JP4767444B2 - 処理汚泥中の塩素含有量を低減させる廃水処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、第一鉄イオンを含む塩化鉄含有溶液の処理方法において、処理汚泥中の塩素含有量を低減させることで、処理汚泥をセメント工業および金属精錬工業において有効利用できることを可能とした資源リサイクル技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
塩酸および塩化第二鉄の混合液を使用したプリント基板のエッチング処理において多量に排出されるエッチング廃酸は、塩化物イオン、銅イオン、第二鉄イオンおよびエッチング処理工程で生じる第一鉄イオンを含有している。すなわち、エッチング廃酸は、塩酸と塩化第二鉄の混合液に、エッチング処理条件により濃度は変化するが代表的にはCuが3000〜5000ppm、第一鉄イオンが原液中の第二鉄イオンの20%程度を含むものである。
【0003】
このエッチング廃酸は、中間処理として特に前処理を行うことなく消石灰等のアルカリを添加して、含有金属をすべて水酸化物にして、フィルタープレス型ろ過機等でろ過水洗することで、金属種を含有しない処理水と、含有金属の水酸化物からなる処理汚泥に分ける。処理水は有毒物質を含有しないことを確認した後、放流処理されることが多い。一方、処理汚泥は、その大部分が水酸化鉄からなり、セメント原料としての利用又は、鉄鉱原料として再利用することが望ましいが、処理汚泥中に銅を含むことと、処理汚泥を水洗することで含有塩素濃度を下げることが非常に困難で、実質的に再利用可能な濃度にならないために(例えば、2000ppm以下)、再利用することなく、重金属含有物を厳重に管理する最終処分場で埋め立て処理されている。
【0004】
他方、不純物レベルが低いエッチング廃酸の場合には、金属鉄を用いたセメンテーション法によって銅を回収することも行われている。この際に生じる脱銅処理液は、塩素ガスなどの酸化剤により第一鉄イオンを酸化し、第二鉄塩化物溶液としてリサイクルを行うことも行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、エッチング廃酸を消石灰などのアルカリで処理する方法を採る場合、生成する処理汚泥中の主成分は水酸化鉄であり、省資源の観点からリサイクルが望まれる。
【0006】
この処理汚泥を、例えばセメント工業及び製鉄所で有効利用するためには、処理汚泥中の含有重金属濃度及び含有塩素濃度を、各産業において受け入れ可能な濃度まで下げなければならない。
【0007】
エッチング廃酸に含有される銅イオンについては金属鉄を用いたセメンテーション法により、銅イオンを金属に還元することで銅を回収除去することが可能で、このセメンテーション処理後の処理液をアルカリで水酸化物処理して得られた処理汚泥中の銅濃度は、セメント工業および製鉄所で受け入れ可能な濃度まで低下させることができる。
【0008】
ところが、金属鉄を用いたセメンテーション法で処理すると銅イオンの還元と同時に、処理液中の第二鉄イオンも還元されて第一鉄イオンとなる。このセメンテーション法により処理した処理液にアルカリを加えて生成する水酸化物は第一鉄イオンから生成した水酸化物が主である。セメンテーション処理後の処理液をろ過して得た処理汚泥は、水洗により含有塩素濃度を低下させることは困難である。表1にセメンテーション処理後の処理液をアルカリで水酸化処理した処理汚泥を、フィルタープレス方式のろ過機で固液分離して得た処理汚泥の水洗による含有塩素濃度の変化を示す。
【0009】
【表1】
【0010】
表1に示すように、水洗に大量の水洗水を要するばかりでなく、セメント添加原料として再利用可能な含有塩素濃度とする(たとえば2000ppm以下にする)ことが実質的に困難である。
【0011】
塩素を除去する方法が特許第3047067号に開示されているが、この方法は、水酸化物ケーキに水とアルカリを加え、pH12以上に保持し、攪拌しながらケーキ中の塩素分を水溶性の塩に転化し、その後に固液分離して水洗するというものであり、操作が非常に煩雑である。
【0012】
