JP2002145837A - アミノ酸誘導体の光学異性体の分離方法 - Google Patents

アミノ酸誘導体の光学異性体の分離方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アミノ酸のアミノ基における水素原子の少な
くとも一つが、アルコキシカルボニル基、アラルキルオ
キシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アル
ケニルオキシカルボニル基、又はアシル基で置換された
アミノ酸誘導体であって、D型及びL型の光学異性体が
混在するアミノ酸誘導体から、効率よくD型光学異性体
とL型光学異性体を分離する方法を提供する。 【解決手段】 ラセミ体のN-(tert−ブトキシカルボニ
ル)−DL−アラニンのようなD型及びL型の光学異性
体が混在するアミノ酸誘導体と、βシクロデキストリン
のような前記2種類の光学異性体に対してそれぞれ異な
る親和性を有する親水性化合物とを水性溶液中で混合
し、次いで得られた水性溶液又は水性懸濁液を、pHが
3.5以下となる条件下、又はトリエチルアンモニウム
イオンのような前記アミノ酸誘導体の対イオンとなり得
る疎水性を有する原子団を含むイオンの共存下で表面が
疎水処理された固体等の疎水性物質と接触させて該水性
溶液又は水性懸濁液中に存在するD型アミノ酸誘導体と
L型アミノ酸誘導体とを分離する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はアミノ酸誘導体の光
学異性体の分離方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アミノ酸のアミノ基における水素原子が
tert−ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボ
ニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アリールオキ
シカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、又は
アシル基で置換・保護されたアミノ酸誘導体は、医薬品
または医薬中間体として重要な化合物である。これらア
ミノ酸誘導体においては光学異性体が存在することが多
く、これら光学異性体間ではその生理活性や毒性にしば
しば大きな差が有ることが広く知られている。そのた
め、このような分野で使用されるアミノ酸誘導体におい
ては、光学純度の高いものを製造することが非常に重要
である。
【0003】一般に、光学異性体の分離精製は、液体ク
ロマトグラフィーを用いて行なうことができ、多糖類、
アミノ酸誘導体などをシリカゲルに担持した光学異性体
分離用のカラムも種々開発されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ようなアミノ酸誘導体については、通常の液体クロマト
グラフィーでは分離が不可能であったり、あるいは分離
できても不完全な分離しかできなかったり、分離に非常
に長時間を要するといった問題がある。
【0005】なお、1986年発行のジャーナルオブク
ロマトグラフィー第357巻の409頁〜415頁{Jou
rnal of Chromatography,357(1986)409-415)}には、ア
ミノ酸誘導体の中でも特にダンシルアミノ酸について
は、β−シクロデキストリンを用いた高速液体クロマト
グラフィー(HPLC)により光学異性体の分離ができ
ることが記載されているが、該文献に記載されている分
離方法はβ−シクロデキストリンがナフタレン環を有す
る低分子化合物と複合体を作り易いという性質を利用し
たものであり、ナフタレン環を有しないアミノ酸誘導体
の光学異性体分離について該分離方法をそのまま適用す
ることはできない。例えば、上記文献には、分離因子
(セパレーションファクター)は、移動相のpHが高く
なるほど増大する傾向があり、pH6付近が最も好まし
い旨が説明されているが、このようなpH領域で前記の
様なアミノ酸誘導体の光学異性体の分離を行なっても分
離できない。また、アミノ酸誘導体にナフタレン環を導
入してから光学異性体を分離することも考えられるが、
この場合にはナフタレン環を導入する工程が必要なばか
りでなく、有用な光学純度の高いアミノ酸誘導体を得る
ためには分離後に元のアミノ酸誘導体に戻す工程が更に
必要となり、実用的ではない。
【0006】このようにアミノ酸のアミノ基における水
素原子がアルコキシカルボニル基等の特定の置換基で置
換されたアミノ酸誘導体について、光学異性体を効率よ
く分離する方法は知られていない。そこで、本発明はこ
のようなアミノ酸誘導体について光学異性体の分離を効
率良く行ない、延いては光学純度の高いアミノ酸誘導体
を製造する方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らはこの課題を
解決すべく、D型及びL型光学異性体を含む前記アミノ
酸誘導体を、各光学異性体に対してそれぞれ異なる親和
性を有する親水性化合物と共存させることにより両者に
疎水性の差を発現させれば、この差を利用して両者を分
離できるのではないかと考え、種々検討を行なった。そ
の結果、上記アミノ酸誘導体を上記親水性化合物と単に
共存さるだけでは十分な分離を行なうことはできなかっ
たが、両者の混合物を特定の条件下で疎水性物質と接触
させることによって光学異性体を分離することできるこ
とを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】即ち、第一の本発明は、アミノ酸のアミノ
基における水素原子の少なくとも一つが、アルコキシカ
ルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アリール
オキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、
又はアシル基で置換されたアミノ酸誘導体であって、D
型及びL型の光学異性体が混在するアミノ酸誘導体と、
前記2種類の光学異性体に対してそれぞれ異なる親和性
を有する親水性化合物とを水性溶液中で混合し、次いで
得られた水性溶液又は水性懸濁液を、pHが3.5以下
となる条件下、又は前記アミノ酸誘導体の対イオンとな
り得る疎水性を有する原子団を含むイオンの共存下で疎
水性物質と接触させて該水性溶液又は水性懸濁液中に存
在するD型アミノ酸誘導体とL型アミノ酸誘導体とを分
離することを特徴とする前記アミノ酸誘導体の光学異性
体の分離方法である。
【0009】また、第二の本発明は、アミノ酸のアミノ
基における水素原子の少なくとも一つが、アルコキシカ
ルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アリール
オキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、
又はアシル基で置換されたアミノ酸誘導体であって、D
型及びL型の光学異性体が混在するアミノ酸誘導体から
高純度のD型又はL型光学異性体を分離する分離工程を
含む光学純度の高い前記アミノ酸誘導体を製造する方法
であって、該分離工程において上記第一の本発明の分離
方法を用いることを特徴とする光学活性アミノ酸誘導体
の製造方法である。
【0010】また、第三の本発明は、前記第一の本発明
の分離方法で分離されたD型及びL型アミノ酸誘導体の
