、1453(m)、1202(s)、1142(s)、1039(s)、
761(w)、701(m)、630(w)、559(w)。 1H NMR(CDCl3)[δ(ppm)](TMS標準) :1.42(d,
J=6.4Hz, 3H)、3.22-3.40(m, 3H)、7.16-7.30(m, 5
H)。[α]D 21 :+22.1°(c6.3、メタノール)。
【0040】実施例4 (−)−2−(p−イソブチルフ
ェニル)−1−プロパンスルホン酸によるDL−トリプ
トファンの光学分割 DL−トリプトファン(以下、Trpと略記する)(612
mg、3.0mモル)をメタノール(5ml)に懸濁させ
た。これに、(−)−2−(p−イソブチルフェニル)−1
−プロパンスルホン酸(IPPSと略記する)(3.0mモ
ル)のメタノール溶液を透明になるまで滴下し、溶媒を
減圧留去することによって白色固体を得た。これにメタ
ノール(5.3ml)を加えて加熱溶解した後、室温に放
置して結晶化させ、(−)−IPPS・D−Trp塩の粗結
晶(335mg、0.72mモル)を得た。ラセミ体の半
量を100%とした収率は48.7%であり、融点は2
57〜261℃であった。この粗結晶をメタノール(1
4.4ml)から再結晶させ、精製塩(155mg、0.3
4mモル)を得た。ラセミ体の半量を100%とした収
率は22.7%であり、融点は258〜263℃であっ
た。また、[α]D 25=−23.2°(c1.0、メタノー
ル)および[α]435 23=−55.2°(c1.0、メタノー
ル)であった。次に、この結晶を陽イオン交換樹脂を用
いて複分解した。即ち、この精製塩(155mg、0.3
4mモル)を少量のメタノールに溶解させ、プロトン型
にした陽イオン交換樹脂アンバーライトIR-120B
(5ml、9.5mモル相当)に流して展開した。まず、
溶離液として蒸留水を用いて(−)−PPSを溶出させ、
その溶出が終わったのを確認した後、5%アンモニア水
溶液(約100ml)を溶離液に用いて溶出させると、D
−Trpが溶出した。この溶出液をエバポレータで溶媒留
去することにより、D−Trp(64mg、0.31mモ
ル)を得た。このメチルエステルをキラルパックADを
用いた高速液体クロマトグラフィーで光学純度の検定を
行ったところ、光学純度は77.5%e.e.であった。
【0041】実施例5-1 (S)−3−メチル−2−フ
ェニルブタンスルホン酸によるアミン化合物の光学分割 (S)−3−メチル−2−フェニルブタンスルホン酸(1
00mg、0.438mモル)をイソプロピルエーテル
(以下、IPEと略記する)(400μl)に溶解し、この
溶液に(±)−3−メチル−2−フェニルブチルアミン
(以下、PBAと略記する)(71.5mg、0.438m
モル)を室温で加え、4℃で約3時間撹拌した。析出し
た難溶性のジアステレオマー塩の結晶(69mg)を濾別
し、このジアステレオマー塩に1N水酸化ナトリウム
(1ml)を加え、撹拌し、n−ヘキサン(0.5ml)で
抽出した。溶媒を留去して、(R)-PBA(28.8m
g、0.176mモル)を得た。原料のラセミ体PBAの
半量を100%としたときの収率は80.5%であっ
た。また、以下のHPLC分析条件下で測定したときの
光学純度は73.7%e.e.であった。HPLC分析条件 カラム:クラウンパック(Crownpak)CR(+) [ダイセル
