JP2004260014A - 多層型薄膜光電変換装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い光利用効率を実現しつつ高い半導体膜品質を確保できる光閉じ込め構造を有した高効率な多層型薄膜光電変換装置を提供すること。
【解決手段】透光性基板101上に受光面側電極102を設け、この上に一導電型半導体層103、非晶質シリコン光活性層104、および逆導電型半導体層105から成る第1の光電変換ユニットを設け、この上に、一導電型半導体層107、微結晶シリコン光活性層108、および逆導電型半導体層109から成る第2の光電変換ユニットを設け、且つこの上側に裏面側電極111を設け、受光面側電極102における第1の光電変換ユニットを形成する面が表面凹凸形状を有し、微結晶シリコン光活性層108を形成する面が前記表面凹凸形状よりも緩和された凹凸形状を有するように、微結晶シリコン光活性層108より透光性基板101側に配置された半導体層の膜厚が設定されている。
【選択図】 図1
【解決手段】透光性基板101上に受光面側電極102を設け、この上に一導電型半導体層103、非晶質シリコン光活性層104、および逆導電型半導体層105から成る第1の光電変換ユニットを設け、この上に、一導電型半導体層107、微結晶シリコン光活性層108、および逆導電型半導体層109から成る第2の光電変換ユニットを設け、且つこの上側に裏面側電極111を設け、受光面側電極102における第1の光電変換ユニットを形成する面が表面凹凸形状を有し、微結晶シリコン光活性層108を形成する面が前記表面凹凸形状よりも緩和された凹凸形状を有するように、微結晶シリコン光活性層108より透光性基板101側に配置された半導体層の膜厚が設定されている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は多層型薄膜光電変換装置に関し、特に非晶質シリコン系薄膜光電変換ユニットと微結晶シリコン系薄膜光電変換ユニットを積層した多層型薄膜光電変換装置に関する。
【0002】
【従来技術とその課題】
次世代民生用太陽電池の主力として大いに期待される薄膜シリコン系太陽電池の高効率化開発が国内外で活発に行われている。このうち、主として非晶質シリコンで構成されるトップセルと微結晶シリコンで構成されるボトムセルを積層したタンデム型素子は、コスト、変換効率、及び資源問題等を総合的に考慮すると、次世代太陽電池として最も有力なタイプの一つであると考えられている。
【0003】
このタンデム型素子の変換効率を向上させるためには、個々の素子の変換効率を向上させる必要があることは言うまでもない。特に微結晶シリコンを光活性層に用いるボトムセルにおいては、結晶シリコンの光吸収係数が小さいため、数μm以下の膜厚で光吸収を充分に生ぜしめて光電変換をより効率的に行わせるためには、入射光が微結晶シリコン内を多数回反射往復するようにして光をより有効に閉じ込めることが必要不可欠である。
【0004】
図2に、光閉じ込め構造を有する薄膜太陽電池の代表的従来例として、スーパーストレート・タンデム型(a−Si:H/μc−Si:H)薄膜Si太陽電池の構造を示す。図2において、201は透光性基板、202は第1の透明導電膜、203は半導体多層膜、203aは第1の半導体接合層、203bは第2の半導体接合層、204は第2の透明導電膜、205aは第1の取り出し電極となる金属膜、205bは第2の取り出し電極となる金属膜である。
【0005】
透光性基板201としてはガラスや樹脂などが用いられ、第1の透明導電膜202としてはSnO2、ITO、ZnOなどの金属酸化物材料が用いられ、第1の半導体接合層203aとしては水素化非晶質シリコン(a−Si:H)が用いられ、第2の半導体接合層203bとしては微結晶シリコン(μc−Si:H)が用いられ、第2の透明導電膜204としては第1の透明導電膜202と同様な材料のものが用いられ、金属膜205a、205bとしてはAl、Agなどが用いられる。
【0006】
従来の光閉じ込め技術は、本従来例に示すように、第1の透明導電膜202の製膜表面を凹凸形状にすることによって光閉じ込めを実現していた。通常、この凹凸形状の最大高さ(Rmax)は0.1μm以上に設定され、この凹凸形状は透明導電膜202の製膜条件によって自生的に形成することもできるが、必要であれば適当なエッチング処理で所望の凹凸形状に追加工することもできる。なお、第2の半導体接合層203bとして微結晶シリコンを用いているので、例えば(110)配向となる製膜条件で膜形成を行なうと、その表面に自生的な凹凸形状を形成することができ、これによって光閉じ込め効果をより高めることができていた(例えば、特許文献1〜9参照)。
【0007】
いずれにおいても光電流が増大して変換効率が向上する結果が得られている。
【0008】
しかしながら、上記従来構造では、半導体膜が製膜される第1の透明導電膜202の表面が凹凸形状を有しているため、第1の半導体接合層203aのみならず、第2の半導体接合層203bの形成にあたってもその凹凸形状が影響し、特に第2の半導体接合層203bが結晶質シリコンで構成されている構造では、その凹凸形状の最大高さ(Rmax)の程度によっては第2の半導体接合層203bの膜品質を大幅に低下させてしまうという問題があった。すなわち、実質的にフラットな面への結晶質薄膜成長であれば、凹凸構造に起因した不要な核発生サイトが少ないので結晶の大粒径化がはかりやすく、また、全ての結晶がフラット面に対して垂直な方向に成長していくために成長した結晶粒どうしが衝突して不要な結晶粒界を生じさせたりすることがなく、また結晶配向も一方向にそろいやすく、製膜後表面を好ましい凹凸形状にするための結晶配向制御がしやすいという利点があるのに対して、凹凸構造面上への結晶質薄膜成長ではこれらの利点が失われてしまい、膜品質が低下してしまうという問題があった。
【0009】
特に太陽電池においては、結晶粒径が小さいことによる結晶粒界の増加や、成長結晶粒どうしの衝突による結晶粒界の生成は、結晶粒界部がリーク電流の発生経路や光励起キャリアの再結合消滅領域となるため、開放電圧特性の低下や曲線因子特性の低下、さらには短絡電流密度の低下を招き、致命的なマイナス因子となっていた。
【0010】
なお、上記ではタンデム型を例にとって述べたものであるが、この型に限らずトリプル接合型であっても、あるいはそれ以上の多接合型であっても、結晶質シリコン膜が凹凸形状面上に製膜される条件下では同様の問題が発生するという課題があった。
【0011】
実際、結晶質薄膜シリコン太陽電池における凹凸形状と開放電圧との関係については、非特許文献1〜3等で報告されており、凹凸形状の増大(凹凸構造を形成する凹凸単位の平均サイズ(特性長)の増大や、凹凸構造を形成する面の基板水平方向に対する傾斜角度の増大)とともに短絡電流密度は増大するが、開放電圧は低下してしまうことが述べられている。そしてさらに凹凸形状を激しくすれば、ついには短絡電流密度の低下を招くことも容易に推察される。
【0012】
そこで光閉じ込めと結晶成長を両立させる方法として、凹凸を緩和させることが検討されている。特許文献10には、凹凸を有する受光面側透明電極をエッチングして凹凸を緩和することが開示されているが、受光面側透明電極の凹凸を緩和させると光閉じ込め効果が弱まるため、高効率化は望めない。
【0013】
また、特許文献11には、凹凸を有する透明導電膜の上に凹凸を緩和するように1〜10nmの絶縁膜を形成することが開示されているが、対象が非晶質シリコンであり1〜10nm程度の膜厚では微結晶シリコンの形成には殆ど効果がない。
【0014】
また、特許文献12には凹凸の平均段差以下の厚さの薄膜を凹凸の底部に選択的に形成することが開示されているが、薄膜の屈折率が透明電極と同程度であることから、あまり散乱効果期待できない。また別途薄膜を形成する必要があることからコスト的にも不利になる。
【0015】
さらに、特許文献13には凹凸基板上に形成した微結晶シリコン膜が凹凸を緩和するように成長しており、その上にシリコン膜を形成することが開示されているが、微結晶シリコンを形成する面の凹凸緩和が重要であるため、高品質な微結晶シリコン形成は期待できない。
【0016】
本発明はこのような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、高い光利用効率を実現しつつ高い半導体膜品質を確保できる光閉じ込め構造を有した高効率な多層型薄膜光電変換装置を提供することを目的とする。
【0017】
〔特許文献1〕
特許第2713847号公報
〔特許文献2〕
特許第2771414号公報
〔特許文献3〕
特許第2784841号公報
〔特許文献4〕
特許第3027669号公報
〔特許文献5〕
特許第3029169号公報
〔特許文献6〕
特開平5−218469号公報
〔特許文献7〕
特開平6−196738号公報
〔特許文献8〕
特開平10−117006号公報
〔特許文献9〕
特開平11−233800号公報
〔特許文献10〕
特開2000−252499号公報
〔特許文献11〕
特公平5−74951号公報
〔特許文献12〕
特許第2504378号公報
〔特許文献13〕
特開平11−251610号公報 実施例3
〔非特許文献1〕
第61回秋期応用物理学会予稿集6a−C−6,p.829(2000)
〔非特許文献2〕
第61回秋期応用物理学会予稿集6a−C−7,p.830(2000)
〔非特許文献3〕
12th International PVSEC(June11−15/2001,KOREA)p791
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の多層型薄膜光電変換装置は、基板上に一方側電極を設け、この一方側電極上に一導電型半導体層、半導体より成る光活性層、および逆導電型半導体層から成る第1の光電変換ユニットを設け、この第1の光電変換ユニット上に、一導電型半導体層、微結晶半導体を含む光活性層、および逆導電型半導体層から成る第2の光電変換ユニットを設け、且つ該第2の光電変換ユニットの上側に他方側電極を設けた多層型薄膜光電変換装置であって、前記一方側電極における第1の光電変換ユニットを形成する面が表面凹凸形状を有しているとともに、前記微結晶半導体を含む光活性層を形成する面が前記表面凹凸形状よりも緩和された凹凸形状を有するように、前記微結晶半導体を含む光活性層より前記基板側に配置された半導体層の膜厚が設定されていることを特徴とする。
【0019】