量をそれぞれ測定し、測定された各量に基づいて前記ア
ミノ酸誘導体の光学純度を決定することを特徴とする光
学純度分析方法であり、第四の本発明は、アミノ酸のア
ミノ基における水素原子の少なくとも一つが、アルコキ
シカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アリ
ールオキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル
基、又はアシル基で置換されたアミノ酸誘導体であっ
て、D型及びL型の光学異性体が混在するアミノ酸誘導
体から高純度のD型又はL型光学異性体を分離する分離
工程を含む光学純度の高い前記アミノ酸誘導体を製造す
る方法であって、該分離工程により分離された高純度の
D型又はL型光学異性体の純度を上記第三の本発明の光
学純度分析方法で確認することを特徴とする光学活性ア
ミノ酸誘導体の製造方法である。
【0011】上記第一の本発明の分離法方によれば、ア
ミノ酸のアミノ基における水素原子の少なくとも一つが
特定の置換基で置換されたアミノ酸誘導体についてD型
とL型の光学異性体を効率よく分離することができる。
また、該分離方法は上記第二〜第四の本発明に見られる
ように、光学活性アミノ酸誘導体の製造方法や、アミノ
酸誘導体の光学純度分析方法に応用することができる。
【0012】本発明は、理論に拘束されるものではない
が、本発明の分離方法においては次のような機構により
光学異性体の分離が可能になったものと思われる。即
ち、D型及びL型の光学異性体を含むアミノ酸誘導体が
前記のような作用を有する親水性化合物と水性溶液中で
共存すると、該親水性化合物に対して強い親和性を有す
る光学異性体は何らかの形で相互作用を起こしてもう一
方の光学異性体よりも親水性の高い複合体となるが、こ
れらを疎水性物質接触させたとしても両者の該疎水性物
質に対する親和性(例えば吸着力)の差が十分ではない
ため両者を分離することはできない。一方、水性溶液の
pHを3.5以下にしたときには、アミノ酸誘導体のカ
ルボキシル基が解離しなくなるため、相対的に疎水性が
高くなっている光学異性体(すなわち親水性化合物と複
合体を形成していないか若しくは上記複合体より不安定
な複合体を形成していると思われる光学異性体)の疎水
性が更に高まるのに対し、上記複合体においては親水性
化合物の効果が大きくその親水性はあまり変わらないた
め、両者の疎水性物質へ対する平衡分配率が変化し、結
果として光学異性体を効率良く分離することが可能にな
ったものと思われる。また、疎水性を有する原子団を含
むイオンを含有させた場合には、相対的に疎水性が高く
なっている光学異性体のカルボキシル基が解離したとし
ても該イオンとイオン対を形成するために疎水性は高ま
るのに対し、より安定な複合体の光学異性体はその近傍
の親水性化合物の存在によりこのようなイオン対を形成
できず、或いは、対イオンの効果が弱められて上記と同
様に疎水性物質への平衡分配率が変化し、光学異性体の
分離が可能になったものと思われる。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の分離方法では、アミノ酸
のアミノ基における水素原子の少なくとも一つが、アル
コキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、
アリールオキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボ
ニル基、又はアシル基で置換されたアミノ酸誘導体(以
下、本アミノ酸誘導体ともいう。)であって、D型及び
L型の光学異性体(以下、単にそれぞれD体及びL体と
もいう。)が混在するアミノ酸誘導体からD体又はL体
を分離する。
【0014】上記本アミノ酸誘導体はアミノ酸のアミノ
基における水素原子の少なくとも一つが、アルコキシカ
ルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アリール
オキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、
又はアシル基で置換され、アミノ酸のカルボキシル基が
残存しており、且つD型とL型の光学異性体が存在し得
るアミノ酸誘導体であれば特に限定されない。なお、本
発明の分離方法は、不整炭素を2以上有するアミノ酸誘
導体の光学異性体の分離についても適用可能であるが、
分離効果の高さの観点から、2種類の光学異性体を有す
る不整炭素を1つ有するアミノ酸誘導体を用いるのが好
適である。
【0015】本アミノ酸誘導体において、そのアミノ基
の水素原子の少なくとも一つが上記置換基で置換される
アミノ酸(以下、基本アミノ酸ともいう。)としては、
公知のアミノ酸が制限なく使用できる。基本アミノ酸と
して好適なアミノ酸を例示すれば、アラニン、プロリ
ン、ロイシン、イソロイシン、バリン、トリプトファ
ン、フェニルアラニン、チロシン、セリン、メチオニ
ン、グルタミン、グルタミン酸、リジン等が挙げられ
る。
【0016】また、上記基本アミノ酸のアミノ基の置換
基となるアルコキシカルボニル基等は、特に限定されな
いが、分離性およびアミノ酸誘導体自身の有用性の観点
から、それぞれ次のような基であるのが好適である。す
なわち、アルコキシカルボニル基は、メトキシカルボニ
ル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニ
ル基、イソプロポキシカルボニル基、tert−ブトキ
シカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert
−アミルオキシカルボニル基等の炭素数2〜10の基で
あるのが好適である。また、アラルキルオキシカルボニ
ルは、ベンジルオキシカルボニル基、p−ニトロベンジ
ルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカ
ルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基等
の炭素数8〜15の基であるのが好適であり、アリール
オキシカルボニル基は、フェニルオキシカルボニル基、
m−ニトロフェニルオキシカルボニル基、p−メチルフ
ェニルオキシカルボニル基、m−メチルフェニルオキシ
カルボニル基、2,4−ジメチルフェニルオキシカルボ
ニル基、2,4,6−トリメチルフェニルオキシカルボ
ニル基等の炭素数7〜10の基であるのが好適であり、
アルケニルオキシカルボニル基は、1−ブテンオキシカ
ルボニル基、2−ブテンオキシカルボニル基等の炭素数
4〜10の基であるのが好適であり、更にアシル基は、
ホルミル基、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル
基、ベンゾイル基等の炭素数1〜7の基であるのが好適
である。
【0017】これらの置換基の中でも特に高い分離が期
待されることから、メトキシカルボニル基、エトキシカ
ルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ter
t−アミルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボ
ニル基、フェニルオキシカルボニル基、ホルミル基、ア
セチル基、プロパノイル基、又はベンゾイル基が特に好
ましい。
【0018】本発明の分離方法において好適に用いられ
る本アミノ酸誘導体を具体的に示せば、N−(tert
