JP4989044B2 - 誘電体セラミックスの製造方法 - Google Patents
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(1)BaCO3 +TiO2 →BaTiO3 +CO2
(2)BaCO3 +BaTiO3 →Ba2TiO4+CO2
(3)Ba2TiO4+TiO2→2BaTiO3
上記のようにBaTiO3 が形成されるまでに多段階の反応過程を経るため、完全に反応を終了させるためには、仮焼すなわち熱処理温度を高く設定する必要がある。また、該仮焼温度を高くし、仮焼時間を長くすることにより、BaTiO3粉末の正方晶性および結晶性を高めることができるとされている。
このような外部加熱を行なわない製造方法として、燃焼合成法によるセラミックス粉末の合成が提案されている(特許文献1参照)。
燃焼合成法は、外部加熱を必要とすることなく、化合時に放出される大量の化学熱反応を利用して連鎖的に物質を合成する方法である。特許文献1では、1種類の金属酸化物と2種類の異なる金属元素の計3種類の原料を出発原料とし、金属間化合物あるいは非酸化物セラミックスと酸化物セラミックスの2種類を合成している。具体的には、外部加熱なしで金属間化合物の1つであるNiTiのインゴットを製造することが開示されている。
また特許文献1では、残存副生成物として同時に合成されるAl2O3 は、NiTiから容易に分割できるとされているが、NiTiに対する濡れ性や比重、粘性、融点および熱力学的安定性の違いから、これら2種類の合成物を正確に分離することは困難である。例えば上記イオン結合性物質の場合のように洗浄水で洗浄してもAl2O3 は水に溶解しないので分離できないという問題がある。
上記炭酸塩および過酸化物における2族元素は、それぞれ、ストロンチウム、バリウムおよびカルシウムから選ばれた少なくとも1つの元素であることを特徴とする。
上記過酸化物は、過酸化バリウムまたは過酸化カルシウムから選ばれた少なくとも1つの元素であることを特徴とする。
本発明の誘電体セラミックスの製造方法は、上記原料を用い、金属粉末の比表面積を所定範囲とすること等により燃焼合成法でペロブスカイト結晶構造を有する酸化物系の誘電体セラミックスが得られる。また、酸素供給源に過塩素酸ナトリウム等のイオン結合性物質を使用していないので、副生成物は炭酸塩由来の炭酸ガスのみであり、合成粉末を微粉化した後、水で洗浄する等の副生成物除去工程が不要である。この結果、理論密度に近い焼結体が容易に得られる。
図1に示すように、立方体(立方晶)の8つの頂点位置にA原子が、体心位置にB原子が、面心位置にO原子が位置したもので、B原子とO原子は8面体を構成し、B原子がその中心にくる。上記立方体(立方晶)が理想型であり、A、Bの原子種類、温度条件、電界条件などにより、ひずんで直方体(正方晶)等となる。誘電体セラミックスは、室温では理想的な立方晶構造からわずかに歪んだ構造をしており、この適度な歪、いわゆる構造の非対称性が、該誘電体セラミックスが様々な特性を示す原因となっている。
本発明では、4族元素を含む金属粉末と、2族元素を含む元素の炭酸塩と、2族元素を含む元素の過酸化物とを原料として用いるので、本発明の誘電体セラミックスの一般式は、A2+B4+O3となり、図1においてAが炭酸塩由来、Bが金属粉末由来となる。また、炭酸塩と過酸化物とで異なる2族元素を用いた場合などでは、AがA1A2・・となる。
4族A元素は単独でもあるいは混合しても使用できる。また、これら4族A元素と同時に配合できる元素としては、ラザホージウム(Rf)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジウム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ビスマス(Bi)、ポロニウム(Po)、アスタチン(At)等が挙げられる。
本発明において、金属粉未の比表面積は、BET法により測定された値をいう。
本発明に使用できる平均粒子径としては 150μm 以下、好ましくは 0.1〜100μm である。150μmをこえると、他の原材料との混合が十分でなくなり、燃焼波が伝播しない場合が生じる。
表面に凹凸が形成された粒子またはいびつな形状の平均粒子径の測定方法は、画像解析法が好ましい。
また、一般に金属単体とするためには精製が必要であり、金属粉末はコストが高いので、該金属粉末と金属酸化物とを併用することにより、コスト削減を図れるという効果も有する。
2族A元素は単独でもあるいは混合しても使用できる。また、これら2族A元素と同時に配合できる元素としては、Rf、Sn、Sb、Te、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Bi、Po、At等が挙げられる。
