JP4767479B2 - 固体電解コンデンサおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は固体電解コンデンサに関するものであって、周波数特性に優れ、かつはんだ耐熱性、信頼性にも優れた固体電解コンデンサを提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のタンタルまたはニオブ固体電解コンデンサは図5に示すように、タンタルまたはニオブ陽極リード線2をタンタルまたはニオブ粉末中に埋め込んで成形した後、焼結することにより、タンタルまたはニオブ焼結体1を構成し、その後、該焼結体1の表面に陽極酸化によりタンタルまたはニオブ陽極酸化皮膜層3を形成し、さらに導電性高分子または二酸化マンガンからなる固体電解質層4およびカーボン層5を順次積層形成し、その後、さらに導電性塗料を塗布して硬化させることにより陰極層6を形成したものをコンデンサ素子とし、該コンデンサ素子のタンタルまたはニオブ陽極リード線2を溶接により陽極端子7に接続するとともに、コンデンサ素子側面部の陰極層6を導電性塗料9により陰極端子8に接続した後、外装樹脂10を施すことによりタンタルまたはニオブ固体電解コンデンサを作製していた(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−283879(第2−6頁、図1)
【特許文献2】
特開平11−288848(第2−4頁、図5)
【特許文献3】
特開平11−288844(第2−5頁、図1(b))
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来の構成における陰極層6と陰極端子8の接続の場合、接触面積が十分でなく、ESRレベル/バラツキともに大きく、かつ耐熱試験/信頼性試験においてESR値が増加し易いという問題を有していた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の問題を解決するもので、ESRがレベル/バラツキともに低く、かつ耐熱試験/信頼性試験においてESR値が安定した固体電解コンデンサを提供することを目的とするものである。
【0006】
すなわち、陽極リード線2を有する弁作用金属粉体の焼結体1表面に陽極酸化皮膜層3を形成した後、固体電解質層4、カーボン層5、陰極層6を順次積層してコンデンサ素子を構成し、該コンデンサ素子の上記陽極リード線2を陽極端子7に接続し、コンデンサ素子側面部の陰極層6を陰極端子8に導電性塗料で接続した後、該コンデンサ素子を樹脂外装してなる固体電解コンデンサにおいて、
コンデンサ素子側面部の陰極層6を陰極端子8に接続する第一の導電性塗料層9と、
コンデンサ素子底部の陰極層6、および該底部の陰極層6と陰極端子8との間にコンデンサ素子底部の陰極層6全面を覆うように追加塗布された第二の導電性塗料層11とを備えることを特徴とする固体電解コンデンサである。
また、陽極リード線2を有する弁作用金属粉体の焼結体1表面に陽極酸化皮膜層3を形成した後、固体電解質層4、カーボン層5、陰極層6を順次積層してコンデンサ素子を構成し、該コンデンサ素子の上記陽極リード線2を陽極端子7に接続し、コンデンサ素子側面部の陰極層6を陰極端子8に導電性塗料で接続した後、該コンデンサ素子を樹脂外装してなる固体電解コンデンサの製造方法において、
コンデンサ素子側面部の陰極層6を陰極端子8に接続する第一の導電性塗料9を塗布した後、コンデンサ素子底部の陰極層6、および該底部の陰極層6と陰極端子8との間にコンデンサ素子底部の陰極層6全面を覆うように第二の導電性塗料11を追加塗布することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法である。
【0007】
また、導電性塗料層11が、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、またはアクリル系樹脂の少なくとも1種類をバインダーとして用いることを特徴とする固体電解コンデンサである。
【0008】
さらに、導電性塗料層11中の導電性フィラーが銀または銅を含むことを特徴とする固体電解コンデンサである。
【0009】
そして、追加塗布された導電性塗料層11中の導電性フィラーの含有量が、40〜95wt%であることを特徴とする固体電解コンデンサである。
【0010】
また、導電性フィラーの平均粒子径が0.005〜20μmであることを特徴とする固体電解コンデンサである。
【0011】
【発明の実施の形態】
上記構成により、追加塗布する導電性塗料11が陰極層6と陰極端子8の間に入り込み、両者と接触する面積を増大させることにより、コンデンサ素子と陰極端子8との接着強度が向上し、接触抵抗を低減できる。かつ、陰極端子8の取り回し長さが導電性塗料(銀の追加塗布層)11で短縮されることにより、部材の体積抵抗を低くすることができる。
【0012】