また、前記微結晶半導体を含む光活性層を形成する面が前記表面凹凸形状よりも緩和された凹凸形状を有するように、前記第1の光電変換ユニットにおける逆導電型半導体層の膜厚が設定されていることを特徴とする。
【0020】
また、前記微結晶半導体を含む光活性層を形成する面が前記表面凹凸形状よりも緩和された凹凸形状を有するように、前記第1の光電変換ユニットにおける光活性層の膜厚が設定されていることを特徴とする。
【0021】
また、前記微結晶半導体を含む光活性層を形成する面が前記表面凹凸形状よりも緩和された凹凸形状を有するように、前記第1の光電変換ユニットにおける一導電型半導体層の膜厚が設定されていることを特徴とする。
【0022】
また、前記微結晶半導体を含む光活性層を形成する面が前記表面凹凸形状よりも緩和された凹凸形状を有するように、前記第2の光電変換ユニットにおける一導電型半導体層の膜厚が設定されていることを特徴とする。
【0023】
また、前記第1の光電変換ユニットと前記第2の光電変換ユニットの間に中間層が設けられていることを特徴とする。
【0024】
また、前記微結晶半導体を含む光活性層を形成する面が前記表面凹凸形状よりも緩和された凹凸形状を有するように、前記中間層の膜厚が設定されていることを特徴とする。
【0025】
また、前記第1の光電変換ユニットの逆導電型半導体層が、非晶質半導体から成ることを特徴とする。
【0026】
また、前記第1の光電変換ユニットの逆導電型半導体層が、前記第1の光電変換ユニットの光活性層より光学的禁制帯幅の広い材料から成ることを特徴とする。
【0027】
また、前記第1の光電変換ユニットの逆導電型半導体層が非晶質SiCから成ることを特徴とする。
【0028】
また、前記第1の光電変換ユニットの逆導電型半導体層が2層以上から成り、少なくとも1層が非晶質SiCから成ることを特徴とする。
【0029】
また、前記第1の光電変換ユニットにおける逆導電型半導体層の膜厚が30nm以上であることを特徴とする。
【0030】
また、前記第1の光電変換ユニットの光活性層が、非晶質半導体から成ることを特徴とする。
【0031】
また、前記第1の光電変換ユニットにおける光活性層の膜厚が200nm以上であることを特徴とする。
【0032】
また、前記第1の光電変換ユニットの一導電型半導体層が、非晶質半導体から成ることを特徴とする。
【0033】
また、前記第1の光電変換ユニットの一導電型半導体層が、前記第1の光電変換ユニットの光活性層より光学的禁制帯幅の広い材料から成ることを特徴とする。
【0034】
また、前記第1の光電変換ユニットの一導電型半導体層が非晶質SiCから成ることを特徴とする。
【0035】
また、前記第1の光電変換ユニットの一導電型半導体層が2層以上から成り、少なくとも1層が非晶質SiCから成ることを特徴とする。
【0036】
また、前記第1の光電変換ユニットにおける一導電型半導体層の膜厚が30nm以上であることを特徴とする。
【0037】
また、前記第2の光電変換ユニットの一導電型半導体層が、非晶質半導体から成ることを特徴とする。
【0038】
また、前記第2の光電変換ユニットの一導電型半導体層が、前記第1の光電変換ユニットの光活性層より光学的禁制帯幅の広い材料から成ることを特徴とする。
【0039】
また、前記第2の光電変換ユニットの一導電型半導体層が非晶質SiCから成ることを特徴とする請求項5に記載の多層型薄膜光電変換装置。
【0040】
また、前記第2の光電変換ユニットの一導電型半導体層が2層以上から成り、少なくとも1層が非晶質SiCから成ることを特徴とする。
【0041】
また、前記第2の光電変換ユニットにおける一導電型半導体層の膜厚が30nm以上であることを特徴とする。
【0042】
また、前記中間層が非晶質材料から成ることを特徴とする。
【0043】
また、前記中間層が金属酸化物材料から成ることを特徴とする。
【0044】
また、前記中間層の膜厚が30nm以上であることを特徴とする。
【0045】
また、前記一方側電極の第1の光電変換ユニットを形成する面の表面凹凸形状の最大高さ(Rmax)が0.1μm以上であることを特徴とする。
【0046】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る多層型薄膜光電変換装置である多層型薄膜シリコン系太陽電池の実施形態について図面に基づき詳細に説明する。
【0047】
図1に示す薄膜シリコン系太陽電池おいて、101は透光性基板、102は受光面側電極、103は一導電型半導体層、104は非晶質シリコン光活性層、105は逆導電型半導体層、106は中間層、107は一導電型層半導体層、108は微結晶シリコン光活性層、109は逆導電型半導体層、110は透明導電層、111は裏面側電極、112は取出電極である。
【0048】
すなわち多層型薄膜シリコン系太陽電池は、透光性基板101上に一方側電極である受光面側電極102を設け、この上に一導電型半導体層103、実質的にi型の半導体より成る光活性層である非晶質シリコン光活性層104、および逆導電型半導体層105から成る第1の光電変換ユニットを設け、この第1の光電変換ユニット上に、一導電型半導体層107、微結晶半導体を含む光活性層である微結晶シリコン光活性層108、および逆導電型半導体層109から成る第2の光電変換ユニットを設け、且つ該第2の光電変換ユニットの上側に他方側電極である裏面側電極111を設け、受光面側電極102における第1の光電変換ユニットを形成する面が表面凹凸形状を有しているとともに、微結晶半導体を含む光活性層である微結晶シリコン光活性層108を形成する面が前記表面凹凸形状よりも緩和された凹凸形状を有するように、前記微結晶半導体を含む光活性層より透光性基板101側に配置された半導体層の膜厚が設定されていることを特徴とする。
【0049】
このような薄膜シリコン系太陽電池の製造にあたっては、まず、透光性基板101を用意する。透光性基板101としては、ガラス、プラスチック、樹脂などを材料とした板材あるいはフィルム材などを用いることができる。
【0050】
ここで、透光性基板101の後述する薄膜が形成される側の面には、凹凸構造を形成しておくことが望ましい(不図示)。この凹凸構造は後述する光閉じ込め効果をより促進する働きをすることができる。この凹凸構造を形成する方法としては、エッチング法、ブラスト法などがある。
【0051】
次に、受光面側電極102となる透明導電膜を形成する。透明導電膜の材料としては、SnO2、ITO、ZnOなど公知の材料を用いることができるが、この後のSi膜を形成するときに、SiH4とH2を使用することに起因した水素ガス雰囲気に曝されることになるので、耐還元性に優れるZnO膜を少なくとも最終表面として形成するのが望ましい。製膜方法としては、CVD法、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法など公知の技術を用いることができる。受光面側電極102の膜厚は、反射防止効果と低抵抗化を考慮して60〜数100nm程度の範囲で調節する。このとき受光面側電極102の表面は、形成条件を調整して自生的な凹凸形状とする。この凹凸形状の最大高さ(Rmax)は0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上に設定する。必要であれば適当なエッチング処理で所望の凹凸形状に追加工することもできる。凹凸形状の最大高さ(Rmax)が上記範囲未満では入射光の散乱効果が弱く、十分な光閉じ込め構造の実現が難しい。上記の凹凸形状は断面TEM(透過型電子顕微鏡)写真の画像処理や、AFM(原子間力顕微鏡)による表面形状測定により決定することができる。
【0052】
次に、水素化非晶質シリコン膜を光活性層に含む第1の光電変換ユニットを形成する。製膜方法としては、プラズマCVD(PECVD)法や触媒CVD(Cat−CVD)法の他に、プラズマCVD法と触媒CVD法を組み合わせたCat−PECVD法を用いることができる。特に、Cat−PECVD法を用いれば高速かつ高品質の膜形成が可能である。
【0053】
まず、一導電型半導体層103を形成する。すなわち、導電型決定元素を高濃度にドープしたワイドギャップを有するp型の非晶質シリコン層を前記受光面側電極102上に形成する。膜厚は2〜100nm程度の範囲で調節する。ドーピング元素濃度については1×1018〜1021/cm3程度として、実質的にはp+型とする。なお製膜時に用いるSiH4、H2、およびドーピング用ガスであるB2H6などのガスに加えてCH4などのC(炭素)を含むガスを適量混合すればSixC1−x膜が得られ、光吸収ロスの少ない窓層形成に非常に有効であるとともに、開放電圧向上のための暗電流成分の低減にも有効である。また、C以外にもO(酸素)を含むガスやN(窒素)を含むガスを適量混合させることでも同様な効果を得ることができる。
【0054】
次に、前記一導電型半導体層3上に、実質的にi型の光活性層104となる水素化非晶質シリコン膜形成する。このとき、例えば励起周波数13.56MHzのプラズマCVD法を用いて、SiH4/H2流量を10/30sccm、基板温度を200℃程度、RF投入電力を0.05〜0.1W/cm2、成膜圧力を100Pa程度とすると、光学的禁制帯幅が1.7〜1.9eVなる非晶質シリコン膜が得られる。また、膜中水素量は1〜20原子%程度とする。水素量が前記の範囲未満の場合には欠陥密度が上昇し、範囲を超えると光安定性が低下する。前記成膜条件は一例でありこれに限定されるものではなく、例えば励起周波数を40.68MHz等に高周波化すれば、より高品質な非晶質シリコンが得られる。なお、水素化アモルファスシリコン膜の製膜方法としてCat−CVD法あるいはCat−PECVD法を用いれば、従来のPECVD法では実現困難な膜中水素濃度が5%以下、より好ましくは3.5%以下の低水素濃度の膜が得られ、水素化アモルファスシリコン膜が抱える長年の課題である光劣化の程度を低減することができる。また、非晶質シリコンは非晶質SiCや非晶質SiGe等と置き換えてもよい。さらには微結晶シリコンを含んだナノ構造シリコンと置き換えてもよい。
【0055】
実質的にi型の光活性層104の膜厚は0.5μm以下、より好ましくは0.4μm以下で形成することが望ましい。なぜなら、前記範囲を超える場合には同部での光劣化率の増大が顕著になる他、第2の光電変換ユニットに入射する光量が制限されるため、第2の光電変換ユニットの光電流の発生量が少なくなり、結果として、タンデム太陽電池としての特性が低下するからである。
【0056】
