JP4770549B2 - 赤外線センサ - Google Patents

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本発明は、赤外線センサに関するものである。
従来から、熱型の赤外線センサとして、温度検知部がベース基板の一表面から離間して配置され、温度検知部が当該温度検知部とベース基板とを熱絶縁する断熱部を介してベース基板に支持された赤外線センサが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
上記特許文献1に開示された赤外線センサでは、断熱部が、ベース基板の上記一表面から離間して配置されベース基板側とは反対側に温度検知部が積層される支持部と、支持部の側縁から延長された2つの脚部とで構成されており、支持部とベース基板の上記一表面との間に間隙が形成され、温度検知部に接続された金属配線が各脚部それぞれに沿って形成されている。ここにおいて、上記特許文献1に開示された赤外線センサでは、断熱部が、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜との積層膜をパターニングすることにより形成されている。また、上記特許文献1に開示された赤外線センサでは、赤外線を吸収する赤外線吸収層が温度検知部に積層されている。
なお、上記特許文献1には、赤外線吸収層と温度検知部とを備えたセンサ部を2次元アレイ状(マトリクス状)に配列し各センサ部が画素を構成するようにした赤外線センサ(赤外線画像センサ)も開示されている。
特開2000−97765号公報
ところで、上記特許文献1に開示された赤外線センサでは、赤外線吸収による温度検知部の温度変化を大きくすることで高感度化を図るために、断熱部における各脚部の全長を長くして各脚部の熱コンダクタンスを小さくする(熱抵抗を大きくする)ことや、赤外線吸収層の厚さ寸法を大きくすることで赤外線の吸収効率を高めることが考えられる。
しかしながら、上記特許文献1に開示された赤外線センサでは、温度検知部のサイズを変更することなしに各脚部の全長を長くするように設計すると、センサ全体のサイズが大きくなってしまうとともに、各脚部の熱容量が大きくなって応答速度が低下してしまい、一方、赤外線吸収層の厚さ寸法を大きくすると赤外線吸収層の熱容量が大きくなって応答速度が低下してしまう。また、上記特許文献1に開示された赤外線センサでは、支持部が単相膜により構成されているので、支持部の応力に起因して支持部が変形してしまうことがあった。
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、高感度化および応答速度の高速化を図れ、且つ、支持部の応力に起因した支持部の変形を防止できる赤外線センサを提供することにある。
請求項1の発明は、ベース基板と、赤外線を吸収するとともに該吸収による温度変化を検知する温度検知部と、温度検知部がベース基板の一表面から離間して配置されるように温度検知部を支持して温度検知部とベース基板とを熱絶縁する断熱部と、ベース基板の前記一表面上に設けられ温度検知部および断熱部を透過した赤外線を温度検知部側へ反射する赤外線反射膜とを備え、ベース基板は、シリコン基板と当該シリコン基板の一表面側に形成された絶縁膜とで構成され、断熱部は、ベース基板の前記一表面から離間して配置されベース基板側とは反対側に温度検知部が形成される支持部と、多孔質材料により形成されてなり支持部とベース基板とを連結した脚部とを有し、支持部に当該支持部の応力を緩和する少なくとも1層の応力緩和層が積層されてなり、温度検知部は、脚部に沿って延長された配線を介してベース基板の前記一表面上の導体パターンと電気的に接続されてなり、配線は、チタン膜と当該チタン膜上の窒化チタン膜との積層膜からなり、脚部は、前記多孔質材料であるポーラスシリカにより形成されベース基板の前記一表面側に立設された円筒状の支持ポスト部と、支持ポスト部の上端部と支持部とを連結した梁部とで構成され、配線のうち支持ポスト部に形成されている部位は、支持ポスト部の内周面の全体と導体パターンの表面とに跨って形成されてなり、支持ポスト部が配線により補強されていることを特徴とする。