上記構成により、ESRレベル/バラツキともに低く、かつ耐熱試験/信頼性試験においてESR値が安定した固体電解コンデンサを得ることができる。
【0013】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施例による固体電解コンデンサで、コンデンサ素子の陰極層6と陰極端子8との間に導電性塗料9と、さらに追加塗布した導電性塗料11とを充填したチップ形タンタル固体電解コンデンサの断面図を示したものである。
【0014】
[実施例]
図1に示すように、2.5V―220μF用タンタル焼結体1を形成し、該電極体1の表面にタンタル陽極酸化皮膜層3を形成した。
【0015】
次に、導電性高分子層からなる固体電解質層4、エポキシ系樹脂からなるカーボン層5を形成した。続いて、銀導電性塗料を塗布した後、硬化させて陰極層6を形成した。
【0016】
次に、予めコンデンサ素子の側面および底面の一部に沿うようフォーミング加工した外部陰極端子8に銀導電性塗料9を塗布したのち、コンデンサ素子の陰極層6と接続するとともに、タンタル陽極導出線2と外部陽極端子7を抵抗溶接により接続した。
【0017】
その後、図1に示すように、銀導電性塗料11(フィラーの平均粒子径:1.0μm、含有量:50wt%、バインダー:アクリル系樹脂)をコンデンサ素子底部、および該底部と陰極端子8間に追加塗布した後、硬化し、コンデンサ素子と陰極端子8の接触面積を拡大する追加銀層を形成した。なお、今回追加銀層はディスペンサーにて形成したが、ジェット式の非接触ディスペンスやマスク印刷などの方法でも形成可能である。
【0018】
その後、外部陰極端子8と外部陽極端子7が互いに反対方向で、両端から引出されるようにトランスファモールド金型にセットして外装樹脂10を施し、この外部陰極端子8と外部陽極端子7をコンデンサ本体の下方に向かって端面および底面に沿わせて内側に折り曲げ加工し、チップ形固体電解コンデンサを作製した。
【0019】
(従来例)
実施例と同一のタンタル焼結体1を使用し、同様の方法で、該電極体表面にタンタル陽極酸化皮膜層3、導電性高分子層からなる固体電解質層4、エポキシ系樹脂カーボン層5を同様に形成した後、銀導電性塗料を塗布し、硬化させて陰極層6を形成した。
次に、陰極層6に導電性塗料9を塗布し、この上に外部陰極端子8を接続した後、硬化させるとともに、タンタル陽極導出線2と外部陽極端子7を溶接により接続した。
【0020】
その後、実施例と同様に、外部陰極端子8と外部陽極端子7が互いに反対方向で、両端から引出されるようトランスファモールド金型にセットして外装樹脂10を施し、図5に示されるチップ状固体電解コンデンサを作製した。
【0021】
上記実施例および従来例におけるコンデンサの100kHzでのESR値(mΩ)と漏れ電流値(2.5V印加、1分後)の平均値を表1に、このESR値(mΩ)のバラツキを図2に、はんだ耐熱性試験(260℃、10秒エアーリフロー×3回)におけるESR値の変化を図3に、高温負荷試験(100℃、2.5V印加)におけるESR値の変化を図4に示す(試料数n=100)。
【0022】
【表1】
【0023】
表1、図2に示すとおり、導電性塗料11(追加した銀塗布層)を有する実施例は従来例よりESRレベル、バラツキともに小さく安定した結果を得た。これは、追加した銀塗布層がコンデンサ素子底部の陰極層6と陰極端子8との間に入り込み、接触面積を増大することにより、コンデンサ素子と陰極端子8との接着強度が向上し接触抵抗が低減したことと、陰極端子8との取り回し長さが導電性塗料11(追加した銀塗布層)により短縮され、部材の持つ体積抵抗が低減したことによるものである。
また、漏れ電流値は、実施例の方が若干、改善されている。
【0024】
さらに、図3に示すとおり、はんだ付け等の熱ストレスが生じた場合でも、導電性塗料11(追加した銀塗布層)を有する実施例では、従来例よりESRレベル、バラツキともに小さく安定した結果を得た。これは、外装樹脂等の熱膨張係数の異なる物質が、追加した銀塗布層の存在によりコンデンサ素子底部の陰極層6と陰極端子8の間に入り込まず、接着面の剥離等が起こらないため、接触界面での熱ストレスによる抵抗の増加が抑制されることによる。
【0025】
また、図4に示すとおり、高温負荷試験によるESRレベルの増加も導電性塗料11(追加した銀塗布層)を有する実施例は従来例より良好な結果を示した。これは、上記したように、追加した銀塗布層による熱ストレス時の抵抗増加を抑制する効果が長時間にわたり持続したためと考えられる。
【0026】
ここで、追加塗布する銀導電性塗料中の導電性フィラー含有量は、95wt%を超えると塗膜強度が低下するため、十分な導電性銀塗料層を形成できず、また40wt%未満では導電性塗料層の樹脂分過剰のため十分な導電性が得られないという問題がある。このため、導電性フィラー含有量は40〜95wt%が望ましい。
【0027】
