JP4766931B2 - 誘電体セラミックスおよびその製造方法 - Google Patents
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このような要求特性を満たす誘電体セラミックスとして、BaRe2Ti5O14、BaRe2Ti4O12等が知られており(Re:希土類元素、以下に同じ)、多種の用途に使用されている。これらは、常誘電相をベースとすることで、誘電損失を低く抑えている。
燃焼合成法を利用するものとして、1種類の金属酸化物と2種類の異なる金属元素の計3種類の原料を出発原料とし、金属間化合物あるいは非酸化物セラミックスと酸化物セラミックスの2種類を合成する方法が提案されている(特許文献1参照)。例えば、酸化ニッケル粉末とアルミニウム粉末とアルミナ粉末とを混合し成形体とした後、高圧反応容器内に収納し、アルゴン雰囲気下で該成形体の上端面を着火することによりアルミニウム粉末の酸化燃焼反応を誘導し、還元されたニッケルが過剰に添加したアルミニウムと反応してNiAlを合成しながら、燃焼反応が連鎖的に進行する。その結果、外部加熱なしに金属間化合物の1つであるNiTiのインゴットを製造することができる。
燃焼合成法において燃焼波を完全に伝播させるためには、各構成元素源となる粉体の配合割合や、発熱源となる金属粉末等の物性(比表面積)等が重要となり、該方法により所望組成のセラミックスを高品位で製造することは容易ではない。例えば、安定成分と発熱源成分との配合割合が所定範囲外では、燃焼波が完全に伝播せず、未反応成分が混入する等して誘電特性が劣化するという問題がある。
また、上記イオン結合性物質は、過塩素酸ナトリウムであることを特徴とする。
本発明において、Ti粉未の比表面積は、BET法により測定された値をいう。
本発明に使用できる平均粒子径としては 150μm 以下、好ましくは 0.1〜100μm である。150μmをこえると、他の原材料との混合が十分でなくなり、燃焼波が伝播しない場合が生じる。
表面に凹凸が形成された粒子またはいびつな形状の平均粒子径の測定方法は、画像解析法が好ましい。
本願発明の誘電体セラミックス(BaRe2TimO2m+4)におけるReは、上記希土類元素が1種単独であっても、2種以上を混合したものであってもよい。複合材とする場合には、希土類供給源となるRe2O3を異なる元素(Re)で複数種類用いる。
酸素供給源としては、加熱により酸素を発生させるイオン結合性物質が配合される。該イオン結合性物質としては、KClO3、NaClO3、NH4ClO3等の塩素酸塩類、KClO4、NaClO4、NH4ClO4等の過塩素酸塩類、NaClO2などの亜塩素酸塩類、KBrO3などの臭素酸塩類、KNO3、NaNO3、NH4NO3等の硝酸塩類、NaIO3、KIO3等のよう素酸塩類、KMnO4、NaMnO4・3H2Oの過マンガン酸塩類、K2Cr2O7、(NH4)2Cr2O7等の重クロム酸塩類、NaIO4などの過よう素酸塩類、HIO4・2H2Oなどのメタよう素酸、CrO3などの無水クロム酸塩、NaNO3などの亜硝酸塩、Ca(ClO)2・3H2Oなどの次亜塩素酸カルシウム三水塩類等が挙げられる。
これらの中で過塩素酸塩類、塩素酸塩類、亜塩素酸塩類が好ましく、特にNaClO4、KClO4は、副生成物であるNaCl、KClが繰り返し純水で洗浄することで除去できるので好適である。なお、過塩素酸塩類の場合、生成する炭酸ガスがガス化するため、合成粉末には残存しない。
各反応原料を所定割合で配合するとは、上記式を満たすモル質量比で配合することをいう。すなわち、Ti粉末の配合モル質量を x モルとすると、TiO2は(10-x)モル、NaClO4は(x-1)/2モルとなり、Ti粉末の配合モル質量に関係なく、BaO2は 2 モル、Re2O3は 2 モル配合する。ここで、Re2O3を複数種類使用する場合には、それらの合計量で 2 モルとなるように配合する。
