JP4779135B2 - 孔版印刷用エマルションインキ - Google Patents
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Description
次に、貫通孔が穿孔された孔版原紙を、多孔質構造に形成された版胴の外周に巻きつけた状態で、そのさらに外側に重ねた紙等の被印刷体と共に、版胴ごと、当該版胴内に配置され、表面にインキが供給されたスキージロールと、版胴の外側から、当該版胴と孔版原紙と被印刷体とを間に挟んでスキージロールに圧接された圧ロールとの間を通過させる。そうすると、孔版原紙の、貫通孔を穿孔した部分においてのみ、選択的に、インキが、スキージロール側から被印刷体側へ通過して、被印刷体の表面に、原稿像に対応した印刷画像が印刷される。
上記の孔版印刷装置用のインキとしては、一般に、油相と水相とからなるW/O(油中水)型で、かつ油相中に着色顔料を含有させたエマルションインキが用いられる。また、このエマルションインキにおいては、油相に比べて水相の比率を高く設定するのが一般的である。これは、水相が、エマルションインキの、温度変化に対する粘度変化を小さくし、紙等の被印刷体への浸透速度を速め、構造粘性を高め、孔版印刷装置内での垂れを防止すると共に、孔版原紙から被印刷体を剥がす時に糸を曳くのを防止する等の効果を有するためである。また、油相中には、エマルションインキを低粘度化しつつ、垂れを防止するために、ベースとなる溶剤に、揮発性の溶剤を加えるのが一般的である。
したがって、請求項1記載の発明によれば、着色顔料としてカーボンブラックを含有する黒色の、孔版印刷用エマルションインキの、高温での保存性を低下させたり、連続印刷時に印刷のにじみや裏移りを生じたりすることなしに、その安定性を、これまでよりも向上することが可能となる。
このうち、第1のカーボンブラックのDBP吸油量が90cm3/100g以上、130cm 3 /100g以下に限定されるのは、DBP吸油量が90cm3/100g未満では、当該第1のカーボンブラックを配合することによる、油相中の油を良好に保持して、エマルションインキの安定性を向上する効果が得られないためである。またDBP吸油量が130cm 3 /100gを超えるカーボンブラックは、印刷時に、保持した油を速やかに放出しにくい傾向があり、印刷の乾きが遅くなって、連続印刷時に、印刷のにじみや裏移りを生じるためである。
上記第1のカーボンブラックと併用する、第2のカーボンブラックのDBP吸油量が30cm 3 /100g以上、50cm3/100g以下に限定されるのは、DBP吸油量が30cm 3 /100g未満では、当該第2のカーボンブラックによる、第1のカーボンブラックによる油の保持を補助する機能が十分に得られないためである。またDBP吸油量が50cm3/100gを超える場合には、当該第2のカーボンブラックを併用したことによる、エマルションインキの流動性が大きく低下するのを抑制して、当該エマルションインキの、被印刷体への良好な浸透性を維持する効果が得られないためである。
DBP吸油量、および窒素吸着比表面積が上記の条件を満足する第2のカーボンブラックとしては、例えば、デグサ社製のプリンテックス25〔DBP吸油量:45cm3/100g、窒素吸着比表面積45m2/g〕、プリンテックス35〔DBP吸油量:42cm3/100g、窒素吸着比表面積65m2/g〕、スペシャルブラック350〔DBP吸油量:45cm3/100g、窒素吸着比表面積65m2/g〕、スペシャルブラック250〔DBP吸油量:46cm3/100g、窒素吸着比表面積40m2/g〕等の1種または2種以上が挙げられる。
このうち、溶剤としては、例えば、石油系溶剤〔パラフィン系(メタン列)炭化水素、ナフテン系(シクロパラフィン系)炭化水素、オレフィン系(エチレン列)炭化水素、芳香族炭化水素等〕、スピンドル油、軽油、灯油、マシン油、ギヤー油、潤滑油、モーター油等の鉱物油類;あまに油、トール油、とうもろこし油、オリーブ油、ナタネ油、ヒマシ油、大豆油、脱水ひまし油等の植物油類;ヤシ油、パーム油等の植物油脂類;ポリイソブチレン類、水素化ポリデセン類、トリメチロールプロパンエステル類、ネオペンチルエステル類、ペンタエリスリトールエステル類、シロキサン類、シリコーン類、フロロカーボン類、アルキル置換ジフェニルエーテル類、フタル酸エステル類、リン酸エステル類等の合成油類などの1種または2種以上が挙げられる。
樹脂は、着色顔料としての第1および第2のカーボンブラックの、溶剤に対する濡れ性を改善して油相中への分散性を向上し、かつ、エマルションインキの安定性を向上すると共に、印刷後の着色顔料を、被印刷体の表面に固着させるためなどに添加される。樹脂としては、例えば、ロジン、重合ロジン、水素化ロジン、ロジンエステル、水素化ロジンエステル等のロジン系樹脂類;ロジン変性フェノール樹脂等のロジン変性樹脂類;アルキド樹脂;フェノール樹脂;マレイン酸樹脂;石油樹脂;ゴム誘導体;重合ひまし油等の1種または2種以上が挙げられる。特に、着色顔料の、溶剤に対する濡れ性を改善する効果に優れたアルキド樹脂が好ましい。樹脂の添加量は、エマルションインキの総量の20重量%以下、特に1〜7重量%であるのが好ましい。