また、含有塩素の除去方法として、水酸化物ケーキに蒸気用水とアルカリを加え、pH10程度に調整し、ケーキ中のオキシ塩化鉄形態由来の塩素成分を化学的に分解し、その後に固液分離して水洗する方法もあるが、これでは塩素含有濃度を数%程度に低減するのが限界であり、塩素の除去が必ずしも十分であるとはいえない。
【0013】
そこで、本発明の主たる課題は、第一鉄イオンを含む塩化鉄含有溶液、たとえばエッチング廃酸を処理して得られた処理汚泥中の塩素含有濃度を容易に十分に低いレベルにすることができる方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明は、塩化物イオン、銅イオン、第二鉄イオン、第一鉄イオンを含むエッチング廃液を処理して生成される処理汚泥中の塩素含有量を低減してセメント原料を得る、エッチング廃液の処理方法であって、
金属鉄によりエッチング廃液中の銅を析出させた後、析出した金属銅と未反応の金属鉄とを固液分離して脱銅溶液を得る脱銅工程と、
脱銅溶液中の第一鉄イオンを第二鉄イオンに酸化させる酸化処理工程と、
酸化処理工程後の溶液にアルカリ剤を添加して水酸化物を生成させる水酸化物処理工程と、
生成した水酸化物のスラリーを固液分離し、固形分の含有塩素濃度を2000ppm以下にまで水洗する分離・洗浄工程とを有する、
ことを特徴とするエッチング廃液の処理方法である。
【0015】
(作用効果)
前述のように、エッチング廃酸をセメンテーション処理した処理液をアルカリで水酸化物処理して得られた水酸化物は、第一鉄イオンから生成した水酸化物が主であるので、固液分離操作として例えばフィルタープレス方式のろ過操作を経て得たケーキを水洗しても含有塩素濃度は数%程度にもなる。
【0016】
しかるに、本発明に従って、廃水中の第一鉄イオンを第二鉄イオンに酸化させ、次いで、アルカリ剤を添加して水酸化物を生成させ、生成した水酸化物のスラリーを固液分離し、固形分を水洗すると、処理汚泥中の含有塩素濃度は約0.1%以下に低下する。したがって、セメント原料として要求される含有塩素濃度とする(たとえば2000ppm以下にする)ことができる。
【0017】
本発明は、次記の過程を経て完成されたものである。すなわち、実験結果によれば、第一鉄イオンから生成する水酸化物と第二鉄イオンから生成する水酸化物との、水洗による含有塩素濃度の低下容易性を比較すると、後者が前者に対してきわめて大きいことが判明した。したがって、第一鉄イオンから生成する水酸化物の存在が水洗による含有塩素濃度の低下を阻害する要因であるから、含有塩素濃度をセメント工業または製鉄所で再利用可能な濃度まで低減させるためには、予め廃水中の第一鉄イオンを第二鉄イオンに酸化させる必要があるとの知見に基づくものである。
【0018】
一方、酸化処理工程の酸化手段は、塩素ガスによる酸化、過酸化水素による酸化、オゾン酸化、空気酸化、電解酸化およびその他既知の酸化剤による酸化の群から選ばれたものの1つまたは複数の組み合わせ手段とすることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態をさらに詳説する。
<塩化物酸性廃水の処理方法について>
少なくとも第一鉄イオンを含む塩化鉄含有溶液、たとえばエッチング廃酸を処理して生成する処理汚泥中の含有塩素を低減させる処理方法は、下記(1)〜(3)の工程を含む。なお、エッチング廃酸に含有する銅イオンを除去する方法は、先に記載した金属鉄によるセメンテーション方法等、既知の手段によることができる。
(1)前記溶液中の第一鉄イオンを第二鉄イオンに酸化させる酸化処理工程。この酸化処理工程の酸化手段は、塩素ガスによる酸化、過酸化水素による酸化、オゾン酸化、空気酸化、電解酸化およびその他既知の酸化剤による酸化の群から選ばれたものの1つまたは複数の組み合わせて用いることができる。
(2)次いで、アルカリ剤を添加して水酸化物を生成させる水酸化物処理工程。アルカリ剤としては、たとえば水酸化カルシウムを用いることができる。
(3)生成した水酸化物のスラリーを固液分離し、固形分を水洗する分離・洗浄工程。固液分離はろ過や遠心分離などの手段がある。固形分を水洗するには、公知の手法でよいが、固液分離装置内で水洗を図ることもできる。