−ブトキシカルボニル)−アラニン、N−(tert−
ブトキシカルボニル)−プロリン、N−(tert−ブ
トキシカルボニル)−ロイシン、N−(tert−ブト
キシカルボニル)−イソロイシン、N−(tert−ブ
トキシカルボニル)−バリン、N−(tert−ブトキ
シカルボニル)−トリプトファン、N−(tert−ブ
トキシカルボニル)−フェニルアラニン、N−(ter
t−ブトキシカルボニル)−セリン、N−(tert−
ブトキシカルボニル)−メチオニン、N−(tert−
ブトキシカルボニル)−グルタミン、N−(tert−
ブトキシカルボニル)−グルタミン酸、N−(tert
−ブトキシカルボニル)−リジン、N−(tert−ブ
トキシカルボニル)−チロシン等のアルコキシカルボニ
ル基で置換されたアミノ酸誘導体;N−ベンジルオキシ
カルボニル−アラニン、N−ベンジルオキシカルボニル
−プロリン、N−ベンジルオキシカルボニル−ロイシ
ン、N−ベンジルオキシカルボニル−イソロイシン、N
−ベンジルオキシカルボニル−バリン、N−ベンジルオ
キシカルボニル−トリプトファン、N−ベンジルオキシ
カルボニル−フェニルアラニン、N−ベンジルオキシカ
ルボニル−セリン、N−ベンジルオキシカルボニル−メ
チオニン、N−ベンジルオキシカルボニル−グルタミ
ン、N−ベンジルオキシカルボニル−グルタミン酸、N
−ベンジルオキシカルボニル−リジン等のアラルキルカ
ルボニル基で置換されたアミノ酸誘導体;N−フェニル
オキシカルボニル−アラニン、N−フェニルオキシカル
ボニル−プロリン、N−フェニルオキシカルボニル−ロ
イシン、N−フェニルオキシカルボニル−イソロイシ
ン、N−フェニルオキシカルボニル−バリン、N−フェ
ニルオキシカルボニル−トリプトファン、N−フェニル
オキシカルボニル−フェニルアラニン、N−フェニルオ
キシカルボニル−セリン、N−フェニルオキシカルボニ
ル−メチオニン、N−フェニルオキシカルボニル−グル
タミン、N−フェニルオキシカルボニル−グルタミン
酸、N−フェニルオキシカルボニル−リジン等のアリー
ルオキシカルボニル基で置換されたアミノ酸誘導体、N
−ベンゾイル−アラニン、N−ベンゾイル−プロリン、
N−ベンゾイル−ロイシン、N−ベンゾイル−イソロイ
シン、N−ベンゾイル−バリン、N−ベンゾイル−トリ
プトファン、N−ベンゾイル−フェニルアラニン、N−
ベンゾイル−セリン、N−ベンゾイル−メチオニン、N
−ベンゾイル−グルタミン、N−ベンゾイル−グルタミ
ン酸、N−ベンゾイル−リジン等のアシル基で置換され
たアミノ酸誘導体等が挙げられる。これらの中でも分子
中における不整炭素数が1個であるものが特に好適に用
いられる。
【0019】本発明の分離方法においては本アミノ酸誘
導体についてD体とL体の分離を行なうため、本発明の
分離方法で分離対象として用いる本アミノ酸誘導体(未
分離アミノ酸誘導体ともいう。)においてはD体及びL
体が混在する。未分離アミノ酸誘導体におけるD体又は
L体の含有割合は特に限定されないが、一般的な合成方
法によって得られる本アミノ酸誘導体のD体又はL体の
光学純度は、通常90〜99.9%であることから、こ
のような光学純度の本アミノ酸誘導体を使用するのが好
適である。
【0020】上記の様な未分離アミノ酸誘導体は、例え
ば、基本アミノ酸(該基本アミノ酸に光学異性体が存在
する場合にはラセミ体を)を出発原料として塩基の存在
下、ジ−tert−ブチルカーボネートやクロロギ酸エ
ステルまたはアシルクロライド等と反応させることによ
り得ることができる。通常、このような有機化学的合成
反応を用いて本アミノ酸誘導体を合成した場合には、光
学純度の高い本アミノ酸を得ることは困難であり、ラセ
ミ体或いは光学純度80〜99%のものが得られる。
【0021】本発明の分離方法においては、未分離アミ
ノ酸誘導体と、該未分離アミノ酸誘導体に含まれるD体
及びL体に対してそれぞれ異なる親和性を有する親水性
化合物(以下、キラルセレクタともいう。)とを水性溶
液中で混合し、次いで得られた水性溶液又は水性懸濁液
を、pHが3.5以下となる条件下、又は前記アミノ酸
誘導体の対イオンとなり得る疎水性を有する原子団を含
むイオンの共存下で疎水性物質と接触させて該水性溶液
又は水性懸濁液中に存在するD型アミノ酸誘導体とL型
アミノ酸誘導体とを分離する。
【0022】キラルセレクタとしては、D体及びL体に
対してそれぞれ異なる親和性を有する親水性化合物であ
れば公知の化合物が特に限定なく使用できる。一般に光
学活性な化合物及び内部にキラルな裂講や空間を有する
ホスト化合物(内部に他の化合物やイオン等を包摂して
包摂化合物を形成し得る化合物)は、D型異性体とL型
異性体とに対する親和性が異なるので、このような化合
物の中で親水性のものが、本発明におけるキラルセレク
タとして好適に使用することができる。なお、ここで親
水性とは、水に対して僅かでも溶解性を有することを意
味する。キラルセレクタが疎水性の場合は、D体とL体
の分離を効率よく行なうことができない。
【0023】本発明でキラルセレクタとして使用できる
化合物としては、多糖類及びその誘導体、並びにアミノ
酸の天然光学活性化合物及びその誘導体が挙げられ、こ
れら化合物を具体的に例示すれば次のような化合物が挙
げられる。
【0024】即ち、多糖類としては、α―シクロデキス
トリン、β―シクロデキストリン、γ―シクロデキスト
リン等が例示される。また、多糖類誘導体としては、ヘ
プタキス(2、6−O−ジメチル)−β―シクロデキス
トリン、ヘプタキス(2、3、6−O−トリメチル)−
β―シクロデキストリン、ヘプタキス(2、6−O−ヒ
ドロキシプロピル)−β―シクロデキストリン、ヘプタ
キス(2、3、6−O−ヒドロキシプロピル)―β―シ
クロデキストリン、ヘプタキス(2、6−O−メチルー
3−O−アセチル)−β―シクロデキストリン、ヘキサ
キス(2、6−O−ジメチル)−β―シクロデキストリ
ン、ヘキサキス(2、3、6−O−トリメチル)−β―
シクロデキストリン、ヘキサキス(2、6−O−ヒドロ
キシプロピル)−β―シクロデキストリン、ヘキサキス
(2、3、6−O−ヒドロキシプロピル)―β―シクロ
デキストリン、ヘキサキス(2、6−O−メチルー3−
O−アセチル)−β―シクロデキストリン、オクタキス
(2、6−O−ジメチル)−β―シクロデキストリン、
オクタキス(2、3、6−O−トリメチル)−β―シク
ロデキストリン、オクタキス(2、6−O−ヒドロキシ
プロピル)−β―シクロデキストリン、オクタキス
(2、3、6−O−ヒドロキシプロピル)―β―シクロ
デキストリン、オクタキス(2、6−O−メチルー3−
O−アセチル)−β―シクロデキストリン等のシクロデ
キストリン誘導体が例示される。また、アミノ酸の天然
光学活性化合物としては、フェニルアラニン、トリプト
ファン、ロイシン等が、さらにこれらの誘導体としては
N−(tert−ブトキシカルボニル)−L−トリプト
ファン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−D−
トリプトファン、N−(tert−ブトキシカルボニ
ル)−L−フェニルアラニン、N−(tert−ブトキ
シカルボニル)−D−フェニルアラニン、N−(ter
t−ブトキシカルボニル)−L−ロイシン、N−(te
rt−ブトキシカルボニル)−D−ロイシン等が例示さ
れる。なお、これら化合物は単独で用いても2種類以上
を併用してもかまわない。
【0025】本発明においては、上記キラルセレクタの
