JP4778139B2 - 白色導電性粉末及びその応用 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、毒性上問題のあるアンチモンや高価なインジウムを使用せずに高導電性能で、かつ白色度の高い白色導電性粉末及びその応用に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在知られている導電性粉末は、カーボンブラック、金属粉、アンチモンを含有した酸化スズ(ATO)粉末、スズを含有した酸化インジウム(ITO)粉末等のように均一構造からなる単一粒子型、また、選択された無機粉末を基体粒子とし、その表面に導電層を被覆した導電層被覆型とに分けられる。特に後者の導電層被覆型の導電性粉末は単一粒子型導電性粉末に比べて、基体粒子の選択により、比重の軽量化による添加量の低減化、板状形・針状型粒子の形状を利用した導電性能の効率化が図れ、また、基体粒子の屈折率あるいは粒子サイズを適宜選択することにより、透明性あるいは高隠蔽性を有する導電性粉末を製造することが出来るという利点がある。この導電層被覆型の導電性粉末は、帯電防止あるいは物質の抵抗値を調整する等の目的で、塗料、プラスチック、繊維等に配合されており、その使用量も年々増加傾向にある。また、その中でも特に高導電性能が要求される用途においては、アンチモンを含有した酸化スズ系のものが主流である。
【0003】
しかしながら、近年アンチモンの毒性問題が取り沙汰されており、アンチモンを含有しない導電性粉末の開発が必要となってきた。このため、リンを含有する酸化スズを被覆した導電性粉末が考えられ、特開平6−207118が開示されたが、これは導電性能の経時安定性の点においてアンチモンを含有した酸化スズ系に劣るものであった。また、酸化スズを含む酸化インジウムを被覆した導電性粉末として、例えば特開平6−338213あるいは特開平8−231883等が開示されている。これらの粉末は非常に良好な導電性能及び経時安定性を有しており、アンチモンレス導電性粉末としては申し分ないものであるが、原料となるインジウムの価格が非常に高いことから、コストの面で使用用途が限定されてしまうという欠点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の従来の問題点を解決し、安全性に疑問のあるアンチモンを含有せずに、且つ良好な導電性能を有しながら経時安定性に優れ、なお且つ高価なインジウムを使用せずに安価で白色度の高い白色導電性粉末を提供することを目的とする。本発明はまた、この様な白色導電性粉末を樹脂に配合してなる白色導電性樹脂組成物を提供することを目的とする。本発明は更に、この様な白色導電性粉末を外添剤として用いた電子写真用トナーを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、白色無機顔料粒子(以下、基体顔料とも称する)の表面にアンチモンを含有しない導電層を被覆することにより、アンチモンを含有した二酸化スズを被覆した白色導電性粉末、あるいは酸化スズを含む酸化インジウムを被覆した白色導電性粉末と同等以上の特性を持つ白色導電性粉末を得るべく鋭意研究を重ねた結果、白色無機顔料粒子の表面に導電層としてタングステン元素を含む二酸化スズを被覆した場合、白色度を落とさずに良好な導電性能を有しながら経時安定性に優れ、しかも安価な白色導電性粉末が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち本発明の白色導電性粉末は、白色無機顔料粒子の表面に、タングステン元素を含む二酸化スズの被覆層を有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の白色導電性粉末は、さらなる導電特性の向上等の観点から、白色無機顔料粒子の表面に、下層が二酸化スズの層であり上層がタングステン元素を含む二酸化スズの被覆層を有することを特徴とする。
【0008】
また、前記タングステン元素を含む二酸化スズの被覆層又はタングステン元素を含む上層が、該各層のSnO2に対し前記タングステン元素をWとして0.1〜20重量%含むことが望ましい。0.1重量%を下回ると所望の導電性が得られず、20重量%を越えると着色による基体顔料の白色度が低下し、経時安定性が劣化する。