次いで、実質的にi型の光活性層104上に逆導電型半導体層105を形成する。すなわち、一導電型半導体層103とは反対の導電型(すなわちn型)の導電型決定元素を高濃度にドープしたワイドギャップを有する非晶質シリコン層を形成する。膜厚は2〜100nm程度の範囲で調節する。ドーピング元素濃度については1×1018〜1021/cm3程度として、実質的にはn+型とする。なお製膜時に用いるSiH4、H2、およびドーピング用ガスであるPH3などのガスに加えてCH4などのC(炭素)を含むガスを適量混合すればSixC1−x膜が得られ、光吸収ロスの少ない膜形成ができるとともに、開放電圧向上のための暗電流成分の低減にも有効である。また、C以外にもO(酸素)を含むガスやN(窒素)を含むガスを適量混合させることでも同様な効果を得ることができる。
【0057】
なお、接合特性をより改善するために、p型層(n型層)と光活性層との間や光活性層とn型層(p型層)との間に実質的にi型の非単結晶Si層や非単結晶SixC1−x層を挿入してもよい。このときの挿入層の厚さは0.5〜50nm程度とする。
【0058】
次に、第1の光電変換ユニットと後述する第2の光電変換ユニットの間に、必要に応じて中間層106を形成する。この中間層は第1の光電変換ユニットで吸収されなかった入射光を反射させ、再度第1の光電変換ユニットに入射させて、第1の光電変換ユニットでの発電に寄与させるために有効である。この中間層を用いることで第1の光電変換ユニットの光活性層の膜厚を薄くすることが可能となり、特に光劣化のある材料である非晶質シリコンを光活性層とした光電変換ユニットの光劣化低減に有効である。
【0059】
中間層の材料としては金属酸化物材料としてのSnO2、ITO、ZnOなどの他に、シリコン酸化物材料、シリコン炭化物材料、シリコン窒化物材料、ダイヤモンドライクカーボン等の炭素材料などを用いることができる。製膜方法としては、CVD法、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、およびゾルゲル法など公知の技術を用いることができる。必要であれば適当なドープ元素を含んだ材料を製膜時に製膜原料に混ぜることよって導電性を付与して制御することができる。
【0060】
膜厚は材質によっても異なるが、10nm〜300nm程度で適宜調節する。
【0061】
次に、微結晶シリコン膜を光活性層に含む第2の光電変換ユニットを形成する。製膜方法としては、プラズマCVD(PECVD)法や触媒CVD(Cat−CVD)法の他に、Cat−PECVD法を用いることができる。特にCat−PECVD法を用いれば高速かつ高品質の膜形成が可能である。
【0062】
次に、逆導電型半導体層105とは反対の導電型(すなわちp型)の一導電型半導体層107を形成する。すなわち導電型決定元素を高濃度にドープした非晶質シリコン層または微結晶シリコン層を前記中間層106上に形成する。膜厚は10〜100nm程度の範囲で調節する。ドーピング元素濃度については1×1018〜1021/cm3程度として、実質的にはp+型とする。なお、製膜時に用いるSiH4、H2、およびドーピング用ガスであるB2H6などのガスに加えてCH4などのC(炭素)を含むガスを適量混合すればSixC1−x膜が得られ、光吸収ロスの少ない窓層形成に非常に有効であるとともに、開放電圧向上のための暗電流成分の低減にも有効である。また、C以外にもO(酸素)を含むガスやN(窒素)を含むガスを適量混合させることでも同様な効果を得ることができる。
【0063】
次に、前記一導電型半導体層107上に、実質的にi型の微結晶シリコン光活性層108を形成する。微結晶シリコン光活性層108の膜厚は1〜3μm程度で形成し、第1の光電変換ユニットからの出力電流と第2の光電変換ユニットからの出力電流を整合させることが望ましい。このとき、例えば励起周波数40.68MHzのプラズマCVD法を用いて、SiH4/H2流量を10/100sccm、基板温度を200℃程度、RF投入電力を0.1〜0.15W/cm2、成膜圧力を200Pa程度とすると、微結晶シリコン膜が得られる。このとき膜中水素濃度については、5%以下、より好ましくは3.5%以下とする。また膜構造としては、(110)配向の柱状結晶粒の集合体として製膜後の表面形状が光閉じ込めに適した自生的な凹凸構造となるようにするのが望ましい。
【0064】
前記成膜条件は一例でありこれに限定されるものではなく、例えば励起周波数を60MHz等に高周波化すれば、より高品質な微結晶シリコンが得られる。なお、微結晶シリコン膜の製膜方法として特にCat−PECVD法を用いれば比較的低い水素希釈率であっても容易に結晶化を促進できるので高速製膜には特に好適である。また、微結晶シリコンは微結晶SiCや微結晶SiGe等と置き換えてもよい。さらには微結晶シリコンを含んだナノ構造シリコンと置き換えてもよい。この場合の膜厚も第1の光電変換ユニットからの出力電流と第2の光電変換ユニットからの出力電流を整合させるように適宜調整する。
【0065】
次いで、実質的にi型の微結晶シリコン光活性層108上に逆導電型半導体層109を形成する。すなわち、一導電型半導体層107とは反対の導電型(すなわちn型)の導電型決定元素を高濃度にドープした非晶質シリコン層または微結晶シリコン層を形成する。膜厚は2〜100nm程度の範囲で調節する。ドーピング元素濃度については1×1018〜1021/cm3程度として、実質的にはn+型とする。なお製膜時に用いるSiH4、H2、およびドーピング用ガスであるPH3などのガスに加えてCH4などのC(炭素)を含むガスを適量混合すればSixC1−x膜が得られ、光吸収ロスの少ない膜形成ができるとともに、開放電圧向上のための暗電流成分の低減にも有効である。また、C以外にもO(酸素)を含むガスやN(窒素)を含むガスを適量混合させることでも同様な効果を得ることができる。
【0066】
なお、接合特性をより改善するために、p型層(n型層)と光活性層との間や光活性層とn型層(p型層)との間に実質的にi型の非単結晶Si層や非単結晶SixC1−x層を挿入してもよい。このときの挿入層の厚さは0.5〜50nm程度とする。
【0067】
次に、透明導電層110を形成する。透明導電膜材料としては、金属酸化物材料としてのSnO2、ITO、ZnOなどの他に、シリコン酸化物材料、シリコン炭化物材料、シリコン窒化物材料、ダイヤモンドライクカーボン等の炭素材料などを用いることができる。製膜方法としては、CVD法、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、およびゾルゲル法など公知の技術を用いることができる。必要であれば適当なドープ元素を含んだ材料を製膜時に製膜原料に混ぜることよって導電性を付与して制御することができる。
【0068】
次に、裏面側電極111となる金属膜を形成する。金属材料としては、導電特性および光反射特性に優れるAl、Agなどを用いるのが望ましい。製膜方法としては、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、スクリーン印刷法などの公知の技術を使用できる。例えばAgをスパッタリング法によりシート抵抗が1Ω/□程度以下となるように適当な膜厚に堆積する。具体的には1μm程度堆積するとシート抵抗0.1Ω/□以下が実現される。
【0069】
表取り出し電極112については、例えばAl、Ag等を受光面側電極102上に真空成膜技術、プリント及び焼成技術、さらに、メッキ技術等を用いて形成することができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態を例示したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の目的を逸脱しない限り任意の形態とすることができる。なお、以上の説明では受光面側半導体層からpin型とした太陽電池について説明したが、受光面側からnip型としても同様の効果が得られる。また光活性層として僅かにp型もしくはn型としたpp−n型やpn−n型としても良い。また、タンデム型に限らず、トリプル接合型であっても、あるいはそれ以上の多接合型であっても、微結晶半導体を含んだ膜が凹凸形状面上に製膜される場合には、本発明が適用可能である。さらには、光活性層の材料としてシリコン系膜に限られるものでもなく、微結晶半導体を含んだ材料に適用可能である。また素子構造を適宜変更することにより、膜面側を光入射としたサブストレート型光電変換装置についても同様の効果が期待できる。
【0071】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0072】
<実施例1及び比較例1>
まずフラットな表面のガラス基板101上にSnO2から成る受光面側電極102を熱CVD法により1.0μmの膜厚にて形成した。このSnO2の凹凸形状をAFMにて測定したところ、Rmaxは0.3μmであった。
【0073】
次にプラズマCVD法により、Bドープの一導電型(p型)のa−SiC:H層103を10nm、ノンドープの実質的にi型のa−Si:H層104を0.25μm、Pドープの逆導電型(n型)半導体層105を形成し第1の光電変換ユニットとした。
【0074】
この第1の光電変換ユニット上に、プラズマCVD法により、Bドープの一導電型(p型)の微結晶Si層107を30nm、ノンドープの実質的にi型の微結晶Si層108を2.0μm、Pドープの逆導電型(n型)のa−Si:H層109を20nm形成し第2の光電変換ユニットとした。
【0075】
なお中間層106は形成していない。
【0076】
この第2の光電変換ユニット上に、それぞれスパッタ法によりZnOから成る透明導電層110を50nm、Agから成る裏面側電極層111を1μm形成した。
【0077】
この後パターニングにより受光面側電極102を露出し、表取り出し電極112となるAlをスパッタ法により1μm形成し、タンデム型太陽電池とした。
【0078】
表1に逆導電型半導体層105の膜種、膜厚について種々の条件とした場合のタンデム型太陽電池の諸特性を示す。
【0079】
【表1】
【0080】
表1から分かるように逆導電型半導体層105としては非晶質材料の方が微結晶材料に比べ、FFが高いことが分かる。また、非晶質材料で膜厚が30nmを超えたところから、Voc、FFが向上している。特に50〜100nmで変換効率が高い。さらに、非晶質Siより、非晶質SiCの方が高いJscとなっている。これらの理由としては、逆導電型半導体層105を非晶質材料としたことにより凹凸の緩和が生じており、この緩和度合いが膜厚増に従って強調されていることで説明される。
【0081】