中でも分離能が高いことから、各種シクロデキストリン
又はその誘導体を用いるのが好適である。また、シクロ
デキストリン誘導体としては、入手の容易さ、水に対す
る溶解度、分離能の点から、シクロデキストリンの水酸
基あるいは水素原子の一部がヒドロキシエチル基、ヒド
ロキシプロピル基、トリフルオロアセチル基、アセチル
基で置換されたシクロデキストリンを用いるのが好適で
ある。
【0026】本発明で使用するキラルセレクタの量は、
該キラルセレクタが親和性を有するD体若しくはL体の
量に対して十分な量となるように、使用する未分離アミ
ノ酸誘導体の量及びその光学純度等に応じて適宜決定す
ればよいが、十分な分離効果が得られ、且つ過剰使用お
よび粘度上昇による操作性低下を防止するという観点か
ら、水性溶液中の濃度で1mM〜100mMの範囲で使
用するのが好適である。
【0027】本発明の分離方法においては、キラルセレ
クタと、未分離アミノ酸誘導体中のD体あるいはL体と
の接触を良くし、高い分離効果を得るために、未分離ア
ミノ酸誘導体と上記キラルセレクタとは、水性溶液中で
混合される。ここで、水性溶液とは水を含有する溶液、
即ち、水、又は水及び水に対して溶解性を有する有機化
合物の混合溶液を意味するが、未分離アミノ酸誘導体中
のD体又はL体とキラルセレクタとの相互作用を効率よ
く起こし、高い分離効果を得るためには、水と有機化合
物との混合溶液を用いるのが好適である。この時用いる
有機化合物は、水に対して混和性を有するものであれば
特に限定されず、アセトニトリル等のニトリル化合物;
メタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコ
ール、エタノール、ブチルアルコール、tert−ブチルア
ルコール、オクタノール等の脂肪族アルコール;フェノ
ール等の芳香族アルコール;エチレングリコール、グリ
セロール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコ
ールなどの水溶性高分子などが挙げられる。これらの中
でも、光学異性体分離後の除去の容易さの点から、沸点
の低いアセトニトリル、メタノール、イソプロピルアル
コール、エタノール等が好適に使用される。有機化合物
との使用量は特に限定されないが、水と該有機化合物の
合計質量を基準として0.01〜50質量%、特に有
0.1〜25質量%となる量であるのが好適である。
【0028】水性溶液中で未分離アミノ酸誘導体とキラ
ルセレクタとを混合させる方法は、特に限定されず、そ
れぞれ所定量の未分離アミノ酸誘導体及びキラルセレク
タを計りとり、水性溶液に同時にあるいは順次添加し、
攪拌混合すればよい。このとき未分離アミノ酸誘導体と
キラルセレクタとの量比は、キラルセレクタのモル数が
少なくとも未分離アミノ酸誘導体中のキラルセレクタに
対する親和性の高い光学異性体のモル数より多くなる量
であれば特に限定されないが、分離効果の高さの点か
ら、未分離アミノ酸誘導体(即ちD体とL体の合計)モ
ル数に対するキラルセレクタのモル数の比{キラルセレ
クタモル数/(D体モル数+L体モル数)}が1000
〜1、特に100〜5とするのが好適である。
【0029】本発明の分離方法では、上記のようにして
調製された未分離アミノ酸誘導体及びキラルセレクタを
含む水性溶液又は水性懸濁液を、そのpHが3.5以
下となる条件下、又は使用する本アミノ酸誘導体の対
イオンとなり得る“疎水性を有する原子団を含むイオ
ン”(以下、疎水性対イオンとも言う。)の共存下で疎
水性物質と接触させる必要がある。上記又はの条件
を満足しないで疎水性物質と接触させた場合には、D体
とL体との疎水性に有効な差が生じないためと思われる
が、良好な分離効果が得られない。
【0030】上記の条件を満足させるためには、pH
調整剤を用いて水性溶液又は水性懸濁液のpHが3.5
以下となるように調整すればよい。この時使用できるp
H調整剤は、水性溶液のpHを3.5以下に調整できる
ものであれば特に限定されず、リン酸、硫酸、塩酸等の
鉱酸類;及びギ酸、酢酸、乳酸、プロピオン酸、クエン
酸、マレイン酸、マロン酸などの有機酸類が制限なく使
用できる。これらpH調整剤の濃度は特に制限されない
が、一般的には1〜100mM、好適には1〜30mM
の範囲で使用される。また、分離効果の高さから、水性
溶液又は水性懸濁液のpHは、1〜3、特に1.4〜
2.5とするのが好適である。なお、pH調節は疎水性
物質と接触させる前に行われていればよく、未分離アミ
ノ酸とキラルセレクタとの混合前に行なってもよい。
【0031】また、前記の条件下で疎水性物質との接
触を行なう場合に共存させる疎水性対イオンは、本アミ
ノ酸誘導体中のカルボキシル基等のイオン化し得る部位
が水性溶液中でイオン化した際に、その反対の電荷を有
するイオンとして存在し、イオンペアを形成するもので
あれば特に限定されない。上記疎水性対イオンが有する
“疎水性を有する原子団”とは、メチル基、エチル基、
プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブ
チル基、オクチル基、ドデシル基、オクタデシル基など
のアルキル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール
基等の疎水性を増大させる作用を有する原子団を意味す
る。なお、これら原子団は、全体として疎水性を有して
いればよく、その一部にヒドロキシル基、ニトロ基等の
官能基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子
を有していてもよい。
【0032】疎水性対イオンは、水性溶液中でイオン化
し、カチオンあるいはアニオンを形成する化合物(以
下、疎水性対イオン形成化合物ともいう。)の形で水性
溶液に添加して使用される。このような化合物として
は、上記の疎水性を有する原子団を有するアミン化合
物、アンモニウム化合物、ホウ素化合物、リン化合物、
スルホン酸化合物などが使用できる。なお、アミン化合
物は中性であるため、水性溶液中で水素イオンを付加さ
せてカチオンとして存在させる必要がある。そのために
は水性溶液のpHを使用するアミン化合物のpKa以下
にして使用する。
【0033】本発明で使用できる疎水性対イオンを与え
る化合物を例示すれば、アミン化合物としては、トリメ
チルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリ
エタノールアミン、トリイソプロピルアミン、ジイソプ
ロピルメチルエタノールアミン、トリブチルアミン、ジ
ブチルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ジオク
チルアミン、トリオクチルアミン、ジフェニルアミン、
トリフェニルアミン等が挙げられる。
【0034】また、アンモニウム化合物としては、これ
らアミン化合物の塩酸塩、臭素酸塩、水酸化塩等のアン
モニウム塩の他、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化
テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニ
ウム、臭化テトラエチルアンモニウム、リン酸テトラブ
チルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭
化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアン
モニウム等が挙げられる。
【0035】また、ホウ素化合物としては、テトラフェ
ニルホウ素ナトリウム、テトラ(クロロフェニル)ホウ
素ナトリウムなどのイオン性ホウ素化合物等が;リン化
合物としては、塩化テトラフェニルフォスフィン、塩化
テトラオクチルフォスフィン等が;さらにスルホン酸化
合物としては、トルエンスルホン酸、オクチルスルホン
酸、ドデシルスルホン酸等が挙げられる。
【0036】これら化合物の中でも水性溶液に対する溶
解度の点からトリエチルアミン、トリエタノールアミ
ン、トリブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルア
ミン、テトラブチルアミン、テトラアミルアミン、ドデ
シルスルホン酸等が好適に使用される。
【0037】前記疎水性対イオンの使用量は、未分離ア
ミノ酸誘導体中に存在するD体又はL体のうちキラルセ
レクタとの親和性が低いものに対して十分な量であれば
特に限定されず、用いる未分離アミノ酸誘導体の種類及
び量、キラルセレクタの種類等に応じて分離効果の観点
から最適な量を適宜決定すればよいが、通常は、水性溶
液又は水性懸濁液中の濃度で表して0.01mM〜50
mM、特に0.1mM〜30mMの範囲となる量使用す
るのが好適である。
【0038】また、上記疎水性対イオンを含有する水性
溶液のpHは、分離対象となる本アミノ酸誘導体がイオ
ン化し、疎水性対イオンとイオンペアを形成することが
できるpH領域であれば特に制限されないが、一般的に
は、緩衝液のpH調整の容易さや、使用後の廃液処理の
容易さを勘案してpH=4〜8の範囲、特にpH=4〜
7の範囲とするのが好適である。なお、このようなpH
に調整するためには、前記した無機酸及び有機酸の他
に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシ
ウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム
などのアルカリ性塩類、リン酸水素ナトリウム、リン酸
2水素カリウム等の塩類、トリス(ヒドロキシメチル)
アミノメタン、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピ
ペラジンエタンスルホン酸、モルホリンプロパンスルホ
ン酸などのpH緩衝液用有機化合物などが使用できる。
【0039】疎水性対イオンを与える化合物の添加及び
必要に応じて行なうpH調節は、疎水性物質と接触させ
る前に行われていればよく、未分離アミノ酸とキラルセ
レクタとの混合前に行なってもよい。
【0040】また、疎水性物質と接触される前記水性溶
液又は水性懸濁液には、任意成分として、イオン強度を
調整するための塩類、或いは本発明の分離方法を光学純
度分析方法に適用する際にD体及びL体の検出を容易に
するための“紫外領域、可視領域に吸収スペクトルを有
する化合物”等を添加することもできる。このとき、塩
類としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カル
シウムなどが使用でき、“紫外領域、可視領域に吸収ス
ペクトルを有する化合物”としてはトルエンスルホン
酸、トルエンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン
酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、フル
オレセイン、フェノールフタレイン、ニールブルー、エ
オシン、クマリンなどの芳香族を有する有機化合物等が
使用できる。
【0041】本発明の分離方法においては、“未分離ア
ミノ酸誘導体及びキラルセレクタを含む水性溶液又は水
性懸濁液”を前記又はの条件を満足するような条件
下で疎水性物質接触させ、該疎水性物質に対する親和性
の差を利用してD体とL体を分離する。
【0042】ここで使用する疎水性物質とは、前記水性
溶液よりも疎水性が高く、これと容易に分離できる物質
であれば特に制限無く液体または固体の疎水性物質が使
用される。例えば、液体の疎水性物質としては、クロロ
ホルム、ジクロロメタン、ヘキサン、オクタノール等の
水に不溶若しくは難溶の有機溶媒を使用することができ
る。また、固体の疎水性物質としては疎水的表面を有す
る固体であれば特に制限無く使用することができる。こ
のような物質を例示すれば、シリカ、チタニア等の無機
微粒子の表面に、オクタデシル基、オクチル基、ブチル
基、メチル基、フェニル基、シアノプロピル基等の炭素
数1以上の疎水性基を有する化合物を結合させた固体;
シリカ、チタニア等の無機微粒子の表面にポリスチレ
ン、シリコーン、ポリメタクリル酸メチル等の疎水性ポ
リマーを吸着あるいは結合させた固体;ポリスチレン、
ポリメタクリル酸メチル等の疎水性を有する高分子の微
粒子固体;ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル等の
高分子の微粒子表面にオクタデシル基、オクチル基、ブ
チル基、メチル基、フェニル基、シアノプロピル基等の
炭素数1以上の疎水性基を有する化合物を結合させた固
体などをあげることができる。さらにこれらの固体の表
面に疎水性を調整するために、スルホニル基、アミノ
基、アンモニウム基等のイオン交換基を有する化合物を
結合させて用いることもできる。また、固体の疎水性物
質を用いる場合には、表面積が大きいほど一度に分離で
きる本アミノ酸誘導体の量が大くなるため、疎水的表面
を有する固体の微粒子を用いることが好ましい。
【0043】本発明の分離方法において“未分離アミノ
酸誘導体及びキラルセレクタを含む水性溶液又は水性懸
濁液”と疎水性物質とを接触させ、D体とL体を分離す
る方法は特に限定されず、次のような方法により好適に
行なうことができる。
【0044】即ち、固体の疎水性物質を中空管に充填
し、クロマトグラフフィーの分離カラムとして用いるこ
とにより、光学異性体の分離を行うことができる。この
場合には、移動相としてキラルセレクタを含み前記又
はの条件を満足する水性溶液を分離カラムに流し、分
離カラムの上流に未分離アミノ酸誘導体を注入し液体ク
ロマトグラフィーを行えばよい。カラム内の水性溶液中
で未分離アミノ酸誘導体とキラルセレクタとが混合され
ると共に、カラム内の充填物である疎水性物質と接触
し、一定時間の経過の後に分離カラムの下流から各光学
異性体が分離された状態(換言すれば異なる保持時間
で)で流出する。流出する移動相を特定の波長での紫外
吸収、電気電導度、屈折率等を経時的に観測し、クロマ
トグラフを得ることができ、該クロマトグラフよりD体
又はL体の流出を検出し、これを分取することにより光
学純度が向上した本発明のアミノ酸誘導体を得ることが
できる。該液体クロマトグラフィーによる方法は、操作
が簡便であり、且つ分離性能が高いため、本発明の分離
方法として特に好適な態様であると言える。
【0045】また、予め未分アミノ酸誘導体及びキラル
セレクタを水性溶液中で混合し、次いで前記又はの
条件を満足するように調製した水性溶液又は水性懸濁液
(以下、このように調製された水性溶液又は水性懸濁液
を単に調製済水性溶液ともいう。)を疎水性物質接触さ
せることによってもD体とL体とを分離することができ
る。
【0046】例えば、疎水性物質として液体を用いる場
合には、調製済水性溶液と疎水性物質を容器に導入し、
攪拌機を用い或いは容器が分液ロートのように密閉でき
る構造である場合にはも容器を激しく振とうする等して