また、非イオン性界面活性剤としては、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のソルビタン脂肪酸エステル類;グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等の多価アルコールの脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸のポリオキシエチレンエーテル、高級アルコールのポリオキシエチレンエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステルのポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンラノリン誘導体等のポリオキシエチレンエーテル類;ポリオキシエチレンアルキルアミン;ポリオキシエチレン脂肪酸アミド;ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物等の1種または2種以上が挙げられる。
その他の添加剤としては、例えば、顔料分散剤、ゲル化剤、酸化防止剤等が挙げられる。また、流動性を調整する補助剤として、ワックス等を主成分としたコンパウンドを添加することもできる。顔料分散剤としては、上で説明した界面活性剤が挙げられる他、アルキルアミン系高分子化合物、アルミニウムキレート系化合物、スチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリアクリル酸の部分アルキルエステル、ポリアルキレンポリアミン脂肪族多価カルボン酸、ポリエーテル、エステル型アニオン界面活性剤、高分子量ポリカルボン酸の長鎖アミン塩、ポリアミド、燐酸エステル系界面活性剤、アルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸塩等の1種または2種以上も使用可能である。顔料分散剤の添加量は、着色顔料としての第1および第2のカーボンブラックの合計量の40重量%以下、特に2〜35重量%であるのが好ましい。
油相の粘度の比η1/η2が2.0〜4.5であれば、印刷の乾きが遅くなるのを防止して、連続印刷時に印刷のにじみや裏移りが生じるのを防止すると共に、インキの消費量を抑えながら、十分な画像濃度を有する印刷画像を形成することが可能となる。なお、これらの効果をより一層、向上するためには、油相の粘度の比η1/η2は、上記の範囲内でも特に、2.5〜4.0であるのがさらに好ましい。
このうち、水は清浄であればよく、水道水、純水(イオン交換水)、蒸留水等がいずれも使用可能である。O/W型樹脂エマルションや水溶性樹脂は、保湿や増粘のために添加されるもので、このうち、O/W型樹脂エマルションとしては、例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ウレタン等の樹脂のエマルションの1種または2種以上が挙げられる。
pH調整剤としては、例えば、トリエタノールアミン、酢酸ナトリウム、トリアリルアミン等が挙げられる。水溶性樹脂を含む系では、必要に応じてpH調整剤を添加して、水相のpHを6〜8に調整することで、当該水溶性樹脂による、保湿や増粘の効果を良好に発揮させることができる。また、水相には、防錆剤や消泡剤を添加して、印刷時に、孔版印刷装置の金属部分が錆びたり、インキが泡立ったりするのを防止することもできる。
(油相の調製)
アルキド樹脂4重量部と、ソルビタンモノオレエート2.5重量部と、酸化防止剤0.1重量部とを、パラフィン系炭化水素4.5重量部と、ナフテン系炭化水素13.5重量部との混合溶媒に溶解して樹脂ワニスを調製した。次に、この樹脂ワニス24.6重量部に、DBP吸油量が100cm3/100g、窒素吸着比表面積が81m2/gである第1のカーボンブラック〔キャボット社製のエルフテックス8〕1.25重量部と、DBP吸油量が45cm3/100g、窒素吸着比表面積が45m2/gである第2のカーボンブラック〔デグサ社製のプリンテックス25〕3.75重量部とをプレミックスした後、3本ロールミルを5回、通過させて、カーボンブラックの二次粒子径が10μmになるまで粉砕して油相を調製した。
硫酸マグネシウム1重量部と、エチレングリコール4重量部と、純水65.4重量部とを、ディスパーを用いて混合して水相を調製した。
(孔版印刷用エマルションインキの製造)
油相29.6重量部を、ディスパーを用いてかく拌しながら、水相70.4重量部を徐々に滴下して乳化させて、W/O型のエマルション構造を有する孔版印刷用エマルションインキを製造した。