すなわち、非晶質材料から成る逆導電型半導体層105の膜厚をある程度以上として凹凸を緩和した上に第2の光電変換ユニット、特に光活性層となる微結晶Siが形成されるため、高品質結晶成長の阻害要因となる凹凸が緩和され、微結晶Siの膜品質が向上し、Voc、FFが向上したものである。
【0082】
この逆導電型半導体層105の材料としては、凹凸を緩和するように成長する非晶質材料であればよく、その中でも、第1の光電変換ユニットの光活性層より光学的禁制帯幅の広い材料であれば、光吸収ロスも最小限にすることができることから、特に好ましい。この光学的禁制帯幅の広い材料としてはSiCが導電型制御、高品質膜の形成の観点から特に好ましい。また、逆導電型半導体層105を非晶質Siと非晶質SiCというように2層、あるいはそれ以上の多層とすることによっても同様の効果が期待できる。
【0083】
<実施例2及び比較例2>
表2に一導電型半導体層103の膜種、膜厚について種々の条件とした場合のタンデム型太陽電池の諸特性を示す。ここで逆導電型半導体層105としてはa−Si:Hとし、膜厚は20nmである。その他の構造は実施例1及び比較例1と同様とした。
【0084】
【表2】
【0085】
表2から分かるように一導電型半導体層103としては非晶質材料の方が微結晶材料に比べ、FFが高いことが分かる。また、非晶質材料で膜厚が30nmを超えたところから、Voc、FFが向上している。特に50〜100nmで変換効率が高い。さらに、非晶質Siより、非晶質SiCの方が高いJscとなっている。これらの理由としては、一導電型半導体層103を非晶質材料としたことにより凹凸の緩和が生じており、この緩和度合いが膜厚増に従って強調されていることで説明される。
【0086】
すなわち、一導電型半導体層103の膜厚をある程度以上として凹凸を緩和した上に第2の光電変換ユニット、特に光活性層となる微結晶Siが形成されるため、高品質結晶成長の阻害要因となる凹凸が緩和され、微結晶Siの膜品質が向上し、Voc、FFが向上したものである。
【0087】
この一導電型半導体層103の材料としては、凹凸を緩和するように成長する非晶質材料であればよく、その中でも、第1の光電変換ユニットの光活性層より光学的禁制帯幅の広い材料であれば、光吸収ロスも最小限にすることができることから、特に好ましい。この光学的禁制帯幅の広い材料としてはSiCが導電型制御、高品質膜の形成の観点から特に好ましい。また、逆導電型半導体層105を非晶質Siと非晶質SiCというように2層、あるいはそれ以上の多層とすることによっても同様の効果が期待できる。
【0088】
<実施例3及び比較例3>
表3にa−Si:Hから成る光活性層104の膜厚について種々の条件とした場合のタンデム型太陽電池の諸特性を示す。ここで逆導電型半導体層105としてはa−Si:Hとし、膜厚は20nmである。その他の構造は実施例1及び比較例1と同様とした。
【0089】
【表3】
【0090】
表3から分かるように光活性層104の膜厚が200nmを超えたところから、Voc、FFが向上している。これらの理由としては、光活性層104を非晶質材料としたことにより凹凸の緩和が生じており、この緩和度合いが膜厚増に従って強調されていることで説明される。
【0091】
すなわち、光活性層104の膜厚をある程度以上として凹凸を緩和した上に第2の光電変換ユニット、特に光活性層となる微結晶Siが形成されるため、高品質結晶成長の阻害要因となる凹凸が緩和され、微結晶Siの膜品質が向上し、Voc、FFが向上したものである。この光活性層104の材料としては、凹凸を緩和するように成長する非晶質材料であればよい。
【0092】
<実施例4及び比較例4>
表4にZnOから成る中間層106を導入した場合のタンデム型太陽電池の諸特性を示す。ここで逆導電型半導体層105としてはa−Si:Hとし、膜厚は20nmである。その他の構造は実施例1及び比較例1と同様とした。
【0093】
【表4】
【0094】
表4から分かるようにZnO中間層106としては非晶質の方が結晶に比べ、FFが高いことが分かる。また、膜厚が30nmを超えたところから、Voc、FFが向上している。特に50nmを超えたところで変換効率が高い。これらの理由としては、中間層106を非晶質材料としたことにより凹凸の緩和が生じており、この緩和度合いが膜厚増に従って強調されていることで説明される。
【0095】
すなわち、中間層106の膜厚をある程度以上として凹凸を緩和した上に第2の光電変換ユニット、特に光活性層となる微結晶Siが形成されるため、高品質結晶成長の阻害要因となる凹凸が緩和され、微結晶Siの膜品質が向上し、Voc、FFが向上したものである。
【0096】
この中間層106の材料としては、凹凸を緩和するように成長する非晶質材料であればよい。この材料としては金属酸化物としてのSnO2、ITO、ZnOなどの他に、シリコン炭化物材料、シリコン窒化物材料、ダイヤモンドライクカーボン等の炭素材料などを用いることができる。金属酸化物材料の中ではZnOが耐プラズマ性の形成の観点から特に好ましい。また、中間層106を非晶質ITOと非晶質ZnOというように2層、あるいはそれ以上の多層とすることによっても同様の効果が期待できる。
【0097】
<実施例5及び比較例5>
表5に一導電型半導体層107の膜種、膜厚について種々の条件とした場合のタンデム型太陽電池の諸特性を示す。ここで逆導電型半導体層105としてはa−Si:Hとし、膜厚は20nmである。その他の構造は実施例及び比較例1と同様とした。
【0098】
【表5】
【0099】
表5から分かるように一導電型半導体層107としては非晶質材料の方が微結晶材料に比べ、FFが高いことが分かる。また、非晶質材料で膜厚が30nmを超えたところから、Voc、FFが向上している。特に50〜100nmで変換効率が高い。さらに、非晶質Siより、非晶質SiCの方が高いJscとなっている。これらの理由としては、一導電型半導体層107を非晶質材料としたことにより凹凸の緩和が生じており、この緩和度合いが膜厚増に従って強調されていることで説明される。
【0100】
すなわち、一導電型半導体層107の膜厚をある程度以上として凹凸を緩和した上に第2の光電変換ユニット、特に光活性層となる微結晶Siが形成されるため、高品質結晶成長の阻害要因となる凹凸が緩和され、微結晶Siの膜品質が向上し、Voc、FFが向上したものである。
【0101】
この一導電型半導体層107の材料としては、凹凸を緩和するように成長する非晶質材料であればよく、その中でも、第1の光電変換ユニットの光活性層より光学的禁制帯幅の広い材料であれば、光吸収ロスも最小限にすることができることから、特に好ましい。この光学的禁制帯幅の広い材料としてはSiCが導電型制御、高品質膜の形成の観点から特に好ましい。また、逆導電型半導体層107を非晶質SiCと微結晶Siというように2層、あるいはそれ以上の多層とすることによっても同様の効果が期待できる。
【0102】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る多層型薄膜光電変換装置によれば、微結晶半導体を含む光活性層を形成する面が緩和された凹凸形状を有しているため、微結晶半導体を含む光活性層の品質低下を抑制することができる。これにより、第2の光電変換ユニットの特性が向上し、これにより、多層型薄膜光電変換装置の特性も大幅に向上する。
【0103】
特に、請求項2の多層型薄膜光電変換装置によれば、第1の光電変換ユニットの逆導電型半導体層により凹凸を緩和しているため、第1の光電変換ユニットへの光入射ロスも無いことから、高効率な多層型薄膜光電変換装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る多層型薄膜シリコン系太陽電池の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【図2】従来例による多層型薄膜シリコン系太陽電池の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
101:透光性基板
102:受光面側電極(一方側電極)
103、107:一導電型半導体層
104:非晶質シリコン光活性層(光活性層)
105、109:逆導電型半導体層
106:中間層
108:微結晶シリコン光活性層(光活性層)
110:透明導電層
111:裏面側電極(他方側電極)
112:取出電極
【発明の属する技術分野】
本発明は多層型薄膜光電変換装置に関し、特に非晶質シリコン系薄膜光電変換ユニットと微結晶シリコン系薄膜光電変換ユニットを積層した多層型薄膜光電変換装置に関する。
【0002】
【従来技術とその課題】
次世代民生用太陽電池の主力として大いに期待される薄膜シリコン系太陽電池の高効率化開発が国内外で活発に行われている。このうち、主として非晶質シリコンで構成されるトップセルと微結晶シリコンで構成されるボトムセルを積層したタンデム型素子は、コスト、変換効率、及び資源問題等を総合的に考慮すると、次世代太陽電池として最も有力なタイプの一つであると考えられている。
【0003】
このタンデム型素子の変換効率を向上させるためには、個々の素子の変換効率を向上させる必要があることは言うまでもない。特に微結晶シリコンを光活性層に用いるボトムセルにおいては、結晶シリコンの光吸収係数が小さいため、数μm以下の膜厚で光吸収を充分に生ぜしめて光電変換をより効率的に行わせるためには、入射光が微結晶シリコン内を多数回反射往復するようにして光をより有効に閉じ込めることが必要不可欠である。
【0004】
図2に、光閉じ込め構造を有する薄膜太陽電池の代表的従来例として、スーパーストレート・タンデム型(a−Si:H/μc−Si:H)薄膜Si太陽電池の構造を示す。図2において、201は透光性基板、202は第1の透明導電膜、203は半導体多層膜、203aは第1の半導体接合層、203bは第2の半導体接合層、204は第2の透明導電膜、205aは第1の取り出し電極となる金属膜、205bは第2の取り出し電極となる金属膜である。
【0005】
透光性基板201としてはガラスや樹脂などが用いられ、第1の透明導電膜202としてはSnO2、ITO、ZnOなどの金属酸化物材料が用いられ、第1の半導体接合層203aとしては水素化非晶質シリコン(a−Si:H)が用いられ、第2の半導体接合層203bとしては微結晶シリコン(μc−Si:H)が用いられ、第2の透明導電膜204としては第1の透明導電膜202と同様な材料のものが用いられ、金属膜205a、205bとしてはAl、Agなどが用いられる。