攪拌し、その後静置して液を2層分離させ、2層の液を
別々に回収することにより行なうことができる。この場
合には、疎水性層には疎水性の強い光学異性体(若しく
はその複合体)が多く、また水性溶液層には親水性の強
い光学異性体(若しくはその複合体)が多くなるように
用いたキラルセレクタの特性に応じた比率で分配され、
各層においてD体又はL体が濃縮される。この濃縮によ
り十分な光学純度のD体又はL体が得られない場合は、
上記操作で分離回収された一方の層について減圧留去等
により液体を除去し、その後に再び同様の分離操作を繰
り返すことにより、光学純度の高いD体又はL体を得る
ことができる。
【0047】また、疎水性物質として固体を用いる場合
には、調製済水性溶液に固体の疎水性物質を投入して攪
拌することにより接触させ、一定時間経過後に濾過によ
り固体の疎水性物質を取り除き、液体成分を回収するこ
とにより行なうことができる。この場合には、疎水性の
強い光学異性体(若しくはその複合体)は固体疎水性物
質に多く吸着されるため、濾液には親水性の強い光学異
性体(若しくはその複合体)が多くなる。1回の操作で
十分な分離が行なえない場合は、前記と同様に濾液につ
いて減圧留去等により液体を除去し、その後に再び同様
の分離操作を繰り返すことにより、光学純度の高いD体
又はL体を得ることができる。なお、固体疎水性物質に
吸着した光学異性体についても疎水性有機溶媒で洗浄
し、洗浄液を回収し、回収された液から溶媒を除去する
ことによりもう一方の光学異性体を回収することも勿論
可能である。この場合にも操作を繰り返すことにより高
純度化を図ることができる。
【0048】上記の様な本発明の分離方法で分離された
光学異性体は、一般に夾雑物(分離に用いたキラルセレ
クタや各種塩類等)を含む溶液又は懸濁液の形で得られ
ることが多いが、これら溶液等から光学純度の向上した
アミノ酸誘導体を単離することも勿論可能である。この
ような単離方法としては、種々の方法を用いることがで
きるが、一例をあげれば、減圧留去により液体成分を除
去し、その後、アミノ酸誘導体は溶解するが他の夾雑物
は溶解しない溶媒を添加してアミノ酸誘導体のみを溶解
させ、ろ過等により分離した後、溶媒を除去する方法が
挙げられる。
【0049】本発明の分離方法によれば、D体とL体が
混在する本アミノ酸誘導体から、D体とL体容とを容易
に分離することができる。したがって、該分離方法は、
前記したような化学合成的方法、或いは酵素や微生物を
用いた反応により、ラセミ体又は光学活性な基本アミノ
酸から未分離アミノ酸誘導体(すなわち、D体とL体が
混在する本アミノ酸誘導体)を得て、該未分離アミノ酸
の光学分離を行ない高純度(高い光学純度)のD体又は
L体を製造する方法における光学分離工程として好適に
採用することができる。
【0050】また、本発明の分離法方によれば、未分離
アミノ酸誘導体に含まれるD体及びL体の量を定量する
こともできるので、光学純度が未知の未分離アミノ酸誘
導体の光学純度分析方法としても好適に採用することが
できる。特に本発明の分離方法の中でも前記した液体ク
ロマトグラフィーによる方法は、簡便で分離性能が高い
ばかりでなく、D体及びL体を単離しなくても検量線等
を用いることによりそれぞれの量を高精度で求めること
ができるので、優れた光学純度分析方法(光学純度測定
方法)になる。
【0051】さらに、上記の光学純度分析方法は、上記
の様な優れた特徴を有するため、例えば、前記したよう
な方法により基本アミノ酸から未分離アミノ酸誘導体を
得て、該未分離アミノ酸の光学分離(光学分割)を行な
い高純度(高い光学純度)のD体又はL体を製造する方
法における工程管理の手法として好適に採用することが
できる。なお、この場合において、光学分離方法として
は、本発明の分離方法の他、光学異性体の結晶形を利用
して物理的に分離する方法、ジアステレオマーの分離を
原理とする方法{具体的には、安定なジアステレオマー
(分子錯体を含む)に転化し、ついで結晶分別、クロマ
トグラフィー、蒸留等の操作により分離する方法、キラ
ルな吸着剤やキラルな溶媒を用いて選択的に吸着、抽出
する方法等}、不斉変換法、不斉反応を利用する方法
等、公知の光学分割法が採用できることは勿論である。
【0052】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に
説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるもので
はない。
【0053】実施例1 キラルセレクタとしてβ−シクロデキストリン(東京化
成社製)11.35gを0.1%リン酸水溶液(容量
比)1Lに溶解してシクロデキストリン濃度が10m
M、pH2とした溶液に対して、アセトニトリル(和光
純薬工業社製)を10%(容量比)混合した水性溶液を
調製した。この溶液を移動相とし、疎水性物質としてシ
リカゲル粒子表面にオクタデシル基を化学結合した固定
相が充填された分離カラムInertsil ODS―
2(GLサイエンス社製)を用い、N-(tert−ブトキシ
カルボニル)−DL−アラニン{(D体/L体)モル比
=1/2}を該分離カラムに注入して高速液体クロマト
グラフィーを行なって、クロマトグラムを得た。
【0054】なお、本実施例で用いた高速液体クロマト
グラフィーの構成と条件は、以下の通りである。
【0055】ポンプ:Waters社製600E インジェクター:Waters社製U6K カラムオーブン:島津製作所社製CTO10A 検出器:Waters社製991J 移動相流速:1ml/min カラム温度:30℃ カラムサイズ:内径4.6mm、長さ250mm 検出波長: 210nm。
【0056】上記のようにして得られたクロマトグラム
に基づいて、分離能(Rs)で光学異性体分離の程度を
評価したところ、Rs=2.25であり、良好な分離が
行われていることが確認された。
【0057】なお、分離能(Rs)とは、この分離能R
sは2本のピークがどの位良く分離しているかを表すも
のであり、下記式で定義される値である。この値が大き
いほど2本のピークが良く分離していることを示し、R
sが0のときは2本のピークが全く分離されていないこ
とを示し、また、Rs>1のときは2本のピークは底辺
部分でも完全に分離した状態であることを示す。
【0058】Rs=2(tR2−tR1)/(W1+W2) 但し、上式中のtR1は、2種類の成分からなる化合物を
分離して得られたクロマトグラムにおけるピーク1の保
持時間を表し、tR2はピーク2の保持時間を表し、W1
はピーク1の底辺(時間長)を表し、W2はピーク2の
底辺(時間長)を表す。
【0059】実施例2 分離カラムをシリカゲル粒子表面にオクチル基を化学結
合した固定相が充填されたInertsil C8(G
Lサイエンス社製)に変える以外は実施例1と同様の方
法で、N-(tert−ブトキシカルボニル)−DL−アラニ
ン{(D体/L体)モル比=1/2}の分離を行ないその
程度を評価したところ、Rsは2.03であり良好な分
離を行うことができた。
【0060】実施例3 アセトニトリルの割合を15%(容量比)に変えて実施
例1と同様の方法でN-(tert−ブトキシカルボニル)−
DL−メチオニン{(D体/L体)モル比=1/2}の分
離を行ないその程度を評価したところ、Rsは1.46
であり良好な分離を行うことができた。
【0061】実施例4 分離カラムをシリカゲル表面にフェニル基を化学結合し
た固定相が充填されたInertsil PH(GLサ