この発明によれば、温度検知部とベース基板とを熱絶縁する断熱部における脚部が多孔質材料により形成されているので、脚部の熱コンダクタンスを小さくできて高感度化を図れるとともに脚部の熱容量を小さくできて応答速度の高速化を図れ、一方、断熱部における支持部に当該支持部の応力を緩和する少なくとも1層の応力緩和層が積層されているので、応力に起因した支持部の変形が起こるのを防止することができるとともに支持部の材料の選択肢が多くなる。また、この発明によれば、ベース基板の前記一表面上に設けられ温度検知部および断熱部を透過した赤外線を温度検知部側へ反射する赤外線反射膜を備えているので、温度検知部での赤外線の吸収効率を高めることができ、温度検知部の高感度化を図れる
また、この発明によれば、温度検知部は、脚部に沿って延長された配線を介してベース基板の前記一表面上の導体パターンと電気的に接続されてなり、配線は、チタン膜と当該チタン膜上の窒化チタン膜との積層膜からなり、脚部は、前記多孔質材料であるポーラスシリカにより形成されベース基板の前記一表面側に立設された円筒状の支持ポスト部と、支持ポスト部の上端部と支持部とを連結した梁部とで構成され、配線のうち支持ポスト部に形成されている部位は、支持ポスト部の内周面の全体と導体パターンの表面とに跨って形成されてなり、支持ポスト部が配線により補強されているので、脚部がシリコン酸化膜により構成される場合に比べて脚部を通した熱伝達をより抑制することができて高感度化を図れ、また、前記多孔質材料であるポーラスシリカにより形成された支持ポスト部が配線により補強される。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記支持部は、多孔質材料により形成されてなることを特徴とする。
この発明によれば、前記支持部が非多孔質材料により形成されている場合に比べて、前記支持部の低熱容量化を図れ、応答速度のより一層の高速化を図れる。
請求項1の発明は、高感度化および応答速度の高速化を図れ、且つ、支持部の応力に起因した支持部の変形を防止できるという効果がある。
以下、本実施形態の赤外線センサについて図1を参照しながら説明する。
本実施形態の赤外線センサは、シリコン基板1aと当該シリコン基板1aの一表面側に形成されたシリコン酸化膜からなる絶縁膜1bとで構成される矩形板状のベース基板1と、赤外線を吸収するとともに該吸収による温度変化を検知する温度検知部3と、温度検知部3がベース基板1の一表面(図1(b)における上面)から離間して配置されるように温度検知部3を支持して温度検知部3とベース基板1とを熱絶縁する断熱部4とを備えている。
断熱部4は、ベース基板1の上記一表面から離間して配置されベース基板1側とは反対側に温度検知部3が形成される支持部41と、支持部41とベース基板1とを連結した2つの脚部42,42とを有している。なお、断熱部4については、後述する。
温度検知部3は、温度に応じて電気抵抗値が変化するボロメータ形のセンシングエレメントであり、支持部41側のチタン膜と当該チタン膜上の窒化チタン膜とからなるセンサ層で構成されている。ここで、窒化チタン膜は、チタン膜の酸化防止膜として設けてある。なお、センサ層の材料としては、チタンに限らず、例えば、アモルファスシリコン、酸化バナジウムなどを採用してもよい。また、温度検知部3は、温度に応じて電気抵抗値が変化するセンシングエレメントに限らず、温度に応じて誘電率が変化するセンシングエレメント、サーモパイル型のセンシングエレメント、焦電型のセンシングエレメントなどを採用してもよく、いずれのセンシングエレメントを採用した場合でも、材料を適宜選択することで一般的な薄膜形成技術を利用して形成することができる。ここにおいて、温度に応じて誘電率の変化するセンシングエレメントの材料としては、例えば、PZT、BSTなどを採用すればよい。