この割合で各反応原料を配合して燃焼合成することにより、目的のBaRe2Ti5O14を容易に短時間で得ることができる。また、副生成物もNaClのみであり、後述する水洗浄により容易に分離することができる。
この場合の配合割合は、Ti粉末の配合モル質量を x モルとすると、TiO2は(8-x)モル、NaClO4は(x-1)/2モルとなり、Ti粉末の配合モル質量に関係なく、BaO2は 2 モル、Re2O3は 2 モル配合する。ここで、Re2O3を複数種類使用する場合には、それらの合計量で 2 モルとなるように配合する。該割合で各反応原料を配合して燃焼合成することにより、目的のBaRe2Ti4O12を容易に短時間で得ることができる。また、副生成物もNaClのみであり、後述する水洗浄により容易に分離することができる。
混合粉末は、るつぼに投入して燃焼合成を行なうが、そのるつぼの材質としては好ましくは非酸化物である炭素(C)、炭化珪素(SiC)、窒化珪素Si3N4等が使用できる。これらの中で炭素(C)材が熱伝導と形状加工性に優れているので好ましい。
混合粉末をるつぼへ投入する方法としては、混合粉末をパウダーベット状に敷き詰めたり、敷き詰めた後圧縮したり、ペレット状に押し固めたものをるつぼへ投入する方法等が使用できる。
燃焼合成はチャンバー内で行なうが、その雰囲気としては、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)等の希ガス雰囲気が好ましい。なお、反応生成物の誘電特性を劣化させなければ、窒素ガス、炭酸ガス雰囲気等を利用することも可能である。また、酸素分圧を制御可能であれば、酸素ガスを使用することも可能である。
燃焼合成を開始させるための混合粉末への着火方法は、金属粉が着火発熱可能となる方法であれば特に限定されない。カーボンフイルムを着火発熱させて熱源とし、混合粉末に接触させて着火発熱させる方法が取り扱いに優れているので好ましい。燃焼合成反応は、約1〜60秒で終了する。
塩類が燃焼合成反応後の合成粉末に存在すると焼結性が阻害される。焼結性を阻害しない程度まで塩類を減らす基準としては、洗浄液の電気伝導率が 150μS/cm 以下である。すなわち洗浄回数、洗浄量の如何にかかわらず、上記合成粉末を水で洗浄したとき洗浄後の洗浄水の電気伝導率が150μS/cm以下であればよい。
また、燃焼合成で得られた合成粉末の結晶構造をさらに安定させたり、微量な不純物を除去するため、900〜1100℃で仮焼することも可能である。
各反応原料を表1に示すモル比でボールミルを用いて5時間混合することにより混合粉末を得た。合成装置内のチャンバー内にカーボンるつぼを設置し、混合粉末(100g)をカーボンるつぼ内に敷き詰め、着火用のカーボンフイルムを混合粉の一部と接触させて、チャンバーを閉じた。真空ポンプを用いて、チャンバー内の残留酸素を減少させた後、アルゴン(Ar)ガスを封入し、チャンバーの内圧を0.1MPaとした。
上記未洗浄誘電体セラミックス粉末を十分水洗し、この粉末に付着したNaClを除去して誘電体セラミックスを得た。
得られた誘電体セラミックス粉末の結晶相の同定をX線回折装置(XRD)を用いて行なった。結果を表1に示す。また、比誘電率および誘電正接を以下の方法で測定した。
得られた誘電体セラミックス粉末に成形用バインダ(ポリビニルブチラール樹脂)を1質量%添加して混合した。次に混合粉末を10mmx80mmの金型に投入し、1.5トン/cm2の圧力を加えてグリーン体(10mmx90mmx3mm)を得た。このグリーン体を600℃で1時間保持し、有機分を除去した後、1300℃で3時間焼成した。得られた焼結体を70mmxl.5mmxl.5mmの試験片に加工し、空洞共振器法を用いて、1、3、5GHzの周波数帯で比誘電率および誘電正接を測定した。結果を表2に示す。
各反応原料を表3に示すモル比でボールミルを用いて5時間混合することにより混合粉末を得た。合成装置内のチャンバー内にカーボンるつぼを設置し、混合粉末(100g)をカーボンるつぼ内に敷き詰め、着火用のカーボンフイルムを混合粉の一部と接触させて、チャンバーを閉じた。真空ポンプを用いて、チャンバー内の残留酸素を減少させた後、アルゴン(Ar)ガスを封入し、チャンバーの内圧を0.1MPaとした。
