JP4777817B2 - チップサーミスタの製造方法 - Google Patents
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Description
このようなチップサーミスタを製造する方法の一つとして、厚膜サーミスタ体をスクリーン印刷等の方法により集合絶縁基板上に形成するものがある。しかしながら、このように形成された厚膜サーミスタ体の抵抗値はばらつきが比較的大きく、所望の抵抗値範囲のものを得るために、抵抗値の調整工程が必須となっている。抵抗値の調整方法としては、例えば、レーザートリミング法又はサンドブラスト法がある。このうち、一般的な調整方法であるレーザートリミング法では、レーザー光照射の際の熱の影響を受けて抵抗値が大きく変化するため、抵抗値を計測しながらトリミングすることが困難となっている。
このようなトリミング工程の問題点については、特許文献1(特開昭60−223151号公報)及び特許文献2(特開平5−135911号公報)にも説明されている。
この方法では、1回のトリミング量を比較的小さくして、試行錯誤的にトリミング量とトリミング時間との決定しなければならず、作業時間が長くなってしまい、逆に、1回のトリミング量を大きくし過ぎると、得られる抵抗値は高くなり過ぎてしまう。トリミング量とトリミング時間とを試行錯誤的に決定することは、特許文献1のように、一枚の回路基板上に厚膜サーミスタが一個程度形成されるハイブリッドICでは可能であるかもしれない。しかしながら、シート状の集合絶縁基板に碁盤目状に多数個のチップサーミスタを形成する場合には、各厚膜サーミスタ体にばらつきがあるため、各個ごとにトリミング量を調整することは作業効率のうえで実質的に不可能である。
しかしながら、特許文献2のような回帰式を用いたとしても、トリミングを一回のみとした場合には、トリミング量にばらつきが生じるため、抵抗値が目標範囲内に精度良く仕上がらないという問題が生じる。トリミング量にばらつきが発生する要因としては、第一にレーザートリマーそのものの精度に限界があること、第二に厚膜サーミスタ体の印刷ズレ、ダレ、或いは膜厚の不均一さ等が挙げられる。
また、本発明によれば、前記抵抗値偏差幅を、前記厚膜サーミスタ体12の幅の半分以下にして、抵抗値を所定範囲内に収束するようにした請求項1に記載のチップサーミスタの製造方法が提供される。
これに対して、本発明では、集合絶縁基板上の複数の区画に形成した厚膜サーミスタ体の初期抵抗値を所定の偏差幅で複数にグループ分けし、各グループ毎の抵抗値偏差が小さくなるように且つ分布が収束するように次のトリミングステップとして目標とする抵抗値の偏差幅を定め、この目標に近づけるように、各グループ毎に準備工程のサンプル試験結果に応じてトリミング長さの設定値を定め、この設定値に基づいて厚膜サーミスタ体をトリミングし、さらに、前のトリミングステップで得られた抵抗値偏差よりも所望する公称抵抗値に対する抵抗値許容差に近づいて収束するように、次のトリミングステップとしての抵抗値偏差幅を定め、同様な工程を少なくとも1回以上繰り返し行うものである。
つまり、次のトリミングステップとしての抵抗値の偏差幅は、レーザトリミングすることによって実際のトリミング長さやトリミング倍率のばらつきに応じて定めるものであり、各トリミングステップとして目標とする抵抗値の偏差と準備工程のサンプル試験結果とに応じて、トリミング長さの設定値を定めるので、ばらつきの影響を抑制あるいは制御しながら、厚膜サーミスタ体の抵抗値の偏差をも小さくしつつ、抵抗値の分布も収束させることが可能になり、作業効率も良く、良好な抵抗値の歩留が得られる。
図1は、チップサーミスタの製造過程における集合絶縁基板上の一区画を示す平面図であり、絶縁基板10の各区画の両端に電極膜11が形成され、これら両電極膜11間に厚膜サーミスタ体12が形成され、絶縁基板10の各区画の両側縁には厚膜サーミスタ体12が形成されていない露出部分13が設けられる。そして、各区画の厚膜サーミスタ体12には、レーザートリミング装置(図示せず)により、図1に示したようなトリミング溝14a〜14cが形成される。厚膜サーミスタ体12におけるトリミング溝の長さは、厚膜サーミスタ体12の幅の半分以下で、抵抗値が所定範囲内に収束するように適宜設定される。トリミング溝の本数は、図1のように3本に限定されるものではなく、抵抗値が所定範囲内に収束するように適宜定められる。またレーザトリミング装置は、少なくとも、各厚膜サーミスタ体の抵抗値を測定する手段と、レーザ光を照射するレーザーヘッドと、絶縁基板の端辺からのレーザ光照射のスタートポイントとトリミング長さを設定するための手段とを備えるものが使用される。