【0006】
従来の光閉じ込め技術は、本従来例に示すように、第1の透明導電膜202の製膜表面を凹凸形状にすることによって光閉じ込めを実現していた。通常、この凹凸形状の最大高さ(Rmax)は0.1μm以上に設定され、この凹凸形状は透明導電膜202の製膜条件によって自生的に形成することもできるが、必要であれば適当なエッチング処理で所望の凹凸形状に追加工することもできる。なお、第2の半導体接合層203bとして微結晶シリコンを用いているので、例えば(110)配向となる製膜条件で膜形成を行なうと、その表面に自生的な凹凸形状を形成することができ、これによって光閉じ込め効果をより高めることができていた(例えば、特許文献1〜9参照)。
【0007】
いずれにおいても光電流が増大して変換効率が向上する結果が得られている。
【0008】
しかしながら、上記従来構造では、半導体膜が製膜される第1の透明導電膜202の表面が凹凸形状を有しているため、第1の半導体接合層203aのみならず、第2の半導体接合層203bの形成にあたってもその凹凸形状が影響し、特に第2の半導体接合層203bが結晶質シリコンで構成されている構造では、その凹凸形状の最大高さ(Rmax)の程度によっては第2の半導体接合層203bの膜品質を大幅に低下させてしまうという問題があった。すなわち、実質的にフラットな面への結晶質薄膜成長であれば、凹凸構造に起因した不要な核発生サイトが少ないので結晶の大粒径化がはかりやすく、また、全ての結晶がフラット面に対して垂直な方向に成長していくために成長した結晶粒どうしが衝突して不要な結晶粒界を生じさせたりすることがなく、また結晶配向も一方向にそろいやすく、製膜後表面を好ましい凹凸形状にするための結晶配向制御がしやすいという利点があるのに対して、凹凸構造面上への結晶質薄膜成長ではこれらの利点が失われてしまい、膜品質が低下してしまうという問題があった。
【0009】
特に太陽電池においては、結晶粒径が小さいことによる結晶粒界の増加や、成長結晶粒どうしの衝突による結晶粒界の生成は、結晶粒界部がリーク電流の発生経路や光励起キャリアの再結合消滅領域となるため、開放電圧特性の低下や曲線因子特性の低下、さらには短絡電流密度の低下を招き、致命的なマイナス因子となっていた。
【0010】
なお、上記ではタンデム型を例にとって述べたものであるが、この型に限らずトリプル接合型であっても、あるいはそれ以上の多接合型であっても、結晶質シリコン膜が凹凸形状面上に製膜される条件下では同様の問題が発生するという課題があった。
【0011】
実際、結晶質薄膜シリコン太陽電池における凹凸形状と開放電圧との関係については、非特許文献1〜3等で報告されており、凹凸形状の増大(凹凸構造を形成する凹凸単位の平均サイズ(特性長)の増大や、凹凸構造を形成する面の基板水平方向に対する傾斜角度の増大)とともに短絡電流密度は増大するが、開放電圧は低下してしまうことが述べられている。そしてさらに凹凸形状を激しくすれば、ついには短絡電流密度の低下を招くことも容易に推察される。
【0012】
そこで光閉じ込めと結晶成長を両立させる方法として、凹凸を緩和させることが検討されている。特許文献10には、凹凸を有する受光面側透明電極をエッチングして凹凸を緩和することが開示されているが、受光面側透明電極の凹凸を緩和させると光閉じ込め効果が弱まるため、高効率化は望めない。
【0013】
また、特許文献11には、凹凸を有する透明導電膜の上に凹凸を緩和するように1〜10nmの絶縁膜を形成することが開示されているが、対象が非晶質シリコンであり1〜10nm程度の膜厚では微結晶シリコンの形成には殆ど効果がない。
【0014】
また、特許文献12には凹凸の平均段差以下の厚さの薄膜を凹凸の底部に選択的に形成することが開示されているが、薄膜の屈折率が透明電極と同程度であることから、あまり散乱効果期待できない。また別途薄膜を形成する必要があることからコスト的にも不利になる。
【0015】
さらに、特許文献13には凹凸基板上に形成した微結晶シリコン膜が凹凸を緩和するように成長しており、その上にシリコン膜を形成することが開示されているが、微結晶シリコンを形成する面の凹凸緩和が重要であるため、高品質な微結晶シリコン形成は期待できない。
【0016】
本発明はこのような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、高い光利用効率を実現しつつ高い半導体膜品質を確保できる光閉じ込め構造を有した高効率な多層型薄膜光電変換装置を提供することを目的とする。
【0017】
〔特許文献1〕
特許第2713847号公報
〔特許文献2〕
特許第2771414号公報
〔特許文献3〕
特許第2784841号公報
〔特許文献4〕
特許第3027669号公報
〔特許文献5〕
特許第3029169号公報
〔特許文献6〕
特開平5−218469号公報
〔特許文献7〕
特開平6−196738号公報
〔特許文献8〕
特開平10−117006号公報
〔特許文献9〕
特開平11−233800号公報
〔特許文献10〕
特開2000−252499号公報
〔特許文献11〕
特公平5−74951号公報
〔特許文献12〕
特許第2504378号公報
〔特許文献13〕
特開平11−251610号公報 実施例3
〔非特許文献1〕
第61回秋期応用物理学会予稿集6a−C−6,p.829(2000)
〔非特許文献2〕
第61回秋期応用物理学会予稿集6a−C−7,p.830(2000)
〔非特許文献3〕
12th International PVSEC(June11−15/2001,KOREA)p791
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の多層型薄膜光電変換装置は、基板上に一方側電極を設け、この一方側電極上に一導電型半導体層、半導体より成る光活性層、および逆導電型半導体層から成る第1の光電変換ユニットを設け、この第1の光電変換ユニット上に、一導電型半導体層、微結晶半導体を含む光活性層、および逆導電型半導体層から成る第2の光電変換ユニットを設け、且つ該第2の光電変換ユニットの上側に他方側電極を設けた多層型薄膜光電変換装置であって、前記一方側電極における第1の光電変換ユニットを形成する面が表面凹凸形状を有しているとともに、前記微結晶半導体を含む光活性層を形成する面が前記表面凹凸形状よりも緩和された凹凸形状を有するように、前記微結晶半導体を含む光活性層より前記基板側に配置された半導体層の膜厚が設定されていることを特徴とする。
【0019】
また、前記微結晶半導体を含む光活性層を形成する面が前記表面凹凸形状よりも緩和された凹凸形状を有するように、前記第1の光電変換ユニットにおける逆導電型半導体層の膜厚が設定されていることを特徴とする。
【0020】
また、前記微結晶半導体を含む光活性層を形成する面が前記表面凹凸形状よりも緩和された凹凸形状を有するように、前記第1の光電変換ユニットにおける光活性層の膜厚が設定されていることを特徴とする。
【0021】
また、前記微結晶半導体を含む光活性層を形成する面が前記表面凹凸形状よりも緩和された凹凸形状を有するように、前記第1の光電変換ユニットにおける一導電型半導体層の膜厚が設定されていることを特徴とする。
【0022】
また、前記微結晶半導体を含む光活性層を形成する面が前記表面凹凸形状よりも緩和された凹凸形状を有するように、前記第2の光電変換ユニットにおける一導電型半導体層の膜厚が設定されていることを特徴とする。
【0023】
また、前記第1の光電変換ユニットと前記第2の光電変換ユニットの間に中間層が設けられていることを特徴とする。
【0024】
また、前記微結晶半導体を含む光活性層を形成する面が前記表面凹凸形状よりも緩和された凹凸形状を有するように、前記中間層の膜厚が設定されていることを特徴とする。
【0025】
また、前記第1の光電変換ユニットの逆導電型半導体層が、非晶質半導体から成ることを特徴とする。
【0026】
また、前記第1の光電変換ユニットの逆導電型半導体層が、前記第1の光電変換ユニットの光活性層より光学的禁制帯幅の広い材料から成ることを特徴とする。
【0027】
また、前記第1の光電変換ユニットの逆導電型半導体層が非晶質SiCから成ることを特徴とする。
【0028】
また、前記第1の光電変換ユニットの逆導電型半導体層が2層以上から成り、少なくとも1層が非晶質SiCから成ることを特徴とする。
【0029】
また、前記第1の光電変換ユニットにおける逆導電型半導体層の膜厚が30nm以上であることを特徴とする。
【0030】
また、前記第1の光電変換ユニットの光活性層が、非晶質半導体から成ることを特徴とする。
【0031】
また、前記第1の光電変換ユニットにおける光活性層の膜厚が200nm以上であることを特徴とする。
【0032】
また、前記第1の光電変換ユニットの一導電型半導体層が、非晶質半導体から成ることを特徴とする。
【0033】
また、前記第1の光電変換ユニットの一導電型半導体層が、前記第1の光電変換ユニットの光活性層より光学的禁制帯幅の広い材料から成ることを特徴とする。
【0034】
また、前記第1の光電変換ユニットの一導電型半導体層が非晶質SiCから成ることを特徴とする。
【0035】
また、前記第1の光電変換ユニットの一導電型半導体層が2層以上から成り、少なくとも1層が非晶質SiCから成ることを特徴とする。
【0036】
また、前記第1の光電変換ユニットにおける一導電型半導体層の膜厚が30nm以上であることを特徴とする。
【0037】
また、前記第2の光電変換ユニットの一導電型半導体層が、非晶質半導体から成ることを特徴とする。
【0038】
また、前記第2の光電変換ユニットの一導電型半導体層が、前記第1の光電変換ユニットの光活性層より光学的禁制帯幅の広い材料から成ることを特徴とする。
【0039】
また、前記第2の光電変換ユニットの一導電型半導体層が非晶質SiCから成ることを特徴とする請求項5に記載の多層型薄膜光電変換装置。
【0040】
また、前記第2の光電変換ユニットの一導電型半導体層が2層以上から成り、少なくとも1層が非晶質SiCから成ることを特徴とする。
【0041】
また、前記第2の光電変換ユニットにおける一導電型半導体層の膜厚が30nm以上であることを特徴とする。
【0042】
また、前記中間層が非晶質材料から成ることを特徴とする。
【0043】
また、前記中間層が金属酸化物材料から成ることを特徴とする。
【0044】
また、前記中間層の膜厚が30nm以上であることを特徴とする。
【0045】
また、前記一方側電極の第1の光電変換ユニットを形成する面の表面凹凸形状の最大高さ(Rmax)が0.1μm以上であることを特徴とする。