2族A元素からなる炭酸塩としては、BeCO3、MgCO3、CaCO3、SrCO3、BaCO3、RaCO3 等がある。その中で特にCaCO3、SrCO3、BaCO3 が取り扱いに優れるので好ましい。
また、2族A元素からなる過酸化物としては、BeO2、MgO2、BaO2、CaO2、RaO2 等がある。これらの中で誘電特性、取り扱い性の点からBaO2、CaO2 を用いることが好ましい。
燃焼合成反応において誘電体セラミックスは、例えばチタン酸バリウム(BaTiO3 )やチタン酸カルシウム(CaTiO3 )などの場合、以下の化学反応式にしたがって生成する。よって、4族金属粉末と、2族炭酸塩と、2族過酸化物とを下記反応に必要なそれぞれのモル質量に相当する量で配合する。
また、4族金属酸化物を配合する場合は、断熱火炎温度を 1500℃以上に維持できる割合で配合する。該4族金属酸化物の割合を増加させることで断熱火炎温度を下げることができる。
Ti+2TiO2+BaCO3+2BaO2→ 3BaTiO3+CO2↑
Ti+2TiO2+CaCO3+2CaO2→ 3CaTiO3+CO2↑
Ti+2TiO2+BaCO3+2CaO2→ 3(Ba1/3,Ca2/3)TiO3+CO2↑
Ti+2TiO2+CaCO3+2BaO2→ 3(Ba2/3,Ca1/3)TiO3+CO2↑
混合粉末は、るつぼに投入して燃焼合成を行なうが、そのるつぼの材質としては好ましくは非酸化物である炭素(C)、炭化珪素(SiC)、窒化珪素Si3N4 等が使用できる。これらの中で炭素(C)材が熱伝導と形状加工性に優れているので好ましい。
混合粉末をるつぼへ投入する方法としては、混合粉末をパウダーベット状に敷き詰めたり、敷き詰めた後圧縮したり、ペレット状に押し固めたものをるつぼへ投入する方法等が使用できる。
燃焼合成法の条件について、反応系の断熱火炎温度は 1500℃以上である。1500℃以上であれば、燃焼波が伝播するからである。
燃焼合成はチャンバー内で行なうが、その雰囲気としては、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)等の希ガス雰囲気が好ましい。なお、反応生成物の誘電特性を劣化させなければ、窒素ガス、炭酸ガス雰囲気等を利用することも可能である。また、酸素分圧を制御可能であれば、酸素ガスを使用することも可能である。
燃焼合成を開始させるための混合粉末への着火方法は、金属粉が着火発熱可能となる方法であれば特に限定されない。カーボンフイルムを着火発熱させて熱源とし、混合粉末に接触させて着火発熱させる方法が取り扱いに優れているので好ましい。燃焼合成反応は、約1〜60秒で終了する。
また、燃焼合成で得られた合成粉末の結晶構造をさらに安定させたり、微量な不純物を除去するため、900〜1100℃で仮焼することも可能である。
得られる誘電体セラミックスは、理論密度に近く緻密化されるので、誘電体アンテナ、コンデンサ、共振器、圧力センサ、超音波モータ等に使用できる。
表1に示す比表面積の異なる4族金属粉末、4族金属酸化物、2族炭酸塩、2族過酸化物 をそれぞれ表1に示すモル比でボールミルを用いて 5 時間混合する
ことにより混合粉末を得た。合成装置内のチャンバー内にカーボンるつぼを設置し、混合粉末(100 g )をカーボンるつぼ内に敷き詰め、着火用のカーボンフイルムを混合粉の一部と接触させて、チャンバーを閉じた。真空ポンプを用いて、チャンバー内の残留酸素を減少させた後、アルゴン(Ar)ガスを封入し、チャンバーの内圧を 0.1 MPaとした。
また、比較例1では、Ti金属粉の比表面積が 0.01 m2/g より小さいため、燃焼波が伝播せず、合成粉を得ることができなかった。比較例2では、副生成物の生成が認められた。
Claims (3)
- ペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物系の誘電体セラミックスの製造方法であって、
比表面積が 0.01〜2 m2/g のチタン粉末と、ストロンチウム、バリウムおよびカルシウムから選ばれた少なくとも1つの元素の炭酸塩と、ストロンチウム、バリウムおよびカルシウムから選ばれた少なくとも1つの元素の過酸化物とを少なくとも含む反応原料をそれぞれ所定割合で配合する工程と、
前記所定割合で配合された配合物を断熱火炎温度が1500℃以上である外部加熱なしの燃焼合成法により反応させて、その反応生成物である誘電体セラミックスを得る工程とを備えることを特徴とする誘電体セラミックスの製造方法。 - 前記チタン粉末は、平均粒子径が0.1〜100μmであることを特徴とする請求項1記載の誘電体セラミックスの製造方法。
- 前記反応原料は、酸化チタンが含まれることを特徴とする請求項1または請求項2記載の誘電体セラミックスの製造方法。
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