本発明では、最初に、チップサーミスタの製造工程と同じサンプル、すなわち、電極膜11と厚膜サーミスタ体12が形成されたシート状の集合絶縁基板を使用してデータ処理を行う。図2はサンプルの一区画を示した平面図である。以下、サンプルとして、幅0.8mm、長さ1.6mmの公称外形寸法を有し、B定数が1400K、目標抵抗値、すなわち、所望する公称抵抗値3kΩ、抵抗値許容差−5%〜+5%のNTCの厚膜サーミスタの場合を例示して説明する。
データ処理は、各区画の厚膜サーミスタ体12の初期抵抗値を計測し、絶縁基板10の各区画の両側縁からのトリミング長さAをレーザトリミング装置に設定値として入力し、トリミング後の各区画の厚膜サーミスタ体12におけるトリミング長さBと抵抗値を計測する。トリミング長さAの設定値は、例えば、200μmから400μmまで50μm間隔で入力する。各厚膜サーミスタ体12毎に初期抵抗値に対する抵抗値の切条調整率、すなわちトリミング倍率を算出し、トリミング長さAの各設定値毎にトリミング倍率の平均値と標準偏差を算出する。図3(a)はトリミング長さBを横軸に、トリミング倍率を縦軸にとったグラフであり、図3(b)はトリミング長さの設定値A毎に、実際のトリミング長さBのばらつき、トリミング倍率の平均値、トリミング倍率の標準偏差の結果をまとめた表である。
図3(a)のグラフからは、設定値としてのトリミング長さAが同一であっても、実際のトリミング長さBにばらつきが生じることが判る。またトリミング長さAを小さくすることにより、トリミング倍率が小さくなり、且つばらつきを抑制でき、逆に、トリミング長さAを大きくすることにより、トリミング倍率が大きくなり、且つばらつきも大きくなる。
本発明では、集合絶縁基板上の複数の厚膜サーミスタ体を初期抵抗値の偏差幅で複数にグループ分けし、厚膜サーミスタ体の初期抵抗値と目標抵抗値、すなわち公称抵抗値との偏差が比較的大きい場合には、トリミング長さAを比較的長く設定するものであり、この場合、偏差が比較的大きいため、トリミング倍率のばらつきの影響は受け難く、厚膜サーミスタ体の抵抗値を目標抵抗値に速やかに近似させることが可能になる。
このようにトリミングして、厚膜サーミスタ体の初期抵抗値と目標抵抗値、すなわち公称抵抗値との偏差を比較的小さくした後、或いは最初から比較的小さい場合には、トリミング長さAを比較的小さく設定するものであり、この場合、トリミング倍率のばらつきは抑制されるため、トリミング後の厚膜サーミスタ体の抵抗値は比較的高い確立で目標抵抗値範囲内、すなわち、所望する公称抵抗値に対する抵抗値許容差内に収束させることができる。
準備工程においてサンプル試験が終了したら、シート状の集合絶縁基板の初期抵抗値を測定し、初期抵抗値が許容範囲内にある複数の区画を目標抵抗値からの偏差dにより複数にグループ分けする。
例えば、−5%<d<5%の区画を合格品とし、トリミング後の目標とする範囲を0%≦d<5%とするときに、d<−40%とd>5%とを不良品としてトリミングの対象から除外し、それ以外の許容範囲−40%≦d<0%の区画をトリミング対象とする。そして、このトリミング対象の区画は、表1に示したように、偏差が−5%≦d<0%、−15%≦d<−5%、−40%≦d<−15%の3グループに分ける。
次に、抵抗値の分布が許容範囲−40%≦d<0%よりも収束して目標抵抗値に近づくように、次のステップとしての抵抗値偏差幅−20%≦d≦2%を定める。そして、トリミング対象の複数の区画を当該ステップ−20%≦d≦2%に近づけるべく、準備工程で求めた実際のトリミング長さとトリミング倍率と分布に応じて、トリミング長さの設定値Aを各グループ毎に、250μm、300μm、350μmとそれぞれ定めた。
ここで、準備工程で求めた実際のトリミング長さとトリミング倍率と分布に応じて、トリミング長さの設定値Aを定める方法は、該当するステップの抵抗値と図3(a)のトリミング倍率の平均値とを照合して設定値を定めるものである。この時、トリミング倍率の標準偏差が小さいトリミング長さの設定値Aを用いることで、次のステップとしての抵抗値偏差内に収束させることを目的とする。
以上の設定値をレーザートリミング装置にトリミング長さAとして設定した後に、各区画毎に第1ステップのトリミングを行う。