【0046】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る多層型薄膜光電変換装置である多層型薄膜シリコン系太陽電池の実施形態について図面に基づき詳細に説明する。
【0047】
図1に示す薄膜シリコン系太陽電池おいて、101は透光性基板、102は受光面側電極、103は一導電型半導体層、104は非晶質シリコン光活性層、105は逆導電型半導体層、106は中間層、107は一導電型層半導体層、108は微結晶シリコン光活性層、109は逆導電型半導体層、110は透明導電層、111は裏面側電極、112は取出電極である。
【0048】
すなわち多層型薄膜シリコン系太陽電池は、透光性基板101上に一方側電極である受光面側電極102を設け、この上に一導電型半導体層103、実質的にi型の半導体より成る光活性層である非晶質シリコン光活性層104、および逆導電型半導体層105から成る第1の光電変換ユニットを設け、この第1の光電変換ユニット上に、一導電型半導体層107、微結晶半導体を含む光活性層である微結晶シリコン光活性層108、および逆導電型半導体層109から成る第2の光電変換ユニットを設け、且つ該第2の光電変換ユニットの上側に他方側電極である裏面側電極111を設け、受光面側電極102における第1の光電変換ユニットを形成する面が表面凹凸形状を有しているとともに、微結晶半導体を含む光活性層である微結晶シリコン光活性層108を形成する面が前記表面凹凸形状よりも緩和された凹凸形状を有するように、前記微結晶半導体を含む光活性層より透光性基板101側に配置された半導体層の膜厚が設定されていることを特徴とする。
【0049】
このような薄膜シリコン系太陽電池の製造にあたっては、まず、透光性基板101を用意する。透光性基板101としては、ガラス、プラスチック、樹脂などを材料とした板材あるいはフィルム材などを用いることができる。
【0050】
ここで、透光性基板101の後述する薄膜が形成される側の面には、凹凸構造を形成しておくことが望ましい(不図示)。この凹凸構造は後述する光閉じ込め効果をより促進する働きをすることができる。この凹凸構造を形成する方法としては、エッチング法、ブラスト法などがある。
【0051】
次に、受光面側電極102となる透明導電膜を形成する。透明導電膜の材料としては、SnO2、ITO、ZnOなど公知の材料を用いることができるが、この後のSi膜を形成するときに、SiH4とH2を使用することに起因した水素ガス雰囲気に曝されることになるので、耐還元性に優れるZnO膜を少なくとも最終表面として形成するのが望ましい。製膜方法としては、CVD法、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法など公知の技術を用いることができる。受光面側電極102の膜厚は、反射防止効果と低抵抗化を考慮して60〜数100nm程度の範囲で調節する。このとき受光面側電極102の表面は、形成条件を調整して自生的な凹凸形状とする。この凹凸形状の最大高さ(Rmax)は0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上に設定する。必要であれば適当なエッチング処理で所望の凹凸形状に追加工することもできる。凹凸形状の最大高さ(Rmax)が上記範囲未満では入射光の散乱効果が弱く、十分な光閉じ込め構造の実現が難しい。上記の凹凸形状は断面TEM(透過型電子顕微鏡)写真の画像処理や、AFM(原子間力顕微鏡)による表面形状測定により決定することができる。
【0052】
次に、水素化非晶質シリコン膜を光活性層に含む第1の光電変換ユニットを形成する。製膜方法としては、プラズマCVD(PECVD)法や触媒CVD(Cat−CVD)法の他に、プラズマCVD法と触媒CVD法を組み合わせたCat−PECVD法を用いることができる。特に、Cat−PECVD法を用いれば高速かつ高品質の膜形成が可能である。
【0053】
まず、一導電型半導体層103を形成する。すなわち、導電型決定元素を高濃度にドープしたワイドギャップを有するp型の非晶質シリコン層を前記受光面側電極102上に形成する。膜厚は2〜100nm程度の範囲で調節する。ドーピング元素濃度については1×1018〜1021/cm3程度として、実質的にはp+型とする。なお製膜時に用いるSiH4、H2、およびドーピング用ガスであるB2H6などのガスに加えてCH4などのC(炭素)を含むガスを適量混合すればSixC1−x膜が得られ、光吸収ロスの少ない窓層形成に非常に有効であるとともに、開放電圧向上のための暗電流成分の低減にも有効である。また、C以外にもO(酸素)を含むガスやN(窒素)を含むガスを適量混合させることでも同様な効果を得ることができる。
【0054】
次に、前記一導電型半導体層3上に、実質的にi型の光活性層104となる水素化非晶質シリコン膜形成する。このとき、例えば励起周波数13.56MHzのプラズマCVD法を用いて、SiH4/H2流量を10/30sccm、基板温度を200℃程度、RF投入電力を0.05〜0.1W/cm2、成膜圧力を100Pa程度とすると、光学的禁制帯幅が1.7〜1.9eVなる非晶質シリコン膜が得られる。また、膜中水素量は1〜20原子%程度とする。水素量が前記の範囲未満の場合には欠陥密度が上昇し、範囲を超えると光安定性が低下する。前記成膜条件は一例でありこれに限定されるものではなく、例えば励起周波数を40.68MHz等に高周波化すれば、より高品質な非晶質シリコンが得られる。なお、水素化アモルファスシリコン膜の製膜方法としてCat−CVD法あるいはCat−PECVD法を用いれば、従来のPECVD法では実現困難な膜中水素濃度が5%以下、より好ましくは3.5%以下の低水素濃度の膜が得られ、水素化アモルファスシリコン膜が抱える長年の課題である光劣化の程度を低減することができる。また、非晶質シリコンは非晶質SiCや非晶質SiGe等と置き換えてもよい。さらには微結晶シリコンを含んだナノ構造シリコンと置き換えてもよい。
【0055】
実質的にi型の光活性層104の膜厚は0.5μm以下、より好ましくは0.4μm以下で形成することが望ましい。なぜなら、前記範囲を超える場合には同部での光劣化率の増大が顕著になる他、第2の光電変換ユニットに入射する光量が制限されるため、第2の光電変換ユニットの光電流の発生量が少なくなり、結果として、タンデム太陽電池としての特性が低下するからである。
【0056】
次いで、実質的にi型の光活性層104上に逆導電型半導体層105を形成する。すなわち、一導電型半導体層103とは反対の導電型(すなわちn型)の導電型決定元素を高濃度にドープしたワイドギャップを有する非晶質シリコン層を形成する。膜厚は2〜100nm程度の範囲で調節する。ドーピング元素濃度については1×1018〜1021/cm3程度として、実質的にはn+型とする。なお製膜時に用いるSiH4、H2、およびドーピング用ガスであるPH3などのガスに加えてCH4などのC(炭素)を含むガスを適量混合すればSixC1−x膜が得られ、光吸収ロスの少ない膜形成ができるとともに、開放電圧向上のための暗電流成分の低減にも有効である。また、C以外にもO(酸素)を含むガスやN(窒素)を含むガスを適量混合させることでも同様な効果を得ることができる。
【0057】
なお、接合特性をより改善するために、p型層(n型層)と光活性層との間や光活性層とn型層(p型層)との間に実質的にi型の非単結晶Si層や非単結晶SixC1−x層を挿入してもよい。このときの挿入層の厚さは0.5〜50nm程度とする。
【0058】
次に、第1の光電変換ユニットと後述する第2の光電変換ユニットの間に、必要に応じて中間層106を形成する。この中間層は第1の光電変換ユニットで吸収されなかった入射光を反射させ、再度第1の光電変換ユニットに入射させて、第1の光電変換ユニットでの発電に寄与させるために有効である。この中間層を用いることで第1の光電変換ユニットの光活性層の膜厚を薄くすることが可能となり、特に光劣化のある材料である非晶質シリコンを光活性層とした光電変換ユニットの光劣化低減に有効である。
【0059】
中間層の材料としては金属酸化物材料としてのSnO2、ITO、ZnOなどの他に、シリコン酸化物材料、シリコン炭化物材料、シリコン窒化物材料、ダイヤモンドライクカーボン等の炭素材料などを用いることができる。製膜方法としては、CVD法、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、およびゾルゲル法など公知の技術を用いることができる。必要であれば適当なドープ元素を含んだ材料を製膜時に製膜原料に混ぜることよって導電性を付与して制御することができる。
【0060】
膜厚は材質によっても異なるが、10nm〜300nm程度で適宜調節する。
【0061】
次に、微結晶シリコン膜を光活性層に含む第2の光電変換ユニットを形成する。製膜方法としては、プラズマCVD(PECVD)法や触媒CVD(Cat−CVD)法の他に、Cat−PECVD法を用いることができる。特にCat−PECVD法を用いれば高速かつ高品質の膜形成が可能である。
【0062】
次に、逆導電型半導体層105とは反対の導電型(すなわちp型)の一導電型半導体層107を形成する。すなわち導電型決定元素を高濃度にドープした非晶質シリコン層または微結晶シリコン層を前記中間層106上に形成する。膜厚は10〜100nm程度の範囲で調節する。ドーピング元素濃度については1×1018〜1021/cm3程度として、実質的にはp+型とする。なお、製膜時に用いるSiH4、H2、およびドーピング用ガスであるB2H6などのガスに加えてCH4などのC(炭素)を含むガスを適量混合すればSixC1−x膜が得られ、光吸収ロスの少ない窓層形成に非常に有効であるとともに、開放電圧向上のための暗電流成分の低減にも有効である。また、C以外にもO(酸素)を含むガスやN(窒素)を含むガスを適量混合させることでも同様な効果を得ることができる。
【0063】
次に、前記一導電型半導体層107上に、実質的にi型の微結晶シリコン光活性層108を形成する。微結晶シリコン光活性層108の膜厚は1〜3μm程度で形成し、第1の光電変換ユニットからの出力電流と第2の光電変換ユニットからの出力電流を整合させることが望ましい。このとき、例えば励起周波数40.68MHzのプラズマCVD法を用いて、SiH4/H2流量を10/100sccm、基板温度を200℃程度、RF投入電力を0.1〜0.15W/cm2、成膜圧力を200Pa程度とすると、微結晶シリコン膜が得られる。このとき膜中水素濃度については、5%以下、より好ましくは3.5%以下とする。また膜構造としては、(110)配向の柱状結晶粒の集合体として製膜後の表面形状が光閉じ込めに適した自生的な凹凸構造となるようにするのが望ましい。