【0009】
また、本発明の白色導電性粉末は、粉体として初期の体積固有抵抗値が500Ω・cm以下、好ましくは200Ω・cm以下である優れた導電性能を有するとともに、実用材料として重要な経時安定性、すなわち、粉体の体積固有抵抗値の経時変化値が50℃、10日間の条件において100Ω・cm以下、好ましくは50Ω・cm以下であり、良好な導電性能を保持する。
【0010】
更に、本発明は、前記いずれかの白色導電性粉末を樹脂に配合してなる白色導電性樹脂組成物又は前記白色導電性粉末を外添剤として用いた電子写真用トナーを提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる白色導電性粉末は、白色無機顔料粒子の表面に二酸化スズの水和物を基体顔料に対してSnO2として1〜15重量%被覆し、これを接着層とし、該接着層上にタングステン元素を0.1〜20重量%含む二酸化スズの水和物を、基体顔料に対しSnO2として3〜150重量%被覆させ、該被覆後に非酸化性雰囲気にて400〜900℃で加熱処理することにより得られる。
【0012】
また、前記のようにして得られた白色導電性粉末にカップリング剤を用いて表面処理することで、更に良好な経時安定性及び分散性が得られる。白色導電性粉末の表面処理に用いるカップリング剤の種類は、導電粉末の使用目的に応じて適宜選択することが出来るが、シラン系、チタネート系、ジルコネート系、アルミネート系及びジルコアルミネート系からなる群から選択された一種以上のものを使用することが出来る。
【0013】
本発明の白色導電性粉末の基体は、白色無機顔料粒子なら、市販の二酸化チタン、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、チタン酸アルカリ金属塩あるいは白雲母のいずれも使用出来る。二酸化チタンを例にとり、より詳細に説明すると、粒子の大きさには制限がなく、また、球状、針状などどの様な形状のものでも、更には結晶形として、アナターゼ型、ルチル型及び非晶質のものも使用することが出来る。なお、本願では白色の場合を重要視した関係から、後述の実施例を含め白色導電性粉末を中心に説明するが、例えば酸化鉄など種々の有色顔料にも同様に応用出来る。
【0014】
また、本発明の白色導電性粉末を樹脂に配合して導電性制御に有利で且つ安価な白色導電性樹脂組成物を製造することが出来る。本発明において使用される樹脂成分としては、導電性を付与したい市販の合成繊維、プラスチック及び塗料等であればいずれも使用することが出来る。具体的には、ポリエチレン等のポリアルキル樹脂、塩化ビニル等のポリビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂等の種々の樹脂を使用出来、熱可塑性、熱硬化性の別なく、またこれらの混合物、ハロゲン置換された樹脂等にも使用出来る。
【0015】
また、本発明の白色導電性粉末を外添剤として用いることで帯電性制御に有利で且つ安価なトナーを製造することが出来る。トナーとしては磁性一成分、非磁性一成分、二成分等のいずれの電子写真用トナーにも使用出来、トナーの構成成分に関しては公知のものを任意に使用することが出来る。
【0016】
以下、本発明の白色無機顔料粒子を用いた白色導電性粉末の製造方法を詳細に説明する。
二酸化チタン等の白色無機顔料粒子の表面に、タングステン元素を含む二酸化スズの水和物あるいは二酸化スズの層を被覆させる方法としては、種々の方法を用いることが出来る。例えば、二酸化スズの層を被覆させる場合には、白色無機顔料の水懸濁液にスズ塩またはスズ酸塩の溶液を添加した後、アルカリまたは酸を添加する方法、あるいはスズ塩またはスズ酸塩とアルカリまたは酸とを別々に並行して添加し(並行添加)、被覆する方法等がある。
【0017】
