JP4769440B2 - 処理装置 - Google Patents
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Description
そのため、シリコン基板中に含まれる不純物の量を正確に分析する必要があり、電気的特性等の間接的な不純物の分析方法ではなく、シリコン基板を溶解させ、不純物を直接測定する方法が採用されている。
具体的には、密閉容器中に、フッ化水素酸及び硝酸を含有する分解液と、シリコン基板とを入れ、加熱により加圧して分解液を気化させ、この蒸発した分解液により、シリコン基板を分解する(特許文献1参照)。
また、加圧して分解反応を進めているので、密閉容器を耐圧構造とする必要があり、容器の構造が複雑化するという問題もある。
シリコン基板の分解反応は、以下のようである。
(主反応)
Si+4HNO3↑→SiO2+4NO↑+2H2O+2O2↑・・・(1)
SiO2+4HF↑→SiF4+2H2O・・・(2)
SiF4↑+2HF↑→H2SiF6・・・(3)
H2SiF6+3H2O→H2SiO3↓+6HF↑・・・(4)
(副反応)
2NO+O2↑→2NO2↑・・・(5)
SiF4↑+2H2O→4HF↑+SiO2・・・(6)
また、フッ化水素酸は、シリコン基板の分解以外に、反応式(3)、(4)に示すように、SiF4と反応し、副生成物であるH2SiF6、H2SiO3の生成に消費されているため、この点からも、シリコン基板の分解速度の向上に限界が生じているものと推測される。
以上の点から、副生成ガスの蓄積や、副生成物の生成を防止することで、シリコン基板の分解速度の向上を図ることができることを見出した。
本発明は、このような知見に基づいて完成したものである。
ここで、容器の排気通路からは、1L/min以上の速度で、容器内部の気体が排出されることが好ましい。
このような本発明によれば、容器には、容器内部の気体を容器外部に排出するための排気通路が形成されているので、容器からは、分解反応に伴って発生する副生成ガスである二酸化窒素が排出されることとなる。これにより、二酸化窒素の過剰蓄積による分解液の蒸発の抑制を防止でき、分解液が効率よく蒸発することとなり、シリコン基板の分解速度の向上を図ることができる。
さらに、容器には、容器内部の気体を容器外部に排出するための排気通路が形成されているので、容器からは、SiF4が排出されることとなる。従って、反応式(3)による反応が進行しにくくなり、フッ化水素酸がシリコン基板の分解反応にのみ使用されることとなる。これにより、シリコン基板の分解速度の向上を図ることができる。
さらに、本発明は、このようにシリコン基板の分解を促進することができるので、容器を加圧する必要がなく、容器を耐圧構造としなくてよいため、容器の構造を簡略化することができる。
また、このような本発明によれば、スリット状の孔を形成することで、容器内部の気体を確実に排出させることができる。
そして、シリコン基板を支持する支持板は、略平板状であり、容器内に所定の角度をもって傾斜して配置されており、分解液の液面と平行に配置されていないので、分解液の気化を妨げることがない。これにより、シリコン基板の分解を効率よく行うことができる。
また、略平板状の支持板が分解液の液面に対して所定の角度をもって傾斜して配置されており、分解液の液面を覆うような状態となっていないので、気化した分解液の支持板の裏面への付着量を低減させることができる。これにより、気化した分解液がシリコン基板に効率よく接触することとなり、シリコン基板の分解が効率よく行われることとなる。
さらに、シリコン基板を支持する支持板を容器内の分解液の液面に対して所定の角度をもって配置しているので、液面に対して略平行に配置する場合に比べ、多数の支持板を容器内に配置することができる。これにより、多数のシリコン基板の分解を行うことができるので、シリコン基板の不純物の分析を効率よく行うことが可能となる。
支持板の表面には深さ寸法が10mm以上の凹部が形成されており、この凹部にシリコン基板を設置しているので、シリコン基板分解後の残留物が支持板から落下する虞がない。
上面部を加熱しない場合には、分解液の蒸気が、容器の上面部で結露し、水滴がシリコン基板上に落下してしまう。容器の上面部の裏面(容器内側の面)には、微量の金属不純物が存在することがあるため、結露した水滴中に、微量の金属不純物が混入されることがある。そのため、水滴がシリコン基板上に落下し、水滴中の微量の金属不純物によって、シリコン基板が汚染され、分析精度が低下してしまうという問題がある。
ここで、容器の上面部で結露した水滴の落下を防止するために、容器の上面部を湾曲させる方法があるが、例え、上面部を湾曲させても、上面部で結露した水滴の落下を防止することは難しく、微量の金属不純物を含有した水滴が落下することがあるため、分析精度の低下を確実防止することは困難である。