温度検知部3は、平面形状が蛇行した形状(ここでは、つづら折れ状の形状)に形成されており、両端部が断熱部4の脚部42,42に沿って延長された配線8,8を介してベース基板1の上記一表面上の金属膜(例えば、Al−Si膜など)からなる導体パターン10,10と電気的に接続されている。ここにおいて、本実施形態では、配線8,8の材料として、温度検知部3を構成するセンサ層と同じ材料を採用しており(ここでは、チタン膜と窒化チタン膜との積層膜)、配線8,8と温度検知部3とを同時に形成している。また、本実施形態では、各導体パターン10,10の材料としてAl−Siを採用しており、各導体パターン10,10それぞれの一部がパッドを構成しているので、一対のパッドを通して温度検知部3の出力を外部へ取り出すことができる。
また、本実施形態の赤外線センサでは、ベース基板1の上記一表面上に、温度検知部3および支持部41を透過した赤外線を温度検知部3側へ反射する赤外線反射膜6が設けられている。ここにおいて、本実施形態の赤外線センサは、検出対象の赤外線として人体から放射される8μm〜13μmの波長帯の赤外線を想定しており、赤外線吸収層5の材料としてSiONを採用しているが、赤外線吸収層5の材料はSiONに限らず、例えばSi、SiO、金黒などを採用してもよい。一方、赤外線反射膜6の材料としては、Al−Siを採用している。
上述の断熱部4における脚部42,42は、ベース基板1の上記一表面側において導体パターン10,10上に立設された2つの円筒状の支持ポスト部42a,42aと、各支持ポスト部42a,42aそれぞれの上端部と支持部41とを連結した梁部42b,42bとで構成されており、支持部41とベース基板1との間に間隙7が形成されている。ここで、支持部41の外周形状が矩形状であって、各梁部42b,42bは、支持部41の一側縁の長手方向の一端部から当該一側縁に直交する方向に延長され更に当該一側縁の上記一端部から他端部に向う方向に沿って延長された平面形状に形成されており、支持部41の厚み方向に沿った中心軸に対して回転対称性を有するように配置されている。なお、上述の配線8,8のうち脚部42,42の梁部42b,42b上に形成された部位の線幅は、当該配線8,8を通した熱伝達を抑制するために梁部42b,42bの幅寸法よりも十分に小さく設定してある。また、配線8,8のうち支持ポスト部42a,42aに形成されている部位は、支持ポスト部42a,42aの内周面の全体と導体パターン10,10の表面とに跨って形成されており、支持ポスト部42a,42aが配線8,8により補強されている。
また、本実施形態の赤外線センサでは、断熱部4における支持部41に、当該支持部41の応力を緩和する2層の応力緩和層41b,41cが支持部41を挟む形で積層されており、上述の温度検知部3は、支持部41上の応力緩和層41c上に積層されている。
ところで、本実施形態の赤外線センサでは、断熱部4の脚部42,42および支持部41が多孔質材料により形成されている。ここで、断熱部4の脚部42,42および支持部41の多孔質材料として、多孔質の酸化シリコンの一種であるポーラスシリカを採用しているが、多孔質の酸化シリコン系有機ポリマーの一種であるメチル含有ポリシロキサン、多孔質の酸化シリコン系無機ポリマーの一種であるSi−H含有ポリシロキサン、シリカエアロゲルなどを採用してもよく、多孔質材料として、多孔質の酸化シリコン、多孔質の酸化シリコン系有機ポリマー、多孔質の酸化シリコン系無機ポリマーの群から選択される材料を採用すれば、断熱部4の形成にあたっては、ゾルゲル溶液をベース基板1の上記一表面側に回転塗布してから、乾燥させるプロセスを採用することができ、断熱部4を容易に形成することが可能となる。
ここにおいて、本実施形態における脚部42,42は、多孔度が60%のポーラスシリカ膜(多孔質シリコン酸化膜)により構成してあるが、多孔度が小さ過ぎると十分な断熱効果が得られず多孔度が大き過ぎると機械的強度が弱くなって構造形成が困難となるので、ポーラスシリカ膜の多孔度は例えば40%〜80%程度の範囲内で適宜設定すればよい。
ここで、2つの脚部42,42合計の熱コンダクタンスGは、脚部42の材料の熱伝導率をα〔W/(m・K)〕、脚部42の長さをL〔μm〕、脚部42の断面積をSとすれば、G=2×α×(S/L)で求められるが、仮に、脚部42の材料がSiOの場合には、α=1.4〔W/(m・K)〕、L=50〔μm〕、S=10〔μm〕とすれば、熱コンダクタンスGは、