また、タングステン元素を含む二酸化スズの水和物を被覆する場合には、上述したスズ塩またはスズ酸塩の溶液中にタングステン酸塩、メタタングステン酸塩、パラタングステン酸塩またはタングステン化合物を溶解する方法、あるいは中和に使用するアルカリまたは酸にタングステン酸塩、メタタングステン酸塩、パラタングステン酸塩またはタングステン化合物を溶解する方法等がある。白色無機顔料粒子の表面に酸化スズの水和物あるいはタングステン元素を含む二酸化スズの水和物を均一に被覆処理するには前記並行添加の方法がより適しており、処理中は水懸濁液を50〜100℃に加温保持することがより好ましい。また、二酸化スズあるいはタングステン元素を含む二酸化スズの水和物を被覆処理する際のpHは2〜9とする。本発明において導電層の大部分を占める二酸化スズ水和物の等電点はpH=5.5であるので、好ましくはpH=2〜5あるいはpH=6〜9を維持することが重要であり、これにより二酸化スズあるいはタングステン元素を含む二酸化スズの加水反応生成物を白色無機顔料粒子の表面に均一に沈着させることが出来る。
【0018】
スズ塩としては、例えば塩化スズ、硫酸スズ、硝酸スズ等を使用することが出来る。また、スズ酸塩としては、例えばスズ酸ナトリウム、スズ酸カリウム等を使用することが出来る。
【0019】
タングステン酸塩としては、例えばタングステン酸アンモニウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸ナトリウム等を使用することが出来る。メタタングステン酸塩としては、例えばメタタングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸カリウム、メタタングステン酸ナトリウム等を使用することが出来る。パラタングステン酸塩としては、例えばパラタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸カリウム、パラタングステン酸ナトリウム等を使用することが出来る。また、タングステン化合物としては、オキシ塩化タングステン等を使用することが出来る。
【0020】
アルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、アンモニア水、アンモニアガス等、酸としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、酢酸等を使用することが出来る。
【0021】
白色無機顔料粒子の表面へのタングステン元素を含む二酸化スズの水和物の被覆量は、基体顔料に対しSnO2として好ましくは3〜150重量%、さらに好ましくは10〜120重量%である。タングステン元素を含む二酸化スズの水和物の被覆量が少なすぎると所望の導電性が得られず、多すぎると白色度の低下あるいは被覆が不均一になり、顔料としての一般的特性が低下すること、更にコストの上昇につながるために好ましくない。また、タングステン元素添加量は、前記SnO2に対しWとして好ましくは0.1〜20重量%、さらに好ましくは0.5〜15重量%である。少なすぎると所望の導電性が得られず、多すぎると着色による白度の低下及び経時安定性の劣化、更にコストの上昇につながるために好ましくない。
【0022】
次に、白色無機顔料粒子の表面へタングステン元素を含まない接着層を介してその上にタングステン元素を含む二酸化スズの水和物の被覆層を形成させる場合について説明する。上述した様に白色無機顔料粒子に直接タングステン元素を含む二酸化スズ水和物を被覆しても、導電特性の良好な白色導電性粉末は得られるが、使用用途によっては導電性能が不足する場合が生じる。このため、下層に接着層となる二酸化スズの水和物の層を先に形成し、次いで上層にタングステン元素を含む二酸化スズの水和物を被覆することで、更なる導電特性の向上を図ることが出来る。
【0023】
下層の二酸化スズの水和物の被覆量は、基体顔料に対しSnO2として好ましくは1〜15重量%、さらに好ましくは3〜15重量%である。少なすぎると上に被覆するタングステン元素を含む二酸化スズの水和物の被覆状態が不均一となり、多すぎても基体顔料粒子表面に接着していない二酸化スズの水和物の量、いわゆる遊離物が多くなり、被覆が不均一になるため好ましくない。
【0024】