イエンス社製)に、アセトニトリルの割合を15%(容
量比)に変えて、実施例1と同様にしてN-(tert−ブト
キシカルボニル)−DL−ロイシン{(D体/L体)モ
ル比=1/2}の分離を行ないその程度を評価したとこ
ろ、Rsは2.18であり、良好な分離を行うことがで
きた。
【0062】実施例5 キラルセレクタとしてβ―シクロデキストリンの水酸基
がヒドロキシプロピル化されたシクロデキストリンであ
るCAVASOL W7 HP(ワッカーケミカルズイー
ストアジア社製)43.2gを用い、0.1%リン酸溶
液(容量比)1Lに溶解してシクロデキストリン濃度を
30mMとした溶液に対して、アセトニトリル(和光純
薬工業社製)を20%(容量比)混合した溶液を移動相
とし、カラムはInertsil ODS−2(GLサ
イエンス社製)を用いて、N-(tert−ブトキシカルボニ
ル)−DL−フェニルアラニン{(D体/L体)モル比
=1/2}の高速液体クロマトグラフィーによる分離を
行なった。なお、装置は実施例1で用いたのと同じ装置
を用いたが、感度が良好であるため検出波長は254n
mを用いた。この時のRsは1.56であり、やはり良
好な分離を行うことができた。
【0063】実施例6 β−シクロデキストリン(東京化成社製)11.35g
を、10mMリン酸トリエチルアミン(東京化成社製)
溶液1Lに溶解してシクロデキストリン濃度を10mM
とした溶液に対して、アセトニトリル(和光純薬工業社
製)を15%(容量比)混合した溶液を移動相とし、カ
ラムはInertsil ODS−2(GLサイエンス
社製)を用いて、実施例5と同様にしてN-(tert−ブト
キシカルボニル)−DL−トリプトファン{(D体/L
体)モル比=1/2}の高速液体クロマトグラフィーに
よる分離を行なったところ、Rs=1.59であった。
【0064】実施例7 リン酸トリエチルアミンをリン酸テトラブチルアンモニ
ウム(GLサイエンス社製)に、アセトニトリルの割合
を10%(容量比)に変えて、さらに検出波長を210
nmに変えて、実施例6と同様にN-(tert−ブトキシカ
ルボニル)−DL−プロリン{(D体/L体)モル比=
1/2}の分離を行なったところ、Rs=1.91であ
った。
【0065】実施例8 キラルセレクタとしてのCAVASOL W7 HP(ワ
ッカーケミカルズイーストアジア社製)43.2gを、
10mMリン酸テトラブチルアンモニウム溶液(GLサ
イエンス社製)1Lに溶解してシクロデキストリン濃度
を30mMとした溶液に対して、アセトニトリル(和光
純薬工業社製)を15%(容量比)混合した溶液を移動
相とし、カラムとしてInertsil ODS−2
(GLサイエンス社製)を用いて、実施例1と同様にし
てN-(tert−ブトキシカルボニル)−DL−チロシン
{(D体/L体)モル比=1/2}の高速液体クロマトグ
ラフィーによる分離を行なった。但し、ピークの検出
は、検出波長210nmを用いて吸光度をモニターし
た。その結果、Rsは1.96であった。
【0066】実施例9 pH調整剤に10mMクエン酸ナトリウムを用いpHを
2.8とし、キラルセレクタにアミノ酸誘導体であるN
−(tert−ブトキシカルボニル)−L−トリプトフ
ァンを用い、分離対象をN−ベンジルオキシカルボニル
ーDL−ロイシン{(D体/L体)モル比=1/2}とし
て実施例1と同様に高速液体クロマトグラフィーを行っ
た。但し、ピークの検出は検出波長254nmを用いて
吸光度をモニターした。その結果はRs=0.34であ
り、分離を行うことができた。
【0067】実施例10 pH調整剤に10mMクエン酸ナトリウムを用いpH
3.4とし、キラルセレクタにアミノ酸誘導体であるベ
ンジルオキシカルボニルーL−アラニンを用い分離対象
をN−ベンゾイルーDL−バリン{(D体/L体)モル
比=1/2}として実施例1と同様にして高速液体クロ
マトグラフィー分析を行った。但し、ピークの検出は、
検出波長254nmを用いて吸光度をモニターした。そ
の結果、Rsは0.08であり分離を行うことができ
た。
【0068】実施例1〜10の結果を表1にまとめる。
【0069】
【表1】
【0070】実施例11 試料として予めD型50%、L型50%の比率で混合し
たN-(tert−ブトキシカルボニル)−DL−アラニンの
5%溶液50μlを用い、実施例1と同様にして分離
し、得られたクロマトピークの面積を算出した。その結
果、面積の比率はD型50%、L型50%となった。面
積の比率は混合した比率と同じであり、本発明の分離定
法を用いれば、簡便な操作で正しく光学純度を測定でき
ることが確認された。
【0071】また、各クロマトピークに相当するカラム
からの溶出液をそれぞれ分取した。先に溶出したクロマ
トピークの溶出液を溶出液1、後に溶出したクロマトピ
ークの溶出液を溶出液2とした。次いで、溶出液1、溶
出液2について以下の操作を行い、各溶出液に含まれる
アミノ酸誘導体の光学純度を測定した。
【0072】即ち、分液ロート中に、上記溶出液およ
び、上記溶出液とほぼ等体積のクロロホルムを加え、1
分間振とう後、10分間静置した。その後、クロロホル
ム層をナスフラスコに取り出し、減圧留去によりクロロ
ホルムを除き、白色固体を得た。次いで、該白色固体に
ジオキサン1mlを添加して上記白色固体を再溶解し、
不溶分を濾別除去した。濾液のジオキサン溶液に4N塩
化水素ジオキサン溶液0.1mlを加え混合して脱保護
(tert−ブトキシカルボニル基の水素原子への置
換)を行った後、12時間放置して生成したアミノ酸塩
酸塩を濾過して回収し、真空下で十分乾燥した後、10
mMリン酸緩衝液(pH7.0)0.1mlに溶解し
た。次いで、得られたリン酸緩衝液溶液10μlを、市
販のアミノ酸光学異性体分離用カラム(ダイセル化学工
業株式会社製CHIRALPAK WE)を用いて下記
条件で分離分析した。
【0073】分析条件: ポンプ:Waters社製600E インジェクター:Waters社製U6K カラムオーブン:島津製作所社製CTO10A 検出器:Waters社製991J 移動相組成:0.25mM 硫酸銅水溶液 移動相流速:0.6ml/min カラム温度:50℃ カラムサイズ:内径4.6mm、長さ250mm 検出波長: 210 nm。
【0074】その結果から溶出液1及び溶出液2からそ
れぞれ得られた前記白色固体は、それぞれ100%D型
のN−(tert−ブトキシカルボニル)−アラニン及
び100%L型のN−(tert−ブトキシカルボニ
ル)−アラニンであることが確認された。
【0075】比較例1 キラルセレクタであるβ―シクロデキストリンは移動相
に添加しない他は実施例1と同様にしてN-(tert−ブト
キシカルボニル)−DL−アラニンの分離を行ったがR
s=0となり、D型とL型はまったく分離されなかっ
た。
【0076】比較例2〜4 濃度10mMの酢酸ナトリウム緩衝液を用いて移動相の
pHを表2に示すように3.5よりも大きな値とする他
は実施例1と同様にしてN-(tert−ブトキシカルボニ
ル)−DL−アラニンの分離を行った。その結果を表2
中に示した。何れの場合もRs=0となり、D型とL型
はまったく分離されなかった。
【0077】
【表2】
【0078】比較例5 疎水性対イオンを生成する化合物であるトリエチルアミ
ンを添加しない移動相を用いる他は実施例5と同様にし
てN-(tert−ブトキシカルボニル)−DL−トリプトフ
ァンを分離分析した。その結果を表2中に示した。表2
に示されるようにRs=0となりD型とL型はまったく