G=2×α×(S/L)=560×10−9〔W/K〕となる。
これに対して、本実施形態のように、脚部42を多孔度が60%のポーラスシリカ膜により構成している場合には、α=0.05〔W/(m・K)〕、L=50〔μm〕、S=10〔μm〕とすれば、熱コンダクタンスGは、
G=2×α×(S/L)=2.0×10−8〔W/K〕
となり、熱コンダクタンスGを脚部42がシリコン酸化膜により構成される比較例の熱コンダクタンスGの10分の1よりも小さな値とすることができ、脚部42,42を通した熱伝達をより抑制することができ、高感度化を図れる。
また、支持部41の熱容量C1は、支持部41の体積比熱をcv、支持部41の面積(厚み方向に直交する断面の面積)をA〔μm〕、支持部41の厚さをd〔μm〕とすれば、C1=cv×A×dで求められる。ここで、仮に、支持部41の材料がSiOの場合には、cv=1.8×10〔J/(m・K)〕、A=2500〔μm〕、d=0.5〔μm〕とすれば、支持部41の熱容量C1は、
C1=cv×A×d=22.6×10−10〔J/K〕となる。
これに対して、本実施形態のように、支持部41を多孔度が60%のポーラスシリカ膜により構成している場合には、cv=0.88×10〔J/(m・K)〕、A=2500〔μm〕、d=0.5〔μm〕とすれば、支持部41の熱容量C1は、
C1=cv×A×d=11.0×10−10〔J/K〕
となり、支持部41の熱容量C1を支持部41がシリコン酸化膜により構成される比較例の場合に比べて半分よりも小さな値とすることができ、時定数が小さくなって応答速度の高速化を図れる。
ところで、本実施形態では、支持部41においてベース基板1側に積層された応力緩和層(以下、第1の応力緩和層と称す)41bを支持部41よりも膜厚の薄いシリコン酸化膜により構成し、支持部41においてベース基板1側とは反対側に積層された応力緩和層(以下、第2の応力緩和層41cと称す)を支持部41よりも膜厚の薄いシリコン窒化膜により構成してある。
ここにおいて、シリコン酸化膜からなる第1の応力緩和層41bの熱容量C2は、第1の応力緩和層41bの体積比熱をcv、第1の応力緩和層41bの面積(厚み方向に直交する断面の面積)をA〔μm〕、第1の応力緩和層41bの厚さをd〔μm〕とすれば、C2=cv×A×dで求められ、cv=2.19×10〔J/(m・K)〕、A=2500〔μm〕、d=0.2〔μm〕とすれば、第1の応力緩和層41bの熱容量C2は、
C2=cv×A×d=11.0×10−10〔J/K〕となる。
また、シリコン窒化膜からなる第2の応力緩和層41cの熱容量C3は、第2の応力緩和層41cの体積比熱をcv、第2の応力緩和層41cの面積(厚み方向に直交する断面の面積)をA〔μm〕、第2の応力緩和層41cの厚さをd〔μm〕とすれば、C3=cv×A×dで求められ、cv=2.41×10〔J/(m・K)〕、A=2500〔μm〕、d=0.05〔μm〕とすれば、第2の応力緩和層41cの熱容量C3は、
C3=cv×A×d=3.0×10−10〔J/K〕となる。
したがって、支持部41の熱容量C1と各応力緩和層41b,41cの熱容量C2,C3とのトータルの熱容量Cは、C=C1+C2+C3=25.0×10−10〔J/K〕となり、支持部41がシリコン酸化膜の単相膜により構成されている場合に比べて熱容量の増加を抑えつつ、ポーラスシリカ膜からなる支持部41の応力を緩和することができる。
以下、本実施形態の赤外線センサの製造方法について図2〜図4を参照しながら説明する。なお、図2〜図4では、図1(b)と同様に、図1(a)のA−A’断面に対応する部位の断面を示してある。
まず、ベース基板1の基礎となる単結晶のシリコン基板(後述のダイシングを行うまではウェハ)1aの一表面側にシリコン酸化膜からなる絶縁膜1bを例えば熱酸化法により形成することによって、図2(a)に示す構造を得る。
その後、シリコン基板1aと絶縁膜1bとからなるベース基板1の一表面側(図2(a)における上面側)の全面に導体パターン10,10および赤外線反射膜6の材料からなる金属膜(例えば、Al−Si膜など)をスパッタ法などにより成膜した後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して上記金属膜をパターニングすることでそれぞれ上記金属膜の一部からなる導体パターン10,10および赤外線反射膜6を形成することによって、図2(b)に示す構造を得る。