次に上層にタングステン元素を含む二酸化スズの水和物を被覆するが、被覆量は基体顔料に対しSnO2として好ましくは3〜150重量%、さらに好ましくは5〜120重量%である。タングステン元素を含む二酸化スズの水和物の被覆量が少なすぎると所望の導電性が得られず、多すぎると白度の低下あるいは被覆が不均一になり、顔料としての一般的特性が低下すること、更にコストの上昇につながるために好ましくない。また、タングステン元素添加量は、上層のSnO2に対しWとして好ましくは0.1〜20重量%、さらに好ましくは0.5〜15重量%である。少なすぎると所望の導電性が得られず、多すぎると着色による白度の低下及び経時安定性の劣化、更にコストの上昇につながるために好ましくない。
【0025】
前記被覆処理したものを、濾過、乾燥させた後、加熱処理を行う。加熱処理を行う際には、400〜900℃で非酸化性雰囲気にて行うことが好ましく、空気中で加熱処理したものと比べると粉体の体積固有抵抗値を4〜5桁低くすることが出来る。また、非酸化性雰囲気とするためには、不活性ガスを使用することが出来る。不活性ガスとしては、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、炭酸ガス等を使用することが出来る。工業的には、窒素ガスを吹き込みながら加熱処理を行うことがコスト的に有利であり、特性の安定したものが得られる。
加熱する際の温度は、好ましくは400〜900℃、さらに好ましくは450〜850℃である。この範囲よりも低い場合にも高い場合にも所望の導電性が得難い。また、加熱時間は短すぎる場合には加熱効果がなく、長すぎてもそれ以上の効果が望めないことから、15分〜4時間程度が適当であり、好ましくは30分〜2時間程度である。
【0026】
また、前記加熱処理した白色導電性粉末をカップリング剤で表面処理することにより、更に良好な経時安定性及び分散性を向上させた白色導電性粉末を得ることが出来る。表面処理に用いるカップリング剤の種類は、導電粉末の使用目的に応じて適宜選択することが出来るが、シラン系、チタネート系、ジルコネート系、アルミネート系及びジルコアルミネート系からなる群から選択された一種以上のものを使用することが出来る。カップリング剤の処理量は、好ましくは0.05〜10重量%、さらに好ましくは0.1〜8重量%である。少なすぎると経時安定性及び分散性を改善する効果が得られず、多すぎると逆にカップリング剤処理層が絶縁層となって導電性能の低下を引き起こすこと、更にコストの上昇につながるため、好ましくない。
【0027】
カップリング剤の表面処理方法としては、種々の方法があるが、例えばヘンシェルミキサー等の高速撹拌混合機中で乾式処理を行う方法、あるいは白色導電性粉末を有機溶媒や水に分散させて懸濁液とし、その溶液中にカップリング剤を添加して処理を行う方法等がある。カップリング剤を表面に均一に処理する場合には後者の溶液中での処理が適しているが、有機溶媒系の場合には蒸留操作、粉砕等、水系の場合には固液分離、乾燥及び粉砕等の工程が必要となり、製造の容易さ、コストの点ではヘンシェルミキサー等の高速撹拌混合機を用いた方法が好ましい。
【0028】
前記白色導電性粉末を樹脂に配合し、さらに分散特性等の良い白色導電性樹脂組成物を製造することも出来る。白色導電性樹脂組成物は、樹脂成分と白色導電性粉末とを二軸混練機や熱ローラー等により練り込んで製造しても良く、また、サンドグラインダー等を用いて白色導電性粉末を含有した樹脂塗料として作製し、導電性あるいは制電性を付与したい基材上に塗布し、薄膜として使用することも出来る。また、白度が高いので有色顔料や染料を添加すると、鮮明な導電性有色樹脂組成物が得られる。
【0029】
導電性あるいは制電性繊維として用いる場合にはその製造工程上、あるいは物性上の理由で、樹脂に練り込んで製造した組成物を使用する方法が好ましい。一方、フィルム、樹脂製容器、壁材、電子写真用部品等の帯電防止、あるいは表面抵抗値の調整を目的とする場合には、樹脂塗料として塗布する製造方法が容易であり、しかもコストが安く好ましい。
【0030】
配合する白色導電性粉末の量は、導電性樹脂組成物の製造方法により、また、目的とする導電率により異なるため、使用用途に応じて調整する必要がある。その例示として例えば帯電防止として使用するためには、1010Ω・cm以下の体積固有抵抗が必要であるため、白色導電性粉末を好ましくは20〜80重量%、さらに好ましくは30〜75重量%配合する必要がある。配合する白色導電性粉末の量が少なすぎると所望する体積固有抵抗が得られず、多すぎると配合樹脂の強度が低下し、更にコストの上昇につながるために好ましくない。