分離できなかった。
【0079】比較例6 比較例5においてpHの調整剤としてリン酸緩衝液(リ
ン酸2水素カリウム、リン酸水素2ナトリウムを混合し
たもの)を加え、pHが実施例5と同じ7になるように
して分離を行なったが、やはりRs=0となりD型とL
型はまったく分離できなかった。
【0080】比較例7 市販の光学異性体分離用カラムであるスミキラルOA7
000(β―シクロデキストリンをシリカゲル微粒子表
面に固定化した担体を使用した分離カラム)を充填とし
て使用し、移動相として、アセトニトリル20%を含有
する20mMKH2PO4水溶液(pH2.5)を用
い、N-(tert−ブトキシカルボニル)−DL−フェニル
アラニン{(D体/L体)モル比=1/2}を注入して高
速液体クロマトグラフィーを行なった。なお、この時採
用した装置および条件は、以下の通りである。
【0081】ポンプ:Waters社製600E インジェクター:Waters社製U6K カラムオーブン:島津製作所社製CTO10A 検出器:waters社製991J 移動相流速:1ml/min カラム温度:30℃ カラムサイズ:内径4.6mm、長さ250mm 検出波長: 210nm 得られたクロマトグラムについて分離能を調べたところ
Rs=0であり、D体とL体はまったく分離されていな
かった。
【0082】実施例12 ラセミ体のN-(tert−ブトキシカルボニル)−DL−ア
ラニン{(D体/L体)モル比=1}を、キラルセレクタ
としてのβ−シクロデキストリンを10mM含みリン酸
を用いてpH2に調整された水性溶液10mlに100
mMの濃度となるよう溶解した。この水性溶液と、液体
の疎水性物質であるクロロホルム10mlとを50ml
分液ロートに入れ、3分間振とう後、静置した。その後
疎水性物質を5ml取り出し、減圧留去してクロロホル
ムを除去し、白色固体を得た。次いで得られた白色固体
をキラルセレクタとしてのβ−シクロデキストリンを1
0mM含みリン酸を用いてpH2に調整された水性溶液
10mlに100mMの濃度となるよう溶解し、該溶液
を上記と同様にしてクロロホルム10mlと接触させた
後に分離し、さらにクロロホルムを除去し、白色固体を
回収した。この白色固体について同様の分離操作を合計
分離操作回数が5回となるように更に繰り返して白色固
体を得た。最終的に得られた白色固体について、実施例
11における溶出液1から得た白色固体と同様にして脱
保護を行なった後に市販のアミノ酸光学異性体分離用カ
ラムを使用して液体クロマトグラフィーを行った。その
結果、該白色固体中の(D体/L体)モル比は0.53
であった。
【0083】
【発明の効果】本発明は、D体とL体が混在した特定の
置換基を有する本アミノ酸誘導体から、D体とL体とを
分離する、新しい方法を提供するものである。しかも、
従来の分離方法と比べると分離能が高く、例えば前記し
た液体クロマトグラフィーによる方法を採用することに
より、D体とL体とを完全且つ容易に分離することが可
能となる。
【0084】したがって、本発明の分離方法は、光学活
性の低い本アミノ酸誘導体から光学分割により光学純度
の高い本アミノ酸誘導体を製造する際の光学分割法とし
て好適に採用できるばかりでなく。光学純度の測定方法
としても好適に採用できる。さらに、従来の光学分割法
を採用して光学純度の高い本アミノ酸誘導体を製造する
際の工程管理にも応用できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07C 323/52 C07C 323/52 C07D 207/16 C07D 207/16 209/20 209/20 // C07B 57/00 350 C07B 57/00 350 370 370 C07M 7:00 C07M 7:00 Fターム(参考) 4C069 AA17 CC25 4C204 AB18 BB04 CB02 DB20 EB02 FB27 GB01 4H006 AA02 AC83 AD17 AD33 BB31 BB47 BC53 BJ50 BN10 BS10 BU32 BV72 RA06

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アミノ酸のアミノ基における水素原子の
    少なくとも一つが、アルコキシカルボニル基、アラルキ
    ルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、
    アルケニルオキシカルボニル基、又はアシル基で置換さ
    れたアミノ酸誘導体であって、D型及びL型の光学異性
    体が混在するアミノ酸誘導体と、前記2種類の光学異性
    体に対してそれぞれ異なる親和性を有する親水性化合物
    とを水性溶液中で混合し、次いで得られた水性溶液又は
    水性懸濁液を、pHが3.5以下となる条件下、又は前
    記アミノ酸誘導体の対イオンとなり得る疎水性を有する
    原子団を含むイオンの共存下で疎水性物質と接触させて
    該水性溶液又は水性懸濁液中に存在するD型アミノ酸誘
    導体とL型アミノ酸誘導体とを分離することを特徴とす
    る前記アミノ酸誘導体の光学異性体の分離方法。
  2. 【請求項2】 前記2種類の光学異性体に対してそれぞ
    れ異なる親和性を有する親水性化合物としてシクロデキ
    ストリン又はシクロデキストリン誘導体を用いることを
    特徴とする請求項1に記載の分離方法。
  3. 【請求項3】 アミノ酸のアミノ基における水素原子の
    少なくとも一つが、アルコキシカルボニル基、アラルキ
    ルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、
    アルケニルオキシカルボニル基、又はアシル基で置換さ
    れたアミノ酸誘導体であって、D型及びL型の光学異性
    体が混在するアミノ酸誘導体から高純度のD型又はL型
    光学異性体を分離する分離工程を含む光学純度の高い前
    記アミノ酸誘導体を製造する方法であって、該分離工程
    において請求項1又は請求項2に記載の分離方法を用い
    ることを特徴とする光学活性アミノ酸誘導体の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 請求項1又は請求項2に記載の方法で分
    離されたD型及びL型アミノ酸誘導体の量をそれぞれ測
    定し、測定された各量に基づいて前記アミノ酸誘導体の
    光学純度を決定することを特徴とする光学純度分析方
    法。
  5. 【請求項5】 アミノ酸のアミノ基における水素原子の
    少なくとも一つが、アルコキシカルボニル基、アラルキ
    ルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、
    アルケニルオキシカルボニル基、又はアシル基で置換さ
    れたアミノ酸誘導体であって、D型及びL型の光学異性
    体が混在するアミノ酸誘導体から高純度のD型又はL型
    光学異性体を分離する分離工程を含む光学純度の高い前
    記アミノ酸誘導体を製造する方法であって、該分離工程
    により分離された高純度のD型又はL型光学異性体の純
    度を請求項4に記載の光学純度分析方法で確認すること
    を特徴とする光学活性アミノ酸誘導体の製造方法。
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