これに対し、本発明では、容器の上面部を加熱する加熱部を設けており、上面部での結露を確実に防止できるので、上面部での結露を防止し水滴がシリコン基板上に落下しないように、容器の上面部を湾曲させる必要がなく、容器の構造の簡略化を図ることができる。
本発明では、容器の上面部のみならず、側面部を加熱部で加熱しているので、分解液を迅速に気化させることができ、さらには、シリコン基板の分解反応を促進させることができるので、シリコン基板の分解にかかる時間を短縮することができる。
さらに、このように、容器の側面部を加熱する加熱部を設けることで、シリコン基板の分解反応が促進され、シリコン基板の分解にかかる時間を短縮できるので、容器を加圧して、分解反応を促進させる必要がない。従って、容器を耐圧構造とする必要がなく、容器の構造を簡略化することができる。
図1には、本実施形態の処理装置1が示されている。
この処理装置1は、シリコン基板21を蒸発した分解液22により分解して、シリコン基板21中に含まれる不純物を取得するためのものである。ここで、シリコン基板21中に含まれる不純物としては、例えば、Fe、Al、Na、Ni、K等が挙げられる。
本実施形態で使用するシリコン基板21の径は、例えば、200mm〜300mmである。
容器11は、図2に示すように、上面部が開口した直方体形状の容器本体111と、容器本体111の前記開口を塞ぐ蓋材112とを備える。
下面部111Aは、一辺の長さ寸法が、例えば、260mm、この一辺と直交する辺の長さ寸法が例えば、270mmとなっている。
また、側面部111Bの高さ寸法は、例えば、280mmである。
なお、この溝111B11の延出方向先端は、下面部111Aから、例えば、80mm程度、上方に位置している。
また、各溝111B11は、略平行に形成されている。この溝111B11の幅寸法T1は、例えば、20mmである。また、各溝111B11間の間隔T2は、10mm以上であることが好ましく、例えば、15mmである。
この切欠き111B21は、側面部111B2の上端縁に沿って形成されており、後述する蓋材112を装着した際に、図1に示すように、蓋材112との間にスリット状の孔113を形成することとなる。すなわち、容器11の側面部111B2上部に孔113が形成されることとなる。切欠き111B21の高さ寸法、換言すると、前記孔113の高さ寸法T3は、例えば、1mm以上であることが好ましい。
このような容器本体111内部には、分解液22が充填される。この容器本体111内部に充填された分解液22の液面の高さ位置は、溝111B11の延出方向先端の高さ位置よりも低くなる。
なお、この突出部112Aの平面形状は、容器本体111Bの開口の平面形状よりも小さくなっている。従って、突出部112Aを容器本体111Bの開口にはめ込んだ際に、突出部112Aと、容器本体111Bの側面部111Bとは当接しない。
なお、このような蓋材112も容器本体111と同様、分解液22による影響を受けにくい素材で構成されていることが好ましく、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製である。
このとき、支持板13及びシリコン基板21は、容器本体111内に充填される分解液22の液面よりも上方に位置している。
なお、支持板13の裏面は、支持板13を容器本体111の溝111B11に挿入した際に、分解液22側に位置する。
また、溝111B11は、側面部111B1にそれぞれ3本形成されているので、本実施形態では、3枚の支持板13が容器11内に設置可能となっている。
さらに、溝111B11の間隔T2は、10mm以上となっているため、容器本体111内に設置された各支持板13間の間隔も10mm以上となる。
加熱部12は、一対の加熱部本体121を備えている。ここで、本実施形態では、加熱部本体121は、ホットプレートである。
一対の加熱部本体121のうち、一方の加熱部本体121は、容器11の上面部である蓋材112上に配置され、蓋材112と接触している。
また、他方の加熱部本体121は、容器本体111の下面部111Aの下方に設置されており、下面部111Aと接触している。
この加熱部12の一対の加熱部本体121は、70℃以上、230℃以下で、蓋材112の上面及び容器本体111の下面部111Aの全面を加熱する。
まず、分解液22を容器本体111内に充填する。ここで、本実施形態では、分解液22は、フッ化水素酸と、硝酸とを含有するものであり、例えば、50wt%のフッ化水素酸と70wt%の硝酸とを体積比2:1で混合したものである。
なお、本実施形態では、分解液22をフッ化水素酸と、硝酸とを含有するとしたが、これに限らず、例えば、フッ化水素酸、硝酸、硫酸を含有するとしてもよい。