【0031】
また、前記白色導電性粉末を外添剤として用い、さらに帯電特性等に優れた電子写真用トナーを製造することが出来る。トナーとしては磁性一成分、非磁性一成分、二成分等のいずれの電子写真用トナーにも使用出来、トナーの構成成分に関しては公知のものを任意に使用することが出来る。
【0032】
前記白色導電性粉末のトナーに対する外添量は、得られるトナーが所望する特性となるような量であれば良く、特に制限はされないが、通常0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜4重量%であり、公知の方法でトナーに添加出来る。0.05重量%未満の場合には、トナーの流動性や帯電調整に対する改善効果が認められず好ましくない。また、5重量%を越える場合には、白色導電性粉末がトナー表面から離脱し、単独で挙動する粒子が増加するため感光体やキャリアの汚染原因となり、画像特性に悪影響を及ぼすため好ましくない。
【0033】
また、トナーを製造する際に、本発明の白色導電性粉末は単独で使用されるものとは限られず、必要に応じて本発明に属する白色導電性粉末を二種以上組み合わせたり、酸化チタン、アルミナ等の酸化物微粒子や、テフロン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデン等の滑剤、あるいはポリエチレン、ポリプロピレン等の定着助剤等の他の添加剤を併用することも出来る。
【0034】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、これらは単に例示のために記すものであり、これらによって本発明の範囲が制限されるものではない。
【0035】
【実施例1】
ルチル型二酸化チタン(チタン工業製KR−310)を基体粉末として用い、この基体粉末200gを純水に分散させ、2Lの水懸濁液とし、70℃に加温した。塩化第二スズ(SnCl4・5H2O)69.8gを3N塩酸500mLに溶解させたスズ酸液Aとタングステン酸ナトリウム(Na2WO4・2H2O)3.3gを5N水酸化ナトリウム溶液500mLに溶解させたアルカリ溶液Bとを懸濁液のpHが2〜3となるように同時に滴下(並行添加)した。滴下終了後、懸濁液をろ過、洗浄し、110℃で8時間乾燥した。この乾燥物を窒素ガス気流中(1L/分)、650℃にて1時間の加熱処理を行い、目的とする白色導電性粉末を得た。
【0036】
【実施例2】
ルチル型二酸化チタン(チタン工業製KR−310)を基体粉末として用い、この基体粉末200gを純水に分散させ、2Lの水懸濁液とし、70℃に加温した。スズ酸ナトリウム(Na2SnO3・3H2O)53.1gとタングステン酸ナトリウム(Na2WO4・2H2O)3.3gを純水500mLに溶解したアルカリ溶液と1N塩酸とを懸濁液のpHが2〜3となるように同時に滴下した。以下の操作は実施例1と同様に処理して、目的とする白色導電性粉末を得た。
【0037】
【実施例3】
ルチル型二酸化チタン(チタン工業製KR−310)を基体粉末として用い、この基体粉末200gを純水に分散させ、2Lの水懸濁液とし、70℃に加温した。下層の二酸化スズ水和物を被覆するため、塩化第二スズ(SnCl4・5H2O)23.3gを3N塩酸100mLに溶解させたスズ酸液Aと5N水酸化ナトリウム溶液とを懸濁液のpHが2〜3となるように同時に滴下した。引き続き、上層のタングステン元素を含有した二酸化スズ水和物を被覆するため、別途用意した塩化第二スズ(SnCl4・5H2O)69.8gを3N塩酸600mLに溶解させたスズ酸液Bとタングステン酸ナトリウム(Na2WO4・2H2O)3.3gを5N水酸化ナトリウム溶液500mLに溶解させたアルカリ溶液Cとを懸濁液のpHが2〜3となるように同時に滴下した。以下の操作は実施例1と同様に処理して、目的とする白色導電性粉末を得た。
【0038】
【実施例4】
実施例3において、ルチル型二酸化チタンの代わりに酸化アルミニウム(住友化学工業製AKP−30)を用い、スズ酸液Bの塩化第二スズ69.8gと3N塩酸600mLを各々93.1g、800mLとし、アルカリ溶液Cのタングステン酸ナトリウム3.3gと5N水酸化ナトリウム溶液500mLを各々5.8g、700mLとしたほかは、同様に処理して、目的とする白色導電性粉末を得た。
