JP4780931B2 - 光電変換装置および光発電装置 - Google Patents
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Description
Cat−PECVD法を用いた場合、本発明の非晶質系Si膜は、プラズマ励起周波数としてVHF帯(27MHz以上:通常は40〜80MHz程度)を用い、カソード内部に設けられたTa(タンタル)、W(タングステン)あるいはC(カーボン)等の高融点材料から成る熱触媒体の温度を1400〜2000℃、ガス流量比(H2/SiH4)を2〜20、基板温度を100〜350℃、ガス圧力を13〜665Pa、VHFプラズマパワー密度を0.01〜0.5W/cm2と設定した条件下で得られる。ここで、H2とSiH4とは製膜空間に放出されるまでは、分離された状態でそれぞれ異なったガス導入経路を通して導かれるようにし、H2のガス導入経路にはその経路の一部に前記カソード内に設置された熱触媒体が配設されるが、SiH4のガス導入経路には同熱触媒体が配設されないようにする。このようにH2のみを熱触媒体で加熱活性化するようにすることで、SiH4が熱触媒体によって分解活性化して製膜空間に放出されるまでのガス導入経路中で膜堆積・消費されるのを防ぎつつ、後記する熱触媒体使用効果を得ることができる。
基板温度については、100℃〜350℃の範囲とする。なぜなら基板温度を100℃よりも低くすると水素引き抜き効果が有効に働かなくなり膜中水素濃度を有効に低減できなくなるからであり、基板温度を350℃よりも高くした場合には、膜成長面からの水素の脱離が顕著となって膜中ダングリングボンド密度が上昇してしまい、高品質な膜が得られなくなるからである。
さて、非晶質系Si膜の構造を記述する場合には秩序度を取り扱う場合が多く、特に短距離秩序(SRO:Short Range Order)は、膜品質や光安定性と非常に密接な関係があるとされている。このSROが反映されるアモルファスネットワークの振動ダイナミクスを評価する代表的手法としては、ラマン散乱分光法が知られている。
また、本発明素子に用いた非晶質系Si膜では、電子スピン共鳴法によって計測されるESRスピン密度であるSiダングリングボンド密度が、光照射前(初期)において約3×1015/cm3であり、従来素子に用いた膜では5.0×1015/cm3を超える値であった。このように、ダングリングボンド密度が5.0×1015/cm3を超える膜では、活性層に適用した場合に同層での再結合電流が増大し、高い素子特性が得られない。なお、ESRスピン密度測定には、日本電子製JES−RE3Xを用いた。
また、本発明素子に用いた非晶質系Si膜では、FT−IR(フーリエ変換赤外分光)分析によって評価されるSi−H(モノハイドライド)結合状態の存在密度のSi−H結合状態の存在密度およびSi−H2(ダイハイドライド)結合状態の存在密度の総和に対する割合(以下、Si−H結合状態割合という)が、0.97以上であった。このSi−H結合状態割合は、従来技術の説明の部分で既に述べたように光劣化と大きな相関を有しており、この割合が高いほど(Si−H結合が支配的であるほど)光劣化が小さくなる。本発明素子に用いたSi膜においては、従来のプラズマCVD法で得られているSi−H結合状態割合0.90程度を大きく上回り、光劣化抑制効果が顕著に現れてくるとされる0.95以上の値が得られている。なお、FT−IR特性の測定には、島津製作所製FTIR−8300を用いた。
また、本発明素子に用いた非晶質系Si膜中の水素濃度については、FT−IR分析により約5原子%と評価算出され、従来素子では10%程度と評価算出された。このとき、膜中水素濃度の算出は630cm−1付近の吸収ピーク面積とA value=1.6×1019cm−2を用いて行なった。このように本発明素子に用いたSi膜は7原子%以下の低水素濃度となっており、これも本発明素子が高光安定性を示すことに大きく寄与しているものと思われる。膜中水素濃度が7%より大きい場合には膜中Si−H2結合状態の存在密度の増大を招き、光劣化率は大きくなる。
また、本発明素子に用いた非晶質系Si膜の光学的バンドギャップエネルギーEg.optは、いわゆる3乗根プロットにて、1.6eV前後と評価され、従来膜は1.8eV程度であった。このように本発明素子に用いたSi膜の光学的バンドギャップエネルギーEg.optは1.7eV以下に狭ギャップ化しており、長波長感度特性に優れる非晶質系Si膜となっていることが確認された。光学的バンドギャップエネルギーEg.optが1.7eVよりも大きい場合には、該膜を光活性層に用いた場合に長波長光を充分に吸収・光電変換できずに光電流が低下し、素子特性の低下を招来する。
なお、非晶質系Si膜のバンドギャップエネルギーEgは膜中水素濃度によってある程度調節することができるが、膜中水素濃度を低く保ったままEgを調節したい場合には、Eg調整元素を添加すればよい。具体的には、ナローギャップ化に対してはGeまたはSn等、ワイドギャップ化に対してはC、NまたはO等を分子式に含んだガスを製膜空間に導入すればよい。即ち、Geを含有させる場合にはGeH4(Hは重水素Dを含む)、GenH2n+2(nは正の整数、以下同様)、GeX4(Xはハロゲン元素)等を、Snを含有させる場合にはSnH4(Hは重水素Dを含む)、SnnH2n+2、SnX4(Xはハロゲン元素)、SnR4(Rはアルキル基)等を、Cを含有させる場合にはCH4(Hは重水素Dを含む)、C2H2、CnH2n+2、CnH2n、CX4(Xはハロゲン元素)等を、Nを含有させる場合にはN2、NOn、N2O、NH3等を、Oを含有させる場合にはO2、CO、CO2、NOn、N2O、H2O等を導入すればよい。
また、非晶質系Si膜がナノ結晶粒含有非晶質系Si膜である場合、該膜中でナノ結晶粒が占める体積分率として表現される結晶化率の制御は、水素希釈率(ガス流量比H2/SiH4)、熱触媒体温度(Tcat)、VHFパワー密度、製膜ガス圧力、基板温度、の組み合わせによって0〜100%の範囲で自由に行なうことができるが、結晶化率は30%以下の範囲で調節し、より好適には10%以下の範囲で調節するのが望ましい。結晶化率が30%を超えると非晶質系としての特性が充分に発揮されにくくなり、特性低下を無視できなくなる。