次に、ベース基板1の上記一表面側の全面にレジストを回転塗布してレジスト層からなる犠牲層21を成膜することによって、図2(c)に示す構造を得る。
その後、犠牲層21上に第1の応力緩和層41bの基礎となるシリコン酸化膜を例えばプラズマCVD法などによって成膜してから、当該シリコン酸化膜をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用してパターニングすることで上記シリコン酸化膜の一部からなる第1の応力緩和層41bを形成することによって、図2(d)に示す構造を得る。
その後、第2の犠牲層21のうち各支持ポスト部42a,42aそれぞれの形成予定領域に対応する部位をエッチングして導体パターン10,10の一部の表面を露出させる円形状の開孔部23,23を形成することによって、図3(a)に示す構造を得る。
続いて、ベース基板1の上記一表面側の全面に断熱部4の材料である多孔質材料(例えば、ポーラスシリカ、シリカエアロゲルなど)からなる多孔質膜40を成膜することによって、図3(b)に示す構造を得る。ここにおいて、多孔質膜40の形成にあたっては、上記多孔質材料がポーラスシリカの場合には、ゾルゲル溶液をベース基板1の上記一表面側に回転塗布してから、熱処理で乾燥させるプロセスを採用することで容易に形成することができ、上記多孔質材料がシリカエアロゲルの場合には、ゾルゲル溶液をベース基板1の上記一表面側に回転塗布してから、超臨界乾燥処理で乾燥させるプロセスを採用することで容易に形成することができる。
上述の多孔質膜40を成膜した後、多孔質膜40上に第2の応力緩和層41cの基礎となるシリコン窒化膜を例えばプラズマCVD法などによって成膜してから、当該シリコン窒化膜をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用してパターニングすることで上記シリコン窒化膜の一部からなる第2の応力緩和層41cを形成することによって、図3(c)に示す構造を得る。
次に、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して多孔質膜40をパターニングすることで断熱部4(支持部41および脚部42,42)を形成することによって、図3(d)に示す構造を得る。
その後、ベース基板1の上記一表面側の全面に温度検知部3であるセンサ層および配線8,8の基礎となるチタン膜と窒化チタン膜との積層膜からなるセンサ材料層30をスパッタ法などにより成膜することによって、図4(a)に示す構造を得る。
次に、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用してセンサ材料層30をパターニングすることでそれぞれセンサ材料層30の一部からなる温度検知部3および配線8,8を形成することによって、図4(b)に示す構造を得る。
続いて、ベース基板1の上記一表面側の犠牲層21を選択的にエッチング除去することによって、図4(c)に示す構造の赤外線センサを得てから、ダイシングを行うことで個々の赤外線センサに分割すればよい。
以上説明した本実施形態の赤外線センサでは、温度検知部3とベース基板1とを熱絶縁する断熱部4における脚部42,42が多孔質材料により形成されているので、脚部42,42の熱コンダクタンスを小さくできて高感度化を図れるとともに脚部42,42の熱容量を小さくできて応答速度の高速化を図れ、一方、断熱部4における支持部41に当該支持部41の応力を緩和する2層の応力緩和層41b,41cが積層されているので、応力に起因した支持部41の変形が起こるのを防止することができるとともに支持部41の材料の選択肢が多くなる。なお、本実施形態では、支持部41に2層の応力緩和層41b,41cが積層されているが、支持部41に積層する応力緩和層の層数は特に限定するものではなく、少なくとも1層あればよく、応力緩和層の積層方向も特に限定するものではない。