【0039】
【実施例5】
実施例3において、ルチル型二酸化チタンの代わりに酸化亜鉛(三井金属製亜鉛華)を用い、下層の二酸化スズ水和物及び上層のタングステン元素を含有した二酸化スズ水和物を被覆する際の懸濁液のpHを6〜7としたほかは、同様に処理して、目的とする白色導電性粉末を得た。
【0040】
【実施例6】
アナターゼ型超微粒子二酸化チタン(チタン工業製STT−65C)を基体粉末として用い、この基体粉末200gを純水に分散させ、4Lの水懸濁液とし、70℃に加温した。下層の二酸化スズ水和物を被覆するため、塩化第二スズ(SnCl4・5H2O)46.6gを3N塩酸200mLに溶解させたスズ酸液Aと5N水酸化ナトリウム溶液とを懸濁液のpHが2〜3となるように同時に滴下した。引き続き、上層のタングステン元素を含有した二酸化スズ水和物を被覆するため、別途用意した塩化第二スズ(SnCl4・5H2O)372.1gを3N塩酸2500mLに溶解させたスズ酸液Bとタングステン酸ナトリウム(Na2WO4・2H2O)23.0gを5N水酸化ナトリウム溶液2500mLに溶解させたアルカリ溶液Cとを懸濁液のpHが2〜3となるように同時に滴下した。以下の操作は実施例1と同様に処理して、目的とする白色導電性粉末を得た。
【0041】
【実施例7】
実施例1で得た白色導電性粉末2000gを、60〜80℃に加温したヘンシェルミキサーに入れ、低速撹拌しながらシラン系カップリング剤のビニルトリエトキシシラン60gを約10分間かけて添加した。添加終了後は高速で15分間撹拌し、100℃にて加熱処理を行い、目的とする白色導電性粉末を得た。
【0042】
【実施例8】
実施例3で得た白色導電性粉末2000gを、60〜80℃に加温したヘンシェルミキサーに入れ、低速撹拌しながらシラン系カップリング剤のビニルトリエトキシシラン40gとn−ヘキシルトリメトキシシラン15gを約15分間かけて添加した。以下の操作は実施例7と同様に処理して、目的とする白色導電性粉末を得た。
【0043】
【実施例9】
実施例7において、実施例1の白色導電性粉末の代わりに実施例6で得た白色導電性粉末を用い、ビニルトリエトキシシラン60gを150gとしたほかは、同様に処理して、目的とする白色導電性粉末を得た。
【0044】
【実施例10】
実施例1で得た白色導電性粉末と高密度ポリエチレン(昭和電工製ショウレックスSS55008)とを二本ローラー(関西ロール製)を用い、170℃で2分間混練し、目的とする白色導電性樹脂組成物を得た。この際、白色導電性粉末の濃度が30重量%、50重量%及び70重量%となるように配合量を変化させた。得られた白色導電性樹脂組成物は、180℃に加温した加圧成形機を用い、約0.6mm厚のシートに加工した。
【0045】
【実施例11】
実施例10において、実施例1で得た白色導電性粉末の代わりに、実施例3で得た白色導電性粉末を使用することのほかは、同様に処理して、目的とする白色導電性樹脂組成物を得た。
【0046】
【実施例12】
実施例10において、実施例1で得た白色導電性粉末の代わりに、実施例7で得た白色導電性粉末を使用することのほかは、同様に処理して、目的とする白色導電性樹脂組成物を得た。
【0047】
【実施例13】
ポリエステル樹脂、カーボンブラック、オフセット防止剤、帯電調整剤をブレンダーで混合した後、KRCニーダー(栗本鉄工所製)にて溶融混練した。得られた混練物を冷却し、粗粉砕機にて粗粉砕した後、エアジェット方式による微粉砕機にて微粉砕し、更に風力分級機で分級して着色樹脂粉体を得た。この粉体100部に対して、実施例6で得た白色導電性粉末を1.0部外添し、平均粒径8μmの黒色トナーを製造した。
【0048】
【実施例14】
実施例13において、実施例6で得た白色導電性粉末の代わりに、実施例9で得た白色導電性粉末を使用することのほかは、同様に処理して、黒色トナーを製造した。
【0049】
【比較例1】
実施例1において、アルカリ溶液Bにタングステン酸ナトリウムを加えないことのほかは、同様に処理して、白色粉末を得た。
【0050】
【比較例2】