【0064】
前記成膜条件は一例でありこれに限定されるものではなく、例えば励起周波数を60MHz等に高周波化すれば、より高品質な微結晶シリコンが得られる。なお、微結晶シリコン膜の製膜方法として特にCat−PECVD法を用いれば比較的低い水素希釈率であっても容易に結晶化を促進できるので高速製膜には特に好適である。また、微結晶シリコンは微結晶SiCや微結晶SiGe等と置き換えてもよい。さらには微結晶シリコンを含んだナノ構造シリコンと置き換えてもよい。この場合の膜厚も第1の光電変換ユニットからの出力電流と第2の光電変換ユニットからの出力電流を整合させるように適宜調整する。
【0065】
次いで、実質的にi型の微結晶シリコン光活性層108上に逆導電型半導体層109を形成する。すなわち、一導電型半導体層107とは反対の導電型(すなわちn型)の導電型決定元素を高濃度にドープした非晶質シリコン層または微結晶シリコン層を形成する。膜厚は2〜100nm程度の範囲で調節する。ドーピング元素濃度については1×1018〜1021/cm3程度として、実質的にはn+型とする。なお製膜時に用いるSiH4、H2、およびドーピング用ガスであるPH3などのガスに加えてCH4などのC(炭素)を含むガスを適量混合すればSixC1−x膜が得られ、光吸収ロスの少ない膜形成ができるとともに、開放電圧向上のための暗電流成分の低減にも有効である。また、C以外にもO(酸素)を含むガスやN(窒素)を含むガスを適量混合させることでも同様な効果を得ることができる。
【0066】
なお、接合特性をより改善するために、p型層(n型層)と光活性層との間や光活性層とn型層(p型層)との間に実質的にi型の非単結晶Si層や非単結晶SixC1−x層を挿入してもよい。このときの挿入層の厚さは0.5〜50nm程度とする。
【0067】
次に、透明導電層110を形成する。透明導電膜材料としては、金属酸化物材料としてのSnO2、ITO、ZnOなどの他に、シリコン酸化物材料、シリコン炭化物材料、シリコン窒化物材料、ダイヤモンドライクカーボン等の炭素材料などを用いることができる。製膜方法としては、CVD法、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、およびゾルゲル法など公知の技術を用いることができる。必要であれば適当なドープ元素を含んだ材料を製膜時に製膜原料に混ぜることよって導電性を付与して制御することができる。
【0068】
次に、裏面側電極111となる金属膜を形成する。金属材料としては、導電特性および光反射特性に優れるAl、Agなどを用いるのが望ましい。製膜方法としては、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、スクリーン印刷法などの公知の技術を使用できる。例えばAgをスパッタリング法によりシート抵抗が1Ω/□程度以下となるように適当な膜厚に堆積する。具体的には1μm程度堆積するとシート抵抗0.1Ω/□以下が実現される。
【0069】
表取り出し電極112については、例えばAl、Ag等を受光面側電極102上に真空成膜技術、プリント及び焼成技術、さらに、メッキ技術等を用いて形成することができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態を例示したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の目的を逸脱しない限り任意の形態とすることができる。なお、以上の説明では受光面側半導体層からpin型とした太陽電池について説明したが、受光面側からnip型としても同様の効果が得られる。また光活性層として僅かにp型もしくはn型としたpp−n型やpn−n型としても良い。また、タンデム型に限らず、トリプル接合型であっても、あるいはそれ以上の多接合型であっても、微結晶半導体を含んだ膜が凹凸形状面上に製膜される場合には、本発明が適用可能である。さらには、光活性層の材料としてシリコン系膜に限られるものでもなく、微結晶半導体を含んだ材料に適用可能である。また素子構造を適宜変更することにより、膜面側を光入射としたサブストレート型光電変換装置についても同様の効果が期待できる。
【0071】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0072】
<実施例1及び比較例1>
まずフラットな表面のガラス基板101上にSnO2から成る受光面側電極102を熱CVD法により1.0μmの膜厚にて形成した。このSnO2の凹凸形状をAFMにて測定したところ、Rmaxは0.3μmであった。
【0073】
次にプラズマCVD法により、Bドープの一導電型(p型)のa−SiC:H層103を10nm、ノンドープの実質的にi型のa−Si:H層104を0.25μm、Pドープの逆導電型(n型)半導体層105を形成し第1の光電変換ユニットとした。
【0074】
この第1の光電変換ユニット上に、プラズマCVD法により、Bドープの一導電型(p型)の微結晶Si層107を30nm、ノンドープの実質的にi型の微結晶Si層108を2.0μm、Pドープの逆導電型(n型)のa−Si:H層109を20nm形成し第2の光電変換ユニットとした。
【0075】
なお中間層106は形成していない。
【0076】
この第2の光電変換ユニット上に、それぞれスパッタ法によりZnOから成る透明導電層110を50nm、Agから成る裏面側電極層111を1μm形成した。
【0077】
この後パターニングにより受光面側電極102を露出し、表取り出し電極112となるAlをスパッタ法により1μm形成し、タンデム型太陽電池とした。
【0078】
表1に逆導電型半導体層105の膜種、膜厚について種々の条件とした場合のタンデム型太陽電池の諸特性を示す。
【0079】
【表1】
【0080】
表1から分かるように逆導電型半導体層105としては非晶質材料の方が微結晶材料に比べ、FFが高いことが分かる。また、非晶質材料で膜厚が30nmを超えたところから、Voc、FFが向上している。特に50〜100nmで変換効率が高い。さらに、非晶質Siより、非晶質SiCの方が高いJscとなっている。これらの理由としては、逆導電型半導体層105を非晶質材料としたことにより凹凸の緩和が生じており、この緩和度合いが膜厚増に従って強調されていることで説明される。
【0081】
すなわち、非晶質材料から成る逆導電型半導体層105の膜厚をある程度以上として凹凸を緩和した上に第2の光電変換ユニット、特に光活性層となる微結晶Siが形成されるため、高品質結晶成長の阻害要因となる凹凸が緩和され、微結晶Siの膜品質が向上し、Voc、FFが向上したものである。
【0082】
この逆導電型半導体層105の材料としては、凹凸を緩和するように成長する非晶質材料であればよく、その中でも、第1の光電変換ユニットの光活性層より光学的禁制帯幅の広い材料であれば、光吸収ロスも最小限にすることができることから、特に好ましい。この光学的禁制帯幅の広い材料としてはSiCが導電型制御、高品質膜の形成の観点から特に好ましい。また、逆導電型半導体層105を非晶質Siと非晶質SiCというように2層、あるいはそれ以上の多層とすることによっても同様の効果が期待できる。
【0083】
<実施例2及び比較例2>
表2に一導電型半導体層103の膜種、膜厚について種々の条件とした場合のタンデム型太陽電池の諸特性を示す。ここで逆導電型半導体層105としてはa−Si:Hとし、膜厚は20nmである。その他の構造は実施例1及び比較例1と同様とした。
【0084】
【表2】
【0085】
表2から分かるように一導電型半導体層103としては非晶質材料の方が微結晶材料に比べ、FFが高いことが分かる。また、非晶質材料で膜厚が30nmを超えたところから、Voc、FFが向上している。特に50〜100nmで変換効率が高い。さらに、非晶質Siより、非晶質SiCの方が高いJscとなっている。これらの理由としては、一導電型半導体層103を非晶質材料としたことにより凹凸の緩和が生じており、この緩和度合いが膜厚増に従って強調されていることで説明される。
【0086】
すなわち、一導電型半導体層103の膜厚をある程度以上として凹凸を緩和した上に第2の光電変換ユニット、特に光活性層となる微結晶Siが形成されるため、高品質結晶成長の阻害要因となる凹凸が緩和され、微結晶Siの膜品質が向上し、Voc、FFが向上したものである。
【0087】
この一導電型半導体層103の材料としては、凹凸を緩和するように成長する非晶質材料であればよく、その中でも、第1の光電変換ユニットの光活性層より光学的禁制帯幅の広い材料であれば、光吸収ロスも最小限にすることができることから、特に好ましい。この光学的禁制帯幅の広い材料としてはSiCが導電型制御、高品質膜の形成の観点から特に好ましい。また、逆導電型半導体層105を非晶質Siと非晶質SiCというように2層、あるいはそれ以上の多層とすることによっても同様の効果が期待できる。
【0088】
<実施例3及び比較例3>
表3にa−Si:Hから成る光活性層104の膜厚について種々の条件とした場合のタンデム型太陽電池の諸特性を示す。ここで逆導電型半導体層105としてはa−Si:Hとし、膜厚は20nmである。その他の構造は実施例1及び比較例1と同様とした。
【0089】
【表3】
【0090】
表3から分かるように光活性層104の膜厚が200nmを超えたところから、Voc、FFが向上している。これらの理由としては、光活性層104を非晶質材料としたことにより凹凸の緩和が生じており、この緩和度合いが膜厚増に従って強調されていることで説明される。
【0091】
すなわち、光活性層104の膜厚をある程度以上として凹凸を緩和した上に第2の光電変換ユニット、特に光活性層となる微結晶Siが形成されるため、高品質結晶成長の阻害要因となる凹凸が緩和され、微結晶Siの膜品質が向上し、Voc、FFが向上したものである。この光活性層104の材料としては、凹凸を緩和するように成長する非晶質材料であればよい。
【0092】
<実施例4及び比較例4>
表4にZnOから成る中間層106を導入した場合のタンデム型太陽電池の諸特性を示す。ここで逆導電型半導体層105としてはa−Si:Hとし、膜厚は20nmである。その他の構造は実施例1及び比較例1と同様とした。
【0093】
【表4】
【0094】