上記未洗浄誘電体セラミックス粉末を十分水洗し、この粉末に付着したNaClを除去して誘電体セラミックスを得た。
得られた誘電体セラミックス粉末の結晶相の同定をX線回折装置(XRD)を用いて行なった。結果を表3に示す。また、比誘電率および誘電正接を上記実施例1と同様の方法で測定した。結果を表4に示す。
また、比較例1および比較例4では、Ti粉末の比表面積が 0.01 より小さいため、燃焼波が伝播せず、合成粉を得ることができなかった。比較例2および比較例5では、断熱火炎温度が1500℃より低いため、燃焼波が伝播せず、合成粉を得ることができなかった。
Claims (6)
- 組成式 BaRe2TimO2m+4(式中 m = 4 または 5 、Reは希土類元素 )で表される酸化物系の誘電体セラミックスであって、
比表面積が 0.01〜2 m2/gのTi粉末と、TiO 2 と、Re2O3と、BaO2と、酸素供給源となるイオン結合性物質であるNaClO 4 またはKClO 4 とを少なくとも含む反応原料において、
前記組成式において m = 5 の場合は、前記Ti粉末 x モル( 2 ≦ x ≦ 8 )に対して、前記TiO 2 を(10−x)モル、前記イオン結合性物質を (x−1)/2 モル、前記Ti粉末と前記TiO 2 との合計量 10 モルに対して、前記Re 2 O 3 を 2 モル、前記BaO 2 を 2 モル、となるモル質量比で配合し、
前記組成式において m = 4 の場合は、前記Ti粉末 x モル( 2 ≦ x ≦ 6 )に対して、前記TiO 2 を(8−x)モル、前記イオン結合性物質を (x−1)/2 モル、前記Ti粉末と前記TiO 2 との合計量 8 モルに対して、前記Re 2 O 3 を 2 モル、前記BaO 2 を 2 モル、となるモル質量比で配合し、
断熱火炎温度が1500℃以上である外部加熱なしの燃焼合成法により得られることを特徴とする誘電体セラミックス。 - 前記イオン結合性物質は、前記NaClO 4 であることを特徴とする請求項1記載の誘電体セラミックス。
- 組成式 BaRe2TimO2m+4(式中 m = 4 または 5 、Reは希土類元素 )で表される酸化物系の誘電体セラミックスの製造方法であって、
比表面積が 0.01〜2 m2/gのTi粉末と、TiO 2 と、Re2O3と、BaO2と、酸素供給源となるイオン結合性物質であるNaClO 4 またはKClO 4 とを少なくとも含む反応原料において、
前記組成式において m = 5 の場合は、前記Ti粉末 x モル( 2 ≦ x ≦ 8 )に対して、前記TiO 2 を(10−x)モル、前記イオン結合性物質を (x−1)/2 モル、前記Ti粉末と前記TiO 2 との合計量 10 モルに対して、前記Re 2 O 3 を 2 モル、前記BaO 2 を 2 モル、となるモル質量比で配合し、
前記組成式において m = 4 の場合は、前記Ti粉末 x モル( 2 ≦ x ≦ 6 )に対して、前記TiO 2 を(8−x)モル、前記イオン結合性物質を (x−1)/2 モル、前記Ti粉末と前記TiO 2 との合計量 8 モルに対して、前記Re 2 O 3 を 2 モル、前記BaO 2 を 2 モル、となるモル質量比で配合する工程と、
前記割合で配合された配合物を断熱火炎温度が1500℃以上である外部加熱なしの燃焼合成法により反応させる工程と、
前記反応生成物を粉砕する工程と、
前記粉砕された粉末を水で洗浄する工程とを備えることを特徴とする誘電体セラミックスの製造方法。 - 前記粉砕された粉末を水で洗浄する工程は、洗浄後の洗浄水の電気伝導率が 150μS/cm 以下となるまで洗浄を行なう工程であることを特徴とする請求項5記載の誘電体セラミックスの製造方法。
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