実施例1において、スズ酸液Aにリン酸(H3PO4、純度85%)1.2gを加えること、アルカリ溶液Bにタングステン酸ナトリウムを加えないことのほかは、同様に処理して、白色導電性粉末を得た。
【0051】
【比較例3】
実施例1において、加熱処理温度を650℃から1000℃に変更したことのほかは、同様に処理して、白色粉末を得た。
【0052】
【比較例4】
実施例1において、熱処理を窒素ガス気流中で行う代わりに空気中で行うことのほかは、同様に処理して、白色粉末を得た。
【0053】
【比較例5】
実施例6で基体粉末として用いたアナターゼ型超微粒子二酸化チタン(チタン工業製STT−65C)を被覆処理せずに比較物質として用いた。
【0054】
【比較例6】
実施例10において、実施例1で得た白色導電性粉末の代わりに、比較例2で得た白色導電性粉末を使用することのほかは、同様に処理して、白色導電性樹脂組成物を得た。
【0055】
【比較例7】
実施例13において、実施例6で得た白色導電性粉末の代わりに、比較例5の被覆処理をしていないアナターゼ型超微粒子二酸化チタンを使用することのほかは、同様に処理して、黒色トナーを製造した。
【0056】
【比較例8】
実施例1において、タングステン酸ナトリウム(Na2WO4・2H2O)を13.5g(SnO2に対しWとして25重量%)としたほかは同様に処理して、粉末を得た。この粉末の体積固有抵抗値は、3.9E+06Ω・cmと非常に高く、なおかつタングステン元素による着色が目視で確認され、その色調は青灰色であった。
【0057】
以上、実施例1〜14及び比較例1〜8の試料の測定結果を表1に示す。なお、表1の諸特性は、後記の要領で測定した。
【表1】
【0058】
[粉末の体積固有抵抗値]試料粉末を230kg/cm2の圧力の加圧成形した状態(直径25.4mm、厚さ3.3mm)での電気抵抗値を横河−ヒューレット・パッカード社製デジタルLCRメーター4261Aにて測定し、算出した。
【0059】
[樹脂組成物の体積固有抵抗値]樹脂シートを1cm角に切断し、上下面に導電性銀ペーストを塗布し24時間乾燥した。LCRメーター4261Aあるいはハイレジストメーター(いずれも横河−ヒューレット・パッカード社製)にて、電気抵抗値を測定し、下記式により樹脂組成物の体積固有抵抗値を算出した。なお、樹脂シートの厚さは電子式マイクロメーター(新光電子製MH−100)にて測定した。
【0060】
【数1】
【0061】
[経時変化]試料粉末を50℃に設定した乾燥機に入れ、10日間経過後の粉末の体積固有抵抗値を測定した。経時後の粉末の体積固有抵抗値から経時前の粉末の体積固有抵抗値を差し引いた値を経時変化値とした。
【0062】
[帯電安定性評価方法]硬質ポリエチレン製ネジ付き広口瓶(容量100mL)に鉄粉キャリア(TEFV200/300、パウダーテック社製)とトナーを重量比で96:4となるように採取し、低温低湿環境下(LL、15℃/20%RH)及び高温高湿下(HH、35℃/90%RH)に開封したまま24時間放置した。放置終了した広口瓶を密封し、腕振り型振とう混合機にて2分間振とう後、ブローオフ帯電量測定装置(TB−200型、東芝ケミカル社製)を用いて各環境下のトナー帯電量を測定した。結果は表1に併記した。なお、LL及びHHの環境における帯電量の差が小さいほど、帯電安定性が良好である。
Claims (5)
- 白色無機顔料粒子の表面に、下層が二酸化スズの層であり上層がタングステン元素を含む二酸化スズの被覆層を有することを特徴とする白色導電性粉末。
- 前記タングステン元素を含む二酸化スズの上層が、該上層のSnO2に対し前記タングステン元素をWとして0.1〜20重量%含むことを特徴とする請求項1に記載の白色導電性粉末。
- 粉体として初期の体積固有抵抗値が500Ω・cm以下、該体積固有抵抗値の経時変化値が50℃、10日間の条件下で100Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の白色導電性粉末。
- 請求項1から3のいずれかに記載の白色導電性粉末を樹脂に配合してなる白色導電性樹脂組成物。
- 請求項1から3のいずれかに記載の白色導電性粉末を外添剤として用いた電子写真用トナー。
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