表4から分かるようにZnO中間層106としては非晶質の方が結晶に比べ、FFが高いことが分かる。また、膜厚が30nmを超えたところから、Voc、FFが向上している。特に50nmを超えたところで変換効率が高い。これらの理由としては、中間層106を非晶質材料としたことにより凹凸の緩和が生じており、この緩和度合いが膜厚増に従って強調されていることで説明される。
【0095】
すなわち、中間層106の膜厚をある程度以上として凹凸を緩和した上に第2の光電変換ユニット、特に光活性層となる微結晶Siが形成されるため、高品質結晶成長の阻害要因となる凹凸が緩和され、微結晶Siの膜品質が向上し、Voc、FFが向上したものである。
【0096】
この中間層106の材料としては、凹凸を緩和するように成長する非晶質材料であればよい。この材料としては金属酸化物としてのSnO2、ITO、ZnOなどの他に、シリコン炭化物材料、シリコン窒化物材料、ダイヤモンドライクカーボン等の炭素材料などを用いることができる。金属酸化物材料の中ではZnOが耐プラズマ性の形成の観点から特に好ましい。また、中間層106を非晶質ITOと非晶質ZnOというように2層、あるいはそれ以上の多層とすることによっても同様の効果が期待できる。
【0097】
<実施例5及び比較例5>
表5に一導電型半導体層107の膜種、膜厚について種々の条件とした場合のタンデム型太陽電池の諸特性を示す。ここで逆導電型半導体層105としてはa−Si:Hとし、膜厚は20nmである。その他の構造は実施例及び比較例1と同様とした。
【0098】
【表5】
【0099】
表5から分かるように一導電型半導体層107としては非晶質材料の方が微結晶材料に比べ、FFが高いことが分かる。また、非晶質材料で膜厚が30nmを超えたところから、Voc、FFが向上している。特に50〜100nmで変換効率が高い。さらに、非晶質Siより、非晶質SiCの方が高いJscとなっている。これらの理由としては、一導電型半導体層107を非晶質材料としたことにより凹凸の緩和が生じており、この緩和度合いが膜厚増に従って強調されていることで説明される。
【0100】
すなわち、一導電型半導体層107の膜厚をある程度以上として凹凸を緩和した上に第2の光電変換ユニット、特に光活性層となる微結晶Siが形成されるため、高品質結晶成長の阻害要因となる凹凸が緩和され、微結晶Siの膜品質が向上し、Voc、FFが向上したものである。
【0101】
この一導電型半導体層107の材料としては、凹凸を緩和するように成長する非晶質材料であればよく、その中でも、第1の光電変換ユニットの光活性層より光学的禁制帯幅の広い材料であれば、光吸収ロスも最小限にすることができることから、特に好ましい。この光学的禁制帯幅の広い材料としてはSiCが導電型制御、高品質膜の形成の観点から特に好ましい。また、逆導電型半導体層107を非晶質SiCと微結晶Siというように2層、あるいはそれ以上の多層とすることによっても同様の効果が期待できる。
【0102】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る多層型薄膜光電変換装置によれば、微結晶半導体を含む光活性層を形成する面が緩和された凹凸形状を有しているため、微結晶半導体を含む光活性層の品質低下を抑制することができる。これにより、第2の光電変換ユニットの特性が向上し、これにより、多層型薄膜光電変換装置の特性も大幅に向上する。
【0103】
特に、請求項2の多層型薄膜光電変換装置によれば、第1の光電変換ユニットの逆導電型半導体層により凹凸を緩和しているため、第1の光電変換ユニットへの光入射ロスも無いことから、高効率な多層型薄膜光電変換装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る多層型薄膜シリコン系太陽電池の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【図2】従来例による多層型薄膜シリコン系太陽電池の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
101:透光性基板
102:受光面側電極(一方側電極)
103、107:一導電型半導体層
104:非晶質シリコン光活性層(光活性層)
105、109:逆導電型半導体層
106:中間層
108:微結晶シリコン光活性層(光活性層)
110:透明導電層
111:裏面側電極(他方側電極)
112:取出電極
Claims (28)
- 基板上に一方側電極を設け、この一方側電極上に一導電型半導体層、半導体より成る光活性層、および逆導電型半導体層から成る第1の光電変換ユニットを設け、この第1の光電変換ユニット上に、一導電型半導体層、微結晶半導体を含む光活性層、および逆導電型半導体層から成る第2の光電変換ユニットを設け、且つ該第2の光電変換ユニットの上側に他方側電極を設けた多層型薄膜光電変換装置であって、前記一方側電極における第1の光電変換ユニットを形成する面が表面凹凸形状を有しているとともに、前記微結晶半導体を含む光活性層を形成する面が前記表面凹凸形状よりも緩和された凹凸形状を有するように、前記微結晶半導体を含む光活性層より前記基板側に配置された半導体層の膜厚が設定されていることを特徴とする多層型薄膜光電変換装置。
- 前記微結晶半導体を含む光活性層を形成する面が前記表面凹凸形状よりも緩和された凹凸形状を有するように、前記第1の光電変換ユニットにおける逆導電型半導体層の膜厚が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の多層型薄膜光電変換装置。
- 前記微結晶半導体を含む光活性層を形成する面が前記表面凹凸形状よりも緩和された凹凸形状を有するように、前記第1の光電変換ユニットにおける光活性層の膜厚が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の多層型薄膜光電変換装置。
- 前記微結晶半導体を含む光活性層を形成する面が前記表面凹凸形状よりも緩和された凹凸形状を有するように、前記第1の光電変換ユニットにおける一導電型半導体層の膜厚が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の多層型薄膜光電変換装置。
- 前記微結晶半導体を含む光活性層を形成する面が前記表面凹凸形状よりも緩和された凹凸形状を有するように、前記第2の光電変換ユニットにおける一導電型半導体層の膜厚が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の多層型薄膜光電変換装置。
- 前記第1の光電変換ユニットと前記第2の光電変換ユニットの間に中間層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の多層型薄膜光電変換装置。
- 前記微結晶半導体を含む光活性層を形成する面が前記表面凹凸形状よりも緩和された凹凸形状を有するように、前記中間層の膜厚が設定されていることを特徴とする請求項6に記載の多層型薄膜光電変換装置。
- 前記第1の光電変換ユニットの逆導電型半導体層が、非晶質半導体から成ることを特徴とする請求項2に記載の多層型薄膜光電変換装置。
- 前記第1の光電変換ユニットの逆導電型半導体層が、前記第1の光電変換ユニットの光活性層より光学的禁制帯幅の広い材料から成ることを特徴とする請求項2に記載の多層型薄膜光電変換装置。
- 前記第1の光電変換ユニットの逆導電型半導体層が非晶質SiCから成ることを特徴とする請求項2に記載の多層型薄膜光電変換装置。
- 前記第1の光電変換ユニットの逆導電型半導体層が2層以上から成り、少なくとも1層が非晶質SiCから成ることを特徴とする請求項2に記載の多層型薄膜光電変換装置。
- 前記第1の光電変換ユニットにおける逆導電型半導体層の膜厚が30nm以上であることを特徴とする請求項2に記載の多層型薄膜光電変換装置。
- 前記第1の光電変換ユニットの光活性層が、非晶質半導体から成ることを特徴とする請求項3に記載の多層型薄膜光電変換装置。
- 前記第1の光電変換ユニットにおける光活性層の膜厚が200nm以上であることを特徴とする請求項3に記載の多層型薄膜光電変換装置。
- 前記第1の光電変換ユニットの一導電型半導体層が、非晶質半導体から成ることを特徴とする請求項4に記載の多層型薄膜光電変換装置。
- 前記第1の光電変換ユニットの一導電型半導体層が、前記第1の光電変換ユニットの光活性層より光学的禁制帯幅の広い材料から成ることを特徴とする請求項4に記載の多層型薄膜光電変換装置。
- 前記第1の光電変換ユニットの一導電型半導体層が非晶質SiCから成ることを特徴とする請求項4に記載の多層型薄膜光電変換装置。
- 前記第1の光電変換ユニットの一導電型半導体層が2層以上から成り、少なくとも1層が非晶質SiCから成ることを特徴とする請求項4に記載の多層型薄膜光電変換装置。
- 前記第1の光電変換ユニットにおける一導電型半導体層の膜厚が30nm以上であることを特徴とする請求項4に記載の多層型薄膜光電変換装置。
- 前記第2の光電変換ユニットの一導電型半導体層が、非晶質半導体から成ることを特徴とする請求項5に記載の多層型薄膜光電変換装置。
- 前記第2の光電変換ユニットの一導電型半導体層が、前記第1の光電変換ユニットの光活性層より光学的禁制帯幅の広い材料から成ることを特徴とする請求項5に記載の多層型薄膜光電変換装置。
- 前記第2の光電変換ユニットの一導電型半導体層が非晶質SiCから成ることを特徴とする請求項5に記載の多層型薄膜光電変換装置。
- 前記第2の光電変換ユニットの一導電型半導体層が2層以上から成り、少なくとも1層が非晶質SiCから成ることを特徴とする請求項5に記載の多層型薄膜光電変換装置。
- 前記第2の光電変換ユニットにおける一導電型半導体層の膜厚が30nm以上であることを特徴とする請求項5に記載の多層型薄膜光電変換装置。
- 前記中間層が非晶質材料から成ることを特徴とする請求項7に記載の多層型薄膜光電変換装置。
- 前記中間層が金属酸化物材料から成ることを特徴とする請求項7に記載の多層型薄膜光電変換装置。
- 前記中間層の膜厚が30nm以上であることを特徴とする請求項7に記載の多層型薄膜光電変換装置。
- 前記一方側電極の第1の光電変換ユニットを形成する面の表面凹凸形状の最大高さ(Rmax)が0.1μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の多層型薄膜光電変換装置。
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