化学工業製] 溶離液:メタノール/0.1N過塩素酸水溶液=15/
85 検 出: 210nm 流 速: 0.8ml/分 カラム温度:40℃
【0042】分割剤として(S)−3−メチル−2−フェ
ニルブタンスルホン酸を、そして被分割アミンとしてP
BAおよび2−ナフチルエチルアミンを用い、反応溶媒
および分割剤当量を変化させて、上記と同様の操作によ
り光学分割を行った。この結果を表1に示す。
【表1】 被分割アミン 反応溶媒 分割剤当量 収率(%) 光学純度 (%e.e.) PBA IPE 0.5 42.0 70.1 2−ナフチル IPA 0.5 37.8 92.2 エチルアミン 1.0 100.4 75.4 IPE:ジイソプロピルエーテル 収率:被分割アミン(ラセミ体)の半量を100%として計算
【0043】実施例5-2 (−)−3−メチル−2−フ
ェニルブタンスルホン酸によるDL−トリプトファンの
光学分割 DL−Trp(1.021g、5.00mモル)をメタノール
(5ml)に懸濁させ、これに、(−)−3−メチル−2−
フェニルブタンスルホン酸(MPBSと略記する)(5.2
mモル)のメタノール溶液を全体が透明になるまで滴下
した。得られた透明茶褐色溶液から溶媒を除去し、中に
微細な結晶が混じった油状物質を得た。これにメタノー
ル(1ml)を加えて加熱溶解した後、室温に放置して結
晶化させ、(−)−MPBS・D−Trp塩の粗結晶(48
5mg、1.12mモル)を得た。ラセミ体の半量を10
0%とした収率は44.9%であり、融点は175〜1
80℃であった。この粗結晶をメタノール(3ml)から
再結晶させ、精製塩(207mg、0.48mモル)を得
た。ラセミ体の半量を100%とした収率は19.2%
であり、融点は219〜223℃であった。また、[α]
D 23=−26.4°(c1.1、メタノール)および[α]435
22=−59.6°(c1.1、メタノール)であった。次
に、この結晶(106mg、0.25mモル)を実施例4
と同様に陽イオン交換樹脂を用いて複分解し、D−Trp
(36mg、0.18mモル)を得た。そのメチルエステ
ルをキラルパックAD(ダイセル化学工業製)を用いた高
速液体クロマトグラフィーで光学純度の検定を行ったと
ころ、光学純度は68%e.e.であった。
【0044】実施例6-1 (S)−2−フェニルプロパ
ンスルホン酸による(±)−1−フェニル−2−(p−ト
リル)エチルアミンの光学選択的な分画 三角コルベに(±)−1−フェニル−2−(p−トリル)エ
チルアミン(565mg、2.67mモル)を秤量し、そ
れをメタノール(3ml)に溶解した。次いで、メタノー
ル(2ml)に溶解した(S)−2−フェニルプロパンスル
ホン酸(644mg、3.22mモル)の溶液を加え、加
熱して完全に溶解させた。この溶媒を完全に留去し、ジ
エチルエーテル(2ml)を加え、加熱して溶解した後、
一晩放置した。析出した結晶を吸引濾過により分離し、
難溶性の(S)−2−フェニルプロパンスルホン酸/(−)
−1−フェニル−2−(p−トリル)エチルアミンのジア
ステレオマー塩(148mg、0.36mモル)を得た。
ラセミ体の半量を100%としたときの収率は26.9
%であり、その融点は191〜196℃であった。ま
た、その旋光性は、[α]589 25=−71.5°(c1.0、
メタノール)および[α]435 32=−159.1°(c1.