また、本実施形態の赤外線センサでは、支持部41も多孔質材料により形成されているので、支持部41がSiOやSiなどの非多孔質材料により形成されている場合に比べて、支持部41の低熱容量化を図れ、応答速度のより一層の高速化を図れる。
また、本実施形態では、支持部41がポーラスシリカ膜により構成され、第1の応力緩和層41bがシリコン酸化膜により構成され、第2の応力緩和層41cがシリコン窒化膜により構成されているので、応力緩和層41b,41cの低熱容量化を図れるとともに、応力緩和層41b,41cをプラズマCVD法などによって容易に形成することが可能となる。なお、応力緩和層は、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜に限らず、シリコン酸窒化膜でもよい。なお、シリコン酸化膜は残留応力が圧縮応力になるのに対し、シリコン窒化膜は残留応力が引っ張り応力になり、シリコン酸窒化膜は例えばプラズマCVD法により成膜する際の原料ガスであるSiHガスとNOガスとNガス(あるいはNHガス)とのガス流量比を適宜設定してOとNとの組成比を調整することで応力を調整することができる。なお、本実施形態では、断熱部4の支持部41も多孔質材料により形成されているが、支持部41の材料として多孔質材料を採用せずに、SiOやSiなどの非多孔質材料を採用してもよい。
また、本実施形態の赤外線センサでは、ベース基板1の上記一表面側に、温度検知部3および支持部41を透過した赤外線を温度検知部3側へ反射する赤外線反射膜6が設けられているので、温度検知部3での赤外線の吸収効率を高めることができ、温度検知部3の高感度化を図れる。
なお、上記実施形態にて説明した赤外線センサは、温度検知部3を1つだけ設けた赤外線検出素子であるが、温度検知部3を2次元アレイ状(マトリクス状)に配列し各温度検知部が画素を構成するようにした赤外線画像センサでもよい。
実施形態を示し、(a)は概略斜視図、(b)は(a)のA−A’概略断面図である。 同上の製造方法を説明するための主要工程断面図である。 同上の製造方法を説明するための主要工程断面図である。 同上の製造方法を説明するための主要工程断面図である。
符号の説明
1 ベース基板
1a シリコン基板
1b 絶縁膜
3 温度検知部
4 断熱部
6 赤外線反射膜
7 間隙
8 配線
10 導体パターン
41 支持部
41b 応力緩和層(第1の応力緩和層)
41c 応力緩和層(第2の応力緩和層)
42 脚部

Claims (2)

  1. ベース基板と、赤外線を吸収するとともに該吸収による温度変化を検知する温度検知部と、温度検知部がベース基板の一表面から離間して配置されるように温度検知部を支持して温度検知部とベース基板とを熱絶縁する断熱部と、ベース基板の前記一表面上に設けられ温度検知部および断熱部を透過した赤外線を温度検知部側へ反射する赤外線反射膜とを備え、ベース基板は、シリコン基板と当該シリコン基板の一表面側に形成された絶縁膜とで構成され、断熱部は、ベース基板の前記一表面から離間して配置されベース基板側とは反対側に温度検知部が形成される支持部と、多孔質材料により形成されてなり支持部とベース基板とを連結した脚部とを有し、支持部に当該支持部の応力を緩和する少なくとも1層の応力緩和層が積層されてなり、温度検知部は、脚部に沿って延長された配線を介してベース基板の前記一表面上の導体パターンと電気的に接続されてなり、配線は、チタン膜と当該チタン膜上の窒化チタン膜との積層膜からなり、脚部は、前記多孔質材料であるポーラスシリカにより形成されベース基板の前記一表面側に立設された円筒状の支持ポスト部と、支持ポスト部の上端部と支持部とを連結した梁部とで構成され、配線のうち支持ポスト部に形成されている部位は、支持ポスト部の内周面の全体と導体パターンの表面とに跨って形成されてなり、支持ポスト部が配線により補強されていることを特徴とする赤外線センサ。
  2. 前記支持部は、多孔質材料により形成されてなることを特徴とする請求項1記載の赤外線センサ
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