次に、3枚の支持板13の凹部131にそれぞれ、シリコン基板21を設置し、これを容器本体111内に配置する。なお、使用するシリコン基板21は予め洗浄されている。
その後、容器本体111の開口を蓋材112で塞ぎ、加熱部12により、容器11の下面部111A及び蓋材112を加熱する。加熱開始から、約15時間〜16時間でシリコン基板21の分解が終了する。
この際、分解液22は、加熱部12の加熱により、気化し、容器11内部では以下の反応が生じ、シリコン基板21が分解する。
Si+4HNO3↑→SiO2+4NO↑+2H2O+2O2↑・・・(1)
SiO2+4HF↑→SiF4+2H2O・・・(2)
SiF4↑+2HF↑→H2SiF6・・・(3)
H2SiF6+3H2O→H2SiO3↓+6HF↑・・・(4)
(副反応)
2NO+O2↑→2NO2↑・・・(5)
SiF4↑+2H2O→4HF↑+SiO2・・・(6)
次に、この残留物23の表面に、残留物23を溶解する溶解液24を滴下する。この溶解液24は、例えば、68wt%の硝酸と、36wt%の塩酸と、純水とを体積比1:1:1で混合したものである。
本実施形態では、溶解液24として、前記硝酸、塩酸、純水を1mlずつ混合したものを使用する。なお、溶解液24として、硝酸、塩酸、純水、硫酸を混合したものを使用してもよい。
その後、図5に示すように、残留物23の溶解物25をビーカ26等に回収して、ホットプレート等の加熱手段27により溶解液24が蒸発するまで、加熱する。これにより、残留物23中のシリコン成分が除去され、シリコン基板21中の不純物を得ることができる。加熱手段27による加熱温度は、例えば、100℃以上、200℃以下である。
その後、不純物を希釈して、誘導結合プラズマ質量分析計、原子吸光分析装置等により分析する。
(1)シリコン基板21及びこのシリコン基板21の分解液22を充填する容器11の蓋材112上に加熱部12の加熱部本体121が設置されているので、分解液22の蒸気が蓋材112の裏面で結露することを確実に防止できる。これにより、蓋材112の裏面で結露した水滴の落下によって、シリコン基板21が汚染されてしまうことを防止でき、シリコン基板21中の不純物の分析精度の低下を防ぐことができる。
これに対し、本実施形態では、蓋材112上に加熱部12の加熱部本体121を設けており、蓋材112の裏面での結露を確実に防止できるので、容器11の上面部である蓋材112を湾曲させる必要がなく、容器11の構造の簡略化を図ることができる。すなわち、蓋材112の裏面の形状を略平面で構成することができ、蓋材112の製造に手間を要しない。
さらに、このように、分解液22を迅速に気化させることができ、シリコン基板21の分解反応を促進させることができるので、シリコン基板21を複数枚、容器11内に入れて、同時に処理することが可能となる。
本実施形態では、加熱部12の温度を70℃以上、230℃以下としているので、結露の発生及び容器11の変形を確実に防止することができる。
これに対して、本実施形態では、隣接する支持板13間の間隔を、10mm以上としているので、蒸発した分解液22がシリコン基板21に確実に接触することとなり、シリコン基板21の分解速度の低下を防止できる。
さらに、支持板13の分解液22の液面に対する角度を65°を超えるとした場合には、シリコン基板21の分解に伴って発生する残留物23が支持板13から落下してしまう可能性があり、好ましくない。
本実施形態では、支持板13の分解液22の液面に対する角度は、30°以上、65°以下としているので、このような問題の発生を防止できる。
さらに、容器11には、容器11内部の気体を容器11外部に排出するための排気通路である孔113が形成されているので、容器11からは、SiF4が排出されることとなる。従って、前述した反応式(3)による反応が進行しにくくなり、フッ化水素酸がシリコン基板21の分解反応にのみ使用されることとなる。これにより、シリコン基板21の分解速度の向上を図ることができる。
さらに、本実施形態では、このようにシリコン基板21の分解を促進することができるので、容器11を加圧する必要がなく、容器11を耐圧構造としなくてよいため、容器11の構造を簡略化することができる。
さらに、前記スリット状の孔113は、側面部111B2の上端縁に沿って延びるとともに、その高さ寸法T3は、1mm以上であるため、より確実に容器11内部の気体を排出させることができる。
例えば、前記実施形態では、加熱部12の他方の加熱部本体121により、容器本体111の下面部111Aを加熱するとしたが、これに限らず、例えば、他方の加熱部本体121により、容器本体111の側面部111Bの下端部を加熱してもよい。
このように、側面部111Bをも加熱することで、分解液22を効率よく気化させることができる。