第1および第2のカーボンブラックの添加量を、それぞれ、表1に示す値としたこと以外は実施例1と同様にして孔版印刷用エマルションインキを製造した。
第1のカーボンブラックとして、キャボット社製のエルフテックス8に代えて、DBP吸油量が100cm3/100g、窒素吸着比表面積が110m2/gであるカーボンブラック〔三菱化学(株)製のMA−100〕2.5重量部を添加したこと以外は実施例2と同様にして孔版印刷用エマルションインキを製造した。
第1のカーボンブラックとして、キャボット社製のエルフテックス8に代えて、DBP吸油量が85cm3/100g、窒素吸着比表面積が89m2/gであるカーボンブラック〔キャボット社製のリーガル300R〕2.5重量部を添加したこと以外は実施例2と同様にして孔版印刷用エマルションインキを製造した。
第2のカーボンブラックとして、デグサ社製のプリンテックス25に代えて、DBP吸油量が66cm3/100g、窒素吸着比表面積が80m2/gであるカーボンブラック〔デグサ社製のプリンテックス300〕2.5重量部を添加したこと以外は実施例2と同様にして孔版印刷用エマルションインキを製造した。
第1のカーボンブラックに代えて、体質顔料であるタルク(DBP吸油量:60cm3/100g)2.5重量部を添加したこと以外は実施例2と同様にして孔版印刷用エマルションインキを製造した。
油相の粘度測定:
実施例1〜3、比較例1〜8で調製した、水相を加えてエマルション化する前の油相について、B型粘度計BM〔(株)トキメック製〕とNo.4ローターとを使用して、測定温度23±1℃、ローターの回転数6rpmの条件で、粘度η1を測定すると共に、測定温度23±1℃、ローターの回転数60rpmの条件で、粘度η2を測定した。そして、両測定結果から、粘度の比η1/η2を求めた。なお、測定は、所定量の油相をB型粘度計の測定容器に入れて、粘度計ごと、温度23±1℃、相対湿度60%の環境下で1時間、静置後、同環境下で行った。
実施例1〜3、比較例1〜8で製造した孔版印刷用エマルションインキを、感熱性の孔版原紙とサーマルヘッドとを組み合わせた市販の孔版印刷装置用のインキ容器に充てんし、このインキ容器を孔版印刷装置に装着して、下記の各項目の評価を行った。
(インキの垂れ)
孔版印刷装置を動かして、インキ容器から、エマルションインキを、スキージロールの表面に供給した状態で、装置を停止して、温度23±1℃の常温条件下で1ヶ月間、放置した後、内部を観察した。そして下記の基準で、インキの垂れの有無を評価した。
×:スキージロールからインキが垂れ落ちていた。インキの垂れあり。
(裏移り)
孔版印刷装置を動かして、普通紙上に20枚の連続印刷を行った。そして、印刷後に、装置の排紙部に重ねられた、20枚の普通紙の裏面を観察し、下記の基準で、裏移りの有無を評価した。
△:汚れがあったが、実用上、問題ないレベルであった。裏移りほとんどなし。
×:著しく汚れていた。裏移りあり。
(インキの消費量)
孔版印刷装置を動かして、普通紙上に、1000枚の連続印刷を行った後、インキ容器に残ったインキ量を測定した。そして、下記の基準で、インキの消費量を評価した。
×:インキの消費量は、適正値を超えていた。インキの消費量過剰。
(画像濃度)
孔版印刷装置を動かして、普通紙上に印刷を行った。そして、印刷画像のベタ印刷部の画像濃度を、グレタグマクベス社製の反射濃度計RD−914を用いて測定して、下記の基準で、画像濃度を評価した。
×:画像濃度が0.84未満であるか、または1.20を超えていた。画像濃度不適正。
高温保存試験:
実施例1〜3、比較例1〜8で製造した孔版印刷用エマルションインキを、60℃に設定した恒温槽中で2週間、保存した後、状態を観察して、下記の基準で、高温での保存性を評価した。
×:エマルションの崩壊による油水分離が見られたり、著しい粘度変化が見られたりした。高温での保存性不良。
結果を表2に示す。
これに対し、実施例1〜3のエマルションインクはいずれも、各試験の評価が○であって、良好な特性を有することがわかった。
Claims (1)
- 油相と水相とからなるW/O型の孔版印刷用エマルションインキであって、油相中に、DBP吸油量が90cm3/100g以上、130cm 3 /100g以下で、かつ窒素吸着比表面積が40m 2 /g以上、100m 2 /g以下である第1のカーボンブラックと、DBP吸油量が30cm 3 /100g以上、50cm3/100g以下で、かつ窒素吸着比表面積が40m 2 /g以上、100m 2 /g以下である第2のカーボンブラックとを、重量比で20/80〜80/20の割合で含有することを特徴とする孔版印刷用エマルションインキ。
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