また、追加塗布する導電性塗料中の導電性フィラーの平均粒子径は、20μmを超えると導電性フィラーの表面積が小さくなって、十分な導電性が得られず、また0.005μm未満では導電性フィラー自体の加工が難しいため材料の入手が困難という問題がある。このため、導電性フィラーの平均粒子径は0.005〜20μmが望ましい。
【0028】
さらに、導電性塗料のバインダーとして、上記実施例ではアクリル系樹脂を使用したが、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂またはアクリル樹脂の少なくとも1種類を使用することにより実施例と同様の効果を得ることができる。
【0029】
そして、実施例の導電性塗料の導電フィラーとして、上記実施例では銀を使用したが、銅を使用しても同様の効果を得ることができる。
【0030】
また、実施例の導電性塗料の有機溶媒として、ブチルセロソルブ、酢酸−n−ブチルまたは酢酸エチル等公知のものが使用できる。
【0031】
さらに、実施例の固体電解質として、ポリチオフェン、ポリピロールまたはポリアニリン等の導電性高分子または二酸化マンガン等公知のものが使用できる。
【0032】
【発明の効果】
上記構成により、追加塗布する導電性塗料11が陰極層6と陰極端子8の間に入り込み両者が接触する面積を増大させることにより、コンデンサ素子と陰極端子8との接着強度が向上し、接触抵抗を低減できる。また、陰極端子8の取り回し長さが追加した銀塗布層で短縮されることにより、部材の体積抵抗を低くすることができる。
さらに、はんだ付け、高温負荷試験等の熱ストレスが生じた場合でも、追加した銀塗布層の存在により、外装樹脂等の熱膨張係数の異なる物質が、コンデンサ素子底部の陰極層6と陰極端子8の間に入り込まず、接着面の剥離等が起こらないため、接触界面での熱ストレスによる抵抗の増加が抑制される。
その結果、ESRレベル/バラツキともに小さく、かつ耐熱試験/信頼性試験においてESR値が安定したタンタルまたはニオブ固体電解コンデンサを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例による固体電解コンデンサの縦断面図である。
【図2】本発明の実施例と従来例による固体電解コンデンサのESR値の比較図である。
【図3】本発明の実施例と従来例による固体電解コンデンサのはんだ耐熱性試験におけるESR値の比較図である。
【図4】本発明の実施例と従来例における固体電解コンデンサの高温負荷試験比較図である。
【図5】従来例による固体電解コンデンサの縦断面図である。
【符号の説明】
1 焼結体(タンタルまたはニオブ焼結体)
2 陽極リード線
3 陽極酸化皮膜層
4 固体電解質層
5 カーボン層
6 陰極層
7 陽極端子
8 陰極端子
9 導電性塗料
10 外装樹脂
11 導電性塗料(追加塗布層)
Claims (6)
- 陽極リード線を有する弁作用金属粉体の焼結体表面に陽極酸化皮膜層を形成した後、固体電解質層、カーボン層、陰極層を順次積層してコンデンサ素子を構成し、該コンデンサ素子の上記陽極リード線を陽極端子に接続し、コンデンサ素子側面部の陰極層を陰極端子に導電性塗料で接続した後、該コンデンサ素子を樹脂外装してなる固体電解コンデンサにおいて、
前記コンデンサ素子側面部の陰極層を陰極端子に接続する第一の導電性塗料層と、
前記コンデンサ素子底部の陰極層、および該底部の陰極層と陰極端子との間に前記コンデンサ素子底部の陰極層全面を覆うように追加塗布された第二の導電性塗料層と
を備えることを特徴とする固体電解コンデンサ。 - 請求項1記載の導電性塗料層が、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、またはアクリル系樹脂の少なくとも1種類をバインダーとして用いることを特徴とする固体電解コンデンサ。
- 請求項1記載の導電性塗料層中の導電性フィラーが銀または銅を含むことを特徴とする固体電解コンデンサ。
- 請求項1記載の追加塗布された導電性塗料層中の導電性フィラーの含有量が、40〜95wt%であることを特徴とする固体電解コンデンサ。
- 請求項3または請求項4記載の導電性フィラーの平均粒子径が0.005〜20μmであることを特徴とする固体電解コンデンサ。
- 陽極リード線を有する弁作用金属粉体の焼結体表面に陽極酸化皮膜層を形成した後、固体電解質層、カーボン層、陰極層を順次積層してコンデンサ素子を構成し、該コンデンサ素子の上記陽極リード線を陽極端子に接続し、コンデンサ素子側面部の陰極層を陰極端子に導電性塗料で接続した後、該コンデンサ素子を樹脂外装してなる固体電解コンデンサの製造方法において、
前記コンデンサ素子側面部の陰極層を陰極端子に接続する第一の導電性塗料を塗布した後、前記コンデンサ素子底部の陰極層、および該底部の陰極層と陰極端子との間に前記コンデンサ素子底部の陰極層全面を覆うように第二の導電性塗料を追加塗布することを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
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