さらに、前記実施形態では、加熱部12により、容器11の蓋材112及び容器本体111の下面部111Aを加熱したが、容器11の蓋材112のみを加熱してもよい。
このように、容器11の蓋材112のみを加熱するものとした場合には、下面部111Aを加熱する加熱部本体が不要となるので、部材点数の削減を図ることができる、
さらに、前記実施形態では、加熱部12の加熱部本体121をホットプレートとしたが、これに限らず、例えば、容器本体111の下面部111Aを加熱する加熱部本体121を油浴等で構成してもよい。
また、前記実施形態では、加熱部12の温度を70℃以上、230℃以下としたが、容器11の耐熱性が非常に高いような場合には、230℃を超えるものとしてもよい。
さらに、前記実施形態では、容器11の容器本体111に切欠き部111B21を形成したが、この切欠き部111B21はなくてもよい。例えば、容器本体111と、蓋材112との間に所定量(例えば、1L/min以上)の気体が通過できるような隙間が形成されている場合には、切欠き111B21を形成せずに、この隙間を排気通路としてもよい。このようにすることで、容器本体111に切欠き111B21を形成する手間を省くことができる。
さらに、前記実施形態では、支持板13間の間隔を10mm以上としたが、これに限らず、10mm未満であってもよい。
前記実施形態では、支持板13の分解液22の液面に対する角度は、30°以上、65°以下であるとしたが、前記角度はこの範囲外であってもよい。例えば、支持板13上のシリコン基板21が支持板13から落下しないようであれば、前記角度は、65°を超えてよい。このような場合には、支持板13の凹部131の深さ寸法を深くすることが好ましい。
(実施例)
前記実施形態の処理装置1を使用して、シリコン基板21の分解を行った。
まず、50wt%のフッ化水素酸と68wt%の硝酸とを体積比2:1で混合して分解液22を作成した。
次に、この分解液22を処理装置1の容器本体111内に充填した。その後、シリコン基板21が設置された支持板13を2枚、シリコン基板21が設置されていない支持板13を1枚、容器本体111内に設置した。このとき、シリコン基板21は分解液22の液面よりも上方に位置している。また、シリコン基板21が設置されていない支持板13を容器11の孔113に最も近い溝111B11に挿入した。
18時間後、シリコン基板21は完全に分解していた。
(比較例)
前記実施形態で使用した処理装置1と略同様の処理装置を使用したが、比較例で使用した処理装置には、切欠き部が形成されておらず、蓋材を容器本体に装着することで容器が完全に密閉されるものであった。他の条件は実施例と同じである。
シリコン基板21の分解には22時間要した。
(結果及び評価)
実施例において、シリコン基板21の分解にかかった時間は18時間であり、比較例に比べ、大幅に分解時間の短縮を図ることができた。これにより、本発明のシリコン基板の分解速度を高めることができるという効果を確認することができた。
11 容器
12 加熱部
13 支持板
14 冷却部
21 シリコン基板
22 分解液
23 残留物
24 溶解液
25 溶解物
26 ビーカ
27 加熱手段
111 容器本体
111A 下面部
111B 側面部
111B1 側面部
111B2 側面部
111B11 溝
111B21 切欠き部
112 蓋材
112A 突出部
113 孔
121 加熱部本体
131 凹部
141 ペルチェ素子
142 放熱板
Claims (2)
- フッ化水素酸及び硝酸を含有する分解液を気化させて、シリコン基板を分解し、前記シリコン基板中の不純物を得るための処理装置であって、
前記シリコン基板を収容し、かつ、前記シリコン基板の分解液を下部に収容する容器と、
少なくとも、前記容器の上面部及び下面部を加熱して前記容器の下部に収容された分解液を気化させる加熱部と、
前記容器内に配設され、前記複数のシリコン基板をそれぞれ支持する複数の略平板状の支持板とを備え、
それぞれの前記支持板は、前記容器の下部に収容された分解液の液面に対して所定の角度をもって傾斜し、かつ、互いに平行に配置され、前記シリコン基板又は前記シリコン基板分解後の不純物を含む残留物を収容する深さ10mm以上の凹部を有し、
前記容器内部の気体を容器外部に排出するためのスリット状の孔が前記容器の側面部の上端縁に沿って延びて形成されており、前記スリット状の孔が形成された容器の側面部は、前記シリコン基板の表面と対向していることを特徴とする処理装置。 - 請求項1に記載の処理装置において、
前記加熱部は、前記容器の側面部を加熱して、前記分解液を気化させることを特徴とする処理装置。
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