0、メタノール)であった。このジアステレオマー塩を
酢酸エチル(15ml)に溶解させた後、再結晶させ、白
色の針状結晶(113mg、0.27mモル)を得た。ラ
セミ体の半量を100%としたときの収率は20.5%
であり、その融点は192〜196℃であった。また、
その旋光性は、[α]589 25=−71.5°(c1.0、メタ
ノール)および[α]435 32=−162.3°(c1.0、メ
タノール)であった。このジアステレオマー塩を複分解
し、(−)−1−フェニル−2−(p−トリル)エチルアミ
ン(54mg、0.26mモル)を得た。ラセミ体の半量
を100%としたときの収率は19.1%であった。得
られた(−)−1−フェニル−2−(p−トリル)エチルア
ミンをアセチル化した後、固定相にキラルセルOD-H
(ダイセル化学工業製)を用いる高速液体クロマトグラフ
ィー法で光学純度の分析を行った結果、その光学純度は
95.8%e.e.であった。ラセミ体の半量を100%
とした収率は26.9%であった。
【0045】実施例6-2 (−)−2−フェニル−1−
プロパンスルホン酸によるDL−トリプトファンの光学
分割 DL−Trp(1.018g、4.99mモル)をメタノール
(5ml)に懸濁させ、これに、(−)−2−フェニル−1
−プロパンスルホン酸(PPSと略記する)(5.2mモ
ル)のメタノール溶液を全体が透明になるまで滴下し
た。得られた透明茶褐色溶液から、エバポレータにより
溶媒を除去し、中に微細な結晶が混じった油状物質を得
た。これにメタノール(3ml)を加えて加熱溶解した
後、室温に放置することにより結晶化させ、これを濾過
し、(−)−PPS・D−Trp塩1水和物の粗結晶(74
7mg、1.76mモル)を得た。ラセミ体の半量を10
0%とした収率は70.4%であり、融点は176〜1
80℃であった。この粗結晶をメタノール(3ml)から
再結晶させることにより、精製塩の結晶(373mg、
0.88mモル)を得た。ラセミ体の半量を100%とし
た収率は35.2%であり、融点は215〜217℃で
あった。また、[α]D 27=−12.8°(c1.0、メタノ
ール)であった。また、この塩の分子式をC20262
61としたときの元素分析値は、計算値:C 56.86
%、H 6.20%、N6.63%に対し、実験値:C 5
6.81%、H 6.12%、N 6.45%であった。次
に、この精製塩(250mg、0.59mモル)の結晶を
実施例4と同様に陽イオン交換樹脂を用いて複分解し、
D−Trp(67mg、0.33mモル)を得た。その旋光
性は、[α]D 23=+14.5°(c0.11、水)および
[α]435 23=+31.8°(c0.11、水)であった。こ
のD−TrpのメチルエステルをキラルパックAD(ダイ
セル化学工業製)を用いた高速液体クロマトグラフィー
で光学純度の検定を行ったところ、光学純度は98%
e.e.であった。
【0046】
【発明の効果】以上のように、本発明の上記式(1)で示
されるエタンスルホン酸誘導体またはその塩の光学活性
体を用いて、ある種の塩基性有機化合物を効率的に光学
分割することができる。さらに、本発明の化合物は不整
脈用剤、動脈硬化治療剤などの医薬品またはその中間体
として、あるいは、農薬の原料として重要である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C07C 211/07 8828−4H C07C 211/07 211/08 8828−4H 211/08 211/27 8828−4H 211/27 211/29 8828−4H 211/29 211/30 8828−4H 211/30 211/31 8828−4H 211/31 303/02 7419−4H 303/02 C07D 209/20 C07D 209/20 // C07M 7:00 (72)発明者 松山 恵介 兵庫県神戸市西区室谷2丁目2番3号 長 瀬産業株式会社研究開発センター内 (72)発明者 豊田 和俊 兵庫県神戸市西区室谷2丁目2番3号 長 瀬産業株式会社研究開発センター内 (72)発明者 千種 康男 兵庫県神戸市西区室谷2丁目2番3号 長 瀬産業株式会社研究開発センター内

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 以下の式(1): 【化1】 [式中、R1は水素原子またはC1〜C8アルキル基を表
    し、 R2はC1〜C8アルキル基を表し、そして*は不斉炭素
    の位置を表す]で示されるエタンスルホン酸誘導体また
    はその塩。
  2. 【請求項2】 R1が水素原子またはC1〜C4アルキル
    基であり、R2がC1〜C4アルキル基である請求項1に
    記載のエタンスルホン酸誘導体またはその塩。
  3. 【請求項3】 光学活性な請求項1または2に記載のエ
    タンスルホン酸誘導体またはその塩。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載の式(1)で示されるエタ