【0020】
上記方法によって回収された処理汚泥は、セメント原料として使用可能な含有塩素濃度1000ppm以下のものとなる。
【0021】
本発明において、第一鉄イオンのほか第二鉄イオンも含む塩化物含有溶液を対象とすることもできる。また、シャドウマスク等に使用した廃液のように、ニッケルを含む塩化鉄含有溶液を対象とすることもでき、金属鉄によるセメンテーション方法等、既知の手段でニッケルを回収し、本発明によって処理汚泥中の含有塩素を十分に除去した鉄原料を回収できる。
【0022】
『実験例および比較実験例』
(実験例1)
エッチング廃酸(Fe:80000mg/l、Cu:9000mg/l)の9.6kgに水2.3kgを加えた希釈液中に、金属鉄1.15kgを投入し、300rpmで撹拌しながら20時間反応させた。その後、この液をろ過により析出した金属銅と未反応の金属鉄を分離して脱銅処理液(Fe:90000mg/l、Cu:5mg/l)6.1kgを得た。次いで、この脱銅処理液に酸化剤として30%のH2O2を1130g添加することで、第一鉄イオンを第二鉄イオンに酸化した後、水酸化カルシウムCa(OH)2を添加し、生成した水酸化物スラリーをフィルタープレスろ過機によりろ過・ケーキ水洗処理を行った。ケーキ水洗水量とケーキ中の含有塩素濃度の関係を図1に示す(先の表1にも示す)。得られたケーキ中の塩素濃度は0.1dry%(ケーキ洗浄比(ケーキ乾燥重量に対する水洗水量の倍率)N=10)となり、セメント原料にできることを確認した。塩素ガスによる酸化、オゾン酸化、空気酸化、及び電解酸化によっても、同様にセメント原料として許容される含有塩素濃度以下にすることができることを確認した。
【0023】
(比較実験例1)
実験例1における脱銅処理液に対して酸化処理を行わなかったことを相違点として、他は実験例1と同様の操作を行った。ケーキ水洗水量とケーキ中の含有塩素濃度の関係を図1に併せて示す(先の表1と同じ)。得られたケーキ中の塩素濃度は3.5wet%(ケーキ洗浄比 N=11)となり、セメント原料とはなり得ないことを確認した。
【0024】
(比較実験例2)
実験例1における脱銅処理液に対して酸化処理を行わなかったことを相違点として、他は実験1と同様の操作でろ過ケーキを得た。このろ過ケーキの洗浄方法としてpH10のNaOH水溶液でリパルプする方法と水でリパルプする方法を比較した結果を表2に示す。なお、上記2種類のリパルプ液は再度ろ過してさらに洗浄水でケーキ水洗した。リパルプ液とケーキ水洗液の合量で、ケーキ洗浄比(ケーキ乾燥重量に対する水洗水量の倍率)N=20である。pH10のNaOH水溶液で洗浄しても処理汚泥中の含有塩素濃度は、セメント工業又は製鉄所で再利用するために許容される濃度まで下げることはできないことが判った。
【0025】
【表2】
【0026】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によれば、第一鉄イオンを含む塩化鉄含有溶液、たとえばエッチング廃酸を処理して得られた処理汚泥中の含有塩素濃度をセメント工業又は製鉄所で処理汚泥を再利用することを可能とする十分に低いレベルにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例及び比較例の結果を示すグラフである。
Claims (1)
- 塩化物イオン、銅イオン、第二鉄イオン、第一鉄イオンを含むエッチング廃液を処理して生成される処理汚泥中の塩素含有量を低減してセメント原料を得る、エッチング廃液の処理方法であって、
金属鉄によりエッチング廃液中の銅を析出させた後、析出した金属銅と未反応の金属鉄とを固液分離して脱銅溶液を得る脱銅工程と、
脱銅溶液中の第一鉄イオンを第二鉄イオンに酸化させる酸化処理工程と、
酸化処理工程後の溶液にアルカリ剤を添加して水酸化物を生成させる水酸化物処理工程と、
生成した水酸化物のスラリーを固液分離し、固形分の含有塩素濃度を2000ppm以下にまで水洗する分離・洗浄工程とを有する、
ことを特徴とするエッチング廃液の処理方法。
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