トリミング対象区画の全てのトリミングが終わると、厚膜サーミスタ体は既に冷却された状態となっているため、第1ステップのトリミングを行った区画を対象として、再び各厚膜サーミスタ体の抵抗値を測定する。この抵抗値が目標範囲0%≦d<5%であれば、その区画を合格品として第2ステップのトリミング対象から除外し、またd>5%の区画は不良品としてトリミングの対象から除外し、抵抗値偏差が−40%≦d<0%の区画をトリミング対象として、表1に示したように、抵抗値偏差で−10%≦d<0%、−15%≦d<−10%、d<−15%の3グループに分ける。
次に、第1ステップのトリミングに対する当該ステップの目標とする抵抗値偏差−20%≦d≦2%よりも収束するように、次のステップの目標とする抵抗値偏差幅を−10%≦d≦2%と定める。そして、トリミング対象の複数の区画を当該ステップの抵抗値偏差−10%≦d≦2%に近づけるべく、準備工程で求めた実際のトリミング長さとトリミング倍率と分布に応じて、トリミング長さの設定値Aを各グループ毎に、250μm、300μm、350μmとそれぞれ定めた。ここで、トリミング長さの設定値Aを定める手順は、上記と同様である。
上述の設定値Aをトリミング長さAとして設定した後に、各区画毎に第2ステップのトリミングを行う。
トリミング対象区画の全てにおいて第2ステップのトリミングが終わったら、第1ステップ及び第2ステップと同様に、第2ステップのトリミングを行った区画を対象として、厚膜サーミスタ体の抵抗値を測定し、この抵抗値が目標範囲0%≦d<5%であれば、その区画を合格品として第3ステップのトリミング対象から除外し、またd>5%の区画は不良品としてトリミングの対象から除外し、偏差が−20%≦d<0%の区画をトリミング対象として、表1に示したように、偏差が−5%<d<0%、d<−5%の2グループに分ける。
次に、第2ステップのトリミング時の目標−10%≦d≦2%よりも収束して目標抵抗値に近づいた、新たな目標としての抵抗値偏差幅を−5%≦d≦2%と定める。そして、トリミング対象の複数の区画を目標−5%≦d≦2%に近づけるべく、準備工程で求めた実際のトリミング長さとトリミング倍率と分布に応じて、トリミング装置のトリミング長さの設定値Aを各グループ毎に、250μm、300μmとそれぞれ定めた。ここで、トリミング装置のトリミング長さの設定値Aを定める手順は、上記と同様である。これらトリミング長さAを設定値として設定後に、トリミング対象の各区画に対して第3ステップのトリミングを行う。
11 電極膜
12 厚膜サーミスタ体
13 露出部分
14a トリミング溝
14b トリミング溝
14c トリミング溝
15 トリミング溝
Claims (2)
- 絶縁基板上の電極膜間に厚膜サーミスタ体を形成したものを複数に区画した集合絶縁基板をサンプルとして用い、まずそのサンプルにおける各区画の厚膜サーミスタ体の初期抵抗値を計測し、つぎに前記各区画の側縁からのトリミング長さAを抵抗値が所定範囲内に収束するように複数間隔をおいて設定し、それらをレーザトリミング装置に設定値として入力し、その設定値により前記厚膜サーミスタ体をレーザトリミングしてトリミング長さBと抵抗値とのばらつきを計測し、前記トリミング長さBの設定値毎に次工程で実際にトリミングするトリミング倍率の平均値及びトリミング倍率の標準偏差を算出する準備工程と、
つづいて、チップサーミスタの実際の工程において、前記厚膜サーミスタ体を初期抵抗値の偏差幅をもとに複数にグループ分けし、前記厚膜サーミスタ体の初期抵抗値と目標とする公称抵抗値との偏差が比較的大きい場合にはトリミング長さAを比較的長く設定し、また前記厚膜サーミスタ体の初期抵抗値と公称抵抗値との偏差が比較的小さい場合には前記トリミング長さAを比較的短く設定して前記グループ毎に、実際のトリミングを行う第1ステップにおけるトリミング工程と、
さらに、前記第1ステップにおけるトリミング工程で抵抗値偏差が、ある範囲にあるものを複数グループに分け、前記抵抗値偏差幅を収束して2回目以降のトリミングを行う第2ステップであるトリミング工程と、
からなるチップサーミスタの製造方法。 - 前記抵抗値偏差幅を、前記厚膜サーミスタ体12の幅の半分以下にして、抵抗値を所定範囲内に収束するようにした請求項1に記載のチップサーミスタの製造方法。
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