ここで、本発明に用いられる非晶質系Si膜がナノサイズの結晶Si粒を含むナノ結晶粒含有非晶質系Si膜である場合は、該非晶質系Si膜中に含有されるナノ結晶粒の最大粒径は1nm以上5nm以下、より好ましくは1.5nm以上3nm以下とする。最大粒径が1nmより小さいと、これを構成するSi原子数が少なすぎて非晶質Si膜に対する有意なバンドギャップエネルギーの低下を実現できず、実質的に非晶質Si膜と同じ膜特性となる。また、最大粒径が5nmを超えるようになると、非晶質中に適度な距離間隔で散在分布させることが困難となり、キャリアの再結合を結晶粒で優先的に生じさせる効果や、非晶質マトリックスのネットワーク構造(後に述べるSROなど)を改善する効果が低減する。
次に、本発明に係る光電変換装置について多層型薄膜Si系太陽電池を例にとりその実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
以上によって作製された素子の特性(初期特性及び光照射試験後の特性あるいは変化率)を表1に従来例と比較して示す。ここで、光照射試験は、温度48±2℃のもとで、AM1.5の擬似太陽光(ソーラーシミュレーター光)を、100mW/cm2の光照射強度にて連続200時間照射する条件で行なうものとし、表1における安定化効率とは、該光照射試験後に測定した効率のことである。なお、本表に示した素子は、第2の光電変換ユニットの光活性層108を微結晶Si膜で形成した場合のものである。
上述した光電変換装置を発電手段として用い、この発電手段からの発電電力を負荷へ供給するように成した光発電装置とすることができる。すなわち、上述した光電変換装置を1以上(複数の光電変換装置の場合、これらを直列、並列または直並列に)接続したものを発電手段として用い(複数の光電変換装置の場合、これらを直列、並列または直並列に接続したものを発電手段として用い)、この発電手段から直接、直流負荷へ発電電力を供給するようにしてもよい。
以上、本発明の実施形態を例示したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の目的を逸脱しない限り任意の形態とすることができる。
以上のように、本発明の光電変換装置は、光活性層を有する光電変換ユニットの複数を積層体として備えるとともに、前記光電変換ユニットのうち少なくとも1つの光電変換ユニットの光活性層を、ラマン散乱スペクトルにより得られるTOモードの散乱ピーク強度ITOに対するTAモードの散乱ピーク強度ITAの比ITA/ITOが0.35以下である非晶質系シリコン半導体薄膜で構成したので、従来に比してSROが大幅に改善され、低欠陥密度且つ高光安定性を有した光活性層とすることができることから、高い信頼性を確保できる高効率な多層型薄膜太陽電池等の光電変換装置を提供することができる。
102:受光面側電極
103:一導電型半導体層
104:非晶質系Si光活性層
105:逆導電型半導体層
106:中間層
107:一導電型半導体層
108:Si光活性層
109:逆導電型半導体層
110:透明導電層
111:裏面側電極
112,113:取出電極
Claims (6)
- 一導電型半導体層、光活性層および逆導電型半導体層が順次積層されてなる第1および第2の光電変換ユニットを積層体として備える光電変換装置であって、
前記第1および第2の光電変換ユニットの前記光活性層のうち、少なくとも一方がシリコンおよび水素を含有する非晶質系シリコン半導体薄膜からなり、
前記光活性層は、ラマン散乱スペクトルにより得られるTOモードの散乱ピーク強度に対するTAモードの散乱ピーク強度の比が0.35以下であり、ラマン散乱スペクトルより得られるTOモードの散乱ピークの半値幅が64〜65cm−1 であるとともに、Si−H結合状態の存在密度とSi−H 2 結合状態の存在密度との和に対するSi−H結合状態の存在密度の比が0.95以上、かつ前記ラマン散乱スペクトルによって定義される結晶化率が30%以下であり、
前記非晶質系シリコン半導体薄膜は、結晶シリコン粒を含む場合、その最大粒径は5nm以下であることを特徴とする光電変換装置。 - 前記第1および第2の光電変換ユニットにおいて、光入射側に位置する前記第1の光電変換ユニットの光活性層の光学的バンドギャップが、前記第2の光電変換ユニットの光活性層の光学的バンドギャップより大きいことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
- 前記光活性層は、光入射側から裏面側に向かって結晶化率が上昇していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光電変換装置。
- 前記第1の光電変換ユニットの逆導電型半導体層と前記第2の光電変換ユニットの一導電型層とが接合する接合部分を有し、該接合部分は、前記ラマン散乱スペクトルによって定義される結晶化率が60%以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光電変換装置。
- 前記第1の光電変換ユニットの逆導電型半導体層と前記第2の光電変換ユニットの一導電型光電層との間に、前記第1の光電変換ユニットの逆導電型半導体層側に位置する、前記逆導電型と同一導電型の逆導電型微結晶Si層と、該微結晶Si層上に位置する、前記一導電型層と同一導電型の一導電型微結晶Si層と、を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光電変換装置。
- 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の光電変換装置を発電手段として用い、該発電手段の発電電力を負荷へ供給するように成したことを特徴とする光発電装置。
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