    ンスルホン酸誘導体またはその塩の製造方法であって、
    以下の式(2): 【化2】 [式中、Xはハロゲン原子を表し、そしてR1、R2およ
    び*は式(1)の定義に同じである]で示されるハロゲン
    化エチル誘導体を適当な溶媒中で亜硫酸アルカリ金属塩
    と反応させてエタンスルホン酸誘導体のアルカリ金属塩
    を得、次いで、所望によりこのアルカリ金属塩を、イオ
    ン交換樹脂を用いるかまたは複分解させることによりス
    ルホン酸に変換することを特徴とする方法。
  5. 【請求項5】 R1が水素原子またはC1〜C4アルキル
    基であり、R2がC1〜C4アルキル基である式(2)のハ
    ロゲン化エチル誘導体を亜硫酸アルカリ金属塩と反応さ
    せる請求項4に記載の方法。
  6. 【請求項6】 光学活性な式(2)のハロゲン化エチル誘
    導体を亜硫酸アルカリ金属塩と反応させて、光学活性な
    式(1)のエタンスルホン酸誘導体またはその塩を製造す
    る請求項4または5に記載の方法。
  7. 【請求項7】 以下の式(3): 【化3】 [式中、R3は未置換アリール基、または1〜3個のC1
    〜C4アルキル基、C1〜C4アルコキシ基もしくはハロ
    ゲン原子で置換されたアリール基を表し、 R4はC1〜C4アルキル基、または1〜3個のC1〜C4
    アルキル基もしくはハロゲン原子で置換されていること
    もあるアリール基で置換されたC1〜C4アルキル基を表
    し、 Aは結合、-CH2-、または-CH2CH2-を表し、そし
    て*は不斉炭素の位置を表す]で示されるアミン化合物
    を光学分割する方法であって、請求項1に記載の式(1)
    で示されるエタンスルホン酸誘導体またはその塩の光学
    活性体を光学分割剤として用いて分割することを特徴と
    する方法。
  8. 【請求項8】 R3がフェニルもしくはナフチル基、ま
    たは1〜3個のC1〜C4アルキル基もしくはハロゲン原
    子で置換されたフェニルもしくはナフチル基であり、R
    4がC1〜C4アルキル基、または1〜3個のC1〜C4
    ルキル基もしくはハロゲン原子で置換されていることも
    あるフェニルもしくはナフチル基で置換されたC1〜C4
    アルキル基であり、Aが結合または-CH2-である式
    (3)のアミン化合物を光学分割する請求項7に記載の方
    法。
  9. 【請求項9】 R3がフェニルもしくはナフチル基、ま
    たは1個のC1〜C4アルキル基もしくはハロゲン原子で
    置換されたフェニルもしくはナフチル基であり、R4
    1〜C4アルキル基、または1個のC1〜C4アルキル基
    もしくはハロゲン原子で置換されていることもあるベン
    ジル基であるアミン化合物を光学分割する請求項8に記
    載の方法。
  10. 【請求項10】 請求項1に記載の式(1)で示されるエ
    タンスルホン酸誘導体またはその塩のスルホン酸基と塩
    を形成しうる少なくとも1個の窒素塩基性基をアミノ酸
    側鎖に有するα-アミノ酸を光学分割する方法であっ
    て、該エタンスルホン酸誘導体またはその塩の光学活性
    体を光学分割剤として用いて分割することを特徴とする
    方法。
  11. 【請求項11】 以下の式(4): 【化4】 [式中、R5は炭素原子が窒素原子で置換されていてもよ
    いC2〜C10アルキレン基もしくはアルケニレン基、ま
    たはC6〜C14アリーレン基を表し、 Bは結合、−CH2−、−CH=、または−N=を表
    し、そして*は不斉炭素の位置を表す]で示されるα-ア
    ミノ酸を光学分割する方法であって、請求項1に記載の
    式(1)で示されるエタンスルホン酸誘導体またはその塩
    の光学活性体を光学分割剤として用いて分割することを
    特徴とする方法。
  12. 【請求項12】 α-アミノ酸がDL-トリプトファンで
    ある請求項11に記載の方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006016361A (ja) * 2004-07-05 2006-01-19 Sangaku Renkei Kiko Kyushu:Kk アミノ化合物の光学分割剤および光学分割法
JP2007523954A (ja) * 2004-02-25 2007-08-23 ワイス アリール−及びヘテロアリール−アルキルスルホニルハライドの調製方法
JP2011513368A (ja) * 2008-03-05 2011-04-28 4エスツェー アクチェンゲゼルシャフト 鏡像異性的に純粋なインドロピリジンの調製方法

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